説明

機器筐体

【課題】 部品点数の増加を招くことなく、背面パネルを開閉可能とする。
【解決手段】 間隔をおいて対向配置された側壁パネル10、12の一方の端部側において、それぞれの内側に突出するようにバーリング加工によって軸部40を形成してある。側壁パネル10、12の一方の端部間に跨って背面パネル28が配置され、背面パネル28が有する板状部36に形成した開口38が軸部40に回転自在に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気機器や電子機器のような機器の筐体に関し、特に、パネルの開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器や電子機器では、例えば保守点検のために、筐体の蓋を開閉することがある。蓋の開閉機構としては、例えば特許文献1に開示されているように、箱状本体部と蓋との間に蝶番を設けることが行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−368443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている技術では、蝶番を使用しなければならず、部品点数が増加し、コストの上昇を招く。
【0005】
本発明は、新たな部品を使用することなく、蓋を開閉することができる機器筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の機器筐体は、第1及び第2の金属パネルを有している。第1及び第2の金属パネルは、間隔をおいて対向配置され、対向する第1及び第2の長手縁をそれぞれが有している。これら第1及び第2の金属パネルの一方の端部側において、それぞれの内側に突出するようにバーリング加工によって軸部が形成されている。第1及び第2の金属パネルの一方の端部間に跨って蓋パネルが配置されている。前記軸部に回転自在に支持され、第1及び第2の金属パネルの前記一端部間の少なくとも一部を閉じた閉状態と、前記少なくとも一部を開放した開状態とを、とる。
【0007】
このように構成された機器筐体では、蓋パネルは軸部によって回転自在に支持されているので、開状態及び閉状態のいずれの状態も取ることができる。軸部は、第1及び第2の金属パネルをバーリング加工することによって構成されているので、軸部用に部品を用意する必要が無く、コストの低減を図ることができる。また、第1及び第2の金属パネルは撓むので、この撓みを利用して蓋パネルを軸部に支持することができ、取付作業も容易に行える。
【0008】
蓋パネルは、開口が形成された板状体を、第1及び第2の金属パネルの一方の端部それぞれに面接触した状態で有するものとにできる。この場合、各開口に各軸部がそれぞれ挿通されて、蓋パネルを回転自在に支持する。
【0009】
このように蓋パネルに、第1及び第2の金属パネルの一方の端部に面接触する板状体に形成した開口を軸部に挿通するように構成してあるので、蓋パネルの取付が容易になる。
【0010】
また、蓋パネルは、前記閉状態において、第1及び第2のパネルの第1の長手縁の他方の端部側から前記一方の端部側に向かう直線状部と、この直線状部の先端から第2の長手縁方向の前記一方の端部側を向いて傾斜した傾斜部とを、有するものにできる。
【0011】
このように構成した場合、例えば、この機器筐体内の例えば電気回路に接続するための接続具が傾斜部に設けられている場合、閉状態においてこれら接続具への接続が容易に行える。
【0012】
更に、前記傾斜部がほぼ水平となって状態で前記傾斜部の回転を阻止するストッパを前記傾斜部に設けることもできる。
【0013】
このように構成すると、直線状部が第1及び第2の金属製パネルの一方の端部よりも外側に位置した状態を維持し、直線状部の内面に部品等が配置されている場合、その保守点検が容易に行える。また、ストッパがこれら部品の重量を受けるので、軸部に大きな力がかかることがなく、軸部が損傷しにくくなる。
【0014】
或いは、各軸部の内周面にめねじを刻設し、第1及び第2の金属パネルの外面に配置されたラックパネルを、前記めねじに螺合したおねじによって第1及び第2の金属パネルに固定することもできる。
【0015】
このように構成すると、ラックパネルの第1及び第2の金属パネルへの固定と、蓋パネルの第1及び第2の金属パネルへの固定とに、共通に軸部を使用することができ、第1及び第2の金属パネルへのラックパネルの固定用に、別途バーリング加工して、突部を構成
する必要がなくなり、製造が容易になる。
【0016】
第1及び第2の金属パネルの外面に、第1及び第2の金属パネルよりも剛性の大きい撓み防止体を設けることができる。撓み防止体としては、第1及び第2の金属パネルに取り付けられる他のもの、例えばラックに取り付けるためのラックパネルや、テーブル上に配置する際に使用するアームレストと兼用するものを使用することができる。
【0017】
このように撓み防止体を設けることによって第1及び第2の金属パネルがわずかな力を加えることによって撓むことが防止でき、軸部から蓋パネルが容易に外れることを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、部品点数の増加を招くことなく、蓋パネルを開閉自在に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態の機器筐体は、例えば電子機器、具体的には音響調整器、より具体的にはオーディオミキサの筐体2であって、図2に示すようにラック4に取り付けられて使用されたり、図3に示すようにテーブル6上に配置されたりして使用される。なお、図3では、オーディオミキサのフェーダ等の操作部は省略してある。テーブル6上に配置される場合、筐体2の両側にはアームレストが取り付けられることがある。
【0020】
この筐体2は、全て金属製で、図2に示すように操作部が設けられている矩形の正面パネル8を有している。この正面パネル8の長手縁の両端に、正面パネル8と直交するように第1及び第2の金属パネル、例えば側壁パネル10、12が設けられている。側壁パネル10、12は、同一形状で、比較的剛性の小さいものである。正面パネル8の側壁パネル10、12が取り付けられている側の面には、図示していないが、オーディオミキサの回路が構成されたプリント基板等が配置されている。
【0021】
側壁パネル10は、図4に示すように、第1の長手縁、例えば正面パネル8の長手縁の端に一致した直線縁14を有している。この縁部14の一方の端部から正面パネル及び側壁パネル10、12に直交するように底壁パネル16が設けられている。その先端は正面パネル8と平行に正面パネル8側に折り曲げられて、板状部18が形成されている。また、正面パネル8の他方に端部には、正面パネル8と側壁パネル10、12とに直交するように上壁パネル20が設けられている。この上壁パネル20の先端は、底壁パネル16の先端よりも正面パネル8よりも離れた位置にある。
【0022】
側壁パネル10は、第2の長手縁の一部として、正面パネル20の先端から緩やかに正面パネル8から離れる方向に傾斜した斜辺22を有し、この斜辺22の先端から正面パネル8の底壁パネル18側に向かって鋭く傾斜した斜辺24を有し、この斜辺24の先端から底壁パネル18の先端まで正面パネル8に平行に伸びた直線辺26を有している。第2の長手縁は、これら斜辺22、24及び直線辺26によって構成されている。なお、側壁パネル12における斜辺22、24及び直線辺26に対応する部分は、斜辺22、24及び直線26と称する。
【0023】
この側壁パネル10、12における斜辺22、24及び直線辺26の部分を図5に示すように閉じた閉状態または図1、図4に示すように開いた開状態とするために、側壁パネル10、12間に、蓋パネル、例えば背面パネル28が設けられている。背面パネル28は、側壁パネル10、12の斜辺22間を閉じる緩傾斜面部30と、側壁パネル10、12の斜辺24間を閉じる急傾斜面部32と、側壁パネル10、12の直線辺26間を閉じる平面部34とからなる。
【0024】
平面部34における側壁パネル10、12側の端部には、平面部34と直交するように板状部36がそれぞれ形成されている。これら板状部36には、側壁パネル10、12の厚さ方向に貫通する開口38が形成されている。背面パネル28が側壁パネル10、12における斜辺22、24及び直線辺26の部分を図5に示すように閉じた閉状態または図1、図4に示すように開いた開状態のいずれにおいても、開口38に挿通された軸部40が、側壁パネル10、12の内面に形成されている。これら軸部40は、図6に示すようにバーリング加工によって形成されたものである。軸部40は、バーリング加工によって形成されているので、軸部40用に別途部品を用意する必要はない。軸部40の回りに背面パネル28は回転自在であるので、上述した閉状態と開状態とのいずれの状態をも、この筐体2は取ることができる。回転自在にするためには、各開口38に各軸部40をそれぞれ挿通する必要があるが、側壁パネル10、12は、比較的剛性の小さい金属製であるので、容易に撓み、挿通は容易に行える。また、背面パネル38に直交するように背面パネル38の両端に設けた板状部36に開口38が形成されているので、板状部38を側壁パネル10、12に面接触させて開口38に軸部40を挿通すればよく、背面パネル28の取付は容易である。
【0025】
図4に示す開状態において、背面パネル28の急傾斜面部32には、板状部18に接触して背面パネル28のそれ以上の回転を阻止する回転阻止手段、例えばストッパ42が設けられている。このストッパ42は、図5に示すように急斜面部32に形成した電源用の差し込み口44の周囲に設けた保護部材である。図示していないが、背面パネル28の緩斜面部30の内面には、オーディオミキサの回路の一部を構成したプリント基板や部品が取り付けられている。その結果、開状態において、これ以上背面パネル28が回転すると、背面パネル28の重心位置の関係上、筐体2が転倒するおそれがある位置で背面パネル28の回転を阻止するようにストッパ42が形成されている。また、急斜面部32と板状部18とが直接に接触して、急斜面部32または板状部18に傷が生じることも、ストッパ42は阻止している。
【0026】
図5に示すように緩斜面部32には、電源差し込み口の他にも、種々の接続具46、48、50、52が設けられている。例えば図3に示すようにテーブル6上に筐体2が背面パネル28がテーブル6上に接した状態に配置され、上面パネル20側にオーディオミキサのミキサマンが位置している場合、このミキサマンが、各接続具46、48、50、52への接続を容易にするために緩斜面部32に各接続具46、48、50、52が設けられている。
【0027】
この筐体2を図2に示すようにラック4に取り付ける場合には、図1、図4、図5に示すように、側壁パネル10、12の外面側にラックパネル54、56が、図5に示すようにおねじ58、58、58・・・によって取り付けられている。これらラックパネル54、56がラック4に固定される。この場合、側壁パネル10、12には、おねじ58、58、58・・・が螺合するめねじをバーリング加工によって形成した別個のスリーブ状部の内周面に形成しためねじ部を設ける。
【0028】
なお、ラックパネルを固定する際に、図7に示すように、軸部40の内周面にめねじを形成し、ラックパネル54、56に貫通孔を形成し、これに挿通したおねじ60をめねじに螺合させて、ラックパネル54、56を側壁パネル10、12に取り付けることもできる。この場合、上述したような別個にめねじ部を設ける必要が無く、軸部40をラックパネル54、56の取付に兼用できる。
【0029】
ラックパネル54、56は、側壁パネル10、12よりも大きな剛性を持つもので、人の力では容易に撓まない。上述したように側壁パネル10、12は、わずかな力を加えるだけで撓むので、軸部40への背面パネル28の板状部36の開口38を容易に取り付けることができる。但し、このままでは、わずかの力が誤って側壁パネル10、12に加わっても、軸部40が開口38から抜ける可能性がある。そこで、剛性の大きいラックパネル54、56が側壁パネル10、12の外面に取り付けられている。ラックパネル54、56の取り付け後には、側壁パネル10、12はかなり大きな力を加えても撓みにくくなり、軸部40が板状部36の開口38から抜けることを確実に防止できる。なお、テーブル6上に筐体2を配置する場合には、側壁パネル10、12の外側に取り付けるアームレストを、側壁パネル10、12よりもかなり大きい剛性を持つものとすることによって、上述したのと同様に、軸部40が板状部36の開口38から抜けることを確実に防止できる。
【0030】
上記の実施形態では、側壁パネル10、12に斜辺22を形成したが、これに代えて正面パネル8に平行な直線辺とすることもできる。この場合、背面パネル28の緩斜面部30も正面パネル8に平行な平板状部とする。上記の実施形態では、底壁パネル16を設けたが、これを除去して、背面パネル28の平面部34の先端に正面パネル8と平行な平面部を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1実施形態の筐体の背面パネルを開いた状態の斜視図である。
【図2】図1の筐体をラックに取り付けた状態の斜視図である。
【図3】図1の筐体をテーブルに配置した状態の側面図である。
【図4】図1の筐体の背面パネルを開いた状態の縦断側面図である。
【図5】図1の筐体の背面パネルを閉じた状態の斜視図である。
【図6】図1の筐体の背面パネルの側壁10への取付状態を示す部分省略縦断面図である。
【図7】図1の筐体の背面パネルの側壁10への別の取付状態を示す部分省略縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 筐体
10 12 側壁パネル(第1及び第2の金属パネル)
28 背面パネル(蓋パネル)
38 開口
40 軸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて対向配置され、対向する第1及び第2の長手縁をそれぞれが有する第1及び第2の金属パネルと、
これら第1及び第2の金属パネルの一方の端部側において、それぞれの内側に突出するようにバーリング加工によって形成された軸部と、
第1及び第2の金属パネルの一方の端部間に跨って配置され、前記軸部に回転自在に支持され、第1及び第2の金属パネルの前記一端部間の少なくとも一部を閉じた閉状態と、前記少なくとも一部を開放した開状態とを、とる蓋パネルとを、
具備する機器筐体。
【請求項2】
請求項1記載の機器筐体において、蓋パネルは、開口が形成された板状体を、第1及び第2の金属パネルの一方の端部それぞれに面接触した状態で有し、前記各開口に前記各軸部がそれぞれ挿通されて、蓋パネルを回転自在に支持している機器筐体。
【請求項3】
請求項1または2記載の機器筐体において、蓋パネルは、前記閉状態において、第1及び第2のパネルの第1の長手縁の他方の端部側から前記一方の端部側に向かう直線状部と、この直線状部の先端から第2の長手縁方向の前記一方の端部側を向いて傾斜した傾斜部とを、有する機器筐体。
【請求項4】
請求項3記載の機器筐体において、前記蓋パネルの前記開状態において、前記傾斜部がほぼ水平となった状態で前記蓋パネルの回転を阻止接触するストッパが前記傾斜部に設けられている機器筐体。
【請求項5】
請求項1記載の機器筐体において、前記各軸部の内周面にめねじが刻設され、第1及び第2の金属パネルの外面に配置されたラックパネルが、前記めねじに螺合したおねじによって第1及び第2の金属パネルに固定されている機器筐体。
【請求項6】
請求項1記載の機器筐体において、第1及び第2の金属パネルの外面に、第1及び第2の金属パネルよりも剛性の大きい撓み防止体が設けられている機器筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−289811(P2009−289811A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138240(P2008−138240)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000223182)ティーオーエー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】