説明

正極格子基板、この正極格子基板を用いた極板及びこの極板を用いた鉛蓄電池

【課題】長寿命化を考えつつ、活物質の脱落し難い、正極格子基板、極板及び鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】長辺200〜450mm、短辺120〜150mmの長方形である枠骨1と、この枠骨の外側に配置される耳4と、前記枠骨の内側に配置され、格子を形成する内骨2,3とを備え、前記枠骨と耳との加算質量(枠骨+耳)が、内骨の質量よりも軽い正極格子基板5である。(枠骨+耳)と、内骨との質量比率は、好ましくは、(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極格子基板、この正極格子基板を用いた極板及びこの極板を用いた鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、病院等の停電時における、瞬時電圧低下対策用の産業用電池、また自動車用バッテリー等では、主に鉛蓄電池が用いられている。
鉛蓄電池は、従来から使用されている二次電池の1つであり、鉛蓄電池に使用される極板には、大電流放電が可能であるペースト式のものが、多く製造されている。
【0003】
ペースト式の極板(以下、「極板」と言う。)は、図1に示すように、外枠を構成する枠骨1と、この枠骨1の内側に、格子状に形成される縦内骨2及び横内骨3と、枠骨1の外側に配した集電用の耳4とを備え、この格子基板5に対して活物質(図示省略)をペースト状にして保持させる。
極板は、活物質が多いと利用率が低くなり、活物質の劣化を抑制できるが、用途によって枠骨の形状が定まっている際、活物質量を増やすには内側に形成される骨(内骨)を細くしたり、本数を少なくしたりしなければならない。
【0004】
但し、内骨を細くすると、格子基板(主に正極板)が腐食(酸化:Pb+O→PbO)によって脆くなり易く、図1に示す格子基板5の縦内骨2及び横内骨3が断線、又は強度低下により活物質を保持できず、脱落等を引き起こす可能性がある。また、内骨の本数を少なくすると、極板作製中、充填したペースト状の活物質を保持できず、脱落する心配がある。
そのため、各鉛蓄電池の寿命を考慮しつつ、適切な内骨の太さ、及び本数を確保するために、枠骨の質量に対して内骨の質量を定める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−332268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、耳を含めた枠骨の質量を内骨の質量より大きくすると、大きな格子基板を作製する場合、内骨の太さが細くなるか、内骨の本数が少なくなり格子基板(主に正極板)が、腐食(酸化:Pb+O→PbO)によって脆くなり易く、内骨が断線、又は内骨の強度が低下して、活物質を保持できず、脱落等を引き起こすこと、極板作製中、充填したペースト状の活物質を保持できず、脱落すること等が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、長寿命化を考えつつ、活物質の脱落し難い、正極格子基板、極板及び鉛蓄電池を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のものに関する。
(1)枠骨と、この枠骨の外側に配置される集電用の耳と、前記枠骨の内側に配置され、格子を形成する内骨とを備え、前記枠骨と耳との加算質量(枠骨+耳)が、内骨の質量よりも軽い正極格子基板。
(2)項(1)において、(枠骨+耳)と、内骨との質量比率が、(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2となる正極格子基板。
(3)項(1)又は(2)において、枠骨が、長辺200〜450mm、短辺120〜150mmの長方形である正極格子基板。
(4)項(1)乃至(3)の何れかに記載の正極格子基板に、活物質を保持させた極板。
(5)項(4)に記載の極板を用いた鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(枠骨+耳)と、内骨との、質量比較をした際に、「(枠骨+耳)<内骨」の関係になるようにしたので、枠骨においては格子の形状を維持できる格子基板を提供することができ、内骨においては、太さと本数が確保できることで内骨が腐食に耐えられ、且つ充填したペースト状活物質の脱落を防止し、電流を流す際の抵抗を小さくして、電圧降下を防ぐことができる。
(枠骨+耳)と、内骨との質量比率が、(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2とした場合は、より一層、内骨が腐食に耐えられ、且つ充填したペースト状活物質の脱落を防止し、耳から遠ざかる程、電流の抵抗(電圧降下)が大きくなるのを抑制することができる。この割合を1:1.2より小さくすると、徐々に内骨の太さと本数が少なくなり、内骨の腐食影響が生じ易くなり、且つ充填したペースト状活物質の脱落を引き起こす可能性がある。また、1:2.2より大きくすると、徐々に、内骨の太さと本数が多くなり、活物質の充填が困難になってくる。
【0010】
枠骨が、長辺200〜450mm、短辺120〜150mmの長方形である場合には、比較的大きな極板を作製でき、この極板を多数用いることで放電容量の大きな電池を作製することができる。また、上記サイズは、汎用される産業用鉛蓄電池の極板と同程度であり、枠骨の形状が同じならば、上記枠骨と内骨の質量比率を変化させても、電槽や蓋等をそのまま用いることができる。
また、前述した格子基板に活物質を保持させた極板は、比較的大きな極板であり、活物質量が多い。よって、このような極板を用いた鉛蓄電池は、放電容量を大きくしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来例である、格子基板の平面図を示す。
【図2】本発明の1実施例である鉛蓄電池の分解斜視図を示す。
【図3】本発明の1実施例である格子基板(A)の断面図を示す。
【図4】本発明の1実施例である格子基板(B)の断面図を示す。
【図5】本発明の1実施例である格子基板(C)の断面図を示す。
【図6】本発明の1実施例である格子基板(D)の断面図を示す。
【図7】本発明の1実施例である格子基板(a)の断面図を示す。
【図8】本発明の1実施例である格子基板(b)の断面図を示す。
【図9】本発明の1実施例である格子基板(c)の断面図を示す。
【図10】本発明の1実施例である格子基板(d)の断面図を示す。
【図11】本発明の比較例である格子基板(E)の断面図を示す。
【図12】本発明の比較例である格子基板(e)の断面図を示す。
【図13】図3に示す格子基板(A)の活物質充填状態を示す、概略図である。
【図14】図4に示す格子基板(B)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図15】図5に示す格子基板(C)の活物質充填状況を示す、概略図である。
【図16】図6に示す格子基板(D)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図17】図7に示す格子基板(a)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図18】図8に示す格子基板(b)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図19】図9に示す格子基板(c)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図20】図10に示す格子基板(d)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図21】図11に示す格子基板(E)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【図22】図12に示す格子基板(e)の活物質保持状況を示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<枠骨>
本発明にて述べる枠骨は、格子基板の外枠(外形形状)を形成するものであり、その形状を限定されるものではないが、最終的に使用される鉛蓄電池の電槽(外装ケース)の内部形状に合わせることが好ましく、より具体的には、平面視にて正方形又は長方形となるものを用いることができる。特に長方形とする場合には、長辺:200〜450mm、短辺:120〜150mmとすることで、大きな極板を作製でき、この極板を多数用いることで放電容量の大きな電池を作製することができる。また、上記サイズは、汎用される産業用鉛蓄電池の極板と同程度であり、枠骨の形状が同じならば、電槽や蓋などをそのまま用いることができる。
【0013】
枠骨の断面形状は特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状が好ましい。より具体的には、厚み方向に長いひし形や六角形となるものを用いることができる。
枠骨の厚みは、特に限定されるものではないが、5mm以上であることが好ましく、このような厚みを有するものは、内骨をそれ以下の厚い任意の厚みにすることができ、内骨を厚く(太く)して長寿命としたり、薄く(細く)して充填の際、活物質内に内骨を埋め込ませ易くしたりすることができる。
【0014】
枠骨の材質は、主原料を鉛とするもので、これに合金材質として、スズ、カルシウム、アンチモン、ナトリウム等を添加することができ、中でも、スズ及びカルシウムの両方を添加することが好ましい。これは、カルシウムを添加すると、自己放電の割合を減少させることができ、更にこのカルシウムを添加した際の課題である、骨の腐食の起こり易さを、スズの添加により抑制することができるためである。
【0015】
<耳>
本発明にて述べる耳は、先に述べた枠骨の外側に配置される集電用のものであり、主にストラップ接続を行うことに用いられる。
耳は、形状、個数、厚み、材質等、特に限定されるものではないが、ストラップ接続のし易さから、形状は電槽、蓋、極板の形状に合わせることが好ましく、個数は1個、厚みは枠骨の厚みと同等程度、材質は製造のし易さ(一体成形可能)から枠骨と同じものを用いることが好ましい。
【0016】
<内骨>
本発明にて述べる内骨は、先に述べた枠骨の外形形状(外枠形状)を維持すると共に、活物質の保持、及び電気化学的反応性を大きくするものであり、長辺側を縦骨、短辺側を横骨と呼ぶ。その本数は、特に限定されるものではないが、本数を増やしすぎると活物質充填の際に隙間が狭く、骨の裏側に活物質が回り込みにくくなってしまう。逆に少なすぎると、充填した活物質の保持がし難くなる。そのため、活物質の充填が容易であり、活物質の保持が十分でき、且つ枠骨の内側に収まることが好ましい。
【0017】
また、内骨の径の太さは、特に限定されるものではないが、太くしすぎると活物質充填の際に隙間が狭く、骨の裏側に活物質が回り込みにくくなってしまう。逆に細すぎると経年の劣化に伴う格子の腐食に耐えられず、内骨の断線や内骨に保持された活物質の脱落などを引き起こす。そのため、活物質の充填が容易であり、腐食に耐えられる太さとすることが好ましい。
【0018】
内骨の断面形状は、特に限定されるものではないが、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状が好ましい。より具体的には、厚み方向に長いひし形や六角形となるものを用いることができる。
【0019】
内骨の材質は、先に述べた枠骨と同じでも異なるものでも良いが、枠骨と内骨を、一括一体成形することが容易に行えるように、同じ材質のものを使用することが好ましい。
【0020】
<(枠骨+耳)と、内骨との質量比>
本発明にて用いる(枠骨+耳)と、内骨との質量は、「(枠骨+耳)<内骨」の関係を有する。
また、質量比が、(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2であることがより好ましい。この割合であると、内骨の太さと本数が確保でき、内骨が腐食に耐えられ、且つ活物質の充填が容易であり、充填した活物質の脱落を防止することができる。
より詳細に述べると、内骨の太さを調節することで、活物質の充填の容易さ、及び内骨の腐食しにくさを整え、本数を調節することで、活物質の充填の容易さ、及び活物質の保持を、調整することができる。
【0021】
<格子基板の製造方法>
格子基板の製造方法としては、重力鋳造方式(GDC:Gravity Die Casting)を用いることが好ましい。これは、鋳造可能な枠骨と内骨の太さに理論上限界がなく、且つ太骨と細骨を合わせ持つ格子基板の製造が容易に可能であり、集電特性及び耐食性に優れているためである。
重力鋳造方式についてより詳細に述べると、格子基板の原材料金属(合金)を溶融し、この溶融金属(合金)を重力により金型へ流し込み、鋳造する。
【0022】
<極板>
本発明にて述べる極板は、活物質を充填機によって格子基板に充填し、熟成・乾燥して作製される。
熟成・乾燥の時間や温度は、特に限定されるものではないが、格子基板の厚さや活物質の物性によって適した値に調整することが好ましい。
【0023】
<活物質>
格子基板には、ペースト状に調製した活物質が充填され保持される。この活物質は、特に限定されるものでないが、一酸化鉛を含んだ鉛粉、水、硫酸等を混練(正極、負極の特性に合わせてカットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を加える場合もある)して作製するのが好ましい。
また、活物質の充填量は、枠骨の内側に形成される内骨が、完全に隠れれば問題はないが、枠骨の厚みを超える程度まで充填するのがより望ましい。これは、活物質の充填量を増やすことで、活物質の劣化による電池寿命の早期化を防止するためである。
【0024】
<鉛蓄電池>
本発明にて述べる鉛蓄電池は、前述してきた極板を用いるものであれば、他は特に限定されるものではない。
鉛蓄電池は、正極板、負極板、電解液として希硫酸、セパレータ(ガラス繊維製のリテーナ等)、電槽、蓋等の部材から作製される。
より具体的には、図2に示すように、正極板6と負極板7との間に、セパレータ8を介しながら、正極板6と負極板7とを1枚ずつ交互に積層し、同極板同士をストラップ9で連結させ、極板群を作製する。この極板群を電槽10の中に入れ蓋11をし、電解液として用いる希硫酸を注液した後に、化成を行って鉛蓄電池とする。
【実施例】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
<格子基板の作製>
鉛に、スズ:1.8質量%、カルシウム:0.08質量%を添加して100質量%とした鉛合金を溶融し、重力鋳造方式によって、(枠骨+耳)と、内骨との質量比率が異なる、正極用の格子基板を作製した。
作製した格子基板は、格子基板(A)〜(E)が、各格子基板の間で内骨の本数を変えずに内骨の太さを変えたものであり、格子基板(a)〜(e)が、各格子基板の間で内骨の太さを変えずに内骨の本数を変えたものである。
格子基板の大きさは、全て、縦:385mm、横:140mm、(枠骨)厚み:5.8mmである。
【0026】
<実施例1:格子基板(A)>
格子基板(A)の内骨の断面形状は、図3に示すように、高さ:5.4mm、最大幅:4.2mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:2.5である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0027】
<実施例2:格子基板(B)>
格子基板(B)の内骨の断面形状は、図4に示すように、高さ:4.9mm、最大幅:3.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:2.2である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0028】
<実施例3:格子基板(C)>
格子基板(C)の内骨の断面形状は、図5に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.6である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0029】
<実施例4:格子基板(D)>
格子基板(D)の内骨の断面形状は、図6に示すように、高さ:2.9mm、最大幅:1.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.2である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0030】
<実施例5:格子基板(a)>
格子基板(a)の内骨の断面形状は、図7に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が11本、横側が32本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:2.4である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0031】
<実施例6:格子基板(b)>
格子基板(b)の内骨の断面形状は、図8に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が10本、横側が30本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:2.2であり、格子基板(B)と同等である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0032】
<実施例7:格子基板(c)>
格子基板(c)の内骨の断面形状は、図9に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.6であり、格子基板(C)と同等である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0033】
<実施例8:格子基板(d)>
格子基板(d)の内骨の断面形状は、図10に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が8本、横側が22本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.2であり、格子基板(D)と同等である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0034】
<比較例1:格子基板(E)>
格子基板(E)の内骨の断面形状は、図11に示すように、高さ:2.4mm、最大幅:1.2mmの六角形であり、内骨本数は縦側が9本、横側が26本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.0である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0035】
<比較例2:格子基板(e)>
格子基板(e)の内骨の断面形状は、図12に示すように、高さ:3.9mm、最大幅:2.7mmの六角形であり、内骨本数は縦側が7本、横側が20本である。このとき、質量比は、(枠骨+耳):内骨=1:1.0である。
尚、厚み方向の上方の面にて、全ての内骨の高さを面一にしている。
【0036】
前述した格子基板(A)〜(E)、(a)〜(e)について、下記表1に縦骨及び横骨の本数、内骨の高さ及び最大幅、(枠骨+耳)と、内骨との質量比を示す。
【0037】
【表1】

<活物質の充填性確認>
前述した格子基板(A)〜(E)、(a)〜(e)に対し、ペースト状の活物質を充填機において、同一条件にて活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
尚、用いた活物質は、以下に示す従来から使用されている工程により調製した。
一酸化鉛を主成分とする鉛粉に、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合し、次に水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて100質量%とし、再び混練をして正極用のペースト状活物質を作製した。
【0038】
<充填結果>
格子基板(A)〜(E)、(a)〜(e)にペースト状活物質を充填し、活物質の裏回り具合を視認、及び、乾燥・熟成工程を経て製造した極板をその断面観察によって確認した結果を以下に記す。
視認における裏回り具合としては、格子基板(A)〜(E)、(a)〜(e)の全てにおいて図13〜22に示すように、内骨が活物質12に埋まっていた。また、格子基板(B)〜(D)、(b)〜(d)においては、裏側も枠骨と同じ厚さ程度まで活物質が回り込んでいた。
更に格子基板(A)〜(D)、(a)〜(d)においては、内骨の太さや本数が多く、格子間の幅が適当であるため、活物質の保持も十分であった。
【0039】
しかし、格子基板(E)においては図21に示すように内骨が細く、格子基板(e)においては図22に示すように、内骨の本数が少なく格子間の幅が大きいため、活物質の保持がしにくく、運搬時等の振動程度でも脱落がみられた。
【0040】
以上の結果より、内骨の太さと本数が確保でき、内骨が腐食に耐えられ、且つ活物質の充填が容易であり、充填した活物質の脱落を防止することができる格子基板として、枠骨と耳との加算質量(枠骨+耳)が、内骨の質量よりも軽い格子基板と設定した。また、活物質の充填性の最適化を図るため、枠骨と内骨の質量比率を(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2の範囲と設定した。
【符号の説明】
【0041】
1…枠骨、2…縦内骨、3…横内骨、4…耳、5…格子基板、6…正極板、7…負極板、8…セパレータ、9…ストラップ、10…電槽、11…蓋、12…活物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠骨と、この枠骨の外側に配置される耳と、前記枠骨の内側に配置され、格子を形成する内骨とを備え、前記枠骨と耳との加算質量(枠骨+耳)が、内骨の質量よりも軽い正極格子基板。
【請求項2】
請求項1において、(枠骨+耳)と、内骨との質量比率が、(枠骨+耳):内骨=1:1.2〜1:2.2となる正極格子基板。
【請求項3】
請求項1又は2において、枠骨が、長辺200〜450mm、短辺120〜150mmの長方形である正極格子基板。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の正極格子基板に、活物質を保持させた極板。
【請求項5】
請求項4に記載の極板を用いた鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−174561(P2012−174561A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36522(P2011−36522)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】