説明

止水方法

【課題】複雑な形状を有する止水箇所にも対応することができ且つ優れた止水性を有する止水方法。
【解決手段】止水方法は、貫通孔を有する構造物と、この貫通孔に配設される配設部材Bとの対向面間に形成される環状の止水箇所を止水するための止水方法であって、上記配設部材Bの外周面に、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有する棒状の発泡ゴム材1を一本で或いは複数本組み合わせて環状に形成した状態で配設した後、上記配設部材Bを上記構造物の貫通孔内に配設し、上記配設部材Bの外周面に配設した上記発泡ゴム材1を上記貫通孔の内周面とこれに対向する配設部材Bの外周面とによって圧縮して上記発泡ゴム材1の接続部を圧着一体化してシール材Aとし上記止水箇所を止水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な形状を有する止水箇所にも対応することができ且つ優れた止水性を有する止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建築物、電機製品などに用いられる止水材として止水リングが用いられている。しかし、止水箇所の直径が大きい場合や止水箇所の周辺形状が複雑な場合は、止水箇所に合致する止水リングを製造することが難しくなる。
【0003】
そこで、特許文献1には、所定間隔離して対向させた一対の環状体の相互間に、止水ゴムを介在している可撓セグメントにおいて、上記止水ゴムを、端面どうしを突き合わせた状態で環状に配列された複数のゴム片によって構成していると共に、各ゴム片の両端部に中実部を形成し、この中実部に、一対の環状体間に架け渡した軸体を挿通している可撓セグメントが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記可撓セグメントにおいて、ゴム片同士の突き合わせ部分に隙間が生じ、この隙間を通じて漏水が発生するという問題点を有している。又、ゴム片同士の突き合わせ部分を接着剤で接着一体化しても、依然としてゴム片同士の突き合わせ部分から漏水するといった問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−197790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複雑な形状を有する止水箇所にも対応することができ且つ優れた止水性を有する止水方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の止水方法は、構造物に配設部材を配設した状態において上記構造物と上記配設部材との対向面間に生じる止水箇所を止水するための止水方法であって、上記構造物又は上記配設部材に、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有する棒状の発泡ゴム材を一本で或いは複数本組み合わせて環状に形成した状態で配設した後、上記配設部材を上記構造物に配設し、上記構造物又は上記配設部材に配設した上記発泡ゴム材を上記構造物と上記配設部材との対向面によって圧縮して上記発泡ゴム材の接続部を圧着一体化してシール材とし上記止水箇所を止水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の止水方法は、上述の如き構成を有しているので、シール材を止水箇所の形状に合わせて予め定型に打ち抜いておく必要はなく、棒状の発泡ゴム材を一本で或いは複数本を組み合わせることによって、止水箇所の形状に応じた環状に形成することができ、様々な形状を有する止水箇所に好適に適用することができる。
【0009】
しかも、本発明の止水方法は、環状に形成された発泡ゴム材に加えられる圧縮力によって発泡ゴム材の端面同士が直接、一体化されているので、発泡ゴム材同士の接続部に隙間が生じることはなく、優れた止水性を発揮する。
【0010】
又、配設部材の外周面に発泡ゴム材を一本で或いは複数本組み合わせて環状に形成した状態で配設し、発泡ゴム材の端面が該発泡ゴム材の長さ方向に直交する面に対して傾斜する傾斜面に形成されている場合には、発泡ゴム材に加えられる圧縮力を発泡ゴム材同士の接続方向に直接加えることができ、発泡ゴム材同士の接続をより強固なものとし、シール材の止水性をより優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】発泡ゴム材を配設部材の外周面に配設した状態を示した断面図。
【図2】発泡ゴム材を配設部材の外周面に配設した他の状態を示した断面図。
【図3】発泡ゴム材を用いて止水箇所を止水した状態を示した断面図。
【図4】発泡ゴム材を用いて止水箇所を止水した状態を示した断面図。
【図5】発泡ゴム材の接続部を示した模式図。
【図6】発泡ゴム材の接続部の他の状態を示した模式図。
【図7】実施例2で製造した発泡ゴム材を示した斜視図。
【図8】発泡ゴム材を用いて止水箇所を止水する要領を示した斜視図。
【図9】発泡ゴム材を用いて止水箇所を止水した状態を示した断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の止水方法を図面を参照しつつ説明する。本発明の止水方法に用いられる棒状の発泡ゴム材1は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有している。なお、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、ニトリルゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムと呼ばれている合成ゴムも包含する。
【0013】
発泡ゴム材1はアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有しており、止水箇所の表面に対して発泡ゴム材が化学的に反応する。特に、止水箇所の材料が鉄である場合は、上記化学的な反応が顕著である。従って、発泡ゴム材が止水箇所の表面に強固に密着するので、毛細管現象による水の進入も殆ど防止することができる。
【0014】
発泡ゴム材1中におけるアクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有量は30重量%以上が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。アクリロニトリル−ブタジエンゴムの含有量が少ないと、止水箇所を構成している部材表面との密着性が低下し、シール材の止水性が低下することがある。
【0015】
発泡ゴム材は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム以外のゴム系樹脂を含有していてもよい。ゴム系樹脂としては、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有するものであればよい。ゴム系樹脂としては、特に限定されず、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。スチレン−ブタジエンゴム(SBR)は、ブタジエンとスチレンの共重合ゴムを意味し、スチロールゴムと呼ばれているゴムも包含する。
【0016】
発泡ゴム材は、独立気泡発泡体でも連続気泡発泡体でもよく、独立気泡と連続気泡の両方を有する発泡体であってもよい。シール材に高い止水性が求められる場合は、独立気泡発泡体が好ましい。
【0017】
止水箇所の隙間を確実に閉塞して優れた止水性能を発揮するので、シール材Aを構成している発泡ゴム材の表面にスキン層が形成されていることが好ましい。この発泡ゴム材のスキン層を、止水箇所を構成している構造物の貫通孔の内周面又は配設部材の外周面の何れか一方或いは双方に密着させることによってシール材は優れた止水性を発揮する。なお、スキン層とは、その表面に気泡断面を有しない密度が0.9g/cm3以上の層をいう。
【0018】
発泡ゴム材のスキン層の表面粗さRaは100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましい。発泡ゴム材のスキン層の表面粗さRaは下記の要領で測定される。発泡ゴム材のスキン層の表面を非接触式のレーザー顕微鏡を用いて表面高さをデータとして取り込み、JIS B0601に準拠して表面粗さを計算すればよい。
【0019】
なお、発泡ゴム材のスキン層の表面粗さRaは、例えば、キーエンス社から市販されているVK形状解析装置、商品名が「VK−8500」のレーザー顕微鏡、及び、その解析ソフト(商品名「VK−PC」)を用いて下記手順で測定することができる。
【0020】
具体的には、発泡ゴム材から試験片を切り出し、この試験片を平滑な金属板上に配設、固定する。試験片のスキン層に焦点を合わせる。なお、測定範囲を一辺が2mmの正方形よりも大きな大きさとする。
【0021】
次に、レーザー光の上下限を設定した後、試験片のスキン層上にレーザー光を照射してスキン層の表面の高さをレーザーによってスキャンする。そして、画像データを解析ソフトに取り込み、JIS B0601に準拠してスキン層の表面粗さRaを解析すればよい。
【0022】
上記発泡ゴム材1は棒状に形成されている。発泡ゴム材1は、棒状であればよく、例えば、直方体などの四角柱状、五角柱状、六角柱状などの角柱状、円柱状(ストランド状)などが挙げられ、四角柱状が好ましい。
【0023】
発泡ゴム材1を製造する要領は、従来公知の方法が用いられ、例えば、(1)アクリロニトリル−ブタジエンゴム、架橋剤及び熱分解型発泡剤に、必要に応じて、その他のゴム系樹脂や充填剤などが含有されてなる発泡性組成物を必要に応じてバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機で混練した後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、この未架橋の発泡性シートを加熱して架橋しつつ或いは架橋後に発泡させて発泡ゴム材を製造し、汎用の手段を用いて発泡ゴム材を棒状に切断する方法、(2)アクリロニトリル−ブタジエンゴム及び熱分解型発泡剤に、必要に応じて、その他のゴム系樹脂及び充填剤などが含有されてなる発泡性組成物を必要に応じてバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機で混練した後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、この発泡性シートに電離性放射線を照射して発泡性シートを架橋した後、発泡性シートを加熱して発泡させて発泡ゴム材を製造し、汎用の手段を用いて発泡ゴム材を棒状に切断する方法などが挙げられる。
【0024】
上記架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物等が挙げられ、有機過酸化物が好ましい。電離性放射線としては、例えば、光、γ線、電子線などが挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメンなどが挙げられ、上記硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
【0025】
又、発泡性組成物中における架橋剤の含有量は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜7重量部がより好ましい。これは、発泡性組成物中における架橋剤の含有量が少ないと、発泡性組成物のゲル分率(架橋度)が発泡に適したものとならずに破泡してしまい、発泡ゴム材を得ることできないことがあるからである。発泡性組成物中における架橋剤の含有量が多いと、発泡性組成物のゲル分率(架橋度)が上がりすぎて、発泡性組成物が発泡しないことがあるからである。
【0026】
上記熱分解型発泡剤とは加熱により分解して発泡ガスを発生させるものをいい、このような熱分解型発泡剤としては、特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
【0027】
発泡性組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム100重量部に対して3〜25重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。これは、発泡性組成物中における熱分解型発泡剤の含有量が少ないと、発泡ゴム材の発泡倍率が上がらずに見掛け密度が高くなってしまい、発泡ゴム材の反発力が高くなることがあるからである。発泡性組成物中における熱分解型発泡剤の含有量が多いと、発泡ゴム材の見掛け密度が低くなり、圧縮永久歪みが大きくなり、発泡ゴム材の形状回復性が低下して、長期間に亘って止水性を維持することができないことがあるからである。
【0028】
又、電離性放射線の照射量は、適宜、調整すればよく、0.5〜10Mradが好ましく、0.7〜5.0Mradがより好ましい。
【0029】
更に、表面粗さRaが100μm以下のスキン層が形成されている発泡ゴム材1の製造方法としては、表面粗さRaが5μm以下である冷却面を有する冷却部材を用意し、この冷却部材の冷却面を発泡直後の発泡ゴム材の表面に押圧して急速に発泡ゴム材の表面を冷却することによって、表面粗さRaが100μm以下のスキン層を有する発泡ゴム材を得ることができる。なお、冷却部材の冷却面の表面粗さRaの測定方法は、上述したスキン層の表面粗さRaの測定方法と同様であるのでその説明を省略する。
【0030】
そして、冷却部材としては、特に限定されず、表面粗さRaが5μm以下である表面を冷却面とした金属板や、表面粗さRaが5μm以下である周面を冷却面とした冷却ロールなどが挙げられる。
【0031】
冷却部材の冷却面の温度は、低いと、発泡ゴム材の収縮が大きく且つ変動しやすいため、発泡ゴム材の厚み精度が低下することがあり、高いと、スキン層の表面粗さRaが大きくなることがあるので、0〜40℃が好ましく、10〜20℃がより好ましい。
【0032】
次に、棒状の発泡ゴム材1を配設部材Bの外周面に配設する。ここで、配設部材Bは、構造物Cの貫通孔C1内に配設され、構造物Cとしては、例えば、エンジン、マフラー、ランプを配設するための貫通孔を備えた自動車の車体、ガラスを配設するための貫通孔が形成されたドア材、配管のための貫通孔が形成された建築物、電気配線を引き出すための貫通孔が形成された電気機器の筐体などが挙げられる。
【0033】
構造物Cの貫通孔C1を構成している材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、ガラス、コンクリート、シリコンなどの無機物、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0034】
又、構造物Cの貫通孔C1内に配設される配設部材Bとしては、管体、複数本の配線を束ねた結束体などが挙げられる。配設部材Bを構成している材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、ガラス、コンクリート、シリコンなどの無機物、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0035】
本発明の止水方法では、図1に示したように、配設部材Bの外周面上に、一本の発泡ゴム材1を配設部材Bの外周面に沿って円弧状に湾曲させ、発泡ゴム材の長さ方向の両端面同士を突き合わせて環状に形成するか、或いは、図2に示したように、配設部材Bの外周面上に、該外周面に沿って、複数本の発泡ゴム材1、1・・・をそれらの長さ方向に順次、突き合わせ状態に接続させて環状に形成する。
【0036】
なお、図1、2では、発泡ゴム材1の接続部において隙間が生じていない場合を示したが、発泡ゴム材1を後述する要領で圧縮する前は、発泡ゴム材1の接続部間に隙間が生じていても、発泡ゴム材1を圧縮した状態において、発泡ゴム材1の端面同士が密着し、発泡ゴム材1の端面間に隙間が生じていなければよい。
【0037】
このように、発泡ゴム材1を一本或いは複数本組み合わせることによって、配設部材Bの外周面上に発泡ゴム材1を高い自由度でもって環状に配設することができる。従って、配設部材Bの形状にかかわらず、発泡ゴム材1を配設部材Bの外周面に環状に容易に配設することができる。
【0038】
次に、図3及び図4に示したように、外周面上に発泡ゴム材1が環状に配設された状態の配設部材Bを構造物Cの貫通孔C1内に配設する。配設部材Bを構造物Cの貫通孔C1内に配設するにあたっては、配設部材Bの外周面に配設した発泡ゴム材1が、構造物Cの貫通孔C1の内周面と、これに対向する配設部材Bの外周面との間に形成された止水箇所に位置するように調整する。
【0039】
止水箇所に配設された発泡ゴム材1は、その径方向の厚みが止水箇所の開口幅よりも厚く形成されており、構造物Cの貫通孔C1の内周面と、これに対向する配設部材Bの外周面とによって圧縮された状態となっている。
【0040】
発泡ゴム材1がその厚み方向(径方向)に圧縮されることによって、発泡ゴム材1の端面同士の接続部に、発泡ゴム材1の端面同士を密着させる方向に力が加わる。
【0041】
更に、発泡ゴム材1はアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有していることから、発泡ゴム材1の端面同士を密着させる力によって発泡ゴム材1の端面同士が圧着一体化されてシール材Aが形成され、このシール材Aによって止水箇所が確実に閉塞、止水される。
【0042】
発泡ゴム材1をその厚み方向に圧縮する際の圧縮度合いとしては、発泡ゴム材1がその圧縮前の厚みの97%以下となるように圧縮することが好ましい。圧縮後の発泡ゴム材の厚みが、圧縮前の厚みの97%を超える厚みを有している場合には、発泡ゴム材1の端面同士の一体化が不充分となってシール材による止水性が低下することがあるからである。
【0043】
ここで、発泡ゴム材1における長さ方向の両端面は、発泡ゴム材1、1同士が隙間なく接続一体化することができればよく、図5に示したように、発泡ゴム材1の長さ方向に直交する平坦面11でもよいが、図6に示したように、発泡ゴム材1の長さ方向に直交する面に対して傾斜する傾斜面12であることが好ましい。なお、発泡ゴム材1の傾斜面12も平坦面であることが好ましい。
【0044】
傾斜面12が発泡ゴム材の長さ方向に直交する面に対してなす角度αは、15〜75°が好ましい。角度αが小さいと、発泡ゴム材における長さ方向の端部の強度が低下することがある。角度αが大きいと、発泡ゴム材の端面同士の接続部に圧縮力を充分に加えることができないことがあり、発泡ゴム材の端面同士の圧着一体化が充分でないことがある。
【0045】
発泡ゴム材1の両端面を傾斜面12とすることによって、発泡ゴム材1にその厚み方向(シール材Aの径方向)に上述のように圧縮力を加えた際、発泡ゴム材1同士の接続部に発泡ゴム材1の端面同士が互いに密着する方向に上記圧縮力を直接加えることができ、発泡ゴム材1の接続部において、発泡ゴム材1の端面同士を更に強固に一体化することができ、シール材Aの止水性を向上させることができる。
【0046】
上記では、構造物の貫通孔に配設部材を配設し、構造物の貫通孔と配設部材との対向面間に形成された止水箇所を止水する要領を説明したが、これに限定されるものではなく、構造物に配設部材を配設した際、構造物と配設部材との対向面に形成された止水箇所を止水する要領を次に説明する。なお、発泡ゴム材の構成は上述と同様の構成であるのでその説明を省略する。
【0047】
図8、図9に示したように、構造物Cには貫通孔C1が形成されており、この貫通孔C1を塞ぐようにして、構造物Cの表面に配設部材Bが配設されている。構造物Cと配設部材Bとを単に接触させただけでは、構造物Cと配設部材Bとの対向面間には隙間が生じ、構造物Cの貫通孔C1内に水が浸入する虞れがある。なお、構造物Cとしては上述した構造体が挙げられ、配設部材Bとしては、例えば、車両のランプ部材、防水性を必要とする防犯や監視用の固定式又は車載用カメラ、ビデオのレンズカバー部材などが挙げられる。
【0048】
そこで、本発明の止水方法では、先ず、発泡ゴム材1を円弧状に湾曲させて発泡ゴム材1の両端面同士を突き合わせて環状にして、発泡ゴム材1を構造物1の表面に貫通孔C1を囲むように配設する。図8では、一本の発泡ゴム材1を環状に形成した場合を示したが、複数本の発泡ゴム材1を組み合わせることによって環状に形成してもよい。従って、構造物1の貫通孔C1の形状にかかわらず、発泡ゴム材1で構造物Cの貫通孔C1を容易に包囲することができる。
【0049】
なお、図8では、発泡ゴム材1の接続部において隙間が生じていない場合を示したが、発泡ゴム材1を圧縮する前は、発泡ゴム材1の接続部間に隙間が生じていても、発泡ゴム材1を圧縮した状態において、発泡ゴム材1の端面同士が密着し、発泡ゴム材1の端面間に隙間が生じていなければよい。
【0050】
しかる後、配設部材Bを構造物Cの表面に配設し、配設部材Bと構造物Cとの対向面によって発泡ゴム材1を圧縮した状態とする。発泡ゴム材1が圧縮されることによって、発泡ゴム材1の端面同士の接続部に、発泡ゴム材1の端面同士を密着させる方向に力が加わる。
【0051】
更に、発泡ゴム材1はアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有していることから、発泡ゴム材1の端面同士を密着させる力によって発泡ゴム材1の端面同士が圧着一体化されてシール材Aが形成され、このシール材Aによって止水箇所が確実に閉塞、止水される。なお、発泡ゴム材1における圧縮方向の圧縮度合いとしては、上述と同様の理由で、発泡ゴム材1がその圧縮前の厚みの97%以下となるように圧縮することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR、密度:960kg/m3)100重量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学社製 商品名「SO−L」)18重量部及びフェノール系酸化防止剤(アデカスタブ社製 商品名「アデカスタブ AO−60」)0.5重量部を含有する発泡性組成物を押出機に供給し溶融混練して押出機から押出して厚みが1.7mmの発泡性シートを得た。
【0054】
得られた発泡性シートに加速電圧500keVにて電子線を1.8Mrad照射することによって発泡性シートを架橋した。しかる後、発泡性シートを発泡炉内に供給し240℃に加熱して発泡性シートを発泡させてシート状の発泡ゴム材を製造した。
【0055】
発泡ゴム材をカッターを用いて幅1cm、長さ36.5cm、厚さ5mmの直方体形状に切断して棒状の発泡ゴム材1を得た。なお、発泡ゴム材1の長さ方向の端面は、長さ方向に対して直交する平坦面11に形成されていた。
【0056】
(実施例2)
実施例1で得られた直方体形状の発泡ゴム材の長さ方向の両端部のそれぞれを長さ方向に直交する面に対して45°の角度だけ傾斜し且つ互いに平行な面でもって切除して図7に示した形状を有する発泡ゴム材1を得た。発泡ゴム材1の長さ方向の両端面は、その長さ方向に直交する面に対して45°傾斜した傾斜面12、12に形成されていた。
【0057】
(比較例1)
天然ゴムからなり且つ実施例2と同一の形状を有する発泡ゴム材1を用意した。
【0058】
得られた発泡ゴム材を用いて下記の要領で止水箇所を止水して止水性を測定し、その結果を表1に示した。
【0059】
(止水性)
構造物として厚みが4mmのアルミニウム板を用意し、このアルミニウム板の中央部に直径が113.5mmの貫通孔を形成した。外径106mmのアルミニウム製のパイプを配設部材とし、実施例1、2及び比較例1で得られた発泡ゴム材をその長さ方向がパイプの周方向となるようにしてパイプの外周面に沿って配設し、発泡ゴム材をその両端面同士が対向した環状となるように配設した。
【0060】
しかる後、図3に示したように、パイプをアルミニウム板の貫通孔に挿通させると共に、パイプの外周面に配設した発泡ゴム材がアルミニウム板の貫通孔内に位置した状態とし、発泡ゴム材の接続部を圧着一体化してシール材とし、アルミニウム板の貫通孔とこれに対向するパイプの外周面との間に形成された環状の止水箇所をシール材で全面的に止水した。なお、アルミニウム板の貫通孔内に配設された状態において、発泡ゴム材の厚みは、アルミニウム板の貫通孔内に配設する前の厚みの75%であった。
【0061】
次に、上記止水箇所に対してJIS D0203 R1に規定されている試験方法と同様の散水量でアルミニウム板の一面側より散水試験を実施し、散水試験の開始から1時間、3時間、5時間、10時間及び24時間後に、アルミニウム板の他面側に水が浸入しているか否かを目視観察した。
【0062】
実施例1、2の発泡ゴム材を用いた場合には、24時間後も水の浸入はみられなかった。比較例1の発泡ゴム材を用いた場合には、3時間経過後に発泡ゴム材の両端面同士の接続部分から水の浸入が見られた。
【0063】
(比較例2)
比較例1で得られた発泡ゴム材の長さ方向の両端面に接着剤を塗布したこと以外は、上述と同様の要領で散水試験を行ったところ、5時間後に接着剤を塗布した箇所の付近より漏水が観察された。
【符号の説明】
【0064】
1 発泡ゴム材
A シール材
B 配設部材
C 構造物
C1 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に配設部材を配設した状態において上記構造物と上記配設部材との対向面間に生じる止水箇所を止水するための止水方法であって、上記構造物又は上記配設部材に、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを含有する棒状の発泡ゴム材を一本で或いは複数本組み合わせて環状に形成した状態で配設した後、上記配設部材を上記構造物に配設し、上記構造物又は上記配設部材に配設した上記発泡ゴム材を上記構造物と上記配設部材との対向面によって圧縮して上記発泡ゴム材の接続部を圧着一体化してシール材とし上記止水箇所を止水することを特徴とする止水方法。
【請求項2】
構造物は貫通孔を有しており、止水箇所においてシール材が上記構造物の貫通孔を包囲した状態となるように、上記構造物又は上記配設部材に発泡ゴム材を配設することを特徴とする請求項1に記載の止水方法。
【請求項3】
構造物は貫通孔を有し、この貫通孔に配設部材が配設されて、上記構造物の貫通孔と上記配設部材との対向面間に形成される環状の止水箇所を止水するための止水方法であって、上記配設部材の外周面に、棒状の発泡ゴム材を環状に形成した状態で配設した後、上記配設部材を上記構造物の貫通孔内に配設し、上記配設部材の外周面に配設した上記発泡ゴム材を上記貫通孔の内周面とこれに対向する配設部材の外周面とによって圧縮して上記発泡ゴム材の接続部を圧着一体化してシール材とし上記止水箇所を止水することを特徴とする請求項1に記載の止水方法。
【請求項4】
一本の発泡ゴム材を環状に湾曲させて上記発泡ゴム材の両端同士を突き合わせることによって環状に形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の止水方法。
【請求項5】
複数本の発泡ゴム材をその長さ方向に接続することによって環状に形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の止水方法。
【請求項6】
発泡ゴム材の端面はその長さ方向に直交する面に対して傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−286091(P2010−286091A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142319(P2009−142319)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】