説明

歩行型耕耘機

【課題】歩行型耕耘機に関し、護葉カバーを備えて、茶園や果樹園等で樹木を列状に栽培している圃場におけるロータリ耕耘作業中のエンジンのオーバーヒートを防止しようとする。
【解決手段】ロータリ耕耘装置(18、58)を備える機体の前上方にエンジン(3、61)を搭載し該エンジンの近傍には排気マフラ(56、62)を設置し、この機体の後方上方に向けて操縦用ハンドル(11、67)を設け、更に該機体の前面及び左右側面を囲う護葉カバー(40、80)を設けた歩行型耕耘機において、上記護葉カバー(40、80)を該前面から側面に亘る部分を平面視において傾斜面(40b、80b)に形成し、この傾斜面(40b、80b)に多数の排気ガスの抜き孔(55、88)を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行型耕耘機に関し、例えば、茶園や果樹園等で樹木を列状に栽培している圃場においてロータリ耕耘作業を容易に行わせようとする。
【背景技術】
【0002】
前記茶葉を傷めないために耕耘管理機のエンジン部から耕耘部に亘り側面の大部分を覆うように護葉カバーを装着している(特許文献1)。
この例では、歩行型耕耘機は左右側面が凹凸状になっているので、栽培作物間を走行時に作物を傷めないように、護葉カバーで機体の前方から左右両側方を覆うよう、該護葉カバーは、平面視略「コ」字状としており、歩行型耕耘機の適所に設けた取付部に取り付けて、機体表面の凹凸をなくしている。
【特許文献1】特開2000−201501号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記の構成では、護葉カバーによってエンジンの熱気あるいは排気ガスの茶葉への接触を未然に防止し、茶葉が損傷しない構成となっているものの、特に排気ガスの抜き孔について配慮がなく、排気ガスはカバー内部に籠もってしまう場合もありオーバーヒートの原因となっていた。また、従来の護葉カバーの場合は、四角形状の隅部で茶葉や枝に接触してこれを損傷するものとなっていた。
【0004】
この発明は護葉カバーによる護葉効果を良好となし、かつエンジン排気ガスの良好な排出構成の提供を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このためこの発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち、ロータリ耕耘装置(18、58)を備える機体の前上方にエンジン(3、61)を搭載し該エンジンの近傍には排気マフラ(56、62)を設置し、この機体の後方上方に向けて操縦用ハンドル(11、67)を設け、更に該機体の前面及び左右側面を囲う護葉カバー(40、80)を設けた歩行型耕耘機において、上記護葉カバー(40、80)を該前面から側面に亘る部分を平面視において傾斜面(40b、80b)に形成し、この傾斜面(40b、80b)に多数の排気ガスの抜き孔(55、88)を形成してなる歩行型耕耘機の構成とする。
【0006】
このように構成すると、茶園や果樹園等で樹木を列状に栽培している圃場にて該列条間に沿って機体を進行させながら耕耘作業を行うことにより堆積した茶葉を土壌中に埋めることができる。そしてこの
作業を行うときには護葉カバー(40)によって茶葉に直接機体が接触することがないために、枝を折ったり茶葉をふるい落とすなどの不測の事態を引き起こさない。特に護葉カバー(40)は前面から側面にわたる間を傾斜面(40a)として舟型状に形成されるから円滑に茶葉を左右に押し開くことができる。
【0007】
またこの傾斜面(40a)に排気ガスの抜き孔(55)を形成するものであるから、茶葉類が継続的にこの傾斜面(40a)に接触する事が少ないために、排気ガスは良好にカバー(40)内部から外方へ導かれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、護葉カバー(40)は前面から側面にわたる間を傾斜面(40a)として舟型状に形成されるから円滑に茶葉を左右に押し開くことができ、この押し開きによる損傷が少なくできる。
【0009】
またこの傾斜面(40a)に排気ガスの抜き孔(55)を形成するものであるから、排気ガスは良好にカバー(40)内部から外方へ抜かれることになり排気が籠もることによるオーバーヒートを引き起こさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一実施例を図面に基づき説明する。
歩行型耕耘機1は、機体の前後方向中間部に略上下に車軸伝動ケ−ス4を設け、該伝動ケ−ス4の下部に前方に向かって突出するフレ−ム2の後端部を取り付けている。このフレ−ム2の上面は取付座面となっており、エンジン3を前後方向調節自在に搭載している。エンジン3の左側方にはクランク軸に接続する駆動軸主軸6を突出し、伝動ベルトを介して車軸伝動ケース4の入力軸7を伝動する。車軸伝動ケース4の下部には左右に突出して車軸8を支架し、車輪9,9を装着してなる。
【0011】
車軸伝動ケ−ス4の上端部にはハンドルフレ−ム10が設けられ、該ハンドルフレ−ム10から後方斜め上方に向かってハンドル11,11を突出している。
上記ハンドルフレーム10は、車軸伝動ケース4の上端部にこのケース4を被せられ左右側からボルト12によって固定される構成である。
【0012】
次に、前記車軸伝動ケース4や、下部に位置するロータリ耕耘装置の伝動ケース等について説明する。車軸伝動ケ−ス4は、鉄系材やアルミ系の合金材等の材質であって、鋳物やダイキャスト等の加工法で製作されている。そして、内部には図示しない複数の伝動歯車から成る変速部を内装しており、変速レバー16を操作して必要な変速比の回転を車軸伝動ケ−ス4下端の車軸8に伝え、車輪8,8を駆動回転する。
【0013】
前記車軸伝動ケ−ス4後部には、ヒッチ17が設けられ該ヒッチ17の突出後端部にセンタードライブ式としたロ−タリ耕耘装置18の耕耘伝動ケ−ス19が装着されている。耕耘伝動ケース19の上部と車軸伝動ケース4の上部間には車軸伝動ケース4から耕耘伝動ケース19に動力を伝達するためのカウンターケース20が取り付けられ、両者は伝動可能に構成されている。
【0014】
耕耘伝動ケ−ス19は板金製であって、鉄板を絞り加工した左右の半ケースを左右対向して合わせ、ケースを構成し、ケースの内部の空間上部には回転数を高速または低速に変速する高低変速部21を内装しており、その回転を、上部軸22に対し回転自在に取り付けている上スプロケット23に伝える。
【0015】
耕耘伝動ケース19下部には駆動軸25をベアリング26を介して軸承し、該駆動軸2の左右方向中央部には下スプロケット27が一体的に取り付けられており、前記上スプロケット23の駆動回転力をチェーン28を介して駆動伝動している。
【0016】
左右各駆動軸25L,25Rには、耕耘パイプ30,30を延長状態に接続する構成である。耕耘パイプ30,30は、その外側に同芯状に草巻付き防止筒体31をスペーサ32を介して取付けると共に、その外周には耕耘回転刃33,33…を取り付ける。一方の刃をナタ刃33aとし他方の刃を直刃33bとする。
【0017】
ナタ刃33aも直刃33bも、側面視の形状は図1のように略同じであるが、背面視の形状は異なる。即ち、図1で矢印(イ)方向に回転するナタ刃33aは、側面視で後退角のついた先端刃部が駆動ケース15方向に曲がり込んだ通常の泥土掘削用の耕耘爪であり、曲がり込んだ先端刃部によって泥土を幅広く掘削する。直刃33bは単に側面視で後退角のついたナイフ様の刃であって、背面視では直線状である。この直刃33bは、圃場表面に散乱放置した剪定樹木を細かく細断しようとするものである。
【0018】
次いで、護葉カバー40について説明する。護葉カバー40は、機体前方から側方にわたる箇所を包囲して樹木の枝葉類が損傷しないように設けるもので、平面形状は舟型を呈するよう前面壁部40aは幅狭く側方にかけて平面視で傾斜面40bを形成し、側方の機体平行側面部40cに至る形状となっている。
【0019】
そして護葉カバー40の前面壁部40aの上下中間部下方は切欠き状態となすと共に、その上部側の壁面にエンジン本体の前面部に一端を装着した支持具41の前端にプレート41aを設け適宜ボルト42、ナット43によって着脱自在に取り付ける。
【0020】
一方護葉カバー40の後端側はハンドルフレーム10近傍まで延長されていて、このハンドルフレーム10を利用して固定するもので、該ハンドルフレーム10を車軸伝動ケース4に固定する前記ボルト12、及びナット44をもって該車軸伝動ケース4に共締めされるカバー装着枠46を取り付けている。このカバー装着枠46は、左右対称形状で、共締めされるステー47と、該ステー47の外端に溶接固定されカバー40をボルト48、ナット49によって固定する接合板50と、該接合板50に溶接固定され護葉カバー40の後端を受け止め支持する後端板51とからなる。また、他にもう1ケ所左右の接合板50を連結する構成の連結ステー53が設けられている。
【0021】
前記護葉カバー40の傾斜面40bの全面および機体平行側面部40cの前方寄り箇所には、エンジン3の排気ガスの抜き孔55,55…を所定の径をもって開口し形成している。この抜き穴55,55…は作物列の葉茎が作用しない大きさに形成されるもので、茶園用では直径約10mm前後としている。なお、図例では機体平行側面部40cの抜き孔55,55…はその前半分に形成している。
【0022】
符号56はマフラで、テールパイプは機体左斜前方に開放するように配置され、その開放端は護葉カバー40の左側傾斜面に対向した状態となっている。
上記のように構成された耕耘機1で茶園の管理を行うが、エンジン3を始動し車軸8及び耕耘パイプ30,30に動力を伝えながら機体前進させると、耕耘パイプ30L,30Rの回転にともない耕耘刃33が土中に作用し表土を耕耘する。ここで、樹木列間に剪定された茶木の枝や茶葉が散乱している時、耕耘走行に伴い直刃33bで地表面の枝や葉を細断しながら、ナタ刃33aにより掘削する耕耘泥土中に両回転刃33で協同して、撹拌埋め込みを行なうから、土壌中の水分や細菌により枝葉の腐食を促進する。
【0023】
また上記耕耘作業中、枝の成長具合や剪定の都合等によって機体の進行圏内に枝葉が伸びだすが、このようなときには護葉カバー40でもって押し開きながら機体の進行方向空間を確保するもので、枝葉を損傷することなく、継続的に作業を行うことができる。とくに上記の実施例では、護葉カバーが舟型に形成されているから、枝葉との衝突によって折れたり損傷を与えることが少ない。また、護葉カバー40内ではエンジン3が起動状態であって、その排気が継続的に排出されるが、護葉カバー40に形成した抜き孔55,55…を通過して護葉カバー40外に排出される。特に護葉カバー40の傾斜面40bに抜き孔55,55…を形成するために、枝葉との接触で孔55が塞がれたりすることがなく、排気の籠もりをなくし、オーバーヒートの恐れが少ない。
【0024】
図6は別実施例を示すものである。
耕耘機59機体のフレーム60上にエンジン61を搭載する。62はマフラである。該エンジン61の出力軸から入力軸を経て伝動ケース63に動力を伝える構成であるが、該伝動ケース63の下端側には左右に耕耘軸64L,64Rを突出して設け、該耕耘軸64L,64Rに耕耘刃65を前記実施例のようにナタ刃65aと直刃65bとを対抗配置させて設けて、一軸型ロータリ耕耘装置58を構成している。この伝動ケース63の後方上部にはハンドルフレーム66を装着し、斜め後方上方に向けてハンドル67を設けている。
【0025】
ハンドルフレーム66の後面には垂直状アーム68を装着してピン止め固定する円筒ヒッチ69を設けている。この円筒ヒッチ69には、逆L型に形成した双尾輪装着枠70を固定している。この双尾輪装着枠70にブラケット71を固定し、このブラケット71には横軸72支点回りに回動可能となるよう双尾輪73の取付ステー74を設けていて、双尾輪73の上下高さを図例では3段階に位置調整できる構成としている。最下段の位置(イ)は機体移動用、最上段の位置(ロ)は跳ね上げ状態での作業用、中断固定の位置(ハ)は、耕耘作業の所定深さ以上への深耕を未然に防止するものであり、3位置は適宜に使い分けることによって、作業性・操作性を向上できることとなる。
【0026】
前記L型の双尾輪装着枠70の後端には斜め下後方に向けて延出する支持体75を備え、該支持体75の先部には外周に凸状を形成した尾輪76を取付軸77回りに遊転自在の構成としている。該尾輪76は、所謂抵抗棒の代替用として改良されたもので、周縁の凸状にて適度に土中に食い込みながら一軸型耕耘機の後部にあって走行抵抗を付与できる。特に茶園などのように、剪定枝や葉が堆積している土壌を耕耘するときは、従来の抵抗棒形態では草や枝が抵抗棒に引っかかり前進の抵抗となっている。
【0027】
これに対し、上記尾輪76の採用によって次の利点がある。上記のように遊転自在で外周に凸状を形成するから適度に潜り込んで抵抗を付与しつつ自転作用によって草枝の引っかかりを防ぎ、仮にこれらが引っかかってもその回転ですり抜け易いものである。円盤型であるために、ハンドルの押し加減に余り影響を受けず、円滑な抵抗が掛かるので作業性を向上する。
【0028】
なお、上記実施例では、円盤形状の外周に適当数の凸状を形成したが、図10に示すように、直状の刃体77,77の複数を組み合わせて円盤状に形成してもよい。このときは分割体の一部破損によってもその一部交換によるから全体コストを低廉にする。
【0029】
上記図6〜8の実施例における護葉カバー80およびその装着構成について説明する。護葉カバー80は、第1の実施例と同様に舟型を呈し、前側の幅狭壁面80aから傾斜面80bを経て機体の前後に平行な機体平行側面80cに形成される。後端はハンドルフレーム66の基部あたりまで延長される。
【0030】
そして、護葉カバー80の前側はバンパ81から斜めに延出させた取付けステー82の先端に接合部83を設けてボルト84・ナット85で固定し、後端側は、前記ハンドルフレーム66にボルト・ナット89,90で共締めしたステー86の先端に接合板87を溶接固定し、この接合板にボルトナットで着脱自在に固定する。
【0031】
上記護葉カバー80の傾斜面80b及び機体平行側面部80cの前側半部には所定大きさの抜き孔88,88を形成している。
したがって、この実施例においても、前記の実施例同様にエンジン61の排気ガスが作業中に護葉カバー80の内部に籠もってエンジン61のオーバヒートを惹起させるようなこともなく、また枝葉類を引っ掛けて折ったり損傷させたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】歩行型耕耘機の全体側面図
【図2】護葉カバーを装着した歩行型耕耘機の全体側面図
【図3】護葉カバーを装着した歩行型耕耘機の全体平面図
【図4】耕耘部の背断面図
【図5】護葉カバー取り付け構成を示す背面図
【図6】別例の歩行型耕耘機の全体側面図
【図7】護葉カバーを装着した歩行型耕耘機の全体側面図
【図8】護葉カバーを装着した歩行型耕耘機の全体平面図
【図9】尾輪取付例を示す拡大側面図
【図10】尾輪取付別例を示す拡大側面図
【符号の説明】
【0033】
3、61 エンジン
11、67 ハンドル
18、58 ロータリ耕耘装置
40、80 護葉カバー
40b、80b 傾斜面
55、88 抜き孔
56、62 マフラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ耕耘装置(18、58)を備える機体の前上方にエンジン(3、61)を搭載し該エンジンの近傍には排気マフラ(56、62)を設置し、この機体の後方上方に向けて操縦用ハンドル(11、67)を設け、更に該機体の前面及び左右側面を囲う護葉カバー(40、80)を設けた歩行型耕耘機において、上記護葉カバー(40、80)を該前面から側面に亘る部分を平面視において傾斜面(40b、80b)に形成し、この傾斜面(40b、80b)に多数の排気ガスの抜き孔(55、88)を形成してなる歩行型耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−97442(P2007−97442A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288997(P2005−288997)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】