説明

欠陥検出装置、欠陥検出方法及びシート状物

【課題】光透過性を有するシート状物表面に生じた凹凸欠陥を、光学系起因の輝度分布に関わらず効果的に検出できる欠陥検出装置、欠陥検出方法、及び欠陥検出されたシート状物を提供する。
【解決手段】光透過性を有するシート状物1の走行経路上において、シート状物に平行光を照射する照射手段2bと、シート状物面に対して照射手段と反対側に設置され、シート状物を透過した照射手段からの光を投影するスクリーン3と、スクリーンに投影された光を暗視野方向から撮像する撮像手段4を有する凹凸欠陥の検出装置であって、スクリーンは、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性を有するシート状物の製造ライン又は加工ラインに沿って設けられ、シート状物の凹凸欠陥を検出する欠陥検出装置、欠陥検出方法及びこれらにより凹凸欠陥が検出されたシート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子フィルムに対する品質要求が厳しくなりつつあり、高分子フィルムに生じる欠陥に対する要求規格も年々高まっている。そのため、高分子フィルムに代表されるシート状物の製造工程においては、シート状物の欠陥検査が一般的に行なわれている。従来、検査対象となっていた欠陥として、埃やフィルム片等の付着異物、混入異物の他、フィッシュアイなどの凹凸欠陥、穴、キズなど多岐に亘っていたが、シート状物の高品質化に伴い、正常部分との光学歪が微小な凹凸欠陥等も検査対象として要求されつつある。
【0003】
従来、光透過性を有するシート状物の欠陥検査における凹凸欠陥の検出手法としては、照射手段によりシート状物を照射し、透過あるいは反射した光をCCDラインセンサなどの撮像手段で受光し、受光量の変化により欠陥を検出・判定する方法が一般的である。
【0004】
例えば、複数の撮像手段を用いて、相異なる方向かつシート状物面に対して傾斜した角度からシート状物面を撮像し、凹凸欠陥の検出や種類検出を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、得られた凹凸欠陥画像と欠陥の高さ情報を比較して、凹凸欠陥の検出や判定が可能である。しかし、複数の撮像手段の撮像対象位置を厳密に一致させる必要があるほか、フィルムの振動や微小な走行皺の影響で各撮像手段の撮像位置にずれが生じ、情報の比較が困難になるため、連続的に安定した検査を行うには更なる改良が求められていた。
【0005】
一方、シート状物を透過した点光源の光をスクリーン上に投影し、凹凸欠陥部分のレンズ効果で生じる陰影を撮像手段で検出する検査方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、撮像位置が常時スクリーン上で一定であるため、安定した検査を行うことが可能である。しかし、スクリーン上には点光源の照射光が球面波であることに起因する山形の輝度分布が生じ、シェーディング補正などの輝度補正処理を行っても、元の輝度分布の暗部と明部の輝度差に起因する地合ノイズ信号が大きく残り、欠陥部分のS/N比を小さくするという問題があった。
【0006】
形状変化の緩やかな凹凸欠陥は、欠陥部分のレンズ効果による受光量の変化が僅かであるため、検査においてはS/N比向上のためにノイズ信号量を抑制する必要がある。しかし上記先行技術では、正常なシート状物の地合信号の中にノイズ成分が大きく残るため、結果として凹凸欠陥の検出に至らないケースがあった。
【0007】
従って、照射手段の輝度分布による検査への影響を抑制したシート状物表面の凹凸欠陥の検出手段の開発・改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−351825号公報
【特許文献2】特開2005−241586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光透過性を有するシート状物表面に生じた凹凸欠陥を、光学系起因の輝度分布に関わらず効果的に検出できる欠陥検出装置、欠陥検出方法、及び欠陥検出されたシート状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、課題を解決するために鋭意検討した結果、光透過性を有するシート状物表面に生じた凹凸欠陥を検出するにあたり、投影式検査において、スクリーン表面の拡散反射率と、照射手段に対する撮像手段の撮像角度によって、撮像手段における受光量が異なることに着目し、シート状物に点光源の光を照射し、スクリーンに投影された光を撮像手段で受光し、得られた受光量情報から欠陥を判定する光学系において、スクリーン表面の拡散反射率に分布を付与して、具体的には、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低くして、撮像手段における受光量分布を均一に補正する方法を見出すことにより、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第一は、光透過性を有するシート状物の走行経路上において、シート状物に平行光を照射する照射手段と、シート状物面に対して照射手段と反対側に設置され、シート状物を透過した照射手段からの光を投影するスクリーンと、スクリーンに投影された光を暗視野方向から撮像する撮像手段を有する凹凸欠陥の検出装置であって、スクリーンは、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低いことを特徴とする、欠陥検出装置に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、スクリーン表面の拡散反射率が、スクリーン周辺部よりも中央部が低くなっていることを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、スクリーン表面の拡散反射率を面粗度により付与したことを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、スクリーン表面の面粗度のRzが、スクリーン周辺部よりも中央部が大きいことを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、撮像手段の視野領域全域における受光量分布の最小値が最大値の50%以上となるよう、照射手段の照射軸と撮像手段の撮影軸とスクリーンの傾斜角度が調整されていることを特徴とする、欠陥検出装置に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、照射手段は点光源であることを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、照射手段は、照射光の平行性を向上させるために1枚または複数枚のレンズを具備すること特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、照射手段で使用するランプは、アーク放電式であることを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、撮像手段は、CCDラインセンサカメラであることを特徴とする欠陥検出装置に関する。
【0020】
本発明の第二は、記載の欠陥検出装置を用いて、シート状物の走行経路上において、シート状物表面に生じた凹凸欠陥を検出することを特徴とする、欠陥検出方法に関する。
【0021】
本発明の第三は、記載の欠陥検出装置を用いて凹凸欠陥が検出されたシート状物に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、スクリーン表面の拡散反射率によって、スクリーンに照射された光の鏡面反射成分と拡散反射成分の割合が異なることを利用している。
【0023】
すなわち、投影光学系を用いた欠陥検査において、照射手段からスクリーン表面に照射された光の輝度分布に対して、輝度の高い領域の拡散反射率を予め低く調整し、輝度の低い領域の拡散反射率を予め高く調整し、照射手段の照射軸と撮像手段の撮像軸がスクリーン上で正反射方向にならない暗視野方向の角度から、撮像手段でスクリーン表面の輝度を撮像することで、輝度分布のバラつきに関わらず均一な受光量が得られるため、ノイズ信号を抑制して光量変化の少ない形状の緩やかな凹凸欠陥でも効果的に検出でき、光透過性を有するシート状物の凹凸欠陥を、長期に亘り安定して検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の実施形態に係る欠陥検査装置の一例を示す図である。
【図2】従来の実施形態に係る欠陥検査装置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る欠陥検出方法とその装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る欠陥検出方法とその装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、光透過性を有するシート状物の走行経路上において、シート状物に平行光を照射する照射手段と、シート状物面に対して照射手段と反対側に設置され、シート状物を透過した照射手段からの光を投影するスクリーンと、スクリーンに投影された光を暗視野方向から撮像する撮像手段を有し、スクリーンは、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低いことを特徴とする凹凸欠陥の欠陥検出装置、欠陥検出方法及び欠陥検出装置により欠陥が検出されたシート状物に関する。
【0026】
本発明における「シート状物」とは、光透過性を有し、面方向に対し厚み方向のスケールが非常に小さい、いわゆるシート状物であって、特に厚みや幅などは限定されるものではない。シート状物として、例えば、フィルム、シート、薄膜などが挙げられる。
【0027】
また、本発明において、シート状物の「走行経路」とは、例えば、製造、加工等の生産工程内で連続的に搬送されている経路を指す。
【0028】
本発明における「暗視野方向」とは、照射手段の照射軸と撮像手段の撮影軸がスクリーン上で正反射の関係で交わらない方向をいう。
【0029】
さらに、本発明において「凹凸欠陥」とは、シート状物厚みに対する突起厚み及び凹み深さの割合が+25%〜−25%であり、欠陥がスジのように連続的ではない場合は大きさ50μm〜2cmである無色欠陥を指す。ここで、無色欠陥とは、シート状物と同色である欠陥のことを指す。例えば、一般的なフィッシュアイの他、異物の噛み込みによる打痕や、走行皺などによるスジ、キャストフィルムやキャストロール等の成形ガイド体の表面形状ムラに起因する模様などが例示され、シート状物表面に生じたものであれば特に限定されるものではない。
【0030】
そのほか、本発明において「レンズ効果」とは、光透過性を有するシート状物の凹凸形状部分が凹レンズ、及び凸レンズと同様の効果を発揮し、入射光に対して射出光の進行方向が変化する現象のことを言う。
【0031】
また、本発明において「鏡面反射成分」とはスクリーン表面で正反射する反射光を言い、「拡散反射成分」とは正反射する反射光以外の反射光を言う。「拡散反射率」とは、スクリーン表面で反射した反射光全体に対する、拡散反射した反射光の割合を言う。
【0032】
以下、本発明に係る凹凸欠陥検出装置及び欠陥検出方法に関して、図1、2、3、4に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0033】
図1は、従来の欠陥検出装置の概略構成を示す模式図である。
【0034】
図1中、1はシート状物であり、矢印Xの方向に走行している。また、2aはライン状の照射手段であり、蛍光灯のほか、LEDやハロゲンランプ、メタルハライドランプなどの光源を導光体やシリンドリカルレンズを用いてライン状にしたものが挙げられる。4は照射手段2aから照射されシート状物1を透過した光を受光する撮像手段である。5は欠陥判定手段であり、撮像手段4で受光した光量の変化から欠陥の有無を判定する。図2は、図1の明視野撮影方式に対し、暗視野撮影方式とした模式図であり、検出対象とする凹凸欠陥に応じて、図1、図2いずれの方式をとることも可能である。
【0035】
図1、2では、シート状物1上に凹凸欠陥が存在する場合、凹凸欠陥のレンズ効果で散乱または集光した透過光による輝度信号の変化を、予め設定した閾値と比較照合することにより、欠陥として検出することが可能である。しかし、ライン状の照射手段2aから照射される光はいずれかの方向に光線成分が重なる拡散光である。そのため、厚み変化が微細な凹凸欠陥の屈折効果で生じる受光量の変化は、他方向からの拡散光と干渉して殆ど検知することができない。よって、この方法は厚み変化が急激な凹凸欠陥のみに適応範囲が限られる。
【0036】
厚み変化が微細な凹凸欠陥を検出する手段として、メタルハライドやキセノン光源のような、発光源に素子を持たない点光源を用いた投影式検査も一般的に行われている。
【0037】
点光源を用いる投影式検査では、照射光は各光線成分同士が重ならない、いわゆる平行光に近い光であるため、欠陥部分での透過光の散乱、集光による光の分布の変化がスクリーン上に顕著に投影されることとなる。しかし、点光源から照射される光は球面波の性質を有する。そのため、平面であるスクリーン上に投影された照射光は中心が最も明るく、周辺が暗い光量分布を持つ。従って、撮像手段4を用いた自動検査を行う場合、撮像手段4側で受光量を均一とみなす補正が必要である。この受光量の補正によって、スクリーン上の光量が低い領域は信号のノイズ成分が拡大されるため、厚み変化の微小な凹凸欠陥での受光量変化はノイズ範囲に埋もれることが多く、欠陥として検出することは困難であった。
【0038】
これに対して、図3は、本発明に係る欠陥検出方法とその装置の概略構成を示す模式図である。
【0039】
本発明は、照射手段固有の光量分布、すなわち点光源でいう中心が最も明るく端部に進むにつれ暗くなる分布が、撮像手段での受光時には一定になるように、スクリーン表面に拡散反射率の分布が付与されている、具体的には、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低くなっている。ここで、一定とは、撮像手段の視野領域全域における受光量分布の最小値が最大値の50%以上である状態のことをいう。検査の精度向上の観点から、撮像手段の視野領域全域における受光量分布の最小値が最大値の70%以上であることが好ましい。
【0040】
また本発明は、スクリーン表面の拡散反射率が、スクリーン周辺部よりも中央部が低くなっていることが好ましい。
【0041】
図3中、1はシート状物であり、矢印Xの方向に走行している。2bは平行光を照射する照射手段である。3は照射手段2bから照射されシート状物1を透過した光を投影するスクリーンである。スクリーン3は、シート状物1の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低い。また、スクリーン3中央部の拡散反射率を低く、スクリーン周辺の拡散反射率を高く調整していることが好ましい。4は撮像手段であり、照射手段2bに対して暗視野となるよう配置され、スクリーン3に投射された光量から欠陥情報を取得する。5は欠陥検出手段であり、撮像手段4で取得した受光量情報から、凹凸欠陥の有無を判定する。
【0042】
この構成によれば、撮像手段4ではスクリーン3上で反射する照射手段2bからの光を暗視野方向から撮像する。そのため、スクリーン3中央部は反射光の鏡面反射成分が大きいために撮像手段4での受光量は小さくなり、一方スクリーン3端部の反射光は拡散反射成分が大きいために撮像手段4での受光量の低下は抑制されるため、撮像手段4が認識する受光量は、スクリーン3上の輝度分布と比較して均一な分布となる。これにより、撮像手段4における受光量均一化処理における補正割合が僅かとなるか、または、受光量均一化処理における補正が不要となり、地合ノイズ信号の少ない検査が行えるため、厚み変化の微小な凹凸欠陥でも漏れなく検出することが可能となる。
【0043】
本発明は、スクリーン3表面の拡散反射率を面粗度により付与することが好ましい。
【0044】
また本発明は、スクリーン3表面の面粗度のRzが、スクリーン3周辺部よりも中央部が大きいことが好ましい。Rzとは、JIS規格「JISB0601(1994)」に規定された十点平均粗さのことを言い、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜取り、この抜取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0045】
スクリーン3表面へ拡散反射率を付与する方法としては、研磨、表面の微細発泡、拡散剤塗付等、スクリーンの面粗度を調整できるものであれば特に制限は無いが、任意の粒径の砥粒を用いたブラストによる表面研磨が、所望の分布を付与できる点で好ましい。また、面粗度分布の態様としては、スクリーン3上の領域をマスキング等によって等分割または不等分割して段階的に付与するものや、スクリーン3上で面粗度の値が曲線状に変化するように付与するものなどでも十分に受光量の均一化の効果が得られるため、用途や要求レベル、元の輝度波形の分布状況に応じて、付与方法および分布パターンは適宜選択可能である。
【0046】
スクリーン3のサイズは、シート状物1の幅寸法、照射手段2bの照射角度、及び照射手段2bからの距離に合わせて適宜決定することが出来る。すなわち、スクリーン3は、シート状物1の幅方向に対して、照射手段2bから照射されてシート状物1を透過した光全てを投影可能であるよう配慮した寸法とし、撓みや歪の無いフラット性を備えたものが好ましい。また、スクリーン3の素材は光を吸収し難い明色系であることが好ましく、白色であることがより好ましい。
【0047】
照射手段2bは、高い平行性を有し、且つ撮像手段4で認識可能な光量の光をシート状物に均一に照射できるものであれば、光源に特に制限は無い。平行性の高い光を実現する手段としては、光源タイプとして点光源を採用することが、光の干渉を抑えた平行性の高い光を作り出すことが可能である点で好ましく、更に、点光源の光を1枚または複数枚のレンズに通すことが平行性を高める点でより好ましい。また、点光源に用いるランプにおいては、LEDやハロゲンランプなど光源にチップやフィラメントを有するランプよりも、クセノンランプや水銀ランプのように、アーク放電で発光するランプの方が、より点に近い光源とすることが出来る点で好ましい。本発明において用いることの出来る光源としては、例えば株式会社ウシオ電機製の超高圧水銀ランプ光源装置OPM2−502Hなどが使用可能である。
【0048】
本発明は、撮像手段4の視野領域全域における受光量分布の最小値が最大値の50%以上となるよう、照射手段2bの照射軸と撮像手段4の撮影軸とスクリーン3の傾斜角度が調整されていることが好ましい。照射手段2bの照射軸と撮像手段4の撮影軸はスクリーン3上で交わるが、軸同士がスクリーン3上で正反射方向となる場合、スクリーン3上で反射する光の鏡面反射成分が撮像手段4で受光されることとなる。そのため、スクリーン3の傾斜角度は、鏡面反射成分の光が撮像手段4に入射しない角度に調整する必要があり、好ましくは軸同士が正反射方向となるスクリーン傾斜角度から±5度以上60度以下の角度に設定し、更には±5度以上20度以下に設定するのがより好ましい。
【0049】
シート状物1とスクリーン3との距離L1や、シート状物1と照射手段2bの距離L2は、検出すべき凹凸欠陥の寸法に応じて適宜決定することが出来る。シート状物1とスクリーン3の距離L1が大きい程、凹凸の傾斜角度が小さい欠陥、すなわち突起や凹みなどの厚み変化が僅かである凹凸欠陥や、シート状物面方向のサイズが大きい凹凸欠陥を、鮮明にスクリーン3に投影することが可能となる。また、シート状物1と照射手段2bの距離L2が大きいほど、点光源からの照射光が平行光に近づき、欠陥部分のレンズ効果を顕著に発現させることが可能となるが、一方で照射距離の拡大に伴ってスクリーン3上の輝度が減衰するため、目的の欠陥に応じて距離を適宜設定する必要がある。更に、図4に示すように、照射手段2bから照射される光の光軸に対してシート状物1を傾けることにより、凹凸欠陥部のレンズ効果が強調されるため、照射手段2bからスクリーン3までの距離を小さく設定することも可能である。
【0050】
撮像手段4は、CCDラインセンサカメラやCCDエリアセンサカメラが適宜適用可能であるが、シート状物1の幅方向の分解能を細かく設定できる点において、CCDラインセンサカメラが好ましい。撮像手段4にCCDラインセンサカメラを適用する場合、別途エンコーダを設置し、出力パルスからシート状物1の走行速度を積算し、検出した欠陥の位置情報を算出することも可能である。本発明において用いることの出来るCCDラインセンサカメラには、例えば株式会社エクセル製のTI5150TSSなどが使用可能である。
【0051】
欠陥検出手段5は、撮像手段4から送られた受光量情報を表す信号に基づき、撮影位置での凹凸欠陥の有無や位置情報を抽出する回路と、予め設定入力した閾値情報を照合比較し、凹凸欠陥として判定する回路を備えるものであればよく、この目的を達成できる限り特に制限されるものではない。本発明における欠陥検出の流れとしては、例えば、撮像手段4の受光量に対して、凸欠陥を検出するための明側の閾値と凹欠陥を検出するための暗側の閾値を設定し、明側の閾値以上、或いは暗側の閾値以下の受光量の信号が入力された場合に欠陥と認識して位置情報を保存するとともに、二次元画像を作成する。ここで、撮像手段4の受光量分布に対して、カメラまたは信号処理装置内でシェーディング補正を施すことが、視野領域内の受光量分布をさらに均一する点で好ましい。また、シート状物1に凹凸欠陥以外の異物が生じるおそれのある場合には、本欠陥検出装置に対してシート状物1の走行方向の上流側に、別途異物除去手段や実体のある異物を検出する手段を設置することが、本発明において凹凸欠陥のみを検出できる点で好ましい。
【0052】
以上に述べたように、光透過性を有するシート状物1の走行経路上において、シート状物1に平行光を照射する照射手段2bと、シート状物1面に対して照射手段2bと反対側に設置され、シート状物1を透過した照射手段2bからの光を投影するスクリーン3と、スクリーン3に投影された光を撮像する撮像手段4を有する凹凸欠陥の検出装置であって、スクリーン3は、スクリーン3表面に拡散反射率の分布が付与されている、具体的には、シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低くなっていることを特徴とする、欠陥検出装置を用いることによって、シート状物1に発生する凹凸欠陥を検出し、発生した凹凸欠陥の原因特定や早期の対処を実施することが可能になり、凹凸欠陥の無いシート状物1を得ることが可能になる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
光源は500W超高圧水銀ランプ(株式会社ウシオ電機社製、OPM2−502H)を用い、撮像手段は素子数5150bit、視野幅200mmのCCDラインセンサカメラ(株式会社エクセル製、TI5150TSS)を用いた。ラインセンサカメラからスクリーンまでの距離を1400mmとし、また、照射軸上で照射手段とスクリーンの間で、スクリーンからの距離が200mmとなる位置に、直径約5mm、深さ約2μmの凹み欠陥を有するプラスチックフィルム(シート状物)を設置した。スクリーンは長さ300mm、幅50mmの白色アクリル板を用い、面粗度がスクリーンの長手方向に領域を三等分した中央の領域でRz=127、両端領域でRz=2.5となるよう研磨処理を施した。CCDラインセンサカメラの撮影軸と照射手段の照射軸がスクリーン上で75度の角度を為して交わるものとし、スクリーン上での反射光に対して暗視野撮像とするために、スクリーンを最小限動かしてCCDラインセンサカメラの撮影軸とスクリーン面方向の為す角度が60.0度となるようスクリーンの傾斜角度を調整した。この時、検査領域、すなわち撮像手段の視野領域内で検査対象となる領域における受光量の最小値は最大値の71.4%となり、最大値の50%を上回った。装置構成で得られた光量分布に対してシェーディング補正を行い、スクリーン上に投影された欠陥陰影の検出を行ったところ、欠陥陰影のみを欠陥として判定した。また、スクリーンに投影されたプラスチックフィルムの地合輝度に対する、欠陥陰影部分のS/N比を「S/N比=20×log10(陰影部分の輝度立下り量)/(地合ノイズ変動量)」で算出した結果、S/N比=2.2となり、検査で明確に欠陥を捉えることのできるS/N比2.0の値を上回った。
【0055】
(実施例2)
面粗度がスクリーンの長手方向に領域を五等分した中央の領域でRz=127、中央領域と両端領域の間に位置する領域でRz=21、両端部でRz=2.5となるよう研磨処理を施したアクリル板をスクリーンとして用い、その他の構成は実施例1と同じとしたところ、欠陥陰影のみを検出した。また、欠陥陰影部分のS/N比=2.7となり、S/N比2.0を大きく上回った。
【0056】
(実施例3)
スクリーンの長手方向に領域を七等分し、一方の端から他方の端までの各領域における面粗度が、順にRz=2.5、10.5、63.5、127(スクリーン中央領域)、63.5、10.5、2.5となるよう研磨処理を施したアクリル板をスクリーンとして用い、その他の構成は実施例1と同じとしたところ、欠陥陰影のみを検出した。また、欠陥陰影部分のS/N比=3.2となり、S/N比2.0を大きく上回った。
【0057】
(比較例1)
表面全域の面粗度がおよそRz=127となるよう研磨処理を施したアクリル板をスクリーンとして用い、その他の構成は実施例1と同じとしたところ、欠陥陰影を検出したが、同時にプラスチックフィルムの地合ノイズ成分も欠陥として誤検出した。また、欠陥陰影部分のS/N比=1.7となり、S/N比2.0を下回った。
【符号の説明】
【0058】
1 シート状物
2a ライン光の照射手段
2b 平行光の照射手段
3 スクリーン
4 撮像手段
5 欠陥検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するシート状物の走行経路上において、前記シート状物に平行光を照射する照射手段と、
前記シート状物面に対して前記照射手段と反対側に設置され、前記シート状物を透過した前記照射手段からの光を投影するスクリーンと、
前記スクリーンに投影された光を暗視野方向から撮像する撮像手段とを有する凹凸欠陥の検出装置であって、
前記スクリーンは、前記シート状物の欠陥のない状態を透過した光のうち、光量レベルの最も高い部分が投影される箇所の拡散反射率が、前記光量レベルの最も低い部分が投影される箇所の拡散反射率よりも低いことを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
前記照射手段固有の光量分布が、前記撮像手段での受光時には一定になるように、前記スクリーン表面に拡散反射率の分布が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記スクリーン表面の拡散反射率が、スクリーン周辺部よりも中央部が低くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記スクリーン表面の拡散反射率を面粗度により付与したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記スクリーン表面の面粗度のRzが、スクリーン周辺部よりも中央部が大きいことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記撮像手段の視野領域全域における受光量分布の最小値が最大値の50%以上となるよう、前記照射手段の照射軸と前記撮像手段の撮影軸とスクリーンの傾斜角度が調整されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項7】
前記照射手段は点光源であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記照射手段は、照射光の平行性を向上させるために1枚または複数枚のレンズを具備すること特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
前記照射手段で使用するランプは、アーク放電式であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項10】
前記撮像手段は、CCDラインセンサカメラであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の欠陥検出装置を用いて、前記シート状物の走行経路上において、前記シート状物表面に生じた凹凸欠陥を検出することを特徴とする、欠陥検出方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の欠陥検出装置を用いて凹凸欠陥が検出されたシート状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215566(P2012−215566A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62159(P2012−62159)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】