説明

機能層を有するトレランスリング用のシステム、方法および装置

機能層を有するトレランスリングは環状バンドとエラストマー層とを有する。アセンブリは、これに結合、カレンダリングまたはラミネートされ得る低摩擦層を有してもよい。低摩擦材料は、環状バンドを完全にカプセル化することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、移動部品の間に配置されるトレランスリングに関し、特に、機能層を有するトレランスリング用の改良されたシステム、方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレランスリングは、ハウジング孔内の回転シャフト等の互いに移動する部品の間の移動を制限する。1つのタイプのトレランスリングは、シャフトの外面と孔の内面との間のギャップに配置される環状バンドである。このトレランスリングは、孔内のシャフトの半径方向または軸方向運動を制限しつつ相対移動をなお許容する。
【0003】
従来のトレランスリング構造では、締まり嵌めが内部構成要素と外部構成要素との間に求められる。さらに、最大摩擦係合を提供するための力、または摺動力の最小変化を提供するための力が求められる。構成要素の間の締まり嵌めは、部分の間の相対振動を低減するので望ましい。したがって、トレランスリングは、公差または位置ずれを補償し、トルクを生じることができ、ノイズ、振動およびハーシュネス(NVH)特性等の他の特性を向上させることができる。トルク、さらにNVHは、主に、ステンレス鋼のみから通常形成される普通のトレランスリングの材料特性の影響を受ける。内部構成要素と外部構成要素との間のこれらの要求は、摩擦力を増加させる強力かつ本質的な接触を必要とする。これらの解決策はある用途のために実行可能であるが、トレランスリングの改良は重要であり続ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
機能層を有するトレランスリング用のシステム、方法および装置の実施形態が開示される。いくつかの形態では、トレランスリングアセンブリは、外部構成要素と、外部構成要素に配置され、これに対して移動可能である内部構成要素と、内部構成要素と外部構成要素との間に取り付けられたトレランスリングとを備える。トレランスリングは、金属環状バンドと、金属層に固定されたエラストマー層とを備えてもよい。
【0005】
他の実施形態では、アセンブリは、さらに、環状バンドおよびエラストマー層の少なくとも一方に低摩擦層を備える。環状バンドはばね鋼から形成してもよく、低摩擦層を環状バンドの少なくとも一方の側面にラミネートして、トレランスリングの摺動特性を向上させることが可能である。低摩擦層はエラストマー層の反対側の環状バンドに配置してもよい。低摩擦層はPTFEを含んでもよく、環状バンドまたはエラストマー層に結合してもよい。さらに、アセンブリは、環状バンドとエラストマー層との間に接着剤またはプライマー層を備えてもよい。
【0006】
なお他の実施形態では、トレランスリングは、半径方向内面と半径方向外面とを有する金属材料から形成された環状バンドを備える。低摩擦材料は、半径方向内面および半径方向外面の両方が低摩擦材料内に実質的に完全に配置されるように環状バンドをカプセル化する。低摩擦材料からおよびその外部に環状バンドの部分が露出せず、またはそのある部分のみが露出するように、環状バンドを低摩擦材料内に完全に配置してもよい。環状バンドはばね鋼を含み、穿孔されるかまたは打ち抜かれてもよい。環状バンドは、圧印または深絞りによって環状バンドに形成される波形等の幾何学的形状部を備えてもよい。さらに、環状バンドは、カレンダリングまたはラミネートによって低摩擦材料内にカプセル化してもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、低摩擦材料は、滑らかな円筒状プロフィルを形成することが可能であり、環状バンドは、滑らかな円筒状のプロフィル内の非円筒状プロフィルで波打つ。低摩擦材料および環状バンドの各々は非円筒状プロフィルを有し、互いに相補的な形状でもよい。さらに、トレランスリングは、トレランスリングに接合される裏当て層を備えてもよい。
【0008】
追加の実施形態では、トレランスリングを形成する方法は、金属材料から形成されたシートを設けるステップと、シートにアパーチャを形成するステップと、幾何学的形状部をシート内に製作してシートプロフィルを形成するステップと、シートプロフィルを低摩擦材料内にカプセル化するステップと、カプセル化されたシートプロフィルを環状形状に形成してトレランスリングを形成するステップとを含む。環状バンドは、半径方向内面および半径方向外面の両方が低摩擦材料内に実質的に配置されるように、環状バンドをカプセル化する低摩擦材料を有する半径方向内面および半径方向外面を有してもよい。さらに、本方法は、シートプロフィルの幾何学的形状部に対して相補的な形状の低摩擦材料に形状を形成するステップを含むことが可能である。
【0009】
添付図面を参照することにより、本開示は、より良く理解され得るとともに、その多くの特徴および利点が当業者に明らかにされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A−B】本発明に従って構成された穿孔された金属シートの一実施形態の平面図および側断面図である。
【図2】本発明に従って構成された穿孔された金属シートの形成された変形の他の実施形態の側断面図である。
【図3】本発明に従って構成された穿孔された金属シートの形成された変形の他の実施形態の側断面図である。
【図4】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートのなお他の実施形態の側断面図である。
【図5】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートのなお他の実施形態の側断面図である。
【図6】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートの追加の実施形態の側断面図である。
【図7】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートの追加の実施形態の側断面図である。
【図8】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートの他の実施形態の側断面図である。
【図9】本発明に従って構成されたカプセル化され、形成され、穿孔された金属シートの他の実施形態の側断面図である。
【図10】本発明に従って構成される図5の実施形態の等角図である。
【図11】本発明に従って構成されたトレランスリングの一実施形態の側断面図である。
【図12A−C】本発明に従って構成されたトレランスリングの他の実施形態の側断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレランスリングアセンブリであって、
軸線を中に有する孔を有する外部構成要素と、
内部構成要素であって、前記外部構成要素と噛み合い、かつ前記外部構成要素に対して移動可能であるように前記外部構成要素の前記孔に取り付けられた内部構成要素と、
前記内部構成要素と前記外部構成要素との間の前記孔に配置されたトレランスリングと
を備え、前記トレランスリングが、
金属材料から形成された環状バンドと、
前記環状バンドのエラストマー層と、
前記環状バンドおよび前記エラストマー層の少なくとも一方の低摩擦層と、
を備える、
トレランスリングアセンブリ。
【請求項2】
前記環状バンドがばね鋼から形成され、前記低摩擦層が前記環状バンドの少なくとも一方の側面にラミネートされる、請求項1に記載のトレランスリングアセンブリ。
【請求項3】
前記低摩擦層が前記エラストマー層の反対側の前記環状バンドにある、請求項1に記載のトレランスリングアセンブリ。
【請求項4】
前記低摩擦層がPTFEを含み、前記環状バンドおよび前記エラストマー層の一方に結合され、前記エラストマー層が、ニトリルゴム、オレフィンエラストマー、ポリエーテル/ポリエステルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンアクリルゴムおよびフルオロエラストマー材料の1つを含む、請求項1に記載のトレランスリングアセンブリ。
【請求項5】
前記環状バンドと前記エラストマー層との間に、および前記低摩擦層と前記環状バンドおよび前記エラストマー層の前記少なくとも一方との間に、接着剤またはプライマー層をさらに備える、請求項1に記載のトレランスリングアセンブリ。
【請求項6】
アセンブリであって、
外部構成要素と、
前記外部構成要素に配置されかつ前記外部構成要素に対して移動可能である内部構成要素と、
前記内部構成要素と前記外部構成要素との間に取り付けられたトレランスリングと、
を備え、前記トレランスリングが、
金属材料から形成されかつ半径方向内面と半径方向外面とを有する環状バンドと、
低摩擦材料であって、前記半径方向内面および前記半径方向外面の両方が前記低摩擦材料内に実質的に配置されるように前記環状バンドをカプセル化する低摩擦材料と、
を備える、
アセンブリ。
【請求項7】
前記環状バンドの部分が前記低摩擦材料から露出せず、および前記低摩擦材料の外部に露出しないように、前記環状バンドが前記低摩擦材料内に完全に配置される、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記環状バンドの少なくとも一部が前記低摩擦材料から露出し、前記低摩擦材料に対して外側に延びる、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記環状バンドがばね鋼であり、穿孔されるかまたは打ち抜かれる、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記環状バンドが、圧印または深絞りによって前記環状バンドに形成される幾何学的形状部を備え、前記幾何学的形状部が、波形、円錐形または球状形状部を備える、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記環状バンドが、カレンダリングまたはラミネートによって前記低摩擦材料内にカプセル化され、前記低摩擦材料がPTFE化合物テープを含む、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記低摩擦材料が滑らかな円筒状プロフィルを形成し、前記環状バンドが前記滑らかな円筒状プロフィル内の非円筒状プロフィルで波打つ、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記低摩擦材料および前記環状バンドの各々が非円筒状プロフィルを有し、互いに相補的な形状である、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記トレランスリングに接合された裏当て層をさらに備え、前記裏当て層が、鋼、Al、CuおよびTiの1つから形成され、前記低摩擦層に対して半径方向外側にあり、前記低摩擦層が前記裏当て層にラミネートされる、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記低摩擦層が前記環状バンドの前記半径方向内面および半径方向外面の各々に約0.1〜0.05mmの厚さを有し、前記低摩擦層が前記環状バンドに結合されるかまたは溶接される、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項16】
トレランスリングを形成する方法であって、
(a)金属材料から形成されたシートを設けるステップと、
(b)前記シートにアパーチャを形成するステップと、
(c)前記シート内に幾何学的形状部を製作してシートプロフィルを形成するステップと、
(d)前記シートプロフィルを低摩擦材料内にカプセル化するステップと、
(e)前記カプセル化されたシートプロフィルを環状形状に形成してトレランスリングを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
ステップ(b)が、穿孔または打ち抜きによって、成形された孔を前記シートに形成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(c)が、波形、球形または円錐形を圧印、形成または深絞りすることによって前記シート内に幾何学的形状部を製作して、前記シートプロフィルを形成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(d)が、前記シートの前記アパーチャを通してカレンダリングまたはラミネートすることによって前記シートプロフィルを前記低摩擦材料内にカプセル化するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記シートが、半径方向内面と半径方向外面とを有する環状バンド内に形成され、前記半径方向内面および半径方向外面の両方が前記低摩擦材料内に配置されるように、前記低摩擦材料が前記環状バンドをカプセル化する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(d)の後に、前記シートプロフィルの前記幾何学的形状部に対して相補的な形状の前記低摩擦材料に形状を形成するステップをさらに含み、前記形状を形成するステップが、前記低摩擦材料を圧印、カレンダリングおよび焼結するステップの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(c)がステップ(d)の前に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(d)がラミネートを含み、ステップ(c)の前に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
裏当て層を前記トレランスリングに設置するステップをさらに含み、前記裏当て層が前記低摩擦層の半径方向外側に設置される、請求項16に記載の方法。

【図12A−C】本発明に従って構成されたトレランスリングの他の実施形態の側断面図である。
【図13】本発明に従って構成されたトレランスリングの他の実施形態の側断面図である。
【図14A−C】本発明に従って構成されたトレランスリングのなお他の実施形態の側断面図である。
【0011】
異なる図面における同一の参照番号の使用は、同様または同一の項目を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
機能層を有するトレランスリング用のシステム、方法および装置の実施形態が図1〜図14に開示されている。例えば、図12〜図14は、軸線を中に有する孔25を有する外部構成要素23を備えるトレランスリングアセンブリ21を示している。内部構成要素27は外部構成要素23の孔25に取り付けられ、外面29を有する。内部構成要素27は外部構成要素23と噛み合い、これに対して移動可能である。トレランスリング31は、内部構成要素23と外部構成要素27との間の孔25に配置される。トレランスリング31は、金属材料から形成された環状バンド33と、環状バンド33上のエラストマー層35と、環状バンド33およびエラストマー層35の少なくとも一方の上の低摩擦層37(図13)とを備える。
【0013】
環状バンド33はばね鋼から形成してもよく、低摩擦層37は環状バンドの少なくとも一方の側面にラミネートしてもよい。図13に示したように、低摩擦層37をエラストマー層35の反対側の環状バンド33に配置してもよい。低摩擦層37はPTFEを含み、糊または接着剤39によって環状バンド33およびエラストマー層35の一方に結合してもよい。エラストマー層は、例えば、ニトリルゴム、オレフィンエラストマー、ポリエーテル/ポリエステルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンアクリルゴムおよびフルオロエラストマー材料を含むことが可能である。接着剤39はまた、環状バンド33とエラストマー層35との間に、および低摩擦層37と環状バンドおよび/またはエラストマー層との間にプライマーを含んでもよい。
【0014】
次に、図11を参照すると、実施形態はまた、外部構成要素53と、これに対して移動可能な外部構成要素53に配置された内部構成要素55とを有するアセンブリ51を備えてもよい。トレランスリング61は、内部構成要素53と外部構成要素55との間に取り付けられる。トレランスリングは、金属材料から形成されかつ半径方向内面65と半径方向外面67とを有する環状バンド63を備える。低摩擦材料71は、半径方向内面63および半径方向外面65の両方が低摩擦材料71内に実質的に配置されるように環状バンド63をカプセル化する。
【0015】
図8と図9に示したように、バンド63の部分が低摩擦材料71からおよびその外部に露出しないように、バンド63を低摩擦材料71内に完全に配置してもよい。他の実施形態(図4〜図7)では、バンド63の少なくとも一部は低摩擦材料71から露出し、外側に延びる。バンド63は、図1Aと図1Bに示したように、ばね鋼から形成することが可能であり、穿孔するかまたは打ち抜いてもよい(73)。図2と図3は、バンド63が、圧印または深絞りによって当該バンド63に形成される幾何学的形状部75を備え得ることを示している。幾何学的形状部75は、図4と図5に示したように、波形、円錐形または球状形状部を備えてもよい。カレンダリングおよび焼結(図4〜図7)またはラミネート(図8と図9)によって、バンド63を低摩擦材料内にカプセル化してもよい。図8と図9に示したように、バンド63にラミネートされた低摩擦材料71はPTFE化合物テープを含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態(図4、図5、図10および図11)では、バンド63が材料71の滑らかな円筒状プロフィル内の非円筒状プロフィルで波打つように、低摩擦材料71により、滑らかなプロフィル(例えば、図11の低摩擦材料71の最終形状の円筒)を形成することが可能である。他の実施形態(図6〜図9)では、低摩擦材料71およびバンド63の両方の各々は非円筒状プロフィルを有し、その形状は互いに相補的である。
【0017】
図11の実施形態は、さらに、トレランスリングアセンブリ61に接合される裏当て層77を備える。裏当て層77は、例えば、鋼、Al、CuおよびTiから形成してもよく、低摩擦層71の半径方向外側にある。いくつかの実施形態では、低摩擦層71は裏当て層77にラミネートされる。いくつかの形態では、低摩擦層はバンド63の半径方向内面65および半径方向外面67の各々に約0.1〜0.05mmの厚さを有することが可能である。さらに、低摩擦層71をバンド63に結合または溶接してもよい。
【0018】
なお他の実施形態では、トレランスリングを形成する方法は、金属材料から形成されたシートを設けるステップと、シートにアパーチャを形成するステップと、シート内に幾何学的形状を製作してシートプロフィルを形成するステップと、シートプロフィルを低摩擦材料内にカプセル化するステップと、カプセル化されたシートプロフィルを環状形状に形成して、トレランスリングを形成するステップとを含む。
【0019】
アパーチャの形成は、穿孔または打ち抜きによって、形成された孔をシートに形成するステップを含んでもよい。シート内への幾何学的形状の製作は、波形、球形または円錐形を圧印、形成または深絞りしてシートプロフィルを形成することによって実現することが可能である。カプセル化ステップは、シートのアパーチャを通してカレンダリングまたはラミネートすることによって低摩擦材料のシートプロフィルで実行することが可能である。シートは、半径方向内面と半径方向外面とを有する環状バンド内に形成してもよい。半径方向内面および半径方向外面の両方が低摩擦材料内に配置されるように、低摩擦材料により環状バンドがカプセル化される。
【0020】
本方法は、さらに、カプセル化後に、シートプロフィルの幾何学的形状部に対して相補的な形状の低摩擦材料に形状を形成するステップを含んでもよい。形状を形成するステップは、低摩擦材料を圧印、カレンダリングおよび/または焼結するステップを含んでもよい。製作ステップおよびカプセル化ステップは互いの前または後に行うことが可能であり、カプセル化はラミネートを介して行うことが可能である。本方法は、さらに、裏当て層をトレランスリングに、例えば低摩擦層の半径方向外側に設置するステップを含んでもよい。
【0021】
本明細書に開示される実施形態は、従来の解決策に関する重要な利点を有する。例えば、トレランスリングとエラストマー裏当てとの組み合わせにより、より柔らかい性能を有するトレランスリングの設計が改良される。柔らかいという用語は、それほど変化しない低レベルのトルクの提供に関して使用される。NVHに関し、これらの材料は、他の性能範囲を減らすことなくトレランスリングによって接続される2つの噛合部を大きく分離する。結果として、これらの設計はノイズおよび振動を著しく低減する。
【0022】
他の実施例では、ばね挙動を有する金属材料は、複合材料を形成するために接着剤および/またはプライマーで被覆され、エラストマー層と組み合わされる。金属は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼または他の弾性金属を含んでもよい。エラストマー裏当ては、例えば、ニトリルゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム、オレフィンエラストマー、ポリエーテル/ポリエステルエラストマー、エチレンプロピレンエラストマー、エチレンアクリルゴムおよび/またはフルオロエラストマーを含んでもよい。他の実施形態では、トレランスリングは内部金属層と外部エラストマー層とを備えてもよい。
【0023】
他の実施形態では、摺動層または低摩擦層が構造に加えられる。これらの設計は公差補償要素の摺動特性を向上させる。例えば、低摩擦材料は、エラストマー層に、および/またはさらにエラストマー層の反対側の金属側にPTFEを含んでもよい。エラストマー層と同様に、低摩擦層は、接着剤または糊によってトレランスリング(例えば、金属層またはエラストマー層)に結合してもよい。
【0024】
なお他の実施形態では、弾性金属層は低摩擦材料でラミネートされる。次に、金属面を接着剤および/またはプライマーで被覆し、エラストマー層と組み合わせて複合材料を形成することが可能である。他の組み合わせも可能である。いくつかの実施形態は、低摩擦層化合物によって完全にカプセル化されるトレランスリングを含む。例えば、ばね鋼から形成された穿孔された金属コアを有する複合構造は、PTFEで完全にカプセル化される。
【0025】
組成および製造方法の両方は従来の摺動軸受とは異なり、従来のトレランスリングとも異なる。説明したカプセル化されたトレランスリングにより、複数の異なる機能が提供される。これらの実施形態は、追加の公差補償を有する摺動軸受として作用し、規定トルクを加えることができ、これらの実施形態は、改良された摩擦特性を有するトレランスリングとして働く。
【0026】
基材または中間層として、ばね鋼材料のシートまたはコイルを最初に穿孔し、次に(例えば、波形、球状形状、および/または他の深絞り形状または圧印形状に)成形してもよい。これらの成形領域を規則的に分布させて、共に近接して形成してもよい。このようにして、いくつかの実施形態では、これらのトレランスリングに従来のトレランスリングと同数の波形が存在する。いくつかの実施形態では、ばね鋼コアは、完全に埋め込まれるかまたはカプセル化され、この結果、得られる化合物ストリップは起伏をまったく示さず、ブロック状形状として現れる。
【0027】
例えば、カレンダリング工程によってまたはテープを鋼コア上にラミネートすることによって、カプセル化を達成することが可能である。任意選択的に、後者の場合、強い裏当て材料を構造またはコアに加えて、ハウジング内の圧入嵌めが可能な軸受を製造することが可能である。
【0028】
この複合構造の実施形態の一般的な用途を使用して、クリアランスのないまたはクリアランスが低減された用途のための摺動軸受を製造するか、または低い保持力を有するトレランスリングを製造することが可能である。ばね鋼から形成された金属コアはばねとして作用し、したがって、低摩擦化合物で被覆されたばね波形を使用することによって軸受面と例えばシャフトとの間で公差調整が提供される。低摩擦層はシャフトまたは対応部分の機能側にのみ係合してもよい。代わりに、低摩擦層は両方の構成要素に係合し、および/または噛合構成要素の間に必要とされる保持力を提供してもよい。低摩擦層は、複合構造が従来の摺動軸受として働くかまたは低摩擦材料の本質的に低い摩擦係数のため比較的低い保持力を提供することを可能にする。
【0029】
トレランスリングは、ステアリングコラムロック機構等の噛合構成要素の間で使用されるときに、摺動力の制御(例えば、軸方向または回転方向)を行うことが可能である。トレランスリングは、閾値トルクレベルに達すると構成要素の間の回転を可能にすることによって過負荷を防止する。例えば、ステアリングコラムエネルギー吸収システムでは、トレランスリングは、軸方向の力レベルに達すると軸方向の滑りが生じることを可能にする。
【0030】
一般に、より低い剛性を有する波形は低いトルク軸受を生成し、より高い剛性の波形はドアヒンジ用途等のためにより高いトルクを生成する。これらのタイプの性能は、アセンブリの摩擦特性と組み合わされたときに所望の摺動力レベルを生む正確な半径方向の力レベルを生成するばね特性を有するように、トレランスリングの波形を設計することによって達成することが可能である。
【0031】
アセンブリの典型的な寸法公差にわたって経験される力の変化を制限するために、波形ばね特性の弾性/可塑性の性質が使用される。これにより、合理的に一貫した摺動力が維持される。波形の幾何学的形状、材料の厚さおよび硬度の設計によって、力の操作が達成される。構成要素の寸法公差に対処するために、トレランスリングの波形は、典型的に、波形が設置される隙間の公差よりも大きな量で圧縮されるように設計される。
【0032】
比較的低い摺動力レベルまたは回転力レベルが(ステアリングコラムの調節機構等で)必要である場合に、またはトレランスリングが旋回ブッシュとして作用する場合に、限界が存在する。これらの用途では、一般に力は高すぎ、半径方向の剛性が低くすぎる。トレランスリングの波形の剛性を低減して、最大の力を制限することが可能であるが、このことは、半径方向の荷重支承能力の低いアセンブリをもたらすことがある。比較的低い剛性の波形でも、生成された摺動力レベルは高すぎる可能性がある。
【0033】
他の実施形態では、低摩擦層は、例えば、ポリケトン、ポリアラミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリアミドイミド、超高分子量ポリエチレン、熱可塑性フルオロポリマー、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、またはそれらの任意の組み合わせ等のポリマーを含む材料を含み得る。一実施例では、熱可塑性材料は、ポリケトン、ポリアラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンスルホン、フルオロポリマー、ポリベンズイミダゾール、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施例では、熱可塑性材料は、ポリケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせ等のポリマーを含む。別の実施例では、材料は、ポリケトン、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトン、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせ等のポリケトンを含む。一例のフルオロポリマーは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、PTFE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンターポリマー、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデン(THV)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。追加の実施例では、熱可塑性ポリマーは超高分子量ポリエチレンでもよい。
【0034】
摺動面の潤滑(例えば、オイルまたはグリースによる)は、力が大きな用途で使用することが可能である。例示的な固体潤滑剤は、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、グラフェン、膨張黒鉛、窒化ホウ素、タルク、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。例示的なセラミックまたはミネラルは、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、フッ化カルシウム、窒化ホウ素、マイカ、ウォラストナイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、カーボンブラック、顔料、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0035】
トレランスリングタイプのコアのばね特性と低摩擦化合物ベースの外面の低摩擦/潤滑特性との組み合わせにより、より低い摩擦の摺動界面が提供される。この設計により、トレランスリングが、摺動軸受用途のためのより高いトルクレベルで、および従来のトレランスリングで可能であるよりも高い半径方向荷重強度および低い摺動力で、より広い隙間にわたって動作するように設計することが可能である。
【0036】
このような実施形態の用途は、例えば、ラップトップコンピュータおよび携帯電話等の携帯電子装置用のヒンジアセンブリを含む。これらの用途は、製品の寿命にわたってよく規定されたトルクの低い保持力を提供するヒンジ機構を必要とする。従来の軸受は、低い保持力ならびによく規定された初期のトルクを提供している。しかし、本発明により、低摩擦層の低い摩耗と組み合わせたばね鋼の波形のばね調整機能のため、トルク値を製品寿命にわたって比較的一定に保持することが可能である。対照的に、従来のトレランスリングは強い保持力を提供するが、摩擦が高い。
【0037】
この記載してきた説明は、最良の形態を含む実施例を使用しており、当業者が本発明を製造および使用することも可能にする。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって規定され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合に、または特許請求の範囲の文言とはごく僅かな差がある等価の構造要素を含む場合に、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【公表番号】特表2013−512403(P2013−512403A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541542(P2012−541542)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070123
【国際公開番号】WO2011/073412
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508298237)サン−ゴバン パフォーマンス プラスチックス パンプス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【Fターム(参考)】