説明

歯磨剤の製造方法

【課題】保存中の変色を防止できる歯磨剤を効率的に製造できる、歯磨剤の製造方法を目的とする。
【解決手段】本発明の歯磨剤の製造方法は、(A)成分:無機酸化物と(B)成分:甘味剤とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で混合して予備混合物を得る工程と、前記予備混合物を粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分、香料及び水と混合する工程とを有することよりなる。前記無機酸化物は、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムであることが好ましく、前記甘味剤は、サッカリンナトリウム及び/又はマルトースであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯磨剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯磨剤の製造は、次のように行われている。まず、粉体の粘結剤をポリエチレングリコール(PG)等の分散媒に小物槽で分散して分散液とした後、さらに該分散液を水溶性成分溶液に小物槽で添加、混合して膨潤液を調整する。次いで、得られた膨潤液を小物槽から主配合槽に移し、研磨剤、色調安定剤、甘味剤、香料等の原料と混合することで、歯磨剤を製造している。このように粘結剤を分散媒に分散する操作を行うことで、歯磨剤中で粘結剤がダマになることを防止している。
【0003】
上述のように、小物槽を用いた歯磨の製造方法は、個々の管理が比較的容易であり、安定した品質の歯磨剤が得られる。その一方、多品種生産の工程では、品種切り換え作業の際に、必然的に洗浄作業等が煩雑となる。この品種切り換え作業の手間は、非常に多くの労力を要する。このため、多品種生産の工程におけるトータルの製造効率の向上が求められていた。
【0004】
こうした問題に対し、高剪断型の連続式混合分散機により粘結剤を水又は湿潤剤水溶液に瞬時に分散して分散液を得、該分散液をミキサーに連続的に供する歯磨剤の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、例えば、高剪断型の連続式混合分散機により、粘結剤を高濃度の湿潤剤水溶液に分散して分散液を得、該分散液をミキサーに連続して供給する歯磨剤の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2)。また、例えば、歯磨剤の原料を含むスラリーを形成し、該スラリーを脱気することで粘結剤を膨潤溶解する歯磨剤の製造方法(例えば、特許文献3)や、未膨潤の粘結剤分散液と研磨剤スラリーとを混合する歯磨剤の製造方法(例えば、特許文献4)が提案されている。
【特許文献1】特開2008−88145号公報
【特許文献2】特開2008−88144号公報
【特許文献3】特開昭58−208209号公報
【特許文献4】特開昭61−236717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した歯磨剤の製造方法では、歯磨剤をダマを発生させずに効率的に製造できるものの、製造した歯磨剤は保存中に経時的に変色しやすいという問題があった。
そこで本発明は、保存中の変色を防止できる歯磨剤を効率的に製造できる、歯磨剤の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、歯磨剤の保存中における変色は、色調安定剤として添加した無機酸化物が歯磨剤中で不均一な分散又は無機酸化物同士の凝集に起因するとの見解を見い出し、以下の発明に至った。
【0007】
即ち、本発明の歯磨剤の製造方法は、(A)成分:無機酸化物と、(B)成分:甘味剤とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で混合して予備混合物を得る工程と、前記予備混合物を粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分、香料及び水と混合する工程とを有することを特徴とする。前記無機酸化物は、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムであることが好ましく、前記甘味剤は、サッカリンナトリウム及び/又はマルトースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯磨剤の製造方法によれば、保存中の変色を防止できる歯磨剤を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の歯磨剤の製造方法について例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
[歯磨剤]
本発明の製造方法により製造される歯磨剤は、(A)成分:無機酸化物と、(B)成分:甘味剤と、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分と、香料と、水とを含有するものである。
【0011】
<(A)成分:無機酸化物>
(A)成分:無機酸化物は、色調安定剤として歯磨剤に配合できるものであれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。(A)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(A)成分の粒子径は、特に限定されないが、例えば平均粒子径が0.1〜0.5μmが好ましい。上記範囲内であれば、(A)成分が(B)成分表面を被覆するように(B)成分に付着し、歯磨剤成分への予備混合物の分散が良好となるためである。
(A)成分の平均粒子径は、以下の方法で求めることができる。レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)を用い、フロー測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正濃度範囲になるように(A)成分を蒸留水に分散し、25℃、相対屈折率2.04にて体積基準のメジアン径を測定することで、(A)成分の平均粒子径を求めることができる。
【0013】
歯磨剤中の(A)成分の配合量は、所望する歯磨剤の品質に応じて決定することが好ましく、例えば、歯磨剤の総質量の0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.9質量%がより好ましい。上記下限値未満であると歯磨剤の色調安定効果が不十分となるおそれがあり、上記上限値を超えると、予備混合物又はこれを含む混合粉体の流動性が低下することに加え、ダマが発生しやすくなるためである。
【0014】
<(B)成分:甘味剤>
(B)成分:甘味剤は、歯磨剤に配合できるものであれば特に限定されず、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、マルトース、ラクトース、ペリラルチン、グリチルリチン塩、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、パラメトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。中でも、サッカリンナトリウム、マルトースが好ましく、サッカリンナトリウムが特に好ましい。サッカリンナトリウム、マルトースは適度な水和性を有するため、その表面に(A)成分が付着しやすいためである。(B)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
サッカリンナトリウムは、典型的に下記(I)式で表される物質である。
【0016】
【化1】

【0017】
マルトースは、典型的に下記(II)式で表される物質である。
【0018】
【化2】

【0019】
(B)成分の粒子径は特に限定されないが、例えば、平均粒子径が500〜1500μmが好ましく、800〜1500μmがより好ましい。上記下限値未満であると、(B)成分である甘味剤の自己凝集を起こしやすくなる。この結果、(A)成分が、個々の(B)成分の表面に付着できず、歯磨剤中での(A)成分の分散が不十分となり、歯磨剤は経時的に着色しやすくなる。上記上限値を超えると、他の粉体成分と分級し、均一な混合がし難くなるためである。
【0020】
なお、(B)成分の平均粒子径は、以下の方法で求めることができる。
測定対象物(サンプル)について、目開き1700μm、1400μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、150μm、100μmの9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行う。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の1700μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、温度25℃、相対湿度40%の雰囲気条件化で、10分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定する。そして、受け皿と各篩との質量頻度を積算していくと、積算の質量頻度が、50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の質量頻度をd%として、下記(1)式により平均粒子径(質量50%)を求められる(以降において同じ)。
【0021】
【数1】

【0022】
歯磨剤中の(B)成分の配合量は、所望する歯磨剤の品質や甘味剤の種類に応じて決定することができ、例えば、歯磨剤の総質量に対して0.01〜5質量%の範囲で決定することが好ましい。
【0023】
<粘結剤>
粘結剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウムや、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸誘導体、ジェランガム、トラガントガム、カラヤガム等のガム類、ポリビニルアルコール等の合成粘結剤、シリカゲル、ビーガム、ラポナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン等の無機粘性剤等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
粘結剤の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、0.1〜10質量%が好ましい。
【0024】
<研磨剤>
研磨剤としては、シリカ、リン酸水素カリウム・無水和物、リン酸水素カルシウム・2水和物、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ポリメタクリル酸メチル、その他の合成樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお、研磨剤としてシリカを用いた場合、歯磨剤は経時における変色(黄変)が顕著である。このため、本発明はシリカが配合される歯磨剤に好適に適用できる。
研磨剤の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、10〜50質量%が好ましい。
【0025】
<発泡剤>
発泡剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
ノニオン界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
これらの発泡剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
発泡剤の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、0.1〜10質量%が好ましい。
【0029】
<湿潤剤>
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、キシリット等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
湿潤剤の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、5〜60質量%が好ましい。
【0030】
<香料>
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートンローズ、オレンジフラワー等の天然香料成分;これらの天然香料成分の加工処理した香料成分;メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、2−ジオール、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド等の単品香料成分;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー等の調合香料成分等の、口腔用組成物に用いられる公知の香料成分素材を使用することができる。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
香料の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、0.1〜5質量%が好ましい。
【0031】
<その他任意成分>
歯磨剤中には、歯磨剤有効成分、防腐剤、着色剤、pH調整剤等を任意成分として添加することができる。
歯磨剤有効成分としては、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヒノキチオール、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、クロルヘキシジン塩類等、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リゾチーム、ムタナーゼ等の酵素類、塩化ナトリウム、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、トコフェロール類、グリチルレチン酸類、アスコルビン酸及びその誘導体とその塩類、生薬等、硝酸カリウム、オウバクエキス、カミツレ、オウゴン等が挙げられる。
歯磨剤有効成分の配合量は、歯磨剤の総質量に対し、0.001〜5%質量%が好ましい。
【0032】
防腐剤としては、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸プロピル、安息香酸、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
着色剤としては、食用色素類が挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
[製造方法]
本発明の歯磨剤の製造方法は、(A)成分と(B)成分とを混合して予備混合物を得る工程(予備混合工程)と、前記予備混合物を粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分、香料及び水と混合する工程(本混合工程)とを有するものである。
【0034】
(予備混合工程)
本発明における予備混合工程は、(A)成分と(B)成分とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で混合して、予備混合物を得るものである。
【0035】
<混合方法>
予備混合工程における(A)成分と(B)成分との混合方法は、粉体を混合できるものであればよく、例えば、タンブラーミキサーやニーダー等の混合機を用いた混合方法が挙げられる。
【0036】
予備混合工程における(A)成分と(B)成分との混合比は、(B)成分/(A)成分(質量比)=1/10〜1/1であり、1/10〜3/4が好ましく、1/10〜1/2がより好ましい。1/10未満であると、(B)成分表面への付着に余剰となった(A)成分が多くなり、該余剰となった(A)成分が互いに凝集し、歯磨剤中でダマが発生しやすくなる。1/1を超えると、(B)成分表面における(A)成分の付着の程度が不十分となり、得られた予備混合物が互いに凝集し、歯磨剤中で分散し難くなり、歯磨剤中でダマが発生しやすくなるためである。
【0037】
予備混合工程における混合時間は、(A)成分及び(B)成分の種類、混合比、混合機の容量等を勘案して決定することができ、例えば、3〜15分の範囲で決定することが好ましい。
【0038】
予備混合物における(A)成分の(B)成分表面への付着の程度(被覆率)は、(B)成分の表面積の80%以上が覆われていることが好ましく、90%以上が覆われていることがより好ましく、(B)成分の表面全体が完全に覆われていることが特に好ましい。被覆率80%以上であれば、歯磨剤の製造工程中において、歯磨剤中に良好に分散できるためである。加えて、被覆率80%未満であると、被覆に使われなかった(A)成分が互いに凝集し、歯磨剤中でダマが発生しやすくなるためである。被覆率は、電子顕微鏡を用いて観察・算出することができる。
【0039】
(本混合工程)
本混合工程では、予備混合工程で得られた予備混合物を粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分、香料及び水と混合するものである。
【0040】
<混合方法>
本混合工程における混合方法は、特に限定されず、例えば、予備混合物と、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分とを水に分散して膨潤液とし(膨潤操作)、該膨潤液を香料等の液体原料、粉体原料の残部と混合する(混練操作)方法が挙げられる。
【0041】
《膨潤操作》
膨潤操作は、予備混合物と、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分とを水に分散して膨潤液を得る操作である。
前記膨潤操作としては、例えば、図1、2に示すような連続式混合分散機を用いて行うことができる。図1は、連続式混合分散機8の模式図であり、図2は連続式混合分散機8のミキサー部100を拡大した模式図である。図1に示すように、連続式混合分散機8は、液体導入部10、粉体供給用ホッパー20、ミキサー部100を有する。
【0042】
液体導入部10には、液体流路12が接続され、液体流路12にはポンプ14が設けられている。液体流路12は、バルブ16を介してミキサー部100の液体流入口18と接続されている。バルブ16の開度を調節することで、液体流路12を流れる液体原料の供給速度が調整される。ミキサー部100には、粉体供給路26が設けられ、粉体供給路26は、バルブ24を介して粉体供給部22と接続されている。粉体供給部22は粉体供給用ホッパー20と接続されている。ミキサー部100には排出口140が設けられ、該排出口140は排出路40と接続され、排出路40は図示されない混練機と接続されている。
【0043】
ミキサー部100は、ミキサー室102内に、ロータ110と、ステータ130とを有する。ミキサー室102内は任意の圧力に調整できるように、ミキサー室102は図示されない減圧装置と接続されている。ロータ110はその中心部に回転軸112を有し、この回転軸112に複数枚の渦巻き状の羽根114が設けられている。上記羽根114の先端より外側には、周方向に沿って多数の櫛歯116で形成された円形内方リング壁117が設けられている。円形内方リング壁117の外側には、該円形内方リング壁117との間に円形リング状空隙122が形成されるように、周方向に沿って多数の櫛歯118で形成された円形外方リング壁119が設けられ、回転軸112の回転と一体に羽根114及び円形内方リング壁117、円形外方リング壁119が回転する。一方、ステータ130は、大径円形リング状基体132の下端周縁部に中間傾斜リング壁134を介して周方向に沿って多数の櫛歯が形成された前記リング状空隙122の直径と一致する直径を有する小径円形リング壁120が一体に連設されたもので、このステータ130の小径円形リング壁120が前記ロータ110のリング状空隙122に挿入されるように配置されている。
【0044】
上述のような連続式混合分散機8としては、例えば、クアドロワイトロンZC0、クアドロワイトロンXC型、クアドロワイトロンZC1型(以上、クアドロ社製)、BECOMIX DUO−ホモジナイザー(ベレンツ社製)等を挙げることができる。
【0045】
連続式混合分散機8において、粉体供給路26とロータ110との位置関係は特に限定されず、粉体供給路26の軸線とロータ110の中心軸とが一致していてもよいし、ずれていてもよい。この点について、図3を用いて説明する。図3は、粉体供給路26とロータ110との位置関係を説明するミキサー部100の概略図である。粉体供給路26は、その軸線Oがロータ110の中心軸Pとずれて配置(以下、偏心配置ということがある)されている。このように、粉体供給路26を偏心配置することで、粉体供給路26から供給される粉体原料を液体流入口18から供給される液体原料にダマの発生なく、効率的に混合分散することができる。この偏心配置の程度は、粉体原料の量や種類を勘案して決定することができ、例えば、ロータ110の中心軸Pから軸線Oまでの距離を「r」とした場合、距離rとミキサー室102の内半径Rとの比で表される偏心比r/R=0.2〜0.5であることが好ましく、0.3〜0.4がより好ましい。偏心比が0.2未満であると遠心力の弱いロータ110の回転軸112付近に粉体原料が投入される。この結果、粉体原料の滞留時間が長くなり、水溶性の(B)成分が早期に分散媒に溶解し始め、(A)成分の凝集が起こりやすくなる。一方、偏心比が0.5を超えると、粉体原料が膨潤液中でダマになりやすくなり好ましくないためである。
【0046】
連続式混合分散機8を用いた膨潤操作の一例を説明する。
バルブ16、24を閉、ポンプ14を停止した状態で、膨潤用分散媒を液体供給部10に投入する。粉体供給用ホッパー20には、粉体原料として予備混合物及び粘結剤、湿潤剤、発泡剤、研磨剤から選択される少なくとも一成分を投入する。
【0047】
次いで、ポンプ14、粉体供給部22、ロータ110を起動し、バルブ16、24を任意の開度で開とする。加えて、減圧装置を起動してミキサー室102内を任意の圧力とする。前記粉体供給用ホッパー20内の粉体原料は、粉体供給部22、粉体供給路26を経由して、ミキサー室102内に供給される。また、液体供給部10内の膨潤用分散媒は、液体供給路12、ポンプ14、バルブ16を経由して、液体流入口18からミキサー室102内に供給される。こうしてミキサー室102内に供給された粉体原料と膨潤用分散媒とは、ロータ110の回転軸112の回転と一体に回転する渦巻き状の羽根114の回転によって撹拌混合されつつ、内方リング壁117方向に流動され、上記櫛歯116、118、及びリング状空隙122の櫛歯の隙間を通過する際に剪断され、膨潤液となって排出口140により排出される。この間、予備混合物は、その表面に(A)成分が存在するため、内部への水の浸透が遅く、(B)成分は徐々に水に溶解する。この結果、(B)成分の表面に付着している(A)成分もまた徐々に水に分散し、(A)成分は互いに凝集することなく膨潤液中に均一に分散する。
【0048】
膨潤用分散媒としては、水、水に湿潤剤の配合量の一部又は全量を溶解した水溶液、又は、これらに香料等の他の液体原料を溶解したものが挙げられる。中でも、安定した物性の歯磨剤を得る観点から、湿潤剤を水に溶解した湿潤剤水溶液を膨潤用分散媒とすることが好ましい。
膨潤用分散媒として、湿潤剤水溶液を用いる場合には、湿潤剤と水との混合比が、湿潤剤/水=25/75〜85/15であることが好ましい。湿潤剤/水が25/75未満であると後述する混練操作において混合する湿潤剤の量が多くなり、混練操作に要する時間が長くなる傾向となる。湿潤剤/水が85/15を超えると、粉体供給用ホッパー20から供給する粉体原料が水で膨潤し難くなる傾向となるためである。
【0049】
粉体供給用ホッパー20に供給する粉体原料は、予備混合物と、粘結剤、湿潤剤、発泡剤、研磨剤からなる群から選択される少なくとも一種とを含むものであれば特に限定されない。安定した物性の歯磨剤を得る観点からは、ダマを形成しやすい粘結剤、湿潤剤を含むことが好ましい。
【0050】
粉体供給用ホッパー20に投入する粉体原料は、それぞれを個別に粉体供給用ホッパー20に投入してもよいし、粉体供給用ホッパー20に投入する粉体原料を予め混合(粉体混合操作)して混合粉体としてもよい。膨潤液の均質性の観点からは、粉体供給用ホッパー20に投入する粉体原料は、予め混合して混合粉体としておくことが好ましい。前記粉体混合操作は特に限定されず、公知の粉体混合方法を用いることができ、例えば、タンブラーミキサーを用いた混合方法が挙げられる。
【0051】
ミキサー室102への粉体原料の供給速度は、粉体原料の種類や量、膨潤用分散媒の種類等を勘案して決定することができ、例えば、1〜10kg/minの範囲で決定することが好ましく、3〜6kg/minの範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、粉体原料のダマ発生を防止しながら、効率的に膨潤液を製造できるためである。
【0052】
ミキサー室102への膨潤用分散媒の供給速度は、粉体原料の種類や量、膨潤用分散媒の種類等を勘案して決定することができ、例えば、10〜100kg/minの範囲で決定することが好ましく、40〜80kg/minの範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、粉体原料のダマ発生を防止しながら、効率的に膨潤液を製造できるためである。
【0053】
ロータ110の回転速度は粉体原料の供給量、膨潤用分散媒の供給量等を勘案して決定することができ、例えば、ロータ110の外周部、即ち、羽根114の先端の線速度を10〜50m/sの範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、粉体原料のダマ発生を防止しながら、効率的に膨潤液を製造できるためである。
【0054】
ミキサー室102内の圧力は粉体供給部22の能力やミキサー部100の能力を勘案して決定することができ、例えば、大気圧に対して−80〜−5kPaの減圧度とすることが好ましい。上記下限値未満であると、粉体供給部22の供給速度よりも過剰に粉体原料が供給され、ミキサー室102内への粉体原料の供給量を正確に制御できなくなる。上記上限値を超えると、粉体供給部22からの粉体原料の排出口率が低下し、ミキサー室102内への粉体原料の供給量を正確に制御できなくなるためである。
【0055】
《混練操作》
混練操作は、前記膨潤操作で得られた膨潤液と、前記膨潤操作で添加した粉体原料の残部(残粉体原料)、及び、前記膨潤操作で添加した液体原料の残部(残液体原料)とを混合し、歯磨剤を得る操作である。
前記混練操作としては、例えば、混練機を用いて膨潤液と残粉体原料と残液体原料とを混合する方法が挙げられる。
【0056】
混練機としては、一般的に混練機(科学技術総合研究所発行「混練装置」参照)と呼ばれる、粉体を液体中に均一分散することを目的とした混合装置を用いる。この混練機には、ホイール形、ボール形、ブレード形、ロール形等あるが、この中でもブレード形が高粘度液の混合効率の点から好ましい。ブレード形混練機の種類としてはニーダー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー等が挙げられる。中でも、洗浄性及び多量の研磨剤を効率的に混合分散できる点から、ニーダー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサーがより好ましい。かかるミキサーを用いることで、高い粘度の歯磨剤製造においても、効率的に均質に混合できる。なお、混練機は、混練操作中に歯磨剤成分を脱泡するため、ミキサー内を減圧できる真空式の混練機であることが好ましい。
【0057】
混練操作における混合手順は特に限定されず、例えば、膨潤液を混練機に投入し、次いで残粉体原料の全量と残液体原料の全量とを混練機に投入して混合する方法が挙げられる。ただし、得られる歯磨剤の香味発現の観点から、次のような手順で混練操作をすることが好ましい。
【0058】
まず、膨潤液の全量を投入した混練機に、香料を投入し膨潤液と混合する。次いで、研磨剤を混練機に投入し、膨潤液及び香料と混合する。この際、研磨剤の投入は、研磨剤をスラリー化して投入する場合であっても、香料より後に混練機に投入することが好ましい。そして、発泡剤を除く残粉体原料及び残液体原料の全量を混練機に投入し、減圧下で任意の時間混合する。そして、発泡剤を添加し、減圧下にて任意の時間混合することで歯磨剤を得ることができる。このように、香料を研磨剤、発泡剤等の残粉体原料より前に膨潤液に混合することで、香料が粉体原料に吸着することを防止できるため、得られる歯磨剤の香味発現が良好となる。
【0059】
混練操作における温度は、歯磨剤の配合に応じて決定することができ、例えば、15〜40℃の範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、混練操作に要する時間を短縮し、かつ、香味品質を高く維持できるためである。
【0060】
混練操作における減圧の程度は、例えば、1〜10kPa(絶対圧)の範囲で決定することが好ましい。上記範囲内であれば、歯磨剤中の気泡を効率的に脱泡できるためである。
【0061】
以上、説明したように、予め(A)成分と(B)成分とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で混合する予備混合工程を設けることで、(A)成分を膨潤液中に均一に分散できる。この結果、単に(A)成分と(B)成分とを予め混合するという簡易な方法で保存中における歯磨剤の変色を防止できるため、煩雑な工程を要することなく効率的に歯磨剤を製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0063】
[着色抑制効果]
着色抑制効果は、50℃で1ヶ月保存した後の歯磨剤の色調変化について、下記の着色抑制率の測定及び目視評価にて確認した。
【0064】
(着色抑制率の測定)
保存開始時の歯磨剤の色調(ΔE初期色調)、及び、50℃で1ヶ月保存した後の歯磨剤の色調(ΔE保存後色調)を測定し、測定したΔE初期色調とΔE保存後色調とから、下記(2)式により着色抑制率を算出した。歯磨剤の色調の測定は、歯磨剤を付属の30mmφの円筒型セルに充填し、はみ出た歯磨剤をすりきり、色差計(Spectrophotometer SE2000、日本電色工業株式会社製)を用いてΔEを2回測定し、その平均値をΔE初期色調又はΔE保存後色調とした。
【0065】
着色抑制率(%)=(ΔE保存後色調−ΔE初期色調)÷ΔE初期色調×100 ・・・(2)
【0066】
(着色抑制目視評価)
着色抑制目視評価は、10名の専門パネラーにより、冷蔵(0〜5℃)で1ヶ月保存した歯磨剤を標準品とし、50℃で1ヶ月保存した歯磨剤の色調を下記評価基準に従い目視で評価した。
【0067】
<評価基準>
◎:10名中8名以上が標準品と比較して、色調変化が抑制されていると回答
○:10名中6〜7名以上が標準品と比較して、色調変化が抑制されていると回答
△:10名中4〜5名以上が標準品と比較して、色調変化が抑制されていると回答
×:色調変化が抑制されていると回答したのは、10名中3名以下
【0068】
[使用原料]
実施例及び比較例に使用した(A)成分:無機酸化物、(B)成分:甘味剤、粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤、任意成分を表1に示す。(B)成分として用いたサッカリンナトリウム、マルトースについては、以下のように処理を行い、粒子径の調整を行った。
【0069】
【表1】

【0070】
(サッカリンナトリウム)
表1に示したサッカリンナトリウムを篩により、平均粒子径が300μm、500μm、950μm、1500μm、1700μmとなるように分級した。
【0071】
(マルトース)
表1に示したマルトースをマルトース1kgに対し沸騰した精製水4kgを加えて溶解し、マルトース水溶液を調製した。該マルトース水溶液を25℃で24時間放置後、析出した結晶を濾過し採取した。次に、採取した結晶を減圧乾燥(100kPa、25℃、24時間)し、乾燥した結晶を得た。該乾燥した結晶を粉砕機(ロータースピードミル P−14、フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて粉砕した。粉砕後の結晶を篩で分級し、平均粒子径を950μmに調整したマルトースを得た。
【0072】
[実施例1〜13、比較例1〜3、5、6]
表2〜5の配合に従い、以下の工程により歯磨剤50kgを製造した。
(予備混合工程)
(A)成分と(B)成分とをタンブラーミキサー(TMH−65、株式会社セイワ技研製)を用い、室温、大気圧条件下で混合し、予備混合物を調製した。ドラムの傾斜は45度、ドラム回転数は24rpm、混合時間は10分であった。
【0073】
(本混合工程)
<粉体混合操作>
本混合工程の粉体混合操作として、予備混合工程で得られた予備混合物と、カラギーナンと、アルギン酸ナトリウムと、キシリットと、PEG#4000とをタンブラーミキサーを用いて混合し、混合粉体を得た。ドラムの傾斜は45度、ドラム回転数は24rpm、混合時間は10分であった。
【0074】
<膨潤操作>
膨潤操作には、図1、2に示す連続式混合分散機と同様の連続式混合分散機であるクアドロワイトロンZC0(クアドロ社製)を用いた。連続式混合分散機の運転条件(ロータ中心軸から粉体供給路の軸線までの距離r、ミキサー室内半径R、偏心比r/R、ミキサー室減圧度、羽根先端の線速度、混合粉体供給速度、分散媒供給速度)は、表2〜5に記載のとおりであった。
表2〜5中の「分散媒」の組成に従い、ソルビット水溶液(70%)、プロピレングリコール、水を混合して膨潤用分散媒とした。該膨潤用分散媒を表中の分散媒供給速度により連続式混合分散機のミキサー部に供給すると共に、粉体混合操作で得られた混合粉体を表中の混合粉体供給速度により、粉体供給路からミキサー部に供給し、室温下にて膨潤液を調製した。
【0075】
<混練操作>
混練操作には、混練機として真空式ニーダー(シグマブレード型真空式ニーダー60L、近畿機械製作所製)を用いた。まず、混練機に膨潤操作で得られた膨潤液と、香料とを投入し、5分間混合した。次いで、研磨剤を粉体の状態で混練機に投入し、5分間混合した。さらに発泡剤を除く全ての残原料を混練機に投入し、1〜10kPa(絶対圧)の圧力下で10分間混合し、脱泡した。その後、発泡剤を混練機に投入し、1〜10kPa(絶対圧)の圧力下で10分間混合し歯磨剤を得た。なお、混練操作において、混練機の攪拌翼の回転数は、40rpm(攪拌翼先端速度:0.6m/s)であった。得られた歯磨剤について、着色抑制率の測定及び着色抑制目視評価を行い、その結果を表2〜5に記す。
【0076】
[実施例14]
表4の配合に従い、以下の工程により歯磨剤50kgを製造した。
(予備混合工程)
実施例1と同様にして、予備混合物を得た。
【0077】
(本混合工程)
本実施例では、膨潤操作を設けず、混練機を用い以下の操作により歯磨剤を製造した。
<粉体混合操作>
予備混合工程で得られた予備混合物と、カラギーナンと、アルギン酸ナトリウムと、キシリットと、PEG#4000とをタンブラーミキサーを用い、実施例1と同様にして混合粉体を得た。
【0078】
<混練操作>
混練操作には、混練機として真空式ニーダーを用いた。まず、表4の配合に従い、湿潤剤及び精製水の全量を混練機に投入し混合して分散媒とした。次いで、前記粉体混合操作で得られた混合粉体を混練機に投入し、10分間混合した。続いて、香料を混練機に投入し、5分間混合した後、研磨剤を粉体の状態で混練機に投入し、5分間混合した。さらに発泡剤を除く全ての残原料を混練機に投入し、1〜10kPa(絶対圧)の圧力下で10分間混合し、脱泡した。その後、発泡剤を混練機に投入し、1〜10kPa(絶対圧)の圧力下で10分間混合し歯磨剤を得た。なお、混練操作において、混練機の攪拌翼の回転数は、40rpm(攪拌翼先端速度:0.6m/s)であった。得られた歯磨剤について、着色抑制率の測定及び着色抑制目視評価を行い、その結果を表4に記す。
【0079】
[比較例4]
(B)成分を添加しない、即ち、予備混合工程を設けずに(A)成分を単独で粉体混合操作に用いた以外は、実施例1と同様にして歯磨剤を得た。得られた歯磨剤について、着色抑制率の測定及び着色抑制目視評価を行い、その結果を表4に記す。
【0080】
[比較例7]
(B)成分を添加しない、即ち、予備混合工程を設けずに(A)成分を単独で粉体混合操作に用いた以外は、実施例14と同様にして歯磨剤を得た。得られた歯磨剤について、着色抑制率の測定及び着色抑制目視評価を行い、その結果を表5に記す。
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
表2〜4の実施例1〜14の結果のとおり、予備混合工程を設け(B)成分と(A)成分とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で予め混合して予備混合物を得、該予備混合物を他の粉体原料(粘結剤、発泡剤等)及び液体原料(水、香料)と混合することで、優れた着色抑制効果を有する歯磨剤が得られることが判った。加えて、実施例14の結果から、予備混合工程を設けることで、本混合工程の混合方法にかかわらず、着色抑制効果に優れる歯磨剤が得られることが判った。
一方、(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1の範囲外とした比較例1〜7は、着色抑制率が90%未満であり、着色抑制目視評価が×又は△であった。さらに、(B)成分を添加しなかった(予備混合工程を設けなかった)比較例4、7では、着色抑制率が80%未満であり、着色抑制目視評価が×であった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の歯磨剤の製造方法に用いる連続式混合分散機の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の歯磨剤の製造方法に用いる連続式混合分散機のミキサー部100を拡大した模式図である。
【図3】本発明の歯磨剤の製造方法に用いる連続式混合分散機の粉体供給路とロータとの位置関係を説明する概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:無機酸化物と、(B)成分:甘味剤とを(B)/(A)(質量比)=1/10〜1/1で混合して予備混合物を得る工程と、
前記予備混合物を粘結剤、湿潤剤、研磨剤、発泡剤からなる群より選択される少なくとも一の成分、香料及び水と混合する工程とを有する、歯磨剤の製造方法。
【請求項2】
前記無機酸化物は、酸化チタン及び/又は酸化アルミニウムである、請求項1に記載の歯磨剤の製造方法。
【請求項3】
前記甘味剤は、サッカリンナトリウム及び/又はマルトースである、請求項1又は2に記載の歯磨剤の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−138132(P2010−138132A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317453(P2008−317453)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】