説明

止水クリップ及びシール構造

【課題】止水クリップの頭部の外周外側の全周に渡って、発泡剤が、より均一に発泡される。
【解決手段】第一発泡部132、133は、外周壁面132A,133Aが凸部126、127に対して頭部110の厚み方向に重なる位置に配設されているので、凸部126、127部材の外周外側方向に発泡していく。つまり、頭部110の外周外側の全周に対して、より均一に発泡剤が発泡していく。よって、外孔41の隅々まで発泡した発泡剤を行き渡せることができ、発泡した発泡剤が外孔41の全周においてシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水クリップ及び車両のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗装物に設けられた塗料導入用の貫通孔を塞ぐための塞ぎ具として、加熱により発泡膨張する発泡剤を備えた塞ぎ具が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
さて、特許文献1の構成は、塞ぎ具のカバー部材に一対の脚部が設けられ、この脚部が被塗装物の貫通孔の周囲に当接し、カバー部材を所定の高さだけ浮き上がらせている。そして、浮き上がったカバー部材と被塗装部(貫通孔)との間に発泡剤が保持されている。
【0004】
このような構成の塞ぎ具は、一枚の(或いは複数枚積層された)板に設けられた孔を発泡した発泡剤で塞ぐことは可能である。しかし、例えば、板の孔を閉塞部材(例えば、ヒンジ部材)が覆う構成の場合、板と閉塞部材との間に孔を含む閉塞空間を発泡した発泡剤でシールしたい場合、特許文献1の塞ぎ具を用いると、発泡した発泡剤の外周外側方向への流れが脚部によって阻害され、発泡した発泡剤が外周外側の全周に渡って均一に発泡されていかない場合があった。このため脚部の外周部近傍に発泡剤が十分に回り込まず、閉塞空間を十分にシールできない場合があった。
【特許文献1】特開2005−299824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、止水クリップの頭部の外周外側の全周に渡って、発泡剤がより均一に発泡されることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の止水クリップは、頭部の外周壁面の一部を構成し、非発泡材からなる非発泡部と、前記非発泡部に対して前記頭部の厚さ方向に重なる位置に配設されると共に、前記外周壁面の一部を構成し発泡されることでシールする発泡剤からなる第一発泡部と、その他の前記外周壁面を構成し前記発泡剤からなる第二発泡部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の止水クリップでは、頭部の外周壁面の一部を非発泡部が構成している。この非発泡部に対して、頭部の厚さ方向に重なる位置に配設されると共に、外周壁面の一部を構成した発泡剤からなる第一発泡部を有している。更に、その他の外周壁面(非発泡部及び第一発泡部が構成してない外周壁面)を、発泡剤からなる第二発泡部が構成している。
【0008】
このように、第二発泡部に加え、第一発泡部の外周壁面が非発泡部に対して頭部の厚み方向に重なる位置に配設されているので、第一発泡部は非発泡部材の外周外側方向に発泡していく。つまり、頭部の外周外側の全周に対して、より均一に発泡剤が発泡していく。
【0009】
請求項2に記載の止水クリップは、請求項1に記載の構成において、前記第一発泡部の外周壁面と前記第二発泡部の外周壁面とは、周方向に途切れることなく連続していることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の止水クリップでは、第一発泡部の外周壁面と第二発泡部の外周壁面とが、周方向に途切れることなく連続しているので、頭部の外周外側の全周に対して、より均一に発泡剤が発泡していく。
【0011】
請求項3に記載のシール構造は、請求項1、又は請求項2に記載の止水クリップと、前記止水クリップの前記頭部を配置し外孔が形成された車両の外側構成部材と、前記外側構成部材の車両内側に設けられ、前記外孔に対向する位置に形成された車両の内側構成部材と、前記外側構成部材の前記外孔を覆うように該外側構成部材に取り付けられるヒンジと、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のシール構造では、外側構成部材の外孔に止水クリップの頭部が配置されると共に、ヒンジを外側構成部材に外孔を覆うように取り付ける。また、外側構成部材の車両内側に、外孔に対向する位置に内孔が形成された車両の内側構成部材を設けている。
【0013】
そして、止水クリップの頭部の第一発泡部(発泡剤)と第二発泡部(発泡剤)とが発泡されることで、外孔に発泡剤が充満して外孔がシールされる。なお、このとき、第一発泡部は、外周壁面が非発泡部に対して頭部の厚さ方向に重なる位置に配設されているので、非発泡部材の外周外側に発泡していく。つまり、頭部の外周外側の全周に対して、均一に発泡剤が発泡していく。更に、内側構成部材の内孔にも発泡剤が充満してシールされる。よって、シール性が良い。
【0014】
請求項4に記載のシール構造は、請求項3に記載の構造において、前記止水クリップの前記頭部の直径は、前記内孔の直径よりも大きいことを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載のシール構造では、止水クリップの頭部の直径は、内孔の直径よりも大きいので、第一発泡部と第二発泡部が発泡しても、非発泡部は内孔から脱落しない。
【0016】
請求項5に記載のシール構造は、請求項3、又は請求項4に記載の構造において、前記頭部から厚さ方向に突出して前記内孔に挿入されると共に、該内孔に係止する係止部を有していることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載のシール構造では、係止部が内孔に挿入されると共に、内孔に係止する。よって、止水クリップを内孔に容易に固定できる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の止水クリップによれば、発泡剤が頭部の外周外側の全周に渡ってより均一に発泡される。
【0019】
請求項2に記載の止水クリップによれば、頭部の外周外側の全周に対して、より均一に発泡剤が発泡される。
【0020】
請求項3に記載のシール構造によれば、良好なシール性を得ることができる。
【0021】
請求項4に記載のシール構造によれが、第一発泡部と第二発泡部が発泡しても、非発泡部は内孔から脱落しない。
【0022】
請求項5に記載のシール構造によれば、止水クリップを内孔に容易に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の止水クリップ及びシール構造が適用されて構成された実施形態に係るヒンジ取付構造10を、車両左方から側面視した側面図である。また、図2は、図1のA−A断面の断面図である。なお、各図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るヒンジ取付構造10は、ヒンジ12(ドアヒンジ)を備えている。ヒンジ12は、回動部としてのドア側取付部14と、支持部としての車体側取付部16と、を有しており、ドア側取付部14は車体側取付部16に上下方向に平行な回動軸(図示略)を中心に回動可能に支持されている。
【0025】
ドア側取付部14には、車両の回動体としてのドア18(サイドドア)の車両前側端面が、ドア18に取り付けられたウェルドナット(図示省略)及びボルト20の締結により取り付けられており、ドア18は、車両の側部において、閉じられている。また、ドア18がドア側取付部14と一体に車体側取付部16に対して回動されることで、ドア18が開閉可能となっている。
【0026】
図2に示すように、車体の側部に配置される取付部としてのサイドパネル24は、車幅方向外側のアウタパネル23と車幅方向内側の板状のリインフォース部材25とが接合されて構成されている。アウタパネル23には、円形状の外孔41が貫通形成されている。板状のリインフォース部材25には、内孔としての円形状の内基準孔28が貫通形成されている。アウタパネル23の外孔41とリインフォース部材25の内基準孔28との円中心は略一致している。また、アウタパネル23の外孔41の方が、リインフォース部材25の内基準孔28よりも直径が大きい。よって、内基準孔28は外孔41の形成範囲内に配置されている。
【0027】
ヒンジ12の車体側取付部16は、サイドパネル24に、ボルト26とナット27とによる締結によって、取り付けられている。なお、外孔41全体が車体側取付部16によって覆われる。
【0028】
なお、図1、図2と示すように、ボルト26とナット27とによって締結するための締結孔50と締結孔51との間に、内基準孔28と外孔41とが配置されている。
【0029】
そして、図2と図3とに示すように、止水クリップ100の挿入部150が内基準孔28に挿入されていると共に、止水クリップ100の頭部110が外孔41に配置されている。
【0030】
つぎに、止水クリップ100について説明する。
【0031】
図3、図4、図5に示すように、止水クリップ100は、発泡しない樹脂製(例えば、ナイロン(登録商標)製)の台座部120を備えている。そして、図5に示すような台座部120に対して、発泡剤をインサート成形することで、図3と図4とに示す止水クリップ100となる。
【0032】
図3と図5に示すように、台座部120は、中央部分に円形の孔122が形成された円盤部124と、円盤部124の上面に形成され径方向外側方向を長手方向とすると四角形状の凸部126、127と、で構成されている。凸部126と凸部127とは、同一直線上に配置されていると共に、円盤部124の外周縁から外側に延出している。なお、円盤部124の直径は、リインフォース部材25の内基準孔28(図3参照)の直径よりも小さい。また、凸部126と凸部127との径方向外側の先端間の幅(外周外側方向の幅)は、リインフォース部材25の内基準孔28の直径よりも大きいが、アウタパネル23の外孔41の直径よりも小さい。なお、凸部126、127の個数や配置する位置は何ら限定されない。
【0033】
そして、前述したように、図5に示すような台座部120に対して、発泡剤をインサート成形することで、図3と図4とに示す止水クリップ100となる。
【0034】
図3と図4とに示すように、止水クリップ100は、内基準孔28に挿入される挿入部150と外孔41に配置される頭部110とで構成されている(図2も参照)。なお、前述のように台座部120以外は発泡剤によって形成されている。
【0035】
前述したように挿入部150は内基準孔28に挿入される。この挿入部150には、全体視断面V字状をした一対の弾性爪152、153が形成されており、挿入部150は側面視すると全体が矢印形状をしている。なお、弾性爪152と弾性爪153のV字の幅(弾性爪152と弾性爪153の先端間距離)は、内基準孔28の直径よりも大きい。なお、図3に示すように、挿入部150の根元部分は、台座部120の円盤部124が構成しているが、円盤部124以外の部分は発泡剤によって形成されている。
【0036】
止水クリップ100の頭部110は、台座部120の凸部126、127を有している。なお、凸部126、127以外の部分は発泡剤によって形成されている。
【0037】
図3に示すように、凸部126、127の径方向外側の外周壁面126A,127Aが、頭部110の外周壁面111(図4も参照)の一部を構成している。また、凸部126、127に対して軸方向(頭部110の板厚方向(厚さ方向))に重なる位置に、発泡剤からなる第一発泡部132、133が形成されている。
【0038】
第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aは、凸部126、127の外周壁面126A、127Aと同一面となっている。換言すると、第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aは、凸部126、127の外周壁面126A、127Aよりも外周外側方向に、はみ出ていない。また、第一発泡部132、133及び凸部126、127以外の頭部110は、発泡剤からなる第二発泡部134が形成されている。なお、図4に示すように、第一発泡部132、133と第二発泡部134とは、一体となって形成されている。
【0039】
つまり、図3と図4とに示すように、頭部110の外周壁面111は、凸部126、127の外周壁面126A,127Aと、第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aと、第二発泡部134の外周壁面134Aと、で構成されている。また、第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aと第二発泡部134の外周壁面134Aとが、外周方向に途切れることなく連続している。
【0040】
つぎに、止水クリップ100の取り付けについて説明する。
【0041】
サイドパネル24とヒンジ12の車体側取付部16とをボルト締結する前に、止水クリップ100の挿入部150を車幅方向外側から内基準孔28に挿入する。なお、止水クリップ100の弾性爪152と弾性爪153のV字の幅(弾性爪152と弾性爪153との先端間距離)は、内基準孔28の直径よりも大きいが、弾性爪152、153のV字の幅が狭くなるように弾性変形することで、止水クリップ100の挿入部150が、内基準孔28に挿入される。そして、挿入後、弾性爪152、153が広がることで(元のV字の幅に戻ることで)、内基準孔28の車幅方向内側面の孔縁部に係止される。また、台座部120の円盤部124は、内基準孔28に挿入されるが、頭部110は、内基準孔28よりも大きいので、内基準孔28から止水クリップ100が抜け出ることは無い。また、頭部110は外孔41よりも小さい。
【0042】
そして、止水クリップ100を内基準孔28に取り付けたのち、サイドパネル24と車体側取付部16とをボルト26とナット27とで締結することで、外孔41に止水クリップ100の頭部110が配置される。なお、止水クリップ100の頭部110の厚みは、外孔41に収まる厚みとなっていることが望ましいが、ボルト締結に影響を及ぼさなければ、外孔41よりも厚みが多少厚い頭部110でもよい。
【0043】
なお、外孔41を覆うように車体側取付部16が取り付けられる。
【0044】
第一発泡部132、133と第二発泡部134、すなわち発泡剤は、独泡性を有しており、車両の加熱工程としての塗装乾燥工程において、加熱手段(発泡手段)としての塗装乾燥炉(図示省略)によって加熱されて、発泡し膨張されることで、外孔41に充満し、外孔41をシールすると共に、内基準孔28も封止してシールする。
【0045】
なお、台座部120の凸部126と凸部127との径方向外側の先端間の幅は、リインフォース部材25の内基準孔28の直径よりも大きいので、発泡剤(第一発泡部132、133と第二発泡部134)が発泡後、台座部120が内基準孔28から抜け出ることはない。
【0046】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
サイドパネル24(リインフォース部材25の内基準孔28)に止水クリップ100を取り付けた後に、ヒンジ12の車体側取付部16を、サイドパネル24に外孔41を覆うように、ボルト26とナット27とによって締結して取り付ける。その後、車両の塗装乾燥工程において塗装乾燥炉によって止水クリップ100の発泡剤からなる第一発泡部132、133と第二発泡部134が加熱されて発泡され、外孔41に発泡剤が充満し外孔41をシールすると共に、内基準孔28にも発泡剤が充満しシールされる。
【0048】
なお、発泡前の止水クリップ100の頭部110は、内基準孔28よりも大きく、更に、弾性爪152,153が、内基準孔28の車幅方向内側面の孔縁部に係止されるので、内基準孔28から止水クリップ100が抜け出ることは無い。つまり、止水クリップ100は脱落することなく容易に取り付けられる。このため、次工程での止水クリップ100の脱落を防ぐことができる。よって、作業性を向上させることができ、コストを低減することができる。
【0049】
また、台座部120の凸部126、127の径方向外側の先端間の幅は、内基準孔28よりも大きいので、発泡後も台座部120は脱落しない。
【0050】
また、外孔41(が構成する空間部)は内基準孔28を含んだ閉空間となっており、外孔41は内基準孔28以外、明確な開口は存在しない。よって、発泡剤が発泡された際に、発泡した発泡剤が内基準孔28以外から、例えば、車体側取付部16の周縁からはみ出して垂れ落ちることが防止されている。この結果、見栄えが悪くなること、及び、外孔41と内基準孔28のシールが不完全になることが防止される。
【0051】
さて、頭部110の第一発泡部132、133は、外周壁面132A,133Aが凸部126、127に対して頭部110の厚み方向に重なる位置に配設されているので、凸部126、127の外周外側方向に発泡していく。更に、第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aと第二発泡部134の外周壁面134Aとが、外周方向に途切れることなく連続している(環状をしている)。したがって、発泡剤(第一発泡部132、133と第二発泡部134)が発泡する際、頭部110の外周外側の全周囲方向に広がる。つまり、頭部110の外周外側の全周囲に対して、均一に発泡剤が発泡していく。
【0052】
更に、内基準孔28には、止水クリップ100の台座部120の円盤部124が配置されているので、内基準孔28の開口面積が狭くなっている。よって、外孔41から内基準孔28に向けて発泡した発泡剤が流出することが抑制され、確実に外孔41に充満する。また、発泡剤で形成された挿入部150、弾性爪152、153が発泡することによって内基準孔28がより確実シールされる。
【0053】
このように発泡剤(第一発泡部132、133と第二発泡部134)が発泡するので、外孔41の隅々まで発泡した発泡剤を行き渡せることができ、発泡した発泡剤が外孔41の全周においてシールする。よって、外孔41への水の浸入が防止されるので、サイドパネル24内(車体内)に水が浸入することがより確実に防止される。
【0054】
さて、例えば、図14に示すように、第一発泡部132、133(図3、図4参照)を持たない構成の止水クリップ900の場合(本発明を適用していない場合)、台座部920の凸部926、927の外周外側方向には、発泡した発泡剤が十分に回り込まない。つまり、発泡剤が外周外側の全周囲方向に均一に広がらない。
【0055】
また、例えば、図15に示すように、凸部826、827の外周壁面よりも、外周外側方向に外周壁面830Aが構成される発泡部830を設けることによって、発泡剤が外周外側の全周囲方向に均一に広がると共に、外孔41のシール性を向上させることができる。
【0056】
しかしながら、図15のような構成の止水クリップ800は、頭部810の大きさが、凸部826、827の外周壁面よりも、大きくなってしまう。つまり、本実施形態の図3等に示す止水クリップ100の頭部110よりも、図15に示す止水クリップ800の頭部810の方が、外周外側方向に大型化する。
【0057】
さて、アウタパネル23とリインフォース部材25との接合は、製造上の位置ズレが発生することが避けられない。つまり、内基準孔28と外孔41とに位置ズレ(円中心が一致せずにズレること)が発生することが避けられない。この場合、内基準孔28に対する外孔41のズレの最大許容範囲をaとし、頭部110の外径をDとすると、止水クリップ100の位置は内基準穴28の位置によって決まるので、止水クリップ100の頭部110が外穴41の内に収まるためには、外孔41の孔径は、「D+2×a」以上とする必要がある。つまり、図15に示す止水クリップ800を用いると、頭部810が外周外側方向に大型化しているので、その分、外孔41も大きくする必要がある。
【0058】
しかし、本実施形態のように、図1に示す締結孔50、51の間に外孔41を設けた場合、孔明け工程の制約(締結孔50・外孔41・締結孔51の各孔ピッチの制約)から、外孔41の孔径に制約が生じる場合がある。つまり、外孔41を大きくできない場合がある。また、この回避案として、締結孔50と締結孔51との間隔を広げる手段も考えられるが、このような手段はヒンジ12のサイズ拡大を招くことになる。
【0059】
そして、本実施形態では、凸部126、127の外周壁面126A,127Aよりも、径方向外側に、頭部110の第一発泡部132、133の外周壁面132A,133Aが張り出していないので、止水クリップ100の頭部110の直径(D)を小さくできる。すなわち、外孔41を小さくできる。よって、本実施形態のように、図1に示す締結孔50、51の間に外孔41を設け、外孔41の孔径に制約が生じる場合であっても、本実施形態の止水クリップ100は対応が容易である。
【0060】
なお、止水クリップ100の構成は、上記の形態に限定されない。よって、つぎに、他の構成の例を、変形例として説明する。なお、下記説明において、上下方向とは図面上の上下をさす。
【0061】
まず、第一変形例の止水クリップについて説明する。
【0062】
図6と図7とに示すように、第一変形例の止水クリップ200は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、挿入部202も発泡しない樹脂等によって形成されている。挿入部202の形状は、上記で説明した止水クリップ100の挿入部150(図3、図4参照)と同様である。
【0063】
つぎに、第二変形例の止水クリップについて説明する。
【0064】
図8に示すように、第二変形例の止水クリップ250は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、凸部226、227の下面部分が径方向外側に向かうに従って、上方に傾斜している。また、凸部226、227の形状に応じ、第一発泡部232、233の上面は、径方向外側に向かうに従って、上方に傾斜している。
【0065】
つぎに、第三変形例の止水クリップについて説明する。
【0066】
図9に示すように、第三変形例の止水クリップ300は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、凸部326、327の上に第一発泡部333、334が配置されている。
【0067】
つぎに、第四変形例の止水クリップについて説明する。
【0068】
図10に示すように、第四変形例の止水クリップ350は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、凸部356、357の上に第一発泡部362、363が配置されている。更に、凸部356、357の上面部分が径方向外側に向かうに従って、下方に傾斜している。また、凸部356、357の形状に応じ、第一発泡部363、364の下面が、径方向外側に向かうに従って、下方に傾斜している。
【0069】
つぎに、第五変形例の止水クリップについて説明する。
【0070】
図11(A)と(B)に示すように、第五変形例の止水クリップ400は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、凸部426、427の外周壁426A,427Aに穴部430(図10(B)を参照)が形成され、この穴部430に第一発泡部432、433が埋め込まれている。なお、図11(C)に示すように、凸部426、427の外周壁426A,427Aに、周方向を長手方向とする溝状の溝部432を形成し、この溝部432に第一発泡部432、433が埋め込まれていても良い。
【0071】
つぎに、第六変形例の止水クリップについて説明する。
【0072】
図12に示すように、第六変形例の止水クリップ450は、止水クリップ100(図3、図4参照)と異なり、凸部456、457の上下に第一発泡部462、463、464、465が配置されている。
【0073】
なお、上記、止水クリップ100、及び変形例の止水クリップ200、250、300、350、400、450は、いずれも凸部の外周壁面と第一発泡部の外周壁面とは、同一面であったがこれに限定されない。
【0074】
例えば、図13に示すように、止水クリップ600の凸部126、127の外周壁面126A,127Aよりも径方向内側(外周内側方向)に、第一発泡部632、633の外周壁面632A,633Aが位置する構成であっても良い。
【0075】
また、止水クリップの頭部の形状は、円盤状に限定されない。楕円、四角などの板状等、どのような形状であっても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、サイドドアのヒンジ取付構造に適用したが、これに限定されない。サイドドア以外のヒンジ取付構造にも本発明を適用できる。更に、ヒンジ取付構造以外にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係るヒンジ取付構造を示す車両左方から見た側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るヒンジ取付構造を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【図3】止水クリップの縦断面図である。
【図4】止水クリップの斜視図である。
【図5】第一発泡部と第二発泡部を形成する前の止水クリップの台座部の斜視図である。
【図6】第一変形例の止水クリップの縦断面図である。
【図7】第一変形例の止水クリップの斜視図である。
【図8】第二変形例の止水クリップの縦断面図である。
【図9】第三変形例の止水クリップの縦断面図である。
【図10】第四変形例の止水クリップの縦断面図である。
【図11】(A)は第五変形例の止水クリップの縦断面図であり、(B)は凸部の拡大図あり、(C)は第五変形例の他の例の凸部の拡大図である。
【図12】第六変形例の止水クリップの縦断面図である。
【図13】他の例の止水クリップの縦断面図である。
【図14】本発明を適用していない止水クリップの例の斜視図である。
【図15】止水クリップの頭部が大型化する例の斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
12 ヒンジ
23 リインフォース部材(内側構成部材)
25 アウタパネル(外側構成部材)
28 内基準孔(内孔)
41 外孔
50 締結孔
51 締結孔
100 止水クリップ
110 頭部
111 頭部の外周壁面
126 凸部(非発泡部)
127 凸部(非発泡部)
132 第一発泡部
133 第一発泡部
134 第二発泡部
152 弾性爪(係止部)
153 弾性爪(係止部)
200 止水クリップ
226 凸部(非発泡部)
227 凸部(非発泡部)
232 第一発泡部
233 第一発泡部
250 止水クリップ
326 凸部(非発泡部)
327 凸部(非発泡部)
333 第一発泡部
334 第一発泡部
300 止水クリップ
350 止水クリップ
356 凸部(非発泡部)
357 凸部(非発泡部)
363 第一発泡部
364 第一発泡部
400 止水クリップ
426 凸部(非発泡部)
427 凸部(非発泡部)
432 第一発泡部
433 第一発泡部
450 止水クリップ
456 凸部(非発泡部)
457 凸部(非発泡部)
462 第一発泡部
463 第一発泡部
464 第一発泡部
465 第一発泡部
600 止水クリップ
632 第一発泡部
633 第一発泡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の外周壁面の一部を構成し、非発泡材からなる非発泡部と、
前記非発泡部に対して前記頭部の厚さ方向に重なる位置に配設されると共に、前記外周壁面の一部を構成し発泡されることでシールする発泡剤からなる第一発泡部と、
その他の前記外周壁面を構成し前記発泡剤からなる第二発泡部と、
を備えることを特徴とする止水クリップ。
【請求項2】
前記第一発泡部の外周壁面と前記第二発泡部の外周壁面とは、外周方向に途切れることなく連続していることを特徴とする請求項1に記載の止水クリップ。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載の止水クリップと、
前記止水クリップの前記頭部を配置し外孔が形成された車両の外側構成部材と、
前記外側構成部材の車両内側に設けられ、前記外孔に対向する位置に内孔が形成された車両の内側構成部材と、
前記外側構成部材の前記外孔を覆うように該外側構成部材に取り付けられるヒンジと、
を備えることを特徴とするシール構造。
【請求項4】
前記止水クリップの前記頭部の直径は、前記内孔の直径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のシール構造。
【請求項5】
前記止水クリップは、前記頭部から厚さ方向に突出して前記内孔に挿入されると共に、該内孔に係止する係止部を有していることを特徴とする請求項3、又は請求項4に記載のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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