説明

正に帯電したポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ナノ粒子及びその製造方法

本発明の技術は、体組織内で長期間にわたって生物学的に有効な物質を放出することのできる正に帯電したポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)ナノ粒子を含む組成物並びにその製造方法及び予防及び治療を必要とする患者における予防及び治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、体組織内で長期にわたって生物学的に有効な物質を放出することのできる正に帯電したポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド) ナノ粒子を含む医薬組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド) (PLGA)は、一般的な生物分解性の生体適合性のコポリマーであって、ヒト用長期放出性医薬品において安全に使用されてきた歴史がある(例えば、Alkermes for Genentechが製造し、商標ニュートロピンデポー(Nutropin Depot、登録商標)で販売した組換えソマトロピン、商標Zoladex(登録商標)でAstraZenecaが販売したゴセレリン、商標Lupron Depot(登録商標)でTAP Pharmaceuticalsにより販売されたロイプロリド、商標Decapeptyl(登録商標)SRでFerring AGにより販売されたトリプトレリン、及び商標Sandostatin LAR(登録商標) DepotでNovartisから販売されたオクトレオチドアセテート)。PLGAの分子量は、約5,000ダルトンから500,000ダルトンに及ぶ。PLGAからの薬物放出の機構は、ポリマーマトリクスを通しての拡散とポリマーの分解の両方に依存するようである。このコポリマーは、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒例えば酢酸エチル及びアセトンに可溶性である。水性環境でのポリマーの分解は、主として加水分解により起きる。分解生成物は、構成モノマーの乳酸及びグリコール酸であり、これらは、更に代謝されて二酸化炭素と水になる。PLGAの分解速度及び薬物放出プロフィルは、その分子量又はポリマー中のこれらの2種のモノマーのモル比を変えることによって制御することができる。また、前記薬物放出プロフィルは、増孔剤として作用する水溶性添加剤の組込みによっても改変することができる。
【0003】
病気及び他の病状(例えば、眼の異常を含むが、限定はされない)の予防及び治療の効果は、現在利用可能なナノ粒子の、薬物積載量、表面電荷、物理的安定性及び電気泳動度によって制限される。
【0004】
病気及び他の病状(例えば、眼の異常を含むが、限定はされない)の予防及び治療のための組成物及び方法に関する要求が当分野において残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術本発明の技術は、体組織内で長期にわたって生物学的に有効な物質を放出することのできる正に帯電したポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド) ナノ粒子を含む医薬組成物、並びに製造方法及び病気又は異常(例えば眼の病気又は眼の異常)を有する患者の予防処置方法及び治療方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明の技術は、以下の特徴を有するナノ粒子組成物を提供する:a)PLGA又はその誘導体を含むこと;b)少なくとも一種の四級アンモニウムカチオン性界面活性剤(QACS) を含むこと;c)正のゼータ電位により表される永久的な正の表面電荷を有すること;d)少なくとも約10〜900nmの粒径であること;及びe)少なくとも一種の生物学的な有効成分を含むこと。一具体例において、このナノ粒子組成物は、約+10〜+100mVの範囲のゼータ電位を有する。一実施形態において、このナノ粒子組成物は、眼への投与に適している。
【0007】
一態様において、本発明の技術は、患者における眼の病気及び異常を治療し又は予防する方法を提供し、その方法は、かかる治療又は予防を必要とする患者に、その患者における眼の病気又は異常を治療し又は予防するのに十分である量の本発明の技術のナノ粒子組成物を投与することを含む。一実施形態において、この眼の病気又は異常は、緑内障、眼の炎症状態例えば角膜炎、ブドウ膜炎、眼内炎、アレルギー及びドライアイ症候群眼の感染症、眼のアレルギー、眼の感染症(細菌、真菌及びウイルス)、癌性増殖、角膜からの新生血管成長、網膜浮腫、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜変性疾患(黄斑変性、網膜ジストロフィー)、及びグリア増殖と関連する網膜疾患よりなる群から選択される。
【0008】
一態様において、本発明の技術は、ナノ粒子組成物の製造方法であって、下記の工程を含む当該製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより油相を調製し;
(b)一種以上の非イオン性の高分子安定剤(ポリマー安定剤)、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより水相を調製し;
(c)音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下で機械的処理によりこれらの油相と水相を乳化させ;
(d)溶媒拡散−蒸発を起こし;
(e)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(f)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(g)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。一実施形態において、工程(a)の有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有する。他の実施形態において、工程(d)は、:乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満減圧すること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;乳濁液を約35〜45℃の温度に加熱すること;又はこれらの任意の組合せよりなる群から選択される方法により行なわれる。
【0009】
他の実施形態において、本発明の技術は、このナノ粒子組成物の製造方法であって、下記の工程を含む当該製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより内部水相(第一の乳濁液の分散相)を調製し;
(b)一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学的な有効成分、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより油相を調製し;
(c)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより外部水相を調製し;
(d)音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により内部水相を油相と乳化させて、第一の乳濁液を形成し;
(e)第一の乳濁液を外部水相と乳化させて、二重乳濁液(double emulsion)を形成し;
(f)溶媒拡散−蒸発を起こし;
(g)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(h)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(i)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子表面から除去する。この方法の一実施形態において、工程(d)は、乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;乳濁液を約35〜45℃の温度に加熱すること;又はこれらの任意の組合せよりなる群から選択される方法により行なわれる。この方法の一実施形態において、工程(b)の有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有する。
【0010】
一実施形態において、本発明の技術は、ナノ粒子組成物の製造方法であって、下記の工程を含む当該製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学な有効成分、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤をそれぞれの有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより少なくとも二種の一次油相を調製し;
(b)一種以上の非イオン性の高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより水相を調製し;
(c)音波処理により、圧搾空気により、又は高剪断力混合下での機械的処理により、少なくとも二種の一次油相を水相中で同時に又は連続的に乳化し;
(d)溶媒拡散−蒸発を、下記の方法の何れかにより起こし:
(d.1)乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;
(d.2)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(d.3)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;
(d.4)乳濁液を約35〜45℃の温度に加熱すること;
(d.5)d.1〜d.3の方法の何れかをd.4の方法と組み合わせ;
(e)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(f)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(g)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。この方法の一実施形態において、工程(a)の有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有する。
【0011】
一実施形態において、本発明の技術は、ナノ粒子組成物の製造方法であって、下記の工程を含む当該製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を各量の純水に溶解させることにより少なくとも二種の内部水相を調製し;
(b)一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学的な有効成分、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を、それぞれの有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより、少なくとも二種の一次油相を調製し;
(c)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより外部水相を調製し;
(d)音波処理により、圧搾空気により、又は高剪断混合下での機械的処理により、少なくとも二種の内部水相を、それぞれ、少なくとも二種の油相と乳化して、少なくとも二種の第一の乳濁液を確立し(調製し);
(e)少なくとも二種の第一の乳濁液を、同時に又は引き続いて、外部水相と乳化させて、二重乳濁液を形成し;
(f)下記の方法の何れかによって溶媒拡散−蒸発を起こし:
(f.1)この乳濁液を、過剰量の水溶液とブレンドすること;
(f.2)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(f.3)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを、大気圧に維持すること;
(f.4)乳濁液を、約35〜45℃の温度に加熱すること;
(f.5)f.1〜f.3の方法の何れかとf.4の方法の組合せ;
(g)ナノ粒子を凝固させて、活性薬剤を封入すること;
(h)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過によって分離すること;
及び
(i)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去すること。この方法の一実施形態において、工程(b)の有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、メタゾールアミド積載PLGAナノ粒子の放出プロフィルを示す図である。メタゾールアミドのメタゾールアミド積載PLGAナノ粒子からのイン・ビトロでの放出。データは、平均値±SDで表されている(n=4)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.本発明の技術のPLGAナノ粒子組成物
一態様において、本発明の技術は、薬物を積載(充填)した正に帯電したPLGAナノ粒子組成物を提供する。本発明の技術のPLGAナノ粒子組成物は、下記の特徴を含む:
a)PLGA又はその誘導体を含むこと;
b)少なくとも一種の四級アンモニウム界面活性剤(QACS)を含むこと;
c)永久的な正の表面電荷を有すること;
d)少なくとも約10〜900nmの粒径を有すること;及び
e)少なくとも一種の生物学的な有効成分を含むこと。
【0014】
一実施形態において、これらのPLGAナノ粒子は、球形である。
【0015】
また、他の実施形態において、本発明の技術の組成物は、他の薬剤、例えば、緩衝剤、浸透圧製薬剤、浸透又は吸収増進剤、キレート剤(chelant)、抗酸化剤、防腐剤、pH調節剤、粘度改変剤、潤滑剤、凍結保存剤、及び表面改質剤をも含むことができるが、これらに限られない。これらの薬剤は、ナノ粒子配合物に、それらの製造前若しくは製造中に含有させることもできるし又は製造後にナノ粒子懸濁液に加えることもできる。
【0016】
他の面において、本発明の技術は、製薬上許容しうる賦形剤が配合されたPLGAナノ粒子を提供する。
【0017】
本明細書で使用する用語「賦形剤」は、活性薬剤のキャリアーとして用いられる中性の又は帯電した物質を指す。賦形剤は、典型的には、生物学的に不活性であるか又はほぼ不活性である。
【0018】
本発明の技術の配合物の利点は、(1)高度に薬物積載され、高度に正に帯電し、粒径の制御されたPLGAナノ粒子を造るために、ナノ粒子の配合物における(後述する)様々なQACSを使用できること;(2)永久的に帯電されたナノ粒子を造るための、乳濁液の油相におけるQACSの組込み。ここで、ナノ粒子の帯電は、多くの洗浄工程又は生物学的に許容しうる範囲内でのpHの変化によって損なわれることは無い;(3)狭い粒径分布を有する微細なナノ粒子を製造するために、内部油相におけるQACSと組み合わせて、外部水相において非イオン性高分子安定剤(例えばポリビニルアルコール)を用いること;(4)乳化の際に有効成分が外部水相へ画分化することを減らすことによる、又は最小限にすることによる高い薬物積載;(5)ナノ粒子の増大した表面電荷と、それによる増大した物理的安定性及び増進された電気泳動度を含むが、これらに限られない。
【0019】
これらのPLGAナノ粒子は、他の製薬上許容しうる活性な又は不活性な成分とブレンドすることができ、従来の工程(例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥)によって乾燥してからパッケージ化することができ、そして将来の施用のために制御された貯蔵条件下で保存することができる。
【0020】
一実施形態において、種々の組成物を含み、それにより、種々の延長された放出プロフィルを有する複数のPLGAナノ粒子を、治療上適切な放出プロフィルを達成するためにブレンドすることができる。例えば、早い放出の薬物積載PLGAナノ粒子群は、遅い放出の薬物積載ナノ粒子群と混合することができ、それで、迅速な作用開始とその後の持続的治療作用を、ある一定治療期間にわたって達成することができる。
【0021】
A.本発明の技術の組成物において有用なPLGA及びその誘導体
ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)は、一般的な生物分解性且つ生体適合性コポリマーであって、ヒト用長期放出性医薬品において安全に使用されてきた歴史がある(例えば、Alkermes for Genentechが製造し、商標ニュートロピンデポー(Nutropin Depot(登録商標))で販売した組換えソマトロピン、商標Zoladex(登録商標)でAstraZenecaが販売したゴセレリン、商標Lupron Depot(登録商標)でTAP Pharmaceuticalsにより販売されたロイプロリド、商標Decapeptyl(登録商標)SRでFerring AGにより販売されたトリプトレリン、及び商標Sandostatin LAR (登録商標) DepotでNovartisから販売されたオクトレオチドアセテート)。PLGAの分子量は、約5,000ダルトンから500,000ダルトンに及ぶ。PLGAからの薬物放出の機構は、ポリマーマトリクスを通しての拡散とポリマーの分解の両方に依存するようである。このコポリマーは、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒例えば酢酸エチル及びアセトンに可溶性である。水性環境でのポリマーの分解は、主として加水分解により起きる。分解生成物は、構成モノマーの乳酸及びグリコール酸であり、これらは、更に代謝されて二酸化炭素と水になる。PLGAの分解速度及び薬物放出プロフィルは、その分子量又はポリマー中のこれらの2種のモノマーのモル比を変えることによって制御することができる。また、前記薬物放出プロフィルは、増孔剤として作用する水溶性添加剤の組込みによっても改変することができる。
【0022】
生物学的に活性な物質の放出の速度及び程度は、(1)ナノ粒子の組成例えば(限定はしないが)ポリマーの種類(分子量)及び濃度、薬物:ポリマー比、浸透圧製薬剤、溶解度増進剤及び増孔剤の種類及び濃度;(2)ナノ粒子の粒径分布;及び(3)生物学的放出環境の流体力学、化学組成及びpHによって影響を受ける。この放出は、放出の速度及び程度に関して、ポリマーの分子拡散及び分解により制御され、複数の区別可能な段階(フェーズ)で行うことができる。例えば、ナノ粒子は、一般に「バースト効果」と呼ばれる、生物学的に活性な内容物の初期の急速な放出を示すことができ、その後、一様のゆっくりした放出期間が続き、そして該放出はポリマーの分解及び崩壊による急速な放出期間を経て終了する。
【0023】
一般に、生物学的に活性な物質の溶解速度及び放出速度は、水溶性の不活性成分(例えば浸透圧性薬剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤(ナノ粒子コア内で増孔剤としても機能しうる))の存在下で増大させることができる。増孔剤成分の濃度は、乾燥組成物の重量の約0.1%〜約10%まで変化しうる。
【0024】
本発明は、PLGAコポリマー及びそれらの誘導体(例えばPEG化PLGAコポリマー、PLA(ポリ乳酸)ポリマー、及びPEG化PLA(ポリ乳酸)ジブロック及びトリブロックコポリマー)に関する。
【0025】
B.本発明の技術の組成物の帯電特性
本発明の技術のナノ粒子組成物は、該組成物の高い正の電荷(ゼータ電位>+45mV)を特徴とし、これは、更に、該組成物の次の属性に寄与しうる:(1)懸濁形態における物理的安定性;(2)局所適用(投与)における吸着型エンドサイトーシスを介した眼の表面組織(生理的pHで負に帯電している)の上皮細胞層による増大した取込み;及び(3)電気泳動適用における増進した電気泳動度。
【0026】
ナノ粒子の表面電荷は、ナノ粒子の組成によって影響を受け、主として、PLGAポリマーの種類(酸又はエステル末端基)及び濃度、カチオン性界面活性剤の種類及び濃度、緩衝剤の種類及び濃度、並びに表面改質剤の種類及び濃度の変化によって変化しうる。また、一般に、ナノ粒子の表面電荷は、周囲環境の化学的要素(pH及びイオン強度)によっても影響される。
【0027】
一般に、コロイド粒子の表面電荷は、ゼータ電位により表される。ゼータ電位を利用して、電気泳動度及び種々の水性環境での懸濁液における帯電したナノ粒子の物理的安定性を予測することができる。ナノ粒子の凝集及び継続的なサイズの増大を防止するためには、これらの粒子に反発力を与えることが有用である。コロイド系に反発力を与える手段の一つとして、静電気又は電荷安定化による手段がある。静電気又は電荷安定化は、単にナノ粒子の周囲のイオン濃度を変えることによってナノ粒子懸濁液を安定化させるという利点を有する。
【0028】
ナノ粒子の表面電荷を改変するための最も重要な機構としては、表面基のイオン化又は帯電したイオンの吸着による機構が挙げられる。本発明の技術の医薬組成物において、正の表面電荷は、ナノ粒子コア配合物中の四級アンモニウム界面活性剤を単独で又は組み合わせて取込みすることにより造られる。
【0029】
極性液体(例えば水)中でのコロイド粒子の相互作用は、粒子の表面における電位によって支配されないが、粒子の有効ポテンシャル及び関連イオンによって支配される。分散体の静電気的制御を利用するには、ナノ粒子の表面電荷ではなく、むしろナノ粒子のゼータ電位を測定しなければならない。帯電した粒子は、分散剤中の逆に帯電したイオンを誘引する。表面に近いイオンは、強く結合され;該イオンが離れれば離れるほど、一層拡散した領域を形成する。この領域内には、すべり面(slipping plane)として知られる概念的な境界があり、その内部では、粒子及びイオンは、単独の実体として作用する。このすべり面での電位は、ゼータ電位として知られている。このゼータ電位が、コロイド粒子間の相互作用の大きさ及びそれらの電気泳動度の非常に優れた指標であるということは長らく認められてきた。ゼータ電位の測定は、一般に、コロイド系の安定性を評価するために利用される。特定の系で測定されたゼータ電位は、表面の化学的性質に依存し、また、コロイドが周囲環境と相互作用する手段でもある。それ故、ゼータ電位は、常に、十分に限定された(即ち、既知のpH及びイオン強度の)環境で研究されなければならない。
【0030】
粒子表面に電荷が存在することにより、それらは、与えられた電場と相互作用するという重要な結果をもたらす。これらの効果は、集合的に界面動電効果として定義される。もしも与えられた電場の影響下で液体中に懸濁している粒子に運動が誘導される場合には、前記効果は、より具体的には電気泳動と呼ばれている。電解質内のいたる所に電場を与えると、その電解質中に懸濁している荷電粒子は、反対の電荷の電極に誘引される。これらの粒子に作用する粘性力は、この動きに逆らう傾向がある。これら2つの対抗する力が平衡に達したならば、これらの粒子は、一定の速度で移動する。この速度は、電場の強さ又は電位勾配、媒質の誘電率、媒質の粘度及びゼータ電位に依存する。単位電場中の粒子の速度は、その電気泳動度と呼ばれる。ゼータ電位は、下記のヘンリーの方程式による電気泳動度と関係する:
【数1】

(式中、Ueは、電気泳動度であり、εは、分散媒質の誘電率であり、ε0は、自由空間の誘電率であり、ζは、ゼータ電位であり、ηは、分散媒質の動的粘度であり、そしてf(κa)は、ヘンリーの関数である)。水性媒質中で、適度の電解質濃度において、f(κa)は、1.5であり、これは、スモルコフスキー近似と呼ばれる。それ故、スモルコフスキーモデル(即ち、1mMより多い塩を含む電解質中に分散した約200nmより大きい粒子)に適合する系については、電気泳動度からゼータ電位を簡単に計算できる。低い誘電率の媒質(例えば、非水性媒質)中の一層小さい粒子では、f(κa)は、1.0となり、同じく簡単に計算ができる。これは、ヒュッケル近似と呼ばれる。
【0031】
C.本発明の技術の組成物において有用なQACS
この本発明の技術のナノ粒子は、様々な親水性又は疎水性の活性成分を含む医薬組成物に、多くの医薬応用のために配合することができる。QACSは、中央の窒素原子に4つの有機基及びアニオン(X)が結合した一般式R4+-の窒素カチオンの塩であり、これは、表面活性を示す。QACSにおいては、一般に、R基の少なくとも一つは、長鎖の(6炭素原子より多い)アルキル又はアリール基である。代表的な四級アンモニウム界面活性剤には、アルキルアンモニウム、ベンザルコニウム及びピリジニウムファミリーのものが含まれるが、これらに限られない。より具体的には、これらのQACSは、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム及びアルキルイミダゾリウム塩から選択される。アルキルアンモニウム界面活性剤の代表的リストを下記の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明の技術の選択した実施形態において、QACSは、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキルメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキルエチルジメチルアンモニウムハロゲン化物、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物、及びアルキルイミダゾリウムハロゲン化物よりなる群から選択される。
【0034】
本発明の技術の他の具体例においては、QACSは、デシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ラウリルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、セチルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、セチルエチルジメチルアンモニウムハロゲン化物、オクタデシルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ジドデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物、ジテトラデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物、ジオクタデシルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリオクタデシルメチルアンモニウムハロゲン化物、又はこれら2種以上の混合物から選択される。
【0035】
D.本発明の技術の組成物において有用な生物学的な有効成分
生物学的な有効成分は、生きている生物体に導入された場合に生物学的効果を示す合成の又は天然の化合物である。かかる薬剤には、診断用又は治療用薬剤(急性の又は慢性的な異常の治療を意図した大型分子及び小型分子の両方を包含する)が含まれうる。
【0036】
本発明の技術の組成物の幾つかの実施形態において、治療用化合物には、眼科用薬物(例えば小型分子、及び生物製剤(例えばペプチド、オリゴペプチド、タンパク質及び抗体、並びにオリゴヌクレオチド)を包含するが、これらに限られない)が含まれる。典型的な分子は、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗緑内障薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗VEGF(血管内皮成長因子)剤、抗癌剤、充血除去剤、抗糖尿病剤、免疫調節剤、並びに中枢神経及び運動障害に対する薬物などの治療剤のクラスに属する。
【0037】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、1000mg/mLより大きい水溶性を有している(非常に溶解しやすい)。
【0038】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、100〜1000mg/mLの水溶性を有している(溶解しやすい)。
【0039】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、33〜100mg/mLの水溶性を有している(溶解可能)。
【0040】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、10〜33mg/mLの水溶性を有している(やや溶けにくい)。
【0041】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、1〜10mg/mLの水溶性を有している(溶けにくい)。
【0042】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、0.1〜1mg/mLの水溶性を有している(非常に溶けにくい)。
【0043】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、0.1mg/mL未満の水溶性を有している(実質的に不溶性)。
【0044】
本発明の技術の一実施形態において、生物学的な有効成分は、ナノ粒子中1〜90質量%、好ましくは、10〜70質量%、一層好ましくは、20〜50質量%含まれる。
【0045】
E.本発明の技術の組成物の粒径
一実施形態において、本発明の技術のPLGAナノ粒子は、約10〜900nmの直径を有している。
【0046】
一実施形態において、本発明の技術のPLGAナノ粒子は、約50〜700nmの直径を有している。
【0047】
一実施形態において、本発明の技術のPLGAナノ粒子は、約100〜500nmの直径を有している。
【0048】
一実施形態において、本発明の技術のPLGAナノ粒子は、約150〜300nmの直径を有している。
【0049】
F.本発明の技術の組成物において有用な他の薬剤
緩衝剤
本発明の一実施形態において、本発明の技術の組成物は、適宜、少なくとも一種の緩衝剤を含む。かかる緩衝剤は、配合物のpHを制御するために利用することができ、該緩衝剤がなければ、配合物の使用又は貯蔵中に、化学的又は電気化学的相互作用の結果としてpHが変化しうる。
【0050】
幾つかの実施形態においては、この(これらの)緩衝剤は、カチオン的挙動をする一種のアミノ酸又は複数種のアミノ酸の組合せを含む。また、他の実施形態において、カチオン性アミノ酸緩衝剤とアニオン性酸緩衝剤の混合物を用いることもできる。本発明の技術の組成物/配合物において有用なカチオン性アミノ酸は、例えば、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、及びチロシンを包含するが、これらに限られない。本発明の技術の組成物/配合物において有用なアニオン性酸は、例えば、酢酸、アジピン酸、アスパラギン酸、安息香酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、蟻酸、フマル酸、グルタミン酸、グルタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、リン酸及びコハク酸を包含するが、これらに限られない。
【0051】
選択した実施形態において、この緩衝剤は、アニオン的挙動をする一種のアミノ酸又は複数種のアミノ酸の組合せを含む。また、他の実施形態において、アニオン性アミノ酸緩衝剤とアニオン性酸緩衝剤及びカチオン性塩基又はカチオン性アミノ酸緩衝剤の混合物も用いることができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用なアニオン性アミノ酸は、例えば、システイン、ヒスチジン及びチロシンを包含するが、これらに限られない。本発明の技術の組成物/配合物において有用なアニオン性酸は、例えば、酢酸、アジピン酸、安息香酸、炭酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、フマル酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、リン酸、酒石酸、及びコハク酸を包含するが、これらに限られない。本発明の技術の組成物/配合物において有用なカチオン性塩基及びアミノ酸は、例えば、アルギニン、ヒスチジン、イミダゾール、リジン、トリエタノールアミン、及びトロメタミンを包含するが、これらに限られない。
【0052】
幾つかの具体例において、緩衝剤は、双極性イオンを含む。本発明の技術の組成物/配合物において有用な双極性イオンには、例えば、N−2(2−アセタミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−2−アセタミドイミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、2−[ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ]−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール(ビス−トリス)、3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−シクロヘキシルアミノ−1−エタンスルホン酸(CHES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸(MES)、4−(N−モルホリノ)−ブタンスルホン酸(MOBS)、2−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸(MOPS)、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、1,4−ピペラジン−ビス−(エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、及び2−アミノ−2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール(トリス)が含まれるが、これらに限られない。
【0053】
選択した実施形態において、緩衝剤は、アニオン的又はカチオン的に振舞う複数種のポリマーの組合せ又は一種のポリマーを包含する。ポリマー性緩衝剤は、水素イオン又はヒドロキシルイオンを消費することにより所与のpHでイオン化し、ナノ粒子組成物のpHを所望の範囲に維持する如何なるポリマーであってもよい。本発明の技術の組成物/配合物において有用なアニオン性ポリマーには、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリアルケニル エーテル又はジビニルグリコールと架橋したポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、スチレン/マレイン酸無水物 コポリマー、メチル ビニルエーテル/マレイン酸無水物 コポリマー、ポリ(ビニルアセテートフタレート)、セルロース アセテート フタレート、セルロース アセテート トリメリテート、ヒドロキシプロピル メチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテート スクシネート、エチルアクリレート/メタクリル酸 コポリマー、メチル メタクリレート/メタクリル酸 コポリマー、及び アルギン酸が含まれるが、これらに限られない。本発明の技術の組成物/配合物において有用なカチオン性ポリマーには、例えば、ポリビニルピリジン、メチルメタクリレート/ ブチル メタクリレート/ジメチルアミノエチル メタクリレート ターポリマー、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチル メタクリレート コポリマー、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチル メタクリレート ターポリマー、及び キトサンが含まれるが、これらに限られない。
【0054】
他の実施形態において、緩衝剤組成物は、アニオン的又はカチオン的に振舞う架橋された一種のポリマーまたは複数種のポリマーの組合せである。一実施形態において、ポリマー性緩衝剤は、イオン交換樹脂である。本発明の技術の組成物/配合物において有用なイオン交換樹脂には、例えば、メタクリル酸/ジビニルベンゼン コポリマー 及び スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーが含まれるが、これらに限られない。メタクリル酸/ジビニルベンゼン コポリマー は、弱酸(カルボキシル基)官能性を有して、水素又はカリウムの形態にて利用可能である。スチレン/ジビニルベンゼンポリマーは、強酸(スルホネート基)又は強塩基(三級アミン基)の官能性を有する。前者の樹脂は、水素、ナトリウム又はカルシウムの形態にて利用可能であり、後者の樹脂は、塩化物の形態にて利用可能である。
【0055】
一実施形態において、緩衝剤組成物は、双極性イオンとして振舞う架橋された一種のポリマー又は複数種のポリマーの組合せである。本発明の技術の組成物/配合物において有用な双極性イオン性ポリマーには、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)ヒドロゲル(一般に、ポリAMPSと呼ばれる)、ポリAMPS/ヒアルロン酸相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)ヒドロゲル、AMPSと2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の架橋したコポリマー、AMPSと2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の架橋したコポリマー、及びAMPSとアクリル酸の架橋したコポリマーが含まれるが、これらに限られない。
【0056】
他の実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物において有用な緩衝剤には、例えば、ホスフェート、シトレート、若しくはアセテート緩衝剤又はこれらの組合せが含まれるが、これらに限られない。
【0057】
浸透物質
幾つかの実施形態において、本発明の技術の配合物は、適宜、ヒト又は動物への投与につき許容しうる組成を与えるのに十分な少なくとも一種の浸透物質(又は、浸透圧調節剤)を含有する。典型的な浸透物質は、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、及び塩酸、マンニトール、ソルビトール、グルコース、スクロース、ラクツロース、トレハロース、及びグリセロールである。ポリオール、例えば、エリトリトール成分、キシリトール成分、イノシトール成分など、及びそれらの混合物は、有効な浸透圧調節剤/浸透物質であり、単独で又はグリセロール及び/若しくは他の適合性溶質剤と組み合わせて本発明の組成物に含有させることができる。他の非イオン性浸透圧調節剤には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)及びこれらの混合物が含まれる。
【0058】
透過増進剤
本発明の技術の組成物/配合物は、適宜、ナノ粒子の体組織透過又は吸収を増進するための一種以上の薬剤を包含する。例えば、上皮は、角膜を通過する薬物透過に対する主たるバリヤーである。上皮内への薬物分配を促進することにより、上皮を通過する薬物透過を強化することができ、該強化によって、眼に施用された薬物の全体的吸収を増進することが可能である。この透過増進剤は、一般に、細胞膜の硬さを減らすようにように作用し、それ故、細胞間の薬物分子の通過を認めやすくする。これらの透過増進剤は、好ましくは、それらの透過増進効果を、眼への施用の際に即座に発揮し、この効果は、約5〜10分間維持される。これらの透過増進剤は、薬理学的に不活性であって化学的に安定であることを求められ、角膜透過性に対する特異的活性及び可逆的効果の両方に関して高い効能を有することを求められ、そして非刺激性及び非感作性の両方を求められる。また、これらの透過増進剤及びそれらの任意の代謝産物は、眼の組織に対して、非毒性でなければならない。
【0059】
本発明の技術の組成物/配合物において有用な透過増進剤には、例えば、界面活性剤(デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸等を含む胆汁酸;コール酸ナトリウム及びグリココール酸ナトリウムなどを含む胆汁酸塩を含む);脂肪酸(例えばカプリン酸);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジンジグルコネート、パラベン(例えばメチルパラベン及びプロピルパラベン)、クロロブタノールなど);キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20、ツイーン(登録商標)20));ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えばポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(Brij35));及び他の化合物(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、1−ドデシルアザイル−シクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標))、ヘキサメチレンラウラミド、デシルメチルスルホキシド、デカメトニウムブロミド、サポニン及びフシジン酸ナトリウム)が含まれるが、これらに限られない。上記の透過増進剤の完全なリストは、Sasaki等:Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 16(1):85-146(1999)により与えられている。
【0060】
本発明の技術の組成物/配合物において有用な他の透過増進剤には、例えば、糖類界面活性剤(例えばドデシルマルトシド(DDM))及びモノアシルホスホグリセリド(例えばリゾホスファチジルコリン)が含まれるが、これらに限られない。本発明において透過増進剤として利用できる糖類界面活性剤及びモノアシルホスホグリセリドは、公知の化合物である。かかる化合物の、眼病薬の透過性を増進させるための利用は、米国特許第5,221,696号及び第5,369,095号に、それぞれ記載されている。
【0061】
キレート剤(Chelant)
他の実施形態において、本発明の技術の組成物は、クエン酸ナトリウム及びEDTA及びそのナトリウム塩よりなる群から選択される少なくとも一種のキレート化剤を含むことができる。本明細書で使用する用語キレート剤は、封入された薬物の分解を触媒することのできる金属イオンをキレート化する物を指す。
【0062】
抗酸化剤
一実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物は、少なくとも一種の抗酸化剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用な抗酸化剤には、例えば、アルファトコフェロール(ビタミンE);システイン;タウリン;クエン酸、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、EDTA及びそのナトリウム塩;亜硫酸ナトリウム並びにピロ亜硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限られない。本明細書で使用する用語抗酸化剤は、酸化経路によって分解されうる薬物の分解を防止又は低減させる物を指す。
【0063】
防腐剤
本発明の一実施形態において、組成物/配合物は、少なくとも一種の防腐剤を含むことができる。本明細書で使用する用語防腐剤は、周囲環境にさらした際に医薬組成物を意図せず汚染させる微生物の増殖を阻止し及び/又は該微生物を殺す添加剤を指す。この防腐剤は、疎水性又は非帯電性防腐剤、アニオン性防腐剤、及びカチオン性防腐剤を含む周知の様々な防腐剤から選択することができる。本明細書で使用する用語防腐増進剤は、防腐剤の防腐効力又は保蔵された配合物の防腐効力を増大させるが、典型的には、単独では医薬組成物の防腐に用いられない添加剤を指す。
【0064】
本発明の技術の組成物/配合物において有用なカチオン性防腐剤には、例えば、ポリミキシンBサルフェート、四級アンモニウム化合物、ポリ(四級アンモニウム)化合物、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、クロルヘキシジン、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限られない。
【0065】
本発明の技術の組成物/配合物において有用なアニオン性防腐剤には、例えば、ソルビン酸;1−オクタンスルホン酸(一ナトリウム塩);9−オクタデカン酸(スルホン化物);シプロフロキサシン;ドデシルジフェニルオキシド−二スルホン酸;ドデシルベンゼンスルホン酸のアンモニウム、カリウム又はナトリウム塩;脂肪酸のナトリウム塩又はトールオイル;ナフタレンスルホン酸、スルホン化オレイン酸のナトリウム塩;有機水銀例えばチメロサール(エチルメルクリチオサリチル酸ナトリウム);チメルホナートナトリウム(p−エチルメルクリチオフェニルスルホン酸ナトリウム)が含まれるが、これらに限られない。
【0066】
本発明の技術の組成物/配合物において有用な疎水性又は非イオン性防腐剤には、例えば、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン;3−メチル−4−クロロフェノール;8−ヒドロキシキノリン及びそれらの誘導体;ベンジルアルコール;フェネチルアルコール;ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン;ビスフェノール;クロロブタノール;クロロキシレノール;ジクロロフェン[2,2'−メチレン−ビス(4−クロロフェノール)];パラ−ブロモフェノール及びパラ−クロロフェノールのオルトアルキル誘導体;オキシキノリン;オルト−クロロフェノール及びオルト−ブロモフェノールのパラアルキル誘導体;ペンタクロロフェニルラウレート;フェノール誘導体(例えば2−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2−シシクロペンチル−4−クロロフェノール、4−t−アミルフェノール、4−t−ブチルフェノール、及び4−及び6−クロロ−2−ペンチルフェノール);フェノキシ脂肪酸ポリエステル;フェノキシエタノール;メチルパラベン、プロピルパラベン及びブチルパラベンが含まれるが、これらに限られない。
【0067】
pH調節剤
一実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物は、少なくとも一種のpH調節剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用なpH調節剤には、例えば、塩酸、クエン酸、リン酸、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムが含まれるが、これらに限られない。
【0068】
粘度改変剤
一実施形態において、本発明の組成物/配合物は、少なくとも一種の粘度改変剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用な粘度改変剤には、例えば、セルロース誘導体(例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(ビニルアルコール);ポリエチレンオキシド;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー);多糖類(例えばアルギネート);カラゲニン;グアーガム、カラヤガム、ゲランガム、アガロース、イナゴマメガム、トラガカントガム、キサンタンガム及びキトサン;ヒアルロン酸;レシチン;及びカルボマーポリマー(カルボポール(登録商標))が含まれるが、これらに限られない。
【0069】
潤滑剤
一実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物は、少なくとも一種の潤滑剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用な潤滑剤には、例えば、セルロース誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれるが、これらに限られない。
【0070】
凍結(低温)保存剤
一実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物は、少なくとも一種の凍結保存剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用な凍結保存剤には、例えば、糖類−二糖類−及び糖アルコールを含む炭水化物、グリセロール、ポリアルコキシエーテル、PEG−脂肪酸及び脂質、生物ベースの界面活性剤、及び他の界面活性剤が含まれるが、これらに限られない。
【0071】
ナノ粒子懸濁液で用いられる凍結防止剤又は凍結保護剤は、米国特許第5,302,401号に開示されている。この第5,302,401号特許において、凍結防止剤又は凍結保護剤は、凍結乾燥工程において、ナノ粒子の凝集を阻止する。適当な凍結防止剤又は凍結保護剤の例には、炭水化物(例えばスクロース、キシロース、グルコース、及び糖アルコール(例えばマンニトール及びソルビトール))、界面活性剤(例えばポリソルベート(ツイーン(商標)))、並びにグリセロール及びジメチルスルホキシドが含まれる。また、凍結防止剤又は凍結保護剤は、水溶性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉、及びポリアルコキシエーテル(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)並びにポロキサマー)をも包含しうる。生物由来の凍結防止剤又は凍結保護剤には、アルブミンが含まれる。更に別のクラスの凍結防止剤又は凍結保護剤には、PEG化脂質例えばソルトール(登録商標)HS15(ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート)が含まれる。
【0072】
表面改質剤
一実施形態において、本発明の技術の組成物/配合物は、少なくとも一種の表面改質剤を含むことができる。本発明の技術の組成物/配合物において有用な表面改質剤には、例えば、非イオン性界面活性剤及び生物学的な表面活性改質剤が含まれるが、これらに限られない。本発明の技術の組成物/配合物において有用な非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン由来の脂質(例えばmPEG−PSPC(パルミトイル−ステアロイル−ホスファチジルコリン)、mPEG−PSPE(パルミトイル−ステアロイル−ホスファチジルエタノールアミン))、ソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、多糖類、澱粉、澱粉誘導体、ヒドロキシエチル澱粉、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンが含まれるが、これらに限られない。
【0073】
II.本発明の技術のPLGAナノ粒子の製造方法
一態様において、本発明の技術は、薬物積載した、正に帯電した、そして、少なくとも一つの水相と少なくとも一つの油(非水性)相とを含んだPLGAナノ粒子を製造するための相分散法(phase dispersion method)を提供する。本発明の技術の、薬物積載し、正に帯電したPLGAナノ粒子製造の方法は、幾つかの点で、従来技術で公知の他の方法と異なっている。第一に、幾つかの実施形態において、粒子陽性電荷をナノ粒子に与えるために、少なくとも一種の四級アンモニウムカチオン性界面活性剤(QACS)が、油相中のPLGAポリマーと共に用いられる。第二に、幾つかの実施形態において、油相中のQACSと共に、少なくとも一種の高分子安定剤(例えばポリビニルアルコール又はメチルセルロース)が、水相中に存在する。
【0074】
幾つかの具体例において、本発明の技術の、薬物積載された、正に帯電したPLGAナノ粒子は、乳化−溶媒拡散−蒸発工程によって製造される。水中油(O/W)乳濁液、又は水中油中水(W1/O/W2)二重乳濁液、又は水中油中油(O1/O2/W)若しくは油中油中水(W/O1/O2)系を含む相分離と組み合わされた乳濁液、が、本発明の技術の、薬物積載された、正に帯電したPLGAナノ粒子の製造方法において有用である。
【0075】
本発明の技術の好適実施形態において、薬物積載された正に帯電したPLGAナノ粒子は、O/W乳化−溶媒拡散−蒸発によって製造される。油相(内部相又は分散相)は、一種以上の生物学的な有効成分、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の、一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより製造される。好適な有機溶媒は、標準沸点約35〜85℃を有する。水相(外部相又は連続相)は、一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより製造される。油相は、水相中で、音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により乳化される。一度乳濁液が確立されると、その乳濁液を、過剰量の水溶液(以後、「抑制媒質(quench medium)」と呼ぶ)とブレンドすることにより、溶媒拡散−蒸発が開始される。乳濁液中の油小滴から外側へ向かって溶媒が拡散することにより、ナノ粒子が凝固し、及び有効成分が封入される。制御された温度及び圧力条件下で抑制媒質を添加することによって、溶媒拡散の速度を改変することができ、それ故、ナノ粒子の形成速度を改変することができる。溶媒の除去及びナノ粒子の形成は、準高温(35〜45℃)及び準大気圧(0.6〜0.8バール)にすることにより、加速することができる。これらのナノ粒子は、液体媒質から、遠心分離又は濾過技術によって分離され、次いで、封入されなかった成分を前記ナノ粒子の表面から除去するために、純水で数回洗浄される。ナノ粒子の分離及び精製については、当業者に公知である従来の方法がある。
【0076】
本発明の技術の他の実施形態において、薬物積載された正に帯電したPLGAナノ粒子は、W1/O/W2乳化−溶媒拡散−蒸発によって製造される。内部水相(第一の乳濁液の分散相)は、一種以上の生物学的な有効成分、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより調製される。油相(第一の乳濁液の連続相)は、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学な有効成分、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより調製される。好適な有機溶媒は、標準沸点約35〜85℃を有する。外部水相(第二の乳濁液の連続相)は、一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより製造される。内部水相は、油相中で、音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により乳化される。いったん第一の乳濁液が確立されると、該第一の乳濁液は、外部水相中で乳化されて、二重乳濁液を形成する。いったん二重乳濁液が確立されると、該乳濁液を、過剰量の抑制媒質とブレンドすることによって、溶媒拡散−蒸発が開始される。乳濁液中の油小滴から外側へ向かって溶媒が拡散することにより、ナノ粒子が凝固し、及び有効成分がの封入される。制御された温度及び圧力条件下で抑制媒質を添加することによって、溶媒拡散の速度を改変することができ、それ故、ナノ粒子の形成速度を改変することができる。溶媒の除去及びナノ粒子の形成は、準高温(35〜45℃)及び準大気圧(0.6〜0.8バール)にすることにより、加速することができる。これらのナノ粒子は、液体媒質から、遠心分離又は濾過技術によって分離され、次いで、封入されなかった成分を前記ナノ粒子の表面から除去するために、純水で数回洗浄される。ナノ粒子の分離及び精製については、当業者に公知である従来の方法がある。
【0077】
精製されたナノ粒子は、他の製薬上許容しうる活性又は不活性成分とブレンドすることができ、従来の工程(例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥)によって乾燥させて、パッケージして、将来の施用時まで、制御された貯蔵条件下に保存することができる。
【0078】
従来の乳化−溶媒蒸発法において、QACSは、通常、乳濁液の外部水相に加えられるが、生物学的な有効成分は、有機相又は内部水相に加えられる。これらの方法における悩ましい点として、有効成分の封入効率の低さが挙げられる。封入については、有効成分の疎水性の程度に関係なく難題として残っている(原因としては、有効成分が、迅速に外部水相への分配されることによる)。外部水相においてQACSが存在することにより、ミセル構造の形成を介した親水性化合物及び疎水性化合物の溶解が促進される。本発明の技術では、従来の方法と異なり、油相へQACSを添加することにより、高い封入効率を有する正に帯電したナノ粒子の製造を可能にする。粒子凝固前の乳化中では、QACS分子の親水性の帯電した末端が外部水相と面し、一方でQACS分子の疎水性の尾は粒子コアに向かって伸びるようにQACS分子が油小滴の表層中で再配列すると考えられている。該配列により、QACSをナノ粒子内に永久的に捕捉することが可能となる。
【0079】
本発明の技術における好適な有機溶媒には、酢酸エチル、アセトン、塩化メチレン、及びポリエチレングリコール(MW 400)が含まれる。
【0080】
他の実施形態において、本発明の技術は、下記の工程を含むナノ粒子組成物の製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤をそれぞれ有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより少なくとも二種の一次油相を調製し;好適な有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有し、
(b)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより水相を調製し;
(c)音波処理により、圧搾空気により、又は高剪断力混合下での機械的処理により、少なくとも二種の一次油相を水相中で同時に又は連続的に乳化させ;
(d)下記の方法の何れかによって、溶媒拡散−蒸発を開始し;
(d.1)乳濁液を、過剰量の水溶液とブレンドすること;
(d.2)撹拌しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(d.3)撹拌しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;
(d.4)乳濁液を、準高温(即ち35〜45℃)に加熱する;
(d.5)方法d.1〜d.3の何れかを方法d.4と組み合わせる;
(e)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入する;
(f)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過によって分離する;そして
(g)純水で数回の洗浄することにより封入されなかった成分をナノ粒子の表面から除去する。
【0081】
他の実施形態において、本発明の技術は、下記の工程を含むナノ粒子組成物の製造方法を提供する:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を各量の純水に溶解させることにより少なくとも2種の内部水相 (第一の乳濁液の分散相) を調製する;
(b)一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学的な有効成分、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を、それぞれの有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより、少なくとも二種の一次油相(第一の乳濁液の連続相)を調製する;好適有機溶媒は、約35〜85℃の標準沸点を有する。
(c)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより外部水相(第二の乳濁液の連続相)を調製する;
(d)音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により、少なくとも二種の内部水相を、それぞれ、少なくとも二種の油相と乳化させて、少なくとも二種の第一の乳濁液を確立する;これらの少なくとも二種の乳濁液は、互いに、少なくとも2つの点(有効成分及びPLGAポリマーの組成及び濃度)で異なっている。
(e)少なくとも二種の第一の乳濁液を、同時に又は連続的に、外部水相と乳化させて、二重乳濁液を形成する;
(f)下記の方法の何れかによって、溶媒拡散−蒸発を開始する:
(f.1)乳濁液を、過剰量の水溶液とブレンドすること;
(f.2)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(f.3)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;
(f.4)乳濁液を、準高温(即ち35〜45℃)に加熱すること;
(f.5)方法f.1〜f.3の何れかを方法f.4と組み合わせること;
(g)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入する;
(h)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過によって分離する;そして
(i)純水で数回の洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。
【0082】
一実施形態において、少なくとも二種の一次油相又は乳濁液は、物理的に及び/又は化学的に異なり、種々の薬物及び/又はPLGAポリマーを用いて製造される。他の実施形態において、少なくとも二種の一次油相又は乳濁液は、一種の薬物及び一種のポリマーを用いて製造することができる。この場合には、2つ以上の一次油相又は乳濁液間の物理的及び/又は化学的特性の差異を決定するパラメーターには、薬物のポリマーに対する重量比、薬物又はポリマーの有機溶媒に対する重量比、有機溶媒間の重量比(二種以上の有機溶媒を用いる場合)、及び水性溶媒に対する有機溶媒の重量比(薬物が水溶性の場合、即ち、二重乳濁液を用いる場合)が含まれる。
【0083】
分散及び乳化に関して、一実施形態において、二種以上の一次油相又は乳濁液は、同時に又は連続して外部水相に加えられる。その後、溶媒拡散−蒸発工程を開始することにより、二種の油相又は乳濁液におけるナノ粒子の凝固が、同時に達成される。他の実施形態において、二種以上の一次油相又は乳濁液は、外部水相に連続して加えられる。これらの一次油相又は乳濁液の一種は、先ず外部水相に分散され、該外部水相は、それぞれのナノ粒子の完成又は部分的凝固へと導く物理的又は化学的条件(即ち、均質化の速度又は強度、温度、圧力、水相量、及び不活性成分の濃度)の変化を許容する。その後、他のもう一種の油相が水相中に漸次分散され、乳濁液の物理的又は化学的条件を変えることによって、それぞれのナノ粒子が形成される。
【0084】
III.本発明の技術のPLGAナノ粒子の使用方法
広範な眼の異常(例えば緑内障、眼の炎症状態(例えば角膜炎、ブドウ膜炎、眼内炎、アレルギー及びドライアイ症候群眼の感染症)、眼のアレルギー、眼の感染症(細菌、真菌及びウイルス)、癌性増殖、角膜からの新生血管成長、網膜浮腫、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜変性疾患(黄斑変性、網膜ジストロフィー)、及びグリア増殖と関連する網膜疾患)は、本発明の技術による、正に帯電したナノ粒子組成物を用いて、予防し又は治療することができる。
【実施例】
【0085】
下記の実施例は、本発明の特定の実施形態の非制限的説明であることを意図している。本明細書中で引用した文献は全て、本明細書中に援用する。
実施例1.デキサメタゾンを積載した正に帯電したPLGAナノ粒子の製造
2ロットのデキサメタゾンを積載した正に帯電したPLGA(ポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド))ナノ粒子を、油中水乳化−溶媒拡散−蒸発法を用いて製造した。一方のロット(#LBN0023−076−1)は、PLGA8515 DLG1.5CE(ロット#、LX00279−45、Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL)を用いて、他方のロット(#LBN0023−076−2)は、PLGA 7030(ロット#、578399、Polysciences, Warrington, PA)を用いて製造した。
【0086】
油相については、約200mg PLGA、約60mgデキサメタゾン及び約25mgジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド(TMAB)を、酢酸エチル(6mL)及びアセトン(4mL)の混合物中に溶解させることにより調製した。水相については、約200mgポリビニルアルコール(PVA)を20mLの水(WFI、注射用水)に溶解させることにより調製した。油相溶液及び水相溶液の標的組成物は、表2に与えられている。油相溶液及び水相溶液は、両者とも、乳化の前に、200nmシリンジフィルターを通して濾過された。前記油相を、前記水相中で、16k RPMで運転するローター/ステーターホモジェナイザーを用いた高剪断均質化によって乳化した。PVA溶液中で均質化を開始した直後に、注射器を用いて2分間にわたって有機相を滴下して加えた。その結果生成した乳濁液を、約10分間にわたって均質化した。PLGAナノ粒子の凝固及びそれによるデキサメタゾンのナノ粒子中への封入は、200mL WFIを含む容器にこのO/W乳濁液を攪拌しながら加えることによって開始した。溶媒を除去するために、ドラフトチャンバー(ヒュームフード)中で、室温(RT)で、4時間半にわたって攪拌を続けた。ナノ粒子の乳白色の懸濁液が得られた。その懸濁液を遠心分離管に移してから、15k RPM(RCF 27,200×g)で、15分間、4℃で遠心分離した。上清を除去した後、ボルテックスミキサーを用いてナノ粒子を再懸濁させることによりWFI(20mL)でペレットを洗った。この懸濁液を、再び遠心分離して、上清を除去した。ペレットを、WFI(20mL)で一回以上洗った。上清を除去した後の最終ペレットを、WFI(15mL)中で、ボルテックスミキサー処理により再構成して、4℃で保存した。
【0087】
【表2】

【0088】
粒径及びゼータ電位測定は、WFI中で再構成されたナノ粒子を用いて、ゼータサイザーナノZS90(Malvern Instruments, Westborough, MA)により行なわれた。
【0089】
約1mLの再構成懸濁液を、予め重量測定した1.5mLのエッペンドルフ(登録商標)チューブに移して、13k RPMで30分間室温で遠心分離した。上清を除去した後、ペレットを真空下で一晩室温で乾燥させた。乾燥ペレットを含む管の重量を測定し、乾燥ペレットの重量を得た。次いで、乾燥ペレットを、0.1mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。その結果生成した溶液を分注し、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。薬物積載量を、下記の式IIから計算した:
【数2】


封入効率を、下記の式IIIから計算した:
【数3】

【0090】
上記特性を決定した結果を、表3に示す。
【表3】

【0091】
実施例2.デキサメタゾン積載した正に帯電したPLGAナノ粒子の製造
2ロットの、デキサメタゾン積載した正に帯電したPLGAナノ粒子を、油中水乳化−溶媒拡散−蒸発法を用いて製造した。PLGA8515DLG 1.5CE(ロット#、LX00279−45、 Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL)を、両配合物において用いた。PVAが乳濁液安定剤として水相において用いられた実施例1の配合物と異なり、これらの配合物は、乳濁液安定剤として寄与するTMABを水相に溶解して製造された。一方のロット(# LBN0023−119−1)は、0.13%(w/v)TMABを用いて、他方のロット(# LBN0023−119−2)は、0.25%(w/v)TMABを用いて製造された。これらの配合物では、PVAは用いられなかった。
【0092】
油相については、約200mgPLGA及び約60mgデキサメタゾンを、酢酸エチル(6mL)とアセトン(4mL)の混合物に溶解させることにより調製した。水相については、TMABを20mLの水(WFI、注射用水)中に溶解させることにより調製した。油相溶液及び水相溶液の標的組成物を、表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
油相溶液及び水相溶液は、両方とも、乳化の前に、200nmシリンジフィルターを通して濾過された。前記油相を、前記水相中で、16k RPMで運転するローター/ステーターホモジェナイザーを用いた高剪断均質化によって乳化した。TMAB溶液中で均質化を開始した直後に、注射器を用いて2分間にわたって有機相を滴下して加えた。その結果生成した乳濁液を、約10分間にわたって均質化した。PLGAナノ粒子の凝固及びそれによるデキサメタゾンのナノ粒子中への封入は、200mL WFIを含む容器にこのO/W乳濁液を攪拌しながら加えることによって開始した。溶媒を除去するために、ドラフトチャンバー(ヒュームフード)中で、室温(RT)で、4時間半にわたって攪拌を続けた。ナノ粒子の乳白色の懸濁液が得られた。その懸濁液を更に処理して、粒子を、実施例1で説明したのと同じ方法により特性決定した。その特性決定の結果を、表5に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
本実施例のナノ粒子の薬物積載量は、実施例1の配合物LBN0023−076−1により達成されるものより少なかったことは明らかである。カチオン性界面活性剤TMABが水相で乳濁液安定剤/表面改質剤として用いられた場合には、薬物積載量は減少した。界面活性剤を水相中で使用することにより、デキサメタゾンの水相への分配が促進され、ナノ粒子の薬物積載を減少させる
【0097】
実施例3.メタゾールアミド積載した正に帯電したPLGAナノ粒子の製造
3ロットの、メタゾールアミド積載した正に帯電したPLGAナノ粒子を、油中水乳化−溶媒拡散−蒸発法を用いて製造した。3ロットすべては、PLGA8515DLG 1.5CEを用いて製造した。
【0098】
油相を調製するために、約800mgのPLGAを、20mLの酢酸エチルに溶解させた。約5mLのPLGA溶液を、2mLの酢酸エチルと3mLのPEG−400(ポリエチレングリコール、MW400)で希釈した。この溶液を、更に1時間攪拌して、ポリマーを完全に溶解させた。約6mgのTMABと約200mgのメタゾールアミドを上記の溶液に加えて、一晩攪拌することにより溶解させた。水相は、WFI(10mL)中のPVAの1%(w/v)溶液で構成された。油相溶液及び水相溶液の標的組成物を、表6に示す。油相溶液と水相溶液は、両方とも、乳化の前に、200nmシリンジフィルターを通して濾過された。前記油相の約5mLを、前記水相中で、16k RPMで運転するローター/ステーターホモジェナイザーを用いた高剪断均質化によって乳化した。PVA溶液中で均質化を開始した直後に、注射器を用いて30秒間にわたって有機相を滴下して加えた。その結果生成した乳濁液を、約5分間にわたって均質化した。PLGAナノ粒子の凝固及びそれによるメタゾールアミドのナノ粒子中への封入は、1200RPMでの、大気圧下での、室温での継続的に攪拌を行うことによって達成された。溶媒を除去するために、約4時間にわたってドラフトチャンバー(ヒュームフード)中で攪拌を続けた。ナノ粒子の乳白色の懸濁液が得られた。その懸濁液を遠心分離管に移して、6k RPMで、15分間、4℃で遠心分離した。上清を除去した後に、ボルテックスミキサーを用いてナノ粒子を再懸濁させることによりWFI(6mL)でペレットを洗った。その懸濁液を、再び遠心分離して、上清を除去した。ボルテックスミキサー処理により、ペレットをWFI(6mL)中で、再構成して、4℃で保存した。
【0099】
【表6】

【0100】
粒径及びゼータ電位の測定は、WFI中に再構成したナノ粒子を用いて、ゼータサイザーナノZS90(Malvern Instruments, Westborough, MA)により行なわれた。
【0101】
約1mLの再構成懸濁液を、予め重量測定した1.5mLエッペンドルフ(登録商標)チューブに移して、13.2k RPM(RCF 16.1k×g)で25分間室温で遠心分離した。上清を除去した後、ペレットを真空下で一晩室温で乾燥させた。乾燥ペレットを含む管の重量を測定し、乾燥ペレットの重量を得た。次いで、乾燥ペレットを、0.2mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。その結果生成した溶液を分注し、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。
【0102】
薬物積載量及び封入効率を式II及びIIIからそれぞれ計算した。
【0103】
上記特性を決定した結果を、表7に示す。
【表7】

【0104】
実施例4:メタゾールアミド積載した正に帯電したPLGAナノ粒子からのメタゾールアミドの、リン酸干渉液 (pH7.4) 中での、イン・ビトロでの放出
メタゾールアミド積載した正に帯電したPLGAナノ粒子(ロット#LBN0032−001、実施例2に記載)からのメタゾールアミドのイン・ビトロでの放出を、1−mL Float−A−Lyzer(登録商標)透析バッグ(3.5〜5kD MWカットオフ(Rancho Dominguez, CA))を用いて評価した。ナノ粒子を、透析バッグ内の1mLのリン酸緩衝液(pH7.4、オスモル濃度293mOsm/kg)中に分散させた。ドナーチャンバーとして寄与するこのバッグを、レセプターチャンバーとして寄与する50−mL Falcon(商標)チューブ内に設置し、該チューブ内を約20mLの同じリン酸緩衝液で満たした。放出試験を四例行なった。すべての放出試験管を、150RPMで振動運動する37℃の振盪インキュベーター中に置いた。予め決めた時点で、全レセプター溶液を取り出して、新鮮な溶液と置き換えた。集めたレセプター溶液を分注して、メタゾールアミド濃度についてHPLCにより分析した。図1は、メタゾールアミド積載したPLGAナノ粒子の放出プロフィルを示している。
【0105】
実施例5:本発明の技術の組成物を用いる有効成分のイン・ビボ投与
本実施例は、本発明のナノ粒子組成物を用いる患者の治療に関する。具体的には、治療の方法は、丸い形状の眼球デバイスを用いることによる、本発明の技術のナノ粒子組成物の陽極経強膜的(anodal transscleral)イオン導入法に関係する。前記眼球デバイスは、所定量のナノ粒子懸濁液を含有することのできる貯蔵器を備えている。いったん、前記デバイスにナノ粒子懸濁液を積載し (典型的濃度は、0.1〜10mg/mL)、該デバイスを患者の麻酔した眼の上に設置する。前記眼球デバイスは、角膜と接触していたとしても、接触面が最小になるようにデザインされている。眼球デバイスは、低電圧発生器と電気的に導通しており、該発生器は、更に、患者の体表面の異なる点に設置された戻り(受動)電極に接続されている。クーロン制御されたレジメン下での低い電流(典型的には約+1mA〜約10mA)を一定期間(典型的には約1分間〜約10分間)加えらると、これらのナノ粒子は電気的に移動する。これらのナノ粒子は、電気的反発作用を経ることによって眼内組織に送達することができる。送達経路を考慮すると、結膜、強膜及び虹彩/毛様体などの眼の組織については、薬物積載されたナノ粒子をより多く最初に受けとることとなり、一方で、脈絡膜及び網膜についてはより少ない量が送達される。送達が行われると、これらのナノ粒子は、眼組織内にとどまり、そして、該ナノ粒子のデザインに従って、該ナノ粒子の活性な内容物を持続的に放出する。
【0106】
均等物
本発明の技術に係る特定の実施形態に関する前述の詳細な説明からすれば、生物学的に活性のある物質を放出することのできる独自の正に帯電したポリ(d,l−ラクチド−コ−グリコリド)ナノ粒子並びにそれらの製造方法及び利用が記載されてきたということは明白である。本明細書では、特定の実施形態について詳細に開示しているが、これは、単に説明のための例であり、後述の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。特に、本発明の技術に対する様々な置き換え、変更及び改変が、請求項に規定した技術的思想及び技術範囲から離れることなくなされうることを本発明者は企図している。例えば、QACS又は投与経路の選択は、本明細書に記載した実施形態を知った当業者にしてみれば、設計的事項であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記をの特徴を有するナノ粒子組成物:
a)PLGA又はその誘導体を含むこと;
b)少なくとも一種の四級アンモニウムカチオン性界面活性剤(QACS)を含むこと;
c)永久的な正の表面電荷(正のゼータ電位により表される)を有すること;
d)少なくとも約10〜900nmの粒径を有すること;及び
e)少なくとも一種の生物学的な有効成分を有すること。
【請求項2】
ゼータ電位が、約+10mV〜約+100mVの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
眼への投与に適した、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
患者における眼の病気及び異常を治療し又は予防する方法であって、その方法は、かかる治療又は予防が望まれる患者に、その患者における眼の病気又は異常を治療し又は予防するのに十分である量の請求項1に記載の組成物を投与することを含む当該方法。
【請求項5】
眼の病気又は異常が、緑内障、眼の炎症状態例えば角膜炎、ブドウ膜炎、眼内炎、アレルギー及びドライアイ症候群眼の感染症、眼のアレルギー、眼の感染症(細菌、真菌及びウイルス)、癌性増殖、角膜からの新生血管成長、網膜浮腫、黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜変性疾患(黄斑変性、網膜ジストロフィー)、及びグリア増殖と関連する網膜疾患よりなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
下記の工程を含む、請求項1に記載のナノ粒子組成物を製造する方法:
(a)一種以上の生物学的な有効成分、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより油相を調製し;
(b)一種以上の非イオン性の高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより水相を調製し;
(c)これらの油相と水相を、音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により乳化させ;
(d)溶媒拡散−蒸発を起こし;
(e)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(f)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(g)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。
【請求項7】
工程(a)の有機溶媒が、約35〜85℃の標準沸点を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)が、乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;乳濁液を約35〜45℃の温度に加熱すること;又はこれらの任意の組合せよりなる群から選択される方法により行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のナノ粒子組成物を製造する方法であって、下記の工程を含む当該方法:
(a)一種以上の生物学的に活性な薬剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより内部水相(第一の乳濁液の分散相)を調製し;
(b)一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学的な有効成分、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を一種の有機溶媒又は複数種の有機溶媒の組合せに溶解させることにより油相を調製し;
(c)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより外部水相を調製し;
(d)音波処理により、圧搾空気により又は高剪断力混合下での機械的処理により内部水相を油相と乳化させて、第一の乳濁液を形成し;
(e)第一の乳濁液を外部水相と乳化させて、二重乳濁液(double emulsion)を形成し;
(f)溶媒拡散−蒸発を起こし;
(g)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(h)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(i)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分をナノ粒子表面から除去する。
【請求項10】
工程(d)が、乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満減圧すること;混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;乳濁液を少し高い温度に加熱すること;又はこれらの任意の組合せよりなる群から選択される方法によって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)の有機溶媒が、約35〜85℃の標準沸点を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載のナノ粒子組成物を製造する方法であって、下記の工程を含む当該方法:
(a)一種以上の生物学的に活性な薬剤、一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤をそれぞれの有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより少なくとも二種の一次油相を調製し;
(b)一種以上の非イオン性の高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより水相を調製し;
(c)音波処理により、圧搾空気により、又は高剪断力混合下での機械的処理により、少なくとも二種の一次油相を水相中で同時に又は連続的に乳化し;
(d)溶媒拡散−蒸発を、下記の方法の何れかにより起こし:
(d.1)乳濁液を過剰量の水溶液とブレンドすること;
(d.2)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(d.3)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;
(d.4)乳濁液を約35〜45℃の温度に加熱すること;
(d.5)d.1〜d.3の方法の何れかをd.4の方法と組み合わせ;
(e)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(f)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過により分離し;
そして
(g)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。
【請求項13】
請求項12に記載のナノ粒子組成物を製造する方法であって、工程(a)の有機溶媒が、約35〜85℃の標準沸点を有する当該方法。
【請求項14】
請求項1に記載のナノ粒子組成物を製造する方法であって、下記の工程を含む当該方法:
(a)一種以上の生物学的に活性な薬剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、随意の一種以上の非イオン性高分子安定剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を各量の純水に溶解させることにより少なくとも二種の内部水相を調製し;
(b)一種以上のPLGAポリマー、一種以上のQACS、随意の一種以上の生物学的に活性な薬剤、及び随意の一種以上の非イオン性界面活性剤を、それぞれの有機溶媒又は有機溶媒混合物に溶解させることにより、少なくとも二種の一次油相を調製し;
(c)一種以上の非イオン性高分子安定剤、随意の一種以上のQACS、随意の一種以上の非イオン性界面活性剤、及び随意の一種以上のpH調節剤を純水に溶解させることにより外部水相を調製し;
(d)音波処理により、圧搾空気により又は高剪断混合下での機械的処理により、少なくとも二種の内部水相を、それぞれ、少なくとも二種の油相と乳化して、少なくとも二種の第一の乳濁液を確立し;
(e)少なくとも二種の第一の乳濁液を、同時に又は連続的に、外部水相と乳化させて、二重乳濁液を形成し;
(f)下記の方法の何れかによって溶媒拡散−蒸発を起こし:
(f.1)該乳濁液を、過剰量の水溶液とブレンドすること;
(f.2)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧未満に減圧すること;
(f.3)混合しながら、乳濁液のヘッドスペースを大気圧に維持すること;
(f.4)乳濁液を、約35〜45℃の温度に加熱すること;
(f.5)f.1〜f.3の方法の何れかとf.4の方法の組合せ;
(g)ナノ粒子を凝固させて、有効成分を封入し;
(h)ナノ粒子を、液体媒質から、遠心分離又は濾過によって分離し;
そして
(i)純水で数回洗浄することにより、封入されなかった成分を、ナノ粒子の表面から除去する。
【請求項15】
請求項14に記載のナノ粒子組成物を製造する方法であって、工程(b)の有機溶媒が、約35〜85℃の標準沸点を有する当該方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−506006(P2013−506006A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532260(P2012−532260)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050665
【国際公開番号】WO2011/041373
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512082727)アイゲート・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】EYEGATE PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】100 Beaver Street,Waltham,MA 02453 U.S.A.
【Fターム(参考)】