説明

歯周疾患予防用組成物

【解決手段】 0.02〜2質量%のポリリジンと、0.1〜10質量%のベントナイトを有効成分とすることを特徴とする歯周疾患予防用組成物。
【効果】 本発明によれば、優れた細菌内毒素活性抑制作用を有し、しかも長期間使用しても安全かつ安定であり、香味に与える影響も少なく、歯周疾患の予防に有効に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周病細菌内毒素より惹起される歯周疾患を予防することができる歯周疾患予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周病の予防には、殺菌剤、抗菌剤等が広く用いられてきた。しかしながら、殺菌剤で菌の増殖が防げても、それらのもつ病原因子は除去できないことから、歯周病に画期的に効果のある口腔用組成物は現在のところ存在しない。
【0003】
歯周疾患の病原性因子として、付着因子(線毛、レクチン様リガンド)、内毒素、組織破壊性酵素(コラゲナーゼ、トリプシン様酵素)、白血球抵抗因子(莢膜、スーパーオキサイドデスムターゼ、ロイコトリエン)及び細胞毒性代謝物(硫化水素、脂肪酸)等がある。中でも細菌内毒素であるリポ多糖(LPS)は、直接あるいは間接的に歯周組織に対して炎症を惹起したり、歯槽骨吸収を促進したりすることが確認されている。内毒素を不活性化することが可能となれば、歯周病に画期的に効果のある薬剤が期待できる。
【0004】
内毒素の関与する歯周疾患の予防、治療の従来技術として、マクロライド系抗生物質による歯周組織再生の前処置剤(特許文献1:特開平7−267867号公報参照)、オクタデシルプロピルジメチルアンモニウム固定の水不溶性固体による内毒素吸着除去剤(特許文献2:特開平8−26954号公報参照)、タウリンを有効成分とする抗内毒素剤(特許文献3:特開平10−158158号公報参照)、グルタミン酸、リゾチーム、セチルピリジニウムクロライド及びベンゼトニウムクロライドから選ばれる有効成分の2種以上を併用してなることを特徴とする抗内毒素剤(特許文献4:特開平11−12168号公報参照)、ラクトフェリンとアミノ酸とを組み合わせた口腔用組成物(特許文献5:特開2001−89339号公報参照)等がある。しかし、これらを歯周疾患の予防、治療に応用するには、口腔用組成物に用いた際の安全性に問題が有る、口腔用組成物に安定配合することが困難である、香味に悪影響を及ぼす、効果が不十分、配合コスト等の課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平7−267867号公報
【特許文献2】特開平8−26954号公報
【特許文献3】特開平10−158158号公報
【特許文献4】特開平11−12168号公報
【特許文献5】特開2001−89339号公報
【特許文献6】特開昭61−76411号公報
【特許文献7】特開平10−298048号公報
【特許文献8】特開2002−12536号公報
【特許文献9】特開2004−123630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた細菌内毒素活性抑制作用を有し、しかも長期間使用しても安全かつ安定で、香味に与える影響も少ない歯周疾患予防用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、有効成分としてポリリジンとベントナイトとの組み合わせが、意外にも細菌内毒素活性抑制試験で内毒素活性を効果的に抑制することを知見し、さらに香味・安全性・安定性にも優れていることを知見した。
【0008】
即ち、従来、ポリリジンを配合した口腔用組成物に関しては、特開昭61−76411号公報(特許文献6)にポリリジンをデキストラナーゼの安定化剤として用いる提案、特開平10−298048号公報(特許文献7)には、ポリリジンによる歯周病細菌内毒素活性抑制効果、特開2002−12536号公報(特許文献8)には、ポリリジンを、歯垢形成、付着を抑制する中和剤として用いる提案、特開2004−123630号公報(特許文献9)には、ポリリジンと天然物由来抗菌成分とを含む抗う蝕、抗歯周病性組成物及びこれを用いた食品に関する提案が知られている。しかしながら、ポリリジンとベントナイトを併用して内毒素中和剤として用いる提案はない。
【0009】
本発明者は、このポリリジンとベントナイトとの組み合わせが、歯周病原因菌ポルフィロモナス・ジンジバリスの内毒素を効果的に不活化することから、歯周疾患の予防に応用できる口腔用組成物が得られることを知見し本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、歯周病細菌内毒素により惹起される歯周疾患を予防することができる口腔用組成物に関するものである。
【0011】
なお、ポリリジン、ベントナイトは香味に与える影響が少なく、安全性・安定性については原料メーカー等において既に十分データが得られており、問題ないことが確認されている。
【0012】
従って、本発明は、歯周病細菌内毒素により惹起される歯周病患を予防する組成物として、0.02〜2質量%のポリリジンと、0.1〜10質量%のベントナイトを有効成分とすることを特徴とする歯周疾患予防用組成物を提供する。この場合、質量比でポリリジン1に対し、ベントナイトを0.1〜100配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた細菌内毒素活性抑制作用を有し、しかも長期間使用しても安全かつ安定であり、香味に与える影響も少なく、歯周疾患の予防に有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の歯周疾患予防用組成物は、ポリリジン及びベントナイトの2種を併用してなるものである。
この場合、ポリリジンとしては、リジンが10〜40個連結したペプチド、特に20〜30個連結したペプチドが好ましい。
本発明の組成物において、ポリリジンの量は、組成物の0.02〜2%(質量百分率、以下同じ)が好ましい。配合量が0.02%より少ないと、内毒素不活化効果が十分発揮されない場合があり、2%より多いと、香味への悪影響が生じる場合がある。
本発明の組成物において、ベントナイトの量は、組成物の0.1〜10%が好ましい。配合量が0.1%より少ないと、内毒素不活化効果が十分発揮されない場合があり、10%より多いと、香味への悪影響が生じる場合がある。
本発明の組成物において、ポリリジンとベントナイトの配合割合は、質量比として前者:後者=1:0.1〜100、特に1:0.2〜10であることが好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、優れた細菌内毒素活性抑制作用を有する上、抗炎症、組織賦活及び歯垢付着抑制も期待でき、歯周疾患を予防することができる。
本発明の組成物には、上記以外の成分として通常の口腔用組成物や食品組成物に使用されている成分をその種類に応じて用いることができ、これらの成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
例えば、歯磨類の場合は、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、着色剤、上記以外の各種有効成分等を配合し得、これら成分を水と混合して製造することができる。
【0016】
ここで、研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂系研磨剤等が好適に用いられる。
【0017】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カーボポール、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチン等が好適に用いられる。
【0018】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等が好適に用いられる。
【0019】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を配合し得、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルサルコシネート、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プルロニック、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が好適に用いられる。
【0020】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0021】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、リモネン等のテルペン類又はその誘導体等が好適である。
【0023】
着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が好適である。
【0024】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化第1スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0025】
なお、本発明において、その組成物は、組成物の種類に応じた通常の使用法、使用回数にて使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実験例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。
【0027】
[実験例]
インビトロ内毒素活性抑制試験エンドスペーシー法(生化学工業(株)製)を変法して、下記方法でインビトロ内毒素活性抑制試験を行った。
歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスの内毒素(以下、P.g.LPSと略す)2μg/mlと表1に示す各種薬剤1mlとを37℃、30分インキュベーション後、各LPSが10〜50pg/mlになるように希釈して、エンドスペーシー法による内毒素活性抑制率を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
なお、ポリリジンとしては、リジンが25〜35個連結したチッソ(株)製のポリリジン50%粉末のものを使用し、ベントナイトとしては、水澤化学工業(株)製のベンクレイSLを使用した。
【0029】
【表1】

※ 表中の数値は内毒素活性の抑制率(%)を示す
【0030】
以下、本発明に係る有効成分を各種組成物に配合した例を実施例として示す。なお、下記例においてポリリジン、ベントナイトは上記と同様のものを使用した。
【0031】
[実施例1]練歯磨
ポリリジン 1 質量%
ベントナイト 3
炭酸カルシウム 45
ソルビット 24
ラウリル硫酸ナトリウム 1.3
カラギーナン 0.7
アルギン酸ナトリウム 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
ゼラチン 0.2
ラウリン酸ジエタノールアミド 0.8
プロピレングリコール 4
香料 1
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.75
精製水 残
計 100.0質量%
【0032】
[実施例2]練歯磨
ポリリジン 0.5質量%
ベントナイト 2
シリカ 20
ソルビット 60
ラウリル硫酸ナトリウム 0.9
サッカリンナトリウム 0.15
ゼラチン 0.3
ラウリン酸ジエタノールアミド 1.5
プロピレングリコール 5
香料 1.5
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.5
フッ化ナトリウム 0.2
キサンタンガム 0.5
ポリエチレングリコール#4000 0.5
精製水 残
計 100.0質量%
【0033】
[実施例3]練歯磨
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
改質水酸化アルミニウム 50
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
カラギーナン 0.5
キサンタンガム 0.5
サッカリンナトリウム 0.14
プロピレングリコール 5
香料 1
ミリストイルザルコシンナトリウム 0.3
フッ化ナトリウム 0.5
グリセリン 20
無水ケイ酸 5
酸化チタン 0.5
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
精製水 残
計 100.0質量%
【0034】
[実施例4]液状歯磨
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
沈降性シリカ 20
パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
キサンタンガム 0.2
ポリアクリル酸ナトリウム 0.15
プロピレングリコール 2
ソルビット 35
グリセリン 25
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1
色素(ブリリアントブルー) 0.001
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
モノラウリン酸デカグリセリル 4
香料 0.25
精製水 残
計 100.0質量%
【0035】
[実施例5]洗口剤
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
変性エタノール 1.6
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.3
香料 0.5
ラウロリルザルコシンナトリウム 0.1
フッ化ナトリウム 0.08
グリセリン 10
DL−アラニン 1
精製水 残
計 100.0質量%
【0036】
[実施例6]マウスウォッシュ
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
90%エタノール 20
ポリオキシエチレン(80モル)ソルビタンモノタウレート 0.5
香料 1.5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.15
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.1
精製水 残
計 100.0質量%
【0037】
[実施例7]口中清涼剤
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
エタノール 50
グリセリン 15
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3
l−メントール 1
香料 0.3
精製水 残
計 100.0質量%
【0038】
[実施例8]トローチ
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
アラビアガム 6
香料 1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.01
ブドウ糖 36
パラチノース 36
精製水 残
計 100.0質量%
【0039】
[実施例9]チューインガム
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1
ガムベース 20
香料 1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.1
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.01
炭酸カルシウム 2
水飴 15
紛糖 58
精製水 残
計 100.0質量%
【0040】
[実施例10]咀嚼錠
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1.0
エリスリトール 84.8
馬鈴薯デンプン 4.0
タルク 3.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
クエン酸 5.0
計 100.0質量%
【0041】
[実施例11]キャンディ
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1.0
砂糖 50.0
水飴 33.0
有機酸 2.0
香料 0.2
精製水 残部
計 100.0質量%
【0042】
[実施例12]グミ
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1.0
砂糖 40.2
水飴 49.1
ゼラチン 8.0
クエン酸 1.0
香料 0.5
計 100.0質量%
【0043】
[実施例13]ドリンク剤
ポリリジン 0.2質量%
ベントナイト 1.0
ブドウ糖 1.35
果糖 1.35
ローズヒップ50%エタノール抽出物 0.5
塩化ナトリウム 0.029
クエン酸 0.02
香料 0.01
水 残部
計 100.0質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.02〜2質量%のポリリジンと、0.1〜10質量%のベントナイトを有効成分とすることを特徴とする歯周疾患予防用組成物。
【請求項2】
質量比で、ポリリジン1に対し、ベントナイトを0.1〜100配合してなることを特徴とする請求項1記載の歯周疾患予防用組成物。

【公開番号】特開2006−151877(P2006−151877A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345107(P2004−345107)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】