説明

機能性物質含有有機無機複合体

【課題】表面に所望の硬度を有すると共に基体との密着性に優れ、かつ特定の機能が付与された有機無機複合体を提供すること。
【解決手段】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物を含有する有機無機複合体であって、さらに、機能性物質を含有することを特徴とする有機無機複合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機複合体、その製造方法及び有機無機複合体形成用組成物に関し、詳しくは、撥水・撥油性や帯電防止効果や光触媒効果を有した有機無機複合体、これら有機無機複合体の製造方法、及びこれら有機無機複合体を形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市販品のシラン系コート剤の原料としては、主として3官能のシランが用いられており、かかる3官能シランにより、適度な硬さと柔軟性を持つポリシロキサンが形成される。しかしながら、3官能シランの膜では、まだハードコート性が不足しており、それを補うために、3官能シランに、4官能シランやコロイダルシリカを混合することにより補っているが、膜を硬くすれば、ヒビ割れやすくなり、密着性が悪くなるという問題がある。例えば、シラン系のコート剤としては、エポキシ基を有する3官能アルコキシシラン化合物を含有する防汚膜形成用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、このようなシラン系のコート剤に機能性物質を加えることにより、高撥水・撥油性や、帯電防止性を付与したハードコート液が提案されている(例えば、特許文献2,3参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−195417号公報
【特許文献2】特開平9−324139号公報
【特許文献3】特開2004−90420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、光感応性化合物及び機能性物質を用いた新規な有機無機複合体、特に、表面に所望の硬度を有すると共に基体との密着性に優れ、かつ特定の機能が付与された有機無機複合体、かかる有機無機複合体の製造方法、及びかかる有機無機複合体を形成可能な有機無機複合体形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新規な有機無機複合体の開発に取り組み、まず、特定の有機ケイ素化合物及び光感応性化合物を含む組成物を熱硬化させることにより、表面が内部より高い硬度を有すると共に、基体との密着性に優れた有機無機複合体を製造することができることを見い出し、さらには、光照射することにより、表面が非常に高い硬度を有すると共に、内部及び裏面側が適当な硬度を有しつつ、かつ基体との密着性に優れた有機無機複合体を製造することができることを見い出した(特願2006−013933号)。本発明者らは、さらに研究を進めた結果、上記効果を維持しつつ、種々の機能が付与された、非常に有用性の高い有機無機複合体を製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有する有機無機複合体であって、さらに、機能性物質を含有することを特徴とする有機無機複合体や、(2)機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする前記(1)に記載の有機無機複合体や、(3)機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする前記(1)に記載の有機無機複合体や、(4)機能性物質が、光触媒であることを特徴とする前記(1)に記載の有機無機複合体や、(5)薄膜であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の有機無機複合体や、(6)膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下の薄膜であることを特徴とする前記(5)に記載の有機無機複合体や、(7)膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の有機無機複合体や、(8)炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする前記(7)に記載の有機無機複合体や、(9)炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする前記(7)又は(8)に記載の有機無機複合体や、(10)ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上の薄膜であることを特徴とする前記(5)〜(9)のいずれかに記載の有機無機複合体に関する。
【0008】
また、本発明は、(11)
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、機能性物質を含有する薄膜であって、膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下であることを特徴とするポリシロキサン系薄膜に関する。
【0009】
さらに、本発明は、(12)機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする前記(11)に記載のポリシロキサン系薄膜や、(13)機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする前記(11)に記載のポリシロキサン系薄膜や、(14)機能性物質が、光触媒であることを特徴とする前記(11)に記載のポリシロキサン系薄膜や、(15)膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする前記(11)〜(14)のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜や、(16)炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする前記(15)に記載のポリシロキサン系薄膜や、(17)炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする前記(15)又は(16)に記載のポリシロキサン系薄膜や、(18)ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする前記(11)〜(17)のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜に関する。
【0010】
また、本発明は、(19)金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物の存在下、
機能性物質を含有する式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物に、350nm以下の波長の光を照射することを特徴とする有機無機複合体の製造方法や、(20)有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする前記(19)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(21)光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする(19)又は(20)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(22)照射する光が、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする前記(19)〜(21)のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法や、(23)照射する光が、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする前記(22)に記載の有機無機複合体の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、(24)薄膜を製造することを特徴とする前記(19)〜(23)のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法や、(25)製造される薄膜における、膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下であることを特徴とする前記(24)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(26)製造される薄膜が、膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする前記(24)又は(25)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(27)炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする前記(26)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(28)炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする前記(26)又は(27)に記載の有機無機複合体の製造方法や、(29)製造される薄膜が、ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする前記(24)〜(28)のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、(30)前記(19)〜(29)のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする有機無機複合体に関する。
【0013】
また、本発明は、(31)
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物と、機能性物質とを含有することを特徴とする有機無機複合体形成用組成物や、(32)機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする前記(31)に記載の有機無機複合体形成用組成物や、(33)機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする前記(31)に記載の有機無機複合体形成用組成物や、(34)機能性物質が、光触媒であることを特徴とする前記(31)に記載の有機無機複合体形成用組成物に関する。
【0014】
さらに、本発明は、(35)有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする前記(31)〜(34)のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物や、(36)光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする前記(31)〜(35)のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物や、(37)光感応性化合物における金属原子が、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物におけるケイ素原子に対して、0.01〜0.5モル当量含有されていることを特徴とする前記(31)〜(36)のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の有機無機複合体としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有し、さらに、機能性物質を含有する有機無機複合体であれば特に制限されるものではなく、例えば、有機ケイ素化合物の縮合物に、光感応性化合物及び/又はその誘導体、機能性物質が非結合状態で分散されてなるものや、有機ケイ素化合物の縮合物に、光感応性化合物及び/又はその誘導体、機能性物質が結合してなるもの(例えば、Si−O−M結合を有するもの(Mは光感応性化合物中の金属原子を表す。))や、その混合状態からなるものが挙げられ、後述する有機無機複合体形成用組成物を用いて製造することができる。
【0016】
ここで、光感応性化合物とは、そのメカニズムの如何によらず、表面側から照射される350nm以下の波長の光の作用によって、表面側の炭素成分を除去することができる化合物であり、好ましくは、表面から深さ方向10nmにおける表面部の炭素含有量が、炭素量が減少していない部分(膜の場合、例えば、膜裏面から深さ方向10nmにおける裏面部)の炭素含有量の80%以下、より好ましくは2〜60%、さらに好ましくは2〜40%とすることができる化合物であり、特に好ましくは、炭素成分を、その除去量が表面側から漸次減少するように所定深さまで除去することが可能な化合物、すなわち、表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加する膜を形成することができる化合物をいう。具体的に、例えば、350nm以下の波長の光を吸収して励起する化合物を挙げることができる。また、350nm以下の波長の光とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いてなる光、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いてなる光、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いてなる光を意味する。なお、本発明の有機無機複合体における主成分となる有機ケイ素化合物の縮合物は、後述する本発明の有機無機複合体形成用組成物における有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物がさらに縮合したものを意味する。
【0017】
式(I)中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表す。かかる有機基としては、炭化水素基、ポリマーからなる基等を挙げることができ、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、又は炭素数1〜10のエポキシアルキル基がより好ましい。また、置換基としてメタクリロキシ基を有する炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。また、かかる有機基は、ケイ素原子を含んでいてもよく、ポリシロキサン、ポリビニルシラン、ポリアクリルシラン等のポリマーを含む基であってもよい。また、nは、1又は2を表し、n=1のものが特に好ましい。nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。式(I)の(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。加水分解性基とは、例えば、無触媒、過剰の水の共存下、25℃〜100℃で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基や、シロキサン縮合物を形成することができる基を意味し、具体的には、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基等を挙げることができ、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数1〜4のアシルオキシ基が好ましい。
【0019】
具体的に、有機ケイ素化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジロキシトリメトキシシラン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、オキサシクロヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリ(メタ)アクリロキシシラン、メチル[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、メチル−トリグリシジロキシシラン、メチルトリス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、これらの式(I)で表される有機ケイ素化合物の中で、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルメトキシシラン等の炭素数6以上のアルキル基(R)を有する有機ケイ素化合物や、ジメチルジメトキシシラン等の2つのアルキル基(R)を有する有機ケイ素化合物は、UV照射によるR成分の分解が比較的起こりにくいので、これらを一部又は全部用いることにより、膜の撥水性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、ポリマー系の有機ケイ素化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどから選ばれるビニル系化合物を共重合したビニル系ポリマーを式(I)のR成分とするものを挙げることができる。
【0021】
本発明の有機無機複合体における光感応性化合物としては、350nm以下の波長の光に感応する化合物であり、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、加水分解物及び/又は縮合物であることが好ましく、特に、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が好ましい。これから誘導される化合物としては、例えば、金属キレート化合物の縮合物等がさらに縮合されたもの等を挙げることができる。かかる光感応性化合物及び/又はその誘導体は、上述のように、有機ケイ素化合物と化学結合していてもよく、非結合状態で分散していてもよく、その混合状態のものであってもよい。
【0022】
金属キレート化合物としては、水酸基若しくは加水分解性基を有する金属キレート化合物であることが好ましく、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属キレート化合物であることがより好ましい。なお、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有するとは、加水分解性基及び水酸基の合計が2以上であることを意味する。また、前記金属キレート化合物としては、β−ケトカルボニル化合物、β−ケトエステル化合物、及びα−ヒドロキシエステル化合物が好ましく、具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル等のβ−ケトエステル類;アセチルアセトン、へキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチル−へキサン−2,4−ジオン等のβ−ジケトン類;グリコール酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸:等が配位した化合物が挙げられる。
【0023】
金属有機酸塩化合物としては、金属イオンと有機酸から得られる塩からなる化合物であり、有機酸としては、酢酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸類;スルフォン酸、スルフィン酸、チオフェノール等の含硫黄有機酸;フェノール化合物;エノール化合物;オキシム化合物;イミド化合物;芳香族スルフォンアミド;等の酸性を呈する有機化合物が挙げられる。
【0024】
また、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物は、上記金属キレート化合物及び金属有機酸塩化合物を除くものであり、例えば、金属の水酸化物や、金属アルコラート等を挙げることができる。
【0025】
金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、イソシアネート基が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアシルオキシ基が好ましい。なお、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有するとは、加水分解性基及び水酸基の合計が2以上であることを意味する。
【0026】
かかる金属化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物1モルに対して、0.5モル以上の水を用いて加水分解したものであることが好ましく、0.5〜2モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0027】
また、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、金属キレート化合物 1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解したものであることがさらに好ましく、5〜20モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0028】
また、金属有機酸塩化合物の加水分解物及び/又は縮合物としては、金属有機酸塩化合物1モルに対して、5〜100モルの水を用いて加水分解したものであることがさらに好ましく、5〜20モルの水を用いて加水分解したものであることがより好ましい。
【0029】
また、これら金属化合物、金属キレート化合物又は金属有機酸塩化合物における金属としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛等が挙げられ、これらの中でもチタン、ジルコニウム、アルミニウムが好ましく、特にチタン好ましい。これらは2種以上用いることもできる。
【0030】
本発明の有機無機複合体における機能性物質としては、具体的に、撥水・撥油性物質、導電性物質、光触媒、抗菌剤、防カビ剤、防臭剤、蛍光顔料、蓄光顔料、難燃性物質、多孔性物質、吸着性物質、高屈折率物質、低屈折率物質等を挙げることができ、各機能性物質は、それぞれの機能を有効に発揮することができる程度に含有させることができる。
【0031】
機能性物質としての撥水・撥油性物質は、水及び油成分に対する膜の静的接触角を大きくすることができる物質であり、例えば、フッ素を含有するフッ素系化合物を挙げることができる。かかるフッ素系化合物としては、炭化水素又は炭化水素基を有する化合物にフッ素原子が置換した化合物や、ポリテトラフルオロエチレン等のポリマーを挙げることができる。これらの中でも、本発明においては、炭化水素基を有する有機ケイ素化合物にフッ素原子が置換したフッ素含有有機ケイ素化合物が好ましい。具体的に、フッ素含有有機ケイ素化合物としては、上記式(I)で表される有機ケイ素化合物のRに置換基としてフッ素原子を有している構造のものが挙げられる。炭化水素又は炭化水素基(R)は、直鎖状のものが好ましく、炭素数としては8以上であることが好ましく、炭素数8〜20であることがより好ましい。
【0032】
本発明の有機無機複合体中におけるフッ素の含有量としては特に制限されるものではないが、0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜15重量%であることがより好ましく、3〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明の撥水・撥油性物質を含有する有機無機複合体は、350nm以下の波長の光を照射することにより、照射前に比べ、液滴の転落角が低下するものであることが好ましく、例えば、光照射後に、10μLの水滴やオレイン酸等の油成分の転落角が5°以上低下するものであることが好ましく、10°以上低下するものであることがより好ましく、15°以上低下するものであることがさらに好ましい。光照射後の液滴の転落角としては、20°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。撥油性が高い場合には、指紋の付着を抑制し、また、指紋が付着した後も容易に除去することが可能となる。
【0034】
また、導電性物質としては、金属、導電性金属化合物、黒鉛、カーボンブラック、チタンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。金属としては、具体的には、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン等を挙げることができ、導電性金属化合物としては、アンチモンドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物等の金属酸化物を挙げることができる。
【0035】
本発明の有機無機複合体中における導電性物質の含有量としては、その種類にもよるが、一般に、1〜50重量%であることが好ましく、2〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の導電性物質を含有する有機無機複合体は、350nm以下の波長の光を照射することにより、照射前に比べ、表面抵抗が50%以下に低下するものが好ましい。
【0037】
光触媒は、本発明の光感応性化合物とは異なり、350nmを超える光の波長にも感応するものであり、例えば、金属酸化物を挙げることができ、具体的には、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)等を挙げることができる。
【0038】
抗菌剤・防カビ剤・防臭剤としては、無機系、有機系のいずれであってもよく、無機系のものとしては、例えば、金属塩等を挙げることができ、有機系としては、ビグアナイド、カーバニリド、両性界面活性剤、カルボン酸、アルコール、第四アンモニウム塩、フェノール、アミノ酸、スルファミド、ピリジン、ニトリル、ポリマー等を挙げることができる。無機系の金属塩としては、具体的に、例えば、結晶性アルミノケイ酸銀及びナトリウム(銀置換ゼオライト)、銀・亜鉛 ゼオライト、銀ゼオライト、リン酸ジルコニウム・酸化銀、リン酸ジルコニウム・酸化銀・酸化亜鉛、リン酸チタンと酸化亜鉛と酸化チタンのゲル混合物、リン酸チタン銀担持ゲルと酸化亜鉛の混合物、銀担持二酸化珪素、酸化銀、トリリン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、塩化銀、銀、酸化亜鉛、銅化合物、金属銅、テトラアミン銅イオン、燐酸系・硝子、金属酸化物を含む親水性アミノシリコンポリマー等を挙げることができる。
【0039】
蛍光材料としては、例えば、硫化亜鉛やセレン化亜鉛に、活性化剤として銅、マンガン、アルミニウム、塩素、臭素等を添加して焼成したものを挙げることができる。蓄光剤としては、例えば、酸化ストロンチウムと酸化アルミニウムからなる化合物に希土類元素のユウロピウム(Eu)とジスプロシウム(Dy)を添加したもの等を挙げることができる。
【0040】
難燃性物質としては、デカブロモジフェニルオキサイド、TBAエポキシオリゴマー・ポリマー、TBAカーボネートオリゴマー、TBA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、TBA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA−ビス(アリルエーテル)、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、ポリジブロモフェニレンエーテル、テトラブロモシクロオクタン、臭素化ポリスチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル/オクタブロモジフェニルオキサイド、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモビスフェノールS、ペンタブロモトルエン等のブロム系難燃剤、リン酸エステル系、含ハロゲンリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩系、赤リン難燃剤等のリン系難燃剤、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、デクロランプラス(パークロロシクロペンタデカノン)等の塩素系難燃剤、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系、モリブデン系、スズ酸亜鉛、グアニジン塩、シリコーン系、ホスファゼン系化合物等の無機系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等の反応系難燃剤、複合型難燃剤を挙げることができる。
【0041】
多孔質物質、吸着性物質としては、ゼオライト、セピオライト、白土、カオリン、タルク、ベントナイト、珪藻土、活性炭、シリカ、アルミナ、マグネシア等を挙げることができる。
【0042】
高屈折率物質としては、例えば、五酸化タンタル、五酸化三チタン、三酸化二チタン、一酸化チタン、ジルコンチタン、ジルコニア、五酸化二ニオブ、二酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム・スズ等を挙げることができる。低屈折率物質としては、例えば、フッ化マグネシウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム等を挙げることができる。高屈折率物質や低屈折率物質を添加することにより、350nm以下の波長の光の照射前後で、屈折率を変化させることができる。
【0043】
その他、本発明の有機無機複合体は、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーンブラック、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
【0044】
上記本発明の有機無機複合体としては、具体的に、例えば、鋳型に鋳込んで成形された成形体や、基体上に塗布して形成された薄膜(ポリシロキサン系薄膜)が挙げられる。薄膜を形成する場合、基体上に塗布した後、熱硬化(乾燥)させる方法であれば特に制限されるものではないが、熱硬化後、350nm以下の波長の光を照射することが好ましく、これにより、より高硬度の薄膜(ポリシロキサン系薄膜)を得ることができる。熱硬化後の薄膜(光照射した薄膜では、膜の内部を構成するものとなる。)のガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度としては、1H〜4H程度であり、基板との密着性及び硬度の点から、2H〜4Hであることが好ましい。また、光照射後の薄膜のガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度としては、5H以上であることが好ましく、7H以上であることが好ましい。
【0045】
本発明のポリシロキサン系薄膜としては、膜表面部の炭素含有量が、膜裏面部の炭素含有量に比して少ない構成であることが好ましく、膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下であることがより好ましく、2〜60%であることがさらに好ましい。ここで、膜表面部の炭素含有量が、膜裏面部の炭素含有量に比して少ないとは、膜表面から膜中心部までの総炭素量が、膜裏面から膜中心部までの総炭素量より少ないことを意味する。かかる本発明の高硬度薄膜の用途としては、特に制限されないが、表面硬度が高いことから、ハードコート膜として非常に有用である。
【0046】
また、本発明のポリシロキサン系薄膜は、膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることが好ましく、このような炭素含有量が漸次増加している深さとしては、膜厚の5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、具体的に、例えば、膜厚が1〜2.5μm程度の場合、炭素含有量が漸次増加している深さは、50〜2000nm程度である。
【0047】
かかる薄膜は、例えば、ハードコート膜、ガスバリアー膜、帯電防止膜、UVカット膜、反射防止膜等として用いることができる。ハードコート膜の適用例としては、例えば、自動車のガラス、ヘッドライト、外装部品、内装部品、電装部品、サンルーフ;携帯電話のフロントケース、リアケース、バッテリーケース;眼鏡レンズ;光ディスク;建材化粧シート、フィルム;テレビ前面パネル;CRTカバー;ビデオリフレクター等を挙げることができる。
【0048】
上記本発明の有機無機複合体及びポリシロキサン系薄膜を製造するための本発明の有機無機複合体形成用組成物としては、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物と、撥水・撥油性物質又は導電性物質とを含有する組成物であれば特に制限されるものではなく、さらに、水及び溶媒を含有することが好ましい。
【0049】
本発明の有機無機複合体形成用組成物における式(I)で表される有機ケイ素化合物は、上述したものと同様であり、縮合物であることが好ましく、その平均粒径が、10nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。また、本発明の有機無機複合体形成用組成物における光感応性化合物は、上述したものと同様であり、加水分解物及び/又は縮合物であることが好ましく、特に、金属キレート化合物の加水分解物及び/又は縮合物が好ましく、その平均粒径としては、10nm以下であることが好ましく、7nm以下であることがより好ましい。これにより、有機無機複合体(薄膜)の透明性を向上させることができる。これらの平均粒子径は、例えば、Malvern Instruments Ltd製 HPPSを用いて測定することができる。また、本発明の有機無機複合体形成用組成物における機能性物質としては、上述したものと同様であり、撥水・撥油性物質が式(I)で表される有機ケイ素化合物のRに置換基としてフッ素原子を有しているものである場合、単独の縮合物、又は式(I)で表される有機ケイ素化合物との縮合物であることが好ましく、その平均粒径が、10nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましい。
【0050】
用いる溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明の有機無機複合体形成用組成物中の固形分量(有機ケイ素成分、光感応性化合物成分、機能性物質)としては、1〜75重量%であることが好ましく、10〜60重量%であることがより好ましい。また、光感応性化合物の含有量としては、その種類にもよるが、一般的に、有機ケイ素化合物中のSiに対して、光感応性化合物中の金属原子が0.01〜0.5モル当量、好ましくは0.05〜0.2モル当量であることが好ましい。
【0052】
また、本発明の有機無機複合体形成用組成物には、得られる塗膜の硬度向上を目的として4官能シランやコロイド状シリカを添加することもできる。4官能シランとしては、例えば、テトラアミノシラン、テトラクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラ(メタ)アクリロキシシラン、テトラキス[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、テトラキス(2−ビニロキシエトキシ)シラン、テトラグリシジロキシシラン、テトラキス(2−ビニロキシブトキシ)シラン、テトラキス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シランを挙げることができる。また、コロイド状シリカとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
【0053】
なお、本発明の有機無機複合体形成用組成物には、その他、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0054】
本発明の有機無機複合体形成用組成物の調製方法としては、例えば、必要に応じて水及び溶媒を加え、有機ケイ素化合物、光感応性化合物、並びに機能性物質を混合する方法が挙げられる。具体的には、光感応性化合物を溶媒と混合した後、所定量の水を加え、(部分)加水分解を行い、有機ケイ素化合物、及び機能性物質を同時又は別々に混合する方法や、有機ケイ素化合物、光感応性化合物、及び機能性物質を混合した後に、水を加えて(部分)加水分解する方法や、有機ケイ素化合物、光感応性化合物、場合によっては機能性物質を別々に(部分)加水分解したものを混合する方法を挙げることができる。水や溶媒を加える必要は必ずしもないが、水を加えて、有機ケイ素化合物、光感応性化合物、種類によっては機能性物質を(部分)加水分解物としておくことが好ましい。
【0055】
上記有機無機複合体形成用組成物を熱硬化(乾燥)させることにより、好ましくは、熱硬化後、350nm以下の波長の光を照射することにより、本発明の有機無機複合体(ポリシロキサン系薄膜)を製造することができる。
【0056】
本発明の薄膜が形成可能な基体としては、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック等が挙げられる。従来、薄膜のプラスチック基体への形成は困難であり、ガラス等の無機基体に限定されていたが、本発明の薄膜は、形成の難しいプラスチック基体であっても、容易に皮膜形成でき、プラスチック製光学部品に対しても適している。かかるプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルスルフォンが挙げられる。
【0057】
有機無機複合体形成用組成物の塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等を挙げることができる。また、形成する膜厚としては、特に制限されるものではなく、例えば、0.05〜200μm程度である。
【0058】
有機無機複合体形成用組成物を塗布して形成した膜の熱硬化処理(乾燥処理)としては、例えば、40〜200℃で、1〜120分程度行うことが好ましく、60〜120℃で、10〜60分程度行うことがより好ましい。
【0059】
また、350nm以下の波長の光の照射は、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーランプ等の公知の装置を用いて行うことができ、照射する光としては、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光であればよく、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることが好ましく、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることがより好ましい。かかる範囲の波長に感応し、350nm、好ましくは310nmを超える光に感応しないものであれば、太陽光によりほとんど影響を受けることはない。また、照射する光の照射光量としては、例えば、1〜100J/cm程度であり、膜硬化効率(照射エネルギーと膜硬化程度の関係)を考慮すると、3〜20J/cm程度であることが好ましく、3〜10J/cm程度であることがより好ましい。なお、350nm以下の波長の光の照射とは、350nm以下のいずれかの波長の光を成分とする光源を用いる照射、好ましくは、350nm以下のいずれかの波長の光を主成分とする光源を用いる照射、すなわち、最も成分量の多い波長が350nm以下の光源を用いる照射をいう。
【0060】
また、本発明の有機無機複合体の製造方法としては、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物の存在下、機能性物質を含有する式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物に、350nm以下の波長の光を照射する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、上記有機無機複合体形成用組成物を用いた製造方法を挙げることができる。光感応性化合物、式(I)で表される有機ケイ素化合物、機能性物質については、上記有機無機複合体形成用組成物と同様である。また、光照射の前に、熱硬化(乾燥)させることが好ましく、かかる熱硬化条件や光照射条件は、上述の通りである。
【0061】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
<TiO液ナノ粒子液(光感応性化合物)の作製>
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン(日本曹達株式会社製、T−50 酸化チタン換算固形分量16.5重量%)89.7gを工業用エタノール172.9gに溶解後、イオン交換水33.3g(10倍モル/TiOのモル)を攪拌しながらゆっくり滴下し加水分解した。1日後に溶液を濾過し、酸化チタン換算固形分量5.0wt%の黄色透明なTiO2ナノ粒子液(A−1)を得た。平均粒子径は4.1nmで単分散性であった。
【0063】
<アルコキシシラン混合液(有機ケイ素化合物及び撥水・撥油性物質)の作製>
ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)105.9gに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)118.3g、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−7803)67.7gを加え、アルコキシシラン混合液(B−1)を得た。
【0064】
<コーティング液の作製>
TiOナノ粒子液(A−1)とアルコキシシラン混合液(B−1)を混合し、1晩攪拌したものをコーティング液(C−1)とした。
【0065】
また、参考として、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)148.2gに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)165.6gを加え、アルコキシシラン混合液(B−2)を得、これとTiOナノ粒子液(A−1)を混合し、1晩攪拌したものをコーティング液(C−2)とした(参考例A)。
【0066】
また、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−1003)98.8gに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)110.4g、ジメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−22)26.7gを加え、アルコキシシラン混合液(B−3)を得、これとTiOナノ粒子液(A−1)を混合し、1晩攪拌したものをコーティング液(C−3)とした(参考例B)。
【0067】
【表1】


【0068】
<薄膜作製>
コーティング液(C−1)、(C−2)、(C−3)を、ポリカーボネート(PC)基板に、バーコーター(Rod No.12)で塗布し、温風循環乾燥器中で、60℃、30分間加熱した。続いて、コンベアタイプ高圧水銀灯(アイグラフィックス製、160W/cm、ランプ高10cm、照射時間5秒)を用いてUV光を照射し、ハードコート膜を得た。図1に、コーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射前のESCAによる測定結果を示し、図2に、コーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射後のESCAによる測定結果を示す。
【0069】
<膜評価方法>
1.碁盤目テープ剥離試験
JIS K5600に準拠し、塗膜に1mm間隔の切り込みを縦横11本ずつ入れて100個の碁盤目を作成した。各試料(UV照射後の膜)にセロテープ(登録商標)を貼り付け、指の腹で複数回擦り付けて密着させた後テープを引き剥がし、塗膜が剥離せずに残存した格子の目数で評価した。
【0070】
2.テーバー式磨耗試験
テーバー式磨耗試験機(東洋テスター工業株式会社製、TABER’S Abration Tester)に磨耗輪(CS−10F)を装着し、UV照射後の膜について、荷重500gの条件下で500回転試験を行った後のヘイズ率を測定した。
【0071】
3.静的接触角の測定
自動接触角計(協和界面科学株式会社製、Drop Master700)を用いて、水及びオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)10μlの静的接触角を測定した。
【0072】
上記試験1〜3の結果を表2に示す。
【0073】
【表2】


【0074】
表2から明らかなように、本発明の実施例1に係る膜は、撥水性及び撥油性に優れていることがわかる。また、基体との密着性も非常に優れていた。さらに、磨耗性については、荷重500gの条件下で500回転試験を行った後のヘイズ率も10%程度で、優れたハードコート性を有していた。なお、参考例Bに係る膜は、撥油性は十分とはいえないものの、撥水性においては優れていた。
【0075】
4.転落角の測定
また、実施例1に係る膜について、自動接触角計(協和界面科学株式会社製、Drop Master700および滑落法キット DM−SA)を用いて、オレイン酸(和光純薬工業株式会社製)10μlの動的接触角を測定した。図3に、コーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射前の動的接触角の測定結果を示し、図4に、コーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射後の動的接触角の測定結果を示す。また、転落角は、オレイン酸10μlの前進角と後退角の両方が1dot移動したときの傾斜角度の5測定点の平均値である。その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】


【0077】
表3から明らかなように、UVを照射することにより、転落角が大幅に小さくなっており、油成分の滑り性(撥油性)が非常に向上したことがわかる。同様に、図3及び図4より、UV照射前の膜は傾斜角度40°程度で液滴が測定画面から消えて転落し、UV照射後の膜は、傾斜角度20°程度で測定画面から消えて転落しており、油成分の滑り性(撥油性)が非常に向上したことがわかる。
【0078】
[実施例2]
<帯電防止コート剤の調製>
溶液(B−2)をエタノールで希釈し、固形分濃度(RSiO1.5+TiO)30wt%の溶液を得た。この溶液に、導電性複合酸化物ゾル セルナックス(日産化学工業製、酸化亜鉛と五酸化アンチモンの複酸化物ゾル、CX−Z641M、メタノール分散液)をエタノールで固形分濃度30wt%になるように希釈した溶液を混合し、コーティング液(C−4)、(C−5)、(C−6)を得た(表4)。
【0079】
薄膜の作製及び膜評価は、上記と同様に行った。表面抵抗測定は、表面抵抗測定器(三菱化学株式会社製 Hiresta−UP MCP−HT4500)を用いて、印加電圧1000V、測定時間10秒にて測定した。
【0080】
【表4】

【0081】
表4から明らかなように、コーティング液(C−4)、(C−5)、(C−6)で作製したUV照射前の膜は、表面抵抗が小さく、導電性に優れていた。さらに、UV照射した膜は、表面抵抗は大幅に小さくなり、導電性が非常に向上した。また、基体との密着性も非常に優れていた。
【0082】
[実施例3]
<帯電防止コート剤の調製>
5wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、ビニルトリメトキシシラン250.4gを加え、室温で30分攪拌して得られた溶液と、5wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン399.26gを加え室温で30分攪拌して得られた溶液とを混合した。元素比(Ti:Si)は(1:9)、固形分量(RSiO1.5(Rは、ビニル基又は3−グリシドキシプロピル基)+TiO)は32.5wt%とした。
【0083】
また、アセチレンブラック粉末(AB)をエタノールに分散後、ボールミルで湿式粉砕し、固形分5wt%の分散液を得た。この分散液を上記溶液と所定の割合で混合し、コーティング液(C−7)を得た。
【0084】
コーティング液(C−7)を、ポリカーボネート(PC)基板に、バーコーター(Rod No.12)で塗布し、温風循環乾燥器中で、100℃、30分間加熱した。続いて、コンベアタイプ高圧水銀灯(アイグラフィックス製、160W/cm、ランプ高10cm、照射時間5秒)を用いてUV光を照射し、ハードコート膜を得た。膜の評価は、上記と同様に行った。
【0085】
【表5】

【0086】
表5から明らかなように、UV照射することにより、表面抵抗は大幅に小さくなり、導電性が非常に向上した。また、基体との密着性が非常に優れていると共にハードコート性にも優れていた。
【0087】
[実施例4]
<光触媒コート剤の調製>
5wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、ビニルトリメトキシシラン250.4gを加え、室温で30分間攪拌して得られた溶液と、5wt%のTiOナノ粒子溶液(A−1)300g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン399.26gを加え室温で30分攪拌して得られた溶液とを混合した。元素比(Ti:Si)は(1:9)、固形分量(RSiO1.5(Rは、ビニル基又は3−グリシドキシプロピル基)+(TiO)は32.5wt%とした。
【0088】
上記溶液と光触媒TiOゾル(石原産業製STS−01、30wt%水溶液)を混合し、更にエタノールで希釈し、固形分濃度30wt%のコーティング液(C−9)、(C−10)を得た。
【0089】
コーティング液(C−9)、(C−10)を、ポリカーボネート(PC)基板に、バーコーター(Rod No.12)で塗布し、温風循環乾燥器中で、100℃、30分間加熱した。続いて低圧水銀灯(アイグラフィックス製、UVオゾン装置)を用いてUV光を5分間照射しハードコート膜を得た。
【0090】
【表6】

【0091】
表6から明らかなように、UV照射することにより、水の接触角が飛躍的に低下し、高い親水性を示す膜となり、1週間経過後もその効果は持続していた。また、基体との密着性が非常に優れていると共にハードコート性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施例に係るコーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射前のESCAによる測定結果を示す。
【図2】本発明の実施例に係るコーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射後のESCAによる測定結果を示す。
【図3】本発明の実施例に係るコーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射前の動的接触角の測定結果を示す。
【図4】本発明の実施例に係るコーティング液(C−1)を用いて作製した膜のUV照射後の動的接触角の測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の350nm以下の波長の光に感応する光感応性化合物、及び/又はそれから誘導される化合物を含有する有機無機複合体であって、
さらに、機能性物質を含有することを特徴とする有機無機複合体。
【請求項2】
機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合体。
【請求項3】
機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合体。
【請求項4】
機能性物質が、光触媒であることを特徴とする請求項1に記載の有機無機複合体。
【請求項5】
薄膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項6】
膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下の薄膜であることを特徴とする請求項5に記載の有機無機複合体。
【請求項7】
膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする請求項5又は6に記載の有機無機複合体。
【請求項8】
炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする請求項7に記載の有機無機複合体。
【請求項9】
炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする請求項7又は8に記載の有機無機複合体。
【請求項10】
ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上の薄膜であることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の有機無機複合体。
【請求項11】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物の縮合物を主成分とし、機能性物質を含有する薄膜であって、
膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下であることを特徴とするポリシロキサン系薄膜。
【請求項12】
機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする請求項11に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項13】
機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする請求項11に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項14】
機能性物質が、光触媒であることを特徴とする請求項11に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項15】
膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項16】
炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする請求項15に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項17】
炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする請求項15又は16に記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項18】
ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする請求項11〜17のいずれかに記載のポリシロキサン系薄膜。
【請求項19】
金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物の存在下、
機能性物質を含有する式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物に、350nm以下の波長の光を照射することを特徴とする有機無機複合体の製造方法。
【請求項20】
有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項19に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項21】
光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項19又は20に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項22】
照射する光が、150〜350nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項23】
照射する光が、250〜310nmの範囲のいずれかの波長の光を主成分とする光であることを特徴とする請求項22に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項24】
薄膜を製造することを特徴とする請求項19〜23のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項25】
製造される薄膜における、膜表面から深さ方向10nmにおける膜表面部の炭素含有量が、膜裏面から深さ方向10nmにおける膜裏面部の炭素含有量の80%以下であることを特徴とする請求項24に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項26】
製造される薄膜が、膜の表面から所定深さまで炭素含有量が漸次増加していることを特徴とする請求項24又は25に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項27】
炭素含有量が漸次増加している深さが、膜厚の5〜80%であることを特徴とする請求項26に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項28】
炭素含有量が漸次増加している深さが、50〜2000nmであることを特徴とする請求項26又は27に記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項29】
製造される薄膜が、ガラス基板に形成したときの、JIS K 5600−5−4鉛筆法に規定する鉛筆硬度が、5H以上であることを特徴とする請求項24〜28のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
【請求項30】
請求項19〜29のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする有機無機複合体。
【請求項31】
式(I)
SiX4−n・・・(I)
(式中、Rは、式中のSiに炭素原子が直接結合するような有機基を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表す。nは1又は2を表し、nが2のとき、Rは同一であっても異なっていてもよく、(4−n)が2以上のとき、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、金属キレート化合物、金属有機酸塩化合物、2以上の水酸基若しくは加水分解性基を有する金属化合物、それらの加水分解物、及びそれらの縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の光感応性化合物と、機能性物質とを含有することを特徴とする有機無機複合体形成用組成物。
【請求項32】
機能性物質が、撥水・撥油性物質であることを特徴とする請求項31に記載の有機無機複合体形成用組成物。
【請求項33】
機能性物質が、導電性物質であることを特徴とする請求項31に記載の有機無機複合体形成用組成物。
【請求項34】
機能性物質が、光触媒であることを特徴とする請求項31に記載の有機無機複合体形成用組成物。
【請求項35】
有機ケイ素化合物の縮合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項31〜34のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物。
【請求項36】
光感応性化合物の平均粒径が、10nm以下であることを特徴とする請求項31〜35のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物。
【請求項37】
光感応性化合物における金属原子が、式(I)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその縮合物におけるケイ素原子に対して、0.01〜0.5モル当量含有されていることを特徴とする請求項31〜36のいずれかに記載の有機無機複合体形成用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−332262(P2007−332262A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165384(P2006−165384)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】