機械式粉砕装置
【課題】シャープな粒度分布幅の粉砕物を高効率で製造することができるばかりでなく、これとは異なる粒径を有する被粉砕物の製造にも好適に用いることが可能な機械式粉砕装置を提供すること。
【解決手段】ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする機械式粉砕装置。
【解決手段】ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする機械式粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の製造、特に、乾式の粉砕処理に好適な機械式粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乾式トナーや粉体塗料等の製造においては、最終製品の粒径の調整や、粒度分布の調整のために乾式の機械的粉砕処理がなされており、それに用いる機械式粉砕装置が種々提案されている。
【0003】
従来、このような被粉砕物を微粉砕するための回転型機械式粉砕装置として、特許文献1および特許文献2に記載の微粉砕機が知られている。図12に示すように、この微粉砕機50は、外周面に母線と平行な多数の凹凸部52を周方向に連続させた円筒状の回転子(ロータ)54を回転軸56で支持し、この回転子54の外周面と微小な間隙58をおいて、内周面に母線と平行な多数の凹凸部60を周方向に連続させた円筒状の固定子(ライナ)62を回転子54の外側に嵌装し、その間隙58を粉砕室とするものである。
【0004】
そして、この微粉砕機50においては、回転子54を高速で回転させるとともにケーシング51の図中右上側面部に設けられた製品排出口64から吸引送風機(図示せず)などによって吸引することにより、ケーシング51の図中左下部に設けられた被粉砕物の供給口66から供給された被粉砕物を空気流とともに間隙58からなる粉砕室に送り込み、この時に回転子54および固定子62の凹凸により生じる渦流により効果的にこの凹凸面に衝突させ、あるいは回転子54および固定子62の両凸部間で磨砕することにより、微細粒子とする粉砕処理を行った後、微小間隙から流出した微細粒子を製品排出口64から機外に排出するものである。なお、このような微粉砕機50においては、間隙58からの粗大粒子の流出を防止し、微細粒子のみを流出させるために、固定子62の上端部にその凹凸部60の凹部を塞ぐ分級リング68を設けている。
【0005】
この微粉砕機50においては、粉砕室に相当する間隙58の間隔を1mm以下とし、回転子54を高速回転させることにより、固定子62および回転子54の両凹凸面からこれらの凹部内に定常的に発生する渦流によって被粉砕物が互いに衝突し、剪断力を受けて、微粉砕が効果的に行われ、ミクロンオーダーから10数ミクロンオーダーの比較的粒度分布巾の狭い粉砕物が得られるとされている。
【0006】
このような微粉砕機50では、回転子54の凹凸部52と固定子62の凹凸部60との組み合わせとして、図13(A)、(B)、(C)および(D)に示すものが提案されている。これらの図において、凹凸部52aおよび凹凸部60aは横断面形状が方形状のもので、凹凸部52bおよび凹凸部60bは横断面形状が三角形状のものであるが、これらの組み合わせのうち図13(D)に示す三角形状凹凸部52bおよび凹凸部60bの組み合わせにより、優れた粉砕性能が得られることが知られている。
【0007】
また、特許文献3には、図14(A)および(B)に示すように、上述の微粉砕機50のような回転子54の外周面および固定子(筒体)62の内周面の母線と平行な多数の凹凸部に加え、回転子54の外周面に、および回転子54の外周面と固定子62の内周面に、母線と直交する方向の多数の凹凸部72、および凹凸部72と74を母線の方向に連続して形成した機械式粉砕装置70、および71が提案されている。これらの機械式粉砕装置70および71は、母線と平行な方向とこれに直交する方向の両方向に凹凸部を形成することにより、水平方向に加えて上下方向の渦流を発生させることができ、それにより粉砕機能が向上される結果、粒径が数十ミクロンオーダーの粉砕物が得られるとしている。
【0008】
なお、この他、回転型機械式粉砕装置としては、例えば、特許文献4および特許文献5に記載の各種鉱物、セラミックス、大豆、石、砂利などの堅い材料を粉砕する粉砕装置、特許文献6および特許文献7に記載の複写用カーボンや顔料の微粒子を得るための微粉砕機、特許文献8および特許文献9に記載の数ミクロンオーダーの超微粒子を得るための超微粉砕機および特許文献10に記載の粉砕装置などが知られている。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−105853号公報
【特許文献2】特公平3−15489号公報
【特許文献3】特開平7−155628号公報
【特許文献4】特公平4−12190号公報
【特許文献5】特公平4−12191号公報
【特許文献6】特公昭58−14822号公報
【特許文献7】特公昭58−14823号公報
【特許文献8】特公昭61−36457号公報
【特許文献9】特公昭61−36459号公報
【特許文献10】特開平5−184960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、通常、機械式粉砕装置では、高品質を目指して、より粒径の小さい粉体や粒度の揃った、すなわち粒度分布の幅のシャープな粉体が要求される。
そこで、従来の機械式粉砕装置においては、種々の材料について小粒径の粉砕品を得ようとする場合、種々の材質の被粉砕物、粉砕粒度に個々に対応するような機械式粉砕装置を用意しなければならいという問題があった。
【0011】
しかしながら、技術の進歩とともに、これらの、用いられる被粉砕物の原料となる材料や要求される粉砕粒度は変更されることも多くなり、これらの要求に対応するためには、機械式粉砕装置においても、従来とは異なる材料に対応できること、従来とは異なる粉砕粒度にも対応できることができることが要望されるにいたっている。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、粒径が小さく、しかも粗大粒子の混入がなく、かつシャープな粒度分布幅の粉砕物を高効率で製造することができるばかりでなく、これとは異なる粒径を有する粒子(被粉砕物)の製造にも好適に用いることが可能な、いわばハイブリッドな機械式粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る機械式粉砕装置は、ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする。
【0014】
ここで、本発明に係る機械式粉砕装置においては、前記ライナの内周面に形成されている複数の溝は、前記回転軸に平行な方向の溝であることが好ましい。
【0015】
前記ロータおよび前記ライナの両端縁に対応する位置に2つずつ設けられた計4つの連通口は、前記回転軸の回転方向に応じて、被粉砕物の供給口となるもの、被粉砕物の排出口となるものをそれぞれ1つずつ選定し、これらの2通りの使用パターンを切り換え可能に構成されていることが好ましい。
また、前記ロータの外周面が有する複数段の羽根は、前記ケーシングにおける被粉砕物の移動方向に沿って、1つ以上の前記回転軸に平行な羽根と、これに続く1つ以上の前記被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ある粒径範囲のシャープな粒度分布幅を有する粉砕物を高効率で製造することができるばかりでなく、これとは異なる粒径範囲を有する粒子(被粉砕物)の製造にも好適に用いることが可能な機械式粉砕装置を提供するを実現できるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る機械式粉砕装置を添付の図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態に係る機械式粉砕装置の全体構成を示す斜視図、図2はその正面図、図3は(右)側面図である。また、図4は図3中のA−A断面図、図5は図2中のB−B断面図である。
【0018】
上記各図において、10は本実施形態に係る横型の機械式粉砕装置(以下、単に粉砕装置という)であり、12はそのベース部材であって、本粉砕装置全体を支持する基礎構成部分、14はケーシング、18はこのケーシング14内部に回転自在に支持される回転軸16に支持かつ固定されるロータを示している。
なお、本実施形態に係る粉砕装置は、本出願人の出願に係る特許4120981号「機械式粉砕装置」に示す粉砕装置をさらに改良したものである。
【0019】
図6に、本実施形態に係る粉砕装置10の要部である、ケーシング14とその内部に配置されているロータ18の詳細な構成を断面図として模式的に示す。
図6に示すように、ケーシング14内には回転軸16が、この粉砕装置10のベース部材12の取付面(垂直面)に対して平行に、すなわち水平に配設され、ケーシング14の図中左右両側壁面に軸受24aおよび24bを介して支承されている。
【0020】
ここで、ロータ18は5個のロータユニット18aから構成されており、図示されていないキーによって回転軸16に固定され、5個のロータユニット18a1〜18a5を両側から挟持する円形側板26a,26b、および各ロータユニット18a1〜18a5間に挿入されている円形仕切板26cによって一体化されている。図示例では、ロータ18は、その長さ方向に分割された5つのロータユニット18a1〜18a5から構成されているが、これは一例であり、本発明はこれに限定されず、構成するロータユニットの個数に制限がないことはいうまでもない。
【0021】
本実施形態に係る粉砕装置10には、そのケーシング14の図中の左右両側に、粉砕原料(被粉砕物)を供給する原料供給口および粉砕された粉砕製品を排出する製品排出口として使用するための、外部との連通口が、各2つずつ(20c,20dおよび20b,20a)設けられている。なお、これらの連通口20(20a〜20d)の詳細については後述する。
【0022】
そして回転軸16の一端部、図示例では左端部(軸受24a側)は、図示されていないプーリおよび伝動ベルトなどの巻掛伝動機構を介して、モータなどの駆動装置に連結されている。
【0023】
また、図6に示すように、ロータ18の外側には、その外周面と一定の間隙をおくようにしてライナ22が嵌装されており、このロータ18の外周面とライナ22の内周面との間に形成される間隙28が、原料(被粉砕物)の粉砕室となる。なお、ライナ22は、ケーシング14の中央部の円筒胴部内に嵌着固定されている。なお、図6中、矢印aは粉砕装置10内における空気の流れる方向を示している。
【0024】
なお、図6中では、前述の連通口20(20a〜20dのいずれか)が配置されている位置が理解しやすいように、連通口20(20a〜20d)の配置位置中心が回転軸16の中心と同一面上にあるように示しているが、図1を参照すれば明らかなように、連通口20(20a〜20d)は回転軸16の中心ではなく、ロータ18の外周面の接線に対応する位置にその中心が位置するように配置されている。
【0025】
また、ケーシング14の両側端部は、ライナ22(およびロータ18)の両外側端部に適切な大きさの空間が形成されるように、その容積および形状が設定され、図中左側の空間並びに図中右側の空間は、それぞれ、前述の連通口20(20a〜20d:この連通口20a〜20dは、後述するように、原料供給口もしくは製品(粉砕物)排出口)に通じている。なお、製品排出口は、図示しないブロアなどの空気吸引装置によって吸引されており、原料供給口から供給され粉砕された被粉砕物を空気と共に吸引し、装置内で粉砕されて得られた製品を空気と共に製品排出口から排出する。
【0026】
次に、本実施形態に係る粉砕装置10の特徴部分の1つである、ロータ18の外周面およびライナ22の内周面の構造について、図7,図8を用いて詳細に説明する。
【0027】
図7は、本実施形態に係る粉砕装置10におけるロータ18の外周面に形成されている羽根の詳細な形状を示すものである。図7に示すように配置されている5段のロータユニット18a1〜18a5の形状について、以下、矢印aで示されている粉砕装置10内における空気の流れる方向と関連を含めて説明する。
【0028】
上述の空気の流れる方向aの上流側から説明すると、第1段〜第3段のロータユニット18a1〜18a3においては、これらのロータユニットに植設されている羽根は、ロータ18の回転軸16に平行な方向に配置され、かつ、回転軸16に向かうもの(すなわち、ロータ18の中心方向に向かうもの)である。
なお、これらの羽根は、数cmの深さを有する凹みを仕切る形に形成されている。
【0029】
次に、第4段および第5段のロータユニット18a4,18a5においては、これらのロータユニットに植設されている羽根は、上述の第1段〜第3段のロータユニット18a1〜18a3に植設されている羽根とは異なり、回転軸16に平行な方向に対して傾斜した方向(この方向は、回転方向が正転方向(矢印b参照)であるときに、被粉砕物の流れを妨げる方向である)に形成(配置)されている。
【0030】
この第4段および第5段のロータユニット18a4,18a5は、本実施形態に係る粉砕装置10の重要な特徴部分であり、これらが、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜していることで、粉砕効率を効果的に向上させているものである。
【0031】
また、ライナ22の内周面には、図8に示すように、ロータ18の回転軸16に平行な方向に平行な複数の溝32が形成されている。この溝の間隔(ピッチ)については、一例として、4mm〜8mmとするのがよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
なお、図8において、ライナ22は、その6分の1を構成するライナユニットのみが示され、その他の部分は点線でその包絡線が示されているが、ライナ22を構成するライナユニットの数には制限はないし、ライナ22を1個の円管状体で構成してもよいことはいうまでもない。なお、本発明において、回転軸16に平行な方向とは、回転軸16の回転中心16aに平行な方向を意味している。
【0033】
このように構成されている本実施形態に係る粉砕装置10においては、ロータ18の回転方向を変更する(すなわち正転または逆転のいずれを選択する)ことにより、被粉砕物の粉砕状態を変更するためことができる。このように、ロータ18の回転方向を変更する際には、被粉砕物の流れに合わせるように、前述の連通口20(20a〜20d)の使い方、すなわち、20a〜20dのうちのいずれの連通口を原料の供給口とし、それに対していずれの連通口を製品の排出口とするかを選択する必要がある。
【0034】
上述のように、ロータ18の回転方向を変更することに伴って、ロータ18の各ロータユニット、特にロータユニット18a4,18a5による空気の流れに対する抵抗が変化し、被粉砕物の粉砕装置10内における滞留時間が変化することから、排出される粉砕された被粉砕物の粉砕状態に変化が生じ、1台の粉砕装置10でありながら、異なる粉砕状態に粉砕された被粉砕物を得ることが可能な、いわば、ハイブリッドな粉砕装置10を実現できるようになるという効果が得られるものである。
【実施例】
【0035】
以下、図9に基づいて、本実施形態に係る粉砕装置10における連通口の選択、すなわち、連通口20(20a〜20d)のうちのいずれの連通口を原料の供給口とし、それに対していずれの連通口を製品の排出口とするかを選択するかにより、得られる粉砕状態が変化することを実施例として示す。
【0036】
図9(A),(B)に、本実施形態に係る粉砕装置10における連通口の選択方法について、2つの場合を例示した。
図9(A)に示す例(回転方向:正転)は、粉砕装置10におけるロータ18の回転方向が図中の矢印b方向である場合を示しており、この場合、被粉砕物は連通口20cから供給されて、粉砕された後、連通口20bから排出される。
【0037】
また、図9(B)に示す例(回転方向:逆転)は、粉砕装置10におけるロータ18の回転方向が図中の矢印c方向である場合を示しており、この場合、被粉砕物は連通口20dから供給されて、粉砕された後、連通口20aから排出される。
なお、上記いずれの場合も、被粉砕物は粉砕装置10に供給されてから排出されるまでの間、ロータ18の外周面への接線に沿って搬送される。
【0038】
〔実施例1〕
被粉砕物として粒径2mm程度のカーボン粒子を用いて、本実施形態に係る粉砕装置10による粉砕実験を行った結果を、以下に説明する。
粉砕装置10の基準寸法:
ライナ内径:245mm
ロータ外径:242mm
ロータ長さ:220mm
ライナ長さ:255mm
ロータユニット1段の高さ:40mm
【0039】
羽根の幅(奥行き):20mm
羽根の厚さ:6mm
羽根の枚数:24枚
円形仕切板の厚さ:5mm
円形仕切板の外径:228mm
第5段のロータユニットの羽根の傾斜角度:30°
第4段のロータユニットの羽根の傾斜角度:15°
【0040】
ロータを正転・逆転させた場合における、粉砕結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ロータを正転・逆転させた場合に、粉砕結果に極めて大きな差異を生じさせることができる。
同様の結果は、別の原料(被粉砕物)についても得られている。
【0041】
【表1】
【0042】
以下、ロータを正転・逆転させた場合における粉砕処理能力,粒度等について補足的に説明する。
まず、粉砕処理能力については、正回転(正転:矢印b参照)では、ロータ18のロータユニット18a4,18a5が有する傾斜面の作用による抵抗増加により、通常の被粉砕物の場合、供給速度に或る上限値が発生するが、逆回転(逆転:矢印c参照)では、上記ロータユニット18a4,18a5が被粉砕物の排出作用を呈するので、通常、上記上限値の数倍の供給速度が可能となる。
【0043】
次に、粒度についてであるが、正転・逆転で同一回転数とした場合には、逆回転の方が粒径は粗くなる。このため、逆回転は、粗い製品仕様、あるいは粉砕されやすいもの用の用途となる。
なお、逆回転の場合、微粉発生を最小限にすることが可能である。
【0044】
また、逆回転させる場合の利点としては、正回転で回転数を装置の下限まで下げても得られない粒度分布を得られることが挙げられる。
この場合の例としては、前述の装置を用いた場合に、被粉砕物としてのコークスを、D50=50μm,90μmとすることができたという結果も得られている。
【0045】
同様に、逆回転させる場合の利点として、シャープな粗い粒度分布を所望する場合、トータルの回収率を向上させることができる。
具体的には、コークスを粉砕する例では、D50=30μmを目的とする場合に、正回転では回収率が40〜50%であったのに対して、逆回転では75〜85%の回収率が得られている。
【0046】
上記実施例から理解されるように、本実施形態に係る粉砕装置10によれば、ロータの回転方向を変更することにより、1台の粉砕装置10を、全く異なる粉砕結果を得られる装置として使用可能とすることができるようになるという効果を奏する。
【0047】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る粉砕装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定はされず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0048】
例えば、上記実施形態に係る粉砕装置においては、ロータの外周面に、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根を形成した例を示したが、これに代えて、図10に示すような、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した溝を形成したものを用いることも可能である。
【0049】
また、本発明に係る粉砕装置による粉砕対象となる被粉砕物には特に限定はなく、各種の材料(原料)を対象とすることができる。
そして、対象とする被粉砕物の種類に応じて、適切なロータの回転数を選定することにより、所望の粉砕粒度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉砕装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した粉砕装置の正面図である。
【図3】図1に示した粉砕装置の側面図である。
【図4】図3中のA−A断面図である。
【図5】図2中のB−B断面図である。
【図6】図1に示した粉砕装置の要部である、ケーシングとその内部に配置されているロータの詳細な構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図1に示した粉砕装置の特徴部分の1つであるロータの外周面の構造を示す斜視図である。
【図8】図1に示した粉砕装置の特徴部分の1つであるライナの内周面の構造を示す斜視図である。
【図9】図1に示した粉砕装置の特徴部分である4つの連通口の使用方法を説明する図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る粉砕装置に用いられるロータの斜視図である。
【図11】従来技術に係る回転型粉砕装置の模式断面図である。
【図12】図11に示す従来の粉砕装置における回転子およびケーシングのそれぞれ別の構造を示す部分断面図である。
【図13】図11に示す従来の粉砕装置における回転子およびケーシングのそれぞれさらに別の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 (機械式)粉砕装置
12 ベース部材
14 ケーシング
16 回転軸
16a 回転中心(中心線)
18 ロータ
18a1〜18a5 ロータユニット
20,20a〜20d 連通口(原料供給口,製品排出口)
22 ライナ
24a,24b 軸受
26a,26b 円形側板
26c 円形仕切板
28 間隙
32,34 傾斜溝
a 空気流の方向(回転軸に平行な方向)
b ロータの回転方向(正転)
c ロータの回転方向(逆転)
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の製造、特に、乾式の粉砕処理に好適な機械式粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乾式トナーや粉体塗料等の製造においては、最終製品の粒径の調整や、粒度分布の調整のために乾式の機械的粉砕処理がなされており、それに用いる機械式粉砕装置が種々提案されている。
【0003】
従来、このような被粉砕物を微粉砕するための回転型機械式粉砕装置として、特許文献1および特許文献2に記載の微粉砕機が知られている。図12に示すように、この微粉砕機50は、外周面に母線と平行な多数の凹凸部52を周方向に連続させた円筒状の回転子(ロータ)54を回転軸56で支持し、この回転子54の外周面と微小な間隙58をおいて、内周面に母線と平行な多数の凹凸部60を周方向に連続させた円筒状の固定子(ライナ)62を回転子54の外側に嵌装し、その間隙58を粉砕室とするものである。
【0004】
そして、この微粉砕機50においては、回転子54を高速で回転させるとともにケーシング51の図中右上側面部に設けられた製品排出口64から吸引送風機(図示せず)などによって吸引することにより、ケーシング51の図中左下部に設けられた被粉砕物の供給口66から供給された被粉砕物を空気流とともに間隙58からなる粉砕室に送り込み、この時に回転子54および固定子62の凹凸により生じる渦流により効果的にこの凹凸面に衝突させ、あるいは回転子54および固定子62の両凸部間で磨砕することにより、微細粒子とする粉砕処理を行った後、微小間隙から流出した微細粒子を製品排出口64から機外に排出するものである。なお、このような微粉砕機50においては、間隙58からの粗大粒子の流出を防止し、微細粒子のみを流出させるために、固定子62の上端部にその凹凸部60の凹部を塞ぐ分級リング68を設けている。
【0005】
この微粉砕機50においては、粉砕室に相当する間隙58の間隔を1mm以下とし、回転子54を高速回転させることにより、固定子62および回転子54の両凹凸面からこれらの凹部内に定常的に発生する渦流によって被粉砕物が互いに衝突し、剪断力を受けて、微粉砕が効果的に行われ、ミクロンオーダーから10数ミクロンオーダーの比較的粒度分布巾の狭い粉砕物が得られるとされている。
【0006】
このような微粉砕機50では、回転子54の凹凸部52と固定子62の凹凸部60との組み合わせとして、図13(A)、(B)、(C)および(D)に示すものが提案されている。これらの図において、凹凸部52aおよび凹凸部60aは横断面形状が方形状のもので、凹凸部52bおよび凹凸部60bは横断面形状が三角形状のものであるが、これらの組み合わせのうち図13(D)に示す三角形状凹凸部52bおよび凹凸部60bの組み合わせにより、優れた粉砕性能が得られることが知られている。
【0007】
また、特許文献3には、図14(A)および(B)に示すように、上述の微粉砕機50のような回転子54の外周面および固定子(筒体)62の内周面の母線と平行な多数の凹凸部に加え、回転子54の外周面に、および回転子54の外周面と固定子62の内周面に、母線と直交する方向の多数の凹凸部72、および凹凸部72と74を母線の方向に連続して形成した機械式粉砕装置70、および71が提案されている。これらの機械式粉砕装置70および71は、母線と平行な方向とこれに直交する方向の両方向に凹凸部を形成することにより、水平方向に加えて上下方向の渦流を発生させることができ、それにより粉砕機能が向上される結果、粒径が数十ミクロンオーダーの粉砕物が得られるとしている。
【0008】
なお、この他、回転型機械式粉砕装置としては、例えば、特許文献4および特許文献5に記載の各種鉱物、セラミックス、大豆、石、砂利などの堅い材料を粉砕する粉砕装置、特許文献6および特許文献7に記載の複写用カーボンや顔料の微粒子を得るための微粉砕機、特許文献8および特許文献9に記載の数ミクロンオーダーの超微粒子を得るための超微粉砕機および特許文献10に記載の粉砕装置などが知られている。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−105853号公報
【特許文献2】特公平3−15489号公報
【特許文献3】特開平7−155628号公報
【特許文献4】特公平4−12190号公報
【特許文献5】特公平4−12191号公報
【特許文献6】特公昭58−14822号公報
【特許文献7】特公昭58−14823号公報
【特許文献8】特公昭61−36457号公報
【特許文献9】特公昭61−36459号公報
【特許文献10】特開平5−184960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、通常、機械式粉砕装置では、高品質を目指して、より粒径の小さい粉体や粒度の揃った、すなわち粒度分布の幅のシャープな粉体が要求される。
そこで、従来の機械式粉砕装置においては、種々の材料について小粒径の粉砕品を得ようとする場合、種々の材質の被粉砕物、粉砕粒度に個々に対応するような機械式粉砕装置を用意しなければならいという問題があった。
【0011】
しかしながら、技術の進歩とともに、これらの、用いられる被粉砕物の原料となる材料や要求される粉砕粒度は変更されることも多くなり、これらの要求に対応するためには、機械式粉砕装置においても、従来とは異なる材料に対応できること、従来とは異なる粉砕粒度にも対応できることができることが要望されるにいたっている。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、粒径が小さく、しかも粗大粒子の混入がなく、かつシャープな粒度分布幅の粉砕物を高効率で製造することができるばかりでなく、これとは異なる粒径を有する粒子(被粉砕物)の製造にも好適に用いることが可能な、いわばハイブリッドな機械式粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る機械式粉砕装置は、ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする。
【0014】
ここで、本発明に係る機械式粉砕装置においては、前記ライナの内周面に形成されている複数の溝は、前記回転軸に平行な方向の溝であることが好ましい。
【0015】
前記ロータおよび前記ライナの両端縁に対応する位置に2つずつ設けられた計4つの連通口は、前記回転軸の回転方向に応じて、被粉砕物の供給口となるもの、被粉砕物の排出口となるものをそれぞれ1つずつ選定し、これらの2通りの使用パターンを切り換え可能に構成されていることが好ましい。
また、前記ロータの外周面が有する複数段の羽根は、前記ケーシングにおける被粉砕物の移動方向に沿って、1つ以上の前記回転軸に平行な羽根と、これに続く1つ以上の前記被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ある粒径範囲のシャープな粒度分布幅を有する粉砕物を高効率で製造することができるばかりでなく、これとは異なる粒径範囲を有する粒子(被粉砕物)の製造にも好適に用いることが可能な機械式粉砕装置を提供するを実現できるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る機械式粉砕装置を添付の図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態に係る機械式粉砕装置の全体構成を示す斜視図、図2はその正面図、図3は(右)側面図である。また、図4は図3中のA−A断面図、図5は図2中のB−B断面図である。
【0018】
上記各図において、10は本実施形態に係る横型の機械式粉砕装置(以下、単に粉砕装置という)であり、12はそのベース部材であって、本粉砕装置全体を支持する基礎構成部分、14はケーシング、18はこのケーシング14内部に回転自在に支持される回転軸16に支持かつ固定されるロータを示している。
なお、本実施形態に係る粉砕装置は、本出願人の出願に係る特許4120981号「機械式粉砕装置」に示す粉砕装置をさらに改良したものである。
【0019】
図6に、本実施形態に係る粉砕装置10の要部である、ケーシング14とその内部に配置されているロータ18の詳細な構成を断面図として模式的に示す。
図6に示すように、ケーシング14内には回転軸16が、この粉砕装置10のベース部材12の取付面(垂直面)に対して平行に、すなわち水平に配設され、ケーシング14の図中左右両側壁面に軸受24aおよび24bを介して支承されている。
【0020】
ここで、ロータ18は5個のロータユニット18aから構成されており、図示されていないキーによって回転軸16に固定され、5個のロータユニット18a1〜18a5を両側から挟持する円形側板26a,26b、および各ロータユニット18a1〜18a5間に挿入されている円形仕切板26cによって一体化されている。図示例では、ロータ18は、その長さ方向に分割された5つのロータユニット18a1〜18a5から構成されているが、これは一例であり、本発明はこれに限定されず、構成するロータユニットの個数に制限がないことはいうまでもない。
【0021】
本実施形態に係る粉砕装置10には、そのケーシング14の図中の左右両側に、粉砕原料(被粉砕物)を供給する原料供給口および粉砕された粉砕製品を排出する製品排出口として使用するための、外部との連通口が、各2つずつ(20c,20dおよび20b,20a)設けられている。なお、これらの連通口20(20a〜20d)の詳細については後述する。
【0022】
そして回転軸16の一端部、図示例では左端部(軸受24a側)は、図示されていないプーリおよび伝動ベルトなどの巻掛伝動機構を介して、モータなどの駆動装置に連結されている。
【0023】
また、図6に示すように、ロータ18の外側には、その外周面と一定の間隙をおくようにしてライナ22が嵌装されており、このロータ18の外周面とライナ22の内周面との間に形成される間隙28が、原料(被粉砕物)の粉砕室となる。なお、ライナ22は、ケーシング14の中央部の円筒胴部内に嵌着固定されている。なお、図6中、矢印aは粉砕装置10内における空気の流れる方向を示している。
【0024】
なお、図6中では、前述の連通口20(20a〜20dのいずれか)が配置されている位置が理解しやすいように、連通口20(20a〜20d)の配置位置中心が回転軸16の中心と同一面上にあるように示しているが、図1を参照すれば明らかなように、連通口20(20a〜20d)は回転軸16の中心ではなく、ロータ18の外周面の接線に対応する位置にその中心が位置するように配置されている。
【0025】
また、ケーシング14の両側端部は、ライナ22(およびロータ18)の両外側端部に適切な大きさの空間が形成されるように、その容積および形状が設定され、図中左側の空間並びに図中右側の空間は、それぞれ、前述の連通口20(20a〜20d:この連通口20a〜20dは、後述するように、原料供給口もしくは製品(粉砕物)排出口)に通じている。なお、製品排出口は、図示しないブロアなどの空気吸引装置によって吸引されており、原料供給口から供給され粉砕された被粉砕物を空気と共に吸引し、装置内で粉砕されて得られた製品を空気と共に製品排出口から排出する。
【0026】
次に、本実施形態に係る粉砕装置10の特徴部分の1つである、ロータ18の外周面およびライナ22の内周面の構造について、図7,図8を用いて詳細に説明する。
【0027】
図7は、本実施形態に係る粉砕装置10におけるロータ18の外周面に形成されている羽根の詳細な形状を示すものである。図7に示すように配置されている5段のロータユニット18a1〜18a5の形状について、以下、矢印aで示されている粉砕装置10内における空気の流れる方向と関連を含めて説明する。
【0028】
上述の空気の流れる方向aの上流側から説明すると、第1段〜第3段のロータユニット18a1〜18a3においては、これらのロータユニットに植設されている羽根は、ロータ18の回転軸16に平行な方向に配置され、かつ、回転軸16に向かうもの(すなわち、ロータ18の中心方向に向かうもの)である。
なお、これらの羽根は、数cmの深さを有する凹みを仕切る形に形成されている。
【0029】
次に、第4段および第5段のロータユニット18a4,18a5においては、これらのロータユニットに植設されている羽根は、上述の第1段〜第3段のロータユニット18a1〜18a3に植設されている羽根とは異なり、回転軸16に平行な方向に対して傾斜した方向(この方向は、回転方向が正転方向(矢印b参照)であるときに、被粉砕物の流れを妨げる方向である)に形成(配置)されている。
【0030】
この第4段および第5段のロータユニット18a4,18a5は、本実施形態に係る粉砕装置10の重要な特徴部分であり、これらが、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜していることで、粉砕効率を効果的に向上させているものである。
【0031】
また、ライナ22の内周面には、図8に示すように、ロータ18の回転軸16に平行な方向に平行な複数の溝32が形成されている。この溝の間隔(ピッチ)については、一例として、4mm〜8mmとするのがよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
なお、図8において、ライナ22は、その6分の1を構成するライナユニットのみが示され、その他の部分は点線でその包絡線が示されているが、ライナ22を構成するライナユニットの数には制限はないし、ライナ22を1個の円管状体で構成してもよいことはいうまでもない。なお、本発明において、回転軸16に平行な方向とは、回転軸16の回転中心16aに平行な方向を意味している。
【0033】
このように構成されている本実施形態に係る粉砕装置10においては、ロータ18の回転方向を変更する(すなわち正転または逆転のいずれを選択する)ことにより、被粉砕物の粉砕状態を変更するためことができる。このように、ロータ18の回転方向を変更する際には、被粉砕物の流れに合わせるように、前述の連通口20(20a〜20d)の使い方、すなわち、20a〜20dのうちのいずれの連通口を原料の供給口とし、それに対していずれの連通口を製品の排出口とするかを選択する必要がある。
【0034】
上述のように、ロータ18の回転方向を変更することに伴って、ロータ18の各ロータユニット、特にロータユニット18a4,18a5による空気の流れに対する抵抗が変化し、被粉砕物の粉砕装置10内における滞留時間が変化することから、排出される粉砕された被粉砕物の粉砕状態に変化が生じ、1台の粉砕装置10でありながら、異なる粉砕状態に粉砕された被粉砕物を得ることが可能な、いわば、ハイブリッドな粉砕装置10を実現できるようになるという効果が得られるものである。
【実施例】
【0035】
以下、図9に基づいて、本実施形態に係る粉砕装置10における連通口の選択、すなわち、連通口20(20a〜20d)のうちのいずれの連通口を原料の供給口とし、それに対していずれの連通口を製品の排出口とするかを選択するかにより、得られる粉砕状態が変化することを実施例として示す。
【0036】
図9(A),(B)に、本実施形態に係る粉砕装置10における連通口の選択方法について、2つの場合を例示した。
図9(A)に示す例(回転方向:正転)は、粉砕装置10におけるロータ18の回転方向が図中の矢印b方向である場合を示しており、この場合、被粉砕物は連通口20cから供給されて、粉砕された後、連通口20bから排出される。
【0037】
また、図9(B)に示す例(回転方向:逆転)は、粉砕装置10におけるロータ18の回転方向が図中の矢印c方向である場合を示しており、この場合、被粉砕物は連通口20dから供給されて、粉砕された後、連通口20aから排出される。
なお、上記いずれの場合も、被粉砕物は粉砕装置10に供給されてから排出されるまでの間、ロータ18の外周面への接線に沿って搬送される。
【0038】
〔実施例1〕
被粉砕物として粒径2mm程度のカーボン粒子を用いて、本実施形態に係る粉砕装置10による粉砕実験を行った結果を、以下に説明する。
粉砕装置10の基準寸法:
ライナ内径:245mm
ロータ外径:242mm
ロータ長さ:220mm
ライナ長さ:255mm
ロータユニット1段の高さ:40mm
【0039】
羽根の幅(奥行き):20mm
羽根の厚さ:6mm
羽根の枚数:24枚
円形仕切板の厚さ:5mm
円形仕切板の外径:228mm
第5段のロータユニットの羽根の傾斜角度:30°
第4段のロータユニットの羽根の傾斜角度:15°
【0040】
ロータを正転・逆転させた場合における、粉砕結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ロータを正転・逆転させた場合に、粉砕結果に極めて大きな差異を生じさせることができる。
同様の結果は、別の原料(被粉砕物)についても得られている。
【0041】
【表1】
【0042】
以下、ロータを正転・逆転させた場合における粉砕処理能力,粒度等について補足的に説明する。
まず、粉砕処理能力については、正回転(正転:矢印b参照)では、ロータ18のロータユニット18a4,18a5が有する傾斜面の作用による抵抗増加により、通常の被粉砕物の場合、供給速度に或る上限値が発生するが、逆回転(逆転:矢印c参照)では、上記ロータユニット18a4,18a5が被粉砕物の排出作用を呈するので、通常、上記上限値の数倍の供給速度が可能となる。
【0043】
次に、粒度についてであるが、正転・逆転で同一回転数とした場合には、逆回転の方が粒径は粗くなる。このため、逆回転は、粗い製品仕様、あるいは粉砕されやすいもの用の用途となる。
なお、逆回転の場合、微粉発生を最小限にすることが可能である。
【0044】
また、逆回転させる場合の利点としては、正回転で回転数を装置の下限まで下げても得られない粒度分布を得られることが挙げられる。
この場合の例としては、前述の装置を用いた場合に、被粉砕物としてのコークスを、D50=50μm,90μmとすることができたという結果も得られている。
【0045】
同様に、逆回転させる場合の利点として、シャープな粗い粒度分布を所望する場合、トータルの回収率を向上させることができる。
具体的には、コークスを粉砕する例では、D50=30μmを目的とする場合に、正回転では回収率が40〜50%であったのに対して、逆回転では75〜85%の回収率が得られている。
【0046】
上記実施例から理解されるように、本実施形態に係る粉砕装置10によれば、ロータの回転方向を変更することにより、1台の粉砕装置10を、全く異なる粉砕結果を得られる装置として使用可能とすることができるようになるという効果を奏する。
【0047】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る粉砕装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定はされず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0048】
例えば、上記実施形態に係る粉砕装置においては、ロータの外周面に、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根を形成した例を示したが、これに代えて、図10に示すような、被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した溝を形成したものを用いることも可能である。
【0049】
また、本発明に係る粉砕装置による粉砕対象となる被粉砕物には特に限定はなく、各種の材料(原料)を対象とすることができる。
そして、対象とする被粉砕物の種類に応じて、適切なロータの回転数を選定することにより、所望の粉砕粒度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉砕装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した粉砕装置の正面図である。
【図3】図1に示した粉砕装置の側面図である。
【図4】図3中のA−A断面図である。
【図5】図2中のB−B断面図である。
【図6】図1に示した粉砕装置の要部である、ケーシングとその内部に配置されているロータの詳細な構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図1に示した粉砕装置の特徴部分の1つであるロータの外周面の構造を示す斜視図である。
【図8】図1に示した粉砕装置の特徴部分の1つであるライナの内周面の構造を示す斜視図である。
【図9】図1に示した粉砕装置の特徴部分である4つの連通口の使用方法を説明する図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る粉砕装置に用いられるロータの斜視図である。
【図11】従来技術に係る回転型粉砕装置の模式断面図である。
【図12】図11に示す従来の粉砕装置における回転子およびケーシングのそれぞれ別の構造を示す部分断面図である。
【図13】図11に示す従来の粉砕装置における回転子およびケーシングのそれぞれさらに別の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 (機械式)粉砕装置
12 ベース部材
14 ケーシング
16 回転軸
16a 回転中心(中心線)
18 ロータ
18a1〜18a5 ロータユニット
20,20a〜20d 連通口(原料供給口,製品排出口)
22 ライナ
24a,24b 軸受
26a,26b 円形側板
26c 円形仕切板
28 間隙
32,34 傾斜溝
a 空気流の方向(回転軸に平行な方向)
b ロータの回転方向(正転)
c ロータの回転方向(逆転)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、
前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、
前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする機械式粉砕装置。
【請求項2】
前記ライナの内周面に形成されている複数の溝は、前記回転軸に平行な方向の溝であることを特徴とする請求項1に記載の機械式粉砕装置。
【請求項3】
前記ロータおよび前記ライナの両端縁に対応する位置に2つずつ設けられた計4つの連通口は、前記回転軸の回転方向に応じて、被粉砕物の供給口となるもの、被粉砕物の排出口となるものをそれぞれ1つずつ選定し、これらの2通りの使用パターンを切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機械式粉砕装置。
【請求項4】
前記ロータの外周面が有する複数段の羽根は、前記ケーシングにおける被粉砕物の移動方向に沿って、1つ以上の前記回転軸に平行な羽根と、これに続く少なくとも1つ以上の前記被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機械式粉砕装置。
【請求項1】
ケーシング内に、回転軸に支持され、外周面に複数の羽根を有するロータと、このロータの外側に、このロータの外周面と所望の間隙を設けて配置され、その内周面に複数の溝が形成されたライナとを備え、前記間隙で被粉砕物を粉砕処理する機械式粉砕装置であって、
前記ロータが有する複数の羽根は、前記回転軸に沿う方向に複数段に配置されており、その少なくとも1段の羽根が被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜しており、
前記ケーシングの前記ライナの両端縁に対応する位置に、被粉砕物の供給口もしくは排出口となる連通口を2つずつ設けたことを特徴とする機械式粉砕装置。
【請求項2】
前記ライナの内周面に形成されている複数の溝は、前記回転軸に平行な方向の溝であることを特徴とする請求項1に記載の機械式粉砕装置。
【請求項3】
前記ロータおよび前記ライナの両端縁に対応する位置に2つずつ設けられた計4つの連通口は、前記回転軸の回転方向に応じて、被粉砕物の供給口となるもの、被粉砕物の排出口となるものをそれぞれ1つずつ選定し、これらの2通りの使用パターンを切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の機械式粉砕装置。
【請求項4】
前記ロータの外周面が有する複数段の羽根は、前記ケーシングにおける被粉砕物の移動方向に沿って、1つ以上の前記回転軸に平行な羽根と、これに続く少なくとも1つ以上の前記被粉砕物の流れを妨げる方向に傾斜した羽根とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機械式粉砕装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−99641(P2010−99641A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276102(P2008−276102)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000226954)日清エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000226954)日清エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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