説明

歯付ベルトの製造装置及び歯付ベルトの製造方法

【課題】歯面側と背面側のエラストマー量を分別して突出させることで心線が背面から露出しなく、又、心線位置を正確に設定できる歯付ベルトの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドと、熱可塑性エラストマーを加熱溶融して、ダイス3から前記成形用モールドに向けて突出させる押し出し機と、所定の張力を付与した状態の心線を、前記成形用モールドに繰り出す繰り出し機と、前記熱可塑性エラストマーを、成形用モールドによって形成された歯溝に向かって押し付ける圧力付与手段とを備えた歯付ベルト製造装置において、前記ダイス3がエラストマー流路を分離して、前記心線9を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段11を挟んだ状態に配置した歯付ベルト製造装置及びそれを使用した歯付ベルトの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー製歯付ベルトの製造方法としては、特許文献1に記載のように、繰り出し機63から心線73を繰り出し、ダイス75を通過させ、ダイス75の突出口から心線73と熱可塑性エラストマーとを一体とした状態で、その突出口から突出されるようになっている。そして、一体となった心線73及び熱可塑性エラストマーは、押さえロール77にて、成形用モールド72の隣り合う歯によって形成された歯溝に向かって押し付けるようになっていた。そして、上記成形用モールド72及び歯数調整用ロール82を回転させつつ、押さえロール77が、上記熱可塑性エラストマーを成形用モールド72に押さえ付けて成形を行う。この押さえロール77による成形が、上記成形用モールド72及び歯数調整用ロール82に巻き付けられたベルト51の全長に渡って行われれば成形が終了する。この成形が終了すれば、上記成形用モールド72と歯数調整用ロール82との間隔が狭くなるように上記歯数調整用ロール82を移動させて、上記ベルト51を型抜きしていた。そして、上記ベルト体51の幅切りを行い、歯付ベルト51を完成させていた。
【特許文献1】特開2000−346138号公報
【0003】
このような歯付ベルトの製造装置は、ダイス75内で、心線73と熱可塑性エラストマーが一体となる為、ベルト成形後に繊維屑と熱可塑性エラストマーが一体となったエラストマーの残余分がダイス75内に残り、ダイス内の掃除に手間が掛かっていた。
【0004】
そこで、図4に示すように、心線73をダイス75の外側のガイドプレート87を通過させ、ダイス75のエラストマー流路85から突出された熱可塑性エラストマーと一体とするような改良がなされた。しかし、この装置においては、ベルト歯が大きくなる場合に、熱可塑性エラストマーの量が多くなりダイス75外で熱可塑性エラストマーが冷え易くなる為、心線73と熱可塑性エラストマーが一体となった後すぐに前記熱可塑性エラストマーが固化し、心線全体が熱可塑性エラストマーに覆われないことがあり、ベルト成形後ベルト背面から心線が露出することがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題点に注目し、歯面側と背面側のエラストマー量を分別して突出させることで心線が背面から露出しなく、又、ダイスの掃除も簡単にできる歯付ベルトの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載の発明は、所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドと、熱可塑性エラストマーを加熱溶融して、ダイスから前記成形用モールドに向けて突出させる押し出し機と、所定の張力を付与した状態の心線を、前記成形用モールドに繰り出す繰り出し機と、前記熱可塑性エラストマーを、成形用モールドによって形成された歯溝に向かって押し付ける圧力付与手段とを備えた歯付ベルト製造装置において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段を挟んだ状態に配置した歯付ベルト製造装置にある。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記エラストマー流路が心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路であり、前記上部のエラストマー流路をベルト背面用エラストマー流路とし、下部のエラストマー流路をベルト歯部用エラストマー流路とし、さらに少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入口にエラストマー流入量制限手段を設けることで、ベルト背面を形成するエラストマー量とベルト歯部を形成するエラストマー量との割合を調整する請求項1に記載の歯付ベルト製造装置にある。
【0008】
請求項3に記載の発明は、所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドを用い、前記成形用モールドを回転させつつ、前記成形用モールドの外周面上に心線を配設し、加熱溶融した熱可塑性エラストマーをダイスから吐出して、この成形用モールドの歯によって形成された歯溝内に充填させるように押し付けて歯付ベルトの成形を連続的に行う歯付ベルトの製造方法において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段をエラストマー流路が挟んだ状態に配置することによって、心線を挟んだ状態で熱可塑性エラストマーが吐出される歯付ベルトの製造方法にある。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記ダイスが心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路を有し、前記ダイスから溶融エラストマーが吐出されたときに前記心線が溶融樹脂で覆われる請求項3に記載の歯付ベルトの製造方法にある。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記ダイスの二つのエラストマー流路がベルト背面用エラストマー流路とベルト歯部用エラストマー流路であり、少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入側にゲートを設け、流入するエラストマー量を調節する請求項3又は4のいずれかに記載の歯付ベルトの製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドと、熱可塑性エラストマーを加熱溶融して、ダイスから前記成形用モールドに向けて突出させる押し出し機と、所定の張力を付与した状態の心線を、前記成形用モールドに繰り出す繰り出し機と、前記熱可塑性エラストマーを、成形用モールドによって形成された歯溝に向かって押し付ける圧力付与手段とを備えた歯付ベルト製造装置において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段を挟んだ状態に配置した歯付ベルト製造装置であることから、歯面側と背面側の樹脂量を分別して突出させることができ、歯面、背面に必要なエラストマーを確保した状態で心線と熱可塑性エラストマーとを圧着させることができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記エラストマー流路が心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路であり、前記上部のエラストマー流路をベルト背面用エラストマー流路とし、下部のエラストマー流路をベルト歯部用エラストマー流路とし、さらに少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入口にエラストマー流入量制限手段を設けることで、ベルト背面を形成するエラストマー量とベルト歯部を形成するエラストマー量との割合を調整する請求項1に記載の歯付ベルト製造装置であることから、心線位置が調整でき、心線のピッチラインを狙いの設計値どおりに成形することができる。又、ベルトタイプを変更して、ベルト歯の大きさが変更となった場合でも前記エラストマー流入量制限手段によって、ベルト歯部を形成するエラストマー量を調節することができるので、ベルトタイプの変更にも即座に対応することができるという効果がある。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドを用い、前記成形用モールドを回転させつつ、前記成形用モールドの外周面上に心線を配設し、加熱溶融した熱可塑性エラストマーをダイスから吐出して、この成形用モールドの歯によって形成された歯溝内に充填させるように押し付けて歯付ベルトの成形を連続的に行う歯付ベルトの製造方法において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段をエラストマー流路が挟んだ状態に配置することによって、心線を挟んだ状態で熱可塑性エラストマーが吐出される歯付ベルトの製造方法であることから、歯面側と背面側のエラストマー量を分別して突出させることができ、歯面、背面に必要なエラストマーを確保した状態で心線と熱可塑性エラストマーとを圧着させることができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、前記ダイスが心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路を有し、前記ダイスから溶融エラストマーが吐出されたときに前記心線が溶融樹脂で覆われる請求項2に記載の歯付ベルトの製造方法であることから、請求項2の効果に加えて、歯面、背面側に必要なエラストマーを確保した状態で心線と熱可塑性エラストマーとをさらに圧着させることができる効果がある。
【0015】
請求項5に記載の発明によると、前記ダイスの二つのエラストマー流路がベルト背面用エラストマー流路とベルト歯部用エラストマー流路であり、少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入側にゲートを設け、流入するエラストマー量を調節する請求項3又は4のいずれかに記載の歯付ベルトの製造方法であることから、心線位置の調整ができ、心線のピッチラインを狙いの設計値通りとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で使用する歯付ベルトの製造装置としては、ダイス部を除いては、背景技術で示した図 が適用できる。歯付ベルト製造装置1で溶融した熱可塑性エラストマーを突出させるダイス3としては、図1に示す二つのエラストマー流路5,7に挟まれ、心線9を成形用モールド72に導く心線ガイド手段11を設置している。前記心線ガイド手段11としては、心線9を通すことができる心線ガイドプレートや、心線が通過するに足りる孔 を開けた円筒 を設けることもできるし、心線ガイド手段としては特に限定されるものではない。
【0017】
そして、前記二つのエラストマー流路は前記心線ガイドプレートを挟んで設置するのが好ましい。そして、該二つのエラストマー流路は、一方がベルト背面部を形成するベルト背面用エラストマー流路5、そして他方がベルト歯部を形成するベルト歯部用エラストマー流路7とし、それぞれの流路には、それぞれ背面部、歯部を形成できるに足りるエラストマー量を図示しない押し出し機からそれぞれの流路に押し出される。それによって、ベルト歯が大型のものであっても背面に心線が露出しない歯付ベルトを製造することができる。
【0018】
又、前記背面用エラストマー流路又は歯部用エラストマー流路の一方又は両方のエラストマー流入口にエラストマー流入量制限手段を設けることができる。これによって、ベルト背面を形成するエラストマー量とベルト歯部を形成するエラストマー量の割合を調整することができ、ベルト内における心線の位置を設計どおりに成形することができる。又、前記エラストマー流入量制御手段は特に限定されるものではなく、ゲートとして、板状のゲートをエラストマー流入口に設け、そのゲートの高さ等を前記エラストマー流路において調整できるようにすることで、背面用エラストマー流道路に流入するエラストマー量と、歯部用エラストマー流入口に流入するエラストマー量との割合を調整できる。
【実施例】
【0019】
以下、具体的な実施例を伴って説明する。
【0020】
実施例
歯付ベルトとしては、ダイス内に背面用エラストマー流路と歯面用エラストマー流路とを設置し、前記二つの流路を挟んで心線ガイドプレートを設置した。そして、公知の方法にて、押し出し機からダイスに溶融した熱可塑性ポリウレタンを押し出し、歯面エラストマー量が背面エラストマー量に比較して3倍の量となるように背面用エラストマー流路のエラストマー流入口に設けたゲートの高さを調整した。そして、ダイスのそれぞれの流路に押し出した。さらに、同時に繰り出し機から繰り出された線径2.0mmの心線を心線ガイドプレートに通して、ダイス内を通過させた。
【0021】
そして、ダイスの出口にて心線が背面用エラストマーと歯面用エラストマーに挟まれた状態で一体化され、成形用モールドに充填され成形が終了した。成形用モールドは、歯ピッチが30mmのAT30歯形であった。そして、所定のベルト幅にてベルトを切断してベルトのピッチライン(PLD)を測定した。その値を表1に示す。ベルト成形後のPLDについては、設計上の狙い値と合致した。ベルト外観については、問題が無いものであった。
【0022】
次に、従来例としてダイス以外は、実施例と同じ方法で、ダイスについては図 に示す従来のダイスを用い、歯付ベルトを成形し、所定のベルト幅に切断してベルトのピッチラインを測定した。その値を表1に示す。ピッチラインについては、設計上の狙い値とは大きく異なるものであった。又、ベルトの外観は、背面に心線が露出し、外観不良となった。
【0023】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るダイスの断面図である。
【図2】本発明に係る歯付ベルトの概略図である。
【図3】本発明に係る歯付ベルトの製造装置の全体図である。
【図4】従来のダイスの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 歯付ベルト製造装置
2 歯部
3 ダイス
4 背部
5 ベルト背面用エラストマー流路
7 ベルト歯部用エラストマー流路
9 心線
11 心線ガイド手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドと、熱可塑性エラストマーを加熱溶融して、ダイスから前記成形用モールドに向けて突出させる押し出し機と、所定の張力を付与した状態の心線を、前記成形用モールドに繰り出す繰り出し機と、前記熱可塑性エラストマーを、成形用モールドによって形成された歯溝に向かって押し付ける圧力付与手段とを備えた歯付ベルト製造装置において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段を挟んだ状態に配置したことを特徴とする歯付ベルト製造装置。
【請求項2】
前記エラストマー流路が心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路であり、前記上部のエラストマー流路をベルト背面用エラストマー流路とし、下部のエラストマー流路をベルト歯部用エラストマー流路とし、さらに少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入口にエラストマー流入量制限手段を設けることで、ベルト背面を形成するエラストマー量とベルト歯部を形成するエラストマー量との割合を調整する請求項1に記載の歯付ベルト製造装置。
【請求項3】
所定ピッチ間隔で歯が形成された外周面を有する一対の円筒からなる成形用モールドを用い、前記成形用モールドを回転させつつ、前記成形用モールドの外周面上に心線を配設し、加熱溶融した熱可塑性エラストマーをダイスから吐出して、この成形用モールドの歯によって形成された歯溝内に充填させるように押し付けて歯付ベルトの成形を連続的に行う歯付ベルトの製造方法において、前記ダイスがエラストマー流路を分離して、前記心線を成形用モールドに導く為の心線ガイド手段をエラストマー流路が挟んだ状態に配置することによって、心線を挟んだ状態で熱可塑性エラストマーが吐出されることを特徴とする歯付ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記ダイスが心線ガイド手段を上下で挟んだ二つのエラストマー流路を有し、前記ダイスから溶融エラストマーが吐出されたときに前記心線が溶融樹脂で覆われる請求項2に記載の歯付ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記ダイスの二つのエラストマー流路がベルト背面用エラストマー流路とベルト歯部用エラストマー流路であり、少なくとも一つのエラストマー流路のエラストマー流入側にゲートを設け、流入するエラストマー量を調節する請求項3又は4のいずれかに記載の歯付ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−101601(P2009−101601A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275534(P2007−275534)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】