説明

機能性粒子担持シート及びその製造方法

【課題】機能性粒子の機能が増加された、圧力損失の少ない2層構造の粒子層からなるシートであり、プリーツ加工時にプリーツの山部や谷部でシャープな形状となり、基材から機能性粒子が飛び出すこともなく、山高さの精度も良く、製造も容易で、低コスト化が可能な機能性粒子担持シートを提供する。
【解決手段】第1の通気性基材11の表面上に第1の接着剤12を介して第1の機能性粒子13が固着してなる第1の粒子固着シート10と、第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に第2の接着剤22を介して第2の機能性粒子23が固着してなる第2の粒子固着シート20とを有してなり、第1の粒子固着シートにおける機能性粒子と第2の粒子固着シートにおける機能性粒子とが第3の接着剤30を介して接合している機能性粒子担持シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分で汚染された流体を濾過して清浄化するための生活環境における空調機器に装着して用いる脱臭濾材や、半導体や液晶の生産施設やクリーンルームなどにおいて空気や雰囲気中に含まれるガス状汚染物質を除去するケミカルフィルタ用濾材などのように、脱臭機能、触媒機能など気体、或いは液体から有害な物質を除去するなど、特に濾材として好適に使用することのできる、有益な機能を発揮する機能性粒子が担持されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生活環境での不快な臭気物質の除去などや、半導体や液晶の生産施設やクリーンルームなどにおいて空気や雰囲気中に含まれるガス状汚染物質の除去などには、様々な脱臭濾材やケミカルフィルタ用濾材などが提案されてきた。このような脱臭濾材やケミカルフィルタ用濾材としては、通気性を有するシート状の部材に、例えば活性炭や種々の化学吸着剤やイオン交換樹脂や触媒からなるガス除去粒子を保持したり、或いはこれらのガス除去粒子を熱可塑性樹脂で連結して多孔質体としたり、或いはこれらのガス除去粒子を通気性のあるケースに入れたものが知られている。
【0003】
このような従来のガス除去粒子の担持技術を改良した技術として、例えば特許文献1に、ホットメルト樹脂からなるウエブを介して積層単位を構成する脱臭粉粒体同士が固着した積層型脱臭濾材が記載されている。この積層型脱臭濾材では、粒子1個分の高さの層が積層されて2層となっていて、個々の粉粒体同士が固着した構造となっている。そのため、粉粒体としての脱臭機能が増加されるにもかかわらず、粉粒体のもつ本来の脱臭機能を阻害することなく、圧力損失も少なくできるという効果がある。しかし、このような濾材をジグザグ形状にプリーツ加工して、フィルタエレメントとすると、2層であるためプリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状とならなかったり、粉粒体を載せている基材から粉粒体が飛び出してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、プリーツ形状の山部や谷部を形成する個所には粉粒体が存在しないようにするため、通気性の基材上に山部や谷部に相当する線状の部分以外に接着剤を塗布して、この接着剤を介して機能性粒子を付着させることを検討した。この類似の方法による殺菌シートが特許文献2に記載されている。しかし、この殺菌シートは、繊維基布に点状、線状、または網目状に塗布された接着剤に粒状の殺菌剤が付着した殺菌シートであり、殺菌剤である機能性粒子が一層のみ積層されているので、機能性粒子の性能を増加させることはできなかった。
【0005】
また、別の技術として、シート状の濾材中に機能材が分散されたフィルタであり、濾材に対する機能材の分布密度を変化させて通気抵抗に変化を与えたフィルタが特許文献3に記載されている。しかし、このフィルタはシート状の濾材中に機能材が分散されており、個々の機能材が例えば接着剤などにより特に固定しているものではないので、濾材の使用中に加わる振動などにより、機能材が互いにぶつかり合うことで破損して、破片や微粒子が飛散するという問題があった。また、機能材が粒子である場合は粒子が互いに接触して、しかも何層にも重なるため、特許文献1の積層型脱臭濾材とは異なり、粒子1個分の高さの層が積層されて2層となることはなく、そのため、粉粒体としての脱臭機能の増加とともに圧力損失を少なくするという効果を得ることができないという問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、特許文献4に記載される機能性粒子担持シートを提案した。この機能性粒子担持シートは、通気性基材の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に塗布された第1の接着剤を介して機能性粒子が固着してなる粒子固着シートを2枚有してなり、片方の粒子固着シートにおける空隙部分の位置が他の粒子固着シートにおける空隙部分の位置の中間位置となるように、片方の粒子固着シートにおける機能性粒子と他の粒子固着シートにおける機能性粒子とが第2の接着剤を介して接合している機能性粒子担持シートである。
【0007】
しかし、この機能性粒子担持シートを製造するにあたり、片方の粒子固着シートにおける空隙部分の位置が他の粒子固着シートにおける空隙部分の位置の中間位置となるように配置することが難しいという問題があった。例えば、粒子固着シートの製造途中に多少の伸びが生じるため、製造時期の異なる2枚の粒子固着シートの空隙部の間隔が微妙に異なってしまい、2枚の粒子固着シートを接合した後ジグザグ形状にプリーツ加工して、フィルタエレメントとすると、折り山の高さが不揃いなフィルタエレメントとなってしまうという問題があった。また、例えば2枚の機能性粒子担持シートを送り出す速度を同一にする必要があったり、片方の粒子固着シートにおける空隙部分の位置が他の粒子固着シートにおける空隙部分の位置の中間位置となるように位置決めする必要があり、製造装置も高度な技術を要する装置が求められ、結果として製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−57467号公報
【特許文献2】登録実用新案公報第3032523号公報
【特許文献3】特開2001−38116号公報
【特許文献4】特開2004−113433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決して、機能性粒子の機能が増加されるにもかかわらず、機能性粒子のもつ本来の機能を阻害することなく、流体が通過する際の圧力損失も少なくできる、2層構造の粒子層からなるシートであり、さらにこのシートをジグザグ形状にプリーツ加工して、例えばフィルタエレメントとした場合、プリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状とすることができ、機能性粒子を担持している基材から機能性粒子が飛び出してしまうことがなく、また、折り山の高さが精度良く揃った品質の良いフィルタエレメントとなり、その製造も容易で、製造コストの低減化が可能な機能性粒子担持シート及びその製造方法、並びにその機能性粒子担持シートを用いた機能性粒子担持エレメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、請求項1に係る発明では、図1に例示するように、第1の通気性基材11の表面上に第1の接着剤12を介して機能性粒子13が固着してなる第1の粒子固着シート10と、第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に第2の接着剤22を介して機能性粒子23が固着してなる第2の粒子固着シート20とを有してなり、第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とが第3の接着剤30を介して接合していることを特徴とする機能性粒子担持シートである。請求項1に係る発明により、この機能性粒子担持シートは、機能性粒子の機能が増加されるにもかかわらず、機能性粒子のもつ本来の機能を阻害することなく、流体が通過する際の圧力損失も少なくできる、2層構造の粒子層からなるシートであり、さらにこのシートをジグザグ形状にプリーツ加工して、例えばフィルタエレメントとした場合、プリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状とすることができ、機能性粒子を担持している基材から機能性粒子が飛び出してしまうことがなく、また、折り山の高さが精度良く揃った品質の良いフィルタエレメントとなる利点を有している。また、その製造についても高度な技術を要する装置を不要とするのみならず、簡略なプリーツマシンで済むなど、製造が容易であり、製造コストの低減化が可能であるという利点を有している。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記帯状の空隙部分の幅が0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の機能性粒子担持シートであり、前記帯状の空隙部分の幅が0.5〜10mmであることによって、前述の利点がより顕著となる。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記機能性粒子の平均粒径が0.147〜1.65mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性粒子担持シートであり、前記機能性粒子の平均粒径が0.147〜1.65mmであることにより、前述の利点がより顕著となる。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記第1の通気性基材11の表面上に、前記機能性粒子が最大固着量に対して20〜99%固着していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の機能性粒子担持シートであり、前記機能性粒子が最大固着量に対して20〜99%固着していることにより、前述の利点がより顕著となる。
【0014】
請求項5に係る発明では、前記第1の粒子固着シートに固着している機能性粒子同士の間隔が、前記第2の粒子固着シートに固着している機能性粒子同士の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の機能性粒子担持シートであり、このような構成により、機能性粒子の機能を充分に発揮させながらプリーツ形状の山部や谷部でよりシャープな形状とすることができるという利点があり、前述の利点がより顕著となる。
【0015】
請求項6に係る発明では、前記第1の通気性基材の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合が、前記第2の通気性基材の帯状の空隙部分を除いた部分の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合よりも少ないことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の機能性粒子担持シートであり、このような構成により、機能性粒子の機能を充分に発揮させながらプリーツ形状の山部や谷部でよりシャープな形状とすることができるという利点があり、前述の利点がより顕著となる。
【0016】
請求項7に係る発明では、前記第3の接着剤30を介した接合が、ホットメルト樹脂の塗布によって行われていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の機能性粒子担持シートであり、機能性粒子の機能を大きく損なうことがなく、圧力損失の低下も少なくすることが可能である。
【0017】
請求項8に係る発明では、図8に例示するように、請求項1〜7の何れかに記載の機能性粒子担持シートをプリーツ加工し、前記機能性粒子担持シート1の周縁部に枠材40a、40bを固着してなることを特徴とする機能性粒子担持エレメント2であり、この機能性粒子担持エレメント2は、プリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状を有することができ、機能性粒子を担持している基材から機能性粒子が飛び出してしまうこともなく、エレメントの製造も容易であるという利点を有している。
【0018】
請求項9に係る発明では、第1の通気性基材11の表面上に第1の接着剤12を介して機能性粒子13を固着させた第1の粒子固着シート10と、第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に第2の接着剤22を介して機能性粒子23を固着させた第2の粒子固着シート20とを準備し、次いで第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とを第3の接着剤30を介して接合することを特徴とする機能性粒子担持シートの製造方法である。
【0019】
請求項10に係る発明では、前記第3の接着剤30を介して接合する方法が、第1の粒子固着シート10における機能性粒子の面と第2の粒子固着シート20における機能性粒子の面とに、前記第3の接着剤30からなるホットメルト樹脂を同時に塗布し、次いで第1の粒子固着シート10と第2の粒子固着シート20とを重ね合わせて接合する方法であることを特徴とする請求項9に記載の機能性粒子担持シートの製造方法であり、第3の接着剤の塗布量が少なくても機能性粒子同士を強固に接合することができるので、圧力損失の少ない機能性粒子担持シートを製造することができるという利点がある。また、コスト低減が可能になるという利点がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、機能性粒子の機能が増加されるにもかかわらず、機能性粒子のもつ本来の機能を阻害することなく、流体が通過する際の圧力損失も少なくできる、2層構造の粒子層からなるシートであり、さらにこのシートをジグザグ形状にプリーツ加工して、例えばフィルタエレメントとした場合、プリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状とすることができ、機能性粒子を担持している基材から機能性粒子が飛び出してしまうことがなく、また、折り山の高さが精度良く揃った品質の良いフィルタエレメントとなる利点を有している。また、その製造についても高度な技術を要する装置を不要とするのみならず、簡略なプリーツマシンで済むなど、その製造も容易であり、製造コストの低減化が可能な機能性粒子担持シート及びその製造方法、並びにその機能性粒子担持シートを用いた機能性粒子担持エレメントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る機能性粒子担持シート及びその製造方法、並びにその機能性粒子担持シートを用いた機能性粒子担持エレメントの好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお、機能性粒子担持シートの製造方法については、本発明の機能性粒子担持シートの説明の中で説明する。
【0022】
本発明の機能性粒子担持シートは、図1に例示するように、第1の通気性基材11の表面上に第1の接着剤12を介して機能性粒子13が固着してなる第1の粒子固着シート10と、第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に第2の接着剤22を介して機能性粒子23が固着してなる第2の粒子固着シート20とを有してなり、第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とが第3の接着剤30を介して接合している機能性粒子担持シート1である。
【0023】
前記第1の通気性基材11又は第2の通気性基材21(以下、第1の通気性基材と第2の通気性基材を総称して単に通気性基材ということがある。)は、通気性を有するシート状物である限り特に限定されず、例えば、不織布、織物、膜、ろ紙、スポンジなどの多孔質体などが挙げられ、なかでも不織布は通気性を高くすることができるので好ましい。また、通気性基材に用いるシート状物が高分子材料であれば、フィルタ加工におけるプリーツ折り加工などへの追従性が高く、耐久性に優れているので好ましく用いることができる。前記不織布としては、例えばステープル繊維をカード機などを使用して、繊維ウエブに形成した後、繊維同士を接着や交絡などによって結合する乾式法によって得られる不織布、スパンボンド法による長繊維からなる不織布、あるいは、湿式法によって得られる不織布などを挙げることができる。このような通気性基材は、面密度で10〜200g/m2が好ましく、10〜50g/m2が更に好ましい。また、面風速0.5m/秒における圧力損失が100Pa以下であることが好ましい。また、50Pa以下であることが更に好ましい。
【0024】
また、前記機能性粒子としては、通気性基材の表面上に固着することができて、通気性基材を通過する気体又は液体に対して、機能を発揮することのできる固体粒子である限り、特に限定されず、無機質であっても有機質であってもよく、このような固体粒子の一種以上を適宜選択できる。また、前記第1の通気性基材に適用する機能性粒子と前記第2の通気性基材に適用する機能性粒子とは、同じであることも異なっていることも可能である。前記機能性粒子としては、例えば脱臭、ガス除去、触媒、光触媒、吸水、イオン交換、電磁波放射、イオン発生、抗菌、難燃、電磁波遮蔽、防音等の機能性をもつ固体粒子を挙げることができる。このような固体粒子の材質としては、例えば、活性炭、ゼオライト、酸化チタン、吸水性樹脂、イオン交換樹脂、金属粒子、トルマリン、炭酸カルシウム等、種々の材質を挙げることができる。
【0025】
前記機能性粒子のうち、生活環境での不快な臭気物質の除去などや、半導体や液晶の生産施設やクリーンルームなどにおいて空気や雰囲気中に含まれるガス状汚染物質の除去などに用いる、ガス状物質を吸着したり、ガス状物質を吸着しやすい物質に変化させたりすることのできるガス除去機能を有する固体粒子としては、例えば活性炭や、これに酸性ガス又は塩基性ガスなどを除去できる数々の化学成分を付加した添着炭、ゼオライト、種々の化学吸着剤、イオン交換樹脂、光触媒などの触媒などがあり、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択することができる。また、このうち例えば脱臭を目的として活性炭を選択した場合は比表面積が200m2/g以上の多孔質のものが好ましく、500m2/g以上のものがより好ましく、800m2/g以上のものが更に好ましい。また、脱臭を目的としたガス除去粒子の粒径は、高効率と低圧損とを共に実現するために平均粒径を0.147mm(100メッシュ)以上1.65mm(10メッシュ)以下とするのが好適である。また、平均粒径を0.212mm(70メッシュ)〜1.0mm(16メッシュ)とすることがより好ましい。この好適範囲の下限よりも細かい平均粒径のガス除去粒子を用いると、初期のガス除去効率を高く採れる反面、圧力損失が大きくなってしまう場合がある。なお、ガス除去粒子の粒径に分布がある場合の平均粒径は、各粒径の質量平均値で表すものとする。
【0026】
本発明では、第2の粒子固着シート20は、図1および図5に示すように、第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に第2の接着剤22を介して機能性粒子23が固着している。この帯状の空隙部分21aの幅は、機能性粒子担持シートの厚さの1〜2倍程度が好ましく、具体的には、この帯状の空隙部分21aの幅が0.5〜10mmであることが好ましく、0.7〜5mmであることがより好ましく、1〜3mmであることが更に好ましい。この空隙部分の幅が0.5mm%未満であると、機能性粒子担持シートのプリーツ加工が難しくなったり、機能性粒子が通気性基材から飛び出してしまうという問題が生じる場合がある。また、この空隙部分の幅が10mmを超えると、プリーツの山が精度良く形成されなかったり、この空隙部分に相当する部分で流体が過剰に通過してしまい、機能性粒子の機能が十分に発揮されない場合がある。
【0027】
また、本発明では、第1の粒子固着シート10は、図1および図4に示すように、第1の通気性基材11の表面上に第1の接着剤12を介して機能性粒子13が固着している。なお、第1の粒子固着シート10においては、前述の第2の粒子固着シート20のような空隙部分21aを有していない状態で機能性粒子13が固着している。この機能性粒子13の固着の形態としては、機能性粒子の機能が大きく低下しない限り、機能性粒子13同士の間隔を広く、あるいは空隙を広く設けた状態で固着していることが好ましい。具体的には、この機能性粒子13の固着の割合は、最大固着量に対して20〜99%固着していることが好ましく、30〜95%固着していることがより好ましく、40〜90%固着していることが更に好ましい。図2に例示する機能性粒子担持シートは、第1の粒子固着シート10において、図1よりも機能性粒子の固着割合が低い場合の例を示している。このように、最大固着量に対して20〜99%固着していることによって、機能性粒子間に位置する通気性基材11の部分が伸び易くなり、或いは変形しやすくなるので機能性粒子担持シートのプリーツ加工が容易となる。なお、最大固着量に対して99%を超えると、機能性粒子の態様にもよるが、機能性粒子担持シートのプリーツ加工が難しくなる場合がある。また、最大固着量に対して20%未満であると、機能性粒子の量が減り過ぎて、機能性粒子担持シートの機能が低下したり、あるいはプリーツの山の部分で流体が過剰に通過してしまい、機能性粒子の機能が十分に発揮されない場合がある。なお、具体的には、機能性粒子が前述のガス除去粒子である場合、面密度が50〜500g/m2であることが好ましく、70〜400g/m2であることがより好ましく、90〜350g/m2であることが更に好ましい。
【0028】
ここで、最大固着量とは、第1の通気性基材11の表面上に機能性粒子13が最大限に固着可能な量のことを意味し、実際の測定に際しては、例えば粘着性の物質が塗布された平板上に、機能性粒子を散布して、機能性粒子を平板上に固定した後、余剰の機能性粒子を除去する。次いで、この機能性粒子が付着した平板の上方から写真撮影を行い、この写真の映像における機能性粒子の面積比率Aを算出する。一方比較対象となる粒子固着シートにおいても粒子が固着している側から写真撮影を行い、この写真の映像における機能性粒子の面積比率Bを算出する。その後、最大固着量に対する割合R(%)を、式R(%)=100×B/Aを計算することによって得ることができる。
【0029】
このように、第1の粒子固着シート10では、機能性粒子13の固着の割合は、最大固着量に対して20〜99%固着していることが好ましいが、その一方、第2の粒子固着シート20では、機能性粒子23同士の間隔を狭く、あるいは空隙を少なく設けた状態で固着していることが好ましい。具体的には、機能性粒子23の固着の割合は、可能な限り固着していることが好ましく、帯状の空隙部分21aを除いた部分において、最大固着量に対して80〜100%固着していることが好ましく95〜100%固着していることがより好ましい。なお、具体的には、機能性粒子が前述のガス除去粒子である場合、面密度が70〜500g/m2であることが好ましく、90〜400g/m2であることがより好ましく、110〜350g/m2であることが更に好ましい。また、第1の粒子固着シート10に固着している機能性粒子13同士の間隔が、第2の粒子固着シート20に固着している機能性粒子23同士の間隔よりも相対的に大きいことが好ましい。具体的には、第1の通気性基材の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合が、第2の通気性基材の帯状の空隙部分を除いた部分の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合よりも少ないことが好ましい。このような形態により、第2の粒子固着シートの帯状の空隙部分においては、第2の通気性基材21が伸び易くまたは変形し易く、且つ第1の通気性基材11も機能性粒子13同士の間隔が広いため伸び易くなり、或いは変形し易くなるので、機能性粒子担持シートのプリーツ加工が更に容易となり、プリーツ形状の山部や谷部で更にシャープな形状とすることが可能である。しかも、第2の粒子固着シート20の空隙部分を除いた部分では機能性粒子の最大固着量に対する固着割合を大きくすることが可能であるので、機能性粒子の機能を充分に発揮させることが可能である。
【0030】
本発明では、前記通気性基材11(又は21)の表面上に、第1の接着剤12又は第2の接着剤22(以下、第1の接着剤と第2の接着剤を総称して単に接着剤ということがある。)が付着又は塗布されており、接着剤12(又は22)の付着量は、接着剤が付着又は塗布されている領域において、面密度で5〜50g/m2が好ましく、5〜40g/m2が更に好ましい。なお、前記第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に、第2の接着剤22が付着又は塗布されていることがより好ましく、接着剤の節約になると共に確実に空隙部分を得ることができるという利点がある。接着剤12(又は22)としては、基材の表面上に前記機能性粒子を固着することができるものである限り特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化性の樹脂などが挙げられる。
【0031】
前記接着剤が熱可塑性樹脂であれば、加熱溶融することにより機能性粒子を固着することができるので、例えば熱硬化性樹脂をエマルジョンとした接着剤などとは異なり、乾燥工程の必要がなく工程が簡略化できるので好ましい。また樹脂以外の添加物が混入する問題が生じないので好ましい。このような、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはポリオレフィン変性樹脂などを、各々、単独または混合して用いることができる。ここで云うポリオレフィン変性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂 (エチレン−メタクリル酸共重合体に金属を付加した感熱性樹脂)などが挙げられる。
【0032】
また、前記接着剤が湿気硬化性の樹脂であれば、樹脂を硬化させるために加熱などの必要がなく、大気中に晒すだけで硬化させることができ、工程が簡略化できるので好ましい。このような、湿気硬化性の樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂などがあり、湿気硬化性と熱可塑性の両方の性質を有するポリウレタン樹脂、又は溶剤に溶解させてから湿気で硬化させるポリウレタン樹脂がある。湿気硬化性と熱可塑性の両方の性質を有するポリウレタン樹脂であれば、例えば、この樹脂を溶融させてから基材に塗布して、続いて、そのまま大気中に晒すだけで、確実に硬化させることができるので好ましい。
【0033】
前記第1の接着剤12が第1の通気性基材11の表面上に、付着又は塗布されている好ましい形態としては、グラビアロールを用いて、エマルジョン状態の接着剤、ペースト状態の接着剤または熱溶融状態の接着剤などを基材に塗布する方法によって得られる形態がある。また、ノードソン社のポーラスコート登録商標システムを用いて、一列に配置された多数のノズルによりホットメルト樹脂を間欠塗布する方法によって得られる形態がある。また、接着剤をスプレー法によって塗布する方法によって得られる形態がある。また、熱融着性の樹脂からなる粒子状の接着剤を基材の上に散布する方法によって得られる形態がある。また、熱可塑性の樹脂を加熱して、溶融状態として、ノズルなどから噴出させ、基材に塗布するか、或いは離型性の支持体シートの上に積層して、蜘蛛の巣状のホットメルト不織布を作成しておき、このホットメルト不織布を基材に載置する方法によって得られる形態がある。なお、第1の接着剤によって形成される接着層が通気性を有する形態とすれば、本発明による機能性粒子担持シートを濾材として有効に使用することができる。
【0034】
次に、前記第2の接着剤22が第2の通気性基材21の表面上に、付着又は塗布されて形態の説明をする。本発明では、第2の接着剤が、前記第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔の帯状の空隙部分21aを設けずに、付着又は塗布しておき、その後一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に、第2の機能性粒子23を固着させることも可能であるが、そのためには第2の機能性粒子23を一定の間隔で散布などにより接触させる必要があり、製造し難い場合がある。そのため、前記第2の通気性基材21の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に、第2の接着剤22が付着又は塗布されていることがより好ましく、接着剤の節約になると共に確実に空隙部分を得ることができるという利点がある。
【0035】
第2の接着剤が帯状の空隙部分を一定間隔に設けて塗布されている好ましい形態としては、帯状の空隙部分が一定間隔に設けられている限り特に限定されず、例えば帯状の空隙部分に相当する部分に溝を設けたグラビアロールを用いて、エマルジョン状態の接着剤、ペースト状態の接着剤または熱溶融状態の接着剤などを基材に塗布する方法によって得られる形態がある。また、ノードソン社のポーラスコート登録商標システムを用いて、一列に配置された多数のノズルによりホットメルト樹脂を間欠塗布する方法において、各ノズルよりの塗布を一定間隔で止めることにより空隙部分を一定間隔に設ける方法によって得られる形態がある。また、空隙部分が一定間隔になるようにして、接着剤をスプレー法によって塗布する方法によって得られる形態がある。また、空隙部分が一定間隔になるようにして、熱融着性の樹脂からなる粒子状の接着剤を基材の上に散布する方法によって得られる形態がある。また、熱可塑性の樹脂を加熱して、溶融状態として、ノズルなどから噴出させ、空隙部分が一定間隔になるようにして、基材に塗布するか、或いは離型性の支持体シートの上に積層して、蜘蛛の巣状のホットメルト不織布を作成しておき、このホットメルト不織布を空隙部分が一定間隔になるように基材に載置する方法によって得られる形態がある。なお、第2の接着剤が帯状の空隙部分を一定間隔に設けて塗布されている形態として、第2の接着剤によって形成される接着層が通気性を有する形態とすれば、本発明による機能性粒子担持シートを濾材として有効に使用することができる。
【0036】
前記ホットメルト不織布に利用できる熱可塑性樹脂としては、MIが50以上500以下のものを選択するのが好ましい。この好適範囲よりも低いMIの樹脂は、加熱処理時に流動性が低く、熱処理時に、機能性粒子の固着が不完全となることがある。更に、上記範囲よりも高い樹脂では、加熱処理時の流動性が高く、機能性粒子の固着が不完全となることがある。
【0037】
また、接着剤12(又は22)が通気性基材の表面上に、塗布されている好ましい形態としては、接着剤12(又は22)が規則的に、あるいは不規則に点状に塗布されている形態がある。また、接着剤12(又は22)が規則的に、あるいは不規則に線状に塗布されている形態がある。このように、点状又は線状に塗布するには、例えば、グラビアロール等を用いることができる。また、スクリーン印刷の方法により、ペースト状の熱可塑性樹脂をドット状にプリントすることにより、接着剤を規則的に点状または直線状に塗布することも可能である。また、ノードソン社のポーラスコート登録商標システムを用いて、一列に配置された多数のノズルによりホットメルト樹脂を間欠塗布することも可能である。このように、点状または直線状に塗布することによって、通気性を向上させた濾材とすることができる。更に、均一な接着剤の塗布を安定した状態で得ることができる。
【0038】
なお、第2の接着剤が帯状の空隙部分を一定間隔に設けて塗布されている形態としては、例えばグラビアロールに空隙部分に相当する部分に彫刻せずに、第2の接着剤22を塗布する方法がある。また、例えばスクリーン印刷の方法により、スクリーンを、空隙部分が一定間隔になるように、部分的にスクリーンの目止めをした上で、ペースト状の熱可塑性樹脂をドット状にプリントする方法がある。また、ノードソン社のポーラスコート登録商標システムを用いて、一列に配置された多数のノズルによりホットメルト樹脂を間欠塗布する方法において、各ノズルよりの塗布を一定間隔で止めることにより空隙部分を一定間隔に設ける方法がある。
【0039】
また、接着剤12(又は22)が通気性基材11(又は21)の表面上に、ドット状に塗布されている好ましい形態としては、ドットの大きさが機能性粒子の大きさに近いことが好ましい。このような大きさにすることにより、各ドットと各機能性粒子とを実質的に一対一に対応させることが可能となり、ドットの間隔を調整することにより、機能性粒子同士の間隔、あるいは機能性粒子の固着密度を自由に調整することが容易となる。例えば、第1の粒子固着シート10において機能性粒子13の固着の割合を最大固着量に対して20〜99%固着させ、その一方、第2の粒子固着シート20において機能性粒子23の固着の割合を最大固着量に対して80〜100%固着させるという調整が容易となる。また、第1の粒子固着シート10に固着している機能性粒子13の固着の割合を、前記第2の粒子固着シート20の帯状の空隙部分を除いた部分に固着している機能性粒子23の固着の割合よりも少なくするという調整が容易となる。具体的には、ドットの大きさをドットの面積と同一の面積を有する円の直径で表し、機能性粒子の大きさを平均粒子径で表すとドットの大きさに対して機能性粒子の大きさが0.5〜3倍であることが好ましく、0.7〜1.5倍であることがより好ましい。また、ドットの大きさは直径0.1〜2mmが好ましく、0.15〜1.5mmがより好ましい。また、隣接するドットの中心間の距離は0.2〜8mmが好ましく、0.3〜6mmがより好ましい。ドットの大きさに対する中心間距離の比率は1.05〜4倍が好ましく、1.05〜2倍がより好ましい。なお、ドットの中心間の距離は、各ドット同士の中心間の距離の平均値を用いるものとする。
【0040】
また、接着剤12(又は22)が通気性基材11(又は21)の表面上に、付着又は塗布されている好ましい別の形態としては、例えば図6に例示する形態がある。図6では、機能性粒子13(又は23)と、前記機能性粒子13(又は23)を連結する樹脂体(以下、連結部と称する)である接着剤12a(又は22a)と凝集した樹脂体(以下、樹脂凝集部と称する)である接着剤12b(又は22b)とからなる機能性粒子層3の片面が、前記接着剤12b(又は22b)によって通気性基材11(又は21)に固着している。
【0041】
このような形態の第1の粒子固着シート10又は第2の粒子固着シート20(以下、第1の粒子固着シートと第2の粒子固着シートを総称して単に粒子固着シートということがある。)を得る方法としては、図6に示すように通気性基材11(又は21)の上にホットメルト不織布12c(又は22c)を載置して、その後このホットメルト不織布12c(又は22c)の表面に機能性粒子13(又は23)を配した後、加熱処理によって該ホットメルト不織布と該機能性粒子13(又は23)とが接する部分に樹脂凝集部12b(又は22b)を形成し、かつ樹脂凝集部12b(又は22b)と連結部12a(又は22a)とからなるウエブを形成し、該機能性粒子のうち、該ウエブに固着された機能性粒子のみを残存せしめて機能性粒子層3の片面が、前記接着剤12b(又は22b)によって通気性基材に固着した粒子固着シート10(又は20)とすることができる。
【0042】
前記機能性粒子を前記通気性基材に固着するには、前述のように、通気性基材の表面上に、接着剤を塗布した後に、機能性粒子を散布などの方法によって、接着剤の上に機能性粒子を接触させ、続いて接着剤を加熱硬化させるか、又は加熱溶融して基材に機能性粒子を固着させ、更に固着しなかった余剰の機能性粒子を除去する等の方法を用いることができる。このようにして、接着剤を介して機能性粒子が固着してなる粒子固着シートを得ることができる。また、このようにして得られた粒子固着シートでは、個々の機能性粒子がその機能性粒子の一部分において接着剤を介して通気性基材に固着しているため、粒子一個分の厚さで固着している形態となっており、実質的に機能性粒子の一層分が固着した形態となっている。また、固着の程度は、この粒子固着シートを機能性粒子側を下方に向けたときに通気性基材から機能性粒子が脱落しない程度であることが好ましい。
【0043】
本発明の機能性粒子担持シートは、第1の粒子固着シート10と、第2の粒子固着シート20とを有する。この2枚の粒子固着シートは、第2の粒子固着シート20のみに一定間隔で帯状の空隙部分21aを有しているので、この2枚の粒子固着シートを接合しても、プリーツの山間隔が一定に保たれる。したがって、第1の粒子固着シート10と、第2の粒子固着シート20とは、空隙部分21aの部分を除く部分において同じものであることも、異なるものであることも可能である。すなわち通気性基材、接着剤、または機能性粒子等の材質や形状が、同じものであることも、異なるものであることも可能である。例えば、粒子固着シートに固着している機能性粒子を互いに異なるものとすることによって、2種類の機能を発揮することも可能である。また、2種類の機能を相乗させた機能を得ることも可能である。
【0044】
本発明の機能性粒子担持シートは、図1および図2に例示するように、第1の粒子固着シート10と、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に機能性粒子23が固着してなる第2の粒子固着シート20とを有しており、第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とが第3の接着剤30を介して接合している。
【0045】
第3の接着剤としては、第1の粒子固着シートにおける機能性粒子と第2の粒子固着シートにおける機能性粒子とを接合できるものである限り特に限定されず、合成樹脂からなる接着剤などが挙げられる。このような接着剤としては、例えば熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などの熱融着性の樹脂が好ましい。あるいは、ポリウレタン樹脂などの湿気硬化性の樹脂が好ましい。また、湿気硬化性と熱可塑性の両方の性質を有するポリウレタン樹脂であれば、例えば、この樹脂を溶融させてから、粒子固着シートの機能性粒子に塗布して、他の粒子固着シートの機能性粒子と接合させ、続いて、そのまま大気中に晒すだけで、加熱の必要もなく、確実に硬化させることができる。
【0046】
このような熱融着性の樹脂を機能性粒子の表面へ適用するには、例えば、熱融着性の樹脂を加熱して、溶融状態として、ノズルなどから噴出させ、蜘蛛の巣状に、機能性粒子の表面へ塗布する方法がある。また、このような熱融着性の樹脂を加熱して、溶融状態として、ノズルなどから噴出させ、離型性の支持体シートの上に積層して、蜘蛛の巣状のホットメルト不織布30aとしたものを、離型性の支持体シートより分離して、図3に例示するように、13および23の機能性粒子の表面に配置する方法も可能である。このような第2の接着剤の付着量は、面密度で5〜50g/m2が好ましく、10〜40g/m2が更に好ましい。なお、熱融着性の樹脂などの第3の接着剤を機能性粒子の表面へ適用するに際して、第3の接着剤によって形成される接着層が通気性を有する形態とすれば、本発明による機能性粒子担持シートを濾材として有効に使用することができる。
【0047】
次に、前述の熱融着性の樹脂を加熱して、溶融状態として、ノズルなどから噴出させ、蜘蛛の巣状に、機能性粒子の表面へ塗布する方法として、好ましい例を説明する。すなわち、本発明では、前記第3の接着剤30を介して接合する方法として、図9に例示するように、第1の粒子固着シート10における機能性粒子の面と第2の粒子固着シート20における機能性粒子の面とに、前記第3の接着剤30からなるホットメルト樹脂31を同時に塗布し、次いで第1の粒子固着シート10と第2の粒子固着シート20とを重ね合わせて接合する方法がある。この例に拠れば、第3の接着剤の塗布量が少なくても機能性粒子同士を強固に接合することができるので、圧力損失の少ない機能性粒子担持シートを製造することができるという利点がある。また、コスト低減が可能になるという利点がある。
【0048】
図9および図10に示す装置は、本発明の機能性粒子担持シートの製造に好ましく用いられる装置であり、第1の粒子固着シート10と第2の粒子固着シート20を別個に繰り出す2つのシート供給手段121、122と、前記シート供給手段によって繰り出された2枚の機能性粒子担持シートを挟持しながら連続的に積層する一対のロール123と、前記一対のロールの合せ目に向かって配置されるホットメルトスプレー装置125とからなる積層一体化シートの製造装置120であり、前記ホットメルトスプレー装置125は、前記2枚のシート状物の積層によって形成される境界線に向かって、ホットメルト樹脂31をホットメルトスプレーすることが可能であり、且つ2枚のシート状物のそれぞれの貼り合わせ面に両面同時にホットメルト樹脂を塗布するように配置されている。
【0049】
前記ホットメルト樹脂は、ホットメルト接着剤として使用できる限り、その材質は特に限定されず、例えばエチレン酢酸ビニル共重合物系(EVA系)、ポリアミド系、ポリオレフィン共重合物系、ポリエステル系、ウレタン系、反応性ウレタン系、エラストマー系、合成ゴム系の樹脂などを挙げることができる。また、前記ホットメルト樹脂の(JIS K6863−1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」)による軟化点は、70〜180℃が好ましく、80〜160℃がより好ましい。また、溶融時の粘度が低いことが好ましく、例えば180℃で、100〜20000mPa・sであることが好ましく、200〜15000mPa・sであることがより好ましい。
【0050】
また、2枚のシート状物のそれぞれの貼り合わせ面に、両面同時にホットメルト樹脂をホットメルトスプレーにより塗布するが、ここで両面同時とは、2枚のシート状物のそれぞれの貼り合わせ面において、ホットメルト樹脂が塗布されてから貼り合わせるまでの待機時間が両面で同じであることを意味する。この待機時間は短いほど好ましく、生産速度と、スプレー装置の位置にもよるが、10秒以下が好ましく、5秒以下がより好ましく、1秒以下が更に好ましい。例えば、図9および図10に例示する装置であれば1秒以下が可能である。
【0051】
このような方法により、第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とが第3の接着剤30を介して接合することによって、次の効果がある。すなわち、両面同時にホットメルト樹脂をホットメルトスプレーにより塗布し、しかもホットメルト樹脂が塗布されてから貼り合わせるまでの待機時間を極めて短くすることが可能であるので、冷え易いホットメルト樹脂の表面がまだ半溶融状態のうちに容易に2枚の粒子固着シートの積層一体化が可能であり、より少量の樹脂量で強固に、積層一体化が可能である。例えば面密度で1〜60g/m2が可能であり、より好適には3〜50g/m2が可能であり、さらに好適には5〜40g/m2が可能となる。また、ホットメルト樹脂の表面が多少冷えることがあっても、ホットメルト樹脂同士であれば軟化点が低く接着性に優れるので、加圧によって、強固な接着が可能となる。また、この製造方法では、シート状物をホットメルト樹脂の溶融温度まで加熱する必要がないので、機能性粒子としての機能を低下させずに強固に、しかも容易に積層一体化が可能である。
【0052】
本発明の機能性粒子担持シートは、前述のように、第1の粒子固着シート10と、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分21aを除いた部分に機能性粒子23が固着してなる第2の粒子固着シート20とを有しており、第1の粒子固着シート10における機能性粒子13と第2の粒子固着シート20における機能性粒子23とが第3の接着剤30を介して接合している。そこで、図7に例示するように、機能性粒子担持シート1を、帯状の空隙部分21aがプリーツ折りの山または谷となるようにして、ジグザグ形状にプリーツ加工して、更に図8に例示するような、例えばフィルタエレメントとして好適な、機能性粒子担持エレメント2にすると、プリーツ形状の山部や谷部でシャープな形状とすることができる。すなわち、帯状の空隙部分では、機能性粒子が1層になっており、しかも各粒子が個々に基材に固着しているので、基材が曲がっても個々の粒子は基材に追従して、基材より剥離することがない。また、機能性粒子間に位置する通気性基材11(又は21)の部分が伸び易くなり、或いは変形しやすくなる。また、機能性粒子を担持している基材から機能性粒子が飛び出してしまうという問題も生じない。また、折り山の高さが精度良く揃った品質の良いエレメントであり、その製造装置も高度な技術を要する装置が必要なく、結果として製造コストが低減された機能性粒子担持エレメントを提供することができる。
【0053】
また、本発明の機能性粒子担持シートは、機能性粒子同士が第3の接着剤30を介して接合しているので、機能性粒子が密集して処理流体と接触しない部分ができるという問題がない。このため、機能性粒子の機能が増加されるにもかかわらず、機能性粒子のもつ本来の機能を阻害することなく、圧力損失も少なくすることができる。
【0054】
なお、本発明の機能性粒子担持シートをジグザグ形状にプリーツ加工し、更に枠材を接着して、機能性粒子担持エレメントとすることができる。例えば、図8に例示するように、機能性粒子担持シート1に、所定のピッチでプリーツ加工を施し、設計に応じた山間隔を保持するために、種々の合成樹脂、紙、または金属材料など周知の材料からなる枠材40a、40bを接着固定して、機能性粒子担持エレメント2を得ることができる。尚、同図は、機能性粒子担持エレメントの最も一般的な形状を示したに過ぎず、流体通過面を構成する形状は、例示した矩形に代えて、円形、三角形、楕円形など、機能性粒子担持エレメントを装着する機器に応じた形状とすることができる。
【0055】
前記機能性粒子担持エレメントは、例えば機能性粒子をガス除去機能を有する固体粒子として、自動車用途にフィルタエレメントとして用いる場合は、機能性粒子担持シートの厚さを0.2〜4mmとすることが好ましく、0.3〜3mmであることがより好ましく、0.5〜2mmであることが更に好ましい。なお、厚さは0.5g/cm2の加圧時の厚さをいう。また、機能性粒子担持シートの面密度は150〜1200g/m2であることが好ましく、200〜1000g/m2であることがより好ましく、250〜900g/m2であることが更に好ましい。また、機能性粒子担持エレメントの寸法は、高さhは50〜300mmが好ましく、幅wは50〜300mmが好ましく、プリーツ深さdは15〜300mmが好ましい。また、この機能性粒子担持エレメントの面風速3.0m/秒における圧力損失は200Pa以下が好ましく、150Pa以下が更に好ましい。
【0056】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
(通気性基材の準備)
第1の通気性基材11および第2の通気性基材21として、部分的に熱接着された面密度30g/m2のポリエステルスパンボンドを準備した。
(グラビアロールA1の準備)
直径150mmで、300mmの巾を有し、その表面に、直径0.4mmで、深さ0.1mmの円形の凹部を有するグラビアロールであり、ロールの巾方向に対して±45度の角度をなす直線上に、凹部の中心の間隔が0.5mmとなるように、凹部が配列したグラビアロールA1を準備した。
(グラビアロールA2の準備)
直径150mmで、300mmの巾を有し、その表面に、直径0.4mmで、深さ0.1mmの円形の凹部を有するグラビアロールであり、ロールの巾方向に対して±45度の角度をなす直線上に、凹部の中心の間隔が0.7mmとなるように、凹部が配列したグラビアロールA2を準備した。
(グラビアロールBの準備)
直径150mmで、300mmの巾を有し、その表面に、直径0.4mmで、深さ0.1mmの円形の凹部を有するグラビアロールであり、ロールの巾方向に対して±45度の角度をなす直線上に、凹部の中心の間隔が0.5mmとなるように、凹部が配列しており、更にロールの巾方向全体にわたり、2.0mmの巾の帯状部分が等間隔で、16箇所あり、その帯状部分には凹部を有さない、グラビアロールBを用意した。
【0058】
(実施例1)
湿気硬化性の熱可塑性ポリウレタン樹脂を120℃で加熱溶融して、準備したグラビアロールA1の凹部を有する表面に付着させ、グラビアロールA1を回転させ、準備したスパンボンドからなる第1の基材11をこのグラビアロールに通して、基材上に、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂を面密度15g/m2となるように点状に塗布した。続いて、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂が溶融状態の間に、基材の上から、平均粒径が400μm(粒径250〜500μmの幅に95%以上が分布する)の活性炭粒子を散布して、活性炭粒子を基材に付着した。次に、そのまま室温で冷却して、付着しなかった余剰の活性炭粒子を除去して、面密度130g/m2の活性炭粒子を、基材に固着して、第1の粒子固着シート10を得た。この粒子固着シート10は図4に示す形状を有していた。また、活性炭粒子の固着量は最大固着量に対して100%であった。
次に、前述と同様に、湿気硬化性の熱可塑性ポリウレタン樹脂を120℃で加熱溶融して、準備したグラビアロールBの凹部を有する表面に付着させ、グラビアロールBを回転させ、準備したスパンボンドからなる第2の基材21をこのグラビアロールに通して、基材上に、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂を面密度14g/m2となるように点状に塗布した。続いて、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂が溶融状態の間に、基材の上から、平均粒径が400μmの活性炭粒子を散布して、活性炭粒子を基材に付着した。次に、そのまま室温で冷却して、付着しなかった余剰の活性炭粒子を除去して、帯状の空隙部分を除いた部分に面密度130g/m2の活性炭粒子を基材に固着して、第2の粒子固着シート20を得た。この粒子固着シート20は図5に示す形状を有していた。また、活性炭粒子の固着量は最大固着量に対して100%であった。
次に、ポリオレフィン共重合物からなるホットメルト樹脂(軟化点150℃)を加熱溶融させた。ついで、図9および図10に示す装置を準備して、第1の粒子固着シート10における機能性粒子の面と第2の粒子固着シート20における機能性粒子の面とに、前記加熱溶融したホットメルト樹脂31をノズル126よりスプレーして、面密度20g/m2となるように、両面同時に塗布し、次いで第1の粒子固着シート10と第2の粒子固着シート20とを重ね合わせて一対のロール123の間で接合した。その後、室温で冷却して、しばらく大気中に放置して、帯状の空隙部分を除いた部分に面密度260g/m2の活性炭粒子を有する機能性粒子担持シートを得た。
【0059】
(実施例2)
湿気硬化性の熱可塑性ポリウレタン樹脂を120℃で加熱溶融して、準備したグラビアロールA2の凹部を有する表面に付着させ、グラビアロールA2を回転させ、準備したスパンボンドからなる第1の基材11をこのグラビアロールに通して、基材上に、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂を面密度8g/m2となるように点状に塗布した。続いて、この湿気硬化性のポリウレタン樹脂が溶融状態の間に、基材の上から、平均粒径が400μm(粒径250〜500μmの幅に95%以上が分布する)の活性炭粒子を散布して、活性炭粒子を基材に付着した。次に、そのまま室温で冷却して、付着しなかった余剰の活性炭粒子を除去して、面密度105g/m2の活性炭粒子を基材に固着して、第1の粒子固着シート10を得た。この粒子固着シート10は図4に示す形状を有していた。また、活性炭粒子の固着量は最大固着量に対して81%であった。
その後の工程については実施例1と同様にして、帯状の空隙部分を除いた部分に面密度235g/m2の活性炭粒子を有する機能性粒子担持シートを得た。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の機能性粒子担持シートの一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の機能性粒子担持シートの別の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の機能性粒子担持シートの別の一例を示す断面模式図である。
【図4】第1の粒子固着シートの一例を示す平面模式図である。
【図5】第2の粒子固着シートの一例を示す平面模式図である。
【図6】第1の粒子固着シート(又は第2の粒子固着シート)の一例を示す断面模式図である。
【図7】本発明の機能性粒子担持シートをプリーツ加工した一例を示す断面模式図である。
【図8】本発明の機能性粒子担持エレメントの一例を示す斜視図である。また、枠材を矢印Aの方向に装着する態様を例示する図である。
【図9】本発明の機能性粒子担持シートの製造に好ましく用いられる装置の一例
【図10】本発明の機能性粒子担持シートの製造に好ましく用いられる装置の一例
【符号の説明】
【0061】
1 機能性粒子担持シート
2 機能性粒子担持エレメント
3 機能性粒子層
10 第1の粒子固着シート
11 第1の通気性基材
12 第1の接着剤
12a 連結部
12b 樹脂凝集部
12c ホットメルト不織布
13 第1の機能性粒子
20 第2の粒子固着シート
21 第2の通気性基材
21a 帯状の空隙部分
22 第2の接着剤
22a 連結部
22b 樹脂凝集部
22c ホットメルト不織布
23 第2の機能性粒子
30 第3の接着剤
30a ホットメルト不織布
31 ホットメルト樹脂
40a 枠材
40b 枠材
41 セパレータ
120 積層一体化シートの製造装置
121、122 シート供給手段
123 一対のロール
125 ホットメルトスプレー装置
126 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通気性基材の表面上に第1の接着剤を介して機能性粒子が固着してなる第1の粒子固着シートと、第2の通気性基材の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に第2の接着剤を介して機能性粒子が固着してなる第2の粒子固着シートとを有してなり、第1の粒子固着シートにおける機能性粒子と第2の粒子固着シートにおける機能性粒子とが第3の接着剤を介して接合していることを特徴とする機能性粒子担持シート。
【請求項2】
前記帯状の空隙部分の幅が0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の機能性粒子担持シート。
【請求項3】
前記機能性粒子の平均粒径が0.147〜1.65mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性粒子担持シート。
【請求項4】
前記第1の通気性基材の表面上に、前記機能性粒子が最大固着量に対して20〜99%固着していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の機能性粒子担持シート。
【請求項5】
前記第1の粒子固着シートに固着している機能性粒子同士の間隔が、前記第2の粒子固着シートに固着している機能性粒子同士の間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の機能性粒子担持シート。
【請求項6】
前記第1の通気性基材の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合が、前記第2の通気性基材の帯状の空隙部分を除いた部分の表面上に前記機能性粒子が最大固着量に対して固着している割合よりも少ないことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の機能性粒子担持シート。
【請求項7】
前記第3の接着剤を介した接合が、ホットメルト樹脂の塗布によって行われていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の機能性粒子担持シート。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の機能性粒子担持シートをプリーツ加工し、前記機能性粒子担持シートの周縁部に枠材を固着してなることを特徴とする機能性粒子担持エレメント。
【請求項9】
第1の通気性基材の表面上に第1の接着剤を介して機能性粒子を固着させた第1の粒子固着シートと、第2の通気性基材の表面上に、一定の間隔で設けられた帯状の空隙部分を除いた部分に第2の接着剤を介して機能性粒子を固着させた第2の粒子固着シートとを準備し、次いで第1の粒子固着シートにおける機能性粒子と第2の粒子固着シートにおける機能性粒子とを第3の接着剤を介して接合することを特徴とする機能性粒子担持シートの製造方法。
【請求項10】
前記第3の接着剤を介して接合する方法が、第1の粒子固着シートにおける機能性粒子の面と第2の粒子固着シートにおける機能性粒子の面とに、前記第3の接着剤からなるホットメルト樹脂を同時に塗布し、次いで第1の粒子固着シートと第2の粒子固着シートとを重ね合わせて接合する方法であることを特徴とする請求項9に記載の機能性粒子担持シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−264522(P2008−264522A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75173(P2008−75173)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】