説明

欠陥検査装置およびその方法

【課題】検出信号を検査位置によらず所望の強度分布にする。
【解決手段】検査領域に対してスリットまたは複数の照明を用いてまたは走査可能な照明を用いて、照明強度を任意の形状に整形することによって、欠陥検査に使用する被検査対象からの信号強度を容易に所望の分布とし、検査領域における検査信号の強度むらを低減させ、欠陥検出性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置およびその方法に関し、例えば、半導体や液晶などの製造プロセスにおける欠陥検査装置およびその方法に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体基板(ウエハ)表面の異物は、配線の絶縁不良や短絡等の不良原因になり、微細な異物は、キャパシタの絶縁不良やゲート酸化膜などの破壊の原因にもなる。これらの異物は、搬送装置の可動部から発生したもの、人体から発生したもの、プロセスガスによる処理装置内で反応生成されたもの、薬品や材料に混入していたものなどが種々の原因により種々の状態で混入する。また、液晶表示素子の製造工程でも、パターン上に異物が混入して何らかの欠陥が生じると、液晶表示素子は表示素子として使えないものになってしまう。さらに、プリント基板の製造工程でも状況は同じであって、異物の混入はパターンの短絡,接触不良の原因となる。
【0003】
このような半導体や液晶などの基板の表面に付着している異物を検出する技術には、特許文献1乃至7に開示されている。
【0004】
たとえば、特許文献6には、被検査対象にスリット状のビームを照明し表面の異物を検査する際、照明領域内の光ビームの照度むらを低減させて、異物検出感度をほぼ均一化する方法を提供している。この方法では、ビームの照度分布を均一化するため、アパーチャやフィルタ部材を用いて回折むらや照度むらを低減している。
【0005】
また、特許文献7には、特に異物付着防止用の薄膜(ぺリクル)の表面検査のために、光ビームを部分遮光する一対のエッジなどによって生じた回折光の影響を低減するため被検査対象の露光時間を調節することによって均一な信号出力を得る方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−250847号公報
【特許文献2】特開平6−258239号公報
【特許文献3】特開平6−324003号公報
【特許文献4】特開平8−210989号公報
【特許文献5】特開2000−105203号公報
【特許文献6】特開平7−229845号公報
【特許文献7】特開平7−167792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高精度な欠陥検査を実現するためには、検出位置によらず均一な出力信号を得ることが重要となる。しかしながら、上記背景技術の欄で述べた技術では、被検査領域全体にわたる均一な照明光の実現を目指しており、このためにはレーザ光源などにも良質な照度分布が必要であり、また、高精度な光学系を必要とする。このため、光源や光学系が高価となり、またその照度分布を維持することも困難であるという課題がある。また、一対のエッジでの回折光の影響を低減するため、回折による照度むらを一周期分の積分によって受光強度の調整をするなどの処理が必要となる課題がある。
【0008】
そこで本発明では、欠陥検査に使用する検出信号について、被検査領域の任意の領域に渡って、検出信号が容易に所望の強度分布を得るための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの特徴は、被検査対象へ光ビームを照射する照射系と、被検査対象の被検査領域からの光を検出して検出信号へ変換する検出系と、前記検出信号に基づいて前記被検査領域の欠陥を検査する検査処理系とを有する欠陥検査装置において、前記検出信号が所望の信号強度分布を持つように、前記照射系を制御することである。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、欠陥検査装置において、時間遅延積分型CCDイメージセンサあるいは1次元イメージセンサのような走査型センサを用いる場合、被検査領域の長手方向に対して、走査方向に積分した場合に検出信号の信号強度分布が均一となるような照明を照射することを特徴とする。更に、これを実現するため、単一のビームを照射する場合には、光路の途中に前記均一となる分布を実現するためのしぼりを挿入することである。
【0011】
また、本発明のその他の特徴は、被検査領域に対して、照明強度の分布がセンサ長手方向(走査方向,信号の積分方向に対して垂直な方向)に所望の分布となるように複数の照明光を照射することである。この際、照明光がコヒレントである場合、照明光の領域が重なる場合には、干渉による強弱の変化を防ぐことが必要である。この方法としては、たとえば、照明光を時間的に分割して照射することが望ましい。
【0012】
また、本発明のその他の特徴は、2次元イメージセンサを使う場合には、検査領域の任意の領域で、照明光の強度が所望の分布となるように複数の照明光を重ねて検査することである。
【0013】
また、本発明の更に他の特徴は、2次元イメージセンサによる露光中に、被検査領域を照明が走査することである。これにより、2次元イメージセンサによって検出される信号総量を所望の分布とし、検出される信号の強度むらを低減することができる。
【0014】
また、本発明の更に他の特徴は、TDI走査中に、被検査領域を照明光が走査し、イメージセンサ出力を所望の分布とすることである。これにより、検出される信号の強度むらを低減する方法も考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、欠陥検査に使用する被検査対象からの信号強度を容易に所望の分布とし、検査領域における検査信号の強度むらを低減させ、欠陥検出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態である欠陥検査装置の構成図である。
【図2】イメージセンサから出力される検出信号の強度分布を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態である欠陥検査装置の構成図である。
【図4】被検査対象の被検査領域に、複数の照明光を照射する照明系の構成図である。
【図5】イメージセンサから出力される検出信号の強度分布を示す図である。
【図6】被検査対象の被検査領域に、複数の照明光を照射する照明系の構成図である。
【図7】被検査対象の被検査領域に、照明光を走査する照明系の構成図である。
【図8】被検査対象の被検査領域に、照明光を走査する照明系の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、特に、検出信号は検査位置によらず均一であることが望ましいことに着目している。例えば、検出信号自体の強度分布を平坦化することや、被検査領域の任意の領域又は所定の領域(例えば検出器の検出視野内)の照明系制御などに着目した発明であり、以下、図面を用いて、その実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の実施形態について説明する。第一の実施形態では、欠陥検査装置の照明光学系に、照明の分布を所望の形状とするためのスリットを挿入することで、欠陥検査に使用する検出信号の分布を所望の形状とするためのものである。
【0019】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第一の実施形態を図1の構成図を用いて説明する。図1において、欠陥検査装置a1000は、照明光学系a100と、検出光学系a200と、ステージ部a300と、演算処理部a400とを備えている。演算処理部a400は、検出光学系a200で検出された検出信号の演算処理を行うが、照明光学系a100,検出光学系a200及びステージ部a300の制御用の演算処理を行っても良いし、図示しないコンピュータによって、照明光学系a100,検出光学系a200,ステージ部a300及び演算処理部a400の制御を行っても良い。
【0020】
ステージ部a300は、基板設置台a304,Xステージa301,Yステージa302,Zステージa303、及びこれらを制御するステージコントローラa305を備え、被検査対象物a1を載置する基板設置台a304は、x,y,z方向の任意の位置に移動する。
【0021】
照明光学系a100は、レーザ光源a101と、凹レンズa102aと凸レンズa102bにより構成されるビームエキスパンダa102と、スリットa103と、照明レンズa104、及びミラーa105を備え、レーザ光源a101から射出された平行光が、ビームエキスパンダa102と、照明レンズa104とを介して集光され、ミラーa105を介して被検査対象物a1に照射される。照明光はレーザ光源a101から被検査対象物a1の間に設置されたスリットa103によって任意の形状に整形される。スリットa103は光路のどこに設置しても良いが、ビームエキスパンダa102と照明レンズa104の間の、照明光が平行となる位置に設置するのが望ましい。照明光学系a100は、必ずしもこの構成である必要は無く、複数枚のレンズ群あるいはミラー群から構成されて良く、または光学分岐要素によって複数の光路に分かれていてもよい。
【0022】
検出光学系a200は、被検査対象物a1から射出した光(散乱光,回折光)を、対物レンズを例とする検出レンズa201,繰り返しパターンからの反射回折光によるフーリエ変換像を遮光し、欠陥分類手段として機能する空間フィルタa202,結像レンズa203,TDIセンサa204で検出するように構成されている。なお、検出レンズa201及び結像レンズa203は複数のレンズを組み合わせたレンズ群として構成することができる。
【0023】
照明光a3は、スリットa103によって整形され、被検査領域a4に照射される。被検査領域a4から射出した光(散乱光,回折光)が検出光学系a200に入光し、TDIセンサa204によって積分され検出される際に、検出系の検出視野に対応するTDIセンサa204の長手方向の信号強度分布を所望の形状とすることができる。概ね、TDIセンサa204の長手方向の信号強度分布は略均一であることが望ましい。
【0024】
図2に、TDIセンサa204からの出力信号を、略均一の強度分布を例とする、所望の強度分布とするための方法の概略図を示す。図2Aに示すように、スリットa103を使用しない場合、ビームエキスパンダa102によってコリメートされた照明光a5が、照明レンズa104により一方向に集光され、TDIセンサa204の長手方向に平行に照射される。被検査領域a4における照明光a5aは、図2Aのように楕円形状となり、照明光の強度分布をTDIセンサa204の積分方向に積分すると、長手方向に略ガウス分布となる。したがって、TDIセンサa204から出力される信号は、図2Aに示すa5bの分布のように、長手方向の中央と両端で強度差が発生し、信号強度むらの原因となる。これは理想的なガウス分布の場合であり、必ずしも中央で信号強度が最大となるとは限らない。
【0025】
一方、スリットa103を使用する場合を図2Bに示す。ビームエキスパンダa102によってコリメートされた照明光a5は照明レンズa104により一方向に集光され、TDIセンサa204の長手方向に平行に照射される。被検査領域a4における照明光a5Aは、スリットa103により遮光された分、ビーム径が小さくなる部分が生じるため、楕円形状よりも広がった形状となる。この照明光a5Aの強度分布を、TDIセンサa205の積分方向に対して積分すると、a5Bのように長手方向に対して略均一な分布となる。このため、スリットa103を使用した場合には、TDIセンサa204からの出力信号は、長手方向に対して略均一な信号強度を得ることができる。
【0026】
略均一であるとは、TDIセンサa204の長手方向の領域において、図2Bに示すa5Bの分布のように、図2Aに示すa5bの分布のものよりも、位置による信号強度差が小さいことをさし、必ずしも中央が最大である必要はない。また、信号強度分布にピークが複数あり、うねりのある分布の場合であっても、図2Aにくらべ位置による信号強度差が小さくなることが考えられ、分布の形状は様々考えられる。
【0027】
本発明にかかる第一の実施形態によって、検査に使用する検出信号の強度分布を、フーリエ光学系や濃度分布が一様でないNDフィルタなど、複雑な光学系を使用することなく、容易に実現することが可能となる。本実施例は、欠陥検査装置の既存の照明光学系にスリットを付加することによって実施可能である。また、検出系やイメージセンサの画素ごとの出力特性に合わせ照明分布を整形することも可能である。信号強度分布は所望の形状でよいが、画素ごとの信号強度むらを低減させることが検出感度の向上に効果的であり、略均一な信号強度分布とするのがよい。
【実施例2】
【0028】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、被検査領域に複数の照明を照射し任意の照明強度分布とし、被検査領域における各位置の露光量の分布を所望のものとすることで、イメージセンサからの検出信号の強度分布を所望の形状とするものである。
【0029】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第二の実施形態を図3の構成図を用いて説明する。図3において、欠陥検査装置b1000は、照明光学系b100と、検出光学系b200と、ステージ部b300と、演算処理部b400とを備えている。検出光学系b200におけるイメージセンサb204はTDIセンサである。
【0030】
ステージ部b300は、基板設置台b304,Xステージb301,Yステージb302,Zステージb303、及びこれらを制御するステージコントローラb305を備え、被検査対象物b1を載置する基板設置台b304は、x,y,z方向の任意の位置に移動する。
【0031】
図4に示すように、照明光学系b100は、凹レンズb102aと凸レンズb102bから構成されるビームエキスパンダb102と、光学分岐要素b107と、照明レンズb105とミラーb106よりなる照明整形部b109a乃至b109bから構成される。レーザ光源b101から出射したレーザはビームエキスパンダb102によりコリメートされ、光学分岐要素b107によって複数の光路に分岐され、ミラーb108により光路を形成し、それぞれ照明整形部b109aとb109bによって一方向に絞り込み、TDIセンサ長手方向に対して略平行となるよう、照明光b3aおよびb3bを被検査対象物b1の被検査領域b4に照射する。これにより、被検査領域b4に対して、略平行となる複数の照明光を照射することができる。照明整形部と照射するビームは2つであってもそれより多くてもかまわない。また、照明整形部b109aおよびb109bは、照明レンズとミラー以外の要素によって構成されてもかまわない。
【0032】
検出光学系b200は、被検査対象物b1から射出した光(散乱光,回折光)を、対物レンズを例とする検出レンズb201,繰り返しパターンからの反射回折光によるフーリエ変換像を遮光し、欠陥分類手段として機能する空間フィルタb202,結像レンズb203,TDIセンサb204で検出するように構成されている。なお、検出レンズb201及び結像レンズb203は複数のレンズを組み合わせたレンズ群として構成することができる。
【0033】
図5は被検査領域b4と、照明光b5aおよびb5bとの関係を示している。b5aおよびb5bはTDIセンサb204の長手方向に対してずれた位置に照明される。なお、積分方向にずれていなくてもかまわない。これらの照明光b5aとb5bを、TDIセンサb204の積分方向に積分した照明強度の、TDIセンサb204の出力信号の長手方向の強度分布がb5eである。b5cは照明光b5a単独の照明強度をTDIセンサb204の積分方向に積分した強度分布であり、b5dは照明光b3b単独の照明強度をTDIセンサb204の積分方向に積分した強度分布である。単独の照明による強度分布に比べ、複数の照明による照明強度を積分した照明強度分布b5eは、長手方向に対してより均一となっている。このため、被検査領域b4から射出される散乱光または回折光をTDIセンサb204によって受光し、TDIセンサb204から出力される信号強度の分布は略均一となり、検出信号の強度むらを低減することができる。
【0034】
照明光b5aおよびb5bが重なる領域では、照明光がコヒレント光である場合、干渉によって被検査領域b4から射出される光の強度が変化することが考えられる。このため、複数の照明光が重なる場合には、照明光を時間的に分割して照射することが望ましい。たとえば、レーザ光源b101にパルスレーザなど連続発振でないものを使用すれば、それぞれの照明光が同時に被検査対象物に照射されないようにできるため、照明光が重なる領域での散乱光の強度分布をそれぞれの照明光の強度分布の和とすることができる。あるいは、連続発振のコヒレント光を使用する場合、チョッパなどにより時間的に分割し、それぞれの照明光が互いに干渉しないようにすれば、照明光が重なる領域での散乱光の強度分布をそれぞれの照明光の強度分布の和とすることができる。
【0035】
本実施例では、複数の照明光b3aおよびb3bはTDIセンサb204の検出領域b4をそれぞれ異なる位置を照明している。この際、照明光の強度は、TDIセンサb204の走査方向に対して積分された値は長手方向に対して略均一となるように照明される。これによって、TDIセンサによって出力される検出信号は長手方向のどの位置であっても略均一となるため、検出画像の明るさむらを低減することができる。
【0036】
本実施例によれば、複数の照明光を被検査対象物に照射することで検出信号の強度分布を所望の形状とすることができる。また、それぞれの照明光に均一性を要求しないので、容易な光学系により実現可能となる。
【実施例3】
【0037】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の実施形態について説明する。第三の実施形態では、2次元イメージセンサを用いた欠陥検査装置において、複数の照明により被検査領域を照明し、被検査領域の任意の領域における照明強度を形成することで、イメージセンサからの検出信号の強度分布を所望の形状とすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第三の実施形態を、図3の構成図を用い、実施例2と異なる部分について説明する。
【0039】
図6に示すように、照明光学系部b100は、レーザ光源b101と、凹レンズb102aと凸レンズb102bによって構成されるビームエキスパンダb102と、ミラーおよびレンズなどから構成される照明整形部c109a乃至c109cと、光学分岐要素c107およびc110と、ミラーc108によって構成される。ビームエキスパンダb102によってコリメートされた照明光は、光学分岐要素c107およびc110によって分岐され、ミラーc108によって光路を形成され、それぞれ照明整形部c109a乃至c109cによって整形され、被検査対象b1の被検査領域b4に照明される。この際、照明光c5a,c5b,c5cは、それぞれ互いに略平行となる方位から照明され、被検査領域c4において互いに重なり合い、照明光の強度分布が被検査領域b4において略均一となるように照射する。
【0040】
これにより、被検査領域b4から射出される光の強度は略均一となり、検出光学系b200を介して2次元イメージセンサb204により受光される。このとき2次元イメージセンサb204により出力される検出信号は、照明整形部c109a乃至c109cでの整形により、任意の領域において所望の信号強度分布とすることができる。主として、被検査領域における信号強度分布を略均一とすることが望ましい。照明整形部c109a乃至c109cはさらに、スリットなどを備え照明光c5a乃至c5cをそれぞれ任意の形状とする構成でもかまわないし、それ以外の構成であってもかまわない。
【0041】
照明光c5a乃至c5cが重なる領域では、照明光がコヒレント光である場合、干渉によって被検査領域b4から射出される光の強度が変化することが考えられる。このため、複数の照明光が重なる場合には、照明光を時間的に分割して照射することが望ましい。たとえば、レーザ光源b101にパルスレーザなど連続発振でないものを使用すれば、それぞれの照明光が同時に被検査対象物に照射されないようにできるため、照明光が重なる領域での散乱光の強度分布をそれぞれの照明光の強度分布の和とすることができる。
【0042】
本実施形態では、フーリエ光学系や一様でないNDフィルタなど複雑な光学系を使用しないため、容易な光学系により実現可能である。
【実施例4】
【0043】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第四の実施形態について説明する。第四の実施形態では、2次元イメージセンサを用いた欠陥検査装置において、被検査領域を一つ以上の照明系を用いて検査する。この際、1回またはそれ以上の回数の露光時間内に、照明で被検査領域を走査することによって、任意の検出位置に所望の露光量を与え、2次元イメージセンサから出力される検出信号の強度分布を所望の形状にするものである。
【0044】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第四の実施形態を図3の構成図を用いて、実施例2と異なる部分について説明する。図3において、欠陥検査装置b1000は、照明光学系b100と、検出光学系b200と、ステージ部b300と、演算処理部b400とを備えている。b204は2次元CCDセンサである。
【0045】
図7に示すように、照明整形部b100は、レーザ光源b101,凹レンズb102aと凸レンズb102bとから構成されるビームエキスパンダb102,被検査領域b4を2次元的あるいは1次元的に走査可能な照明整形部d109を備え、2次元CCDセンサb204の1回の露光中に被検査領域b4を、d6に示すような経路で走査し、被検査領域b4全体において、総露光量が略均一となるように露光することによって、2次元CCDセンサb204によって検出される画像の各画素での信号強度が略均一となるようにしてもよい。これによって、検出画像の明るさむらを低減することができる。走査の経路はd6と異なるものでもよい。
【0046】
被検査領域b4を走査可能な照明整形部d109は、ポリゴンミラーやガルバノミラーなどによって構成されてよい。あるいは、その他の駆動方式であってもよい。
【0047】
本実施例によれば、光学的に複雑でない照明系によって、被検査領域の任意の領域で所望の信号強度分布を得ることが可能となる。
【実施例5】
【0048】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第五の実施形態について説明する。第五の実施形態では、TDIセンサを用いた欠陥検査装置において、TDIセンサ長手方向に対して照明光を走査することで、長手方向の信号強度分布を所望のものにすることができる。
【0049】
本発明の一実施形態である欠陥検査装置の第五の実施形態を図3の構成図を用いて、実施例2と異なる部分について説明する。図3において、欠陥検査装置b1000は、照明光学系b100と、検出光学系b200と、ステージ部b300と、演算処理部b400とを備えている。b204はTDIセンサである。
【0050】
図7に示すように、照明整形部b100は、レーザ光源b101,凹レンズb102aと凸レンズb102bとから構成されるビームエキスパンダb102,被検査領域b4を2次元的あるいは1次元的に走査可能な照明整形部e109を備え、被検査領域b4を、e6に示すようにTDIセンサ長手方向に往復させるようにして走査し、被検査領域b4を被検査対象物b1が通過する間の総露光量がTDIセンサb204の長手方向で略均一となるように照射することによって、TDIセンサb204からの出力信号の強度分布が略均一とすることができる。これによって、検出画像の明るさむらを低減し、検出感度を向上させることができる。走査の経路はe6と異なるものでもよい。なお、走査経路e6は1次元的であっても2次元的であってもよい。
【0051】
照明整形部e109は、レンズやミラーなどを組み合わせて実現される。また、照明光を走査するために、ガルバノミラーやポリゴンミラーなどを備えていても良く、それ以外の駆動方法でも良い。
【0052】
本発明の形態は、上記に述べた実施例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々変形可能である。
【0053】
以上述べたように、本明細書では、例えば、以下の点が開示される。
1.被検査対象物を載置して走行するステージと、前記被検査対象にビームを照射する照明光学系と、前記照明光学系によって照明された前記被検査対象の被検査領域からの反射散乱光を集光し結像する検出光学系と、前記検出光学系によって結像された像を検出するイメージセンサと、前記イメージセンサで検出された信号に基づいて異物または欠陥の検出を行う信号処理部を有し、前記イメージセンサから出力される信号を所望の強度分布とすることを特徴とする欠陥検査装置。
2.前記1の欠陥検査装置において、照明されるビームを所望の形状に整形する照明整形手段を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
3.前記2の欠陥検査装置において、前記被検査対象を走査し、前記イメージセンサが時間遅延積分型イメージセンサまたは一次元イメージセンサであることを特徴とする欠陥検査装置。
4.前記3の欠陥検査装置において、前記照明光学系によって照明された前記被検査対象の被検査部分の表面を、前記被検査対象を走査し、前記時間遅延積分型CCDイメージセンサまたは一次元イメージセンサによって画像を取得する際、前記時間遅延積分型CCDイメージセンサまたは一次元イメージセンサから出力される信号強度が所望の信号強度分布を示すように前記照明光学系の照明を整形することを特徴とする欠陥検査装置。
5.前記3に記載された装置において、複数の照明系を備え、前記被検査対象の前記被検査領域に前記複数の照明系により照明し、前記時間遅延積分型CCDイメージセンサで検出する際、前記時間遅延積分型CCDイメージセンサまたは一次元イメージセンサから出力される信号の強度が前記時間遅延積分型CCDイメージセンサまたは一次元イメージセンサの長手方向で所望の強度分布となるように前記被検査領域に前記複数の照明系によってビームを照射することを特徴とする欠陥検査装置。
6.前記2に記載された欠陥検査装置において、前記イメージセンサが2次元イメージセンサであることを特徴とする欠陥検査装置。
7.前記6に記載された欠陥検査装置において、前記被検査領域内で、一般的な分布(ガウス分布など)を持つ照明を複数照明し、前記被検査対象からの反射散乱光を前記2次元イメージセンサで検出した際の出力信号が、所望の強度分布を示すことを特徴とする欠陥。
8.前記6に記載された欠陥検査装置で、前記照明光学系が前記被検査対象を2次元あるいは1次元に走査でき、前記2次元イメージセンサの露光時間中に、前記照明光学系が前記被検査部分を走査し、露光される光量の総和が前記被検査領域でほぼ均一となることを特徴とする欠陥検査装置。
9.前記3に記載された装置で、前記照明光学系が前記被検査対象を2次元あるいは1次元に走査でき、前記時間遅延積分型CCDセンサから出力される検出強度信号が所望の強度分布を示すことを特徴とする検査装置。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、半導体基板や液晶基板以外の、たとえばフィルムやガラス基板やレチクルなど他の被検査対象の検査装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
a1,b1 被検査対象
a4 非検査領域
a5 コリメーションされた照明光
a5A,a5a,b3a,b5a,b5b,c5a,c5b,c5c,e5a 照明光
a5B,a5b 強度分布
a100,b100 照明光学系
a101,b101 レーザ光源
a102,b102 ビームエキスパンダ
a102a,b102a 凹レンズ
a102b,b102b 凸レンズ
a103 スリット
a104,b105a,b105b 照明レンズ
a105,b106a,b106b,b108,c108 ミラー
a200,b200 検出光学系
a201,b201 検出レンズ
a202,b202 空間フィルタ
a203,b203 結像レンズ
a204 TDIセンサ
a300,b300 ステージ部
a301,b301 Xステージ
a302,b302 Yステージ
a303,b303 Zステージ
a304,b304 基板設置台
a305,b305 ステージコントローラ
a400,b400 演算処理部
a1000,b1000 欠陥検査装置
b4 被検査領域
b5c,b5d,b5e 照明強度または信号強度
b107,c107,c110 光学分岐要素
b109a,b109b,c109,e109 照明整形部
b204 TDIセンサまたは2次元CCDセンサ
d5a ビーム
d6,e6 走査経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象へ光ビームを照射する照射系と、
被検査対象の被検査領域からの光を検出して検出信号へ変換する検出系と、
前記検出信号に基づいて前記被検査領域の欠陥を検査する検査処理系とを有する欠陥検査装置において、
前記検出信号が所望の信号強度分布を持つように、前記照射系を制御することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記照射系において、前記光ビームの照射時間,強度分布,照射軌跡及び光源数の少なくとも一つが制御されることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記光ビームの照射時間を制御するために、時間的に分割して照射する機構を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記光ビームの強度分布を制御するために、前記光ビームの光路上に、少なくともフィルタ、絞り及びスリットのいずれかを有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記照射系を、前記検出系の検出視野内で制御することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記時間的に分割して照射する機構を、少なくとも前記光ビームの光源自体及び前記光ビームの光路上のいずれかに有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記照射系を、前記検出系の検出視野内で前記検出信号の強度が平坦になるように制御することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項8】
請求項5又は7において、
前記検出器は、時間遅延積分型CCDイメージセンサ又は二次元イメージセンサ又は一次元イメージセンサであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項2において、
前記照射系は、(前記光ビームの照射軌跡を制御するために、)前記被検査領域内で光ビームを一次元的又は2次元的に走査する走査機構を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記検出系は、時間遅延積分型CCDイメージセンサ又は二次元イメージセンサ又は一次元イメージセンサを有する検出器を有し、
前記検出器の出力信号が、前記検出器の長手方向において所望の信号強度分布となるように前記走査機構を制御することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項11】
請求項9において、
前記光源数は、2以上であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記検出器の露光時間中に、前記照射系が前記被検査領域を走査し、露光される光量の総和が前記被検査領域でほぼ均一となることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項13】
被検査対象へ光ビームを照射し、被検査対象の被検査領域からの光を検出して検出信号へ変換し、検出信号に基づいて前記被検査領域の欠陥を検査する欠陥検査方法において、
前記検出信号が所望の信号強度分布を持つように、
前記光ビームの照射の条件である照射条件を制御することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記照射条件を制御するために、前記光ビームの照射時間,強度分布,照射軌跡及び光源数の少なくとも一つを制御することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項15】
請求項13において、
前記所望の信号強度分布は、前記被検査領域内で略均一な信号強度を有する分布であることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項16】
請求項14において、
前記光ビームの照射時間を制御するために、時間的に分割して照射することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項17】
請求項14において、
前記光ビームの強度分布を制御するために、前記光ビームの光路上の絞りまたはスリットを制御することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項18】
請求項14において、
前記光ビームの強度分布は、前記検出の検出条件に合わせて制御することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記検出条件は、検出器の画素ごとの出力特性であることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項20】
請求項14において、
前記光ビームの照射軌跡を制御するために、前記被検査領域内で光ビームを一次元的又は2次元的に走査することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項21】
請求項14において、
前記光源数は、2以上であることを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項22】
請求項13において、
前記光を検出して検出信号へ変換するための検出器が、時間遅延積分型CCDイメージセンサ又は二次元イメージセンサ又は一次元イメージセンサであることを特徴とする欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−236966(P2010−236966A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83985(P2009−83985)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】