説明

歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型、医療用実習装置

【課題】本発明は、歯牙の着脱によりセンサの摩耗、劣化が生じず、医療実習中に歯牙に加わる荷重を測定することができる歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型、医療用実習装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る歯牙模型は、人工歯牙4と、人工歯牙4を着脱可能に設置する基台1と、一端が人工歯牙4に、他端が基台1にそれぞれ固定された曲げ部材2と、曲げ部材2上に設けられ、曲げ部材2の歪みを検出する歪み検出部5とを備える。そして、本発明に係る歯牙模型は、歪み検出部5で検出した曲げ部材2の歪みに基づき人工歯牙4に加えられた荷重を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型、医療用実習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療では、医療用切削装置であるハンドピースを用いて歯牙を削る等の治療が行われている。これら治療技術を習得するには、医療実習を履修する必要がある。医療実習では、特許文献1に記載されているような、歯科診療において切削等を行っているときに、患者が受ける診療時の体感を擬似的に検出できる歯列模型を用いて行われる。具体的に、特許文献1に記載されている歯列模型は、歯牙の形状に形成され模型歯と、模型歯の歯根部を収容できる歯根収容穴が形成される模型歯肉と、歯根収容穴の内周壁表面を覆う形状に固着したフィルム状加圧センサとを備えている。
【0003】
また、特許文献2では、医療自習中に医療実習者及び当該医療実習者の取り扱う器具の動きを正確に追跡し、評価できる医療用実習装置が提案されている。具体的に、特許文献2に記載されている医療用実習装置では、医療実習者又は医療実習者が取り扱う器具の少なくともいずれかの位置を撮影する撮像手段と、撮像手段で撮影された画像信号を処理し、ディスプレイに移動軌跡を二次元座標系として表示できるようにデータ処理する画像処理手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−328083号公報
【特許文献2】特開2000−293097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の歯列模型では、フィルム状加圧センサを用いて、医療実習中において模型歯に加えられた荷重を測定することができる。しかし、模型歯は、フィルム状加圧センサと直接接しており、且つ模型歯肉から着脱可能である。そのため、医療実習毎に模型歯を取り替えることで、フィルム状加圧センサが摩耗し、劣化する問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の医療用実習装置では、医療実習者又は医療実習者が取り扱う器具の医療自習中の移動軌跡を評価することはできるが、歯牙に加えられた荷重については、測定することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、歯牙の着脱によりセンサの摩耗、劣化が生じず、医療実習中に歯牙に加わる荷重を測定することができる歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型、医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る歯牙模型は、人工歯牙と、人工歯牙を着脱可能に設置する基台と、一端が人工歯牙に、他端が基台にそれぞれ固定された曲げ部材と、曲げ部材上に設けられ、曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、歪み検出部で検出した曲げ部材の歪みに基づき人工歯牙に加えられた荷重を検出する。
【0009】
本発明の請求項2に係る歯牙模型は、請求項1に記載の歯牙模型であって、曲げ部材は、人工歯牙及び基台のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定される。
【0010】
本発明の請求項3に係る歯牙模型は、請求項1又は請求項2に記載の歯牙模型であって、歪み検出部を設けた曲げ部材の部分が複数設けられ、且つ個々の曲げ部材の部分は人工歯牙の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置される。
【0011】
本発明の請求項4に係る歯牙模型は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の歯牙模型であって、歪み検出部が絶縁材料上に形成されたCrN、CuNiまたはNiCr薄膜より構成されている。
【0012】
本発明の請求項5に係る歯列模型は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯牙模型を、歯列を構成する少なくとも1つの歯牙として備える。
【0013】
本発明の請求項6に係る顎模型は、請求項5に記載の歯列模型を備える。
【0014】
本発明の請求項7に係る頭部模型は、請求項6に記載の顎模型を、上顎及び下顎のうち少なくとも一方に備える。
【0015】
本発明の請求項8に係る医療用実習装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯牙模型と、歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部とを備える。
【0016】
本発明の請求項9に係る医療用実習装置は、請求項8に記載の医療用実習装置であって、表示部は、歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有する。
【0017】
本発明の請求項10に係る医療用実習装置は、請求項8又は請求項9に記載の医療用実習装置であって、歯牙模型で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備える。
【0018】
本発明の請求項11に係る医療用実習装置は、請求項8乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、医療実習の合否判定を行う判定部と、判定部での合否判定結果を出力する出力部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る歯牙模型では、歪み検出部と人工歯牙とが直接に接しないので、人工歯牙の着脱交換を行っても歪み検出部を摩耗、劣化させることなく、人工歯牙に係る荷重を測定することができる。
【0020】
本発明の請求項2に係る歯牙模型では、間接部材を用いて曲げ部材を固定するので、歯牙模型を構成する部材のレイアウトに自由度を持たせることができる。
【0021】
本発明の請求項3に係る歯牙模型では、歪み検出部を設けた曲げ部材を、所定の配置で複数設けることで、人工歯牙に加えられる様々な方向の荷重を検出することができる。
【0022】
本発明の請求項4に係る歯牙模型では、CrN、CuNiまたはNiCr薄膜の適用により、従来歪みゲージとして用いられている圧延材料では不可能であった微細な形状、寸法の実現が可能になる。また、CrN薄膜の場合には、その高いゲージ率(歪み感度)のために高い出力感度を付与することが可能になる。
【0023】
本発明の請求項5に係る歯列模型では、歪み検出部を摩耗、劣化させることなく、人工歯牙に加えられた荷重を検出できる。
【0024】
本発明の請求項6に係る顎模型では、歪み検出部を摩耗、劣化させることなく、人工歯牙に加えられた荷重を検出できる。
【0025】
本発明の請求項7に係る頭部模型では、歪み検出部を摩耗、劣化させることなく、人工歯牙に加えられた荷重を検出できる。
【0026】
本発明の請求項8に係る医療用実習装置では、切削中に人工歯牙に加えられた荷重又は荷重ベクトルを、容易に確認することできる。
【0027】
本発明の請求項9に係る医療用実習装置では、切削中に人工歯牙に加えられた荷重又は荷重ベクトルの時系列の変化を、容易に確認することできる。
【0028】
本発明の請求項10に係る医療用実習装置では、切削中に人工歯牙に加えられた荷重が所定の値以上になったことを術者に知らせるので、過度の切削を回避できる。
【0029】
本発明の請求項11に係る医療用実習装置では、切削作業の合否判定を客観的データに基づき行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る歯牙模型の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る歯牙模型の曲げ部材の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る歯牙模型に荷重が加わった場合の変化を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る歯牙模型に荷重が加わった場合の変化を説明するための図である。
【図5】人工歯牙部(前歯)と歯牙接合部の嵌合の一例を示す図である。
【図6】人工歯牙部(臼歯)と歯牙接合部の嵌合の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る歯牙模型のブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る歯列模型の斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る頭部模型の斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る医療用実習装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る歯牙模型は、人工歯牙に加えられる荷重を測定するためのセンサが、直接、人工歯牙と接しない構成である。具体的に、本実施の形態に係る歯牙模型は、人工歯牙に加えられる荷重を測定するためのセンサとして、曲げ部材に設けた歪みゲージを用いる構成である。図1に、本実施の形態に係る歯牙模型の断面図を示す。図1に示す歯牙模型は、基台1と、基台1に埋め込まれているセンサ基板2と、センサ基板2に着脱可能に一端が固定される歯牙接合部3と、歯牙接合部3の他端に取り付けられた人工歯牙部4と、基台1に人工歯牙部4を囲むように取り付けられた人工歯肉部11と、センサ基板2に取り付けられた歪みゲージ5とを備えている。
【0032】
基台1は、人工歯牙部4を支える台であり、従来使用されている歯牙模型の基台と同じ材質で、且つほぼ同じ形状及びスケールである。但し、本実施の形態に係る基台1では、従来の基台に比べて、センサ基板2や歪みゲージ5等を格納する分だけスペースを内部に確保する必要がある。また、人工歯肉部11も従来から使用されている人工歯肉部と同じ材質で、且つほぼ同じ形状及びスケールである。
【0033】
センサ基板2は、歯牙接合部3を介して人工歯牙部4を着脱可能に保持する機能と共に、一端を基台1に、他端を歯牙接合部3にそれぞれ固定した曲げ部材としても機能する。つまり、人工歯牙部4に荷重が加えられ、人工歯牙部4の位置がずれることでセンサ基板2に歪みが生じる。当該歪みを歪みゲージ5で測定することで、人工歯牙部4に加わる荷重を求めることができる。なお、図1に示す歯牙模型2では、センサ基板2が基台1や歯牙接合部3に直接、固定されている。しかし、本発明はこれに限られず、センサ基板2と、基台1や歯牙接合部3との間に間接部材を設けても良い。この間接部材を設けることで、センサ基板2を設ける位置に自由度が増し、基台1内でのセンサ基板2のレイアウトがし易くなる。
【0034】
より詳しくセンサ基板2を説明するために、図2に、センサ基板2の平面図を示す。図2に示すセンサ基板2は、十字形状部21と、この十字形状部21の中心部に歯牙接合部3を固定する内側保持部22と、十字形状部21の外周部に基台1に固定される外側保持部23とで構成されている。図2に示すセンサ基板2では、十字形状部21のそれぞれの辺に歪みゲージ5が貼り付けられている。
【0035】
なお、図2に示すセンサ基板2は、十字形状部21の各辺(曲げ部材の部分)が中心部を内側保持部22で、外周部を外側保持部23でそれぞれ接続される形状である。これは、組み立て作業の効率化を考慮したセンサ基板2の形状であり、人工歯牙部4に加わる荷重を検出することのみ考慮すれば、4つの独立したセンサ基板2を十字形状に配置する構成でも良い。また、図2では、歪みゲージ5を貼り付けた十字形状部21の各辺を、人工歯牙部4の長軸Kの周りに90度ずつずらせて配置している。これは、図2に示すセンサ基板2が、人工歯牙部4に加わる荷重を、長軸Kの方向及びこれに垂直な方向の全てに対して検出可能とするための構成である。しかし、ある歪みゲージ5を貼り付けた十字形状部21の辺と隣接する歪みゲージ5を貼り付けた十字形状部21の辺とは、必ずしも90度である必要はない。歪みゲージ5を貼り付けた十字形状部21の辺を所定の角度ずらせて複数配置することでも良い。つまり、当該角度を考慮して演算することで長軸Kの方向及びこれに垂直な方向の全てに対して荷重を求めることが可能である。また、歪みゲージ5を貼り付けた十字形状部21の辺の数は4つに限られない。
【0036】
歯牙接合部3は、人工歯牙部4とセンサ基板2とを接合させるための部材である。図1に示す内側保持部22に歯牙接合部3の凸部31を嵌合することで、センサ基板2と歯牙接合部3とが接合する。センサ基板2と歯牙接合部3とは着脱可能である。本実施の形態に係る歯牙模型では、着脱する歯牙接合部3がセンサ基板2と接触する構成であり、センサ部分である歪みゲージ5とは直接接触しない。そのため、歯牙接合部3の着脱により、歪みゲージ5を摩耗させたり、劣化させたりすることはない。
【0037】
一方、人工歯牙部4と歯牙接合部3との接合も、人工歯牙部4に設けた凹部41に歯牙接合部3の凸部32を嵌合させることで行う。人工歯牙部4と歯牙接合部3とは着脱可能でも着脱不可でも良い。なお、本実施の形態に係る歯牙模型は、人工歯牙部4と歯牙接合部3とが一体として、センサ基板2から着脱可能な構成について説明した。しかし、本発明に係る歯牙模型は、これに限られず、歯牙接合部3とセンサ基板2とが一体として、当該部分から人工歯牙部4が着脱可能な構成でも良い。
【0038】
人工歯牙部4は、医療実習において切削等を行うための歯牙であり、従来使用されている歯牙模型の人工歯牙と同じ材質で、且つほぼ同じ形状及びスケールである。
【0039】
歪みゲージ5は、センサ基板2に生じた歪みを測定するセンサである。歪みゲージ5は、従来から歪み測定に使用されているものであれば適用可能であるが、歯牙模型内に設置するスペースを考慮して、薄型で小型のものが望ましい。そこで、図1においてセンサ基板2がステンレスのような金属である場合には、その表面上にAl23またはSiO2等の絶縁膜を形成し、その上にCrN、CuNiまたはNiCrからなる歪みゲージ5を形成するようにしている。その形成プロセスではスパッタ等の薄膜形成技術およびフォトリソグラフィー技術を用いており、極めて微細な形状の歪みゲージが比較的容易に形成できる。これらの中でCrNはゲージ率(歪み感度)が約8と、従来の歪みゲージ材料の2に対し約4倍大きいので、加えられた圧力に対する出力感度の向上が可能である。なお、図1に示す歯牙模型では、歪みゲージ5からの配線6が基台1の下側(人工歯牙部4を設ける反対側)から引き出されている。
【0040】
次に、センサ基板2及び歪みゲージ5を用いて人工歯牙部4に加わる荷重を求める方法について説明する。図3では、人工歯牙部4に図中左側(長軸Kに垂直な方向)から荷重が加えられた場合の歯牙模型の断面図を示している。また、図4では、人工歯牙部4に図中上側(長軸Kの方向)から荷重が加えられた場合の歯牙模型の断面図を示している。
【0041】
まず、図3に示す歯牙模型では、人工歯牙部4が左から右に押されるため、歯牙接合部3は右側に傾く。歯牙接合部3が右側に傾くと図中左側の十字形状部21Lと図中右側の十字形状部21Rには歪みが生じる。そのため、十字形状部21L,21Rで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5L,5Rで測定することで、人工歯牙部4に加わる荷重の大きさのみならず、荷重を加えた方向も含む荷重ベクトルも求めることができる。
【0042】
次に、図4に示す歯牙模型では、人工歯牙部4が上から下に押されるため、歯牙接合部3は下側に押し下げられる。歯牙接合部3が押し下げられると図中左側の十字形状部21Lと図中右側の十字形状部21Rに歪みが生じる。そのため、十字形状部21L,21Rで生じた歪みを、それぞれに貼り付けた歪みゲージ5L,5Rで測定することで、人工歯牙部4に加わる長軸Kに垂直な方向の荷重のみならず、長軸Kの方向の荷重も求めることができる。なお、人工歯牙部4が下から上に引っ張られる場合にも、十字形状部21L,21Rのそれぞれに歪みが生じる。
【0043】
歪みゲージ5で検出された信号は所定の処理が施されて、人工歯牙部4に加わる荷重又は荷重ベクトルとして算出される。算出された荷重又は荷重ベクトルは、表示部に表示される。この処理について、図7に示す本実施の形態に係る歯牙模型及びその周辺装置(以下、単に歯牙模型とも言う)のブロック図を用いて説明する。図7に示す歯牙模型では、歪みゲージ5を設けた歯牙模型に、信号増幅器10が接続されている。この信号増幅器10は、CPU20に設けた制御回路25に接続されている。
【0044】
信号増幅器10は、歪みゲージ5で検出した歪みの信号を制御回路25で処理可能なレベルに増幅している。信号増幅器10で増幅した信号に基づき、制御回路25は、歪みゲージ5で検出した歪み量から人工歯牙部4に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める。なお、歪みゲージ5で検出した歪み量から人工歯牙部4に加わる荷重又は荷重ベクトルを求める場合、人工歯牙部4の長さや径、材質を考慮して求める必要がある。
【0045】
制御回路25で求めた荷重又は荷重ベクトルは、表示部30に表示される。なお、表示部30には、CPU20に設けた記憶部(図示せず)に記録された過去の荷重又は荷重ベクトルと合わせて、時系列的に表示することも可能である。また、CPU20において、過剰切削等の不具合が発生する可能性がある荷重又は荷重ベクトルの値を閾値として設定することで、切削等の医療実習時に当該閾値を越えた場合に報知部40から実習者に当該事実を知らせることができる。それにより、実習者は、人工歯牙部4に過剰な荷重が加わった事実を医療実習中に知ることができる。報知部40は、音声で知らせる構成でも、表示部30を利用して画像で知らせる構成でも良い。
【0046】
さらに、図7に示すブロック図では、歯牙模型の外に信号増幅器10を設ける構成である。しかし、本発明はこれに限られず、信号増幅器10を歯牙模型内に設けても良い。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る歯牙模型は、歯牙模型内に着脱可能部(歯牙接続部3)と直接接触しないセンサ(歪みゲージ5)を設けて、人工歯牙部4に加わる荷重を測定する構成を採用しているので、センサ(歪みゲージ5)を摩耗、劣化させることなく医療実習中に人工歯牙部4に加わる荷重を即時的に把握することができる。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態1では、人工歯牙部4に加わる荷重を測定するセンサ(歪みゲージ5)を設けた歯牙模型について説明した。本実施の形態では、当該歯牙模型を組み込んだ歯列模型、顎模型、頭部模型について説明する。図8に、本実施の形態に係る歯列模型60の斜視図を示す。図8に示す歯列模型60は、人の歯牙形状に対応して複数の歯牙模型を所定のアーチ状に配列している。なお、図8に示す歯列模型60では、各歯牙模型の基台1は一体としてアーチ状に形成されている。
【0049】
また、図8に示す歯列模型60では、17本の歯牙模型が配列されている。そのうち、全部の歯牙模型に対して実施の形態1のように人工歯牙部4に加わる荷重を測定するセンサ(歪みゲージ5)を設けた歯牙模型で形成しても良いし、必要な歯牙模型のみ実施の形態1に係る歯牙模型で形成しても良い。さらに、図8では、前歯の人工歯牙部4が基台1から取り外されている様子が図示されており、当該人工歯牙部4は、歯牙接続部3が基台1にネジ7で固定する構成である。なお、図8に示す歯列模型60に設ける歯牙模型は、図1に示す歯牙模型のように、歯牙接続部3が基台1にネジ7で固定しない構成でも良い。
【0050】
次に、図8に示した歯列模型60を上顎及び下顎の少なくともいずれか一方に設けた顎模型、及び当該顎模型を設けた頭部模型について説明する。図9に、本実施の形態に係る頭部模型70の概略図を示す。図9に示す頭部模型70は、顎部71と頭部72により構成されている。この顎部71には、図8に示した歯列模型60が上顎(上顎歯列模型60A)及び、下顎(上顎歯列模型60B)に設けられている。なお、顎部71を顎模型として取り扱っても良いし、歯列模型60と上下噛み合わせる機構とのみで顎模型として取り扱っても良い。
【0051】
また、図5及び図6に示すように、人工歯牙部4を基台1に装着する場合、人工歯牙部4の方向が決まっているため、容易に装着できるように、着脱を行う人工歯牙部4と歯牙接合部3の間、又は、歯牙接合部3とセンサ基板2の間に対応する形状の突起32Aと切り欠き41Aを設けるようにしてもよいし、人工歯牙部4に設けた凹部41と歯牙接合部3の凸部32の形状、又は、歯牙接合部3の凸部32とセンサ基板2に設けた内側保持部22の形状を対応するようにしてもよい。
【0052】
図5及び図6は突起32Aと切り欠き41Aの一例を示した図であり、前歯用と臼歯用、上顎用と下顎用等で上記の突起32Aと切り欠き41Aの形状や個数、凸部と凹部の形状や大きさを任意に変更しても構わない。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る歯列模型、顎模型、頭部模型では、実施の形態1に係る歯牙模型を組み込むことで、歪み検出部を摩耗、劣化させることなく、人工歯牙に加えられた荷重を検出できる歯列模型、顎模型、頭部模型を提供することができる。
【0054】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2では、人工歯牙部4に加わる荷重を測定するセンサ(歪みゲージ5)を設けた歯牙模型、又は当該歯牙模型を設けた歯列模型、顎模型、頭部模型について説明した。当該歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型は、実習に利用することが可能である。そこで、本実施の形態では、実施の形態1及び2で記載した歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型のいずれかを備え、実習での切削等の医療行為の評価が可能な医療用切削実習装置について説明する。なお、以下の説明では、医療用切削実習装置は、実施の形態1で記載した歯牙模型を1つ備える構成について説明するが、本発明はこれに限られず、実施の形態1で記載した歯牙模型を複数有する歯列模型、顎模型、頭部模型を備える構成でも良い。
【0055】
図10に、本実施の形態に係る医療用実習装置のブロック図を示す。図10に示す医療用実習装置では、図7に示した歯牙模型及びその周辺装置に、判定部26を追加した構成である。判定部26は、CPU20内で構成され、制御回路25から得た歯牙模型の人工歯牙部に加わる荷重又は荷重ベクトルと、所定の判定基準とを比較して切削作業等の医療行為の評価判定を行う。所定の判定基準には、例えば、教師が行った人工歯牙部の切削で、当該人工歯牙部に加わる荷重又は荷重ベクトルの基準履歴を採用する。評価判定では、例えば、この基準履歴に対して、実習者が行った人工歯牙部の切削で、当該人工歯牙部に加わる荷重又は荷重ベクトルの実習履歴を比較し、統計的にどの程度差異があるかに基づいて判定する。なお、判定部26は、図10のようにCPU20内でソフトウェアとして構成しても、CPU20の外部にハードウェアとして構成しても良い。
【0056】
評価判定した結果は、表示部30に表示される。なお、表示部30を評価判定結果の出力部とせずに、プリンタ等の他の出力装置を出力部としても良い。また、図10に示す医療用実習装置において、図7に示す歯牙模型及びその周辺装置と同じ構成要素については、同じ構成番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0057】
以上のように、本実施の形態に係る医療用実習装置では、実施の形態1及び2に係る歯牙模型、歯列模型、顎模型、頭部模型と、その出力を利用して実習での評価判定を行う判定部26と、評価結果を出力できる出力部とを備えるので、切削等の医療実習の評価を客観的データに基づき即時的に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 基台、2 センサ基板、3 歯牙接合部、4 人工歯牙部、5 歪みゲージ、6 配線、7 ネジ、10 信号増幅器、21 十字形状部、22 内側保持部、23 外側保持部、25 制御回路、26 判定部、20 CPU、30 表示部、31,32 凸部、40 報知部、41 凹部、60 歯列模型、70 頭部模型、71 顎部、72 頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯牙と、
前記人工歯牙を着脱可能に設置する基台と、
一端が前記人工歯牙に、他端が前記基台にそれぞれ固定された曲げ部材と、
前記曲げ部材上に設けられ、前記曲げ部材の歪みを検出する歪み検出部とを備え、
前記歪み検出部で検出した前記曲げ部材の歪みに基づき前記人工歯牙に加えられた荷重を検出することを特徴とする歯牙模型。
【請求項2】
請求項1に記載の歯牙模型であって、
前記曲げ部材は、前記人工歯牙及び前記基台のうち少なくとも一方が間接部材を介して固定されることを特徴とする歯牙模型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の歯牙模型であって、
前記歪み検出部を設けた前記曲げ部材の部分が複数設けられ、且つ個々の前記曲げ部材の部分は前記人工歯牙の長軸を中心に、所定の角度ずらせて配置されることを特徴とする歯牙模型。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の歯牙模型であって、
前記歪み検出部が絶縁材料上に形成されたCrN、CuNiまたはNiCr薄膜よりなることを特徴とする歯牙模型。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯牙模型を、歯列を構成する少なくとも1つの歯牙として備える歯列模型。
【請求項6】
請求項5に記載の歯列模型を備える顎模型。
【請求項7】
請求項6に記載の顎模型を、上顎及び下顎のうち少なくとも一方に備える頭部模型。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の歯牙模型と、
前記歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを表示する表示部とを備える医療用実習装置。
【請求項9】
請求項8に記載の医療用実習装置であって、
前記表示部は、前記歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを時系列的に表示する機能を有することを特徴とする医療用実習装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の医療用実習装置であって、
前記歯牙模型で検出した荷重が所定の値以上になったことを知らせる報知部をさらに備えることを特徴とする医療用実習装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記歯牙模型で検出した荷重又は荷重ベクトルを受け取り、当該荷重又は荷重ベクトルと所定の判定基準とを比較して、医療実習の合否判定を行う判定部と、
前記判定部での合否判定結果を出力する出力部とをさらに備える医療用実習装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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