説明

歯磨剤用の改良された清掃研磨剤の製造法

研磨粒子の反応器後の分粒を空気分級技術によって施した、優れた清掃性能と低研磨性を有する沈降シリカ研磨剤組成物の製造法を提供する。特定の粒径範囲を標的にすることによって、より高い被膜(ペリクル)清掃レベルがシリカ生成物自身の象牙質研磨性まで増大することなく達成できることが解明された。その結果、そのような分級研磨シリカ生成物を含み、特に望ましい清掃利益を示す歯磨剤が、改良された歯研磨、ホワイトニングなどのために、歯の硬質表面に有害な影響を与えることなく提供できる。本発明には、この選択的プロセススキームの生成物及びそのような分級シリカ生成物を含有する歯磨剤も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は研磨組成物の製造法に関する。更に詳しくは、本発明は、研磨粒子の反応器後の分粒を空気分級技術によって施した、優れた清掃性能と低研磨性を有する沈降シリカ研磨剤組成物の製造法に関する。特定の粒径範囲を標的にすることによって、より高い被膜(ペリクル)清掃レベルがシリカ生成物自身の象牙質研磨性まで増大することなく達成できることが解明された。その結果、そのような分級研磨シリカ生成物を含み、特に望ましい清掃利益を示す歯磨剤が、改良された歯研磨、ホワイトニングなどのために、歯の硬質表面に有害な影響を与えることなく提供できる。本発明には、この選択的プロセススキームの生成物及びそのような分級シリカ生成物を含有する歯磨剤も含まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
練り歯磨き製造業者は、高清掃性及び低研磨性を有する歯磨剤の製造に懸命である。そのような製造業者は、練り歯磨き剤に研磨物質を配合することによってこの目標を達成している。研磨物質は、被膜(ペリクル)を含む様々な付着物を歯の表面から除去するために従来の歯磨剤組成物にも含まれている。被膜は固く付着し、褐色又は黄色の色素を含むことも多いため歯の見た目を悪くする。清掃は重要であるが、研磨剤は歯を損傷するほど攻撃的であってはならない。理想的には、効果的な歯磨剤の研磨材料は、被膜は最大限除去するが、歯の硬質表面に対する研磨及び損傷は最小限にとどめるものである。結果的に、とりわけ、歯磨剤の性能は研磨剤成分に非常に左右される。
【0003】
いくつかの水不溶性研磨剤が歯磨剤組成物に使用又は記載されている。これらの研磨剤は、天然及び合成の研磨粒子材料を含む。一般に知られている合成研磨剤は、アモルファス沈降シリカ、シリカゲル、リン酸二カルシウム及びその二水和物形、ピロリン酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウム(PCC)などである。歯磨剤用のその他の研磨剤は、チョーク、炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、メタリン酸カリウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなどである。
【0004】
特に、合成的に製造されたアモルファス沈降シリカは、それらの清掃能、相対的安全性、及び湿潤剤、増粘剤、フレーバー、虫歯予防剤などの典型的な歯磨剤成分との適合性のために、歯磨剤の研磨成分として使用されている。合成沈降シリカは一般的に、可溶性アルカリケイ酸塩から、鉱酸及び/又は酸性ガスの添加によってアモルファスシリカの不安定化及び沈降によって製造される。そのときの製造条件は、最初に形成される一次粒子は互いに会合して複数の集合体(aggregate、すなわち一次粒子の離散クラスター)を形成しやすいが、三次元ゲル構造に凝集(agglomeration)しない条件下で行われる。得られた沈降物は、反応混合物の水性フラクションから、ろ過、洗浄、及び乾燥工程によって分離される。次いで該乾燥生成物は、適切な粒径を提供するために機械的に粉砕される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような従来製造され利用されている沈降シリカ研磨剤が、一般に総体的な清掃及び研磨の質という点から歯磨剤用に製造され提供されている。そのような従来製品はこれらの領域で相応の優れた利益を有しているが、被膜清掃能を犠牲にせずにある低い研磨レベルを標的にすることに関して一定の限界が存在することも指摘されている。特に、それがより効果的な研磨及び/又は歯のホワイトニング用途のための可能性ある補助的研磨/清掃シリカ製品というだけでなく、歯と歯茎の境目で余計な象牙質研磨を受けやすいユーザーに関わる問題だからである。結果として、歯科用シリカ材料工業内にはそうした目標に向けての改良が望まれる領域がある。
【0006】
以上のことを考慮すると、優れた清掃性能を提供しながらも研磨値の低い、練り歯磨き組成物に配合できる沈降シリカ組成物に対する継続的なニーズがある。その目的に向け、以下の発明はそのような切望される結果にかなうことが証明された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な要旨
本発明はアモルファス沈降シリカ組成物を含み、該シリカ組成物は、約5〜約15ミクロン、好ましくは約6〜約10ミクロン、更に好ましくは約7〜約9ミクロンのメジアン粒径、2未満、好ましくは約1.25〜約1.75、更に好ましくは約1.25〜約1.40の粒径スパン、及び約0.3を超える、好ましくは約0.35〜約0.50、更に好ましくは約0.40〜約0.50粒径ベータ値を有する。
【0008】
本発明は、約5wt%〜約35wt%の上記アモルファス沈降シリカ組成物を含む歯磨剤も含み、該歯磨剤は、約130〜200(好ましくは約130〜約195)の放射性象牙質研磨(radioactive dentin abrasion,RDA)レベル、約100〜140(好ましくは約110〜約140)の被膜清掃比(pellicle film cleaning ratio,PCR)、及び約0.65〜約1.1、好ましくは約0.68〜約1.0のPCR:RDA比を示す。
【0009】
基本的に、集中した範囲内に含まれる特定粒径の低構造性研磨シリカ材料を提供することは、そのような材料を含有する歯磨剤で歯を清掃する際の性能に、より大きな均一性をもたらす。同様に、特定範囲内の粒径のそのような材料を提供することは、歯表面の特定領域に対して、適切な清掃を同時に過剰の研磨レベルを示すことなく行うことも可能にする。
発明の詳細な説明
本明細書中で使用しているすべての部、パーセンテージ及び比率は特に明記しない限り重量による。本明細書中に引用したすべての文献は参照によって本明細書に援用する。以下に、練り歯磨きなどの歯磨剤に使用するためのシリカを提供する本発明の好適な態様を記載する。当該シリカの最適な使用は歯磨剤においてであるが、本シリカは様々なその他の消費者製品にも使用できる。
【0010】
“混合物”とは、二つ以上の物質の何らかの組合せを意味し、その形態は、例えば、限定するつもりはないが、不均一混合物、懸濁液(物)、溶液、ゾル、ゲル、分散液(物)、又はエマルジョンなどである。
【0011】
“歯磨剤”とは、限定するつもりはないが、練り歯磨き、歯磨き粉及び義歯用クリームなどの口腔ケア製品を意味する。
“粒径スパン”とは、10体積パーセンタイルの粒子の累積直径(D10)マイナス90パーセンタイルの累積体積(D90)を50体積パーセンタイルの粒子の直径(D50)で割ったもの、すなわち(D10−D90)/D50を意味する。スパン値が低いほど粒径分布が狭いことを示す。
【0012】
“粒径ベータ値”とは、25体積パーセンタイルの粒子の累積直径(D25)を75体積パーセンタイルの粒子の直径(D75)で割ったもの、すなわちD25/D75を意味する。ベータ値が高いほど粒径分布が狭いことを示す。
【0013】
本発明はアモルファス沈降シリカ組成物に関する。これは、二酸化ケイ素又はSiOとしても知られ、練り歯磨き又は歯磨剤に入れると改良された清掃及び研磨特性を付与する。これらの研磨シリカは、食べカスや残留した着色シミを除去することによって歯を清掃するだけでなく、歯の表面を磨くためにも機能する。本発明のシリカは、清掃利益が少ないと考えられる微粒子及び研磨の増大に寄与すると考えられる粗大粒子が分級によって除去されているので、より狭い粒径分布を有しており、研磨力を抑えた優れた清掃性を有する練り歯磨きの調剤に特に有用である。
【0014】
十分量の研磨シリカを練り歯磨き組成物に加えて、練り歯磨きの放射性象牙質研磨(“RDA”)値が約50〜約250になるようにする。50未満のRDAでは練り歯磨きの清掃利益は最小限となるが、RDAが250を超えると練り歯磨きは研磨力が大きすぎて歯と歯茎の境目の歯象牙質を損傷しかねない。好ましくは歯磨剤は少なくとも約50、例えば約70〜200のRDA値を有するべきである。
【0015】
練り歯磨きのRDAは、研磨剤の硬度、研磨剤の粒径及び練り歯磨き中の研磨剤の濃度に依存する。RDAは、John J.Hefferrenの論文“A Laboratory Method for Assessment of Dentifrice Abrasivity”(Journal of Dental Research,Vol.55,no.4(1976),pp.563−573)に記載の方法によって測定される。シリカの研磨性又は硬度はEinlehner法によって測定することもできる。これについては以下で詳細に説明する。
【0016】
本発明によって、優れた清掃性能を有するだけでなく低研磨性の研磨アモルファスシリカが開発された。噴霧乾燥され粉砕されたシリカに対して反応器後空気分級装置を使用することにより、所定のPCR範囲にわたって比較的低いRDA及びEinlehner研磨値を有する研磨シリカ材料が製造できる。
【0017】
本発明のシリカ組成物は以下のプロセスに従って製造される。このプロセスでは、既に形成された乾燥シリカを空気分級機に供給し、微粒子〜粗粒子から所望のフラクションを分離する。シリカ研磨剤の供給材料は、任意の構造、例えば極低〜中構造の沈降シリカ又はシリカゲルであってよいが、極低〜低構造の沈降シリカが好適である。本明細書中で使用されるシリカの構造は、S.K.Wasonの論文“Cosmetic Properties and Structure of Fine−particle Synthetic Precipitated Silicas”(Journal of Soc.Cosmet.Chem.,Vol.29,(1978),pp.497−521)に記載されており、該論文は引用によって本明細書に援用する。そのような本発明の組成物は、アマニ油吸収値約50ml/100g〜約90ml/100gを示すシリカ粒子を含む。
【0018】
シリカ供給材料は、米国特許第6,616,916号、5,869,028号、4,421,527号及び3,893,840号の記載に従って製造できる。前記特許は引用によって本明細書に援用する。
【0019】
乾燥シリカ供給材料は分級機に未粉砕供給原料として導入してもよいし、粉砕してから分級機に導入してもよい。未粉砕の供給原料はシリカの乾燥に使用される任意の従来装置中で乾燥できる。例えば、噴霧乾燥、ノズル乾燥(例えばタワー又は噴水)、フラッシュ乾燥、ロータリーホイール乾燥又はオーブン/流動床乾燥である。乾燥シリカ生成物は一般的に水分濃度1〜15wt%であるのがよい。
【0020】
あるいは、分級機に導入する前に、乾燥シリカの粒径を従来の粉砕(grinding)及び微粉砕(milling)機で減径し、約5μm〜約25μm、例えば約5μm〜約15μmの所望粒径にしてもよい。粉砕にはハンマーミル又は振子型ミルをワンパス又はマルチパス方式で使用すればよい。微粉砕は流体エネルギー又はエアジェットミルによって実施できる。
【0021】
次いで乾燥シリカを空気分級にかけて狭い粒径分布を有する本発明のシリカを得る。シリカの分級は、生成物から微粒子及び粗大粒子を除くことによって粒径分布を緊密化する。分級機のハウジングはプレナムとして働く。ここに計量された一次空気が入口ダクトを通じて導入される。この空気は、ロータ(回転子)の両片方(two rotor halves)の先端とステータ(固定子)との間の狭い隙間を通って分級機のロータに入る。これらの対向する高速ストリームが乱流分散ゾーンを形成する。供給材料は中央の管を通って系に入るが、この管は半径に対してある角度をなし、慣性による渦流への粗粒子注入距離が最小限になるようにしてある。ブレードの外縁とロータの外周部との間のスペースに分級ゾーンが形成される。遠心力場によって外側に拒絶された粗大生成物は、サイクロンに搭載されたジェットポンプを用いて粗大粒子出口から分級機の外に搬出される。サイクロンのオーバーフローはリサイクルポートを通って分級機に戻る。微細生成物は中央出口を通って一次空気流と共に分級機を出る。シリカは、シリカ生成物が所望の粒径分布を有するようになるまで分級される。
【0022】
粒径分布の緊密性(tightness)を説明する二つの基準は、ペンシルバニア州BoothwynのHoriba Instrumentsから入手できるHoribaレーザ光散乱装置を用いて測定される粒径スパンとベータ値である。所定の組成物中のシリカ粒子のサイズ分布は、累積体積パーセントを粒径の関数としてプロットするHoriba上に示すことができる。ここで、累積体積パーセントは、所定値以下の粒径を有する分布の体積パーセントであり、粒径は等価の球状粒子の直径である。分布におけるメジアン粒径は、その分布についてHoriba上で示される50%地点におけるシリカ粒子のミクロンで表したサイズである。
【0023】
所定の組成物の粒径分布の幅はスパン比を用いて特徴付けできる。スパン比は、10体積パーセンタイルの粒子の累積直径(D10)マイナス90パーセンタイルの累積体積(D90)を50体積パーセンタイルの粒子の直径(D50)で割ったもの、すなわち(D10−D90)/D50と定義される。
【0024】
粒径分布はベータ値によっても特徴付けされる。粒径ベータ値は、25体積パーセンタイルの粒子の累積直径(D25)を75体積パーセンタイルの粒子の直径(D75)で割ったもの、すなわちD25/D75である。ベータ値が高いほど粒径分布が狭いことを示す。
【0025】
次に、この研磨アモルファス沈降シリカは、歯磨剤組成物、例えば練り歯磨きに、単独の研磨剤として又は他の研磨成分と共に配合できる。
研磨成分のほかに、歯磨剤は、歯磨剤の製造に通常使用されているいくつかのその他の成分、例えば湿潤剤、増粘剤(時にバインダ、ガム、又は安定剤としても知られる)、抗菌剤、フッ化物、甘味剤、及び共界面活性剤を含有してもよい。
【0026】
湿潤剤は、歯磨剤に質感又は“口当たり”を加えると共に歯磨剤の乾燥を防止する役割を果たしている。適切な湿潤剤は、ポリエチレングリコール(様々に異なる分子量の)、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、及び加水分解水添デンプン、並びにこれらの化合物の混合物などである。
【0027】
増粘剤は、練り歯磨きを相分離に対して安定化させるゼラチン構造を提供するため、本発明の歯磨剤組成物に有用である。適切な増粘剤は、シリカ増粘剤、デンプン、グリセリンデンプン、カラヤガム(ステルクリアガム)、トラガカントガム、アラビアガム、ガティガム、アカシアガム、キサンタンガム、グアガム、ヴィーガム(Veegum)、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ペクチン、ゼラチン、セルロース、セルロースガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチル、ヒドロキシメチルカルボキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、硫酸化セルロース、並びにこれらの化合物の混合物などである。バインダの典型的な量は練り歯磨き組成物の約0wt%〜約15wt%である。
【0028】
抗菌剤は、微生物の存在を公知有害レベル未満に削減するために入れることができる。適切な抗菌剤は、ピロリン酸四ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ホウ酸、フェノール系化合物、例えば、ベータナフトール、クロロチモール、チモール、アネトール、ユーカリプトール、カルバクロール、メントール、フェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ヘキシルレゾルシノール、ラウリルピリジニウムクロリド、ミリスチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムフルオリド、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミドなどである。存在する場合、抗菌剤の量は好ましくは練り歯磨き組成物の約0.1wt%〜約5wt%である。
【0029】
甘味剤は、製品に良味を与えるために練り歯磨き組成物に加えられる。適切な甘味剤は、サッカリン(ナトリウム、カリウム又はカルシウムサッカリンとして)、シクラメート(ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩として)、アセスルファム−K、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリチルリチン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、及びグルコースなどである。
【0030】
練り歯磨きは、虫歯の発生及び進行を防止するためにフッ化物塩も含有するのが好ましい。適切なフッ化物塩は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化亜鉛、フッ化スズ、フッ化亜鉛アンモニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ラウリルアミンヒドロフルオリド、ジエチルアミノエチルオクトイルアミドヒドロフルオリド、ジデシルジメチルアンモニウムフルオリド、セチルピリジニウムフルオリド、ジラウリルモルホリニウムフルオリド、サルコシンフッ化スズ(sarcosine stannous fluoride)、グリシンフッ化カリウム(glycine potassium fluoride)、グリシンヒドロフルオリド、及びモノフルオロリン酸ナトリウムなどである。フッ化物塩の典型的な量は約0.1wt%〜約5wt%である。
【0031】
界面活性剤も、追加の清掃剤及び発泡剤として入れることができる。アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤から選ばれうる。ラウリル硫酸ナトリウムなどの金属硫酸塩のようなアニオン性界面活性剤が好適である。
【0032】
本明細書中に開示された歯磨剤には、様々な追加成分、例えば脱感作薬、治療薬、その他の虫歯予防剤、キレート剤/封鎖剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、その他の歯垢防止/歯石防止剤、乳白剤、抗生物質、抗酵素、酵素、pH調整剤、酸化剤、抗酸化剤、ホワイトニング剤、着色剤、フレーバー、及び保存剤なども加えることができる。
【0033】
最後に、言及した添加剤のほかに組成物の残り部分には水が供給される。水は好ましくは脱イオン化され、不純物が除去されたものである。歯磨剤は、約10wt%〜約40wt%、好ましくは20〜35wt%の水を含む。
発明の好適な態様
【実施例】
【0034】
本発明を以下の特定の非制限的実施例についてさらに詳細に説明する。
比較例A〜B
本発明の改良を示すために、2つの市販沈降シリカZEODENT(登録商標)103及びZEODENT(登録商標)124(それぞれ比較例A及び比較例B)を特性分析した。これらの製品は、ニュージャージー州エジソンのJ.M.Huber Corporationから入手できる。これらの実施例の物理的性質は以下の表2にまとめてある。
実施例1〜2
実施例1及び2では、歯磨剤並びに他の製品に使用するのに適切なシリカを本発明に従って製造した。
【0035】
実施例1のシリカの出発材料は、比較例AのZEODENT(登録商標)103であった。次に乾燥沈降シリカを、表1に記載の条件下、ミネソタ州コテージグローブのCCE Technologies,Inc.製造のHigh Efficiency Centrifugal Air Classifier(Model 250)にマルチパス方式で通すことによって空気分級した。
【0036】
実施例2の出発材料は、一次粉砕されている比較例BのZEODENT(登録商標)124シリカであった。次にこの粉砕沈降シリカを表1に記載の条件下で空気分級した。
【0037】
【表1】

【0038】
上記のように製造した後、メジアン粒径、平均粒径、粒径ベータ値、粒径スパン、%325メッシュ残分、BET表面積、CTAB表面積、吸油値、及びEinlehner研磨を含む、粒状シリカのいくつかの性質を測定した。
【0039】
粒径測定は、ペンシルバニア州BoothwynのHoriba Instrumentsから入手できるModel LA−910のレーザ光散乱装置を用いて測定した。レーザ光線を、液体中に浮遊した可動粒子流を含む透明セルに投射する。粒子に当たった光線は粒子の大きさに反比例する角度で散乱する。光検出器のアレイが予め決められたいくつかの角度で光の量を測定する。次に、測定された光束値に比例する電気信号がマイクロコンピュータシステムによって処理され、粒径分布のマルチチャンネルヒストグラムが形成される。粒径スパン((D10−D90)/D50)及びベータ値(D25/D75)のほかにメジアン及び平均粒径を測定した。
【0040】
%325ふるい残分は、50gのシリカを500〜600mlの水の入った1リットルビーカーに量り入れることによって測定した。シリカ粒子を水中に沈降させてから、全材料が分散するまでよく混合した。水圧はスプレーノズル(Fulljet 9.5,3/8G,316ステンレススチール,Spraying Systems Company)によって20〜25psiに調整した。ふるいのスクリーンクロス(325メッシュスクリーン、直径8”)をノズルの下4〜6インチに保持し、スプレーしながら、ビーカーの内容物を325メッシュスクリーンの上に徐々に注いだ。ビーカー壁に残った材料も濯いでスクリーンに注いだ。スプレーをスクリーンの端から端へ掃引(スイーピング)動作を用いて動かしながら洗浄を2分間実施した。2分間のスプレー後(スクリーン開口部より小さいすべての粒子はスクリーンを通過したはず)、スクリーン上に残った残分を洗浄してスクリーンの片側に寄せ、噴射ボトルからの水で洗浄することによって予め秤量したアルミニウム秤量皿に移した。必要最小量の水を用いてすべての残分を秤量皿に確実に移した。皿を2〜3分間放置した後(残分の沈降)、透明水を上からデカントした。皿をオーブンに入れ(“Easy−Bake”赤外オーブン又は従来オーブン、105℃にセット)、残分が乾燥して恒量になるまで乾燥させた。乾燥残分サンプルと皿を再秤量した。%325残分の計算は次のように行った。
【0041】
%325残分 = [(残分重量、g)/(サンプル重量、g)]×100
BET表面積は、Brunaurら,J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)のBET窒素吸着法によって決定した。
【0042】
シリカのCTAB外表面積は、シリカ表面上のCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)の吸収によって決定される。過剰分は遠心によって分離し、界面活性剤電極を用い、ラウリル硫酸ナトリウムによる滴定で決定する。シリカの外表面積は吸着されたCTABの量から決定する(吸着前後のCTAB分析)。
【0043】
具体的には、約0.5gのシリカを正確に秤量し、100.00mlのCTAB溶液(5.5g/L)入りの250mlビーカーに入れ、電気撹拌プレート上で30分間混合し、次いで10,000rpmで15分間遠心分離する。1mlの10%Triton X−100を、100mlのビーカー中の5mlの透明上清に加える。pHを0.1 HClで3.0〜3.5に調整し、検体を界面活性剤電極(Brinkmann SUR1501−DL)を用いて0.0100Mのラウリル硫酸ナトリウムで滴定し、終点を決定する。
【0044】
油の吸収はアマニ油を用い、練り合せ(rubout)法によって測定した。この方法では、油をシリカサンプルと混合し、堅いパテ様ペーストが形成されるまで平滑面上でスパチュラで練り合わせる。広げるとカールするようなペースト混合物を得るのに要した油の量を測定することにより、シリカの吸油値を計算することができる。この値は、シリカの吸収能を完全に飽和するのにシリカの単位重量あたりに要したの油の体積を表す。吸油値の計算は次のように行った。。
【0045】
吸油値 =[(吸油量、ml)/(シリカの重量、グラム)]×100 (II)
= ml油/100gシリカ
Brass Einlehner(BE)摩耗値は、Einlehner AT−1000摩耗試験機を使用して測定した。この試験では、Fourdrinier真鍮ワイヤスクリーンを秤量し、10%水性シリカ懸濁液の作用に一定の回転数の間さらし、次に摩耗量をFourdrinierワイヤスクリーンから100,000回転あたり失われた真鍮のミリグラムとして決定する。この試験に必要な消耗品(真鍮スクリーン、摩耗プレート及びPVC管)は、バーモント州ラトランドのDuncan Associatesから入手でき、“Einlehner試験キット”として販売されている。具体的には、真鍮スクリーン(Phosphos Bronze P.M.)を、超音波浴の熱石鹸水(0.5% Alconox)中で5分間洗浄し、次いで水道水で濯ぎ、再度超音波浴中にセットした150mlの水入りビーカー中で濯いだ。スクリーンを再度水道水で濯ぎ、105℃にセットしたオーブンで20分間乾燥させ、デシケータ中で冷却して秤量した。スクリーンは皮脂によるスクリーン汚染を防止するためピンセットで扱った。Einlehner試験シリンダを摩耗プレートと秤量したスクリーンを用いて組み立て(赤線側を下−摩耗側でない)、所定の位置にクランプで留めた。摩耗プレートは約25回の試験の間又はひどく摩耗するまで使用されるが、秤量したスクリーンは1回きりの使用である。
【0046】
100gのシリカを900gの脱イオン水と混合して調製した10%シリカスラリーをEinlehner試験シリンダに注入した。Einlehner PVC管を撹拌軸上に置いた。PVC管は番号付けされた5つの位置を有している。各試験でPVC管の位置は一つずつ上げて5回使用したら廃棄する。Einlehner摩耗装置を組立て直し、装置を87,000回転運転するようにセットする。各試験に約49分かかる。サイクル完了後、スクリーンを取り出して水道水で濯ぎ、水を入れたビーカーに入れ、超音波浴に2分間かけ、脱イオン水で濯ぎ、105℃にセットしたオーブンで20分間乾燥させる。乾燥スクリーンをデシケータ中で冷却し、再秤量する。各サンプルについて2回試験を実施し、結果を平均して100,000回転あたりのmg損失で表す。10%スラリーについて、100,000回転あたりのmg損失の単位で測定された結果を10%Brass Einlehner(BE)摩耗値とすることができる。これらの測定及び試験の結果を以下の表2にまとめてある。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から分かるように、実施例1〜2で製造されたシリカは、比較例A〜Bと比べてメジアン及び平均粒径が小さい。実施例1〜2のシリカは、低い粒径スパンと高い粒径ベータ値によって示されるように、狭い粒径分布を有している。実施例1〜2はまた、Einlehner摩耗値は低いながらも、まずまず又は良好な清掃性能を持つ練り歯磨きを製造するのに十分な研磨性もまだ有している。これに対し、比較例A〜Bは粒径分布が広く、研磨性も高い。
【0049】
消費者製品におけるそれらの効能を示すために、実施例1〜2のシリカ研磨剤を4種類の異なる練り歯磨き組成物に粉末として配合した(番号1〜4)。それぞれ20%及び35%のシリカ配合量である。次にこれらの組成物の性能を、比較例A〜Bで調製した練り歯磨き組成物5〜8(それぞれ20%及び35%のシリカ配合量)の性能と比較した。8種類の練り歯磨き組成物は以下の表3に示す。
【0050】
これらの練り歯磨きサンプルは以下のように製造した。第一の混合物は、以下の成分、すなわちグリセリンとソルビトール、ポリエチレングリコール(CARBOWAX(登録商標)600、コネチカット州ダンベリーのUnion Carbide Corporation社製)、カルボキシメチルセルロース(例えばオランダ、アルンヘムのNoviant社製CEKOL(登録商標)2000、又はデラウェア州ウィルミントンのHercules CorporationのAualonディヴィジョンのCMC−7MXF)を混合し、成分が溶解するまで該第一の混合物を撹拌することによって形成した。第二の混合物は、以下の成分、すなわち脱イオン水、ピロリン酸四ナトリウム、ナトリウムサッカリン、フッ化ナトリウムを混合し、成分が溶解するまで撹拌することによって形成した。次に、第一及び第二の混合物を撹拌しながら混合し、プレミックスを形成した。該プレミックスをRossミキサ(モデル130LDM、ニューヨーク州HaupeaugeのCharles Ross & Co.)に入れ、シリカ増粘剤、二酸化チタン、及びシリカ研磨剤をプレミックスに加え、プレミックスを減圧なしで混合した。次に30インチの真空に引き、各サンプルを15分間混合した後、ラウリル硫酸ナトリウムとフレーバーを加えた。得られた混合物を減速した混合速度で5分間撹拌した。8種類の異なる練り歯磨き組成物は以下の配合表に従って製造した。表中、量はグラム単位である。
【0051】
【表3】

【0052】
練り歯磨き組成物1〜8を上記のように製造後、RDA及びPCRの性質を以下のように決定した。本発明で使用した沈降シリカ組成物の放射性象牙質研磨(RDA)値は、HefferenによってJournal of Dental Res.,July−August(1976),55(4),pp.563−573に示され、またWasonの米国特許第4,340,583号、4,420,312号及び4,421,527号に記載されている方法に従って決定される。これらの出版物及び特許は引用によって本明細書に援用する。
【0053】
練り歯磨き組成物の分析に使用したPCR試験は、“In Vitro Removal of Stain With Dentifrice” G.K.Stookeyら、J.Dental Res.,61,1236−9,1982に記載されている。
【0054】
各練り歯磨き組成物についてPCRとRDAを3回測定し、結果を平均した。RDA及びPCR測定の平均の結果とその測定の比率を以下の表4にまとめた。
【0055】
【表4】

【0056】
表4からわかる通り、本発明のシリカを含有する練り歯磨き(練り歯磨き組成物1〜4)は、対応する対照練り歯磨き(練り歯磨き組成物5〜8)と比べて、すべてのケースで同等のPCRを有していた。驚くべきことに、本発明の練り歯磨き組成物1〜4のRDA値は、対応する対照練り歯磨き組成物5〜8よりも26〜61ポイント低かった。さらに、比率は、本発明の分級シリカ生成物の方が比較のシリカ生成物よりも有意に高いと算出され、現行の研磨剤に優る著明な改良を示した。
【0057】
当業者であれば、広範な発明概念から離れることなく上記態様の変形が可能であることは分かるであろう。従って、本発明は、開示された特定の態様に限定されるのではなく、添付のクレームによって定義される本発明の精神及び範囲に含まれる変形もカバーするものとすることは理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降シリカ研磨剤組成物の製造法であって、
a)複数の乾燥シリカ粒子を準備する工程;
b)前記乾燥シリカ粒子を空気分級によって分粒及び分級する工程;及び
c)前記分粒及び分級された乾燥シリカ粒子を、得られた粒子の少なくとも一群が、約5〜約15ミクロンのメジアン粒径、2未満の粒径スパン、及び0.3を超える粒径ベータ値を示すように分離する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記得られた粒子の少なくとも一群が、約6〜約10ミクロンのメジアン粒径、約1.25〜約1.75の粒径スパン、及び約0.35〜約0.50の粒径ベータ値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記得られた粒子の少なくとも一群が、約7〜約9ミクロンのメジアン粒径、約1.25〜約1.65の粒径スパン、及び約0.40〜約0.50の粒径ベータ値を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記得られた粒子の少なくとも一群内の粒子が、約50ml/100g〜約90ml/100gのアマニ油吸収値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記得られた粒子の少なくとも一群内の粒子が、約50ml/100g〜約90ml/100gのアマニ油吸収値を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記得られた粒子の少なくとも一群内の粒子が、約50ml/100g〜約90ml/100gのアマニ油吸収値を示す、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項1に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項8】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項2に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項9】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項3に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項10】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項4に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項11】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項5に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項12】
少なくとも一つの研磨成分を含む歯磨剤であって、前記少なくとも一つの研磨成分は請求項6に記載の方法によって製造されて得られた粒子である歯磨剤。
【請求項13】
前記歯磨剤が、約130〜200の放射性象牙質研磨(RDA)レベル及び約100〜140の被膜清掃比(PCR)を示す、請求項7に記載の歯磨剤。
【請求項14】
前記歯磨剤が約130〜200のRDAレベル及び約100〜140のPCRを示す、請求項8に記載の歯磨剤。
【請求項15】
前記歯磨剤が約130〜200のRDAレベル及び約100〜140のPCRを示す、請求項9に記載の歯磨剤。
【請求項16】
前記歯磨剤が約130〜200のRDAレベル及び約100〜140のPCRを示す、請求項10に記載の歯磨剤。
【請求項17】
前記歯磨剤が約130〜200のRDAレベル及び約100〜140のPCRを示す、請求項11に記載の歯磨剤。
【請求項18】
前記歯磨剤が約130〜200のRDAレベル及び約100〜140のPCRを示す、請求項12に記載の歯磨剤。

【公表番号】特表2008−525451(P2008−525451A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548295(P2007−548295)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/045188
【国際公開番号】WO2006/071529
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(596129189)ジェイ・エム・ヒューバー・コーポレーション (22)
【Fターム(参考)】