説明

正圧を用いる通気させた粉末の高密度化

通気させた粉末の嵩密度を増加する方法および装置を提供する。粉末をコンテナ内に入れる。次いで、コンテナを密閉し、コンテナ内のガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉体内に拡散する前に粉末を圧縮させるのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで上昇させる。1つの実施形態では、本発明による方法および装置は、例えばパッケージングの統一およびラテックスペイント塗料での分散の容易さを改善するために、通気され流動自在な二酸化チタン顔料の嵩密度を増加するのに利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気させた粉末(aerated powders)の嵩密度を増加する方法および装置に関する。例示のみを目的として、本発明は、商業的に極めて重要な、高度に通気され流動自在の無機金属酸化物粉末の嵩密度を増加するのに利用可能である。そのような無機金属酸化物粉末の例としては、二酸化チタン顔料、一次蓄電池および二次蓄電池に現在使用されている種類の複合金属酸化物(主にリチウム金属酸化物を含む)、およびそのような複合金属酸化物と電池のカソード組成物を構成する種々の他成分との混合物が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
微細で高度に通気させた粉末を処置することおよびそれらを含むことは、多くの点で問題となる。例えば、バッグまたは他のコンテナを高度に処理した二酸化チタン顔料(例えば、水系ラテックス塗料で使用するために設計されたもの)で充填することを、最初に顔料を脱気することなしに効率的な手法で実施することは難しい。顔料の嵩密度が比較的低いことから、一般にコンテナの容量の80から90%しか満たすことができない。状況によって、顔料に取り込まれた空気は、顔料の嵩密度を増加する方法では、重力によって沈降した顔料粒子の間で区画される「曲がりくねった経路」を通ってゆっくりと上昇することにより、コンテナに顔料を追加できるようになる。しかし、連続的な製造方法およびパッケージング方法では、これらの方法を非効率にするコンテナを充填するための追加の時間および操作が必要となる。さらに、連続的なバッキング方法において、各バッグに一貫して所定量の顔料を分け与えることは難しい。同様に、蓄電池室またはシェルを容量まで充填するか、または正確な量の電池活物質(例えばカソード材料)で充填することは、物質内に取り込まれた空気のために達成困難である。
【0003】
流動自在な粉末を脱気および圧縮するために、種々の方法が利用されている。例えば、粉末コンテナは、コンテナが充填されるときにコンテナを振るか、および/または振動させる装置の上部に置かれる。同様の技術は、取り込まれた空気を消失させるために、コンテナ内に振動する棒を置くことを含む。過去に利用された追加の方法は、コンテナとその中の粉末とを圧縮することで該粉末に取り込まれた空気を追い出すこと、ならびに真空システムに接続した多孔性パイプを充填工程の際に容器内に配置して空気の排気を行うことが含まれる。それら方法の全ては、深刻な欠点を有する。例えば、取り込まれた空気は多孔性パイプによって短時間にわたり取り除かれるが、最終的に多孔性パイプにおける気孔は微細粒径を有する多くの粉末によって閉鎖されるようになる。
【0004】
ここ数年にわたって商業的に使用されている1つの技術は、真空高密度化である。真空高密度化方法では、脱気する粉末を真空源に接続されたコンテナ内に入れる。次いで、所望のレベルになるまで真空を引く。所望の真空度に達すると、真空源を制御するバルブが閉じられ、コンテナに連通する第2のバルブが開かれ、そのコンテナ内の圧力が急速に大気圧まで戻り平衡化する。この方法は粉末を圧縮する。
【0005】
残念なことに、真空高密度化は、以前利用された粉末の脱気方法のような欠点を有する。例えば、真空システムは精巧なフィルタシステムを必要とする。また、一般的に真空システムを適所に設置することは幾分高価である。あるいは、多くの粉末製造プラントは、適所に真空システムを持っていない。さらに真空システムは、およそ15psig(1kg/sq.cm、ゲージ)の気圧に制限されている。
【発明の開示】
【0006】
真空高密度化方法では、真空チャンバー内の圧力が減少するにつれて、粉末は緻密になり少量になる。しかし、脱気した物質を最終的に十分な程度にまで圧縮させる真空を取り除くことによって得られる排気されたコンテナ内に空気が急速に流れ込む。真空が十分な速度で取り除かれる場合には、顔料上部での空気の浸入があまりにも早すぎるため、空気が粒子間を通って後方に拡散することができず、それによって顔料は少容量となる。
【0007】
そこで、密閉した容器でのガスの急速な加圧は、容器内の高度に通気させた粉末の密度を高めるようにもなることを見出した。したがって、本発明は、正圧に基づいて、通気させた粉末の嵩密度を増加する方法を提供する。以下に議論されるように、所望の粉末密度を達成するための正圧システムの使用は、多くの利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
1つの形態では、本発明は通気させた粉末の嵩密度を増加する方法を提供する。本発明の方法に従って粉末をコンテナに入れる。次いで、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる。以降に説明するように、ガス圧力を増加して達成すべき大気圧を超えるレベルと、有効な程度の粉末圧縮を達成するために必要とされるガス圧力の増加の速度とは、粉末の種類、コンテナの大きさ、および他のパラメーターによって変化する。
【0009】
例えば、1つの応用では、本発明による方法は、所定量の粉末をバッグまたは他の容器に入れるために使用することが可能である。粉末をコンテナに入れる。次いで、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、粉末の嵩密度を所定のレベルまで高めるのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる。次いで、所定量の圧縮させた粉末をコンテナから取り出し、容器に入れる。このことは、例えば、連続的なバッキング方法において、一貫して所定量の粉末を各バッグに入れることを可能にする。
【0010】
1つの実施形態では、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力は、コンテナ内にガスを導入することによって、大気圧を超えるレベルまで増加される。ガスは、ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮するのに十分な速度でコンテナ内に導入される。空気を含む種々のガスを使用することが可能である。但し、粉末と不利に反応しないか、または本発明による方法を実施するために使用される工程あるいは装置のいずれにも悪影響を与えないガスを選択することとする。導入ガスは、好ましくは、不活性ガス、空気、窒素ガス、酸素ガス、一酸化炭素ガス、または塩素ガスである。
【0011】
本発明による方法に従って高密度化が可能である微細で高度に通気された粉末の例として、無機顔料(例えば、二酸化チタン顔料)および電池活物質などの無機金属酸化物粉末が挙げられる。そのような電池活物質としては、一次蓄電池および二次蓄電池に使用される無機金属酸化物粉末および無機金属リン酸塩粉末(例えば、バナジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄またはそれらの組み合わせである金属のリチウム金属酸化物およびリチウム金属リン酸塩)が挙げられる。これら電池活物質は、それらの結晶構造中にリチウムが存在しても、または存在しなくてもよい。本発明は、特に、リチウムバナジウム酸化物の高密度化に適している。さらに、以降に説明するように、電池活物質とカソード組成物に使用される他の成分との混合物についても、その密度を本発明による方法に従って高めることが可能である。
【0012】
別の実施形態では、通気させた粉末の嵩密度を増加するための本発明による方法は、第1の端部と、その第1の端部に対向する第2の端部とを有するコンテナに、粉末を入れる工程を含む。次いで、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、コンテナにおける粉末を第2の端部に対して圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる。次に、コンテナの第2の端部を開放するとコンテナ内が減圧され、コンテナの第2の端部を通じて粉末がコンテナから取り除かれる。
【0013】
さらに本発明は、スラリーを調製するための方法を含む。そのような方法に従って、粉末を最初に粉砕するか、そうでなければ加工する。代表的に、粉砕または他の加工操作によって、粉末を通気させる。粉末が完全に沈降する前に、粉末を脱気することによって粉末の嵩密度を増加させる。粉末の嵩密度を増加させた後、粉末は液体媒体中で速やかに分散される(すなわち、粉末はそれらが完全に沈降しない場合であっても、液体媒体中に速やかに分散することが可能である)。粉末を脱気しなければ(時間とともに自然に、または本発明に従って)、適時の方法によって液体媒体中に大量の粉末を分散させることは達成困難である。好ましくは、上述の本発明による正圧脱気システムに従って粉末を脱気する。
【0014】
例えば、上述の方法は、新鮮な流動性エネルギーで粉砕した二酸化チタン顔料を水などの適当な液体に分散し、濃縮顔料スラリーを形成するのに使用することが可能である。増加された顔料の嵩密度は、スラリー中で顔料が「ウェット」になる速度を増進することによってスラリー分散方法を促進する。次いで、濃縮顔料スラリーは、比較的速く簡単な手法でペイント塗料などに混合することが可能である。
【0015】
別の形態において、本発明は、本発明による方法を実施するための装置を含む。1つの実施形態では、装置は、圧力下で粉末を含むためのコンテナを有し、そのコンテナは第1の端部と第1の端部に対向する第2の端部とを有する。粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮させるのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させるために、加圧手段はコンテナに関連されている。1つの実施形態では、加圧手段は、コンテナにガスを導入するための手段と、圧縮ガスの供給源とを含む。
【0016】
別の実施形態では、本発明による装置は、i)入口および出口をそれぞれ区画する、第1の端部およびその第1の端部に対向する第2の端部を有するシリンダと、ii)「ハブおよびスポーク」(hub-and-spoke)型に配置されたシリンダ内部に位置する回転式の閉じ込め装置であって、それによりシリンダ内に隣接するスポークによって定まる粉末閉じ込め領域に上記入口を通して粉末が加えられるようになる、回転式の閉じ込め装置と、iii)コンテナにガスを導入するための手段および圧縮ガスの供給源を含む加圧手段とを含む。装置は、加圧手段からの加圧ガスの導入によって、粉末閉じ込め領域において粉末が高密度化されるように回転することが可能である。次いで、装置は、出口を通してシリンジから高密度化された粉末が取り除かれるようにさらに回転することが可能である。
【0017】
図面を参照することによって、本発明を好ましい実施態様によってさらに特定して例示する。
【0018】
本発明は、通気させた粉末の嵩密度を増加する方法を提供するものである。明細書および特許請求の範囲で使用される粉末とは、固形であり、膠質の寸法(例えば0.01ミクロン)に至る非常に小さな粒径からなる乾燥材料を意味する。明細書および特許請求の範囲で使用される「通気させた」粉末とは、粉末を形成する粒子の間に取り込まれた空気または他のガスを有する粉末を意味する。粉末の嵩密度とは、後述する実施例Iで記述され示された方法によって決定された時の粉末の嵩密度を意味する。
【0019】
ここで、図1および2を参照すると、本発明による方法の一般的なメカニズムが例示および記述されている。図1は、高密度化に先立ち、通気させた粉末12を含むコンテナ10を例示している。図2に示されるように、粉末12を含むコンテナ10の領域14(この場合、領域14はコンテナ10の内側全体である)におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮する大気圧を超えるレベルまで増加させる。いかなる手法においても本発明は制限されるものではなく、圧力前面または圧力波(点線16で表示)によって粒子を互いに押付け、粉末粒子間に取り込まれた空気を強制的に外に出す力が生み出されることを機械的な用語に期待するものであり、さもなければ粒子12の重力的な沈降によって時間をかけて追い出さなければならない。
【0020】
次いで、圧縮された粉末12は、より効率的に加工することが可能である。例えば、取扱いをより容易にすることに加えて、粉末はより効率的にパッケージ化することが可能である(例えば、パッケージングの大きさを標準化することが可能である)。また、圧縮された粉末12は、例えば、より効率的にシェルまたは他の容器(例えば、電池シェル)に入れることが可能である。大部分の電池用途では、電池活性物質がよりいっそう圧縮されればされるほど、電池の電荷密度はよりいっそう高くなる。
【0021】
本発明の方法に従って、最初に粉末をコンテナに入れる。次いで、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮させるのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる。ガス圧力を増加して達成すべき大気圧を超える特定のレベル、およびそれに対応する圧縮度を達成するのに必要となる増加速度は、高密度化される粉末の特性(粉末粒子間に取り込まれたガスの量)および本発明の方法を実施するために使用されるコンテナに依存して変化する。もちろん、適用されるガス圧力の量および圧力における増加速度についても、所望の圧縮度に依存する。好ましくおよび簡潔には、本発明による方法は、粉末が重力によってコンテナに注がれるかまたは流れ込むことが可能な大気圧から大気圧を超える圧力まで圧力を増加させることを含み、大気圧を超える圧力は、例えば、高密度化された粉末を清潔にコンテナからパッケージングに取り除かれることを支援するために順に使用可能である。
【0022】
例えば、後述の実施例Iに示されるように、新しく粉砕した、熱い(150から200℃)ラテックス塗料等級の二酸化チタン顔料(カー・マックギー ケミカル、LLCによって販売される「CR−813」塩化物方法のルチル顔料)の嵩密度を、内径15.3cmおよび高さ15.9cmを有する3リットルの円筒状鋼製容器中で24.8lbs/ft(0.40g/cm)から41.7lbs/ft(0.67g/cm)まで増加させるために、顔料を含むコンテナの領域(この場合コンテナの内部全体)におけるガス圧力は、約10〜15秒で、0psigから50psig(3.5kg/sq.cm)まで増加された。同様に、後述の実施例Vに示されるように、新しく乾燥され、真空で高密度化されたリチウムバナジウム酸化物電池活物質の嵩密度を、同じ3リットルの円筒状鋼製容器中で43.6lbs/ft(0.70g/cm)から50.5lbs/ft(0.81g/cm)まで増加させるために、顔料を含むコンテナの領域(この場合コンテナの内部全体)におけるガス圧力は、約15秒で、完全な真空状態(0.1psig未満)から90psig(6.3kg/sq.cm)まで増加された。
【0023】
一般に、所望の圧縮が得られた後に、コンテナを減圧し、圧縮された粉末をコンテナから取り出す。1つの実施形態では、粉末を高密度化するコンテナは、最終製品としてまたは少なくとも製品用の仮コンテナ(例えばパッケージング)としても役立つ。当然のこと、その場合には、圧縮された粉末がコンテナから取り除かれることはない。実際のところ、1以上の追加のサイクルによって、追加の粉末をコンテナに加え、本発明に従って圧縮することが可能である。
【0024】
1つの実施形態では、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力は、コンテナにガスを導入することによって、大気圧を超えるレベルまで増加される。例えば、先に例示したように、粉末の圧縮を達成するために、ガスは、コンテナ内の全体の圧力を増加させるのに十分な速度で、全体として所望の時間内に所望のレベルまで増加させるのに十分な速度でコンテナに導入しなければならない。次いで、コンテナは減圧され、圧縮された粉末はコンテナから取り除かれる。
【0025】
加圧ガスはいかなるガスであってもよいが、粉末と不利に反応しないか、あるいは本発明による方法のための工程および装置のいずれにも悪影響を与えるべきではない。考え得るところでは、粉末の準備(または処理)における反応工程と高密度化とを組み合わせる効果において、有利でかつ望ましい方法で粉末と反応性となるように加圧ガスを選択することが可能である。しかし、大部分の用途については、一般的に粉末と、および工程ならびに装置において、加圧ガスは非反応性であることが期待される。リチウム金属酸化物電池活物質、または類似の湿気あるいは酸素に敏感な物質を高密度化する際には、例えば、窒素などの非反応性で乾燥したガスが加圧ガスとして適切に使用される。しかし、通気させた二酸化チタン粉末の高密度化の場合には、加圧ガスとして空気が簡便かつ好ましく使用される。そうでなければ、都合の良いことに、ガスは、粉末を製造、処理または取り扱うための方法に関連して既に利用可能である(おそらく既に加圧された状態にある)ガスであってもよい。例えば、二酸化チタン顔料の製造では、一般に塩素ガスが使用され、それらが発生および/または再利用される。本発明の実施形態では、コンテナ中のガス圧力を増加させ、および粉末を圧縮するためにコンテナ内に導入されるガスとして、塩素ガスを使用している。
【0026】
種々の方法を利用して、コンテナを減圧し、および圧縮された粉末をコンテナから取り出すことが可能である。例えば、1つの実施形態では、粉末は、第1の端部と、その第1の端部に対向する第2の端部とを有するコンテナ内に置かれる。コンテナは、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、コンテナの第2の端部に対して粉体を圧縮させる大気圧を超えるレベルまで増加するように構成される。いったん粉末が圧縮されると、コンテナの第2の端部は開放され、それによりコンテナが減圧され、圧縮された粉末はコンテナの第2の端部を通ってコンテナから取り除かれる。
【0027】
通気させたいかなる粉末であっても、本発明に従って高密度化または圧縮化することが可能である。商業的に重要な通気させた粉末の例は、二酸化チタン顔料、および例えばバナジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄またはそれら金属の組み合わせをベースとした電池活物質として使用される複合金属酸化物ならびに金属リン酸塩である。特に興味深いものには、リチウムバナジウム酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物およびリチウムマンガン酸化物(これらの各々をベースとした多くの改質酸化物を含む)がある。通気させた粉末の高密度化に関して有益になるであろう用途例は、大量のバッキング操作、および限られた容積の蓄電池室内に電池活物質を充填するための操作を含む。
【0028】
本発明が特に適用可能となる物質の1種類は無機顔料である。例えば、部分的には最後の流体エネルギーによる粉砕工程でもよいが、高度に処理された二酸化チタン顔料(例えば水系ラテックス塗料で使用するために設計されたタイプ)の嵩密度は非常に低く、コンテナ容量の80〜90パーセントしか充填できないということは珍しいことではない。代表的に、高度に処理され、通気された二酸化チタン顔料の嵩密度は、約21.9lbs/ft(0.35g/cm)未満である。本発明に従って、そのような顔料の嵩密度を、約49.9lbs/ft(0.8g/cm)を超えるレベルまで効率的に増加させることが可能である。
【0029】
本発明による高密度化方法は、約21.9lbs/ft(0.35g/cm)未満の嵩密度を有する二酸化チタン顔料に関して特に有用である。好ましくは、本発明に従って、そのような二酸化チタン顔料の嵩密度は、35lbs/ft(0.56g/cm)を超えるレベルまで増加される。より好ましくは、二酸化チタン顔料の嵩密度は、本発明に従って、35lbs/ft(0.56g/cm)から50lbs/ft(0.80g/cm)、さらにより好ましくは40lbs/ft(0.64g/cm)から50lbs/ft(0.80g/cm)の範囲のレベルまで増加される。
【0030】
別の形態では、本発明は、通気させた粉末からスラリーを調製する方法を含む。液体媒体中に粉末を「ウェット・イン」するために必要とされる時間が増加するので、通気された粉末(および特に、高度に通気させた粉末)からスラリーを調製することは、時間を非常に消費する。通気させた粉末は、時間をかけて自然と重力的に沈降するが、このことは最後に粉末を加工する工程とスラリーを調製する工程との間に他の工程を追加する。本発明に従って粉末は最初に加工される。例えば、この方法は、代表的に粉末を空気にあてることによる、最後に粉末を粉砕する(例えば、流体エネルギー粉砕を実施する)工程を必要とする可能性がある。粉末が完全に沈降する前に、粉末の脱気によって粉末の嵩密度を増加させる。次いで、高密度化された粉末をスラリー中にウェット・イン(分散)させる。得られたスラリーは、次いで、ペイント塗料のようなさらに別の媒体に有効かつ効率的に加えることが可能である。
【0031】
好ましくは、粉末は本発明に従って脱気される。すなわち、大気圧条件下でコンテナに粉末を入れ、粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させ、圧縮された粉末をコンテナから取り除く。
【0032】
二酸化チタン顔料産業では、極めて多くの顔料がスラリーの形態で販売されている。これらスラリーは、代表的に、65質量%から76質量%の範囲の固体量で作製されている。そのような高い固体量を達成するために、種々の分散剤を添加して、急速な「ウェット・イン」および安定した分散体の形成の両方を促進している。用語「ウェット・イン」は、粒子を取り巻く空気を液体で置換することを意味する。高度に通気させた粉末では、吸収された空気は、「ウェット・イン」工程を完結するために必要となる全体の時間を著しく増加させる可能性がある。分散工程を開始する前に、顔料を高密度化することによって、「ウェット・イン」時間を著しく減少させることが可能である。例えば、水中に二酸化チタン顔料を分散させてスラリーを形成することに関連する「ウェット・イン」時間は、同じ条件下であるが、顔料が自然に脱気されることのみ許容され、顔料の沈降を伴う状態にある同じ顔料に必要となる「ウェット・イン」時間の量と比較して、本発明による方法では、好ましくは少なくとも10パーセント、より好ましくは少なくとも20パーセント、最も好ましくは少なくとも30パーセント減少する。
【0033】
本発明はまた、例えば、一次蓄電池または二次蓄電池のカソードを製造するために使用されるような電池活物質およびそのような電池活物質を含む組成物の嵩密度を増加するのに特に有益である。このことは、さらにより小さく、もっと精巧な携帯型電子装置の出現によって評価されるであろう。そのような装置で使用される電池は、そのような装置の初期のものよりも、より小さい空間を占めるにもかかわらず、対応するより大量の電気的エネルギーを運搬可能でなければならない。本発明はこの必要性について検討しており、要求されるますます少量で固定された容量の電池コンテナまたはシェル中により大量の電池活物質を付与することを可能にするのに有用である。好ましくは、本発明による方法によって、電池活物質(またはそのような物質の混合物)を含む電池に有用な組成物の嵩密度を、使用されたいかなる正圧による高密度化または脱気もない同じ組成物の嵩密度から、少なくとも10パーセント、より好ましくは15パーセント、最も好ましくは30パーセント増加させることが可能である。
【0034】
本発明による方法は、必ずしも精巧な装置を必要としない。いかなる密閉されたコンテナも、腐食性の物質を含む場合に、構成材料が所望の運転圧力および腐食環境の両方に持ちこたえることが可能でなければならない。
【0035】
ここで、図面、特に図3および図4を参照すると、総して参照番号20によって指定された本発明による装置の1つの好ましい実施形態が記述されている。装置20(エアロック・アセンブリ)は、いかなる粉末の嵩密度を増加するのに利用することができる。装置20の特定の形状は重要ない。実際には、市販され、かつ本発明に関連する使用のために修正することができる、種々の球状の円板バルブおよびエアロック・アセンブリがある。図3および図4によって示された特定の装置は、本発明に従って修正されたGEMCO(登録商標)の球状円板バルブまたはエアロックである。
【0036】
装置20は、垂直のモードで位置し、圧力下で粉末を含有するためのコンテナ22を含む。例えば、連続的な二酸化チタンの製造方法では、二酸化チタン顔料を、二酸化チタンセパレーター(不図示)からコンテナ22に直接供給することが可能である。
【0037】
コンテナ22は、第1の端部30と、対向する第2の端部32を含む。加圧手段34は、粉末を含むコンテナ22の領域36におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前に、粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させるために、コンテナ22に関連している。
【0038】
1つの実施形態では、加圧手段34は、コンテナ22にガスを導入するための導入手段38と、ガス(例えば、圧縮ガス)の供給源40とを有する。導入手段38は、供給源40からコンテナ22に伸びる導管42と、対応するバルブ44を含む。圧縮ガスの供給源40は、適切なコンテナ46を含む。コンテナ46内のガスの圧力は、コンテナ22におけるガス圧力を所望のレベルまで、および所望時間内に増加させるのに十分な速度で、コンテナ22に導管42を通してガスを押し進めるのに十分である。
【0039】
コンテナ22の第1の端部30は、コンテナに粉末を加えられるようにするための入口48を含む(入口は、フィード供給部に接続するためのフランジ48aを含む)。コンテナ22の第2の端部は、粉末をコンテナからバッグまたは他の容器(不図示)に取り除くようにするための出口50を含む(出口は、容器に接続するためのフランジ50aを含む)。コンテナは、さらに、入口48を密閉および開放するための第1のバルブと、出口50を密閉および開放するための第2のバルブとを含む。図示したように、バルブ54および56は、慣用のスライディングナイフゲートバルブであり、それらは当業者に知られるように、対応するバルブモーター58aおよび58bによって自動的に操作される(例えば、モーターは電気的にまたは空気圧によって操作可能であり、サイクル時間を制御するためにプログラム可能なロジック制御装置を含んでもよい)。バルブ54および56を極めて素早く密閉および開放することで粉末を急速に充填し、およびコンテナから取り除くことができるようになる。1以上の圧力バルブ60を、コンテナ22内の圧力を表示するためにコンテナ22に関連させてもよい。
【0040】
図3および図4によって例示された装置の操作では、第1のバルブ54を開放し、高密度化する粉末をコンテナ22に入口48を通して重力的に供給する。バルブ56は完全に密閉されたままである。粉末は落下し、バルブ56に対して積もる。いったんコンテナ22が所望量まで充填されたら、バルブ54を密閉する。次いでバルブ44を開放し、ガス供給源40からコンテナ22に加圧ガスを導入する。ガス供給源40内の加圧ガスは、コンテナ内のガス圧力を所望のレベルまで増加させるのに十分な速度で、つまり粉体を圧縮するのに十分な速度で大気圧を超えるレベルまで、コンテナ22内に導入されるように圧縮されており、そのことによって加圧ガスの本質的な部分が粉末内に拡散する前にコンテナ22のバルブ56に対して粉末が圧縮されるかまたは高密度化される。いったん粉末が所望のように圧縮されると、バルブ56は開放され、それによってコンテナ22内の増加されたガス圧と重力とが一緒になって、コンテナ22から粉末が完全に取り除かれる。このことは、特に、粉末がコンテナ22の壁に付着し、および例えば個別のパッケージに容易に取り除かれない傾向にあるようないくつかの粉末を選択する状況下において、本発明による追加の利点となる。コンテナ22における増加されたガス圧力は、そのような粉末がコンテナ22の壁に付着する傾向を克服するのに有用となる。圧縮された粉末は、直接、バッグまたは他の種類の製品容器(不図示)中に放出される。好ましくは、放出効果のために必要とされる追加の機械的装置はない。
【0041】
ここで、図5を参照すると、粉末の嵩密度を増加させる本発明による装置のさらに別の実施形態が例示されている。この実施形態では、装置(それらは総して参照番号70によって指定される)は、シリンダ72と、回転式の閉じ込め装置74と、シリンダ内の回転式の閉じ込め装置を回転させるための回転手段76(点線によって示される)と、シリンダに関連する加圧手段78とを含む。粉末80は、フィードコンテナ82からシリンダ72の中に供給され、最終的にシリンダから最後のコンテナ(例えばバッグ)84に供給される。
【0042】
シリンダ72は、入口92を含む第1の端部90と、第1の端部に対向しかつ出口96を含む第2の端部94と、壁98とを含む。入口92は、第1のバルブ100を含む。出口96は、第2のバルブ102を含む。回転式閉じ込め装置74は、シリンダ72内に位置する。回転式閉じ込め装置は、ハブ110と、それぞれハブに取り付けられた3対の対向するブレード(112Aおよび112B、114Aおよび114B、116Aおよび116B)とを含む。ブレード(112Aおよび112B、114Aおよび114B、116Aおよび116B)は、シリンダ72内に120Aから120Fの6つの粉末閉じ込め領域を形成する。回転式閉じ込め装置74は、シリンダ72内で粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々が、入口92に隣接するシリンダ内の第1の位置122に回転することによってその領域に圧縮されていない粉末80を加えることができ、シリンダの壁98に隣接するシリンダ内の第2の位置124に回転することによってその領域内の粉末80を圧縮することができ、さらに出口96に隣接する第3の位置126に回転することによってコンテナの端部84にある領域から圧縮された粉末80を取り除くことができるように回転する。
【0043】
回転手段76は、モータ130(点線で表示)と軸132とを含む。軸132は、モータ130に対する一方の端部およびハブ110に対する他方の端部に取り付けられている。モータ130は、軸132を回転させ、それによって回転式閉じ込め装置74を回転させる。
【0044】
シリンダ72に関連する加圧手段78は、回転式閉じ込め装置の粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々におけるガス圧力を増加するように機能し、その結果、その領域が第2の位置124にある時にその領域内にある粉末を圧縮化または高密度化する。粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々におけるガス圧力は、大気圧を超えるレベルまで、かつ加圧ガスの本質的な部分がその領域に拡散する前に、その領域内の粉末を圧縮するのに十分な速度で増加される。加圧手段78は、パルス化空気圧調節システム140と、主要ガス導管142と、フィルタおよびベントシステム144と、クリーンアウト・システム146とを含む。主要ガス導管142の第1の導管148は、パルス化空気圧調節システム140に取り付けられている。主要ガス導管142の第2の導管150は、シリンダ72の壁98を通って伸びており、粉末閉じ込め領域が第2の位置124にある場合に粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々に位置する。
【0045】
フィルタおよびベントシステム144は、バルブ154、圧力計156、およびバッグ型フィルタ158を含む。主要ガス導管142の第1の枝管160は、フィルタ158に伸びる。フィルタおよびベントシステム144は、必要なときに加圧手段からガスを放出できるようにする。
【0046】
主要ガス導管142の第2の枝管164は、クリーンアウト・システム146に伸びる。クリーンアウト・システム146は、バルブ166を含み、加圧手段78に取り込まれたいかなる粒子についても加圧手段から取り除くことができるようにする。
【0047】
操作では、圧縮させる粉末80をフィードコンテナ82に入れる。回転手段76は、所望の速度で、すなわち、粉末閉じ込め領域が第1の領域122にある時に粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々に適切量の粉末80が供給され、粉末閉じ込め領域が第2の位置124にある時にその領域内にある粉末が十分に圧縮されるような速度で、シリンダ72内を反時計回りの方向に、回転式閉じ込め装置74を回転させるように操作される。次いで、第1のバルブ100を開放することにより、粉末閉じ込め領域が第1の位置122にある時に粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々に圧縮されていない粉末80が充填される。回転式閉じ込め装置が回転するにつれて、粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々は第1の位置122から第2の位置124へと移動する。第2の位置124にある時、加圧手段78は、対応する粉末閉じ込め領域内のガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が粉末に拡散する前に、その領域で粉末を圧縮させるのに十分な速度で、大気圧を超える所望のレベルまで増加させるように操作される。回転式閉じ込め装置74の回転は、粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々について、第2の位置から第3の位置にも回転する。粉末閉じ込め領域が第3の位置126にある時に、圧縮化された粉末は、第2のバルブ102および出口96を通ってその領域から、コンテナの端部またはバッグ84に落とされる。装置の連続的な操作によって、本発明に従って粉末を連続的に高密度化することが可能になる。
【0048】
加圧手段78は、粉末閉じ込め領域120Aから120Fの各々におけるガス圧力を以下のように増加させるように操作する:パルス化空気圧調節システム140によって、主要ガス導管142に空気を導入する。主要ガス導管142によって、第2の位置124にある粉末閉じ込め領域に空気が導入される。空気は、主要ガス導管142の第2の端部150から第2の位置にある領域内に流れる。パルス化空気圧調節システム140は、主要ガス導管142を通して導入される空気を生じ、空気は第2の位置にある粉末閉じ込め領域におけるガス圧力を、大気圧を超える所望のレベルまで、かつ所望のレベルおよび所望の速度、すなわち加圧ガスの本質的な部分が粉末に拡散する前に、その領域内にある粉末を圧縮させるのに十分な速度で導入される。
【0049】
フィルタおよびベントシステム144によって、圧力計156によって示されるシステムでの圧力が、所望の限度を超える場合、空気をシステムから排気することが可能である。バルブ154は、フィルタ158および最終的に大気中に導管142の第1の分管160を通して過剰な空気を逃すように開放される。フィルタ158は、排気されたガスに存在するいかなる粒子についても捕捉する。
【0050】
クリーンアウト・システム146は、主要ガス導管142または加圧手段78の他の部分に堆積するいかなる粉末についてもそのシステムから取り除くことを可能にする。バルブ146が開放されることにより、導管の第2の分管164に主要ガス導管142における空気と粒子が入り、そこでバルブを通して操作しおよび適切な方法で採集することが可能である。
【実施例】
【0051】
以降の実施例は、本発明による方法および構成の有効性をさらに例示するために提示される。
【0052】
(実施例I)
高度に通気させた粉末を含む密閉容器の急速な加圧が、粉末の高密度化または圧縮化(すなわち、粉末をより小さな質量にする)を引き起こすことを検証するために、一連の実験を実施した。急速で遅い加圧、および急速で遅い減圧に関する4つの組み合わせの全てについて評価した。嵩密度の値は、100立方センチメートルのカップを粉末で充填し、水平にし、カップの上部にウェルなどの拡張部片を取り付け、それを充填することによって、「ヒコサワミクロンパウダー試験装置(HOSOKAWA Micron Powder Tester)、モデルPT−E」を使用して、慣用の方法に従って測定した。充填されたカップおよび拡張部片を、カップの上部を超える粉末量を維持するのに必要となるような粉末の追加を伴って、180秒間にわたり、60のサイクル頻度で叩いた。叩くサイクルの最後に、拡張部片を注意深く取り外し、カップを水平にして過剰な粉末を取り除いた。充填され、叩かれ、水平にされたカップと、空のカップとの間のグラム数の重量差を、カップの100立方センチメートル容量で割ることによって、試料の嵩密度(1立方センチメートル当たりのグラム数)を提供した。
【0053】
試験で使用した粉末は、高度に通気させたラテックス塗料等級の二酸化チタン顔料(カー・マックギー ケミカル、LLCによって販売される「CR−813」塩化物方法・ルチル顔料)であった。最初に、顔料を通気させ、顔料の温度を約150〜200℃に上昇させる加熱蒸気を使用した流体エネルギーミルにおいて、顔料を粉砕した。試験前の顔料の嵩密度は、24.8lbs/ft(0.40g/cm)であった。次いで、約500グラムの熱い顔料を、取り外し可能な上端を有する3リットルの円筒状鋼製容器(内径15.3cm、高さ15.9cm)に入れた。次いで、容器の上端を安全に取り付けた。容器の上端に取り付けられ、および圧縮空気のラインに接続された第1のバルブを開放し、それによって、10〜15秒以内に、0psigから約50psig(3.5kg/sq.cm、ゲージ)まで容器を加圧した。加圧が約50psigのレベルに達し次第、第1のバルブを閉じ、同じく容器の上端に取り付けられた第2のバルブを開放した。第2のバルブを開放することにより、約10〜15秒で容器を大気圧との平衡状態に戻した。次いで、容器の上端を取り外し、容器から顔料を回収した。回収した顔料の嵩密度(試料1A)は、41.7lbs/ft(0.67g/cm)と決定された。したがって、顔料の嵩密度は、本質的に増加しており、具体的には68パーセント増加した。
【0054】
次に、上述の実験を、同じ手順および同じ熱い顔料の新鮮な試料を使用して繰り返した。唯一の例外は、容器中の圧力を、10〜15秒に対抗して3分にわたって50psigに上昇させ、10〜15秒の時間枠に対抗して1分の時間枠にわたって大気圧との平衡状態に戻したことである。回収した顔料(試料1B)の嵩密度は、26.6lbs/ft(0.43g/cm)と決定され、出発物質と殆ど同じであった。
【0055】
第3の試験についても、同じ器具および手順と、同じ熱い顔料の新鮮な試料を使用して実施した。しかし、この試験では、容器を急速に加圧したが、ゆっくりと減圧した。具体的には、容器内の圧力は、10〜15秒にわたって約50psigまで上昇させ、次いで約1分の時間枠にわたって大気圧との平衡状態に戻した。回収した顔料(試料1C)の嵩密度は、41.7lbs/ft(0.67g/cm)と決定され、それは試料1Aに関して達成されたレベルに等しい。
【0056】
第4の試験例は、容器を最初にゆっくりと加圧するが、容器を急速に減圧することの影響を例示するために実施した。試験は、再度、上述のものと同じ器具および手順、および熱い顔料の新鮮な試料を使用して実施した。しかし、試験において、加圧は、3分にわたって約50psigに上昇させ、次いで30秒の時間枠にわたって解放した。回収した顔料(試料1D)の嵩密度は、29.7lbs/ft(0.47g/cm)と決定され、それは出発原料よりも僅かだけ高かった。
【0057】
上述の実験結果は、顔料を著しく高密度化することになる原因が容器の急速な加圧にあることを明確に示している。
【0058】
(実施例II)
実施例Iに従って高密度化された顔料(試料1A)をペイント塗料において試験し、本発明による手段によって達成される高密度化が、顔料の光学特性にマイナスの影響を与えないことを証明した。顔料試料1A(約41.7lbs/ft(0.67g/cm)の嵩密度を有する)を含むペイント塗料、および本発明に従って処理される以前の顔料(24.8lbs/ft(0.40g/cm)の嵩密度を有する、「未処理の顔料」)を含むペイント塗料について試験した。
【0059】
ペイント塗料は、室内建築用途に向けて設計された標準型ラテックスペイント塗料であった。その塗料は、新たに調製したポリ酢酸ビニルラテックスエマルジョンのポーションに顔料試料を混入することによって形成された。各塗料において、エマルジョンに混入された顔料試料の量は、エマルジョンの全質量を基準として60質量%であった。
【0060】
得られたペイント塗料を、黒色ガラスプレートおよび白色カードに最初に塗布した。乾燥した塗膜のY反射率値を、当業者に知られているようなHunterLab色差メーターを用いて測定した。これら読み取り値を、測定された塗膜重量と組み合わせて、顔料のポンド当たりの平方フィート(1キログラム当たりの平方メートル)における隠蔽力として表現される、散乱値を計算するために使用した。
【0061】
次に、固定量のカーボンブラック色味を各ペイント塗料のポーションに加え、各塗料に対する着色ペイント試料を形成した。4つのペイント試料を完全に混合した。次いで、4つの全てのペイント塗料と対応する対照のドローダウン(drawdowns)を、標準「LENETA」(登録商標)チャート上に作成した。これらのドローダウンから、HunterLab色差メーターからの読み取り値を得て、製造される色調強度の計算を可能にした。全ての方法および計算は、ASTM D2805およびD2745に従ってそれぞれ実施した。その結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0062】
試験結果は、実施例Iにおいて高密度化された顔料の性能は、隠蔽力(あるいは乾燥隠蔽)または色調強度のいずれの条件であろうと劣化がないことを示している。
【0063】
(実施例III)
顔料の嵩密度における高密度化の圧力変化の影響を例示する。一連の試験で使用した顔料は、高度に通気させた、ラテックス塗料等級の二酸化チタン顔料(カー・マックギー ケミカル、LLCによって販売される「CR−813」)であった。対照試料を含む6つ顔料試料を試験した。
【0064】
最初に、実施例Iに記述したものと同じ方法、装置および器具を使用することによって、6つの顔料試料のうち5つを高密度化させた。使用した高密度化圧力を除き、各実験中における試験パラメーターは同じであった。各試験において、約3〜5秒以内に目標とする圧力レベルまで急速に容器を加圧した。目標とする圧力レベルを達成する際、容器は、約10〜15秒以上かけて大気圧との平衡状態にした。高密度化方法で使用する高密度化圧力は、15psig(1kg/sq.cm)から72psig(5kg/sq.cm)まで変化させた。実施例Iと同様にして、対照試料を含む各顔料試料の嵩密度を測定した。
【0065】
次いで、本発明による方法に従って高密度化した5つの試料と同様に、対照試料を使用してペイント塗料を調製した。実施例IIに記載したものと同様の配合、器具および手順を使用した。次いで、実施例IIに記載したものと同様の手順を使用して、試料の隠蔽力および色調強度を測定した。試験結果を以下の表2に示す。
【表2】

【0066】
嵩密度の測定では、高密度化圧力の増加に伴って顔料の嵩密度が増加することを示している。隠蔽力および色調強度によって測定された光学特性は、評価された高密度化圧力の範囲にわたって変化がないことを示している。試験は、それら顔料を使用して形成されたペイント塗料の光学特性に影響を与えることなく、顔料を非常に著しく高密度化できることを示している(顔料を0.40グラム/立方センチメートルから0.69グラム/立方体のセンチメートルに高密度化でき、それは72%の増加を表す)。
【0067】
(実施例IV)
本発明による高密度化方法および装置が粉末を水媒体に分散できるレベルにあるという有益な効果を例証するために、試験を実施した。試験に使用した顔料は、上述の実施例IIIに記載したものと同じ顔料であった。顔料は、顔料の製造方法の流体エネルギー粉砕工程からの新鮮なものであった、嵩密度は、実施例Iと同様にして決定した。
【0068】
2つの試料を作製し、その1つを対照試料として使用した。残りの試料の密度を、実施例Iに記述したものと同じ操作および装置を使用して高めた。この場合、加圧は、3〜5秒以内で、約50psigまで増加させた。また、減圧は、10〜15秒の時間枠にわたって実施した。嵩密度の測定は、対照試料が27.1lbs/ft(0.43g/cm)の値を有し、高密度化させた試料の密度が40.0lbs/ft(0.64g/cm、およそ48%の増加に関する)の値を有することを示した。
【0069】
次に、トルク感受性能を有する、Byk−Cardner(U.S.A)から入手可能なDISPERMAT(商品名)モデルAE3Cを使用して、2つの顔料試料の各々からスラリーを製造した。手法は、試験される775グラムの顔料試料を、370グラムの水および分散剤の独自のブレンドに加えることを含んだ。速度と温度のような操作上のパラメーターの全てを一定レベルに維持した。水媒体への顔料の添加方法は、スラリーに対して二酸化チタンが「ウェット・イン(濡れる)」能力のみが律速因子となるようにした。
【0070】
結果は、この適用に関する図面である図6によって説明される。図6は、本発明に従って密度を高めた試料と、対照試料との両方を示す時間に対するトルクのプロットを含む。図6に示されるように、本発明に従って密度を高めた顔料試料は、対照試料よりも50〜52秒前に、定常状態トルクに到達した。すなわち、本発明に従って粉末を高密度化することによって、水媒体中に分散される粉末の能力を本質的に高めることが可能である。
【0071】
(実施例V)
圧力高密度化試験は、リチウムバナジウム酸化物電池活物質と、約5質量%の黒鉛とカーボンブラックとの組み合わせとからなるカソード組成物であって、予め乾燥し、真空下でのみ高密度化した組成物について実施した。実施例Iに記載したものと同じく3リットルの鋼製試験シリンダに試料を入れ、完全な真空(0.1psig未満まで)を適用した。次いで、鋼製試験シリンダを、約15秒で、90psig(6.3kg/sq.cm)に窒素を用いて加圧した。パックされた嵩(タップ)密度は、公称43.6lbs/ft(0.70g/cm)から50.5lbs/ft(0.81g/cm)まで増加し、約15%の密度が増加した。
【0072】
(実施例VIからVIII)
実施例VIからVIIIについては、同様の圧力高密度化試験を2つの試料で行った。各試料は、3種の追加の電池に有益なカソード組成物(全てリチウムバナジウム酸化物電池活物質、カーボンブラックおよびグラファイトからなる)から構成した。実施例VIおよびVIIに対して使用した試料の組成は同じであり、一方、実施例VIIIの組成は、カーボンブラックと比較して黒鉛の割合が多少大きいものを使用した。
【0073】
実施例Vとは対照的に、最初に真空を適用しなかったために、加圧は、大気圧から90psigまで、約15秒かけて、窒素を用いて実施した。次いで、コンテナに対するバルブを開放し、約5秒間にわたって急速に圧力を除いた。さらに、先の実施例とは対照的に、実施例VI〜VIIIによる試料は、パックされた嵩(タップ)密度を決定する前に、最大の高密度化を達成するために、同様の操作をさらに2回行った。結果を以下の表3に示す。密度は、1立方センチメートル当たりのグラム数で表現されている。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明による正圧系を例示する単純なコンテナの断面図である。
【図2】本発明による正圧系を例示する単純なコンテナの断面図である。
【図3】本発明による装置の1つの実施形態を例示する側面図である。
【図4】図3によって例示された装置の平面図である。
【図5】本発明による装置の別の実施形態を例示する略正面および部分断面図である。
【図6】実施例IVに対応するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気させた粉末の嵩密度を増加する方法であって、
前記粉末をコンテナに入れる工程と、
前記粉末を含む前記コンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末中に拡散する前に、前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コンテナを減圧する工程と、前記圧縮させた粉末を前記コンテナから取り除く工程とをさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所定量の粉末を容器に入れる方法であって、
前記粉末をコンテナに入れる工程と、
前記粉末を含む前記コンテナの領域におけるガス圧力を、前記粉末の嵩密度を所定のレベルまで増加させるのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる工程と、
前記コンテナから所定量の前記粉末を取り除き、前記容器に入れる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記粉末を含む前記コンテナの領域における前記ガス圧力を、前記コンテナにガスを導入することによって、大気圧を超えるレベルまで増加させることを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンテナに導入される前記ガスが、不活性ガス、空気、窒素、酸素、二酸化炭素および塩素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コンテナに導入される前記ガスが、空気であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末が、無機金属酸化物であることを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末が、二酸化チタン顔料であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化チタン顔料の嵩密度が、1立方センチメートル当たり約0.56グラムを超えるレベルまで増加されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化チタン顔料の嵩密度が、1立方センチメートル当たり約0.64グラムから1立方センチメートル当たり約0.80グラムの範囲のレベルまで増加されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末を含む前記コンテナの領域における前記ガス圧力が、前記コンテナに塩素ガスを導入することによって、大気圧を超えるレベルまで増加されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記粉末が、電池活物質を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記電池活物質が、バナジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、あるいはそれらの組み合わせである金属の金属酸化物および金属リン酸塩からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電池活物質が、バナジウム、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄あるいはそれらの組み合わせである金属のリチウム金属酸化物およびリチウム金属リン酸塩からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記電池活物質が、リチウムバナジウム酸化物であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電池活物質の嵩密度が、少なくとも10パーセント増加されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電池活物質の嵩密度が、少なくとも15パーセント増加されることを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項18】
通気させた粉末の嵩密度を増加する方法であって、
前記粉末を、第1の端部および該第1の端部に対向する第2の端部を有するコンテナに入れる工程と、
前記粉末を含む前記コンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末内に拡散する前に、前記コンテナの前記第2の端部に対して前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる工程と、
前記コンテナの前記第2の端部を開放し、それにより前記コンテナが減圧され、および前記粉末が前記コンテナの前記第2の端部を通って前記コンテナから取り除かれる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記粉末を含む前記コンテナの領域における前記ガス圧力が、前記コンテナにガスを導入することによって、大気圧を超えるレベルまで増加されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
スラリーを調製する方法であって、
粉末を加工する工程と、
前記粉末が完全に沈降する前に、前記粉末を脱気することによって、前記粉末の嵩密度を増加させる工程と、
前記密度を高めた粉末を液体媒体中に分散させる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記粉末をコンテナに入れる工程と、
前記粉末を含む前記コンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末内に拡散する前に、前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させる工程と、
前記圧縮させた粉末を前記コンテナから取り除く工程と
によって、前記粉末が脱気されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記粉末が二酸化チタン顔料であり、前記液体媒体が水であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
濃縮二酸化チタン顔料スラリーを調製する方法であって、
二酸化チタン顔料を粉砕する工程と、
前記二酸化チタン顔料が完全に沈降する前に、前記粉末をコンテナに入れること、および前記粉末を含む前記コンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末内に拡散する前に、前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させることによって、前記顔料の嵩密度を増加させる工程と、
前記圧縮された粉末を前記コンテナから取り除く工程と、
前記脱気した顔料を液体媒体中に分散させる工程と
を有することを特徴とする方法。
【請求項24】
粉末の嵩密度を増加する装置であって、
第1の端部および該第1の端部に対向する第2の端部を有し、圧力下で前記粉末を含むためのコンテナと、
前記粉末を含むコンテナの領域におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末内に拡散する前に、前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させるための、前記コンテナに関連する加圧手段と
を有することを特徴とする装置。
【請求項25】
前記加圧手段が、前記コンテナにガスを導入するための手段と、ガスの供給源とを含むことを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記コンテナの前記第1の端部が前記粉末を前記コンテナに加えられるようにするための入口を含み、前記コンテナの第2の端部が前記コンテナから前記粉末を取り除けるようにするための出口を含み、前記コンテナが前記入口を密閉および開放するための第1のバルブと、前記出口を密閉および開放するための第2のバルブとをさらに有することを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記加圧手段が、前記出口が密閉された場合は前記出口に対して粉末を圧縮し、および前記出口が開放された場合は前記コンテナから放出することを特徴とする、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
粉末の嵩密度を増加させる装置であって、
第1の端部および該第1の端部に対向する第2の端部と有し、前記第1の端部が入口を含み、前記第2の端部が出口を含む、シリンダと、
ハブと、前記ハブに付けられ、前記シリンダ内部に2つの粉末閉じ込め領域を形成する一対の対向するブレードとを含む前記シリンダ内部に位置する回転式閉じ込め装置であり、前記粉末閉じ込め領域の各々が、前記入口に隣接する前記シリンダ内の第1の位置に回転することによって前記第1の領域に前記粉末が加えられ、前記シリンダ内の壁に隣接する前記シリンダの第2の領域に回転することによって前記第2の領域で前記粉末が圧縮され、前記出口に隣接する前記シリンダの第3の領域に回転することによって前記第3の領域から前記粉末が取り出されるように前記シリンダ内で回転可能である、回転式閉じ込め装置と、
前記シリンダ内部の前記回転式閉じ込め装置を回転させるための回転手段と、
前記粉末閉じ込め領域が前記第2の位置にある時に、前記回転式閉じ込め装置の粉末閉じ込め領域の各々におけるガス圧力を、加圧ガスの本質的な部分が前記粉末内に拡散する前に、前記粉末を圧縮するのに十分な速度で、大気圧を超えるレベルまで増加させるための、前記シリンダに関連する加圧手段と
を有することを特徴とする装置。
【請求項29】
前記加圧手段が、前記粉末閉じ込め領域にガスを導入するための手段と、圧縮ガスの供給源とを含むことを特徴とする、請求項28に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−515378(P2006−515378A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565090(P2004−565090)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/037448
【国際公開番号】WO2004/060796
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(500002799)トロノックス エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】