機械要素商品の梱包容器および梱包方法
【課題】 保証書などの機械要素商品に関するデータを電子データとしてユーザに提供できるように機械要素商品を梱包できる機械要素商品の梱包容器および梱包方法を提供する。
【解決手段】 ダンボール箱,木箱,ポリ容器などの外装容器31は上部が開口されており、この開口部からには、ポリエチレン袋33に収納された機械要素商品1が収納される。外装容器31には、ICタグ4が貼り付けられている。ICタグ4には機械要素商品1の品質に関連する情報などが書込まれている。ICタグ4とともに、品質保証書32を貼り付けてもよく、ユーザは機械要素商品1の納品後に、品質保証書32を外装容器31から切り離して保管しておくことで管理できる。品質保証書32を破損したり紛失したりしてもICタグ4から必要な情報を読み出すことができる。
【解決手段】 ダンボール箱,木箱,ポリ容器などの外装容器31は上部が開口されており、この開口部からには、ポリエチレン袋33に収納された機械要素商品1が収納される。外装容器31には、ICタグ4が貼り付けられている。ICタグ4には機械要素商品1の品質に関連する情報などが書込まれている。ICタグ4とともに、品質保証書32を貼り付けてもよく、ユーザは機械要素商品1の納品後に、品質保証書32を外装容器31から切り離して保管しておくことで管理できる。品質保証書32を破損したり紛失したりしてもICタグ4から必要な情報を読み出すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械要素商品の梱包容器および梱包方法に関し、例えば転がり軸受、軸継手、ボールねじ等の、転動体を有し複数の要素品からなる機械要素商品を梱包する梱包容器および梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トレーサビリティの要求、つまり考慮の対象となっているものの履歴、適用または所在の追跡ができることの要求が高くなってきている。例えば、転がり軸受や軸継手、ボールねじ等の機械要素商品の品質管理では、材料購入から製造完了までの各製造工程(材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程等)の品質,ロット等の製造履歴が、各機械要素商品と1対1、またはロット単位で分かるようにすることが望まれる。
【0003】
このような製造履歴を明確にする品質管理方法として、従来は、工程毎に発生した情報を、伝票に記入したり、データベースの端末への入力を行う等して対処している。
【0004】
一方、物流管理や在庫管理で、ICタグが用いられつつあり、自動車等の物品の製造においてもICタグを用いた製造から廃棄までの管理が提案されている(例えば特許文献1)。ICタグは、非接触で情報の記録および読取りが可能であり、また記憶容量が大きいことから、高度の管理が期待されている。
【特許文献1】特開2002−169858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のICタグを用いた品質管理方法の提案例では、機械要素商品に取付けられたICタグに機械要素商品に関する各種の情報を直接に記録し、またはICタグには識別情報を記録しておいて、データベースと照合することで、機械要素商品の材質やロット管理情報、各種履歴情報等がわかるようにされている。しかし、機械要素商品に関する上記の情報だけでは、機械要素商品に生じた技術的現象が解明できない場合がある。例えば、各工程の加工条件の違い等によっても、品質に差が生じることがあり、このような加工条件の違いによる差は、検査結果からでは認識することができないことがある。
【0006】
転がり軸受や軸継手、ボールねじ等の機械要素商品は、複数の要素品で構成されており、組立後の機械要素商品自体の検査結果等が分かっても、個々の要素品における品質の違いによる不具合までは特定できない。特に、上記転がり軸受等の転動体を有する機械要素商品では、わずかな材質や精度の違いが機械要素商品として大きな性能の差となるため、従来のICタグを用いた生産管理方法の提案例では対応が難しい。
【0007】
また、工程管理においても、従来の工程毎に伝票記入や端末入力を行う管理方法では、記入や入力に手間がかかるため、多数の情報をきめ細かく記録することが難しい。特に、転がり軸受等のように複数の要素品を組み立ててなる機械要素商品であって、各要素品が材料購入から鍛造工程、熱処理工程、および研削工程を経て、工程毎にロット生産されるものでは、各要素品の製造工程における管理が煩雑であり、情報の手書きによる記録や入力操作に手間がかかる。そのため、機械要素商品の詳細な履歴情報の要求に十分に応じることが難しく、また管理にコストがかかる。
【0008】
そのため、ICタグの適用を考えたが、上記のような機械要素商品では、自動車等の物品のような管理を適用することができない。上記特許文献1の提案例では、管理対象となる物品である自動車にICタグを取付け、各工程の情報を記録している。ICタグはフレーム等に取付ける。しかし、転がり軸受等の機械要素商品では、自動車におけるフレーム等のように完成した基準となる要素品がなく、製造過程では各要素品が鍛造や熱処理等を経て製造されるため、機械要素商品自体にICタグを取付けることができない。
【0009】
また、転がり軸受等の機械要素商品では、内輪、外輪、転動体等のそれぞれが材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程等を経て仕掛品として管理されるため、ICタグを生産管理に適用しようとした場合に、具体的にどのように用いるかが問題であり、効率的なICタグの適用が難しい。
【0010】
さらに、出荷段階において、転がり軸受などの機械要素商品は、人手により1個ずつビニールで包装して梱包容器に梱包するか、あるいは1個ずつビニールで包装したものを複数個ずつ梱包容器に梱包している。ところが、複数個の機械要素商品を1つの梱包容器に収納するとき、一部が傾いて収納され、その上に順次機械要素商品を積層すると、所定数が梱包されることなく出荷されてしまうことがある。
【0011】
また、各機械要素商品には品質保証書が添付されるが、従来は、品質保証書を機械要素商品とともに梱包容器内に収めて出荷するかあるいは、梱包容器の側面に貼り付けて出荷していた。しかし、品質保証書は紙に印刷したものであり、梱包容器の側面に貼付けた場合は、搬送途中において剥離することがある。また、ユーザにとって品質保証書の取扱が煩雑であり、紛失することがしばしばあり、ユーザ側で購入後の管理のためにコンピュータに登録するにもその都度手入力しなければならず、入力間違いなども起こりやすく、管理が不十分であった。
【0012】
そこで、この発明の目的は、例えば品質保証書などの機械要素商品に関する情報を電子情報としてユーザに提供できるように機械要素商品を梱包できる機械要素商品の梱包容器および梱包方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、複数の要素からなる機械要素商品を梱包する梱包容器であって、機械要素商品を梱包するための外装容器と、外装容器に取付けられ、外部からの信号の送受により当該機械要素商品に関する情報を書込み,読出しが可能なICタグとを備える。
【0014】
この発明によれば、外装容器にICタグを装着したので、外部からその機械要素商品に関する情報を電子情報として入手することが可能になる。このため、例えば品質保証書を外装容器に貼付けて出荷したときに、搬送途中において品質保証書が破れるなどの破損を生じても、ICタグに品質保証情報を書込んでおけば、ユーザはICタグから品質保証情報を電子情報として入手することが可能になる。
【0015】
好ましくは、ICタグには、機械要素商品の材料,大きさ,加工,検査,製造者,製造番号,入荷のいずれかの品質に関連する情報の書込みおよび読出しが可能である。これらの情報を書込んでおくことで、ユーザに必要な情報を提供でき、安心感を与えることができる。
【0016】
好ましくは、外装容器は箱型形状に形成されており、その壁面にICタグが露出するように装着されている。外装容器を箱型に形成することで1つあるいは複数の機械要素商品を梱包できる。
【0017】
好ましくは、外装容器の壁面にはICタグとともに品質保証書が貼り付けられる。品質保証書が搬送途中で破損したり紛失したりしても、ICタグから品質に関する情報を読み出すことが可能になる。
【0018】
好ましくは、外装容器は、機械要素商品よりも径のわずかに大きな径を有し、一方が開口された本体と、本体の開口を覆うキャップとを含む。このような外装容器を用いることで、外径の小さな機械要素商品の梱包が容易となる。
【0019】
好ましくは、外装容器は、基材と、その基材を覆うシート材料とからなる包装材料を含み、ICタグは基材と、シート材料との間に装着される。シート材料によりICタグが覆われているので、搬送途中においてICタグが破損するのを防止できる。
【0020】
この発明の他の局面は、複数の機械要素商品の梱包方法であって、複数の機械要素商品のそれぞれに関する情報が書込まれたICタグを装着する過程と、容器用ICタグが装着されていて、機械要素商品を梱包するための外装容器を準備する過程と、容器用ICタグに梱包すべき機械要素商品の数を示す情報を書込む過程と、外装容器に順次複数の機械要素商品を収納するとともに、各機械要素商品のICタグから情報を読み出して収納した数を積算する過程と、容器用ICタグに書込んだ機械要素の商品数と積算した数とに基づいて、外装容器に所定数の機械要素商品が収納されたことを判別し、外装容器を密封する過程とを含む。
【0021】
このような過程により複数の機械要素商品を梱包するときに梱包する数を正確に把握できるとともに、品質情報などのユーザにとって不可欠な情報を電子情報を提供することが可能になる。
【0022】
なお、この明細書において、「機械要素商品」とは、例えば機械部品などの機械要素を組立たものであって、単独で商取引の対象となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1はこの発明の一実施形態における機械要素商品の梱包容器を示す外観図である。図1において、転がり軸受などの機械要素商品1は、外輪、内輪、転動体などの要素品からなり、これらの要素品が工場において製造・組立後、外装容器31に収容されて出荷される。
【0024】
機械要素商品1は、コートボール紙あるいはクラフト紙などの内装材料で上包みされた後、防錆,防水,防湿を目的として、例えばポリエチレン袋33に収納され、箱型形状に形成された外装容器31に収納されて出荷される。機械要素商品1には容器用タグとしてのICタグ9が装着されている。なお、ポリエチレン袋33に収納された機械要素商品1は、1個あるいは複数個を外装容器31に収納して出荷してもよい。外装容器31としては、ダンボール箱,木箱,ポリ容器などが用いられる。外装容器31は上部が開口されており、外装容器31の壁面には、製造メーカ名や商品名などが直接印刷されているかあるいは印刷された紙が貼り付けられている。
【0025】
より好ましくは、外装容器31には、品質保証書32がICタグ4とともに貼り付けられている。これにより、ユーザは機械要素商品1の納品後に、品質保証書32を外装容器31から切り離して保管しておくことで管理できる。
【0026】
ICタグ4および機械要素商品1に装着されているICタグ9には、後述の図9で説明するように、機械要素商品1の形式番号や定格や品質保証に関する情報などの同じ情報が書込まれており、図示しないリーダ/ライタにより非接触で情報の書込み読出しが可能である。このようなICタグ4,9には、例えば、RFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したFRIDタグが利用される。
【0027】
したがって、この実施形態によれば、機械要素商品1に関する製造上の情報や品質管理上での情報などを書込んだICタグ9を機械要素商品1に装着しておくとともに、同様のICタグ4を外装容器31に貼り付けておくことで、搬送途中において外装容器31に貼付けた品質保証書32が、破損してもICタグ4あるいは9に書込まれている情報を読み出すことで、品質管理に関する情報などが失われてしまうことがない。
【0028】
また、機械要素商品1にもICタグ9を装着しておくことで、機械要素商品1を装置内に組み込んでも、機械要素商品1自体を装置から取外すことなく、図示しないリーダによりICタグ9から非接触で情報の読出しが可能になる。
【0029】
なお、図1において、品質保証書32およびICタグ4の外装容器31への貼付け位置は任意であり、上面に貼り付けてもよい。また、品質保証書32は外装容器31内に機械要素商品1とともに収納しておき、ICタグ4のみを外装容器31に貼り付けておいてもよい。さらに、ICタグ9を機械要素商品1に装着しておくか、外装容器31にICタグ4に貼り付けておくかいずれか一方であってもよい。
【0030】
図2は梱包容器の他の例を示す外観斜視図であり、図3はその断面図である。図2および図3に示した梱包容器は、一方が開口された円筒状の本体34と、本体34の開口を覆うキャップ35とから構成されており、特に内径10mm以下のサイズの小さな機械要素商品1を梱包するために使用される。本体34にはICタグ4が装着されている。円筒状の本体34およびキャップ35は、梱包対象となる機械要素商品1の外径よりも若干大きな内径を有しており、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリオキシメチレン樹脂などの安価な樹脂から形成されるが、軽量で嵩張らず、水や油の浸透を防ぐことができるものである。
【0031】
図2および図3に示した梱包容器では、本体34の長さによって、収納される機械要素商品1の個数を管理することが可能である。また、本体34およびキャップ35を透明な樹脂で形成しておけば、本体34に収納された機械要素商品1を外部から視認することが可能になる。
【0032】
図4はこの発明の一実施形態における梱包容器に複数の軸受を梱包する手順を説明するための図である。この手順は機械要素商品1の製造工程において出荷段階を示すものであり、図4(a)に示す過程において、図1に示した上部が開口された外装容器31が準備される。外装容器31にはICタグ4が貼付けられていて、このICタグ4には外装容器31に梱包すべき数の情報が書込まれる。外装容器31の上方にはリーダ/ライタ20が配置されており、外装容器31に収納される機械要素商品1のICタグ9からの情報を読取る。図4(a)の過程では、機械要素商品1が収納されていないことにより、リーダ/ライタ20はICタグ9から情報が入力されないので、外装容器31内が空であることを判別できる。
【0033】
図4(b)に示す過程において、人手を介してあるいは機械的に、外装容器31内に複数の機械要素商品1が収納される。機械要素商品1は図1で説明したように、予め内装材料で上包みされた後、防錆,防水,防湿を目的として、例えばポリエチレン袋により包装されている。収納される機械要素商品1のICタグ9に書込まれている情報が、その都度リーダ/ライタ20によって読取られる。このとき、リーダ/ライタ20は情報を読取るごとにその数を計数して積算する。外装容器31と包装された機械要素商品1との間に隙間がある場合には、緩衝材が挿入される。
【0034】
リーダ/ライタ20は、外装容器31に収納した機械要素商品1の積算数が、ICタグ4に書込んだ数量と一致していれば、外装容器31内に所定数の機械要素商品1が収納されたものと判別し、例えば、表示器を点灯させるかあるいは音声で報知する。このようにして、図4(c)に示すように外装容器31内に所定数の機械要素商品1が収納されると、上部が密閉される。その後、所定の搬送手段により出荷される。
【0035】
したがって、この実施形態では、外装容器31内に機械要素商品1を収納する都度、機械要素商品1に装着されているICタグ9から情報を読み出すことでその数を積算し、外装容器31のICタグ4に書込んだ数量と比較するようにしたので、外装容器31内に収納される機械要素商品1の個数を誤るおそれを解消できる。
【0036】
また、外装容器31のICタグ4には、収納されている機械要素商品1の個数が書込まれるので、外装容器31を開くことなく、内部に収納されている機械要素商品1の個数もICタグ4からリーダ/ライタ20で読み出すことができる。
【0037】
図5はこの発明の他の実施形態における梱包容器を示す図であり、図6は図5の線A−Aに沿う断面図である。
【0038】
前述の図1〜図4に示した実施形態は外装容器31にICタグ4を貼り付けるようにしたが、ICタグ4を貼り付けるために手間がかかるとともに、搬送過程においてICタグ4が剥離してしまうおそれがある。そこで、図5および図6に示した実施形態は、ICタグ4を包装パッケージ5の内部に予め装着するようにしたものである。
【0039】
すなわち、図6に示すように包装パッケージ5は、袋状のパッケージ基材6と、これを覆うフィルム7とから形成されていて、パッケージ基材6内の空間には機械要素商品1が挿入されている。ICタグ4は、ICタグラベル基材40に配置されたアンテナ41,42と、ICチップ43とを含む。ICタグラベル基材40はフィルム7の内面に装着されており、パッケージ基材6上には、導電性インキを用いてアンテナパターン61,62が印刷されている。ICタグ4のアンテナ41,42と、ICアンテナパターン61,62とは異方導電性接着剤8によって接続されている。
【0040】
この実施形態による包装パッケージ5を用いて機械要素商品1を梱包すれば、予めICタグ4が装着されているので、ICタグ4を梱包容器に貼り付けるための手間を省くことができ、また、ICタグ4自体はフィルム7の内面に装着されているので、搬送過程においてICタグ4が剥離してしまうおそれを解消できる。
【0041】
図7はICタグとリーダ/ライタとの関係を示す図であり、図8はICタグの回路図である。
【0042】
ICタグ4は、梱包容器に取付けるため、比較的大きなものでよいが、機械要素商品1に取付けるICタグ9は小さなものが好ましい。FRID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いてもよいが、例えば電磁誘導形式のものが用いられる。また、ICタグ4,9は、周辺に金属があっても使用可能なものがあり、機械要素商品1に取付ける場合、このようなものが好ましい。
【0043】
次に、図7および図8を参照して、この発明で用いられるICタグ4,9について説明する。ICタグ4,9に対する情報の書込みおよび読取りは、図7に示すリーダ/ライタ20によって行われる。リーダ/ライタ20は、ICタグ4,9に対向させるアンテナ21を有している。アンテナ21を介することでICタグ4,9と非接触で情報の書込みおよび読出しが可能になる。
【0044】
リーダ/ライタ20は、材料管理を行う場合には携帯型のものが好ましく、また、公衆通信回線に無線で接続可能なものが好ましい。公衆通信回線に接続可能なリーダ/ライタには、例えば携帯電話機と一体化したものや、携帯電話機にケーブルで接続可能なリーダ/ライタのように電話回線やインターネットなどの公衆通信回線に接続可能なものが用いられる。
【0045】
一方、材料の受入を行う場合のように、一括管理を行う場合は、ゲート型リーダ/ライタのような固定型のものが用いられる。なお、リーダ/ライタ20は表示装置や音声出力装置などを有し、材料情報を表示可能にすることが望ましい。特に、表示装置がカラーであれば、材料情報として色情報を表示させることができ、音声出力装置があれば音声による案内が可能となる。
【0046】
ICタグ4,9は、非接触で情報の書込みおよび読取りが可能なものであり、ICチップ(集積回路のチップ)25と、アンテナ26とで構成される。これらICチップ25とアンテナ26は、樹脂(図示せず)で一体に包囲される。
【0047】
このICタグ4,9は、中央処理装置(CPU)27、メモリ28、送受信回路29、および電源回路30を有しており、電源回路30はアンテナ26から供給される高周波信号から電源を得る。メモリ28は、情報の記憶に電源が不要な不揮発性メモリが用いられる。アンテナ26はリーダ/ライタ20からの質問信号を受信し、その信号に応答する信号を送信する。
【0048】
次に、機械要素商品1の製造過程において、ICタグ4,9に書込まれる情報について説明する。
【0049】
図9は各ICタグの記録内容の変化を示す説明図であり、図10は要素品の製造工程中におけるICタグへの記録形態の概念説明図であり、図11はデータベ−スと、ICタグの関係を示す説明図であり、図12は機械要素商品の組立構成の説明図である。
【0050】
機械要素商品1が転がり軸受の場合、外輪や内輪や鋼球等の転動体を含む要素品2からなり、各要素品2の製造時に以下の過程でICタグ4に情報が書込まれる。
【0051】
(1) 材料購入(Sl)時の管理過程。
【0052】
要素2の材料は、鋼材の塊、銅板、鋼管、鋼線等の形態で購入される。購入した材料は例えば材料ロット単位で各種の品質検査を行う。この管理過程でICタグ4に記録する購入材料の情報は材料の出所情報と品質情報とに分けられる。出所情報としては、材料の販売元の会社名や、その会社の工場所在地等である。品質情報は、組織硬さ、非金属介在物の情報等である。品質情報は、材料購入後に行った材料検査の結果をICタグ4に記録するが、販売元から得た情報を記録しても、両方を記録してもよい。この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、例えば購入管理コンピュータ(図示せず)等から得た情報を記録用の端末を介して行う。
【0053】
(2) 鍛造工程(S2)の管理過程。
【0054】
鍛造工程(S2)は、機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。内輪および外輪となる要素品2では、鍛造工程として(S2)、これら内輪や外輪の粗形状に形成する鍛造と、その鍛造品を旋削する工程とを含む。転動体となる要素品2では、鍛造工程として(S2)として、型打ち、ブラッシング、および生研磨の工程が含まれる。
【0055】
鍛造工程(S2)でのICタグ4への情報の記録は、鍛造工程(S2)の全体で1回としてもよく、また鍛造工程(S2)の中の各工程毎に行うようにしてもよい。例えば、要素品2が転がり軸受の内輪または外輪であって、図12のように鍛造および旋削が行われる場合、旋削後に測定した幅寸法,内径寸法、溝寸法、面取寸法等の情報をICタグ4に記録する。要素品2が転動体であって、図12の各工程で加工される場合、型打ちの後に寸法、歪、外観等の情報を記録し、ブラッシング後、および生研磨の後に、それぞれ測定を行って寸法、真球度、外観等の情報を記録する。また、加工条件情報を記録する。
【0056】
この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、図10に示すように、例えばこれらの鍛造工程(S2)等の各工程毎に用いられる工程管理用または検査管理用等の製造時管理用のデータベース14により、端末(リーダ/ライタ)15を介して行うようにする。オペレータによる手入力が必要な情報については、キーボード等の入力手段16により、製造時管理用のデータベース14を介して、または直接に端末15から記録する。
【0057】
前工程の材料ロットよりも鍛造ロットのほうが多くなる場合は、新たなICタグ4を準備し、これにICタグ複製手段17を用いて材料ロットのICタグ4の記録情報を転記し、この転記よって情報を受け継いだICタグ4に対して鍛造工程の情報を記録する。以下の各工程においても、ロット数が増える場合は、上記と同様にして新たなICタグ4に転記する。
【0058】
(3) 熱処理工程(S3)の管理過程。
【0059】
熱処理を行ったときは、後に検査を行う。要素品2が転がり軸受の内輪や外輪の場合は、硬さ、変形、組織等の検査を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、硬さ、組織等の検査を行う。熱処理工程の情報としては、これらの検査結果を記録する。この他に熱処理条件等を記録してもよい。
【0060】
(4) 研削工程(S4)およびその後の検査工程時の管理過程。
【0061】
研削工程(S4)は、機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。要素品2が転がり軸受の内輪または外輪である場合、研削工程(S4)として、図12のように幅研削、外径研削、溝研削、内径研削、溝超仕上げ等を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、粗研磨、中研磨、精研磨、ラッピング等を行う。これらの各工程では、その工程の完了品の検査を行う。ICタグ4に記録する情報は、研削工程(S4)における上記の各工程毎の加工条件の情報等である。この加工条件の情報は、例えば砥石の種類や加工速度等である。
【0062】
研削工程が完了した後、検査を行い、その結果をICタグ4に記録する。検査結果情報としては、各種の寸法、例えば、内外輪の幅研削では、寸法、幅不同、外観等であり、外輪の外径研削では外径寸法、真円度、円筒度、外観等である。内外輪の溝研削では、研削対象箇所の寸法、真円度、ラジアル振れ、アキシァル振れ、溝芯差等である。内輪の内径研削では、内径寸法、真円度等である。内外輪の溝超仕上げでは寸法、外観等である。要素品2が転動体の場合は、研削工程(S4)における粗研削やその他の各工程後における検査結果の寸法や真円度等、研削工程(S4)の完了品である完成状態の要素品2の検査結果となる外観、寸法、真球度、径の相互差、硬さ、音響、顕微鏡検査結果等である。
【0063】
研削工程(S4)では、特注品などの場合は、全数検査が行われる。全数検査の場合、ICタグ4は要素品2の個数だけ準備され、そのICタグ4に対応する要素品2の研削ロット番号と、個々の検査結果等の情報を記録する。研削ロット番号に加えて、個々の要素品2を識別する番号を付加して記録してもよい。要素品2が転がり軸受における転動体等のように1つの機械要素商品1に多数用いられる場合は、1つの機械要素商品1に用いられる要素品2の組、または1つの機械要素商品1の同じ箇所(例えば複列軸受における各列)に用いられる要素品2の組を1つの要素品2とみなして1つのICタグ4を準備し、その組毎の情報を記録してもよい。
【0064】
保持器については材料検査後に荒押し,仕上押しおよび検査が行われる。シールは購入部品であれば受入検査が行われる。
【0065】
機械要素商品1の組立、およびその後の管理過程。
【0066】
上記のように製造された各要素品2は、組立工程で1つの機械要素商品1に組み立てられる。この機械要素商品1に、組立前から組立後に至る間にICタグ9を取付ける。すなわち、要素品2の単独の状態でICタグ9を取付けても、組立の完了後に取付けてもよい。また、この取付けは、機械要素商品1の内部に行っても、表面に行ってもよい。機械要素商品1に取付けられるICタグ9は、機械要素商品1の機能や取扱いの障害にならない程度に小型のものであることが必要である。実用化されているICタグは、1mm未満の大きさのものがあり、例えばこのような寸法のものが使用される。
【0067】
機械要素商品1は、組立が完了すると、完成品検査として各種の検査を行う。この検査は、例えば上記ICタグ9の取付け後に行うが、取付け形態によっては取付け前に行ってもよい。完成品検査として、機械要素商品1が転がり軸受の場合、外輪、内径、外径、幅寸法、真円度、円筒度、ラジアル振れ、アキシャル振れ、横振れ、隙間、音響等の各要因につき検査を行う。完成品検査は、特注品等の個別検査品の場合は、機械要素商品1の全数につき行う。
【0068】
機械要素商品1を組み立てる過程で、その機械要素商品1を構成する各要素品2のICタグ4の記録情報は、図11のように、データベース10により製造番号に対応して記録される。また、完成品検査の検査結果についても、製造番号に対応して記録される。製造番号は個別の機械要素商品1特有の番号であり、例えばシリアル番号とされる。機械要素商品1が上記のような工程を経過しない別要素品(例えば保持器)3を含むものである場合、その別要素品3の情報もデータベース10に記録する。
【0069】
機械要素商品1に上記のように取付けられたICタグ9には、少なくとも上記の製造番号を記録する。このICタグ9には、製造番号の他に、各要素品2のICタグ4の記録情報や、完成品検査の結果等を記録してもよい。機械要素商品1に取付けられたICタグ9に、完成品検査の結果を記録する場合、検査工程でICタグ9に検査結果を記録し、このICタグ9からデータベ−ス10に情報を転記してもよい。
【0070】
データベース10は、図11に示すようにコンピュータネットワーク18上に設けられた管理コンピュータシステム19に設けられる。このデータベース10の記憶部10aには、機械要素商品1についての上記の記録情報Fが記録される。コンピュータネットワーク18は、例えばインターネット等の広域ネットワークや、この広域ネットワークに工場内のローカルエリアネットワークが結合したものである。データベース10は、記憶部10aとこの記憶部10aに対する入出力や検索の管理を行うデータベース管理部10bとでなる。
【0071】
データベース10は、概念的に1つの品質管理用のデータベースとして認識できるものであればよく、物理的には複数に分かれたデータベースの集まりであっても、また他の各種の目的のデータベースと情報を共有するものであってもよい。例えば、データベース10は、コンピュータネットワーク18上に分散して設けられた複数のコンピュータで構成されるものであっても、また上記製造時管理用のデータベース14や技術情報管理用等のデータベースと記録情報を共有するものであってもよい。
【0072】
データベース10は、ネットワーク18を介して、機械要素商品製造工場内の各情報処理機器の他に、技術部門や、倉庫、営業所、顧客企業の事業所の情報処理機器40、および携帯端末等に接続されたものである。
【0073】
この品質管理方法によると、各要素品2の材料購入から機械要素商品1の完成後の検査内容までの履歴情報が、管理コンピュータシステム19に記憶され、機械要素商品1に取付けられたICタグ9には製造番号が記録されているため、製造番号を管理コンピュータシステム19と照合することで、上記履歴情報を機械要素商品1と1対1の関係管理することができる。例えば、出荷後の任意の段階で、その機械要素商品1の使用者や、保守サービスを行うもの等が、機械要素商品1の履歴情報を知ることができる。
【0074】
機械要素商品1の各要素品2の製造工程毎に発生する情報は、工程毎にその工程のロット別に準備したICタグ4にロット番号と共に記録するため、詳細な履歴情報を管理することができる。したがって不良品が発生した場合の、交換、不良品混入範囲の特定、将来の改善等の対処が容易となり、寿命診断や、機械故障につながる事前の交換も容易となる。
【0075】
前記工程毎の情報は、その工程のロット毎に準備したICタグ4に記録するため、手書き伝票に記録する場合に比べて詳細な情報の記録が行え、また例えば端末からコンピュータに入力する場合と異なり、情報を入力するべき箇所がICタグ4であるために視覚的に認識できて、入力作業が明確となり、誤りが生じにくい。また、要素品2の材料購入から研削工程の各工程にわたる種々雑多な全ての情報をコンピュータに記録するものと異なり、生産工程ではこれらの記録情報をICタグ4で持っておくため、コンピュータの負担が軽く、管理が容易になる。このため、容易に、より詳細な情報の管理することができる。
【0076】
また、機械要素商品1の製造番号は、機械要素商品1に取付けられたICタグ9に記録するので、このICタグ9の残った記憶領域を自由に使用でき、製造後の各種の用途、例えば出荷管理、流通管理、顧客管理、メンテナンス管理等に用いることができる。
【0077】
すなわち機械要素商品1は、前述したように、組立完成、検査、出荷の後、一般的に倉庫に配送され、営業所から顧客へ納品される。特注品の場合は、出荷の後、直接に顧客に納品されることもある。顧客では、機械要素商品1を機器に組み込んで使用し、耐久年数等で廃棄することになる。このような各過程で、機械要素商品1に取付けられたICタグ9の製造番号を読取って履歴情報を知る他に、ICタグ9の残りの記憶領域を利用した各種の利用が図れる。
【0078】
ICタグは種々の形式,形状,大きさのものがあり、板状の物の他、例えば1mm未満の大きさの角状や球状の物などがあり、また記憶容量も種々異なるが、取付け対象に応じて大きさや種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0079】
なお、前記各実施形態では、機械要素商品1が転がり軸受である場合につき主に説明したが、この発明のは、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程を経て製造される要素品2を複数種類含んで組み立てられ機械要素商品1であれば、適用できる。
【0080】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の一実施形態における機械要素商品の梱包容器を示す外観図である。
【図2】梱包容器の他の例を示す外観斜視図である。
【図3】梱包容器の他の例を示す断面図である。
【図4】この発明の一実施形態における梱包容器に複数の軸受を梱包する手順を説明するための図である。
【図5】この発明の他の実施形態における梱包容器を示す図である。
【図6】図5の線A−Aに沿う断面図である。
【図7】ICタグと、リーダ/ライタとの関係を示す図である。
【図8】ICタグの回路図である。
【図9】各ICタグの記録内容の変化を示す説明図である。
【図10】要素品の製造工程中におけるICタグへの記録形態の概念説明図である。
【図11】データベ−スと、ICタグの関係を示す説明図である。
【図12】機械要素商品の組立構成の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 機械要素商品、2 要素品、4,9 ICタグ、5 包装パッケージ、6 パッケージ基材、7 フィルム、10 データベース、20 リーダ/ライタ、31 外装容器、32 品質保証書、33 ポリエチレン袋、34 本体、35 キャップ、40 ICラベル基材、41,42 アンテナ、43 ICチップ、61,61 アンテナパターン。
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械要素商品の梱包容器および梱包方法に関し、例えば転がり軸受、軸継手、ボールねじ等の、転動体を有し複数の要素品からなる機械要素商品を梱包する梱包容器および梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トレーサビリティの要求、つまり考慮の対象となっているものの履歴、適用または所在の追跡ができることの要求が高くなってきている。例えば、転がり軸受や軸継手、ボールねじ等の機械要素商品の品質管理では、材料購入から製造完了までの各製造工程(材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程等)の品質,ロット等の製造履歴が、各機械要素商品と1対1、またはロット単位で分かるようにすることが望まれる。
【0003】
このような製造履歴を明確にする品質管理方法として、従来は、工程毎に発生した情報を、伝票に記入したり、データベースの端末への入力を行う等して対処している。
【0004】
一方、物流管理や在庫管理で、ICタグが用いられつつあり、自動車等の物品の製造においてもICタグを用いた製造から廃棄までの管理が提案されている(例えば特許文献1)。ICタグは、非接触で情報の記録および読取りが可能であり、また記憶容量が大きいことから、高度の管理が期待されている。
【特許文献1】特開2002−169858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のICタグを用いた品質管理方法の提案例では、機械要素商品に取付けられたICタグに機械要素商品に関する各種の情報を直接に記録し、またはICタグには識別情報を記録しておいて、データベースと照合することで、機械要素商品の材質やロット管理情報、各種履歴情報等がわかるようにされている。しかし、機械要素商品に関する上記の情報だけでは、機械要素商品に生じた技術的現象が解明できない場合がある。例えば、各工程の加工条件の違い等によっても、品質に差が生じることがあり、このような加工条件の違いによる差は、検査結果からでは認識することができないことがある。
【0006】
転がり軸受や軸継手、ボールねじ等の機械要素商品は、複数の要素品で構成されており、組立後の機械要素商品自体の検査結果等が分かっても、個々の要素品における品質の違いによる不具合までは特定できない。特に、上記転がり軸受等の転動体を有する機械要素商品では、わずかな材質や精度の違いが機械要素商品として大きな性能の差となるため、従来のICタグを用いた生産管理方法の提案例では対応が難しい。
【0007】
また、工程管理においても、従来の工程毎に伝票記入や端末入力を行う管理方法では、記入や入力に手間がかかるため、多数の情報をきめ細かく記録することが難しい。特に、転がり軸受等のように複数の要素品を組み立ててなる機械要素商品であって、各要素品が材料購入から鍛造工程、熱処理工程、および研削工程を経て、工程毎にロット生産されるものでは、各要素品の製造工程における管理が煩雑であり、情報の手書きによる記録や入力操作に手間がかかる。そのため、機械要素商品の詳細な履歴情報の要求に十分に応じることが難しく、また管理にコストがかかる。
【0008】
そのため、ICタグの適用を考えたが、上記のような機械要素商品では、自動車等の物品のような管理を適用することができない。上記特許文献1の提案例では、管理対象となる物品である自動車にICタグを取付け、各工程の情報を記録している。ICタグはフレーム等に取付ける。しかし、転がり軸受等の機械要素商品では、自動車におけるフレーム等のように完成した基準となる要素品がなく、製造過程では各要素品が鍛造や熱処理等を経て製造されるため、機械要素商品自体にICタグを取付けることができない。
【0009】
また、転がり軸受等の機械要素商品では、内輪、外輪、転動体等のそれぞれが材料購入、鍛造工程、熱処理工程、研削工程等を経て仕掛品として管理されるため、ICタグを生産管理に適用しようとした場合に、具体的にどのように用いるかが問題であり、効率的なICタグの適用が難しい。
【0010】
さらに、出荷段階において、転がり軸受などの機械要素商品は、人手により1個ずつビニールで包装して梱包容器に梱包するか、あるいは1個ずつビニールで包装したものを複数個ずつ梱包容器に梱包している。ところが、複数個の機械要素商品を1つの梱包容器に収納するとき、一部が傾いて収納され、その上に順次機械要素商品を積層すると、所定数が梱包されることなく出荷されてしまうことがある。
【0011】
また、各機械要素商品には品質保証書が添付されるが、従来は、品質保証書を機械要素商品とともに梱包容器内に収めて出荷するかあるいは、梱包容器の側面に貼り付けて出荷していた。しかし、品質保証書は紙に印刷したものであり、梱包容器の側面に貼付けた場合は、搬送途中において剥離することがある。また、ユーザにとって品質保証書の取扱が煩雑であり、紛失することがしばしばあり、ユーザ側で購入後の管理のためにコンピュータに登録するにもその都度手入力しなければならず、入力間違いなども起こりやすく、管理が不十分であった。
【0012】
そこで、この発明の目的は、例えば品質保証書などの機械要素商品に関する情報を電子情報としてユーザに提供できるように機械要素商品を梱包できる機械要素商品の梱包容器および梱包方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、複数の要素からなる機械要素商品を梱包する梱包容器であって、機械要素商品を梱包するための外装容器と、外装容器に取付けられ、外部からの信号の送受により当該機械要素商品に関する情報を書込み,読出しが可能なICタグとを備える。
【0014】
この発明によれば、外装容器にICタグを装着したので、外部からその機械要素商品に関する情報を電子情報として入手することが可能になる。このため、例えば品質保証書を外装容器に貼付けて出荷したときに、搬送途中において品質保証書が破れるなどの破損を生じても、ICタグに品質保証情報を書込んでおけば、ユーザはICタグから品質保証情報を電子情報として入手することが可能になる。
【0015】
好ましくは、ICタグには、機械要素商品の材料,大きさ,加工,検査,製造者,製造番号,入荷のいずれかの品質に関連する情報の書込みおよび読出しが可能である。これらの情報を書込んでおくことで、ユーザに必要な情報を提供でき、安心感を与えることができる。
【0016】
好ましくは、外装容器は箱型形状に形成されており、その壁面にICタグが露出するように装着されている。外装容器を箱型に形成することで1つあるいは複数の機械要素商品を梱包できる。
【0017】
好ましくは、外装容器の壁面にはICタグとともに品質保証書が貼り付けられる。品質保証書が搬送途中で破損したり紛失したりしても、ICタグから品質に関する情報を読み出すことが可能になる。
【0018】
好ましくは、外装容器は、機械要素商品よりも径のわずかに大きな径を有し、一方が開口された本体と、本体の開口を覆うキャップとを含む。このような外装容器を用いることで、外径の小さな機械要素商品の梱包が容易となる。
【0019】
好ましくは、外装容器は、基材と、その基材を覆うシート材料とからなる包装材料を含み、ICタグは基材と、シート材料との間に装着される。シート材料によりICタグが覆われているので、搬送途中においてICタグが破損するのを防止できる。
【0020】
この発明の他の局面は、複数の機械要素商品の梱包方法であって、複数の機械要素商品のそれぞれに関する情報が書込まれたICタグを装着する過程と、容器用ICタグが装着されていて、機械要素商品を梱包するための外装容器を準備する過程と、容器用ICタグに梱包すべき機械要素商品の数を示す情報を書込む過程と、外装容器に順次複数の機械要素商品を収納するとともに、各機械要素商品のICタグから情報を読み出して収納した数を積算する過程と、容器用ICタグに書込んだ機械要素の商品数と積算した数とに基づいて、外装容器に所定数の機械要素商品が収納されたことを判別し、外装容器を密封する過程とを含む。
【0021】
このような過程により複数の機械要素商品を梱包するときに梱包する数を正確に把握できるとともに、品質情報などのユーザにとって不可欠な情報を電子情報を提供することが可能になる。
【0022】
なお、この明細書において、「機械要素商品」とは、例えば機械部品などの機械要素を組立たものであって、単独で商取引の対象となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1はこの発明の一実施形態における機械要素商品の梱包容器を示す外観図である。図1において、転がり軸受などの機械要素商品1は、外輪、内輪、転動体などの要素品からなり、これらの要素品が工場において製造・組立後、外装容器31に収容されて出荷される。
【0024】
機械要素商品1は、コートボール紙あるいはクラフト紙などの内装材料で上包みされた後、防錆,防水,防湿を目的として、例えばポリエチレン袋33に収納され、箱型形状に形成された外装容器31に収納されて出荷される。機械要素商品1には容器用タグとしてのICタグ9が装着されている。なお、ポリエチレン袋33に収納された機械要素商品1は、1個あるいは複数個を外装容器31に収納して出荷してもよい。外装容器31としては、ダンボール箱,木箱,ポリ容器などが用いられる。外装容器31は上部が開口されており、外装容器31の壁面には、製造メーカ名や商品名などが直接印刷されているかあるいは印刷された紙が貼り付けられている。
【0025】
より好ましくは、外装容器31には、品質保証書32がICタグ4とともに貼り付けられている。これにより、ユーザは機械要素商品1の納品後に、品質保証書32を外装容器31から切り離して保管しておくことで管理できる。
【0026】
ICタグ4および機械要素商品1に装着されているICタグ9には、後述の図9で説明するように、機械要素商品1の形式番号や定格や品質保証に関する情報などの同じ情報が書込まれており、図示しないリーダ/ライタにより非接触で情報の書込み読出しが可能である。このようなICタグ4,9には、例えば、RFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したFRIDタグが利用される。
【0027】
したがって、この実施形態によれば、機械要素商品1に関する製造上の情報や品質管理上での情報などを書込んだICタグ9を機械要素商品1に装着しておくとともに、同様のICタグ4を外装容器31に貼り付けておくことで、搬送途中において外装容器31に貼付けた品質保証書32が、破損してもICタグ4あるいは9に書込まれている情報を読み出すことで、品質管理に関する情報などが失われてしまうことがない。
【0028】
また、機械要素商品1にもICタグ9を装着しておくことで、機械要素商品1を装置内に組み込んでも、機械要素商品1自体を装置から取外すことなく、図示しないリーダによりICタグ9から非接触で情報の読出しが可能になる。
【0029】
なお、図1において、品質保証書32およびICタグ4の外装容器31への貼付け位置は任意であり、上面に貼り付けてもよい。また、品質保証書32は外装容器31内に機械要素商品1とともに収納しておき、ICタグ4のみを外装容器31に貼り付けておいてもよい。さらに、ICタグ9を機械要素商品1に装着しておくか、外装容器31にICタグ4に貼り付けておくかいずれか一方であってもよい。
【0030】
図2は梱包容器の他の例を示す外観斜視図であり、図3はその断面図である。図2および図3に示した梱包容器は、一方が開口された円筒状の本体34と、本体34の開口を覆うキャップ35とから構成されており、特に内径10mm以下のサイズの小さな機械要素商品1を梱包するために使用される。本体34にはICタグ4が装着されている。円筒状の本体34およびキャップ35は、梱包対象となる機械要素商品1の外径よりも若干大きな内径を有しており、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリオキシメチレン樹脂などの安価な樹脂から形成されるが、軽量で嵩張らず、水や油の浸透を防ぐことができるものである。
【0031】
図2および図3に示した梱包容器では、本体34の長さによって、収納される機械要素商品1の個数を管理することが可能である。また、本体34およびキャップ35を透明な樹脂で形成しておけば、本体34に収納された機械要素商品1を外部から視認することが可能になる。
【0032】
図4はこの発明の一実施形態における梱包容器に複数の軸受を梱包する手順を説明するための図である。この手順は機械要素商品1の製造工程において出荷段階を示すものであり、図4(a)に示す過程において、図1に示した上部が開口された外装容器31が準備される。外装容器31にはICタグ4が貼付けられていて、このICタグ4には外装容器31に梱包すべき数の情報が書込まれる。外装容器31の上方にはリーダ/ライタ20が配置されており、外装容器31に収納される機械要素商品1のICタグ9からの情報を読取る。図4(a)の過程では、機械要素商品1が収納されていないことにより、リーダ/ライタ20はICタグ9から情報が入力されないので、外装容器31内が空であることを判別できる。
【0033】
図4(b)に示す過程において、人手を介してあるいは機械的に、外装容器31内に複数の機械要素商品1が収納される。機械要素商品1は図1で説明したように、予め内装材料で上包みされた後、防錆,防水,防湿を目的として、例えばポリエチレン袋により包装されている。収納される機械要素商品1のICタグ9に書込まれている情報が、その都度リーダ/ライタ20によって読取られる。このとき、リーダ/ライタ20は情報を読取るごとにその数を計数して積算する。外装容器31と包装された機械要素商品1との間に隙間がある場合には、緩衝材が挿入される。
【0034】
リーダ/ライタ20は、外装容器31に収納した機械要素商品1の積算数が、ICタグ4に書込んだ数量と一致していれば、外装容器31内に所定数の機械要素商品1が収納されたものと判別し、例えば、表示器を点灯させるかあるいは音声で報知する。このようにして、図4(c)に示すように外装容器31内に所定数の機械要素商品1が収納されると、上部が密閉される。その後、所定の搬送手段により出荷される。
【0035】
したがって、この実施形態では、外装容器31内に機械要素商品1を収納する都度、機械要素商品1に装着されているICタグ9から情報を読み出すことでその数を積算し、外装容器31のICタグ4に書込んだ数量と比較するようにしたので、外装容器31内に収納される機械要素商品1の個数を誤るおそれを解消できる。
【0036】
また、外装容器31のICタグ4には、収納されている機械要素商品1の個数が書込まれるので、外装容器31を開くことなく、内部に収納されている機械要素商品1の個数もICタグ4からリーダ/ライタ20で読み出すことができる。
【0037】
図5はこの発明の他の実施形態における梱包容器を示す図であり、図6は図5の線A−Aに沿う断面図である。
【0038】
前述の図1〜図4に示した実施形態は外装容器31にICタグ4を貼り付けるようにしたが、ICタグ4を貼り付けるために手間がかかるとともに、搬送過程においてICタグ4が剥離してしまうおそれがある。そこで、図5および図6に示した実施形態は、ICタグ4を包装パッケージ5の内部に予め装着するようにしたものである。
【0039】
すなわち、図6に示すように包装パッケージ5は、袋状のパッケージ基材6と、これを覆うフィルム7とから形成されていて、パッケージ基材6内の空間には機械要素商品1が挿入されている。ICタグ4は、ICタグラベル基材40に配置されたアンテナ41,42と、ICチップ43とを含む。ICタグラベル基材40はフィルム7の内面に装着されており、パッケージ基材6上には、導電性インキを用いてアンテナパターン61,62が印刷されている。ICタグ4のアンテナ41,42と、ICアンテナパターン61,62とは異方導電性接着剤8によって接続されている。
【0040】
この実施形態による包装パッケージ5を用いて機械要素商品1を梱包すれば、予めICタグ4が装着されているので、ICタグ4を梱包容器に貼り付けるための手間を省くことができ、また、ICタグ4自体はフィルム7の内面に装着されているので、搬送過程においてICタグ4が剥離してしまうおそれを解消できる。
【0041】
図7はICタグとリーダ/ライタとの関係を示す図であり、図8はICタグの回路図である。
【0042】
ICタグ4は、梱包容器に取付けるため、比較的大きなものでよいが、機械要素商品1に取付けるICタグ9は小さなものが好ましい。FRID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いてもよいが、例えば電磁誘導形式のものが用いられる。また、ICタグ4,9は、周辺に金属があっても使用可能なものがあり、機械要素商品1に取付ける場合、このようなものが好ましい。
【0043】
次に、図7および図8を参照して、この発明で用いられるICタグ4,9について説明する。ICタグ4,9に対する情報の書込みおよび読取りは、図7に示すリーダ/ライタ20によって行われる。リーダ/ライタ20は、ICタグ4,9に対向させるアンテナ21を有している。アンテナ21を介することでICタグ4,9と非接触で情報の書込みおよび読出しが可能になる。
【0044】
リーダ/ライタ20は、材料管理を行う場合には携帯型のものが好ましく、また、公衆通信回線に無線で接続可能なものが好ましい。公衆通信回線に接続可能なリーダ/ライタには、例えば携帯電話機と一体化したものや、携帯電話機にケーブルで接続可能なリーダ/ライタのように電話回線やインターネットなどの公衆通信回線に接続可能なものが用いられる。
【0045】
一方、材料の受入を行う場合のように、一括管理を行う場合は、ゲート型リーダ/ライタのような固定型のものが用いられる。なお、リーダ/ライタ20は表示装置や音声出力装置などを有し、材料情報を表示可能にすることが望ましい。特に、表示装置がカラーであれば、材料情報として色情報を表示させることができ、音声出力装置があれば音声による案内が可能となる。
【0046】
ICタグ4,9は、非接触で情報の書込みおよび読取りが可能なものであり、ICチップ(集積回路のチップ)25と、アンテナ26とで構成される。これらICチップ25とアンテナ26は、樹脂(図示せず)で一体に包囲される。
【0047】
このICタグ4,9は、中央処理装置(CPU)27、メモリ28、送受信回路29、および電源回路30を有しており、電源回路30はアンテナ26から供給される高周波信号から電源を得る。メモリ28は、情報の記憶に電源が不要な不揮発性メモリが用いられる。アンテナ26はリーダ/ライタ20からの質問信号を受信し、その信号に応答する信号を送信する。
【0048】
次に、機械要素商品1の製造過程において、ICタグ4,9に書込まれる情報について説明する。
【0049】
図9は各ICタグの記録内容の変化を示す説明図であり、図10は要素品の製造工程中におけるICタグへの記録形態の概念説明図であり、図11はデータベ−スと、ICタグの関係を示す説明図であり、図12は機械要素商品の組立構成の説明図である。
【0050】
機械要素商品1が転がり軸受の場合、外輪や内輪や鋼球等の転動体を含む要素品2からなり、各要素品2の製造時に以下の過程でICタグ4に情報が書込まれる。
【0051】
(1) 材料購入(Sl)時の管理過程。
【0052】
要素2の材料は、鋼材の塊、銅板、鋼管、鋼線等の形態で購入される。購入した材料は例えば材料ロット単位で各種の品質検査を行う。この管理過程でICタグ4に記録する購入材料の情報は材料の出所情報と品質情報とに分けられる。出所情報としては、材料の販売元の会社名や、その会社の工場所在地等である。品質情報は、組織硬さ、非金属介在物の情報等である。品質情報は、材料購入後に行った材料検査の結果をICタグ4に記録するが、販売元から得た情報を記録しても、両方を記録してもよい。この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、例えば購入管理コンピュータ(図示せず)等から得た情報を記録用の端末を介して行う。
【0053】
(2) 鍛造工程(S2)の管理過程。
【0054】
鍛造工程(S2)は、機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。内輪および外輪となる要素品2では、鍛造工程として(S2)、これら内輪や外輪の粗形状に形成する鍛造と、その鍛造品を旋削する工程とを含む。転動体となる要素品2では、鍛造工程として(S2)として、型打ち、ブラッシング、および生研磨の工程が含まれる。
【0055】
鍛造工程(S2)でのICタグ4への情報の記録は、鍛造工程(S2)の全体で1回としてもよく、また鍛造工程(S2)の中の各工程毎に行うようにしてもよい。例えば、要素品2が転がり軸受の内輪または外輪であって、図12のように鍛造および旋削が行われる場合、旋削後に測定した幅寸法,内径寸法、溝寸法、面取寸法等の情報をICタグ4に記録する。要素品2が転動体であって、図12の各工程で加工される場合、型打ちの後に寸法、歪、外観等の情報を記録し、ブラッシング後、および生研磨の後に、それぞれ測定を行って寸法、真球度、外観等の情報を記録する。また、加工条件情報を記録する。
【0056】
この過程でのICタグ4への情報の記録方法は、図10に示すように、例えばこれらの鍛造工程(S2)等の各工程毎に用いられる工程管理用または検査管理用等の製造時管理用のデータベース14により、端末(リーダ/ライタ)15を介して行うようにする。オペレータによる手入力が必要な情報については、キーボード等の入力手段16により、製造時管理用のデータベース14を介して、または直接に端末15から記録する。
【0057】
前工程の材料ロットよりも鍛造ロットのほうが多くなる場合は、新たなICタグ4を準備し、これにICタグ複製手段17を用いて材料ロットのICタグ4の記録情報を転記し、この転記よって情報を受け継いだICタグ4に対して鍛造工程の情報を記録する。以下の各工程においても、ロット数が増える場合は、上記と同様にして新たなICタグ4に転記する。
【0058】
(3) 熱処理工程(S3)の管理過程。
【0059】
熱処理を行ったときは、後に検査を行う。要素品2が転がり軸受の内輪や外輪の場合は、硬さ、変形、組織等の検査を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、硬さ、組織等の検査を行う。熱処理工程の情報としては、これらの検査結果を記録する。この他に熱処理条件等を記録してもよい。
【0060】
(4) 研削工程(S4)およびその後の検査工程時の管理過程。
【0061】
研削工程(S4)は、機械要素商品1の種類やその要素品2の種類によって種々の形態がある。要素品2が転がり軸受の内輪または外輪である場合、研削工程(S4)として、図12のように幅研削、外径研削、溝研削、内径研削、溝超仕上げ等を行う。要素品2が転がり軸受の転動体である場合は、粗研磨、中研磨、精研磨、ラッピング等を行う。これらの各工程では、その工程の完了品の検査を行う。ICタグ4に記録する情報は、研削工程(S4)における上記の各工程毎の加工条件の情報等である。この加工条件の情報は、例えば砥石の種類や加工速度等である。
【0062】
研削工程が完了した後、検査を行い、その結果をICタグ4に記録する。検査結果情報としては、各種の寸法、例えば、内外輪の幅研削では、寸法、幅不同、外観等であり、外輪の外径研削では外径寸法、真円度、円筒度、外観等である。内外輪の溝研削では、研削対象箇所の寸法、真円度、ラジアル振れ、アキシァル振れ、溝芯差等である。内輪の内径研削では、内径寸法、真円度等である。内外輪の溝超仕上げでは寸法、外観等である。要素品2が転動体の場合は、研削工程(S4)における粗研削やその他の各工程後における検査結果の寸法や真円度等、研削工程(S4)の完了品である完成状態の要素品2の検査結果となる外観、寸法、真球度、径の相互差、硬さ、音響、顕微鏡検査結果等である。
【0063】
研削工程(S4)では、特注品などの場合は、全数検査が行われる。全数検査の場合、ICタグ4は要素品2の個数だけ準備され、そのICタグ4に対応する要素品2の研削ロット番号と、個々の検査結果等の情報を記録する。研削ロット番号に加えて、個々の要素品2を識別する番号を付加して記録してもよい。要素品2が転がり軸受における転動体等のように1つの機械要素商品1に多数用いられる場合は、1つの機械要素商品1に用いられる要素品2の組、または1つの機械要素商品1の同じ箇所(例えば複列軸受における各列)に用いられる要素品2の組を1つの要素品2とみなして1つのICタグ4を準備し、その組毎の情報を記録してもよい。
【0064】
保持器については材料検査後に荒押し,仕上押しおよび検査が行われる。シールは購入部品であれば受入検査が行われる。
【0065】
機械要素商品1の組立、およびその後の管理過程。
【0066】
上記のように製造された各要素品2は、組立工程で1つの機械要素商品1に組み立てられる。この機械要素商品1に、組立前から組立後に至る間にICタグ9を取付ける。すなわち、要素品2の単独の状態でICタグ9を取付けても、組立の完了後に取付けてもよい。また、この取付けは、機械要素商品1の内部に行っても、表面に行ってもよい。機械要素商品1に取付けられるICタグ9は、機械要素商品1の機能や取扱いの障害にならない程度に小型のものであることが必要である。実用化されているICタグは、1mm未満の大きさのものがあり、例えばこのような寸法のものが使用される。
【0067】
機械要素商品1は、組立が完了すると、完成品検査として各種の検査を行う。この検査は、例えば上記ICタグ9の取付け後に行うが、取付け形態によっては取付け前に行ってもよい。完成品検査として、機械要素商品1が転がり軸受の場合、外輪、内径、外径、幅寸法、真円度、円筒度、ラジアル振れ、アキシャル振れ、横振れ、隙間、音響等の各要因につき検査を行う。完成品検査は、特注品等の個別検査品の場合は、機械要素商品1の全数につき行う。
【0068】
機械要素商品1を組み立てる過程で、その機械要素商品1を構成する各要素品2のICタグ4の記録情報は、図11のように、データベース10により製造番号に対応して記録される。また、完成品検査の検査結果についても、製造番号に対応して記録される。製造番号は個別の機械要素商品1特有の番号であり、例えばシリアル番号とされる。機械要素商品1が上記のような工程を経過しない別要素品(例えば保持器)3を含むものである場合、その別要素品3の情報もデータベース10に記録する。
【0069】
機械要素商品1に上記のように取付けられたICタグ9には、少なくとも上記の製造番号を記録する。このICタグ9には、製造番号の他に、各要素品2のICタグ4の記録情報や、完成品検査の結果等を記録してもよい。機械要素商品1に取付けられたICタグ9に、完成品検査の結果を記録する場合、検査工程でICタグ9に検査結果を記録し、このICタグ9からデータベ−ス10に情報を転記してもよい。
【0070】
データベース10は、図11に示すようにコンピュータネットワーク18上に設けられた管理コンピュータシステム19に設けられる。このデータベース10の記憶部10aには、機械要素商品1についての上記の記録情報Fが記録される。コンピュータネットワーク18は、例えばインターネット等の広域ネットワークや、この広域ネットワークに工場内のローカルエリアネットワークが結合したものである。データベース10は、記憶部10aとこの記憶部10aに対する入出力や検索の管理を行うデータベース管理部10bとでなる。
【0071】
データベース10は、概念的に1つの品質管理用のデータベースとして認識できるものであればよく、物理的には複数に分かれたデータベースの集まりであっても、また他の各種の目的のデータベースと情報を共有するものであってもよい。例えば、データベース10は、コンピュータネットワーク18上に分散して設けられた複数のコンピュータで構成されるものであっても、また上記製造時管理用のデータベース14や技術情報管理用等のデータベースと記録情報を共有するものであってもよい。
【0072】
データベース10は、ネットワーク18を介して、機械要素商品製造工場内の各情報処理機器の他に、技術部門や、倉庫、営業所、顧客企業の事業所の情報処理機器40、および携帯端末等に接続されたものである。
【0073】
この品質管理方法によると、各要素品2の材料購入から機械要素商品1の完成後の検査内容までの履歴情報が、管理コンピュータシステム19に記憶され、機械要素商品1に取付けられたICタグ9には製造番号が記録されているため、製造番号を管理コンピュータシステム19と照合することで、上記履歴情報を機械要素商品1と1対1の関係管理することができる。例えば、出荷後の任意の段階で、その機械要素商品1の使用者や、保守サービスを行うもの等が、機械要素商品1の履歴情報を知ることができる。
【0074】
機械要素商品1の各要素品2の製造工程毎に発生する情報は、工程毎にその工程のロット別に準備したICタグ4にロット番号と共に記録するため、詳細な履歴情報を管理することができる。したがって不良品が発生した場合の、交換、不良品混入範囲の特定、将来の改善等の対処が容易となり、寿命診断や、機械故障につながる事前の交換も容易となる。
【0075】
前記工程毎の情報は、その工程のロット毎に準備したICタグ4に記録するため、手書き伝票に記録する場合に比べて詳細な情報の記録が行え、また例えば端末からコンピュータに入力する場合と異なり、情報を入力するべき箇所がICタグ4であるために視覚的に認識できて、入力作業が明確となり、誤りが生じにくい。また、要素品2の材料購入から研削工程の各工程にわたる種々雑多な全ての情報をコンピュータに記録するものと異なり、生産工程ではこれらの記録情報をICタグ4で持っておくため、コンピュータの負担が軽く、管理が容易になる。このため、容易に、より詳細な情報の管理することができる。
【0076】
また、機械要素商品1の製造番号は、機械要素商品1に取付けられたICタグ9に記録するので、このICタグ9の残った記憶領域を自由に使用でき、製造後の各種の用途、例えば出荷管理、流通管理、顧客管理、メンテナンス管理等に用いることができる。
【0077】
すなわち機械要素商品1は、前述したように、組立完成、検査、出荷の後、一般的に倉庫に配送され、営業所から顧客へ納品される。特注品の場合は、出荷の後、直接に顧客に納品されることもある。顧客では、機械要素商品1を機器に組み込んで使用し、耐久年数等で廃棄することになる。このような各過程で、機械要素商品1に取付けられたICタグ9の製造番号を読取って履歴情報を知る他に、ICタグ9の残りの記憶領域を利用した各種の利用が図れる。
【0078】
ICタグは種々の形式,形状,大きさのものがあり、板状の物の他、例えば1mm未満の大きさの角状や球状の物などがあり、また記憶容量も種々異なるが、取付け対象に応じて大きさや種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0079】
なお、前記各実施形態では、機械要素商品1が転がり軸受である場合につき主に説明したが、この発明のは、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、研削工程を経て製造される要素品2を複数種類含んで組み立てられ機械要素商品1であれば、適用できる。
【0080】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の一実施形態における機械要素商品の梱包容器を示す外観図である。
【図2】梱包容器の他の例を示す外観斜視図である。
【図3】梱包容器の他の例を示す断面図である。
【図4】この発明の一実施形態における梱包容器に複数の軸受を梱包する手順を説明するための図である。
【図5】この発明の他の実施形態における梱包容器を示す図である。
【図6】図5の線A−Aに沿う断面図である。
【図7】ICタグと、リーダ/ライタとの関係を示す図である。
【図8】ICタグの回路図である。
【図9】各ICタグの記録内容の変化を示す説明図である。
【図10】要素品の製造工程中におけるICタグへの記録形態の概念説明図である。
【図11】データベ−スと、ICタグの関係を示す説明図である。
【図12】機械要素商品の組立構成の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 機械要素商品、2 要素品、4,9 ICタグ、5 包装パッケージ、6 パッケージ基材、7 フィルム、10 データベース、20 リーダ/ライタ、31 外装容器、32 品質保証書、33 ポリエチレン袋、34 本体、35 キャップ、40 ICラベル基材、41,42 アンテナ、43 ICチップ、61,61 アンテナパターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の要素からなる機械要素商品を梱包する梱包容器であって、
前記機械要素商品を梱包するための外装容器と、
前記外装容器に取付けられ、外部からの信号の送受により当該機械要素商品に関する品質保証の情報を書込み,読出しが可能なICタグとを備える、機械要素商品の梱包容器。
【請求項2】
前記ICタグには、前記機械要素商品の材料,大きさ,加工,検査,製造者,製造番号,入荷のいずれかの品質に関連する情報の書込みおよび読出しが可能である、請求項1に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項3】
前記外装容器は箱型形状に形成されており、その壁面に前記ICタグが露出するように装着されている、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項4】
前記外装容器の壁面には、前記ICタグとともに品質保証書が貼り付けられる、請求項3に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項5】
前記外装容器は、前記機械要素商品よりも径のわずかに大きな径を有し、その一方が開口された本体と、前記本体の開口を覆うキャップとを含む、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項6】
前記外装容器は、基材と、その基材を覆うシート材料とからなる包装材料を含み、
前記ICタグは前記基材と、前記シート材料との間に装着される、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項7】
複数の機械要素商品の梱包方法であって、
前記複数の機械要素商品は、当該機械要素商品のそれぞれに関する情報が書込まれたICタグを装着する過程と、
容器用ICタグが装着されていて、前記機械要素商品を梱包するための外装容器を準備する過程と、
前記容器用ICタグに梱包すべき機械要素商品の数を示す情報を書込む過程と、
前記外装容器に順次前記複数の機械要素商品を収納するとともに、各機械要素商品のICタグから情報を読み出して収納した数を積算する過程と、
前記容器用ICタグに書込んだ機械要素の商品数と、前記積算した数とに基づいて、前記外装容器に所定数の機械要素商品が収納されたことを判別し、前記外装容器を密封する過程とを含む、機械要素商品の梱包方法。
【請求項1】
複数の要素からなる機械要素商品を梱包する梱包容器であって、
前記機械要素商品を梱包するための外装容器と、
前記外装容器に取付けられ、外部からの信号の送受により当該機械要素商品に関する品質保証の情報を書込み,読出しが可能なICタグとを備える、機械要素商品の梱包容器。
【請求項2】
前記ICタグには、前記機械要素商品の材料,大きさ,加工,検査,製造者,製造番号,入荷のいずれかの品質に関連する情報の書込みおよび読出しが可能である、請求項1に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項3】
前記外装容器は箱型形状に形成されており、その壁面に前記ICタグが露出するように装着されている、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項4】
前記外装容器の壁面には、前記ICタグとともに品質保証書が貼り付けられる、請求項3に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項5】
前記外装容器は、前記機械要素商品よりも径のわずかに大きな径を有し、その一方が開口された本体と、前記本体の開口を覆うキャップとを含む、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項6】
前記外装容器は、基材と、その基材を覆うシート材料とからなる包装材料を含み、
前記ICタグは前記基材と、前記シート材料との間に装着される、請求項1または2に記載の機械要素商品の梱包容器。
【請求項7】
複数の機械要素商品の梱包方法であって、
前記複数の機械要素商品は、当該機械要素商品のそれぞれに関する情報が書込まれたICタグを装着する過程と、
容器用ICタグが装着されていて、前記機械要素商品を梱包するための外装容器を準備する過程と、
前記容器用ICタグに梱包すべき機械要素商品の数を示す情報を書込む過程と、
前記外装容器に順次前記複数の機械要素商品を収納するとともに、各機械要素商品のICタグから情報を読み出して収納した数を積算する過程と、
前記容器用ICタグに書込んだ機械要素の商品数と、前記積算した数とに基づいて、前記外装容器に所定数の機械要素商品が収納されたことを判別し、前記外装容器を密封する過程とを含む、機械要素商品の梱包方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−44740(P2006−44740A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228474(P2004−228474)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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