説明

機能性高分子ゲル、及びそれを含有する高分子ゲル組成物、並びに光学素子

【課題】 より多くの液体を安定に保持する機能性高分子ゲル、更に、機能性高分子ゲルが刺激応答性の場合は、十分な膨潤度変化量を有する機能性高分子ゲル、及び該機能性高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物、並びに良好な調光特性を有する光学素子を提供する。
【解決手段】 架橋点となる微粒子が、均一に分散されていることを特徴とする機能性高分子ゲル、及び該機能性高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物、並びに該高分子ゲル組成物を少なくとも備える光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性高分子ゲル、特に刺激の付与により体積変化する機能性高分子ゲル、及び該機能性高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物、並びに該高分子ゲル組成物を備える光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒の添加、又は光、熱、電流もしくは電界の付与等の刺激の付与によって、体積変化(膨潤、収縮)を生ずる高分子ゲル材料(以下、刺激応答性高分子ゲルという)が知られており、その機能材料としての応用が期待されている。これらの材料は、例えば、「機能性高分子ゲル」(シーエムシー出版)に総説として記載されている。この刺激応答性高分子ゲルの用途として、ドラッグデリバリーシステムなどの薬の担持体、医療材料、インクの添加剤、機能膜、人工筋肉、表示素子、記録素子、アクチュエータ、ポンプなどが検討されている。
【0003】
一般に、水や電解質、有機溶媒等の液体中に存在する刺激応答性高分子ゲルに刺激を付与することにより、該刺激応答性高分子ゲルは体積変化を起こし、ゲル内部への液体の吸収、あるいはゲル外部への液体の排出によって、前記刺激応答性高分子ゲルの体積、大きさ、形状を変化させることができる。
【0004】
刺激応答性高分子ゲルの材料としては、ポリアクリル酸系、ポリビニルスルホン酸系、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系、ポリマレイン酸系、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸複合系の各塩などのイオン解離基を有する高分子化合物;セルロース系、ポリアクリルアミド系、ポリN−アルキル置換アクリルアミド系、ポリビニルメチルエーテル系などの高分子化合物;あるいは光などによってイオン解離する基を有する高分子化合物の架橋体;等が知られている。また、刺激応答性高分子ゲルの形態としては、粒子、繊維、立方体などの成形体が知られている。
【0005】
この刺激応答性を有する機能性高分子ゲルを効果的に用いるための最も大きな要素として前記ゲルの膨潤と収縮の体積の差(膨潤度変化量)が大きいことが必要とされることは自明である。膨潤度変化量を簡便に大きくするためには現在のところ収縮状態時の膨潤度を下げる方法と膨潤状態の膨潤度を上げる方法が取られている。収縮状態の体積を下げるためにはゲルを構成する高分子の量、すなわち製造時に高分子鎖の原料を低下させればよいとされている。しかし、原料が希薄な場合の製造においては高分子鎖同士がお互いを捕捉できず三次元構造を形成されないため、この手法には限界がある。一方、膨潤時の体積を上昇させるためには一般的にゲル中の架橋サイトを減少させる手法が選択される。しかし、この方法においても架橋サイトを過剰に減少させると高分子鎖同士をつなぎとめておくことができず三次元網目構造が形成されない。
【0006】
膨潤度変化量を大きくさせるための上述の一般的手法以外に架橋点をゲル中に均一に存在させる手法がある。一般に化学架橋構造による高分子ゲルはミクロスケールにおいて架橋剤が局在化している。この架橋点の局在化がゲルの膨潤収縮時に大きなひずみを誘発し膨潤度変化量を低下させてしまう。またさらに膨潤収縮をくりかえすことで前記ひずみの反復により高分子鎖が切断され、安定な特性を得ることができなくなってしまう。これらの問題に鑑み、放射能による架橋構造導入や高分子鎖とコンプレックスを形成した包接化合物(ポリロタキサン)を、それら同士で結合させ三次元網目構造を形成させる方法が示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし放射能架橋においては製造時の安全性に課題が残り、設備も大がかりなものになる。また、ポリロタキサンを用いる手法においても包接後の処理が多く、操作工程が複雑になるなどの欠点がある。
【0007】
また、刺激応答性高分子ゲルの課題のもう一つは、体積変化に要する応答速度が遅く、数分から数日かかってしまうことである。刺激応答性高分子ゲルの応答速度はその大きさに依存し、大きさが小さくなるにつれて高速化することが知られているため、刺激応答性高分子ゲルを微粒子にして高速化を狙う検討がされているが、刺激応答性高分子ゲルを微粒子にして用いると、凝集が生じやすく利用が困難であること、凝集によって結局応答速度が低下すること、などの問題がある。さらに、刺激応答性高分子ゲルの構造を多孔質化して液体の出入りを容易にし、高速化を狙う検討もされているが、高速化には限界があり、用途が限られていた。
【0008】
さらに、刺激応答性高分子ゲルの他の課題は、その作動原理から液体中で使用しなければはならず、その利用分野が制限されることである。例えば、表示素子や記録素子等に利用する場合、2枚の支持基板間に刺激応答性高分子ゲルと液体とを封入しなければならない(例えば、特許文献2〜4参照。)。
【0009】
これらのように素子として利用する場合、優れた調光特性を得るためには、基板上に刺激応答性高分子ゲルを固定化することが望ましいが、このような素子構成では、その安定性に問題が生じ易く、またコストが高くなるなどの問題があった。
【特許文献1】特許第3475252号明細書
【特許文献2】特開昭61−149926号公報
【特許文献3】特公平7−95172号公報
【特許文献4】特開平5−173190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにある。即ち、本発明は、より多くの液体を安定に保持する機能性高分子ゲル、更に、機能性高分子ゲルが刺激応答性の場合は、十分な膨潤度変化量を有する機能性高分子ゲル、該機能性高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物、並びに良好な調光特性を有する光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、微粒子を系中に均一に分散させ、これを機能性高分子ゲルあるいは高分子ゲル組成物の架橋点とすることで上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
<1> 架橋点となる微粒子が、均一に分散されていることを特徴とする機能性高分子ゲルである。
【0012】
<2> 液体を含有し、刺激の付与によって該液体を吸脱して体積変化することを特徴とする<1>に記載の機能性高分子ゲルである。
<3> 前記微粒子が、無機物又は無機物の錯体の微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
【0013】
<4> 前記微粒子が、デンドリマーの微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
<5> 前記微粒子が、タンパク質の微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
【0014】
<6> 前記微粒子が、有機高分子の微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
<7> 前記微粒子が、ミセル構造の微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
【0015】
<8> 前記微粒子が、粘土の微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
<9> 前記微粒子が、フラーレン又はカーボンナノチューブの微粒子を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性高分子ゲルである。
【0016】
<10> 前記液体が、水、有機溶媒、溶融塩、及び高分子からなる群から選択される何れか1つ、又は、これらの混合物であることを特徴とする<2>〜<9>の何れか1つに記載の機能性高分子ゲルである。
<11> 調光用材料を含有することを特徴とする<1>〜<10>の何れか1つに記載の機能性高分子ゲルである。
【0017】
<12> <1>〜<11>の何れか1つに記載の機能性高分子ゲルと、該機能性高分子ゲルを固定する保持材と、を含有することを特徴とする高分子ゲル組成物である。
<13> 前記保持材が、架橋点が微粒子である高分子を架橋してなるネットワークポリマーを含むことを特徴とする<12>に記載の高分子ゲル組成物である。
【0018】
<14> <12>又は<13>に記載の高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする光学素子である。
<15> 前記高分子ゲル組成物が、フィルム状又は板状に成形されてなることを特徴とする<14>に記載の光学素子である。
【0019】
<16> 基材表面に、前記高分子ゲル組成物が形成されてなることを特徴とする<14>に記載の光学素子である。
<17> 一対の基板間に、前記高分子ゲル組成物が挟持されてなることを特徴とする<14>に記載の光学素子である。
【0020】
<18> 更に、蒸発防止部材が形成されてなることを特徴とする<14>〜<17>の何れか1つに記載の光学素子である。
<19> 更に、刺激付与素子が、前記高分子ゲル組成物に接触して設けられていることを特徴とする<18>に記載の光学素子である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、より多くの液体を安定に保持する機能性高分子ゲル、更に、機能性高分子ゲルが刺激応答性の場合は、十分な膨潤度変化量を有する機能性高分子ゲル、該機能性高分子ゲルを含有する高分子ゲル組成物、並びに良好な調光特性を有する光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<機能性高分子ゲル>
本発明の機能性高分子ゲルは、架橋点となる微粒子が、均一に分散されていることを特徴とする。
また、本発明の機能性高分子ゲルとしては、刺激応答性高分子ゲル、吸液性ゲル、衝撃緩衝ゲル、増粘ゲル、食品用ゲル、液体固定化ゲル、医療・化粧品用ゲル等が挙げられ、この中でも刺激応答性高分子ゲル、つまり液体を含有し、刺激の付与によって該液体を吸脱して体積変化する機能性高分子ゲルであることが好ましい。
ここで、均一に分散するとは、微粒子がほぼその一次粒子として分散している状態を指し、顕微鏡観察で機能性高分子ゲル中の微粒子の凝集がない状態を意味する。
また、前記微粒子とは、低分子化合物より大きいものを指し、具体的には平均粒径が0.1nm〜10μmの粒子をいい、平均粒径が1nm〜5μmの粒子が好ましく、平均粒径が5nm〜1μmの粒子がより好ましい。
前記微粒子の均粒径が1nmより小さいと、分子間相互作用により凝集したり、機能性高分子ゲルの多官能性が失われてしまう。一方、前記微粒子の均粒径が10μmより大きいと、均一分散が難しくなってしまう。
【0023】
本発明者らは、鋭意研究の結果、機能性高分子ゲルの架橋剤として溶媒中に均一に分散する微粒子を用いることで簡便、かつ極めて高い膨潤度変化量を有する機能性高分子ゲルを得ることができることを見出した。詳しくは、架橋点を微粒子にすることで機能性高分子ゲル中の架橋点を均一に存在させることができる。また、一般の低分子架橋剤の架橋を担う官能基は1分子あたり2〜10程度であるが微粒子の官能基数はその1〜10桁以上倍にもなり、高分子鎖を一点で収束させることが可能になる。粒子の濃度を適度に薄めれば架橋点間分子量を増大させることができる。すなわち、均一に分散させた粒子が架橋点となることで膨潤収縮時に高分子鎖に最適なコンフォメーションを形成させることができ、さらに架橋点の収束化による架橋点間分子量の増大が高分子鎖の自由度を高め、ゲルの靭性を失うことなく膨潤度変化量を極めて上昇させることができる。
以下、本発明の機能性高分子ゲルの好ましい態様である、液体を含有し、刺激の付与によって該液体を吸脱して体積変化する本発明の機能性高分子ゲルについて説明する。
【0024】
前記架橋点となる微粒子としては、無機物又は無機物の錯体の微粒子、デンドリマーの微粒子、タンパク質の微粒子、有機高分子の微粒子、ミセル構造の微粒子、粘土の微粒子、フラーレン又はカーボンナノチューブの微粒子が挙げられる。
【0025】
前記無機物又は無機物の錯体の微粒子としては、表面に高分子鎖が修飾できるものであれば何でもよく、金属原子としてチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、セレン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミニウム、すず、アンチモン、タングステン、オスミニウム、イリジウム、白金、金、水銀、鉛、ビスマスなどが挙げられる。これらは使用条件下で化学的に安定であることが望ましい。前記金属は単体であっても酸化物、ハロゲン化物、有機金属錯体など他の元素、有機物と化合した状態であってもよい。一方、表面に高分子鎖が修飾できるようにするための官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ビニル基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキル基、シアノ基などが挙げられる。
また、無機ガラスも用いることができ加工性を向上させるためにガラスへ炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、鉛、炭酸バリウム、ホウ酸、アルミナなどが添加されているものでもよく、溶媒中に分散するものであればどれでもよい。上述の無機物粒子はどのような形状であってもよい。
前記無機物又は無機物の錯体の微粒子としては、金、無機ガラスが好ましい。
【0026】
前記デンドリマーの微粒子としては、樹脂状高分子であれば何でもよく、1分子あたり架橋点となる官能基が2箇所以上あることが好ましい。また、架橋部位は枝状分子末端でも中心部位でもその途中の部位でもかまわない。一方、架橋点となる官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ビニル基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキル基、シアノ基などが挙げられる。前記デンドリマーとしては、第3世代以上のデンドリマーが好ましい。
【0027】
前記タンパク質の微粒子としては、後述する液体中に分散するものであればどれでもよい。また、架橋点はタンパクの表面あるいは内部のどこでもよく、タンパクを構成するアミノ酸由来のアミノ基、カルボキシル基、アルキル基、フェニル基、イミダゾール基、フェノール基、ピリジン基、チオール基、ベンズイミダゾール基などの官能基でも種々のタンパク特有の働きを行う活性部位でもよい。好ましいタンパク質としては、球状タンパク質あるいはケラチン、コラーゲン、フィブロインなどの繊維状タンパク質が挙げられる。
【0028】
前記有機高分子の微粒子としては、合成物として、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチックやこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0029】
また、天然由来の有機高分子の微粒子としては、主に多糖類が好ましく用いられ、キサンタンガム、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子が挙げられる。
一方、架橋点となる官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ビニル基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキル基、シアノ基などが挙げられる。
上述の有機高分子の微粒子は、後述する液体中に分散するものであればどれでもよく、どのような形状であってもよい。
【0030】
前記ミセル構造を有する微粒子としては、水中だけでなく、後述する液体中で自己組織化し、その個々が分散するものであればどれでもよい。また、分散液中に存在する多物質を核としてその界面に吸着されるものであってもよい。ミセルを形成する材料は分子内に極性が異なる官能基を内在し界面活性能を有するものが多く、例えば親水性原子団として対カチオンとして金属塩等を有するカルボキシレート、サルフェート、スルフォネート、アミン塩、ポリエチレンポリアミン、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビット、ペンタエスリットなどの多価アルコール、アルキルスルホン酸などが挙げられ、疎水性原子団としてはアルキル鎖、フェニル誘導体、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、アルキルケトンなどが挙げられ、低分子、オリゴマー、高分子のどれでもよい。
前記ミセル構造を有する微粒子は、ミセル構造の表面に存在する官能基とゲルを形成する主鎖の結合で架橋点が形成される。該官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ビニル基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、エーテル結合、エステル結合、アミド基、イソシアネート基、ハロゲン基、アルキル基、シアノ基などが挙げられる。
【0031】
前記粘土の微粒子としては、後述する液体中に分散するものであればどれでもよく、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト、およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの粘土に任意の官能基を修飾することで種々の溶剤に分散することができる。これらの粘土は液体中で結晶層間が剥離し、剥離面と側面が異なる電荷を持つため溶媒中で良好に分散する。この剥離したナノメーターサイズの粒子の表面に高分子が修飾されることで架橋構造を形成する。
【0032】
前記フラーレン又はカーボンナノチューブの微粒子としては、後述する液体中に分散するものであればどれでもよく、例えばC60、C70、C120、C180、C82、C60F20、C60F18およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの炭素分子はラジカルをトラップすることで高分子の成長末端となり架橋点を形成する。また、合成過程で低分子物質あるいは高分子物質を内包する、あるいはその一部分を内包し、これらの分子と高分子を結合することで架橋点となる。
【0033】
前記微粒子を架橋点に持つゲルの重合法はどのような手法でもよいが、簡便には通常の架橋剤を添加するのと同じように扱うことができる。また、架橋点となる微粒子の添加量は1つの粒子が有する官能基の数にもよるが0.001質量%〜10質量%が好ましい。前記架橋点となる微粒子が0.001質量%未満であると、微粒子間隔が高分子鎖最大鎖長を超えてしまいゲルを形成できなくなる場合があり、10質量%を超えると、架橋点間分子量が低下し架橋点に束縛されるため膨潤度が低下してしまう場合がある。
【0034】
本発明の機能性高分子ゲルが含有し、該機能性高分子ゲルが吸脱し得る液体としては、
水、有機溶媒、溶融塩、及び高分子からなる群から選択される何れか1つ、又は、これらの混合物が挙げられる。詳しくは、水、イオン性液体、高分子液体、電解質水溶液、アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、プロピレンカーボネートやその他の芳香族系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、シリコンオイルや流動パラフィンなどの油類やそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
本発明において好ましく使用することができる刺激応答する機能性高分子ゲル(刺激応答性高分子ゲル)は、pH変化、イオン濃度変化、化学物質の吸脱着、溶媒の添加、あるいは光、熱、電流もしくは電界の付与等、刺激の付与によって、液体を吸収・放出して体積変化(膨潤・収縮)するものである。
本発明において、刺激応答性高分子ゲルの体積変化は一方的なものでも可逆的なものであってもよい。以下に、本発明において使用することができる刺激応答性高分子ゲルの具体例を示す。
【0036】
前記pH変化によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、電解質系機能性高分子ゲルが好ましく、その例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリマレイン酸の架橋物やその塩;マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩;ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩;アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物や4級化物や塩;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩;ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩;カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩;などが挙げられる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」等の記載は、「アクリル」及び「メタクリル」等を意味するものとする。
【0037】
前記イオン濃度変化によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、前記したpH変化による刺激応答性高分子ゲルと同様なイオン性高分子材料が使用できる。また、イオン濃度変化としては、塩等の添加、イオン交換性樹脂の使用などによるものが好ましい。
【0038】
前記化学物質の吸脱着によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、強イオン性高分子ゲルが好ましく、その例として、ポリビニルスルホン酸の架橋物や、ビニルスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどと、の共重合体の架橋物;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物や、ビニルベンゼンスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどと、の共重合体の架橋物;ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物や、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸と、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどと、の共重合体の架橋物;などが挙げられる。
【0039】
前記化学物質の吸脱着によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、特に、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸系高分子が好ましく使用される。この場合、化学物質としては、界面活性剤、例えば、n−ドデシルピリジニウムクロライドなどのアルキルピリジン塩、アルキルアンモニウム塩、フェニルアンモニウム塩、テトラフェニルホスフォニウムクロライドなどのホスホニウム塩などのカチオン性界面活性剤を使用することができる。
【0040】
前記溶媒の添加によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、一般にほとんどの機能性高分子ゲルが挙げられ、その機能性高分子ゲルの良溶媒と貧溶媒とを利用することで膨潤、収縮を引き起こすことが可能である。
【0041】
前記電流もしくは電界の付与によって、刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、カチオン性高分子ゲルと電子受容性化合物とのCT錯体(電荷移動錯体)が好ましく、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどアミノ置換(メタ)アクリルアミドの架橋物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステルの架橋物;ポリスチレンの架橋物;ポリビニルピリジンの架橋物;ポリビニルカルバゾールの架橋物;ポリジメチルアミノスチレンの架橋物;などが挙げられ、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系高分子は好ましい。これらは、ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、トリニトロベンゼン、無水マレイン酸やヨウ素などの電子受容性化合物とを組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記光の付与によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、トリアリールメタン誘導体やスピロベンゾピラン誘導体などの光によってイオン解離する基を有する親水性高分子化合物の架橋物が好ましく、その例として、ビニル置換トリアリールメタンロイコ誘導体と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の架橋物などが挙げられる。
【0043】
前記熱の付与によって刺激応答する機能性高分子ゲルとしては、LCST(下限臨界共融温度)をもつ高分子の架橋体や、互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN(相互侵入網目構造)体などが好ましい。前者は、高温において収縮し、後者は逆に高温で膨潤する特性をもっている。
【0044】
前記LCSTをもつ高分子の架橋体の具体的な化合物例としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリ〔N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド〕の架橋体;N−アルキル置換(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、または(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどと、の2成分以上の共重合体の架橋体;ポリビニルメチルエーテルの架橋体;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのアルキル置換セルロース誘導体の架橋体;などが挙げられる。これらの中でも、ポリN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0045】
一方、前記互いに水素結合する2成分の高分子ゲルのIPN体の具体的な化合物例としては、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、からなるIPN体およびその部分中和体(アクリル酸単位を部分的に塩化したもの);ポリ(メタ)アクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、からなるIPN体およびその部分中和体;などが挙げられる。より好ましくは、ポリ〔N−アルキル置換〕アクリルアミドの架橋体、または、ポリ(メタ)アクリルアミドの架橋体と、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋体と、のIPN体およびその部分中和体などが挙げられる。
【0046】
本発明において、上述の刺激応答性高分子ゲルの体積変化量は特に限定されないが、高いほど好ましく、膨潤時および収縮時の体積比(膨潤時/収縮時)が5以上、特に10以上のものが好ましい。
また、本発明において、刺激応答性高分子ゲルの体積変化は、一方的であるものでも可逆的であるものでもよいが、調光素子や表示素子などに利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。
【0047】
なお、本発明では、前記刺激応答性高分子ゲルの形態は特に限定されないが、刺激応答特性を考慮すると、粒子の形態であることが特に好ましい。粒子の形態である刺激応答性高分子ゲルを用いる場合、個々の高分子ゲルの形状についても特に制限はないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などのものを使用することができる。
【0048】
本発明において用いられる刺激応答性高分子ゲルは、その体積平均粒子径が乾燥状態で0.01μm〜5mmの範囲、特に0.01μm〜1mmの範囲の粒子であることが好ましい。体積平均粒子径が0.01μm未満となると、光学的な特性を得ることができなくなる場合があり、また、凝集等を起こしやすくなり、かつ、使用する場合にその扱いが困難となってくる場合がある。一方、体積平均粒子径が5mmを超えると、応答速度が遅くなってしまう問題が生じる場合がある。
【0049】
これらの機能性高分子ゲルの粒子は、機能性高分子ゲルを物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して機能性高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法等、一般的な粒子化方法によって製造することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって機能性高分子ゲル粒子を製造することも可能である。
【0050】
尚、本発明の機能性高分子ゲルを表示素子や記録素子もしくは調光素子に用いる場合には、前記機能性高分子ゲルに、顔料や染料、あるいは光散乱材料などの調光用材料を添加することが好ましい。さらに、可視光以外の光を吸収や散乱する材料、つまり、赤外線吸収色素、赤外線吸収または散乱顔料や、紫外線吸収色素、紫外線吸収または散乱顔料等も、本発明における刺激応答性高分子ゲルに含有させる調光用材料として好ましく適用することができる。
【0051】
このような調光用材料の添加量としては、機能性高分子ゲルの乾燥時または収縮時に、飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる量を添加することが好ましい。機能性高分子ゲルに、このような濃度の調光用材料を添加することによって、機能性高分子ゲルの膨潤・収縮により光学濃度または散乱を変化させることができる。飽和吸収濃度あるいは飽和散乱濃度以上となる調光用材料の濃度は、一般に3質量%以上が好ましく、5質量%〜95質量%の範囲を機能性高分子ゲルに添加することがより好ましく、更に好ましくは5質量%〜80質量%の範囲である。前記調光用材料の濃度が5質量%未満となると、調光用材料を添加した効果が十分に得られない場合があり、95質量%を超えると、機能性高分子ゲルの特性が低下してしまう場合がある。
【0052】
前記調光用材料としては、各種の染料や顔料、光散乱材料が挙げられ、無機系顔料、有機系顔料、塩基性染料、酸性染料、分散染料、反応性染料などが好ましい。特に顔料はその添加による機能性高分子ゲルの刺激応答性に与える影響が比較的小さいので好ましい。
【0053】
一般的な染料で調光用材料として好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが好ましい。
【0054】
また、一般的な顔料で調光用材料として好適な具体例としては、黒色顔料では各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)やチタンブラック、白色顔料では酸化チタンなどの金属酸化物や顔料が挙げられる。一方、カラー顔料では、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、フタロシアニン系のシアン顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種カラー顔料を挙げることができる。
【0055】
上述の顔料のより具体的な例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物等の白色顔料や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料や、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等の高分子材料で構成された顔料等が挙げられる。
【0056】
また、カラー顔料であるイエロー系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に挙げられる。
【0057】
マゼンタ系顔料のより具体的な例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が挙げられる。
【0058】
シアン系顔料のより具体的な例としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に挙げられる。
【0059】
これらの顔料の粒子径としては、1次粒子の平均粒子径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、特に0.01μm〜0.5μmのものが好ましい。これは粒子径が0.001μm未満では機能性高分子ゲルからの流出が起こりやすくなる場合があり、また、0.5μmを超えると発色特性や光散乱特性が悪くなる場合があるためである。
【0060】
前記光散乱材料の無機材料での好適な具体例として、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0061】
また、前記光散乱材料の有機材料での好適な具体例として、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられる。
【0062】
また、前記調光用材料として、分子内に酸基、水酸基、アミノ基、チオール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基などの極性基を有し、機能性高分子ゲル内において調光用材料濃度が高い場合に凝集体を形成しやすい特性のものも好ましく使用することができる。このような調光用材料の例としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基を有するフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等を挙げることができる。さらに、機能性高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、機能性高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
【0063】
尚、上述の調光用材料は、機能性高分子ゲル(あるいはその液体による膨潤体)内部に存在し、膨潤・収縮によっても機能性高分子ゲルの外部に移動しないものであることが好ましい。このためには、前記したように、機能性高分子ゲルに調光用材料を共有結合する方法、イオン結合する方法、機能性高分子ゲルの網目内部に物理的に保持する方法などによって調光用材料を添加することが好ましい。特に調光用材料として顔料を用いる場合は、機能性高分子ゲルの架橋密度を適宜選択し、顔料の粒子径よりも小さい網目を形成させることにより、顔料を安定に保持することができる。
【0064】
機能性高分子ゲルと、該機能性高分子ゲルが吸脱し得る液体との混合比は、質量比で1/2000〜1/1(機能性高分子ゲル/液体)の範囲とすることが好ましい。質量前記比が1/2000を超えて前記液体の割合が大きくなると、得られる高分子ゲル組成物の機械的強度などの物性低下の恐れがあり、1/1を超えて前記液体の割合が小さくなると、刺激応答による体積変化の応答速度が低下する恐れがある。
【0065】
<高分子ゲル組成物>
本発明の高分子ゲル組成物は、既述の本発明の機能性高分子ゲルと、該機能性高分子ゲルを固定する保持材と、を含有することを特徴とする。
本発明において、保持材とは、前記機能性高分子ゲルの機能を妨げることなく3次元的空間に固定化する部材をいう。本発明における保持材の材料としては、合成物として、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチックやこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料が挙げられ、また、天然由来の材料としては、主に多糖類が好ましく用いられ、キサンタンガム、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等が挙げられ、また、ヘクトライトなどの無機材料なども挙げられる。
本発明における保持材は、架橋点が微粒子である高分子が三次元的に架橋されてなるネットワークポリマーであることが好ましい。
【0066】
本発明の高分子ゲル組成物において、保持材と機能性高分子ゲルとの組成比は、その質量比で1/50〜50/1[(保持材+液体)]/(機能性高分子ゲル+液体)]の範囲とすることが好ましい。この範囲を越えると、所望の光学特性や材料の物理的強度が得られない場合がある。当該組成比としては、質量比で1/20〜20/1[(保持材+液体)]/(機能性高分子ゲル+液体)]の範囲とすることがより好ましい。
【0067】
また、これら保持材として用いる材料は物質透過性であることが好ましい。保持材として用いる材料が物質透過性であれば、高分子ゲル組成物外部の電解質や界面活性剤の濃度を変化させることによって、高分子ゲル組成物内部に含まれる刺激応答性高分子ゲルに液体を吸脱させることが可能となる。物質透過性である保持材の材料としては、先に記した機能性高分子ゲル、高分子溶液のほとんど全てを挙げることができる。
【0068】
<光学素子>
本発明の光学素子は、上述の本発明の高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする。
本発明の光学素子において、高分子ゲル組成物が固体であるものは、自己保持性をもち、フィルム状や板状に成形して、基材を用いずにそのままで、光学素子として利用することができる。更に、強度、耐久性や機能の向上のために、基材表面に、本発明の高分子ゲル組成物が形成されてなる光学素子、或いは一対の基板間に、前記高分子ゲル組成物が挟持されてなる光学素子としてもよい。
更に、保持材が液状であるものは、流動性があるため、扁平容器に収容したり(この場合、扁平容器の底面を便宜上「基材」と称することとする)、複数の基材で支持したり、2枚の基材で挟み込んだ状態で端部を封止することで、光学素子として使用することができる。なお、これら基材や容器は、少なくとも一方の面が光透過性であることが好ましい。
【0069】
上述の光学素子の構成例において、高分子ゲル組成物またはそれよりなる層の厚みの好ましい範囲は1μm〜2mmであり、特に2μm〜500μmの範囲が好ましい。前記層の厚み1μm未満であると、調光性能が低下する場合があり、2mmを超えると、応答特性などが低下する場合がある。
【0070】
本発明の光学素子において、高分子ゲル組成物中の保持材が蒸散性物質を含有する場合、当該蒸散性物質が蒸発することにより、光学素子として望ましい特性を損なってしまう場合がある。したがって、本発明の光学素子においては、高分子ゲル組成物を被包するように蒸発防止部材が形成されていることが好ましい。ここで、蒸発防止部材とは、高分子ゲル組成物に含まれる液体の蒸発を防止する部材であり、気体透過性の低い材料からなるものである。蒸発防止部材としては、既述の基材を兼ねるものであってもよい。
【0071】
前記蒸発防止部材の材料としては、特に限定されないが、例えばガラス、セラミックのような無機材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリイミド、ポリアリレート等が使用できる。なおこれら蒸発防止部材の材料は、透明性の高いもの、ガスバリア性の高いものが好ましく使用でき、特に樹脂の場合は内部に含まれる液体蒸気のガスバリア性の高いものが好ましい。また、蒸発防止部材としては、放置・加熱・紫外線照射等の手段により硬化するものを用いることが好ましく、通常の接着剤、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0072】
本発明の光学素子には、蒸発防止部材を設けることによって、外部からの刺激、例えばイオンや界面活性剤等の物質が透過しにくくなることもあるが、この場合、蒸発防止部材と高分子ゲル組成物との間に、高分子ゲル組成物に刺激を付与し得る(イオンや界面活性剤を発生または移動させ得る)刺激付与素子を、前記高分子ゲル組成物に接触して設けることもできる。この場合、該刺激付与素子を蒸発防止部材の内側に設けてもよいし、蒸発防止部材自体が刺激付与素子を兼ねる構成であってもよい。
【0073】
例えば、蒸発防止部材としてガラス電極を用い、電場を付与することで刺激付与素子を兼ねさせることもできるし、刺激付与素子としてヒーターを前記高分子ゲル組成物に接触して設けることで、熱を付与することもできる。また、蒸発防止部材としてガラス電極を用い、該ガラス電極の高分子ゲル組成物に接触する表面に導電性高分子やイオン交換性の高分子などを皮膜しておけば、通電によって導電性高分子やイオン交換性の高分子中のイオンを液体中に出し入れすることで、高分子ゲル組成物中のイオン濃度を変化させることができる。この時用いられる導電性高分子としては、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などを、好ましいものとして挙げることができる。
【0074】
尚、本発明の光学素子に付与し得る刺激としては、自然界の刺激でも、人為的な刺激でもよい。光、熱、化学物質などの自然界の刺激を利用する場合には、本発明の光学素子は、調光素子や光シャッター、センサーなどとして利用することができる。一方、人為的な刺激を利用する場合には、光学素子の内部あるいは外部から熱、光、電場などを付与する手段を講じることで、上記自然界の刺激を利用する場合と同様の用途の他、表示素子、記録素子、光変調素子などの用途にも応用することが可能となる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
粒径25nmのシリカ微粒子(マックスライトZS、昭和電工(株)製)を0.1Mのクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液に浸漬しシリカ粒子表面にビニル基を導入しその後、減圧乾燥を行い水中で半透膜による洗浄を行った。これにN−イソプロピルアクリルアミドが20質量%となるように添加し、モノマー溶液を調製した。更に、窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去した後に過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミンの添加でレドックス開始反応を行い重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の8倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0076】
<実施例2>
実施例1で調製したモノマー溶液60gにカーボンブラック5gを添加し、連続相をシクロヘキサンとする逆相懸濁重合を行うことで着色高分子ゲル粒子を得た。更に、着色高分子ゲル粒子0.5gを含む水分散溶液10gに対し、紫外線硬化樹脂2gを加え溶解させた。この溶液をガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物を成形し、ガラス基板の周囲に樹脂(スリーボンド3114)を用いて封止した。これに紫外線を照射し、光学素子J1を作製した。
光学素子J1を温度制御が可能なセルに装着し透過率の測定を行った。そのときの10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率は、それぞれ7%および90%であった。
【0077】
また、光学素子J1においてガラスの代わりに可撓性を有する厚さ50μmのPETフィルムを用い周囲を熱融着により封止することで柔軟なフィルム状の光学素子J2を得た。光学素子J2の10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率は、それぞれ6%および89%であった。
光学素子J2の封止を解き片面を開放した状態での10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率は、それぞれ7%および90%であった。
【0078】
<実施例3>
テトラキス−メソ(3,5−ジヒドロキシフェニル)−ポルフィリンをコアとして末端にビニル基を有するフレシェ型のデンドロン(1,3−ジアリロキシ安息香酸)を付加し、精製操作を行い末端に二重結合を有するデンドリマー(I)を得た。デンドリマー(I)およびN−イソプロピルアクリルアミドの濃度が、0.5質量%および20質量%のトルエン溶液に、0.001質量%となるように過酸化ベンゾイルを添加した。窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去したのちに60℃に加熱し重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。機能性高分子ゲル中の溶媒はメタノール、水の順番で置換を行った。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の10倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0079】
<実施例4>
実施例3で調製した過酸化ベンゾイルを添加したトルエン溶液60gに、カーボンブラック5gを添加し、懸濁重合を行うことで着色高分子ゲル粒子を得た。得られたゲルの膨潤液はメタノール、水の順で置換した。着色高分子ゲル粒子水分散溶液10gに対し、紫外線硬化樹脂2gを加え溶解させた。この溶液をガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形しガラス基板の周囲に樹脂(スリーボンド3114)を用いて封止した。これに紫外線を照射し、光学素子J3を作製した。
光学素子J3を温度制御が可能なセルに装着し透過率の測定を行った。そのときの10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率はそれぞれ4%および95%であった。
【0080】
<実施例5>
N−イソプロピルアクリルアミドおよびアミノエタンチオールの濃度がそれぞれ20質量%、0.01質量%であるトルエン溶液を調製し、これに0.001質量%となるように過酸化ベンゾイルを添加した。窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去した後に60℃による開始反応を行い重合反応を進行させ末端にアミノ基を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド(I2)を得た。I2を20質量%含む水溶液中に、粒径約4nmのチトクロムCを0.3質量%となるように添加し、タンパク上のカルボキシル基と高分子末端のアミノ基を反応させ機能性高分子ゲルを得た。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の8倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0081】
<実施例6>
実施例5で調製した過酸化ベンゾイルを添加したトルエン溶液60gに、カーボンブラック5gを添加し懸濁重合を行うことで着色高分子ゲル粒子を得た。着色高分子ゲル粒子0.5gを含む水分散溶液10gに対し、紫外線硬化樹脂2gを加え溶解させた。この溶液をガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形しガラス基板の周囲に樹脂(スリーボンド3114)を用いて封止した。これに紫外線を照射し、光学素子J4を作製した。
光学素子J4を温度制御が可能なセルに装着し透過率の測定を行った。そのときの10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率はそれぞれ4%および96%であった。
【0082】
<実施例7>
粒径100nmのアクリル系微粒子を硫酸−クロム酸処理をしたのちに0.1Mのクロロジメチルビニルシランのイソオクタン溶液に浸漬した。N−イソプロピルアクリルアミドが20質量%の水溶液中に洗浄した前記粒子が0.5質量%となるようにモノマー溶液を調製した。更に、窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去した後に過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミンの添加でレドックス開始反応を行い重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の8倍、45℃の収縮時には0.4倍もの体積変化を得ることができた。
【0083】
<実施例8>
ペンタデカフルオロオクタン酸の2質量%水溶液を調製しミセルを形成させた。ここに前記I2を10質量%添加し機能性高分子ゲルを得た。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の7倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0084】
<実施例9>
濃度が1質量%となるよう合成ヘクトライト(直径25nm、厚さ1nm程度)を水に添加し撹拌分散し透明になるまで放置した後に、N−イソプロピルアクリルアミドを20質量%になるように加え、モノマー溶液を調製した。更に、窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去したのちに過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミンの添加でレドックス開始反応を行い重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の10倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0085】
<実施例10>
実施例9で調製したモノマー溶液にカーボンブラックを添加し、連続相をシクロヘキサンとする逆相懸濁重合を行うことで着色高分子ゲル粒子を得た。着色高分子ゲル粒子を5g含む水分散溶液10gに対し、紫外線硬化樹脂2gを加え溶解させた。この溶液をガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形しガラス基板の周囲に樹脂(スリーボンド3114)を用いて封止した。これに紫外線を照射し、光学素子J5を作製した。
光学素子J5を温度制御が可能なセルに装着し透過率の測定を行った。そのときの10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率はそれぞれ5%および96%であった。
【0086】
<実施例11>
フラーレンC60(直径約1nm)およびN−イソプロピルアクリルアミドの濃度が0.2質量%および20質量%のトルエン溶液に、0.001質量%の過酸化ベンゾイルを添加した。窒素ガスのバブリングにより溶液中の酸素を除去したのちに60℃に過熱し重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。機能性高分子ゲル中の溶媒はメタノール、水の順番で置換を行った。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の9倍、45℃の収縮時には0.2倍もの体積変化を得ることができた。
【0087】
<比較例1>
メチレンビスアクリルアミドおよびN−イソプロピルアクリルアミドの濃度がそれぞれ0.2質量%、20質量%のトルエン溶液10gに、過硫酸アンモニウム0.05gとテトラメチルエチレンジアミン0.05gを添加してモノマー溶液を調製し、更に、レドックス開始反応を行い重合反応を進行させ機能性高分子ゲルを得た。
得られた機能性高分子ゲルを温度制御が可能な可能なセルに設置し体積膨潤度を測定した。25℃の膨潤状態において重合時の5倍、45℃の収縮時には0.2倍の体積変化であった。
【0088】
<比較例2>
比較例1で調製したモノマー溶液にカーボンブラックを添加し逆相懸濁重合を行うことで着色高分子ゲル粒子を得た。着色高分子ゲル粒子水分散溶液10gに対し、紫外線硬化樹脂2gを加え溶解させた。この溶液をガラス基板(50×50×0.9mm)表面全面に塗布し、溶媒の蒸散を防ぐために前記ガラス基板と同じ大きさのガラス基板で挟み厚さ300μmの高分子ゲル組成物に成形しガラス基板の周囲に樹脂(スリーボンド3114)を用いて封止した。これに紫外線を照射し、光学素子Hを作製した。
光学素子Hを温度制御が可能なセルに装着し透過率の測定を行った。そのときの10℃および60℃での500nmの波長の光の透過率はそれぞれ20%および80%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋点となる微粒子が、均一に分散されていることを特徴とする機能性高分子ゲル。
【請求項2】
液体を含有し、刺激の付与によって該液体を吸脱して体積変化することを特徴とする請求項1に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項3】
前記微粒子が、無機物又は無機物の錯体の微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項4】
前記微粒子が、デンドリマーの微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項5】
前記微粒子が、タンパク質の微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項6】
前記微粒子が、有機高分子の微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項7】
前記微粒子が、ミセル構造の微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項8】
前記微粒子が、粘土の微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項9】
前記微粒子が、フラーレン又はカーボンナノチューブの微粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項10】
前記液体が、水、有機溶媒、溶融塩、及び高分子からなる群から選択される何れか1つ、又は、これらの混合物であることを特徴とする請求項2〜9の何れか1項に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項11】
調光用材料を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の機能性高分子ゲル。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の機能性高分子ゲルと、該機能性高分子ゲルを固定する保持材と、を含有することを特徴とする高分子ゲル組成物。
【請求項13】
前記保持材が、架橋点が微粒子である高分子を架橋してなるネットワークポリマーを含むことを特徴とする請求項12に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする光学素子。
【請求項15】
前記高分子ゲル組成物が、フィルム状又は板状に成形されてなることを特徴とする請求項14に記載の光学素子。
【請求項16】
基材表面に、前記高分子ゲル組成物が形成されてなることを特徴とする請求項14に記載の光学素子。
【請求項17】
一対の基板間に、前記高分子ゲル組成物が挟持されてなることを特徴とする請求項14に記載の光学素子。
【請求項18】
更に、蒸発防止部材が形成されてなることを特徴とする請求項14〜17の何れか1項に記載の光学素子。
【請求項19】
更に、刺激付与素子が、前記高分子ゲル組成物に接触して設けられていることを特徴とする請求項18に記載の光学素子。

【公開番号】特開2006−36811(P2006−36811A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214562(P2004−214562)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】