説明

機器

【課題】外観を高めることが可能で且つ人体検知センサの感度の低下および誤動作の発生を抑制することが可能な機器を提供する。
【解決手段】機器は、熱型赤外線検出素子10および熱型赤外線検出素子10の出力信号を信号処理する信号処理回路20を有する回路ブロック28がパッケージ30に収納された人体検知センサ1と、人体検知センサ1が実装された基板40と、筐体50とを備える。そして、機器は、筐体50に、人体検知センサ1のパッケージ30における赤外線透過窓材33の前方に位置するピンホール53と、人体検知センサ1がピンホール53側とは反対側から挿入されたセンサ位置決め部54とが設けられ、センサ位置決め部54の内面54aと基板40とで囲まれた空間に人体検知センサ1が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体検知センサを備えた機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器として、人体から放射される赤外線を検出する焦電素子などの熱型赤外線検出素子を用いた人体検知センサを器体内に配置した電子機器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、この種の電子機器として、器体に、熱型赤外線検出素子の受光面に赤外線を入射させるためのピンホールレンズを形成したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−117952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者らは、上述の電子機器においても、ピンホールレンズの穴径を適宜設定することにより、器体から人体検知センサとは別部材であるレンズが露出する場合に比べて、機器の外観を高めることが可能となる場合もあるという知見を得た。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、ピンホールレンズと人体検知センサとの相対的な位置決め手段について記載されておらず、人体検知センサの位置ずれに起因して感度が低下してしまう懸念がある。
【0007】
また、上述の電子機器では、人体検知センサの周囲の熱のゆらぎや器体内での外乱光に起因して、人体検知センサが誤動作してしまう懸念がある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、筐体のデザイン性の低下を抑制しつつ人体検知センサの検知エリアを設定可能で、且つ、人体検知センサの感度の低下および誤動作の発生を抑制することが可能な機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の機器は、熱型赤外線検出素子および前記熱型赤外線検出素子の出力信号を信号処理する信号処理回路を有する回路ブロックがパッケージに収納された人体検知センサと、前記人体検知センサが実装された基板と、筐体とを備え、前記筐体に、前記人体検知センサの前記パッケージにおける赤外線透過窓材の前方に位置するピンホールと、前記人体検知センサが前記ピンホール側とは反対側から挿入されたセンサ位置決め部とが設けられ、前記センサ位置決め部の内面と前記基板とで囲まれた空間に前記人体検知センサが配置されてなることを特徴とする。
【0010】
この機器において、前記熱型赤外線検出素子は、クワッドタイプもしくはデュアルタイプの焦電素子であることが好ましい。
【0011】
この機器において、前記ピンホールの中心線と前記熱型赤外線検出素子の中心線とをずらしてあることが好ましい。
【0012】
この機器において、前記ピンホールの中心線および前記センサ位置決め部における前記人体検知センサの挿入方向を、前記器体において前記ピンホールの周部を含む外面に対して傾けてあることが好ましい。
【0013】
この機器において、前記ピンホールと前記人体検知センサとの間に、ポリエチレン製の防塵カバーが配置されてなることが好ましい。
【0014】
この機器において、前記ピンホールと前記人体検知センサとの間に、前記人体検知センサの検知エリアを調整するポリエチレン製の光学部材を備え、前記光学部材は、複数のプリズム小体を有し前記各プリズム小体の光入射面が同一面上に揃うように並設されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の機器においては、筐体のデザイン性の低下を抑制しつつ人体検知センサの検知エリアを設定可能で、且つ、人体検知センサの感度の低下および誤動作の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は実施形態1の機器の概略正面図、(b)は実施形態1の機器の要部概略正面図、(c)は実施形態1の機器の要部概略断面図である。
【図2】(a)は実施形態1の機器における筐体の要部背面図、(b)は実施形態1の機器における筐体の概略断面図である。
【図3】(a)は実施形態1の機器における人体検知センサの概略回路図、(b)は熱型赤外線検出素子の概略説明図である。
【図4】実施形態1の機器における筐体への人体検知センサの取り付け方の説明図である。
【図5】実施形態1の機器における人体検知センサの検知エリアの説明図である。
【図6】(a)は実施形態2の機器の概略正面図、(b)は実施形態2の機器の要部概略正面図、(c)は実施形態2の機器の要部概略断面図である。
【図7】実施形態2の機器における筐体への人体検知センサの取り付け方の説明図である。
【図8】(a)は実施形態3の機器の概略正面図、(b)は実施形態3の機器の要部概略正面図、(c)は実施形態3の機器の要部概略断面図である。
【図9】実施形態3の機器における人体検知センサの検知エリアの説明図である。
【図10】(a)は実施形態4の機器の概略正面図、(b)は実施形態4の機器の要部概略断面図である。
【図11】実施形態4の機器における筐体への人体検知センサの取り付け方の説明図である。
【図12】実施形態4の機器における人体検知センサの検知エリアの説明図である。
【図13】実施形態5の機器の要部概略断面図である。
【図14】実施形態6の機器の要部概略断面図である。
【図15】実施形態6の機器における人体検知センサの検知エリアの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下では、本実施形態の機器について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0018】
機器は、熱型赤外線検出素子10および熱型赤外線検出素子10の出力信号を信号処理する信号処理回路20を有する回路ブロック28がパッケージ30に収納された人体検知センサ1と、人体検知センサ1が実装された基板40と、筐体50とを備える。
【0019】
また、機器は、筐体50に、人体検知センサ1のパッケージ30における赤外線透過窓材33の前方に位置するピンホール53と、人体検知センサ1がピンホール53側とは反対側から挿入された穴からなるセンサ位置決め部54とが設けられている。そして、機器は、センサ位置決め部54の内面54aと基板40とで囲まれた空間に人体検知センサ1が配置されている。センサ位置決め部54の内部空間とピンホール53とは連通している。なお、本実施形態では、ピンホール53とセンサ位置決め部54とが設けられた筐体50と、人体検知センサ1とで、赤外線検出装置を構成している。
【0020】
人体検知センサ1は、赤外線を放射する物体(ここでは、人体)の動きを検知して検知信号を出力するものである。
【0021】
機器は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどからなるディスプレイ部51を備えた携帯端末機(例えば、デジタルフォトフレームやタブレットPCなど)である。ここで、機器は、図1(a)の左側の下部において筐体50の後面側に、人体検知センサ1が配置されている。なお、機器は、筐体50の前壁部が矩形枠状に形成されており、上述のディスプレイ部51が露出するようになっている。
【0022】
機器は、人体検知センサ1の出力に基づいて低消費電力モード(起動に必要な機能以外を停止するスリープモードなど)と通常動作が可能なアクティブモード(通常動作モード)とを切り換えるパワーマネージメント機能を有するマイクロコンピュータなどからなる制御部(図示せず)を備えている。ここにおいて、上記制御部は、人体検知センサ1により人の不在が検知されると直ちに通常動作モードから低消費電力モードへ移行し、人体検知センサ1により人が再び検知されると自動的に低消費電力モードから通常動作モードに戻るので、低消費電力化を図れるとともに使い勝手を良くすることができる。要するに、機器は、人体検知センサ1の出力に基づいて消費電力を制御するパワーマネジメント機能を有しているので、低消費電力化を図れるとともに使い勝手を良くすることができる。
【0023】
人体検知センサ1のパッケージ30は、回路ブロック28が実装される金属製のステム31と、回路ブロック28を覆うようにステム31に固着(溶接)された金属製のキャップ32とを備え、回路ブロック28の適宜部位と電気的に接続される複数本(ここでは、3本)の端子ピン35がステム31を貫通する形で設けられている。ステム31は、円盤状に形成され、キャップ32は、後面が開放された有底円筒状の形状に形成されており、後面がステム31により閉塞されている。ここにおいて、パッケージ30は、ステム31の周部に形成されたフランジ部31bと、キャップ32の後端縁から外方に延設された外鍔部32bとを、溶接により気密的に接合してある。ステム31は、フレンジ部31bの外周縁の1箇所から突片31cが外方に延設されている。上述の説明から明らかなように、パッケージ30は、キャンパッケージである。
【0024】
また、キャップ32において熱型赤外線検出素子10の前方に位置する前壁には、窓孔32aが貫設されている。パッケージ30は、キャップ32の窓孔32aが、上述の赤外線透過窓材33により閉塞されている。赤外線透過窓材33は、シリコン基板に、所望の波長域の赤外線を透過する多層光学膜からなるフィルタが設けられている。赤外線透過部材33は、当該赤外線透過部材33の周部が、キャップ32の前壁における後面側に、半田などの導電性の接合材からなる接合部を介して接合されている。これにより、パッケージ30は、赤外線透過部材33とキャップ32とステム31とを同電位とすることが可能となる。
【0025】
回路ブロック28は、上述の信号処理回路20が設けられるとともに、熱型赤外線検出素子10が実装されている。
【0026】
上述の3本の端子ピン35のうち給電用の端子ピン35および信号出力用の端子ピン35は、絶縁性材料(ガラス)からなる封止部によりステム31とは電気的に絶縁され、グランド用の端子ピン35は、導電性材料からなる封止部によりステム31と電気的に接続され上述のシールド板と同電位(例えば、グランド電位)に設定される。
【0027】
熱型赤外線検出素子10は、人体から放射される赤外線を検出するものである。熱型赤外線検出素子10としては、例えば、図3(b)に示すように、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント(受光部)12が形成されたクワッドタイプの焦電素子を用いることができる。図3(b)に示した熱型赤外線検出素子10は、1枚の焦電体基板11に4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に配列されている。図3(b)に示した例では、各素子エレメント12の平面視形状が正方形状であり、焦電体基板11の中央部において焦電体基板11の外周線よりも内側の仮想正方形の4つの角それぞれに素子エレメント12の中心が位置するように配置されている。
【0028】
各素子エレメント12は、一対の電極(図示せず)の間に焦電体基板11の一部が介在するコンデンサであり、図3(b)には、各素子エレメント12の一対の電極のうち赤外線透過窓材33側に位置する電極の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。ここにおいて、熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12のうち、仮想正方形の一方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の素子エレメント12同士が並列接続されている。要するに、熱型赤外線検出素子10は、図3(b)において、左右方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続され、且つ、上下方向に沿って並んで形成されている2個の素子エレメント12同士が逆並列に接続されている。しかして、熱型赤外線検出素子10では、自発分極の方向が逆方向になるように並列接続されている素子エレメント12同士で、環境温度の変化などによる2つ素子エレメント12でのノイズ(暗雑音など)が相殺されるので、人体検知センサ1での誤検知の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
人体検知センサ1の検知エリアは、熱型赤外線検出素子10と、ピンホール53とで決まる。したがって、人体検知センサ1の検知エリアには、素子エレメント12の数(図5(b)の例では、4個)の検知ビーム80が設定される。検知ビーム80は、熱型赤外線検出素子10への赤外線の入射量がピーク付近になる小範囲であって、検知対象の物体(人体)からの赤外線を検出する有効領域であり、検出ゾーンとも呼ばれる。
【0030】
機器は、熱型赤外線検出素子10の中心線OX1とピンホール53の中心線OX2とを一致させるように筐体50におけるピンホール53の形成位置と、センサ位置決め部54の形成位置とを規定してある。
【0031】
図3には、熱型赤外線検出素子10から筐体50の前面までの距離を2mm、開口形状が円形状であるピンホール53の内径を1mmとした場合について、人体検知センサ1の検知エリアに設定される検知ビーム80を模式的に示してある。ここで、図5(b)は、検知エリアのうち熱型赤外線検出素子10の中心線OX1(図1(c)参照)に沿った方向において熱型赤外線検出素子10から所定距離(例えば、2m)だけ離れた検知面における各検知ビーム80を模式的に示してある。また、図5(b)では、検知面における各検知ビーム80それぞれに、その検知ビーム80が1対1で対応する素子エレメント12の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。要するに、検知ビーム80には、素子エレメント12に1対1で対応した極性がある。図5(a)に示した検知ビーム80を含む検知エリアの検知角は約48°であり、図5(b)に示した4つの検知ビーム80は、1辺が約1.8mの正方形の検知エリアに設定される。検知面における検知ビーム80の形状は、その検知ビーム80に対応する素子エレメント12と略相似形である。
【0032】
ピンホール53の内径や上記所定距離の数値はいずれも一例であり、特に限定するものではない。ただし、ピンホール53は、キャップ32の窓孔32aよりも十分に小さな孔であり、機器の利用者が意識せずに機器を通常の使用状態で眺めた場合に目視(肉眼)により孔であると視認されにくいように内径を設定してある。ここにおいて、ピンホール53は、内径が大きすぎても小さすぎてもピンホールレンズとしての効果が得られなくなるので、内径を、例えば、0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定することが好ましい。いずれにしても、ピンホール53の内径は、ピンホールレンズとしての効果が得られる内径であり、且つ、機器のデザイン性の低下を抑制可能な値に設定する必要がある。
【0033】
熱型赤外線検出素子10の配置は、上述の例に限らず、例えば、2×2のマトリクス状に配列された4個の素子エレメント12のうち対角位置にある2個の素子エレメント12それぞれの1つの対角線同士を一直線で結ぶ方向を左右方向として配置してもよい。つまり、熱型赤外線検出素子10は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置してもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、長方形状に形成された複数個の素子エレメント12が、平面視において素子エレメント12の短手方向に並んでいるもの、例えば、長方形状の素子エレメント12が1×4のアレイ状に配列されたクワッドタイプの焦電素子でもよい。また、熱型赤外線検出素子10は、2個の素子エレメント12が1×2のアレイ状に配列されたデュアルタイプの焦電素子でもよい。熱型赤外線検出素子10として、クワッドタイプもしくはデュアルタイプの焦電素子を用いることにより、赤外線を放射する物体の動きを検知しやすくなる。
【0034】
熱型赤外線検出素子10としてクワッドタイプの焦電素子を採用した場合、熱型赤外線検出素子10は、図3(a)中に示す等価回路で示すことができる。熱型赤外線検出素子10は、4個の素子エレメント12が2×2のアレイ状に形成され、配線パターンにより適宜接続されており、2つの出力端子13(図3(a)参照)から出力信号を取り出すことができる。
【0035】
信号処理回路20は、図3(a)に示すように、熱型赤外線検出素子1から出力される出力信号である出力電流(焦電電流)を電圧信号に変換する電流電圧変換回路22を備えている。また、信号処理回路20は、電流電圧変換回路22により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧を増幅する電圧増幅回路(バンドパスアンプ)23を備えている。また、信号処理回路20は、電圧増幅回路23で増幅された電圧信号を適宜設定した閾値と比較し電圧信号が閾値を越えた場合に検知信号を出力する検知回路24と、検知回路24の検知信号を所定の人体検出信号として出力する出力回路25とを備えている。
【0036】
筐体50は、非透光性の合成樹脂(例えば、黒色の合成樹脂など)により形成されている。筐体50は、全体を非透光性の合成樹脂により形成する必要はないが、少なくともピンホール53を形成する部位およびセンサ位置決め部54を形成する部位が合成樹脂により形成されていることが好ましい。筐体50においてピンホール53を形成する部位が、黒色の合成樹脂により形成されている場合には、ピンホール53が目立ちにくく、悪戯されにくくなるという効果が期待できる。
【0037】
センサ位置決め部54の開口形状は、円形状である。ここで、センサ位置決め部54の内径はキャップ32の外径よりも若干大きな値に設定してある。また、センサ位置決め部54は、内底面に、赤外線透過部材33とピンホール53との距離を規定する第1凹部55が形成されている。ここで、第1凹部55の開口形状は円形状である。第1凹部55の内径は、センサ位置決め部54の内径よりも小さく且つピンホール53の内径よりも大きな値に設定してある。また、センサ位置決め部54の周部には、ステム31のフランジ部31bおよびキャップ32の外鍔部32bを位置決めする第2凹部56が形成され、さらに、ステム31の突片31cを位置決めする第3凹部57(図2および図4(a)参照)が形成されている。したがって、センサ位置決め部54は、ピンホール53と人体検知センサ1との相対的な位置関係を精度良く決めることができる。なお、図4(b)は、図4(a)の筐体50におけるセンサ位置決め部54に対して人体検知センサ1のみを位置決めした状態の概略斜視図であり、図4(c)は、基板40に実装した人体検知センサ1をセンサ位置決め部54に対して位置決めした状態の概略斜視図である。
【0038】
基板40は、ガラスエポキシ樹脂基板などの有機系絶縁基板に適宜の導体パターン(図示せず)が形成されたプリント配線板である。この基板40には、複数の挿通孔42を形成してある。これにより、基板40を筐体50に対して螺子により取り付けることが可能となる。また、筐体50においてプリント配線40の挿通孔42に対応する位置に予め柱状のボスを一体に設けておけば、ボスを挿通孔42に挿通させてボスの先端部を熱かしめすることで、基板40を筐体50に固定することも可能となる。なお、基板40を筐体50に固定する方法は特に限定するものではなく、接着剤や両面テープなどにより固定することも可能である。
【0039】
機器は、センサ位置決め部54の内面54aと基板40とで囲まれた空間に人体検知センサ1が配置されていることにより、ピンホール53と人体検知センサ1との相対的な位置決めがなされ、人体検知センサ1の位置ずれに起因した感度の低下を抑制することが可能となり、さらに、人体検知センサ1の周囲の熱のゆらぎや筐体50内外それぞれからの外乱光に起因して人体検知センサ1が誤動作するのを抑制することが可能となる。
【0040】
以上説明した本実施形態の機器は、上述のように、熱型赤外線検出素子10および熱型赤外線検出素子10の出力信号を信号処理する信号処理回路20を有する回路ブロック28がパッケージ30に収納された人体検知センサ1と、人体検知センサ1が実装された基板40と、筐体50とを備える。そして、機器は、筐体50に、人体検知センサ1のパッケージ30における赤外線透過窓材33の前方に位置するピンホール53と、人体検知センサ1がピンホール53側とは反対側から挿入されたセンサ位置決め部54とが設けられ、センサ位置決め部54の内面54aと基板40とで囲まれた空間に人体検知センサ1が配置されている。しかして、本実施形態の機器では、筐体50のデザイン性の低下を抑制しつつ人体検知センサ1の検知エリアを設定可能で、且つ、人体検知センサ1の感度の低下および誤動作の発生を抑制することが可能となる。また、本実施形態の機器では、ピンホール53がピンホールレンズとして機能し、且つ、赤外線透過部材33を平板状の形状とできるので、熱型赤外線検出素子10に赤外線を集光するためのレンズ部品を必要とする場合に比べて、機器1の薄型化を図ることが可能となる。
【0041】
(実施形態2)
以下では、本実施形態の機器について、図6および図7に基づいて説明する。
【0042】
本実施形態の機器は、実施形態1の機器と略同じ構成であり、筐体50の形状が相違する。なお、実施形態1の機器と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
筐体50は、実施形態1に比べて前壁の厚みを薄くしてあり、前壁から後方へ突設されたボス部58を一体に備え、このボス部58にセンサ位置決め部54が形成されている。また、筐体50は、前壁から後方へ突設されボス部58を全周に亘って囲む枠状(図示例では、矩形枠状)の枠部59を一体に備えている。また、ボス部58と枠部59との間には、気体層52が形成されている。しかして、本実施形態の機器では、人体検知センサ1の周囲の熱のゆらぎに起因して人体検知センサ1が誤動作するのをより確実に抑制することが可能となる。なお、本実施形態の機器では、枠部59に基板40を固定すればよい。
【0044】
(実施形態3)
以下では、本実施形態の機器について、図8および図9に基づいて説明する。
【0045】
本実施形態の機器は、実施形態1の機器と略同じ構成であり、ピンホール53の中心線OX2と熱型赤外線検出素子10の中心線OX1とをずらしてある点が相違する。なお、実施形態1の機器と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態の機器では、ピンホール53の中心線OX2と熱型赤外線検出素子10の中心線OX1とがずれるように、ピンホール53の中心線OX2をセンサ位置決め部54の中心線からずらしてある。ここで、図8に示した例は、図8(b)の上下方向において、ピンホール53の中心線OX2がセンサ位置決め部54の中心線よりも下側になるようにずらしてある。これにより、本実施形態の機器では、図9に示すように、複数の検知ビーム80により形成される検知エリアを傾けることが可能となる。したがって、本実施形態の機器では、例えば、机などの上に置いて、使用者が椅子に座って機器を使用するような場合に、機器から離れた所を通過する使用者以外の人の動きが人体検知センサ1により検知される可能性を低減することが可能となり、人体検知センサ1が使用者以外の人を検知する可能性を低減できる。また、本実施形態の機器では、ピンホール53に細い棒などが差し込まれる悪戯がされた場合に赤外線透過窓材33が破損する可能性を低減することが可能となる。
【0047】
(実施形態4)
以下では、本実施形態の機器について、図10〜図12に基づいて説明する。
【0048】
本実施形態の機器は、実施形態2の機器と略同じ構成であり、ピンホール53の中心線OX2およびセンサ位置決め部54における人体検知センサ1の挿入方向を、筐体50においてピンホール53の周部を含む外面(前面)に対して傾けてある点が相違する。なお、実施形態2の機器と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
筐体50は、ボス部58を筐体50の前壁に対して傾け、センサ位置決め部54の中心線を筐体50の上記外面に対して傾けることで、人体検知センサ1の挿入方向を、上記外面に対して傾けてある。また、ピンホール53は、筐体50の前壁の厚み方向から傾けてピンホール53を形成することにより、ピンホール53の中心線OX2を、上記外面に対して傾けてある。ここで、図10〜図12に示した例は、図10(b)の上下方向を上下方向とした場合に、ピンホール53の中心線OX2およびセンサ位置決め部54における人体検知センサ1の挿入方向が斜め下方となる。これにより、本実施形態の機器では、図12に示すように、複数の検知ビーム80により形成される検知エリアを斜め下方に傾けることが可能となる。したがって、本実施形態の機器では、例えば、机などの上に置いて、使用者が椅子に座って機器を使用するような場合に、機器から離れた所を通過する使用者以外の人の動きが人体検知センサ1により検知される可能性を低減することが可能となり、人体検知センサ1が使用者以外の人を検知する可能性を低減できる。
【0050】
(実施形態5)
以下では、本実施形態の機器について、図13に基づいて説明する。
【0051】
本実施形態の機器は、実施形態1の機器と略同じ構成であり、ピンホール53と人体検知センサ1との間に、ポリエチレン製の防塵カバー60が配置されている点が相違する。なお、実施形態1の機器と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
防塵カバー60は、ポリエチレン製なので、赤外線を透過することができる。
【0053】
また、防塵カバー60は、ピンホール53と人体検知センサ1との間に配置されるシート状のカバー本体部61のみにより構成してもよいが、ピンホール53内に配置される凸部62を一体に備えたものを用いることが、防塵および防水の観点からは好ましい。本実施形態の機器では、防塵カバー60を備えていることにより、ピンホール53内に水滴などが入っても人体検知センサ1まで到達しにくくなるので、水滴などに起因して人体検知センサ1の特性が劣化するのを防止することが可能となる。
【0054】
なお、防塵カバー60は、実施形態2〜4の機器において設けてもよい。
【0055】
(実施形態6)
以下では、本実施形態の機器について、図14および図15に基づいて説明する。
【0056】
本実施形態の機器は、実施形態1の機器と略同じ構成であり、ピンホール53と人体検知センサ1との間に、人体検知センサ1の検知エリアを調整するポリエチレン製の光学部材70を備えている点が相違する。なお、実施形態1の機器と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
光学部材70は、複数のプリズム小体71を有し各プリズム小体71の光入射面が同一面上に揃うように並設されている。なお、光学部材70は、ピンホール53内に配置される凸部72を一体に備えたものを用いることにより、機器の防塵性および防水性を高めることが可能となる。
【0058】
本実施形態の機器では、上述の光学部材70を備えていることにより、人体検知センサ1の検知エリアを調整することが可能となる。ここで、図14および図15に示した例は、図15の上下方向を上下方向とした場合に、複数の検知ビーム80により形成される検知エリアを斜め下方に傾けることが可能となる。したがって、本実施形態の機器では、例えば、机などの上に置いて、使用者が椅子に座って機器を使用するような場合に、機器から離れた所を通過する使用者以外の人の動きが人体検知センサ1により検知される可能性を低減することが可能となり、人体検知センサ1が使用者以外の人を検知する可能性を低減できる。本実施形態の機器では、光学部材70を備えていることにより、ピンホール53内に水滴などが入っても人体検知センサ1まで到達しにくくなるので、水滴などに起因して人体検知センサ1の特性が劣化するのを防止することが可能となる。
【0059】
なお、光学部材70は、実施形態2の機器において設けてもよい。
【0060】
ところで、上述の各実施形態では、機器として、携帯端末機を例示したが、機器は、携帯端末機に限らず、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、コピー機、デジタルサイネージ(電子看板)、トイレなどに設置される自動手洗い機、自動手乾燥機、小便器、自販機、券売機、現金自動預け払い機(Automatic Tellers Machine:ATM)、現金自動支払機(CashDispenser:CD)などでもよい。機器が、パーソナルコンピュータ、コピー機、ファクシミリ(facsimile:FAX)、プリンター、複合機などの機器では、例えば、電源がオンの状態で、人が人体検知センサ1の検知エリア内から出た場合には休止状態にして省電力化を図り、人が検知エリア内に入った場合にすぐに休止状態を解除して操作可能な状態とすることによって、省電力化を図ることが可能となる。また、機器は、例えば、壁に取り付ける照明器具やエアコンなどでもよいし、空気清浄機、防犯機器などでもよい。また、機器は、部屋の入り口付近の壁に取り付けられて別置きの照明器具を制御するコントローラなどの機器でもよい。また、機器が、デジタルサイネージの場合には、人体検知センサ1により人が検知されると、所定時間が経過するごとに表示内容を変更するような制御機能を有することにより、宣伝効果などを向上させることが可能となる。また、機器が、デジタルフォトフレームの場合にも、人体検知センサ1により人が検知されると、所定時間が経過するごとに表示内容を変更するような制御機能を有するようにしてもよい。
【0061】
また、上述の各実施形態において説明した熱型赤外線検出素子10は、焦電体基板11を用いて形成した焦電素子であるが、これに限らず、例えば、マイクロマシニング技術および焦電体薄膜の形成技術などを利用して形成したチップでもよい。なお、熱型赤外線検出素子10は、焦電素子に限らず、例えば、サーモパイル型の熱型赤外線検出素子や抵抗ボロメータ型の熱型赤外線検出素子でもよい。
【0062】
また、上述の各実施形態では、人体検知センサ1のパッケージ30として、キャンパッケージを例示したが、これに限らず、外周形状が矩形状の表面実装型のパッケージを採用し、センサ位置決め部54の開口形状を矩形状としてもよい。これにより、筐体50のより一層の薄型化が可能となる。なお、表面実装型のパッケージの外周形状は、矩形状以外の形状でもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 人体検知センサ
10 熱型赤外線検出素子
20 信号処理回路
28 回路ブロック
30 パッケージ
33 赤外線透過窓材
40 基板
50 筐体
53 ピンホール
54 センサ位置決め部
54a 内面
60 防塵カバー
70 光学部材
71 プリズム小体
OX1 熱型赤外線検出素子の中心線
OX2 ピンホールの中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱型赤外線検出素子および前記熱型赤外線検出素子の出力信号を信号処理する信号処理回路を有する回路ブロックがパッケージに収納された人体検知センサと、前記人体検知センサが実装された基板と、筐体とを備え、前記筐体に、前記人体検知センサの前記パッケージにおける赤外線透過窓材の前方に位置するピンホールと、前記人体検知センサが前記ピンホール側とは反対側から挿入されたセンサ位置決め部とが設けられ、前記センサ位置決め部の内面と前記基板とで囲まれた空間に前記人体検知センサが配置されてなることを特徴とする機器。
【請求項2】
前記熱型赤外線検出素子は、クワッドタイプもしくはデュアルタイプの焦電素子であることを特徴とする請求項1記載の機器。
【請求項3】
前記ピンホールの中心線と前記熱型赤外線検出素子の中心線とをずらしてあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機器。
【請求項4】
前記ピンホールの中心線および前記センサ位置決め部における前記人体検知センサの挿入方向を、前記筐体において前記ピンホールの周部を含む外面に対して傾けてあることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機器。
【請求項5】
前記ピンホールと前記人体検知センサとの間に、ポリエチレン製の防塵カバーが配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の機器。
【請求項6】
前記ピンホールと前記人体検知センサとの間に、前記人体検知センサの検知エリアを調整するポリエチレン製の光学部材を備え、前記光学部材は、複数のプリズム小体を有し前記各プリズム小体の光入射面が同一面上に揃うように並設されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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