説明

機械的合成による熱電材料の製造方法

本発明は、立方晶構造を有する、結晶性合金から主に構成される熱電素子の製造方法であり、その合金は、遷移金属から選択される少なくとも一つの第一の元素を有する第一の構成要素と、周期表の14、15または16族から選択される少なくとも一つの第二の元素を有する第二の構成要素と、希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択される少なくとも一つの第三の元素を有する第三の構成要素とを備えている。方法は、機械的合成によるナノ粉末の形状での合金の製造を含んでいる。本発明は、本方法の実施によって得られた熱電素子にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクッテルド鉱系の熱電材料の分野およびそのような材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電材料に現在実施されている実験ならびに、新たな熱電材料または材料の新たな構造の研究は、主に該熱電材料の効率を向上させることを目的とする。
【0003】
このように、熱の電力への変換に使用されている熱電材料の効率は、さらにはZTと表記されるメリット係数によって算定することが可能である。この係数は、材料の熱起電力、導電率および熱伝導率の逆数が大きくなる時、大きくなる。
【0004】
一般式MX3+Xの、真空または二元スクッテルド鉱は結晶性物質であり、x∈[−0.2;0.2]のとき該結晶性物質の熱起電力が強いという事実から、十分に大きいメリット係数を示しており、これにおいて、Mは周期表の第4、第5または第6周期の金属であり、Xは周期表14、15または16族の元素である。
【0005】
二元スックテルド鋼は、中心に置かれた立方晶構造(空間Im3の群)内で結晶化し、M原子は結晶学的位置8c(1/4 1/4 1/4)を占め、X原子は位置24g(0、y、z)を占める。
【0006】
単純化された一般式(R1−tR’M’4−xX’12−zの充填されたまたは部分的に充填されたスクッテルド鉱は、最近熱電応用に最も推奨されている材料の一つであり、《y》∈[0;1]、《x》∈[0;4]、《Z》∈[0;12]であるとき、実際、該材料は二元スクッテルド鉱よりもさらに大きなメリット係数を示すことができるものであり、これにおいて、MおよびM’は周期表の第4、第5または第6周期の金属であり、XおよびX’は周期表14、15または16族の元素であり、RおよびR’は陽性元素または陽性元素の混合物である(すなわち、周期表のアルカリ、アルカリ土類、希土類およびアクチノイドのから選択される、1〜4の間に含まれる原子価の元素)。充填されたスクッテルド鉱が、元素R、MおよびXの数が制限されない限りより複雑な一般式を有することが可能であることは留意すべきことである。そのとき、該一般式は、(R,R’,…R(M,M’,…M(X,X’,…X12と記すことが可能であり、これにおいてn、m、pは整数である。
【0007】
R原子の存在によって、真空または二元スクッテルド鉱の、充填された、または部分的に充填されたスクッテルド鉱を区別する。また、多くの場合、半導体または半金属の性質を保持するような仕方で複数のM原子を価電子数を調節するのに適したM’原子で置換することが好ましい。大きなケージの中心、位置2a(0、0、0)に位置づけられたR原子は、その平衡位置の周囲で、格子の振動とは別に振動することができる。
【0008】
従って、フォノンの熱伝導率への寄与は減少し、このことは、必ずしも導電率を小さくすることをしなくとも、メリット係数を大きくすることを可能にする。
【0009】
従って、式(R1−tR’4−xM’12の充填された、または部分的に充填されたスクッテルド鉱で観察されたフォノンの熱伝導率への寄与は、最も少なかった。
【0010】
このように、充填されたスクッテルド鉱は高いメリット係数(400℃付近のZT〜1)を示し、それらのスクッテルド鉱はn型(電子による伝導)またはp型(正孔による伝導)である。
【0011】
次に、粉末が単結晶または多結晶の粒子で構成されていると見なす。
【0012】
また、材料の粒子サイズが小さくなったときに、メリット係数を大きくすることができるが、それは特にナノ結晶性物質の粒子の場合であり、この場合そのサイズはおよそ数百ナノメートルかそれ未満である。実際、物質の粒子サイズを小さくすると同時に、フォノンの平均自由行路を制限し、それによって、それらの熱伝導率への寄与が減少される。
【0013】
しかしながら、スクッテルド鉱の物質の粒子サイズの縮小は、特にスクッテルド鉱が充填されているかまたは擬似充填されている場合、この材料が示す熱力学的不安定性によって制限される。
【0014】
粉末状のスクッテルド鉱の、既知の第一の従来の製造方法は、まず、溶融によって合成し、次に長時間焼きなましを実施し、その後、粉砕することからなる。従って、その製造は極めて時間がかかり(一日から数日間)、特に焼きなましのときエネルギーの点からコストがかかる。
【0015】
ナノ結晶状態のスクッテルド鉱の、既知の第二の従来の製造方法は、化学溶液によるスクッテルド鉱の合成である。
【0016】
そのため、第一の技術は、電気化学的処理によるCoSbのナノ糸を製造することからなる。しかしながら、この第一の技術は、後に焼きなましを必要とする。
【0017】
第二の技術は、水温処理、その後、焼きなましによってNaFe12のナノ糸を製造することからなる。ナノ糸にニッケルまたはテルルを包含または添加することもまた試みられた。
【0018】
第三の合成技術はCoSbのナノ粉末を製造することからなり、この
ナノ粉末は、それぞれがミクロメートル未満のサイズの物質の粒子によって構成された(上記に定義したような)粉末である。そのため、共沈が実施され、続いて大気中でか焼し、水素で還元する。しかしながら、得られた物質のX線回折による特徴付けは正確さが不十分であり、処理は複雑で、実施が困難である(Bertini et coll.《Nanostructured Co1−xNiSb skutterudites:Synthesis,thermoelectric properties,and theoretical modeling》,Journal of Applied Physics,93(1),p.438(2003))。
【0019】
第四の技術は、水素下の還元が後に続いて行われる、噴射熱分解(《spray pyrolysis》ともいわれる)によってCoSbの(上記に定義した)ナノ粉末を製造することからなる。(Wojciechowski et coll.《Microstructure and transport properties of nanograined powders of CoSb obtained with the spray pyrolysis method》,Proc. 22nd International Conference on Thermoelectrics ICT2003,La Grande Motte,France,Aout 2003,p.97)。
【0020】
しかしながら、ナノ結晶に近い状態でのこれらのスクッテルド鉱の様々な合成方法は、産業的背景から実施することが困難であると考えられており、それは実施するのがあまりに複雑であったり、および/または産出される材料があまりに少量すぎたりするためである。
【0021】
また、これらの技術は化学溶液に基づいているため、これらの技術によって充填されたスクッテルド鉱を得ることは恐らく困難、それどころか不可能である。
【0022】
既知の第三のスクッテルド鉱の製造方法は、機械的粉砕によるスクッテルド鉱の合成である。
【0023】
そのため、既知の第一の粉砕技術は、短く、激しい機械的粉砕によって充填されたスクッテルド鉱を製造することからなる(Chapon et coll.《Mechanical alloying of CeFeSb12 and substituted compounds CeFe3.5Ni0.5Sb12 and CeFeSb11 Te》 Comptes Rendus de l’Academie des Sciences.Serie IIc,p761‐763(1998))。
【0024】
しかしながら、用いられた技術は、特に粉砕のために使用されたるつぼと球に由来するアルミナによって、製造した粉末の重大な汚染を引き起こす。また、粉末中には、合金化されていないアンチモンが無視できない量残存する。さらに、得られた物質の粒子の平均サイズは約10マイクロメートルであり、それは極めて大きなサイズである。
【0025】
既知の第二の粉砕技術は、機械的粉砕によってCoSbを製造することからなる(document CN1422969; et 《Synthesis of CoSb skutterudite by mechanical alloying》 of Yang et coll., dans Journal of Alloys and Compounds,375,p.229(2004))。
【0026】
しかしながら、この技術では、充填されたスクッテルド鉱ではなく、二元スクッテルド鉱しか製造できない。また、純度の高いCoSb粉末を得る(すなわち、寄生相を最小限にする)には、粉砕後に、少なくとも700℃で焼きなましを実施することが必要であるが、それは、恐らく、エネルギーコストと共に結晶の大きな成長を伴うものである。
【0027】
以下の文献Jiangying Peng et al.《Preparation and characterization of Fe susbstituted CoSb3 skutterudite by mechanical alloying and annealing》(Journal of alloys and compounds)Elsevier Sequoia,Lausanne,Suisse‐vol.381,no.1‐2,3 nov.2004,p.313‐316)には、同様な技術が公表されている。
【非特許文献1】Bertini et coll.《Nanostructured Co1−xNixSb3 skutterudites:Synthesis,thermoelectric properties,and theoretical modeling》,Journal of Applied Physics,93(1),p.438(2003)
【非特許文献2】Wojciechowski et coll.《Microstructure and transport properties of nanograined powders of CoSb3 obtained with the spray pyrolysis method》,Proc. 22nd International Conference on Thermoelectrics ICT2003,La Grande Motte,France,Aout 2003,p.97
【非特許文献3】Chapon et coll.《Mechanical alloying of CeFe4Sb12 and substituted compounds CeFe3.5Ni0.5Sb12 and CeFe4Sb11 Te》 Comptes Rendus de l’Academie des Sciences.Serie IIc,p761‐763(1998)
【非特許文献4】Document CN1422969; et 《Synthesis of CoSb3 skutterudite by mechanical alloying》 of Yang et coll., dans Journal of Alloys and Compounds,375,p.229(2004)
【非特許文献5】Jiangying Peng et al.《Preparation and characterization of Fe susbstituted CoSb3 skutterudite by mechanical alloying and annealing》(Journal of alloys and compounds)Elsevier Sequoia,Lausanne,Suisse‐vol.381,no.1‐2,3 nov.2004,p.313‐316)
【0028】
得られた粒子の平均サイズは、三数法を使用して、電子顕微鏡で撮った写真から計算すると、約9から約20マイクロメートルの間に含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、高温での焼きなまし段階を必ずしも実施せずに、ナノ粉末(上記に定義)の形状で、熱電気的性質を有するスクッテルド鉱の製造技術を実施することである。
【0030】
本発明の他の目的は、粒子の形状およびサイズによって後段の型に入れるのが容易である粉末の形状のスクッテルド鉱を製造すること、および材料の熱電気的性質を同等のものにする、または向上させることである。
【0031】
本発明のさらなる他の目的は、寄生相の量が微小で、純度の高いスクッテルド鉱を製造することである。
【0032】
本発明のさらなる他の目的は、寄生相の量が微小で、純度の高い充填されたスクッテルド鉱を製造することである。
【0033】
本発明のさらなる他の目的は、工業生産(すなわち、産業レベルで十分な量の、再生産可能な製造)を可能にするスクッテルド鉱の製造技術を発見することである。
【0034】
本発明のさらなる他の目的は、約600℃の高温まで安定している材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
これらの目的を達成するために、本発明は第一の様相に従い、立方晶を有する結晶性合金から主に構成される、優れた熱電気的性質を有する材料を製造する方法であり、その合金は、
‐遷移金属(周期表で第4、第5または第6周期)から選択された一つまたは複数の第一の元素を有する第一の構成要素、
‐周期表の14、15または16族から選択された一つまたは複数の第二の元素を有する第二の構成要素、
‐希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択された一つまたは複数の第三の元素を有する第三の構成要素、
を備えており、方法は、機械的合成による合金の製造を含み、その機械的合成は主に、粒子の平均サイズが約500ナノメートル未満、さらには約100ナノメートル未満の粉末が製造されるように実施されることを特徴とする方法を提案するものである。
【0036】
この熱電素子の製造方法のその他の可能な特徴は、
‐粉末の粒子の平均サイズは約100ナノメートル未満であり、
‐第一の元素はFe、第二の元素はSb、第三の元素はCeであり、機械的合成に使用される出発原料は、Sb、Fe‐SbおよびCe‐Sbを含み、その割合は所望の合金の組成が得られるように選択され、
‐第一の元素はFe、第二の元素はSb、第三の元素はYbであり、機械的合成に使用される出発原料はSb、Fe‐SbおよびYb‐Sbを含み、その割合は所望の合金の組成が得られるように選択され、
‐使用される出発原料は、ミッシュメタルであることがあり、
‐機械的合成は、より大きく、肉眼で見ることのできる、粉末またはシートまたは断片の出発原料から実施され、選択された出発原料は純粋な材料または合金であることがあり、
‐機械的合成は、少なくとも95%のスクッテルド鉱相から構成される粉末が得られるように実施され、
‐機械的合成は、加工する物質を構成する元素が何であっても、その融解温度未満の限界温度を越えないように実施され、
‐使用した機械的合成装置は、停止時間がなく、連続して利用され、
‐使用された機械的合成装置は、加工する物質の温度が前記限界温度以下に下がるのに十分長い停止期間によって分離された複数の作業期間の間利用され、
‐約85キロジュールから約430キロジュールの間に含まれる仕事をもたらすように機械的合成を実施し、
‐製品の1グラムあたり約2から約10ワットの間に含まれる衝撃質量電力をもたらすように機械的合成を実施し、
‐製品の1グラムあたり約4ワットに含まれる衝撃質量電力を使用し、
‐機械的合成装置は、球、つぼおよび台を備える遊星粉砕機であり、それぞれの作業期間は、つぼの回転速度は約750〜1250回/分で、台の回転速度は400〜600回/分で、そして出発製品の総質量に対する球の質量比が約10〜20の間に含まれるように選択された球で、1時間から5時間続き、
‐機械的合成装置は、機械的合成の際、鋼などの合金を汚染しないのに適した材料製であり、
‐機械的合成は、アルゴンまたは、場合によっては窒素などの不活性ガスの雰囲気下で実施され、
‐その方法は、また、前記熱電素子を製造するために、機械的合成後に得られた粉末の圧密段階を含む。
【0037】
第二の様相に従うと、本発明は熱電気的性質を有する粉末の粒子を提案しており、該粉末の粒子は熱電気的性質を有し、立方晶構造を有する結晶性の合金から主に構成され、合金は、
‐遷移金属から選択された一つまたは複数の第一の元素を有する第一の構成要素、
‐周期表の14、15または16族から選択された一つまたは複数の第二の元素を有する第二の構成要素、
‐希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択された一つまたは複数の第三の元素を有する第三の構成要素、
を備えており、粉末の粒子は全体的に卵形であり、その平均サイズは500ナノメートル未満、さらには、100ナノメートル未満であることを特徴とする、粉末の粒子を提案するものである。
【0038】
これらの粉末の粒子の考えられるその他の特徴は、
‐第一の構成要素の元素M,M’,…Mは、以下の元素、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから選択され、
−第二の構成要素の元素X,X’,…Xは、以下の元素、P、As、Sn、Sb、Si、GeおよびTeから選択され、
‐第三の構成要素の元素R,R’,…Rは、以下の元素、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Yb、Ba、Na、K、Ca、Tl、Sr、Uから選択され、
‐合金は、CeFe4−xCoSb12、CeFe4−xNiSb12、YbFe4−xNiSb12またはYbFe4−xCoSb12であり、これにおいてxはそれぞれ0〜4の間に含まれ、yは1未満の零ではない実数であり、
‐単相化されており、
‐多結晶質であるということである。
【0039】
第三の様相に従えば、本発明は、多数のこれらのナノ結晶粉末によって主に形成されていることを特徴とする熱電材料を提案するものであり、該ナノ粉末は、粉末状または圧密された形状である。
【0040】
本発明のその他の特徴、目的および利点は、添付図面を参照して行う以下の説明から明らかになるものであり、その説明は、単に例であり、限定的な趣旨のものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、本発明の条件下における粉砕時間に応じて生産されるSbの量に対するスクッテルド鉱の量の相対的増加を示している。
【0042】
図2は、本発明によって得られた粉末と、従来技術によって得られた粉末とを比較として実施したX線回折の算定の実験結果を示したものであり、それは、二つの位相が同じであり、本発明によって得られた粉末の粒子のサイズがナノメートルであることを示している。
【0043】
図3は、本発明によって得られた複数の粉末の粒子の組成を示したものであり、それらの組成は波長が分散されたX線分光器(EDX分光器‘‘Energy Dispersive X ray’’とも呼ばれる)による算定から分かったものである。それは、製造された相の均質性を示す。
【0044】
図4は、本発明によって得られた粉末で実施された示差熱分析(DTAとも呼ばれる)での算定結果を示しており、特にその粉末の600℃まで熱安定性を示している。
【0045】
図5は、電子顕微鏡で200000倍の倍率で撮った写真であり、それは様々な性質の粉末において、物質の粒子が分離された(そして互いに合体していない)とき、一般的に15〜50ナノメートルの間に含まれる大きさであることを示している。
【0046】
図6は、様々な性質の粉末において、本発明によって得られ、圧密された粉末のサンプルの温度に応じた熱起電力の実験結果を示している。数値は、
他の製造技術によって製造されたサンプルについて得られたものと比較することができる。
【0047】
本発明は、機械的合成によって、大きな熱起電力のスクッテルド鉱合金を主成分とする物質を製造することを提案するものである。
【0048】
機械的合成は、純度の高い、または粉末を得ることを可能にする高エネルギー粉砕機で事前に結合された元素から構成された出発原料の、液体を用いない、または方法の制御剤を用いた共粉砕による、材料(化合物、合金など)の合成の機械的方法と定義することができる。
【0049】
また、このようにして、単相化されたまたは多相化された、安定化または準安定化合金によって構成された、(物質の粒子の平均サイズが最大数百ナノメートルである)粒子の極めて小さい粉末物質を得ることができる。
【0050】
合金の合成を可能にするのは、粉砕によって発生するエネルギーである。実際、出発原料は連続して(発熱反応を引き起こす)激しい物理的衝撃を受け、続いて粒子の一連の接着(溶着)とはがし(脱粘着)を受ける。
【0051】
機械的合成によって粉末合金を生成するのに必要な手段は、下記の通りである;
‐一つまたは複数の出発原料を形成し、そして生成される物質の元素を所望の比率で含む、元素または事前に結合された構成要素、
‐一般的に硬い材料製の球によって構成される、加工する物質を粉砕するための衝撃手段、
‐物質への球の連続した衝撃を可能にするタイプの運動を生み出す手段、
‐制御された雰囲気下で機械的合成が行われる、閉じた環境または容器またはつぼ。
【0052】
容器を構成する材料は、好ましくは、加工する物質の汚染の原因とならないようにして選択される。例えば、鋼が選択される。
【0053】
球を構成する材料は、加工する物質が大きく汚染されることを防止しながら、良好な衝撃の伝導効率が得られるように調節された硬度を有するようにして選択される。従って、鋼を選択することができる。製造する粉末の総質量に対する球の数の比は、また、所定の球の速度に最適と定められた衝撃振動数を有するように調節される。
【0054】
機械的合成装置は、使用される粉砕機の型によって異なることがある技術に従って、球と連動した、運動を生じさせる内部手段を含む。例えば、磨耗型粉砕機、水平粉砕機、鉛直振動粉砕機または遊星粉砕機を使用することができる。
【0055】
以下に続く文献で粉末を製造するために本出願人によって使用される粉砕機は、鋼鉄製のつぼと台を備える遊星粉砕機であり、つぼはそれ自体が可動式である台に対して相対運動をし、それにより、鋼鉄製の球に運動が伝達される。同様な結果は、他のタイプの粉砕機でも得られるであろう。
【0056】
本発明によって得られることが所望される粉末物質は、スクッテルド鉱、
すなわち、
‐遷移金属から選択された少なくとも一つの第一の元素「M」を有する第一の構成要素と、
‐周期表の14、15または16族から選択された少なくとも一つの第二の元素「X」を含む第二の構成要素とを備える立方晶の結晶性の合金から構成される。
【0057】
第一の変型例によると、スクッテルド鉱は、上記で定義されたように、二元または真空であり、式MX3+Xである。
【0058】
第二の変型例によると、スクッテルド鉱は充填または部分的に充填されており、そのとき、合金は、また、
‐希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択された少なくとも一つの第三の元素「R」を含む第三の構成要素を備える。
【0059】
場合によっては、第一の構成要素はさらに遷移金属から選択された他の元素を含むことができ、そのとき、この合金は、前述において定義したように、RM’4−xX’12−Zまたは(R,R’,…R(M,M’,…M(X,X’,…X12という式で表される。
【0060】
前記第一の元素Mおよび選択的な他の元素M’,…Mは、好ましくは、以下の元素、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから選択され、さらに詳細には、Fe、CoおよびNiから選択される。
【0061】
前記第二の元素Xおよび選択的な他の元素X’,…Xは、好ましくは、以下の元素、P、As、Sn、Sb、Si、GeおよびTeから選択され、そしてさらに詳細には、Sbでありうる。
【0062】
前記第三の元素Rおよび選択的な他の元素R’,…Rは、好ましくは、以下の元素、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Yb、Ba、Ca、Na、K、Tl、Sr、Uから選択され、そしてさらに詳細には、CeとYbから選択される。
【0063】
本出願人によって、非限定的に特に研究された合金は、熱電気的性質が大きいと考えられている、部分的に充填されたスクッテルド鉱であるCeFe4−xCoSb12とYbFe4−xCoSb12であり、これにおいてxはそれぞれ、0〜4の間に含まれ、yは0〜1の間に含まれる。これらの電気特性を示す例として、例えば、米国特許第6069312号明細書を参照することができる。
【0064】
機械的合成による部分的に充填されたスクッテルド鉱(Ce/Yb)Fe4−xCoSb12の製造は、より大きく、肉眼で見ることのできる粉末またはシートまたは断片の出発原料から実施され、選択された出発原料は純粋な材料または(事前合金化材料とも呼ばれる)合金でもありうる。
【0065】
鉄、セリウムおよびイッテルビウムの延性が大きいことから、出発原料として、鉄にはFe−Sb合金または鉄の塊よりもむしろ粉末、希土類では純粋な元素よりもむしろCe−SbまたはYb−Sb合金を使用することが好ましいであろう。
【0066】
また、ベース材料の一つとして、経済的な観点から興味深いミッシュメタルを使用することができる。
【0067】
本出願人は、85から430キロジュールの間に含まれる仕事をもたらし、サイズが200ナノメートル未満のスクッテルド鉱粉末を得るために機械的合成を実施し、成功した。
【0068】
特に、本出願人は、アルゴンまたは窒素雰囲気下で、製品の1グラムあたり約2から約10ワットの間に含まれる衝撃質量電力で約12時間の間、機械的合成を実施してこれらの結果を得た。このために、機械的合成のパラメータおよび仕様は調節しながら行われた。
【0069】
図1には、製品の1グラムあたり約2から約10ワットの間に含まれる衝撃質量電力で、粉砕時間に対する、粉砕後の粉末から得られた合金の元素の一つ(この場合、ここではSb)の相のピークに対するスクッテルド鉱相の強度ピーク比が示されている。
【0070】
これらの値は、異なる粉砕時間で製造された粉末について得られたX線回折による算定から直接発見された。
【0071】
そのとき、測定点は、約12時間の粉砕時間に対応するスクッテルド鉱相の最大値を有する曲線を示唆している。
【0072】
従って、適切な衝撃質量電力(製品の1グラムあたり約2から約10ワット)で、十分に長い期間(12時間)の粉砕を実施は、大きな割合のスクッテルド鉱相を得ることを可能にする。
【0073】
本出願人により、特に、アルゴン雰囲気下で、製品の1グラムあたり約4ワットに含まれる衝撃質量電力でスクッテルド鉱粉末の製造が実施された。特に、本出願人は、開始時の球/製品の質量比として15/1を使用した。つぼの回転速度は1020回/分で、台の回転速度は510回/分で、特に良好な結果が得られた。
【0074】
選択された粉砕時間は約12時間であった。粉砕は、加工する物質が、存在するいずれの元素の融解温度におよそ対応する限界温度を越えないようにして実施された(ここでは、限界温度は約630℃であるSbの融解温度に対応する)。
【0075】
場合によっては、本出願人は、加工する物質の温度が前記融解温度以下に下がるのに十分長い停止期間によって分離された複数の作業期間の間、粉砕を実施した。
【0076】
例えば、本出願人は、1時間の期間で分離した、4時間の期間で粉砕を実施した。
【0077】
他の場合には、本出願人は停止期間なしで連続して粉砕を実施し、成功した。
【0078】
図2には、組成Ce0.9FeSb12の二つのサンプルの二つのX線回折図(座標で任意の単位である強度「I」を使用した)が図示されているが、該サンプルの一方は、曲線1に対応している本発明による機械的合成(事前に詳細が説明されたパラメータを有する)によって製造されるが、曲線2は従来技術に従って元素の共融解、粉砕および700℃での長時間の焼きなましによって製造されたもう一つのサンプルに対応している。
【0079】
二つのウインドゥは二つの回折図形の拡大部を示しており、それぞれ回折角度(《2θ》)の31°と90°とを中心としている。
【0080】
曲線1のピークは、主要ピーク10の左側の足元の(極めて少量のSbの存在を明らかにしている)小さい棚部を除いて、全て曲線2のピークと対応している。曲線2に対応する材料の結晶構造が主にスクッテルド鉱であることから、曲線1に対応する本発明による材料についてもまた同様であると結論づけられる。従って、12時間近い時間をかけて実施される粉砕は、極めて純度の高いスクッテルド鉱相を得ることを可能にする。
【0081】
従来の方法によって得られた化合物(曲線2)と比較すると、回折のピークもまた極めて明らかに拡大している。例として、(最大)90°を中心とするズームウィンドゥを観察すると、曲線1では、スペクトル線Kα1とKα2を見分けることができないのに対し、曲線2においては、これらの二つのスペクトル線はそれぞれのピークによって明らかに見分けることができることがわかる。また、曲線2の異なるピークはわずかに屈曲していることが観察される。
【0082】
この回折ピークの拡大は、粒子サイズの強い縮小によって特徴づけられる。従って、X線をコヒーレントに回折させる粒子の平均サイズは、リートフェルト法(H.M.Rietveld,Acta Cryst.22,151(1967)et J. Applied Cryst.2,65(1969))によって、200ナノメートル未満、多くの場合は約15〜20ナノメートルと推定される。
【0083】
図5を参照して、本出願人は、透過型電子顕微鏡を用いた観察によってこれらの数値を確認した。この場合、物質の粒子の平均サイズは約10〜50ナノメートルであり、従って、これらの物質の粒子はナノ結晶またはナノ多結晶である。
【0084】
リートフェルト法によって実施された細粒化は、また、結晶相が約95%のスクッテルド鉱相によって構成していることを示した。従って、本出願人は、機械的合成によってナノ結晶の形態で(スクッテルド鉱相が95%以上である)比較的純粋なスクッテルド鉱粉末を製造した。粉末の粒子はほぼ多結晶である。
【0085】
また、この写真は、本発明によって得られた粒子がそれぞれ全体的に、卵形、さらには球形またはほぼ球形の形状であることを明らかに示している。いずれの場合にせよ、得られた形状は空間のどの方向にも同じである。
【0086】
この形状は、典型的に本発明によって使用された製造方法(機械的合成)に関連するものである。
【0087】
この粒子の形状は、場合によっては続いて作業される粉末の圧密を特に改良するものである。
【0088】
熱力学的に準安定相の製造可能性を明確にするために、本出願人は、式CeFe4−xCoSb12のサンプルについても研究した。X線回折によって得られたこのシリーズのそれぞれのサンプルについての結果は、図2に示されているもの、すなわち曲線1のピークと曲線2のピークとの一致および曲線1のピークの拡大に類似していた。
【0089】
図3を参照すると、本発明による機械的合成によって製造された粉末の30個の粒子についてEDX分光器(Jeol 2000FX型の透過型電子顕微鏡)で行われた量的な分析結果から演繹される原子分率(%表示)が示されており、この粉末は最終的にCeFeCoSb12の組成式を有するように製造されたものである。水平な直線6、7および8は、CeFeCoSb12の原子組成式に、すなわち、それぞれSbが約70.6%、Fe−Coが約11.8%、そしてCeが約5.9%に対応している。
【0090】
得られた化学量論の結果は、組成式から得られる化学量論(すなわち理想的な化学量論)に極めて近いことが観察される。すなわちSbの原子分率はこのように、30サンプルの平均については平均原子組成よりも約5%だけ高く、補償はFeおよびCoにおいて実施されるが、それぞれの平均原子分率は、組成式から計算される原子分率よりも2.5%低い。
【0091】
従って、本発明によって得られたスクッテルド鉱の最終組成は、所望のスクッテルド鉱の組成に極めて近いものである。
【0092】
また、三十の粒子について算定された組成は極めて均質であり、それは本発明によって製造されたスクッテルド鉱粉末が均質であることを意味する(粉末の全ての粒子が類似した特性を備える)。
【0093】
次に、本発明による機械的合成によって得られた様々な粉末の熱力学的な振る舞いを示差熱分析(DTAとも呼ばれる)によって研究された。
【0094】
図4を参照すると、CeFeCoSb12のDTAの結果が示されている。
【0095】
第一の加熱曲線3は、(630℃付近である)アンチモンの融解温度にピークを示さない。
【0096】
従って、サンプルは反応をしなかったアンチモンをほとんど含有してはおらず、それゆえ、Sbの大部分はスクッテルド鉱相に存在する。
【0097】
次に、二つの大きいピーク13および14は、それぞれ830℃付近、そして920℃を中心とする変曲点とともに示されており、該変曲点はそれぞれスクッテルド鉱相の包晶分解水平部およびスクッテルド鉱の分解から生ずるFe4−xCoSb12相の分解水平部に対応する。
【0098】
冷却曲線4および第二の加熱曲線5では、小さいピーク11および12がSbの(ここでは630℃を中心とする)融解温度を中心に存在する。このSbは、第一の加熱曲線3の際に分解し(830℃付近)、そして第二の加熱曲線5の間に融解するスクッテルド鉱相の一部に実質的に由来するものである。従って、第一の加熱曲線3の曲線にアンチモンの融解に対応するピークが存在しないことは、スクッテルド鉱相が少なくとも630℃まで安定していることを示している。
【0099】
DTAによって実施された、天然および/または異なる組成の他のスクッテルド鉱粉末の算定により、前述のCeFeCoSb12についての結果に類似する結果が得られた。
【0100】
機械的合成の利用は、これらのDTA算定の結果を考慮し、粉砕は加工する物質が熱電材料の様々な元素の融解温度のうちの最低の融解温度(上記のように、Sbの融解温度)によって決定される限界温度未満の温度のままであるようにして実施される。
【0101】
そのため、機械的合成は、機械的合成装置が加工する物質の温度が前記限界温度以下に下がるのに十分に長い停止期間によって分離された複数の作業期間の間実施される(すなわち、機械的合成装置が遊星粉砕機であるとき、つぼと台が回転される)。
【0102】
そのような機械的合成の実施例を前述した。
【0103】
一旦熱電粉末が製造されると、その際は、場合によっては粉末物質を単一の熱電素子に圧密するための一つまたは複数の段階を実施することができる。その際、このような操作を実施するために既知の技術を利用することができる(熱間圧縮、冷間圧縮、焼結など)。
【0104】
図6を参照すると、様々なスクッテルド鉱粉末を400MPa下で300℃で圧密した後に得られる熱電素子について実施された熱起電力の算定の結果が示されている。
【0105】
熱起電力の算定によって、材料の熱電効率を評価することができ、熱起電力Sは下記の式によって材料のメリット係数ZTに直接関係する。
ZT=STσ/κ
これにおいてTは絶対温度(ケルビン温度)、Sは熱起電力(またはゼーベック係数)であり、σは導電率、そしてκは熱伝導率である。
【0106】
熱起電力Sは、圧密した素子について120Kから300Kで算定した。圧密の後に実施したX線回折の算定によると、この段階においてはサンプルの化学変化は一切起こらなかった。逆に回折ピークがわずかに細くなることが観察され、それは粉末の粒子の成長の特徴であるが、しかしながら、それらの粉末の粒子の平均サイズは約500ナノメートル未満、さらには、約100ナノメートル未満である。
【0107】
温度と共に熱起電力が上昇することが図6に示されている。スクッテルド鉱の場合予想されるように、温度が上昇すると、熱起電力は増大する。
【0108】
300Kでの数値は、融解−焼きなましによる従来の方法によって製造されたサンプルについて得られた大きさとほぼ同じであった。
【0109】
従って、本出願人は、その後の成形を容易にすることを可能にする、充填または部分的に充填されたスクッテルド鉱の場合、寄生相の量が極めて少なく、物質の粒子の平均サイズが約500ナノメートル未満の、さらには約100ナノメートル未満の、ナノ結晶の形態の熱電気的性質を有するスクッテルド鉱を製造する。
【0110】
この製造方法は、重量を増加させ、高い製造コストがかかるであろう合成後の高温焼きなまし段階を必ずしも備えていない。
【0111】
機械的合成の他の利点は、工業生産に適した量での製造、および本出願人が示したようにある程度の再現性を可能にすることである。
【0112】
また、その技術は、従来の合成手段と比較して、熱起電力の劣化を引き起こさない。
【0113】
また、得られたナノ粉末は、化学変化を起こさずに300℃で圧密することができる。
【0114】
また、機械的合成は、ナノ粉末の形状で充填または部分的に充填されたスクッテルド鉱の組成物を製造することができ、該組成物はそれが有する熱力学的な準安定性から、従来の製造方法とは両立せず、他の方法で得ることができない。
【0115】
そのような材料は、二つの形態のエネルギーを変換する場合、ペルチェ効果および/またはゼーベック効果を用いることによって熱電装置に組み入れることができる。たとえば、これらの材料を他の種類の材料と結合させて、熱伝導率および/また導電率の勾配を有する多材料構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の条件で粉砕時間に対する生産されるSbの量に対するスクッテルド鋼の相対値を示すグラフ。
【図2】本発明によって得られた粉末と従来技術によって得られた粉末について比較して実施したX線回折の測定の実験結果を示すグラフ。
【図3】本発明によって得られた複数の粉末粒子のX線分光器により算定された組成を示すグラフ。
【図4】本発明によって得られた粉末について実施された示差熱分析(DTAとも呼ばれる)での測定結果を示すグラフ。
【図5】本発明によって得られた粉末について電子顕微鏡で倍率200000で撮った写真。
【図6】本発明によって得られ、及び、圧密された粉末のサンプルの温度に対する熱起電力の実験結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶構造を有する、主に結晶性合金から構成される熱電素子の製造方法であり、その合金は、
‐遷移金属から選択された一つまたは複数の第一の元素を有する第一の構成要素、
‐周期表の14、15または16族から選択された一つまたは複数の第二の元素を有する第二の構成要素、
‐希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択された一つまたは複数の第三の元素を有する第三の構成要素、
を備えており、方法は、機械的合成による合金の製造を含み、その機械的合成は主に、粒子の平均サイズが約500ナノメートル未満の粉末が製造されるように実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
粉末の粒子の平均サイズは約100ナノメートル未満であることを特徴とする、請求項1に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項3】
第一の元素はFe、第二の元素はSb、第三の元素はCeであり、機械的合成に使用される出発原料は、Fe‐Sb、SbおよびCe‐Sbを含み、その割合は所望の合金の組成が得られるように選択されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項4】
第一の元素はFe、第二の元素はSb、第三の元素はYbであり、機械的合成に使用される出発原料はFe‐Sb、SbおよびYb‐Sbを含み、その割合は所望の合金の組成が得られるように選択されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項5】
使用される出発原料は、ミッシュメタルでありうることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項6】
機械的合成は、より大きく、肉眼で見ることのできる、粉末またはシートまたは断片の出発原料から実施され、選択された出発原料は純粋な材料または合金でありうることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項7】
機械的合成は、少なくとも95%のスクッテルド鉱相から構成される粉末が得られるように実施されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項8】
機械的合成は、加工する物質を構成する元素が何であっても、その融解温度未満の限界温度を越えないように実施されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項9】
使用した機械的合成装置は、停止時間がなく、連続して利用されることを特徴とする、請求項8に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項10】
使用された機械的合成装置は、加工する物質の温度が前記限界温度以下に下がるのに十分長い停止期間によって分離された複数の作業期間の間利用されることを特徴とする、請求項8に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項11】
約85キロジュールから約430キロジュールの間に含まれる仕事をもたらすように機械的合成を実施することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項12】
製品の1グラムあたり約2から約10ワットの間に含まれる衝撃質量電力をもたらすように機械的合成を実施することを特徴とする、請求項11に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項13】
製品の1グラムあたり約4ワットに含まれる衝撃質量電力を使用することを特徴とする請求項12に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項14】
機械的合成装置は、球、つぼおよび台を備える遊星粉砕機であり、それぞれの作業期間は、つぼの回転速度は約750〜1250回/分で、台の回転速度は400〜600回/分で、そして出発原料の総質量に対する球の質量比が約10〜20の間に含まれるように選択された球で、1時間から5時間続くことを特徴とする、請求項13に記載の熱電素子の製造方法。
【請求項15】
機械的合成装置は、機械的合成の際、鋼などの合金を汚染しないのに適した材料製であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項16】
機械的合成は、アルゴンまたは、場合によっては窒素などの不活性ガスの雰囲気下で実施されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項17】
前記熱電素子を製造するために、機械的合成後に得られた粉末の圧密段階を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一つに記載の熱電素子の製造方法。
【請求項18】
熱電気的性質と立方晶構造とを有する、結晶性の合金から主に構成され、合金は、
‐遷移金属から選択された一つまたは複数の第一の元素を有する第一の構成要素、
‐周期表の14、15または16族から選択された一つまたは複数の第二の元素を有する第二の構成要素、
‐希土類、アルカリ、アルカリ土類またはアクチノイドまたはこれらの元素の混合物から選択された一つまたは複数の第三の元素を有する第三の構成要素、
を備えており、粉末の粒子は全体的に卵形であり、その平均サイズは500ナノメートル未満であることを特徴とする、粉末の粒子。
【請求項19】

第一の元素は、以下の元素、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから選択されることを特徴とする、請求項18に記載の粉末の粒子。
【請求項20】
第一の構成要素は、遷移金属から選択される少なくとも一つの他の元素を有することを特徴とする、請求項18または19に記載の粉末の粒子。
【請求項21】
第一の構成要素のこの他の元素は、以下の元素、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の粉末の粒子。
【請求項22】
第二の元素は、以下の元素、P、As、Sn、Sb、Si、GeおよびTeから選択されることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一つに記載の粉末の粒子。
【請求項23】
第二の構成要素は、以下の元素、P、As、Sn、Sb、Si、GeおよびTeから選択される他の第二の元素を有しうることを特徴とする、請求項22に記載の粉末の粒子。
【請求項24】
第三の元素は、以下の元素、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Yb、Ba、Ca、Na、K、Tl、Sr、Uから選択されることを特徴とする、請求項18〜23のいずれか一つに記載の粉末の粒子。
【請求項25】
第三の構成要素は、以下の元素、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Yb、Ba、Ca、Na、K、Tl、Sr、Uまたはミッシュメタルのような混合物から選択される他の第三の元素を有しうることを特徴とする、請求項24に記載の粉末の粒子。
【請求項26】
合金が、CeFe4−xCoSb12、CeFe4−xNiSb12、YbFe4−xNiSb12またはYbFe4−xCoSb12であり、これにおいて、xはそれぞれ0〜4の間に含まれ、yは0〜1の間に含まれることを特徴とする、請求項18に記載の粉末の粒子。
【請求項27】
単相化されていることを特徴とする、請求項18〜26のいずれか一つに記載の粉末の粒子。
【請求項28】
多結晶質であることを特徴とする、請求項18〜27のいずれか一つに記載の粉末の粒子。
【請求項29】
請求項18〜28のいずれか一つに従った、主に多数の粉末の粒子によって形成されていることを特徴とする、熱電素子。
【請求項30】
圧密されていない形状を有することを特徴とする、請求項29に記載の熱電素子。
【請求項31】
圧密された形状を有することを特徴とする、請求項29に記載の熱電素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−535277(P2008−535277A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504761(P2008−504761)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061338
【国際公開番号】WO2006/106116
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【Fターム(参考)】