説明

歪検出装置

【課題】取り付け部品が少なく、作業効率や使い勝手の良い歪検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】起歪体2を挟むように軸方向に配置したネジ部10と、起歪体2の周面に配置し対向させた第1、第2出力電極5a、5bと、第1、第2出力電極5a、5bと対向させた電源電極7およびグランド電極9と、電源電極7と第1、第2出力電極5a、5bとを各々接続した第1、第2抵抗素子と、グランド電極7と第1、第2出力電極5a、5bとを各々接続した第3、第4抵抗素子とを備え、第1〜第4抵抗素子は、電源電極7とグランド電極9との対向部11を除いて、第1出力電極5aと第2出力電極5bとの対向間、第1、第2出力電極5a、5b、電源電極7、グランド電極9に歪抵抗体を被覆して形成した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート等の荷重を測定するための歪検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の歪検出装置について説明する。
【0003】
従来の歪検出装置は、図7において、複数の貫通孔31を有する板状の金属製の起歪体32と、この起歪体32の貫通孔31の間に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子33と、この抵抗素子33に結線された信号処理回路(図示せず)とを備えている。
【0004】
この歪検出装置を、例えば、車両用シートと床面部との間に取り付ければ、車両用シートに座る人員の荷重を測定することができる。起歪体32に設けた複数の貫通孔31の内、内側の貫通孔31に車両用シートの一部を挿入して起歪体32と車両用シートとを連結し、外側の貫通孔31に床面部の一部を挿入して起歪体32と床面部とを連結して取り付ける(例えば、車両用シートの一部や床面部の一部をネジ部とし、起歪体32を介してナットで締めて取り付ける)。そうすると、車両用シートに荷重が加わった際、起歪体32が歪んで抵抗素子33の抵抗値が変化するので、これを信号処理回路で処理することによって荷重を測定することができる。この場合、起歪体32は車両用シートと床面部との両方に連結されているので、圧縮方向に対する荷重と引張方向に対する荷重を測定することができる。信号処理回路には、4つの抵抗素子33を環状に接続してホーイストンブリッジ回路を形成し、信号処理回路に入力している。
【0005】
このような起歪体32の形状としては板形状の他に円筒形状のものもあるが、共に、複数の取り付け部品を組み合わせて歪検出装置を取り付けているものである。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1や特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開2003−240633号公報
【特許文献2】特開平6−207865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の歪検出装置では、歪検出装置の取り付けにおいて、複数の取り付け部品が必要となり、組み立ての作業効率や使い勝手が悪いという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するもので、取り付け部品が少なく、作業効率や使い勝手の良い歪検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、荷重により歪を生じる柱状の起歪体と、前記起歪体を挟むように前記起歪体の軸方向に配置したネジ部と、前記起歪体の周面に配置するとともに互いに対向させた第1出力電極および第2出力電極と、前記起歪体の周面に配置するとともに前記第1、第2出力電極と互いに対向させた電源電極およびグランド電極と、前記電源電極と前記第1、第2出力電極とを各々接続した第1、第2抵抗素子と、前記グランド電極と前記第1、第2出力電極とを各々接続した第3、第4抵抗素子とを備え、前記第1〜第4抵抗素子は、前記電源電極と前記グランド電極との対向部を除いて、前記第1出力電極と前記第2出力電極との対向間、前記第1、第2出力電極、前記電源電極、前記グランド電極に歪抵抗体を被覆して形成した構成である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、起歪体を挟むように起歪体の軸方向にネジ部を配置しているので、このネジ部を介して、例えば、シートおよび床面部とを連結すれば簡単に取り付けが可能となり、作業効率や使い勝手を向上することができる。
【0011】
特に、第1〜第4歪抵抗素子は、電源電極とグランド電極との対向部を除いて、第1出力電極と第2出力電極との対向間、第1、第2出力電極、電源電極、グランド電極に歪抵抗体を被覆して形成しているので、すべての電極を歪抵抗体によって被覆しているので水分等に起因した電極腐食を抑制することができる。この際、電源電極とグランド電極との対向部を除いて、第1出力電極と第2出力電極との対向間に歪抵抗体を被覆しているので、電源電極とグランド電極との間に歪抵抗成分が付加されることがなく、特性劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の全請求項に記載の発明について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態における歪検出装置の斜視図、図2は同歪検出装置の起歪体周面の展開図、図3は同歪検出装置の断面図、図4は同歪検出装置を介して車両用シートと床面部とを連結したシートユニットの側面図、図5は図4のA部の拡大図、図6は図4のA部の正面断面図である。
【0014】
図1〜図3において、本発明の一実施の形態における歪検出装置は、荷重により歪を生じる柱状の起歪体2と、この起歪体2の外周面に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dと、この第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dに結線され起歪体2の歪量を検出する信号処理回路(図示せず)とを備えている。この起歪体2は軸方向に空洞8を有する円筒状であって、起歪体2を挟むように起歪体2の軸方向にネジ部10を配置するとともに、起歪体2とネジ部10とを互いに溶接して接合し一体化している。
【0015】
また、図2に示すように、起歪体2の周面に配置するとともに互いに対向させた第1出力電極5aおよび第2出力電極5bと、起歪体2の周面に配置するとともに第1、第2出力電極5a、5bと互いに対向させた電源電極7およびグランド電極9とを有し、各々パッド電極6に接続されている。この第1、第2出力電極5a、5bおよび電源電極7およびグランド電極9は銀を焼き付けて形成した線状のAg電極であって、各々の電極の対向方向を起歪体2の軸方向としている。電源電極7とグランド電極9とは略同一直線上に配置し、第1、第2出力電極5a、5bおよび電源電極7とを略平行に配置するとともに、第1、第2出力電極5a、5bおよび電源電極7とを略平行に配置している。
【0016】
さらに、第1、第2抵抗素子4a、4bはグランド電極9と第1、第2出力電極5a、5bとを各々接続して形成し、第3、第4抵抗素子4c、4dは電源電極7と第1、第2出力電極5a、5bとを各々接続して形成している。この第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dは、電源電極7とグランド電極9との対向部11を除いて、第1出力電極5aと第2出力電極5bとの対向間17、第1、第2出力電極5a、5b、電源電極7、グランド電極9に歪抵抗体を被覆して形成している。
【0017】
この歪検出装置は、電源電極7に接続されたパッド電極6(VCC)とグランド電極9に接続されたパッド電極6(GND)との間に所定の電圧を印加することによって、第1出力電極5aに接続されたパッド電極6(V+)と第2出力電極5bに接続されたパッド電極6(V−)とから信号を出力するものである。
【0018】
この歪検出装置を、例えば、図4〜図6に示すように、車両用シート12と床面部14との間に取り付ければ、車両用シート12に座る人員の荷重を測定することができる。車両用シート12にはその下部に取付部材として取付部13を設け、この取付部13にはネジ部10を挿入する貫通孔を設けている。床面部14には床面18に取付部材として支持部22を設け、この支持部22に上記ネジ部10を挿入する貫通孔を設けている。これら取付部13と支持部22の各々の貫通孔の軸方向は床面18に対して水平方向になるようにしている。
【0019】
そして、一方のネジ部10を車両用シート12の取付部13の貫通孔へ挿入し、他方のネジ部10を支持部22の貫通孔へ挿入し、互いに締付部材であるナット20で締め付けて、起歪体2およびネジ部10を介して車両用シート12と床面部14とを連結している。
【0020】
上記の歪検出装置には、車両用シート12に荷重が加わった際、荷重方向が起歪体2の軸方向に対して直交方向(床面18に対する上下方向)になるようにネジ部10に荷重が付加される。この際、一方の取付部13と起歪体2との間に弾性部材15を配置して締付固定しているので、曲げモーメントが起歪体2に生じて的確に歪を検知させることができる。単に、荷重方向が起歪体2の軸方向に対して垂直な方向になるようにネジ部10に荷重が付加された場合は、起歪体2のせん断力または曲げモーメントに起因して起歪体2が歪むが、上記構成により、歪量の大きい曲げモーメントに伴う歪量を検知できる。
【0021】
特に、仕様に応じて単に起歪体2の直径の大小を選択するだけで、車両用シート12と床面部14との間の高さを低く抑制することもでき、車種によって異なる車両用シート12の座面の高さをあらかじめ低く設定しておける。すなわち、座面に座る人員の目線の高さを調節し易くなるものである。
【0022】
上記構成により、起歪体2を挟むようにネジ部10を形成しているので、このネジ部10を介して、例えば、車両用シート12と床面部14とを連結する際に、取り付け部品が少なく簡単に取り付けが可能となり、作業効率や使い勝手を向上することができる。
【0023】
特に、第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dは、電源電極7とグランド電極9との対向部11を除いて、第1出力電極5aと第2出力電極5bとの対向間17、第1、第2出力電極5a、5b、電源電極7、グランド電極9に歪抵抗体を被覆して形成しており、すべての電極が歪抵抗体によって被覆されるので水分等に起因した電極腐食を抑制することができる。
【0024】
通常、第1、第2出力電極5a、5b、電源電極7、グランド電極9、第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4d上には保護用のガラス層を設けるが、ガラス層にはポーラス等が生じるため、歪抵抗体である第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dに被覆されていない電極が存在すると、水分が浸透して電極腐食(マイグレーション等)の要因となるが、上記構成によれば、電極(第1、第2出力電極5a、5b、電源電極7、グランド電極9)のすべてが歪抵抗体である第1〜第4抵抗素子4a、4b、4c、4dに被覆されるので、電極腐食を抑制されるものである。
【0025】
この際、電源電極7とグランド電極9との対向部11を除いて、第1出力電極5aと第2出力電極5bとの対向間17に歪抵抗体を被覆しているので、電源電極7とグランド電極9との間に歪抵抗成分が付加されることがなく、特性劣化も抑制できる。
【0026】
さらに、起歪体2とネジ部10とは互いに一体化しているので、車両用シート12に荷重が加わった際も起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制できる。体重検知時の数十kgから車両衝突検知時の1トン程度までは検出能力を損なわずに起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制でき、また、車両破壊に至るような数トン程度の荷重に対しても起歪体2とネジ部10との境界部における破断を抑制できるものである。
【0027】
起歪体2とネジ部10とは溶接して接合し一体化したり、同一材料からなる部材を加工したりしてもよい。起歪体2およびネジ部10の材料としては析出硬化系ステンレス鋼が挙げられ、起歪体2とネジ部10とを同種材料とする場合は、SUS630等が挙げられる。その他、延性および靭性に富むとともに溶接性も優れたオーステナイト系の加工硬化特性を有するSUS301、耐食性および溶接性の良好なフェライト系のSUS430等も挙げられる。これらSUS630、SUS301、SUS430は日本工業規格(JIS)で定められたステンレス規格である。
【0028】
なお、本発明の一実施の形態における歪抵抗体はメタルグレーズ系からなる抵抗体ペーストを焼成して形成したものであって、単なる樹脂系の絶縁層ではないので、保護層として樹脂系を用いた場合にも水分の浸透を除去できるものである。特に、保護層としてガラスを用いた場合はガラスの焼成温度が850度なので、起歪体2の材料としては、変態点が720度以下であるオーステナイト系、マルテンサイト系を用いることができず、高温耐久性のあるフェライト系に限られ設計自由度が拘束されるが、上記構成を採用することにより設計自由度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように本発明にかかる歪検出装置は、取り付け部品が少なく取り付けが簡単で、作業効率や使い勝手が良く、荷重を測定するセンサとして各種の機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態における歪検出装置の斜視図
【図2】同歪検出装置の起歪体の周面の展開図
【図3】同歪検出装置の断面図
【図4】同歪検出装置を介して車両用シートと床面部とを連結したシートユニットの側面図
【図5】図4のA部の拡大図
【図6】図4のA部の正面断面図
【図7】従来の歪検出装置の上面図
【符号の説明】
【0031】
2 起歪体
4a 第1抵抗素子
4b 第2抵抗素子
4c 第3抵抗素子
4d 第4抵抗素子
5a 第1出力電極
5b 第2出力電極
6 パッド電極
7 電源電極
8 空洞
9 グランド電極
10 ネジ部
11 対向部
12 車両用シート
13 取付部
14 床面部
15 弾性部材
16 レール部
18 床面
20 ナット
22 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重により歪を生じる柱状の起歪体と、前記起歪体を挟むように前記起歪体の軸方向に配置したネジ部と、前記起歪体の周面に配置するとともに互いに対向させた第1出力電極および第2出力電極と、前記起歪体の周面に配置するとともに前記第1、第2出力電極と互いに対向させた電源電極およびグランド電極と、前記電源電極と前記第1、第2出力電極とを各々接続した第1、第2抵抗素子と、前記グランド電極と前記第1、第2出力電極とを各々接続した第3、第4抵抗素子とを備え、前記第1〜第4抵抗素子は、前記電源電極と前記グランド電極との対向部を除いて、前記第1出力電極と前記第2出力電極との対向間、前記第1、第2出力電極、前記電源電極、前記グランド電極に歪抵抗体を被覆して形成した歪検出装置。
【請求項2】
前記第1、第2出力電極および前記電源電極および前記グランド電極は線状であって、前記電源電極と前記グランド電極とを略同一直線上に配置し、前記第1、第2出力電極および前記電源電極とを互いに略平行に配置するとともに、前記第1、第2出力電極および前記グランド電極とを互いに略平行に配置した請求項1記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記第1、第2出力電極と前記電源電極および前記グランド電極との対向方向は前記起歪体の軸方向とした請求項1記載の歪検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−271303(P2007−271303A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94002(P2006−94002)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】