説明

機械的ワークを断層撮影法によって測定するための方法

本方法は機械的ワーク(10)を断層撮影法によって測定するのに役立つ。本方法では前記ワーク(10)と前記ワーク(10)を透過する放射線(24)とが徐々に相対移動される。前記ワーク(10)と前記放射線(24)との相互作用から前記ワーク(10、10’)の各移動位置において前記ワーク(10、10’)の2次元像(50、50’)が結像平面に生成され、前記2次元像(50、50’)から前記ワーク(10)の3次元実像が算出される。前記ワーク(10、10’)の内部に存在する規則的な実構造体(12、12’)の、2つの異なる移動位置において生成される少なくとも2つの前記2次元像(50、50’)から前記2次元像(50、50’)内の高コントラストの移行部で点(52a、52a’、52b、52b’、52c、52c’)が検出され、前記点(52a、52a’、52b、52b’、52c、52c’)の位置から3次元等価体(64)が判定され、前記等価体が所定の公称構造体と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的ワークを断層撮影法によって測定するための方法であって、ワークとこのワークを透過する放射線とが徐々に相対移動され、ワークと放射線との相互作用からワークの各移動位置においてワークの2次元像が結像平面に生成され、この2次元像からワークの3次元実像が算出されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に指摘した種類の方法が特許文献1により公知である。
【0003】
特に高品質な機械的ワークを製造する場合、あらかじめ定められた特定のワーク測定点が同様にあらかじめ定められた公差内で所定の寸法を遵守しているか否かを点検するために、製造後もしくは加工後またはそれらの間においてもワークを測定する必要がある。この目的のために、従来から使用されているマルチ座標測定機はワークをタッチプローブでスキャンし、こうしてワーク表面の寸法精度を点検している。
【0004】
これに対する代案として、機械的ワークを測定するため数年来利用されている測定法は、まず医学において人体を検査するためのイメージング法、つまりコンピュータ断層撮影法として利用されているものである。医学応用の場合、検査すべき人体または人体領域がX線放射線源の線形アレイによって1平面において透射される。このアレイに人体の反対側でX線検出器の当該アレイが対向している。このアレイ対は、つぎにこの平面に垂直な軸の周りで或る角度ステップだけ回転され、さらなる撮影が行われる。このアレイを徐々に計360°回転させた後、特有の撮影からこの平面における横断面画像が算出され、この横断面画像はこの平面における密度分布を再現することになる。引き続き、人体とアレイ対を軸上で或る線形ステップだけ相対移動させると、直接的に隣接する他の横断面画像を生成し、このような隣接した多数の横断面画像から人体もしくは人体領域の3次元像を生成することができる。この測定法は、比較的手間がかかる。なぜならば、人体は広い範囲内で密度が変化する極めて複雑な密度分布を有しており、撮影すべき構造体は著しく多様であり、予見不可能な種類および形姿のものがあるからである。
【0005】
それに対し、品質管理におけるワークは、普通単に2つの密度、つまりワークの素材密度と空気密度とを有する物体である。さらに、品質管理で検査すべき構造体が既知であり、単に偏差が検出されるだけである。
【0006】
冒頭に指摘した特許文献1には、ワークを検査するための医学応用と比べて簡素化されたコンピュータ断層撮影法が述べられている。この方法では、機械的ワークが点状X線放射線源と平面的検出器アレイとの間にある回転テーブル上にある。回転テーブルの回転軸は放射方向に対して実質垂直に延びている。ワークをX線放射線が透過し、検出器アレイ上にワークの陰影画像が生じている。ワークはつぎに回転テーブル上で順次、例えば800回または1200回、或る角度ステップだけ回転され、さらなる陰影画像が生成される。多数の陰影画像からつぎにワークの3次元像が、例えば特許文献2に述べられたような逆投影法によって算出される。
【0007】
その後、この種のコンピュータ断層撮影法測定装置が商業的にも、例えば本出願人から型式名称「Metrotom」(www.zeiss.de/imt)として製造し提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005039422号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3924066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
公知の測定装置では、いわゆる「再構成」が実行される。すなわち、測定対象(機械的ワーク)内部の密度分布の完全3次元像は、所定分解能のボリューム要素(ボクセル)で算出される。これをワーク測定にとって十分な精度で行えるようにするためには多数の個別の画像が必要であり、実際には回転テーブルの1°から1/3°の角度ステップに応じて360枚から1080枚の個別の画像が必要である。しかしながら、回転ステップ毎に、回転テーブルを静止位置から加速し移動させ、再び制動して停止させるために一定の時間が必要となる。さらに、3次元像の計算用にこの計算を既に測定実行中に開始できるとしても一定の時間が必要となり、現在知られている測定装置では完全な測定のために15分から30分の時間が結局必要となっている。この測定時間は多くの場合受け入れることができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記の諸欠点を防止した、冒頭に指摘した種類の方法を明示することである。特に、著しく短い総測定時間を必要とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
冒頭に指摘した種類の方法において、本発明の実施の形態によれば、2つの異なる移動位置において生成される、ワーク内部に存在する規則的な実構造体を示す少なくとも2つの2次元像から、2次元像内の高コントラストの移行部で点が検出され、これらの点の位置から3次元等価体が判定され、この等価体が所定の公称構造体と比較されることによって、上記の課題は解決される。
【0012】
本発明の根底にある課題がこうして完全に解決される。
【0013】
つまり本発明者の功績は、機械的ワーク内の特定構造体(穴、溝等)の形状の規則性が、医学における自然物とは異なり、該構造体の規則性を念頭に置いて、比較的僅かな測定点からこの構造体の像を作成することによって、総測定時間を劇的に減らすのに利用できることを認識したことである。つまり、ごく少数の要素、好ましくは回転対称要素が、断層撮影法もしくは複数の方向からの2次元投影を使った別の方法によって、校正済み撮影装置内で測定され、幾何学的等価体によってパラメータ化されることになる。この処理方式は先行技術による従来の方法とは異なっている。なぜならば、そこでは密度分布全体の再構成がボクセルマトリックス内で行われるからである。
【0014】
それゆえに、本発明が利用するのは、再構成ボリューム内で検査されるべき要素の大部分が、規則的、特に回転対称であり、それゆえに、これらの要素が単一の投影の中の鮮明で高コントラストの物体境界を伴って結像されるという事実である。この物体境界は画像処理手法を頼りに、例えば好適なエッジ認識で単一の投影から抽出することができる。さまざまな既知の方位で複数の投影が撮影されたならば、3次元要素の位置、軸の方向およびその他の形状パラメータ、例えば半径または円錐角度を、これらの投影から求めることができる。
【0015】
本発明に係る方法では、従来のようにCTスキャンの全投影画像を完全に撮影する必要はない。基本的には、検査されるべき3次元構造体のパラメータは、2つの投影のみから近似的に求めることができる。
【0016】
本発明によれば、かなりの演算時間を要する、従来必要であった全ボクセルマトリックスのCT再構成は行われることはない。最初の実験から判明したように、総測定時間はこうして従来の15分乃至30分から1分未満にまで減らすことができる。
【0017】
本発明の好ましい1つの実施例では、規則的公称構造体が回転対称構造体、特に球体、円筒体または円錐体である。
【0018】
本発明に係る方法の好ましい1つの構成では、放射線源と結像平面とが相対移動用として空間的に固定されており、ワークは所定の角度ステップで回転軸の周りを回転する。
【0019】
この測定方法の利点として、測定装置に関して確立された構成部品を頼りとすることができる。
【0020】
その他の実施の形態では、球形公称構造体の場合、等価体の中心点の座標と半径とが求められる。
【0021】
この測定方法の利点として、等価体の粗推定は、最小のパラメータで、すなわち最小限の努力で可能となる。
【0022】
上記の2つの実施の形態の場合、特別好ましい1つの構成としては、等価体の中心点の位置を求めるために、
a)ワークの第1移動位置において実構造体の円形2次元像の境界で少なくとも3つの点の座標を求める;
b)3つの点の座標から円形像の第1中心点を求める;
c)一方のワークと他方の放射線源および結像平面とを相対的に所定の角度ステップだけワークの第1移動位置から第2移動位置へと回転させる;
d)ワークの第2移動位置において実構造体の移動した円形2次元像の境界で少なくとも3つの点の座標を求める;
e)3つの点の座標から、移動した円形像の第2中心点を求める;
f)放射線源と第1、第2中心点との間の2つの中心ビームを求める;
g)中心ビーム間の最小距離の位置を求める;
h)最小距離の位置で中心ビームの間に結合垂線を下ろす;
i)結合垂線の中心点の座標を等価体の中心点の位置として求める
以上のステップで処理することを特徴としている。
【0023】
これを補足して、特に好ましくは、等価体の半径(R)を求めるために、
j)放射線源と円形像の中心点との間の第1距離を求める;
k)放射線源と実構造体の中心点との間の第2距離を求める;
l)円形像の半径に対し第2距離と第1距離との商を乗ずる
以上のステップで処理される。
【0024】
この測定方法の利点として、球形構造体の前記の若干数のパラメータは僅かな操作で判定することができる。
【0025】
上記の実施の形態の1つの構成では、ステップa)で求められた多数の点に関して、放射線源と点との間の結合ビームが像を生成する実構造体の境界に接することになる接線点が判定され、初期値として等価体の中心点の位置と半径とに関して、ステップi)、l)で求められた値を使用した点によって形成された点群に、等価体がフィットされる。
【0026】
この測定方法は、フィットの精度を著しく高めることができる利点を有する。
【0027】
また、このことは、ワークの異なる回転位置において求められた接線点で点群が形成される場合にも該当する。
【0028】
その他の利点は明細書および添付図面から明らかとなる。
【0029】
なお、自明のことではあるが、前記の特徴および以下でなお説明する特徴は、その都度記載した組合せにおいてだけでなく、別の組合せや単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく用いることができる。
【0030】
本発明の実施例が図面に示してあり、以下の明細書で詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本発明に係る方法で測定することのできる機械的ワークを3つの直交図で示した図面である。
【図1B】本発明に係る方法で測定することのできる機械的ワークを3つの直交図で示した図面である。
【図1C】本発明に係る方法で測定することのできる機械的ワークを3つの直交図で示した図面である。
【図2A】本発明に係る方法を実施するための測定装置を側面図と平面図とで示した略図である。
【図2B】本発明に係る方法を実施するための測定装置を側面図と平面図とで示した略図である。
【図3A】図2A‐Bの測定装置をワークの第1回転位置とワークの第2回転位置とで示した斜視図である。
【図3B】図2A‐Bの測定装置をワークの第1回転位置とワークの第2回転位置とで示した斜視図である。
【図3C】円の方程式を説明するための図である。
【図4】初期パラメータの求め方を説明するための図である。
【図5】等価体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1Aから図1Cには、全体に符号10としたワークの3つの相直交する図が示されている。ワーク10は図示した単純な例において直方体である。ワーク10は均質と仮定される公知の素材から成っており、つまり密度の変化を有していない。
【0033】
ワーク10は、図示の実施例において球形の内部構造体12を有しており、符号Kが構造体の中心点であり、Rが半径である。この構造体12は、残りのワーク10と比較して別の特性、とりわけ別の密度を有しており、図示の例ではワーク10内の空気が充填された球形の空洞とすることができる。
【0034】
構造体12は、任意の製造プロセスでワーク10の内部に生成された実構造体である。それゆえに、構造体12は、実際上においてその位置の点でもその形状の点でも設計者によってあらかじめ設定されており、例えばCADファイルに保存された公称構造体と厳密には一致していない。本方法の目的は、実構造体12がこの所望の輪郭からどの程度相違しているのかを確認することである。この目的のために、実構造体12は測定され、最適にフィットされた等価体に極力近似させられる。つぎに、等価体の特徴的なデータ、つまり図示の実施例においてワーク10内の中心点Kの位置と半径Rとは、公称構造体の設計上において設定されたデータと比較される。この比較から、ワーク10が構造体に関して所定公差内にあるか否かが導き出される。
【0035】
ワークと内部構造体とは当然に別の形状を有することもできる。ワークは、主に任意形状の機械または機器の部材であり、この部材の内部および/または表面にある構造体は、実質規則的な幾何学的形状、例えば円筒形状、円錐形状、放物線形状、螺線形状、およびその他の規則的形状となっている。用語「規則的」とは、本応用にとってその演算時間の消費の点で許容できるような手法でその形状が数学的に判定できることと理解すべきである。
【0036】
図2A‐Bと図3A‐Bとはワーク10をどのように断層撮影法によって測定するのかを示している。
【0037】
この目的のために、ワーク10が測定装置20に配置される。測定装置20は点状の放射線源22を含み、この放射線源は、主にX線源として形成されており、ワーク10を側方から照射している。放射線源22は、空間に固定配置されており、円錐形の放射線24を放射している。放射線24はワーク10を透過しており、ワーク10の後方に配置された検出器アレイ28の円形領域26に投射されている。
【0038】
ここで理解すべきこととして、点状のX線放射線源22はここでは単なる例と理解すべきである。本発明の範囲内で別の放射線源、例えば放射線源の直線アレイも当然に利用することができる。さらに、別の画像検査法、例えばNMR断層撮影法を利用することも可能である。
【0039】
検出器アレイ28は、平坦であって、辺29aから29dを有する長方形状、主に正方形状に形成されており、互いに隣接して配置された多数の検出器30を1つの面上に有している。図示の実施例において、検出器30は、その分解能が512×512画素であり、その画素間隔が0.1mmである。しかしながら、自明のことではあるが、別の分解能も利用することができる。符号Dは、検出器アレイ28の中心点である。
【0040】
ワーク10は、測定中において、回転テーブル40上に配置されており、好ましくは回転テーブル40の表面42上に載置されている。回転テーブル40は、好ましくは表面42に対して垂直に延びる回転軸44の周りを回転可能である。回転テーブル40が回転軸44の周りを矢印46の方向に回転すると、ワーク10は対応する回転角度φだけ回転することになる。図3Bでは、この回転によって移動する要素の符号に対してアポストロフィが付されている。
【0041】
ここで、自明なことであるが、放射線源22および検出器アレイ28の空間固定配置とワーク10の回転可能な配置とはやはり単なる例と理解すべきであり、本発明を限定するものでない。一方で、逆運動学的にワークを固定し、放射線源を検出器アレイと共に回転させることもできる。さらに、放射線源を固定し、方向変化に伴って放射線のみを偏向させることができる。最後に、回転移動の代わりに別の移動を選択することもできる。
【0042】
放射線源22と検出器アレイ28の中心点Dとは、測定装置20の空間固定座標系x、y、zにおけるy軸を規定する結合線53によって互いに結合されている。空間固定座標系x、y、zの原点47は、回転テーブル40の内部で回転軸44上に配置されている。z軸は、回転軸44と一致している。図示の実施例では、原点47は見やすくする目的からワーク10の中心点Mと一致している。
【0043】
検出器アレイ28は、空間固定座標系x、y、zに対して相対的にその表面がx‐z平面と平行な1平面を延びるように、辺29a、29cがx軸と平行に延びるように、および辺29b、29dがz軸と平行に延びるように、配置されている。
【0044】
図示の実施例では、回転デーブル40上のワーク10の中心点M、もしくは空間固定座標系x、y、zの原点47は、同時に回転座標系x、y、zの座標原点でもあり、z軸とz軸とが一致している。x軸とy軸とは、図2Bにx*’、y*’で示したようにx軸、y軸に対して相対的に回転する。球形構造体12の中心点Kは、回転座標系x、y、z内で、図1Aから図1Cに示す位置x、y、zに配置されている。
【0045】
ワーク10を放射線源22で照射することによって、検出器アレイ28上には、球形構造体12の円形2次元像50の態様で、ワーク10の球形構造体12の陰影投影が得られている。ワーク10を回転軸44(z軸)の周りで或る角度ステップだけ回転させるとすると、検出器アレイ28上での像の位置は、図3Bで回転角度φ=90°について例示したように50から50’へと変化する。
【0046】
以下で説明するように、像50、50’の境界にある少なくとも3つの測定点52a‐52c、52a’‐52c’を用いることによって、さまざまな角度φで撮影された多数の像50、50’…から、球形構造体12の位置および寸法、従ってワーク10の対象領域が再構成される。
【0047】
第1ステップでは、中心点K、すなわち空間固定座標系x、y、zに関して球形構造体12の位置と、構造体12の半径Rとが求められる。なお、この目的のため、測定点52a‐52c、52a’‐52c’が検出される。公知の画像処理法もしくは画像分析法によって球形投影の境界、すなわち像50、50’の境界が検出され、好適な数の測定点に変換される。簡略化のために、これらの測定点から主に概ね等間隔で像の周面に分布した3つの点が選択される。
【0048】
一般的には、これらの点は、像50、50’内の高コントラストの移行部で検出され、これらの移行部は検査すべき構造体の結像境界およびエッジに一致させることができる。
【0049】
球形構造体12の中心点Kの位置と半径Rとを求めるために、像50、50’それぞれの3つの測定点52a‐52c、52a’‐52c’の座標から図3Cに示した既知の円の方程式を用いて、像50、50’の各円の中心点M、M’と円半径R、R’との座標x、zが求められる。
【0050】
(x−x+(z‐z=R
つぎに、点状の放射線源22から像50、50’の中心点M、M’に至る中心ビーム54、54’が求められる。つぎに、回転テーブル40が回転移動するのを補償するために、放射線源22と中心点M’とを回転軸44の周りで−φだけ計算上逆回転させることによって、中心ビーム54’は角度ステップφだけ逆回転される。
【0051】
理想的な場合、空間的に一致した2つの中心ビームがこうして得られるであろう。しかしながら、高精密なガイドおよび調整システムであるにもかかわらず、実際には不可避的な残留誤差が生じ、2つの一致した直線ではなく、2つの歪んだ直線が計算結果として得られることになる。つぎに、これら両方の直線上で、直線間の距離が最小となる点が求められる。つぎに、これらの点の間に結合垂線が引かれる。その場合、両方の点の間の結合垂線上の区間の中心点は、x、y座標系の中心点Kの位置に関する最良の近似と見なされる。
【0052】
つぎに、図4に示したように、切片の定理を用いて構造体12の半径Rが求められる。その際に、像50の中心点Mから放射線源22までの距離と構造体12の中心点Kから放射線源22までの距離との比が、像50の半径Rと構造体12の半径Rとの比に等しいという事実が利用される。
【0053】
こうして、球形等価体の初期値、つまり中心点Kの位置と半径Rとが設定される。従って、検出器アレイ28上でのワーク10の異なる投影で2つの測定のみから得られる、これらの値から、等価体は位置および形状に関して近似的に判定することができる。
【0054】
図4からさらに認められるように、放射線源22から像50の境界上の1点52に至る各接線ビーム58は、接線点60において構造体12に接している。中心点Kと接線点60との間の区間、つまり半径Rは接線ビーム58に垂直である。
【0055】
この接線条件は、周面に沿って構造体12を掠める各接線ビーム58について関連した接線点60を求めるのに援用することができる。こうして求められた接線点60は、つぎに最良フィット計算(例えば最小二乗フィット)に利用することができる。
【0056】
その際、方程式系を介して、好ましくは特有の接線点の位置において接線点の条件付き方程式の中の導関数を計算することによって、接線点と等価体との間の直交距離と合せて等価体のパラメータの改善セットが計算される。公知の最小二乗フィット法を利用することができるが、しかし別の方法(外接フィット、内接フィット、チェビシェフフィット)も利用することができる。等価体の各パラメータの改善後に接線点が新たに判定される。最適化は、改善が所定残留値を下回るまで反復して実行される。こうして最適な等価体が判定され、接線点と等価体との残留距離は3D測定技術において一般的なように例えば形状偏差の分析に利用することができる。この方法は当業者にとって公知である。
【0057】
既に上記で触れたように、いまや、最適化された等価体の特徴的データ、つまり図示した実施例において、ワーク10内の中心点Kの位置と半径Rとは公称構造体の設計上において設定されたデータと比較される。この比較から良否判定が導き出され、すなわちワーク10が構造体に関して所定公差内にあるか否かが確認される。
【0058】
ワーク10の複数の投影もしくは回転位置φ、例えば6または36の投影で接線点60を求めることによって、精度はさらに高めることができる。つぎに、複数の投影のすべての接線点60に最良フィット法が応用される。
【0059】
このため図5は、異なる角度での6つの投影によって接線点60にフィットされた球形構造体用の最適化された等価体64の例を示す。
【0060】
最良フィット法による近似の代わりに、外接近似、内接近似またはチェビシェフ近似を用いたとしても、等価体を求めることができる。
【0061】
球形等価体について述べた最良フィット法は、やはり既に触れたように、構造体12が円筒形もしくは円錐形であるとき、円筒形または円錐形等価体用にも利用することができる。円筒体の判定すべき初期パラメータは、円筒体の半径と円筒体の軸の向きとである。補償円錐体の場合、初期パラメータは、円錐体の頂角、円錐体の軸の向き、及び円錐体の頂点位置である。
【符号の説明】
【0062】
10 ワーク
12、12’ 球形構造体
20 測定装置
22 点状放射線源
24 円錐形放射線
26 円形領域
28 検出器アレイ
29a、b、c、d 28の辺
30 検出器
40 回転テーブル
42 表面
44 回転軸
46 矢印
47 x、y、z座標系およびx、y、z座標系の原点
50、50’ 12の2次元像
52a、b、c、52a’、b’、c’ 50、50’の境界上の点
53 結合線22‐D
54、54’ 中心ビーム
58 接線ビーム
60 接線点
64 等価体
D 検出器アレイ28の中心点
K 構造体12の中心点
等価体の中心点
M ワーク10の幾何学的中心点
、M’ 50、50’の中心点
R 構造体12の半径
等価体の半径
、R’ 50、50’の半径
x、y、z 空間固定座標系の座標
、y、z 空間固定座標系の座標
、y、z 回転座標系内の中心点Kの座標
50、50’の円中心点M、M’のx座標
50、50’の円中心点M、M’のz座標
φ 44の周りの回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的ワーク(10)を断層撮影法によって測定するための方法において、前記ワーク(10)と前記ワーク(10)を透過する放射線(24)とが徐々に相対移動され、前記ワーク(10)と前記放射線(24)との相互作用から前記ワーク(10、10’)のそれぞれの移動位置において前記ワーク(10、10’)の2次元像(50、50’)が結像平面に生成され、前記2次元像(50、50’)から前記ワーク(10)の3次元実像が算出される方法であって、
前記ワーク(10、10’)の内部に存在する規則的な実構造体(12、12’)を示している、2つの異なる移動位置において生成された少なくとも2つの前記2次元像(50、50’)から、前記2次元像(50、50’)内の高コントラストの移行部において点(52a、52a’、52b、52b’、52c、52c’)が記録され、
前記点(52a、52a’、52b、52b’、52c、52c’)の位置から3次元等価体(64)が判定され、
前記等価体が所定の公称構造体と比較されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記公称構造体(12)が回転対称構造体であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記公称構造体(12)が球体であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記公称構造体が円筒体であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記公称構造体が円錐体であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記放射線源(22)と前記結像平面とが前記相対移動用に空間的に固定されており、前記ワーク(10)が所定の角度ステップ(φ)で回転軸(44)の周りを回転することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
球形公称構造体の場合、前記等価体(64)の中心点(K)の座標と半径(R)とを求めることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記等価体(64)の前記中心点(K)の位置を求めるために、
a)前記ワーク(10)の第1移動位置において前記実構造体(12)の前記円形2次元像(50)の境界で少なくとも3つの点(52a、52b、52c)の座標を求める;
b)前記3つの点(52a、52b、52c)の座標から前記円形像(50)の第1中心点(M)を求める;
c)一方の前記ワーク(10)と他方の前記放射線源(22)および前記結像平面とを相対的に所定の角度ステップ(φ)だけ前記ワーク(10)の前記第1移動位置から第2移動位置へと回転させる;
d)前記ワーク(10)の前記第2移動位置において前記実構造体(12)の移動した前記円形2次元像(50’)の境界で少なくとも3つの点(52a’、52b’、52c’)の座標を求める;
e)前記3つの点(52a’、52b’、52c’)の座標から、移動した前記円形像(50’)の第2中心点(M’)を求める;
f)前記放射線源(22)と前記第1、第2中心点(M、M’)との間で2つの中心ビーム(54、54’)を求める;
g)前記中心ビーム(54、54’)間の最小距離の位置を求める;
h)前記最小距離の位置で前記中心ビーム(54、54’)の間に結合垂線を下ろす;
i)前記結合垂線の前記中心点の座標を前記等価体(64)の前記中心点(K)の位置として求める
以上のステップで処理することを特徴とする、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記等価体(64)の前記半径(R)を求めるために、
j)前記放射線源(22)と前記円形像(50)の前記中心点(M)との間の第1距離を求める;
k)前記放射線源(22)と前記実構造体(12)の前記中心点(K)との間の第2距離を求める;
l)前記円形像(50)の前記半径(R)に前記第2距離と前記第1距離との商を乗ずる
以上のステップで処理することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ステップa)で求めた多数の点(52a、52b、52c)に関して、前記放射線源(22)と前記点(52a、52b、52c)との間の結合ビームが前記像(50)を生成する前記実構造体(12)の境界に接することになる接線点(60)が判定され、
前記等価体(64)の前記中心点(K)の位置と前記半径(R)とに関して、ステップi)、l)で求めた値を初期値として有する、前記点(60)で形成された点群に前記等価体(64)がフィットされることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ワーク(10)の異なる回転位置において求めた接線点(60)から、前記点群が形成されることを特徴とする、請求項10記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516870(P2011−516870A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503361(P2011−503361)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002331
【国際公開番号】WO2009/124676
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(509052067)カール ザイス インダストリエル メステクニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】