説明

正電極板、リチウムイオン二次電池、組電池、車両、電池搭載機器および正電極板の製造方法

【課題】 正極活物質量を一様にした正電極板、この正電極板を用いたリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を備えた組電池、車両および電池搭載機器を提供する。このような正電極板の製造方法を提供する。
【解決手段】 所定の総厚みTtの正電極板21は、酸化物層を有することなく、かつ、腐食されていない金属箔22を備え、積層方向に平行の断面のうち積層方向に直交する方向DBの長さ500μmの範囲で、第1正極活物質層23Aの最大厚みをT1max、最小厚みをT1min、第2正極活物質層23Bの最大厚みをT2max、最小厚みをT2minとしたとき、次式(1)、(2)を満たす。
式(1): (T1max−T1min)/Tt<0.1
式(2): (T2max−T2min)/Tt<0.1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正電極板、これを備えるリチウムイオン二次電池、組電池、車両、電池搭載機器および正電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、リチウムイオン二次電池が利用されている。
このリチウムイオン二次電池に用いられる正電極板としては、例えば、アルミ箔、および、その両面に積層配置してなる正極活物質層で構成したものが挙げられる。この正電極板の製造としては、例えば、以下が例示できる。まず、正極活物質、導電剤および結着剤を水で混練したスラリーをアルミ箔に塗布し、乾燥させて、正極活物質を形成する。さらに、アルミ箔およびその両面に形成した正極活物質層を積層方向にプレスする。
ところで、上述のスラリーは、リチウムを有する正極活物質と水との反応により、一般にアルカリ性を示す。このため、このスラリーをアルミ箔に塗布すると、スラリーとアルミ箔との界面において、アルミ箔が腐食してしまう。
【0003】
そこで、特許文献1では、リチウムイオン二次電池に用いる正極板(正電極板)の製造方法として、活物質ペースト(スラリー)の塗布前にアルミニウム集電箔を加熱し、この熱で、塗布したスラリーのうち、集電箔との界面部分を早期に乾燥させ、その後、全体を乾燥させる手法が示されている。また、特許文献2では、活物質ペーストの塗布前に、正極板に用いるアルミニウム集電箔に対し250℃の熱処理を数時間行い、耐電圧が2.1V以上の酸化物層を生成させて、その後、活物質ペーストを塗布する手法が示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−114228号公報
【特許文献2】特開2005−259682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の正電極板の製造方法では、界面部分の乾燥によって腐食が抑制されるとはいえ、塗布したスラリー全体が完全に乾燥するまでに、腐食がある程度進行してしまう虞がある。
【0006】
さらにアルミニウム集電箔の腐食に伴い、アルミニウム集電箔の表面から水素ガスが発生する。この水素ガスの多くは、スラリーの内部に気泡となって滞留する。このようなスラリーを乾燥させると、この内部には水素ガスの気泡由来の複数の空隙が不規則に存在し、乾燥したスラリー(例えば、プレス成形前の正極活物質層である未圧縮正極活物質層)の密度は、金属箔上において局所的にばらつく。従って、この未圧縮正極活物質層を両面に積層配置したアルミニウム集電箔について、積層方向に所定の総厚みになるようにプレス成形すると、未圧縮正極活物質層の局所的な密度ばらつきにより、アルミニウム集電箔が様々な形状に湾曲してしまう。これにより、プレス成形した後の正極活物質層の厚さが局所的にばらつき、最大厚さと最小厚さに大きな差が生じる。つまり、アルミニウム集電箔上における正極活物質の量に局所的な偏りが生じてしまう。この例を図11に示す。
このような正電極板を用いたリチウムイオン二次電池では、アルミニウム集電箔上の充放電反応が一様でなくなるために、十分な電池容量を確保できない虞がある。
【0007】
一方、特許文献2のように、アルミニウム集電箔の表面に十分厚い酸化物層を設けると、集電箔の腐食を防止できるが、酸化物層の存在により正極活物質と集電箔との間に抵抗が生じるため、腐食を十分防止できるほど厚い酸化物層を設けることは、却って電池の特性の低下を生じさせる。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、正極活物質の量を一様にした正電極板、この正電極板を用い、大きな電池容量を確保可能なリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を備えた組電池、車両および電池搭載機器を提供することを目的とする。また、このような正電極板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、その解決手段は、第1主面および上記第1主面の裏面をなす第2主面を有し、アルミニウムを主とする金属箔と、上記第1主面上に積層配置され、リチウムを含む正極活物質および水を有するスラリーを乾燥してなる第1正極活物質層と、上記第2主面上に積層配置され、上記スラリーを乾燥してなる第2正極活物質層と、を備え、上記金属箔、上記第1正極活物質層、および上記第2正極活物質層が、積層方向に圧縮されて、所定の総厚みTtに成形されてなる正電極板であって、上記金属箔は、上記第1主面および第2主面が、酸化物層を有することなく、かつ、腐食されていない状態とされてなり、上記積層方向に切断した任意の断面のうち、上記積層方向に直交する方向の長さ500μmの範囲において、上記第1正極活物質層の最大厚みをT1max、最小厚みをT1minとし、上記第2正極活物質層の最大厚みをT2max、最小厚みをT2minとしたとき、次式(1)、(2)を満たす形態を有する正電極板である。
式(1): (T1max−T1min)/Tt<0.1
式(2): (T2max−T2min)/Tt<0.1
【0010】
本発明の正電極板は、スラリーを乾燥してなる第1正極活物質層および第2正極活物質層が上述の式(1),(2)を満たす。つまり、金属箔の各主面上における第1正極活物質層および第2正極活物質層の厚みがほぼ一定になっており、この正電極板では、金属箔の各主面上の各所において、正極活物質の量が一様になっている。
また、正電極板の金属箔が、その各主面に酸化物層を有することなく、腐食もしていないので、金属箔と第1正極活物質層あるいは第2正極活物質層との間における電気抵抗の発生(例えば、酸化物層の存在による抵抗増加)を抑制できる。
【0011】
なお、本発明において、酸化物層には、金属箔を常温大気中に放置した場合に不可避的に生じるごく薄い(10nm以下程度の)不動態膜を含めない。従って、酸化物層を有しないとは、例えば、酸化物層が全くない場合のほか、第1主面等にごく薄い不動態膜のみが存在している場合を含む。
また、スラリーには、正極活物質および水のほかに、例えば、導電剤、結着剤等を含んでいても良い。
また、リチウムを含む正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiFeO2、Li5FeO4、Li2MnO3、LiFePO4、LiV24、および、これらの混合物が挙げられる。
【0012】
さらに、他の解決手段は、前述の正電極板を用いてなるリチウムイオン二次電池である。
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、単に電池とも言う)は、前述の正電極板を用いてなる。このため、この電池は、正電極板において正極活物質の局所的な偏りがないので、正極活物質を有効に利用でき、大きな電池容量を確保できる。
【0014】
さらに、他の解決手段は、前述のリチウムイオン二次電池を複数備えた組電池である。
【0015】
本発明の組電池は、前述のリチウムイオン二次電池を複数備えるので、大きな電池容量を確保できる組電池とすることができる。
【0016】
さらに、他の解決手段は、前述のリチウムイオン二次電池、または、前述の組電池を搭載した車両である。
【0017】
本発明の車両は前述のリチウムイオン二次電池または組電池を用いてなる。この電池または組電池は、前述の通り、大きな電池容量を確保できる。従って、電池出力や電池容量を十分に確保した車両とすることができる。
【0018】
なお、車両としては、その動力源の全部あるいは一部に電池による電気エネルギを使用している車両であれば良く、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータが挙げられる。
【0019】
さらに、他の解決手段は、前述のリチウムイオン二次電池、または、前述の組電池を搭載した電池搭載機器である。
【0020】
本発明の電池搭載機器は前述のリチウムイオン二次電池または組電池を用いてなる。この電池または組電池は、前述の通り、大きな電池容量を確保できる。従って、電池出力や電池容量を十分に確保した電池搭載機器とすることができる。
【0021】
なお、電池搭載機器としては、電池を搭載しこれをエネルギー源の少なくとも1つとして利用する機器であれば良く、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器が挙げられる。
【0022】
さらに、他の解決手段は、第1主面および上記第1主面の裏面をなす第2主面を有し、アルミニウムを主とする金属箔と、上記第1主面上に積層配置され、リチウムを含む正極活物質を有する第1正極活物質層と、上記第2主面上に積層配置され、上記正極活物質を有する第2正極活物質層と、を備え、上記金属箔、上記第1正極活物質層、および上記第2正極活物質層が積層方向に圧縮されて、所定の総厚みに形成されてなる正電極板の製造方法であって、上記金属箔の上記第1主面に、上記正極活物質および水を有するスラリーを塗布し、これを乾燥させた後に、上記金属箔の上記第2主面に上記スラリーを塗布し、これを乾燥させて、または、上記金属箔の上記第1主面および第2主面に、上記スラリーを塗布し、これを乾燥させて、上記金属箔に未圧縮第1正極活物質層および未圧縮第2正極活物質層を形成する層形成工程と、上記未圧縮第1正極活物質層、上記金属箔、および上記未圧縮第2正極活物質層を、上記積層方向に圧縮して、上記所定の総厚みに成形するプレス工程と、を備え、上記層形成工程は、上記スラリーに対し、上記金属箔を相対的に負電位とした状態で、上記スラリーの塗布および乾燥を行う正電極板の製造方法である。
【0023】
本発明の正電極板の製造方法では、層形成工程とプレス工程とを備える。このうち層形成工程では、金属箔をスラリーに対して、相対的に負電位とした状態でスラリーの塗布、乾燥を行う。これにより、金属箔が腐食して水素ガスが発生するのを抑制できるので、未圧縮第1正極活物質層および未圧縮第2正極活物質層内に気泡による空隙が混じることを防ぎ、これらにおける正極活物質の密度を一様にすることができる。このため、プレス工程により、金属箔の各主面上における正極活物質層の厚みをほぼ一定とし、正極活物質の量を一様とした正電極板を製造することができる。
【0024】
さらに、上述の正電極板の製造方法であって、前記金属箔は、前記スラリーに対し、上記スラリーの水素イオン指数(pH)に応じた、上記金属箔をなす金属の腐食電位Vc以下の電位としてなる正電極板の製造方法とすると良い。
【0025】
ところで、一般に金属の腐食電位Vcは、接する液体(スラリー)の水素イオン指数(pH)に応じて変化することが知られている。つまり、スラリーの水素イオン指数に応じて、金属箔の腐食電位Vcが決まる。
これに対し、本発明の正電極板の製造方法では、金属箔は、スラリーに対し、スラリーの水素イオン指数に応じた金属箔の腐食電位Vc以下の電位であるので、確実に金属箔の腐食の進行を抑制することができる。
【0026】
なお、腐食電位Vcは、例えば、金属箔がアルミニウムで、スラリーの水素イオン指数(pH)が13の場合、Vc=−2.0V(vs.SHE)である。なお、SHEは標準水素電極の意味である。
【0027】
さらに、上述のいずれかに記載の正電極板の製造方法であって、前記金属箔は、帯状の帯状金属箔であり、前記層形成工程は、上記帯状金属箔をその長手方向に移動させつつ、保持容器内に保持した塗布前の前記スラリーを、上記保持容器の吐出口から上記帯状金属箔に向けて連続的に吐出して、上記帯状金属箔の前記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに対し、上記スラリーを帯状に塗布し、塗布された上記スラリーを連続的に乾燥させる連続層形成工程を含み、上記連続層形成工程では、上記塗布前のスラリーに、直接または上記保持容器を通じて、上記帯状金属箔に対して相対的に正電位の電圧を印加する正電極板の製造方法とすると良い。
【0028】
本発明の正電極板の製造方法では、連続層形成工程において、帯状金属箔に向けてスラリーを連続的に吐出しているので、塗布前のスラリーに相対的に正電位の電圧を印加することで、この塗布前のスラリーを通じて、金属箔上に塗布した後のスラリーにも電圧を印加できる。このため、例えば、塗布後の未乾燥のスラリーに、電圧を印加するための電極を接触させる必要がなく、容易に電圧を印加でき、しかも確実かつ均一な厚さに塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態1にかかる電池1について説明する。図1に電池1の斜視図を、図2に電池1の部分破断断面図を示す。
本実施形態1にかかる電池1は、矩形箱形の電池ケース10、発電要素20、および図示しない電解液を備える捲回形のリチウムイオン二次電池である。
【0030】
このうち、電池ケース10は、共にアルミニウム製の電池ケース本体11および封口蓋12を有する。このうち電池ケース本体11は有底矩形箱形であり、内側全面に樹脂からなる絶縁フィルム(図示しない)を貼付している。
【0031】
封口蓋12は矩形板状であり、電池ケース本体11の開口部11Aを閉塞して、この電池ケース本体11に溶接されている。この封口蓋12には、後述する発電要素20と接続している正極集電部材71および負極集電部材72のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部71Aおよび負極端子部72Aが貫通して、上面12aから突出している。これら正極端子部71Aおよび負極端子部72Aと封口蓋12との間には、それぞれ樹脂製の絶縁部材75が介在して、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋12には矩形板状の安全弁77も封着されている。
【0032】
また、図示しない電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比でEC:EMC=3:7に調整した混合有機溶媒に、溶質としてLiPF6を添加し、リチウムイオンを1mol/lの濃度とした有機電解液である。
【0033】
また、発電要素20は、帯状の正電極板21および負電極板26が、ポリエチレンからなる帯状のセパレータ29を介して扁平形状に捲回されてなる。なお、この発電要素20の正電極板21および負電極板26はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の正極集電部材71または負極集電部材72と接合されている。
【0034】
発電要素20のうち、負電極板26は、図3(a)に示すように、長手方向DAに帯状に延び、銅箔27と、この銅箔27の第1箔主面27aおよび第2箔主面27b上にそれぞれ積層配置している、第1負極活物質層28Aおよび第2負極活物質層28Bとを有している。この負極活物質層28A,28Bには、それぞれ図示しないグラファイトおよび結着剤が含まれる。
【0035】
次いで、上述の発電要素20を構成する正電極板21について説明する。長手方向DAに延びる帯状の正電極板21は、図3(a),(b)に示すように、アルミニウム集電箔(以下、アルミ箔22とも言う)と、このアルミ箔22の第1箔主面22aおよび第2箔主面22b上にそれぞれ積層配置された、第1正極活物質層23Aおよび第2正極活物質層23Bとを有している。
【0036】
このうち、アルミ箔22の第1箔主面22aおよび第2箔主面22bには、常温大気中に放置したために、不可避的に生じるごく薄い(10nm以下程度の)不動態膜(酸化物層)が形成されている。但し、例えば、腐食抑制のため、10nm以上の厚さの酸化物層を積極的に形成することは行っていない。さらに、アルミ箔22の両箔主面22a,22bは腐食していない。
【0037】
一方、第1正極活物質層23Aおよび第2正極活物質層23Bはいずれも、LiNiO2からなる正極活物質23x、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、図示しない)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC、図示しない)を含む。なお、正極活物質層23A,23B内における、これらの重量比は、正極活物質23x:AB:PTFE:CMC=100:10:3:1とした。
【0038】
第1正極活物質層23Aと第2正極活物質層23Bとは、アルミ箔22を挟んで共に反対側に配置されている(図3(a)参照)。つまり、第1正極活物質層23Aと第2正極活物質層23Bとは、正電極板21において、アルミ箔22のうち、これらに挟まれた層間部位22Wと共に、積層方向DLに三層をなす積層部21Lを構成している。この第1正極活物質層23Aおよび第2正極活物質層23Bは、後述するように、塗布、乾燥後、積層方向DLにプレスされている。
正電極板21(積層部21L)の積層方向DLに平行な断面(図3(a)のD部)を図3(b)に示す。
【0039】
この正電極板21の断面のうち、積層方向DLに直交する方向、例えば上記アルミ箔22の短手方向DBに沿う幅W(=500μm)の任意の領域LAについて見る。このうち、第1正極活物質層23Aの最大の厚みを第1最大厚みT1maxとし、最小の厚みを第1最小厚みT1minとする。また、第2正極活物質層23Bの最大の厚みを第2最大厚みT2maxとし、最小の厚みを第2最小厚みT2minとする。
【0040】
すると、この正電極板21は、第1最大厚みT1maxと第1最小厚みT1minとの間で下記式(1)を、また、第2最大厚みT2maxと第2最小厚みT2minとの間で下記式(2)を満たしている。なお、正電極板21の総厚みTtは、本実施形態1では平均70μmである。
(T1max−T1min)/Tt<0.1・・・式(1)
(T2max−T2min)/Tt<0.1・・・式(2)
さらに図4に、正電極板21の断面のうち、領域LAの一部の拡大図を示す。この図から判るように、第1正極活物質層23Aおよび第2正極活物質層23B内には、粒子状の正極活物質23xが多数存在している。また、アルミ箔22は、断面がほぼ直線帯状になっている。
【0041】
後述するように製造したことにより、アルミ箔XLの表面が腐食した比較形態の正電極板X(図11参照)と対比すると容易に理解できるように、本実施形態1の正電極板21は、第1正極活物質層23Aおよび第2正極活物質層23Bの厚みがほぼ一定になっている。換言すると、本実施形態の正電極板21は、アルミ箔22の各箔主面22a,22b上の各所において、正極活物質23xの量が一様になっている。
また、正電極板21のアルミ箔22は、その各箔主面22a,22bに腐食防止の酸化物層を有することなく、腐食もしていない。従って、第1箔主面22aおよび第2箔主面22bを介したアルミ箔22と、第1正極活物質層23Aあるいは第2正極活物質層23Bとの間での電気抵抗の発生(例えば、酸化物層の存在による抵抗増加)を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態1にかかる電池1は、上述の正電極板21を用いてなる。上述のように、正電極板21において正極活物質23xの局所的な偏りがないので、この電池1は、正極活物質23xを有効に利用でき、大きな電池容量を確保できるリチウムイオン二次電池とすることができる。
【0043】
次に、本実施形態1にかかる電池1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
図5に、この電池1における正電極板21の製造方法のうち、層形成工程を担う塗工装置100の概略図を示す。
この塗工装置100は、巻出し部101、ダイ110、乾燥炉120、巻取り部102、複数の補助ローラ140、および、正電圧線131と負電圧線132とを有する電源装置130を備えている。
【0044】
このうち、ダイ110は、活物質ペースト23Pを内部に保持してなる金属製のペースト保持部111と、このペースト保持部111に保持した活物質ペースト23Pをアルミ箔22の第1箔主面22aあるいは第2箔主面22bに向かって活物質ペースト23Pを連続的に吐出する吐出口112とを有する(図6参照)。
このうち、吐出口112はスリット状で、長手方向DAに移動するアルミ箔22の箔主面(第1箔主面22aあるいは第2箔主面22b)上に、帯状に活物質ペースト23Pを吐出するよう、アルミ箔22の幅方向(図6中、奥行き方向)に平行に開口している。
また、このペースト保持部111には、電源装置130の正電圧線131が電気的に接続してあり、次述するように、アルミ箔22に対し、ペースト保持部111に保持する活物質ペースト23P、およびこれに連なって吐出された乾燥前の活物質ペースト23Pを相対的に正電位にする。
【0045】
なお、ダイ110が保持する活物質ペースト23Pは、LiNiO2からなる正極活物質23xのほか、アセチレンブラック(AB、図示しない)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、図示しない)およびカルボキシルメチルセルロース(CMC、図示しない)をイオン交換水AQに分散させて混練してなる流動体である。また、この活物質ペースト23Pに含まれる、正極活物質23x、AB、PTFEおよびCMCの重量比は、前述の通り、正極活物質23x:AB:PTFE:CMC=100:10:3:1である。
【0046】
また、乾燥炉120では、アルミ箔22に塗布された活物質ペースト23Pに向けて、熱風を送る。これにより、アルミ箔22に塗布された活物質ペースト23Pは、この乾燥炉120内を移動している間に、徐々に乾燥が進み、乾燥炉120を通過時には、活物質ペースト23Pは全乾燥、すなわち、活物質ペースト23P内の水分(イオン交換水AQ)は全て蒸発し、プレスされていない未圧縮活物質層23Sとなる。
【0047】
また、帯状のアルミ箔22は、複数の補助ローラ140により、その長手方向DAに移動する。この補助ローラ140のうち、上述の乾燥炉120の下流に配置されている導通補助ローラ140Nは、円筒面140aが金属からなり、アルミ箔22と導通可能とされている(図5参照)。この導通補助ローラ140Nに、電源装置130の負電圧線132が電気的に接続してある。このため、上述の活物質ペースト23Pに対し、アルミ箔22が電圧VEだけ負電位となる。
【0048】
この塗工装置100では、まず、巻出し部101に捲回した帯状のアルミ箔22を長手方向DAに移動させ、そのアルミ箔22の第1箔主面22aに、ダイ110により活物質ペースト23Pを塗布する。その後は、乾燥炉120でアルミ箔22と共に活物質ペースト23Pを乾燥させて、アルミ箔22の第1箔主面22aに、未圧縮第1活物質層23SAを配置してなる片面配置積層体L1を、巻取り部102に一旦巻き取る。
【0049】
次に、この塗工装置100を再度用いて、捲回した片面配置積層体L1を巻出し部101に設置し、長手方向DAに移動させて、アルミ箔22の第2箔主面22bにも活物質ペースト23Pを塗布する。そして、この活物質ペースト23Pを乾燥炉120で全乾燥させて、第2箔主面22bに未圧縮第2活物質層23SBを配置する。かくして、アルミ箔22の両箔主面22a,22bに未圧縮活物質層23SA,23SBを積層配置した、プレス前の正電極板(プレス前正電極板)21Sが作製される。
【0050】
なお、上述の塗工装置100では、片面配置積層体L1およびプレス前正電極板21Sを作製する際に、電源装置130により、導通補助ローラ140Nとペースト保持部111との間に所定の電圧VE(VE=+3.0V)を印加している。
【0051】
一方、上述の塗工装置100によるプレス前正電極板21Sの比較例として、電源装置130によるペースト保持部111と導通補助ローラ140Nとの間に電圧を印加しない(VE=0V)点のみ異なるプレス前正電極板XSも作製した。
【0052】
このプレス前正電極板XSの積層方向DLに平行な断面の拡大図を図7に示す。
このプレス前正電極板XSでは、アルミ箔XLを挟む未圧縮第1活物質層XSAおよび未圧縮第2活物質層XSBには、それぞれ泡状の空隙ESが多数存在することが判る。この空隙ESは、活物質ペースト23Pに触れたアルミ箔XLが腐食したために、水素ガスが発生し、活物質ペースト23Pの内部に滞留した状態で、そのまま乾燥された痕跡であると考えられる。このように、プレス前正電極板XSでは、アルミ箔XLが腐食している上、空隙ESが点在することで、未圧縮活物質層XSA,XSBの密度は、局所的にばらついている。
【0053】
次に、本実施形態1にかかる製造方法で作製したプレス前正電極板21Sのうち、活物質ペースト23Pに対しアルミ箔22に−3.0Vを印加したものについて、積層方向DLに平行な断面の拡大図を、図8に示す。
このプレス前正電極板21Sでは、未圧縮第1活物質層23SAまたは未圧縮第2活物質層23SB中に、比較例のプレス前正電極板XSに見られたような空隙ESは存在しないことが判る。また、このプレス前正電極板21Sのアルミ箔22表面に腐食の様子は見られなかった。また、未圧縮活物質層23SA,23SBの密度は、アルミ箔22上の各所において、ほぼ均一である。
【0054】
図9では、本実施形態1のうち、印加電圧VE=3.0Vとした第1実施例の、および印加電圧VE=2.0V,1.0Vとした他の実施例(第2,第3実施例)のプレス前正電極板21Sと、上述の比較例(VE=0V)のプレス前正電極板XSについて、印加電圧VEと、未圧縮活物質層23SA,23SB,XSA,XSBの塗膜密度を、比較例の塗膜密度で規格化した(割った)規格化塗膜密度との関係を示す。図9のグラフから、電源装置130の印加電圧VEが高くなるほど、規格化塗膜密度が高くなることが判る。塗膜密度は、例えば、未圧縮活物質層中の空隙ESの量により変化する。この結果は、例えば、図6,7に示す、プレス前正電極板21S等の断面の様子とも合致する。プレス前正電極板21Sは、その未圧縮活物質層23SA,23SBに、他の比較例のプレス前正電極板XSよりも、空隙ESが存在しない(あるいは、少ない)ことが判る。つまり、プレス前正電極板21Sでは、アルミ箔22での水素ガスの発生が抑制される。
【0055】
なお、電源装置130の印加電圧VEが、VE=0,+1.0,+2.0,+3.0Vであるとは、活物質ペースト23Pの電位を基準(0V)としたときのアルミ箔22の電位が、0,−1.0,−2.0,−3.0Vであることを意味する。
この図9のグラフによれば、電圧VEを印加する(VE>0)、すなわち、アルミ箔22を活物質ペースト23Pに対し負電位とすることで、第1正極活物質層23SA等の密度を上げられることが判る。アルミ箔22における活物質ペースト23Pによる腐食を抑制し、腐食に伴って発生する水素量を抑制できるためと考えられる。
さらに、一般にアルミニウムは、接する液体のpHによって腐食されやすさが変化する。活物質ペースト23PのpHは13であるから、この大きさのpHにおけるアルミ箔22(アルミニウム)の腐食電位Vcが、−2.0V(vs.SHE)である。従って、活物質ペースト23Pに対するアルミ箔22の電位を、この腐食電位Vc(=−2.0V)よりも低い電位とすれば、すなわち、印加電圧VEを+2.0Vより大きく(VE>+2.0V)すれば、活物質ペースト23Pによるアルミ箔22の腐食の進行を十分に抑制して、塗膜密度を十分高くできると考えられる。
【0056】
次いで、図10に、この電池1における正電極板21の製造方法のうち、プレス装置200を用いたプレス切断工程を示す。
プレス装置200は、巻出し部201、プレスローラ210、巻取り部202、切断刃230および複数の補助ローラ220を備えている。そして、このプレス装置200では、巻出し部201から上述のプレス前正電極板21Sを、2つのプレスローラ210の間に通すことで、所定の総厚みTtにプレス成形された上述の正電極板21を得ることができる。その後、切断刃230で中央を切断して2つに分けた後、2つの巻取り部202で正電極板21を巻き取る。
【0057】
まず、図11に、正電極板21の比較例として、塗工装置100で電圧を印加せずに作製した、比較例にかかるプレス前正電極板XSを、プレス装置200で同様にプレスした正電極板Xの断面の拡大図を示す。この正電極板Xの積層方向DL中央のアルミ箔XLは、各所で大きく湾曲しているのが判る。これは、未圧縮活物質層XSA,XSBの密度が局所的にばらついているため(図7参照)、プレス前正電極板XSをプレスすると、プレスローラ210で圧縮される際、アルミ箔XLが2つの未圧縮活物質層XSA,XSBのうち、相対的に密度の低い側に押しつけられるためであると考えられる。従って、正電極板Xでは、正極活物質層XA,XBの厚みが局所的に大きくばらつくことになる。
【0058】
これに対し、第1実施例の正電極板21では、前述したように、アルミ箔22は、断面がほぼ直線帯状となっている。また、領域LAの範囲で、第1正極活物質層23Aの積層方向DLの最大厚みT1maxおよび最小厚みT1minが、式(1):(T1max−T1min)/Tt<0.1を満たしている(図3(b)参照)。また、第2正極活物質層23Bにおいても、積層方向DLの最大厚みT2maxおよび最小厚みT2minが、式(2):(T2max−T2min)/Tt<0.1を満たしている。
【0059】
上述のプレス切断工程の後は、作製した正電極板21を、別途用意した負電極板26と共にセパレータ29を介して捲回して発電要素20とする。さらに、この発電要素20に正極集電部材71および負極集電部材72を溶接し、電池ケース本体11に挿入し、電解液を注入後、封口蓋12で電池ケース本体11を溶接で封口する。かくして、電池1を製造する(図1,2参照)。
【0060】
本実施形態1の正電極板21の製造方法では、上述の通り、層形成工程とプレス工程とを備える。このうち層形成工程では、塗工装置100を用いて、アルミ箔22を活物質ペースト23Pに対して、相対的に負電位(本実施形態1では、例えば−3.0V,−2.0V,−1.0V)とした状態で活物質ペースト23Pの塗布、乾燥を行う。これにより、塗布した活物質ペースト23Pによりアルミ箔22が腐食して水素ガスが発生するのを抑制できるので、未圧縮第1正極活物質層23SAおよび未圧縮第2正極活物質層23SB内に空隙ESが混じることを防ぎ、これらにおける正極活物質23xの密度を一様にすることができる。このため、プレス装置200を用いたプレス工程により、アルミ箔22の各箔主面22a,22b上における正極活物質層23A,23Bの厚みをほぼ一定とし、正極活物質23xの量を一様とした正電極板21を製造することができる。
特に、本実施形態1の正電極板21の製造方法では、アルミ箔22は、活物質ペースト23Pに対し、このpH(=13)に応じたアルミ箔22の腐食電位Vc(=−2.0V)以下の電位(本実施形態1では、−3.0V)であるので、確実にアルミ箔22の腐食の進行を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態1の正電極板21の製造方法では、正電圧線131と電気的に接続してなるダイ120を用いて帯状アルミ箔22に向けて活物質ペースト23Pを連続的に吐出しているので、塗布前の活物質ペースト23Pに相対的に正電位の電圧を印加できる。これにより、この塗布前の活物質ペースト23Pを通じて、アルミ箔22上に塗布した後の活物質ペースト23Pにも電圧を印加できる。このため、例えば、塗布後の未乾燥の活物質ペースト23Pに、電圧を印加するための正電圧線131を接触させる必要がなく、容易に電圧を印加でき、しかも確実かつ均一な厚さに塗布することができる。
【0062】
(実施形態2)
図12に示す本実施形態2の組電池400は、前述した実施形態1で示した電池1を複数搭載したものである。この組電池400は、電池1を組電池ケース411内に収容してなる電池部410を有する。この電池部410では、複数の電池1が、これらの端子部71A,72Aの締結孔71H,72H(図1参照)を利用して、バスバ90とボルト締結されており、各電池1は互いに直列に接続されている。
【0063】
このように、本実施形態2にかかる組電池400は、電池1を複数備えるので、大きな電池容量を確保できる組電池400とすることができる。
【0064】
(実施形態3)
本実施形態3にかかる車両500は、前述した実施形態2の組電池400を搭載したものである。具体的には、図13に示すように、車両500は、エンジン540、フロントモータ520およびリアモータ530を併用して駆動するハイブリッド自動車である。この車両500は、車体590、エンジン540、これに取り付けられたフロントモータ520、リアモータ530、ケーブル550、インバータ560および組電池400を有している。
【0065】
本実施形態3にかかる車両500では、搭載している組電池400で用いている複数の電池が電池1である。このため、この組電池400は、前述の通り、大きな電池容量を確保できる。従って、電池出力や電池容量を十分に確保した車両500とすることができる。
【0066】
(実施形態4)
また、本実施形態4のノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートパソコンとも言う)600は、前述した実施形態1の電池1を一部に含むバッテリパック610を、公知の手法で搭載したものであり、図14に示すように、バッテリパック610、本体620を有する電池搭載機器である。バッテリパック610はノート型パーソナルコンピュータ600の本体620に収容されており、このバッテリパック610には上述の電池1が複数収容されている。
【0067】
本実施形態4にかかるノートパソコン600は、搭載しているバッテリパック610で用いている複数の電池が電池1である。このため、このバッテリパック610は、大きな電池容量を確保できる。従って、電池出力や電池容量を十分に確保したノートパソコン600とすることができる。
【0068】
以上において、本発明を実施形態1,2,3および4に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態1では、捲回型の発電要素を用いたリチウムイオン二次電池を示したが、複数の正電極板と複数の負電極板とを、セパレータを介して交互に積層してなる積層型の発電要素を用いた電池でも良い。
また、実施形態1では、電池の電池ケースを矩形形状の収容容器としたが、内部に発電要素を収容する形状、例えば、円筒形状でも良い。さらに、正極活物質23xにLiNiO2からなるとしたが、例えば、LiCoO2、LiMn24、LiFeO2、Li5FeO4、Li2MnO3、LiFePO4、LiV24、および、これらの混合物集電体としても良い。
【0069】
また、実施形態1では、活物質ペーストをアルミ箔の片面に塗布する形態の塗工装置100を示したが、例えば、アルミ箔の両面に同時に活物質ペーストを塗布する形態の塗工装置としても良い(図15参照)。なお、その際、2つのダイ110の金属製のペースト保持部111のそれぞれに電源装置130の正電圧線131bが電気的に接続すると良い。
【0070】
さらに、実施形態1では、ダイ110の金属製のペースト保持部111に電源装置130の正電圧線131を電気的に接続し、これを通じて活物質ペースト23Pに電圧を印加した。しかし、ペースト保持部111内に保持した活物質ペースト23Pを直接、正電圧線131cと接触させて、この活物質ペースト23Pに電圧を印加しても良い(図16参照)。
また、実施形態1では、領域LAを、正電極板21の断面のうち、その短手方向DBに沿う幅W=500μmの領域とした。しかし、積層方向DLに直交する任意方向に沿う断面について領域LAを考察すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態1にかかる電池の斜視図である。
【図2】実施形態1にかかる電池の断面図である。
【図3】実施形態1の正電極板の説明図であり、(a)は斜視図、(b)は拡大断面図(図3(a)のD部)である。
【図4】実施形態1の正電極板の拡大図(図3(a)のD部)である。
【図5】実施形態1の層形成工程の説明図である。
【図6】実施形態1の層形成工程の詳細説明図(図4のB部)である。
【図7】比較例のプレス前正電極板の拡大断面図である。
【図8】実施形態1のプレス前正電極板の拡大断面図である。
【図9】実施形態1、比較例のプレス前正電極板について、印加電圧と規格化塗膜密度との関係を示すグラフである。
【図10】実施形態1のプレス工程の説明図である。
【図11】比較例の正電極板の拡大断面図である。
【図12】実施形態2にかかる組電池の説明図である。
【図13】実施形態3にかかる車両の説明図である。
【図14】実施形態4にかかるノート型パーソナルコンピュータの説明図である。
【図15】層形成工程の説明図である。
【図16】層形成工程の詳細説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 電池
21 正電極板
22 アルミ箔(金属箔)
22a (アルミ箔の)第1箔主面(第1主面)
22b (アルミ箔の)第2箔主面(第2主面)
23P 活物質ペースト(スラリー)
23SA 未圧縮第1活物質層(未圧縮第1正極活物質層)
23SB 未圧縮第2活物質層(未圧縮第2正極活物質層)
23x 正極活物質
110 ダイ(保持容器)
112 吐出口
400 組電池
500 車両
600 ノート型パーソナルコンピュータ
610 バッテリパック(組電池)
AQ イオン交換水(水)
DA 長手方向
DB 短手方向
DL 積層方向
T1max (第1正極活物質層の)最大厚み
T1min (第1正極活物質層の)最小厚み
T2max (第2正極活物質層の)最大厚み
T2min (第2正極活物質層の)最小厚み
Tt (正電極板の)総厚み
Vc 腐食電位
VE 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および上記第1主面の裏面をなす第2主面を有し、アルミニウムを主とする金属箔と、
上記第1主面上に積層配置され、リチウムを含む正極活物質および水を有するスラリーを乾燥してなる第1正極活物質層と、
上記第2主面上に積層配置され、上記スラリーを乾燥してなる第2正極活物質層と、を備え、
上記金属箔、上記第1正極活物質層、および上記第2正極活物質層が、積層方向に圧縮されて、所定の総厚みTtに成形されてなる
正電極板であって、
上記金属箔は、
上記第1主面および第2主面が、酸化物層を有することなく、かつ、腐食されていない状態とされてなり、
上記積層方向に切断した任意の断面のうち、上記積層方向に直交する方向の長さ500μmの範囲において、
上記第1正極活物質層の最大厚みをT1max、最小厚みをT1minとし、
上記第2正極活物質層の最大厚みをT2max、最小厚みをT2minとしたとき、
次式(1)、(2)を満たす形態を有する
正電極板。
式(1): (T1max−T1min)/Tt<0.1
式(2): (T2max−T2min)/Tt<0.1
【請求項2】
請求項1に記載の正電極板を用いてなるリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池を複数備えた組電池。
【請求項4】
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池、または、請求項3に記載の組電池を搭載した車両。
【請求項5】
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池、または、請求項3に記載の組電池を搭載した電池搭載機器。
【請求項6】
第1主面および上記第1主面の裏面をなす第2主面を有し、アルミニウムを主とする金属箔と、
上記第1主面上に積層配置され、リチウムを含む正極活物質を有する第1正極活物質層と、
上記第2主面上に積層配置され、上記正極活物質を有する第2正極活物質層と、を備え、
上記金属箔、上記第1正極活物質層、および上記第2正極活物質層が積層方向に圧縮されて、所定の総厚みに形成されてなる
正電極板の製造方法であって、
上記金属箔の上記第1主面に、上記正極活物質および水を有するスラリーを塗布し、これを乾燥させた後に、上記金属箔の上記第2主面に上記スラリーを塗布し、これを乾燥させて、または、
上記金属箔の上記第1主面および第2主面に、上記スラリーを塗布し、これを乾燥させて、
上記金属箔に未圧縮第1正極活物質層および未圧縮第2正極活物質層を形成する層形成工程と、
上記未圧縮第1正極活物質層、上記金属箔、および上記未圧縮第2正極活物質層を、上記積層方向に圧縮して、上記所定の総厚みに成形するプレス工程と、を備え、
上記層形成工程は、
上記スラリーに対し、上記金属箔を相対的に負電位とした状態で、上記スラリーの塗布および乾燥を行う
正電極板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の正電極板の製造方法であって、
前記金属箔は、
前記スラリーに対し、上記スラリーの水素イオン指数(pH)に応じた、上記金属箔をなす金属の腐食電位Vc以下の電位としてなる
正電極板の製造方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の正電極板の製造方法であって、
前記金属箔は、帯状の帯状金属箔であり、
前記層形成工程は、
上記帯状金属箔をその長手方向に移動させつつ、保持容器内に保持した塗布前の前記スラリーを、上記保持容器の吐出口から上記帯状金属箔に向けて連続的に吐出して、上記帯状金属箔の前記第1主面および第2主面の少なくともいずれかに対し、上記スラリーを帯状に塗布し、塗布された上記スラリーを連続的に乾燥させる連続層形成工程を含み、
上記連続層形成工程では、
上記塗布前のスラリーに、直接または上記保持容器を通じて、上記帯状金属箔に対して相対的に正電位の電圧を印加する
正電極板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−158342(P2009−158342A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336301(P2007−336301)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】