説明

歯のホワイトニング剤および歯をホワイトニングする方法

【課題】 十分な安全性および使いやすさを具備する、歯のホワイトニング剤を提供すること。
【解決手段】 オゾン溶存グリセリン溶液を含み、グリセリンに対するオゾンの濃度が400ppm以上である、歯のホワイトニング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯のホワイトニング剤および当該ホワイトニング剤を用いた歯をホワイトニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外観の印象を向上せしめるために、歯を白くすること、すなわち歯のホワイトニングに対する需要が増大している。
【0003】
歯を白くする方法は、漂白剤を用いた漂白法が中心であり、漂白に用いられる漂白剤としては、主として過酸化水素や過酸化尿素等の過酸化物が用いられている。かかる方法および漂白剤として、例えば、過酸化水素水とオルトリン酸とを混合した漂白剤および漂白方法等が報告されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、過酸化水素や過酸化尿素には刺激性があるため、とくに、35%程度といった高濃度の過酸化水素を用いる場合には、漂白中の痛みや組織の保護による刺激の回避が問題であった。
【0005】
そのため、低濃度の過酸化水素を用いる方法として、光触媒作用を有する酸化チタンを3%以下といった低濃度過酸化水素水と併用する方法や(特許文献2)、さらに吸水性シートを用いた方法が報告されている(特許文献3)。しかしながら、これらの低濃度の場合でも、安全を確保するために施術部位以外に剤が接触しないようにすることが必要であることは従前の剤と変わらない。
一方、オゾンガスは漂白作用を有することが既に知られていて、その漂白作用を用いて排水処理など産業用途に用いられている。しかしながら、オゾンガスは歯をホワイトニングする効果がないばかりでなく、呼吸器に毒性を示し、しかも半減期が30分程度と非常に短く、有機物が多く分解されやすい口腔内では効果を示すことが一層困難であるため、歯のホワイトニングに適用することは不可能である。そのため、オゾンを含む他の剤についても、歯のホワイトニングには適用することは実質的に不可能であると考えられていた。また、オゾン水においては、溶存オゾン濃度は約20mg/Lがガスの溶解度の法則であるヘンリーの法則でもわかっていることから、常温常圧では0.02%が限界濃度であり、濃度の面での制約により、歯のホワイトニングに適用することは不可能である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−143436号公報
【特許文献2】特許第3030380号公報
【特許文献3】特開2007−186458号公報
【特許文献4】国際公開第02/43683号パンフレット
【特許文献5】特開2005−232094号公報
【特許文献6】特開2003−55107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、ホワイトニング剤として種々のものが知られているが、それらの安全性や使いやすさは必ずしも十分なものではない。
したがって、本発明は、十分な安全性および使いやすさを具備する、歯のホワイトニング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、溶存オゾンを含有するホワイトニング剤が、驚くべきことに、歯のホワイトニング剤として優れた効果を有し、かつ皮膚または粘膜に対する安全性も担保されることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも以下の各発明に関する:
オゾン溶存グリセリン溶液を含み、グリセリンに対するオゾンの濃度が400ppm以上である、歯のホワイトニング剤。
ラジカル促進剤または増粘剤の少なくとも1種をさらに含む、前記歯のホワイトニング剤。
増粘剤としてキサンタンガム、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000およびポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種を含む、前記歯のホワイトニング剤。
ラジカル促進剤として硫酸マンガン、過酸化水素、過酸化尿素等の過酸化物または銅、マンガン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウムの塩からの1種または2種以上を含む、前記歯のホワイトニング剤。
溶液、クリーム、軟膏および歯磨き剤から選択されるいずれかの形態である、前記歯のホワイトニング剤。
前記いずれかのホワイトニング剤を歯の表面に適用する工程を含む、歯をホワイトニングする方法。
適用されたホワイトニング剤に光を照射する工程をさらに含む、前記歯をホワイトニングする方法。
光が紫外線である、前記歯をホワイトニングする方法。
光が可視光線である、前記歯をホワイトニングする方法。
適用されたホワイトニング剤に超音波を当てる工程をさらに含む、前記歯をホワイトニングする方法。
前記いずれかのホワイトニング剤と、光照射器具とを含むキット。
【0009】
本発明において使用されるオゾンガスをグリセリン溶解せしめたオゾン溶存グリセリン溶液は、創傷治癒効果があり、また、化粧料としての使用も示唆されているが(特許文献5)、オゾン溶存グリセリン溶液がホワイトニング効果を有することは、これまで全く予想できなかったことである。しかも、オゾン溶存グリセリン溶液は、オゾンガスが一切気中に気散しないため、呼吸器に対する毒性がなく、オゾンガスに比して極めてより低刺激性であるにもかかわらず、400ppm程度といった、従来品の濃度よりはるかに低い濃度で驚くべきホワイトニング効果を発揮するのである。また、オゾン溶存グリセリン溶液は、歯面に保持されやすく、半減期も長いといった特長も有する。
【0010】
このようなオゾン溶存グリセリン溶液のホワイトニング効果は、溶存しているオゾンからフリーラジカルOH・やHO・などが発生し、該酸素ラジカルの分解作用によって歯の着色の原因物質である高分子の着色有機物を分解し、着色の少ない低分子化することによるものと推測される。
【0011】
なお、特許文献4にはオゾン含有グリセリン溶液を含む口腔衛生組成物およびオゾン濃度として0.01〜80μg/mlが可能であることなどが記載されている。しかしながら、同文献に記載されている組成物のオゾン濃度は、最大で80ppmにすぎない。また、このオゾン含有剤の効果は殺菌作用に基づくものであり、かかる殺菌作用によって口臭、歯茎の出血、歯周病、歯茎の炎症等の処置、予防がなされるにすぎないものであって、歯のホワイトニングとは全く無関係のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯のホワイトニング剤によれば、従来の過酸化水素等の過酸化物の濃度として用いられていた最も低い濃度(3%)の1/75といったはるかにより低い濃度で、歯のホワイトニングを安全かつ簡便に行うことができる。
ラジカル促進剤または増粘剤の少なくとも1種をさらに含む本発明の歯のホワイトニング剤によれば、歯のホワイトニングをより効果的に行うことができる。
増粘剤としてキサンタンガム、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000およびポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種を含む本発明の歯のホワイトニング剤によれば、歯のホワイトニングをより簡便に行うことができる。
ラジカル促進剤として硫酸マンガン、過酸化水素、過酸化尿素等の過酸化物または銅、マンガン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウムの塩からの1種または2種以上を含む本発明の歯のホワイトニング剤によれば、歯のホワイトニングをより効果的に行うことができる。
溶液、クリーム、軟膏および歯磨き剤から選択されるいずれかの形態である本発明の歯のホワイトニング剤によれば、歯のホワイトニングをより簡便に行うことができる。
前記いずれかのホワイトニング剤を歯の表面に適用する工程を含む、本発明の歯をホワイトニングする方法によれば、歯のホワイトニングを安全かつ簡便に行うことができる。
適用されたホワイトニング剤に光を照射する工程をさらに含む、本発明の歯をホワイトニングする方法によれば、歯のホワイトニングより効果的に行うことができる。
光が紫外線である、本発明の歯をホワイトニングする方法によれば、歯のホワイトニングより効果的に行うことができる。
光が可視光線である、本発明の歯をホワイトニングする方法によれば、歯のホワイトニングより安全に行うことができる。
適用されたホワイトニング剤に超音波を当てる工程をさらに含む、本発明の歯をホワイトニングする方法によれば、歯のホワイトニングより効果的に行うことができる。
前記いずれかの本発明の歯のホワイトニング剤と、光照射器具とを含むキットによれば、歯のホワイトニング効果的に、しかも安全かつ簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において「歯のホワイトニング」または「歯をホワイトニングする」とは、歯の白さを増大せしめることまたは白色以外の色(茶色、黄色、黒色等)による着色度合いを低減せしめること意味する。かかる「歯のホワイトニング」の程度は、歯のシェード(着色の度合い)を特定のスケールを用いて測定することができる。
なお、「歯のホワイトニング」または「歯をホワイトニングする」を、単に「ホワイトニング」または「ホワイトニングする」と表記することもある。
本明細書において「歯」とは、天然歯および人工歯等の義歯も意味する。
【0014】
本発明のホワイトニング剤は、歯に用いられるホワイトニング剤であって、オゾン溶存グリセリン溶液を含み、グリセリンに対するオゾンの濃度が400ppm〜3000ppmであれば、その処方、剤型等は限定されない。したがって、本発明のホワイトニング剤は、オゾン溶存グリセリン溶液そのもの、すなわちグリセリンにオゾンを溶存せしめた溶液そのもの(ジェル)でもよい。他の剤型としては、溶液、クリーム、軟膏および歯磨き剤等が挙げられる。
本発明のホワイトニング剤は、その効果および使いやすさの観点から、クリームまたは歯磨剤としての用途が好ましい。
【0015】
なお、オゾンを溶存せしめた場合、気泡として溶液中に残存するオゾンやグリセリンと結合して残存するオゾンが少量存在してもよい。したがって、本発明のホワイトニング剤におけるオゾンの濃度とは、最終的なホワイトニング剤中に溶存して、気泡として、またはグリセリンと結合して存在するオゾンの、ホワイトニング剤全体に対する割合を意味する。
【0016】
本発明のホワイトニング剤におけるオゾンの濃度は400ppm以上であるところ、効果および製造の簡便さの観点から、500ppm〜3000ppmであるものが好ましく、1000ppm〜2500ppmであるものがより好ましい。これらの濃度は、使用者や使用環境等に応じて適宜調整することができる。
【0017】
なお、本発明のホワイトニング剤におけるグリセリンの濃度は通常20%以下とすることが好ましい。グリセリンの濃度は20%以下とすることによって、グリセリンの皮膚または歯面、粘膜に対する刺激性を抑制することができる。したがって、オゾン溶存グリセリン溶液に適当な希釈剤を混合して希釈することができる。
本発明のホワイトニング剤には、オゾンの濃度や物性の調整を目的として、希釈剤を含むことができる。希釈剤としては、オゾンにより酸敗しにくいものが適しており、水、ポリエチレングリコール等が好適である。
【0018】
水を希釈剤とする場合は、純水または超純水を使用することが好ましい。純水または超純水を用いることによって、オゾンに酸化されて不純物による皮膚または歯面、粘膜に対する刺激や効果発現の低下の原因となり得る酸化物(過酸化物)の生成を抑制することができる。
水のホワイトニング剤における配合量は限定されず、グリセリンに起因する本発明のホワイトニング剤の粘度を緩和や保湿を目的として、ホワイトニング剤全体の0〜99%の範囲で適宜改変することができる。
【0019】
本発明においては、希釈剤としてポリエチレングリコールを用いてもよい。ポリエチレングリコールは、分子量により液体、固体のものがあるところ、本発明においては、いずれも用いることができる。2種類以上のポリエチレングリコールを、使用時のテクスチャーに合わせて、それらの混合比率を変えることによって、より使いやすいテクスチャーとすることができる。したがって、ポリエチレングリコールの種類はとくに限定されないが、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000およびポリエチレングリコール65Mが好ましく、ポリエチレングリコール400はとくに好ましい。
【0020】
また、本発明のホワイトニング剤は、種々の原料と組み合わせる処方とすることによって、種々の効果をより高く発現せしめることが可能となる。とくに、ラジカル促進剤または増粘剤の使用は好ましい。
【0021】
(ラジカル促進剤)
ラジカル促進剤としては、硫酸マンガン等の遷移金属の塩が好ましい。また、銅、マンガン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウムの塩でもよく、合わせて、過酸化水素、過酸化尿素等の過酸化物も同様の効果を示すため、これらの酸化物でもよい。過酸化水素の場合、その濃度は1〜5%の濃度でよく、好ましくは1.5〜4.0%である。
上記いずれのラジカル促進剤も、1種または2種以上の配合により、オゾン溶存グリセリン溶液単独の場合と比べ、より高い酸化力を発揮するラジカルを増強するものである。
【0022】
(増粘剤)
本発明のホワイトニング剤において、増粘剤は、剤の粘度の調整に用いられ、その種類はとくに限定されない。増粘剤としては、水溶性または水膨潤性高分子化合物が好ましく、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、アルギン酸塩、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸およびその塩またはそれらの架橋体等の天然高分子もしくはその変性物または合成高分子もしくはその架橋体等が挙げられる。これらの高分子は単独で用いても、複数の高分子を組み合わせて用いてもよい。増粘剤としては、キサンタンガム、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール65Mが好ましく、キサンタンガムが最も好ましい。
これらの増粘剤のホワイトニング剤全体に対する含量は、ホワイトニング剤に適度な粘度を付与し得る限りとくに制限はないが、ホワイトニング剤全体の0.1〜1%が好ましい。
【0023】
本発明のホワイトニング剤に好適に用いられる追加の成分として、防腐剤または界面活性剤等が挙げられる。これらの追加の成分を含む本発明のホワイトニング剤は好ましい。
【0024】
(保湿剤)
本発明のホワイトニング剤において、保湿剤は、口腔粘膜の保湿に用いられ、その種類はとくに限定されない。保湿剤としては、保湿作用を有するものであれば何れも使用し得る。これらの成分としては、多価アルコール類、PCA−Na(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)をはじめとしたNMF(天然保湿因子)、ヒアルロン酸やアセチルヒアルロン酸Naやその誘導体またはその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、多糖類、高分子剤(増粘剤)等を挙げることができる。保湿剤のホワイトニング剤における配合量は、好ましくはホワイトニング剤全体の0.1〜1%である。
【0025】
また、本発明において保湿剤として用いることができる多価アルコール類としては、ポリエチレングリコールが好ましく、その1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることもできる。ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール4000が好ましく、これらを組み合わせたものはより好ましい。
【0026】
(防腐剤)
本発明のホワイトニング剤において、防腐剤はホワイトニング剤を清潔に保つために用いられ、その種類はとくに限定されない。防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン類)、安息香酸、サリチル酸およびその塩類、ソルビン酸およびその塩類、デヒドロ酢酸およびその塩類、クロルクレゾール、ヘキサクロロフェン、レゾルシン、パラオキシエノキサシン、塩酸シプロフロキサシン、ナリジクス、ノルフロキサシン、フレロキサシン、オフロキサシンが挙げられる。イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリウム、トリクロロカルバニド、ハロカルバン、感光素201号、トリクロサン、グレープシードエキス、塩酸ベンザルコニウム、フェノール、チモールが挙げられる。フェノキシエタノールが最も好ましい。
これらの防腐剤のホワイトニング剤全体に対する含量は、ホワイトニング剤を清潔に保てる限りとくに制限はないが、ホワイトニング剤全体の0.01〜1%が好ましい。
【0027】
本発明のホワイトニング剤には、少なくとも1種の界面活性剤も用いることができ、少なくとも1種の界面活性剤を含む本発明のホワイトニング剤は好ましい。
【0028】
(界面活性剤)
界面活性剤は、各種成分の剤中における相互に混じり合わない物質を溶け込んだ状態にするために用いられ、その種類はとくに限定されない。
界面活性剤としては、ラウロイル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の非イオン界面活性剤、アルキルサルフェート塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。ラウロイル硫酸ナトリウムが最も好ましい。
これらの界面活性剤のホワイトニング剤全体に対する含量は、各成分に十分な溶解性を付与し得る限りとくに制限はない。
【0029】
本発明のホワイトニング剤には、皮膚または粘膜に受容可能な補助成分を含むことができる。かかる補助成分は、例えばEDTA等の安定剤、パラオキシ安息香酸エステル等であり、その量は本発明のホワイトニング剤の効果を損なわない量であれば限定されない。
【0030】
また、本願発明のホワイトニング剤には、本願発明の効果を損なわない範囲で、他の漂白成分、歯色改変物質、研磨剤、顔料、香味剤、甘味剤、冷却剤および唾液分泌剤等の補助成分を配合してもよい。これらの補助成分を用いることによって、本願発明のホワイトニング剤のホワイトニング効果を高めたり、使用感をより良好にすることができる。
【0031】
また、本発明によって、前記各ホワイトニング剤を用いた、歯をホワイトニングする方法も与えられる。
かかる方法は、歯の表面に本発明のホワイトニング剤を適用する工程を含む。本発明のホワイトニング剤を適用する方法は限定されず、歯面への塗布、歯ブラシによる通常の歯磨き操作による適用、または該ホワイトニング剤を適用したマウスピースの装着による適用等が挙げられる。適用量はとくに制限されないが、例えば1本の歯あたり0.1ml〜1ml程度であればよい。適用回数は、1本の歯あたり1回でもよく、2回以上でもよい。とくに、粘度が低く流亡し易い剤型の場合には、2回以上適用することが好ましい。
また、本発明の歯をホワイトニングする方法においては、対象歯の歯面を予め歯ブラシ等により清掃することが好ましい。
【0032】
本発明の歯をホワイトニングする方法は、好ましくは適用されたホワイトニング剤に光を照射する工程を含む。当該光の波長はとくに限定されず、紫外線および可視光線のいずれもが好ましく用いられる。また、光源の種類もとくに限定されず、ハロゲンランプ(例えば波長480〜520nmのもの)、メタルハライドランプ(例えば波長310nmのもの)、発光ダイオード(例えば波長420〜500nmのもの)およびキセノンランプ(例えば波長460nmのもの)等が例示される。
【0033】
本発明の歯をホワイトニングする方法においては、上記光のうち、人体に対する安全性の面から可視光線が好ましく用いられる。可視光線を用いても紫外線を用いた場合と同等のホワイトニングの効果が得られる。
光の照射時間は用いる光源および光の強度等に応じて改変可能であるが、典型的には30秒〜5分程度であり、約1分〜約3分が好ましい。
【0034】
本発明の歯をホワイトニングする方法において、光を照射することは必須の工程ではなく、光を照射しなくてもホワイトニング効果は得られる。したがって、本発明の歯をホワイトニングする方法のうち、光の照射を行わない方法は、一般家庭において好適であり(ホームユース)、特定の光照射器具が常備されている歯科医院等においては、光照射を行う方法が好適である(オフィスユース)。
【0035】
本発明の歯をホワイトニングする方法の効果を高める他の方法として、上記のようにラジカル促進剤や光を用いるほか、超音波(超音波のキャビテーション)を用いたり、温度(加温)、pH(pHを高くする)の調整によって、ラジカル発生を促進する方法が挙げられる。とくに、超音波を用いることは、簡便である上に効果が高いため好ましい。
ラジカル促進剤は、本発明のホワイトニング剤と混合した後に適用してもよく、混合せずに別々に適用してもよい。
【0036】
本発明の歯をホワイトニングする方法においては、ホワイトニング剤の適用後、口をすすぐこと等により、歯面を軽く水洗してよい。適用から水洗までの時間は、20秒〜30分の範囲で調整することができる。光を照射する場合には、前記水洗は光の照射後に行う。
本発明の歯をホワイトニングする方法においては、適用〜水洗までの処置を、1回行うか、または時間間隔を開けて2回以上行ってよい。時間間隔に制限はなく、1日〜10日の範囲で調整することができる。
【0037】
また、本発明によって、前記各ホワイトニング剤とともに光照射器具を含むキットも与えられる。かかるキットを用いることによって、本発明の歯をホワイトニングする方法の効果を高めることができる。
光照射器具としては、前記したハロゲンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオードおよびキセノンランプ等のほか光重合用レジン硬化用照射器が例示される。これらの光照射器具は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光照射器具から照射される光の波長もとくに限定されないが、人体に対する安全性の面から可視光線の波長のものが好ましく用いられる。該可視光線の波長は、典型的には短波長側が約360nm〜約400nm、長波長側が約760nm〜約830nm(JIS Z8120の定義による)である。
【0038】
本発明のホワイトニング剤の製造は、オゾン溶存グリセリン溶液を原料として、従来の口腔適用剤と同様に行うことができる。すなわち、例えば、オゾン溶存グリセリン溶液を溶媒で適宜希釈した後、必要に応じてその他の成分を添加し、当該成分を溶存、溶解または懸濁せしめる。
また、オゾン溶存グリセリン溶液は、グリセリンにオゾンの微小気泡を通気せしめることによって得られるところ、所望の濃度のものは、典型的には特許文献5または6に記載されている方法に従うことによって簡便に調製することができる。
【0039】
本発明の歯のホワイトニング剤のうち、剤型がクリームであるものは、例えば、1種または2種以上のポリエチレングリコールの単体または混合物にオゾン溶存グリセリンを投入し、ホモジナイザーによってゆっくりと攪拌することによって製造することができる。
本発明の歯のホワイトニング剤のうち、剤型が軟膏であるものは、例えば、日本薬局方で定められたマクロゴール軟膏を混合することによって製造することができる。
【0040】
本発明の歯のホワイトニング剤のうち、剤型が歯磨き剤であるものは、例えば、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の研磨剤、ラウロイルサルコシンソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等の発泡剤、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の結合剤およびソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の保湿剤等を混合することによって製造することができる。また、本発明の歯磨き剤には、着香剤、甘味剤、着色剤、薬効成分、抗結石剤および水等を含んでよい。歯磨き粉はもちろん、実質的にすべての非液体の構成成分を含有する。なお、本明細書において、「歯磨き剤」には、練り歯磨き、歯磨きゲルおよび歯磨き粉等が包含される。
【0041】
以下に本発明を実施例を示してさらに詳細に説明するが、当該実施例は単なる例示にすぎないものであり、如何なる意味においても本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0042】
実施例1
オゾン溶存グリセリン溶液(オゾン濃度2000ppm)を、グリセリンにオゾンを溶解することによって製造した。
実施例2
オゾン溶存グリセリン溶液(オゾン濃度2000ppm)にフェノキシエタノールを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、そこにA液(組成は下記参照)を投入し、ホモジナイザーによってさらに攪拌する。その後PCA−Naを投入し、ホモジナイザーによって再度攪拌して、B液を得る。
超純水にグリチルリチン酸2Kを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、その後B液を全量投入し超純水を加え、加温しながらホモジナイザーにて攪拌し、オゾン濃度400ppmのホワイトニング剤(実施例2)を得る。
(A液の組成)
ラウロイル硫酸Na 10ml
セラミド1 0.001g
セラミド3 0.5g
セラミド6II 0.5g
フィトスフィンゴシン 0.5g
コレステロール 0.5g
超純水 適量
合計 100ml
【0043】
実施例3
オゾン溶存グリセリン溶液にフェノキシエタノールを投入し、ホモジナイザーによって攪拌した後キサンタンガム投入し、ホモジナイザーによって攪拌する。その後ヒアルロン酸Naを投入し、ホモジナイザーによって攪拌し、最後に超純水を加え、ホモジナイザーによってさらに攪拌し、オゾン濃度400ppmのホワイトニング剤(実施例3)を得る。
【0044】
実施例4
予めPEG400と500gのPEG4000を混合し、該混合物にオゾン溶存グリセリン溶液(オゾン濃度2000ppm)を投入し、ホモジナイザーによってゆっくりと攪拌し、オゾン濃度1000ppmのホワイトニング剤(実施例4、クリーム)を得る。
【0045】
試験例1 オフィスユース
本発明のホワイトニング剤を用い、下記のように5例の試験を行った。
(方法)
(1)各被験者の試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、スケールに基づいて行った。また、試験対象歯の歯面を清掃する。
(2)小筆などで、本発明のホワイトニング剤(上記オゾン溶存グリセリン溶液もしくはクリーム)を歯面に直接たっぷりと塗布した(厚さ1mm程度。歯頚部は十分厚めに塗る。溶液の場合は、流亡しすいので2回以上塗布した)。
(3)直ちに光重合用レジン硬化用照射器を用いて3分間照射した。
(4)歯面を軽く水洗いした。
(5)(4)の直後に、各被験者の試験対象歯のシェードの測定をスケールに基づいて行い、本願発明のホワイトニング剤適用前におけるシェードと比較することによって歯の漂白効果を確認した。
なお、その間溶液、クリームは冷蔵または冷凍保存した。
【0046】
試験例2 ホームユース
本発明のホワイトニング剤を用い、下記のように5例の試験を行った。
(方法)
(1)各被験者の試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、スケールに基づいて行った。また、試験対象歯の歯面を清掃する。
(2)小筆などで、本発明のホワイトニング剤(上記オゾン溶存グリセリン溶液もしくはクリーム)を歯面に直接たっぷりと塗布した(厚さ1mm程度。歯頚部は十分厚めに塗る。溶液の場合は、流亡しすいので2回以上塗布した)。
(3)そのまま30分間放置した。
(4)歯面を軽く水洗いした。
(5)(4)の直後に、各被験者の試験対象歯のシェードの測定をスケールに基づいて行い、本願発明のホワイトニング剤適用前におけるシェードと比較することによって歯の漂白効果を確認した。
なお、その間溶液、クリームは冷蔵または冷凍保存した。
【0047】
試験例3 過酸化水素の併用
本発明のホワイトニング剤を用い、下記のように5例の試験を行った。
(方法)
(1)各被験者の試験対象歯のシェード(着色度合い)の測定を、スケールに基づいて行った。また、試験対象歯の歯面を清掃する。
(2)小筆などで、本発明のホワイトニング剤(上記オゾン溶存グリセリン溶液もしくはクリーム)を歯面に直接たっぷりと塗布した(厚さ1mm程度。歯頚部は十分厚めに塗る。溶液の場合は、流亡しすいので2回以上塗布した)。
(3)3.5%過酸化水素水溶液を(2)の塗布面に重ねて塗布した。
(4)そのまま10分間放置した。
(5)歯面を軽く水洗いした。
(6)(5)の直後に、各被験者の試験対象歯のシェードの測定をスケールに基づいて行い、本願発明のホワイトニング剤適用前におけるシェードと比較することによって歯の漂白効果を確認した。
なお、その間溶液、クリームは冷蔵または冷凍保存した。
【0048】
(結果・考察)
オフィスユースおよびホームユースにおける結果を、それぞれ下記に示す。なお、各数値はシェードを表すものであり、当該数値が小さいほど白色の度合いが高いことを示す。
オフィスユース:
24歳女性 A3.5→A1
27歳女性 A3→A2
32歳女性 A3.5→A2
53歳女性 A3→A2
39歳男性 A3→A1
ホームユース:
35歳女性 A3.5→A2
22歳女性 A3→A2
44歳女性 A3.5→A3
56歳女性 A3.5→A2
63歳男性 A3.5→A2
【0049】
オフィスユース並びにホームユースのいずれにおいても、5例の試験の全例において、歯のシェードは有意に減少した。したがって、本願発明の歯のホワイトニング剤およびホワイトニングの方法が、十分なホワイトニング効果を有することが明らかになった。
【0050】
過酸化水素併用:
38歳女性 A3.5→A2
46歳男性 A3→A2
59歳男性 A3→A2
61歳女性 A3.5→A1
65歳男性 A3.5→A2
5例の試験いずれにおいても、歯のシェードは有意に減少した。したがって、過酸化水素を併用する本願発明の歯のホワイトニング剤およびホワイトニングの方法が、十分なホワイトニング効果を有することが明らかになった。
なお、過酸化水素を併用した場合における、シェードの低下率の平均値は50.5%であり、上記ホームユースの平均値である35.2%を上回った。このことと、3.5%の過酸化水素水溶液には歯のホワイトニング効果はほとんどないことを考え合わせると、3.5%程度の低濃度の過酸化水素と高濃度オゾン溶存グリセリン溶液には、歯のホワイトニングにおける相乗効果があることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン溶存グリセリン溶液を含み、グリセリンに対するオゾンの濃度が400ppm以上である、歯のホワイトニング剤。
【請求項2】
ラジカル促進剤または増粘剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載のホワイトニング剤。
【請求項3】
増粘剤としてキサンタンガム、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール65Mの少なくとも1種を含む、請求項2に記載のホワイトニング剤。
【請求項4】
ラジカル促進剤として硫酸マンガン、過酸化水素、過酸化尿素および銅、マンガン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、アルミニウムの塩からの1種または2種以上を含む、請求項2または3に記載のホワイトニング剤。
【請求項5】
溶液、クリーム、軟膏および歯磨き剤から選択されるいずれかの形態である、請求項1〜4のいずれかに記載の歯のホワイトニング剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のホワイトニング剤を歯の表面に適用する工程を含む、歯をホワイトニングする方法。
【請求項7】
適用されたホワイトニング剤に光を照射する工程をさらに含む、請求項6に記載の歯をホワイトニングする方法。
【請求項8】
光が紫外線である、請求項7に記載の歯をホワイトニングする方法。
【請求項9】
光が可視光線である、請求項7に記載の歯をホワイトニングする方法。
【請求項10】
適用されたホワイトニング剤に超音波を当てる工程をさらに含む、請求項6〜9のいずれかに記載の歯をホワイトニングする方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載のホワイトニング剤と、光照射器具とを含むキット。

【公開番号】特開2009−126819(P2009−126819A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303148(P2007−303148)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(592160652)株式会社ブイエムシー (1)
【Fターム(参考)】