説明

歯磨剤組成物

【解決手段】(A)Mn+2n3n+1(但し、MはNa又はKを示し、nは2〜3の整数である)で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を0.5〜2.0質量%、(B)アルキル硫酸塩を組成物全体の0.5〜1.5質量%、(C)直接還元糖含量が0.030質量%未満のソルビットを20〜45質量%を含有し、組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060質量%未満であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【効果】本発明の歯磨剤組成物は、口腔内の刺激が少なく、長期保存しても変色することがほとんどなく、製剤の分散性、耐乾燥性に優れ、泡立ちと着色汚れ除去効果が良好な使用感を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖状水溶性ポリリン酸塩を含有し、口腔内の刺激が少なく、泡立ちと着色汚れ除去効果、使用性(分散性)が良好で、長期保存における経時での変色抑制効果および耐乾燥性に優れた歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピロリン酸ナトリウム等の直鎖状水溶性ポリリン酸塩が歯の着色汚れを除去する美白用歯磨成分として用いられることは公知である(特許文献1、2、3参照)。また粒子と併用して口腔用組成物に配合することで着色ペリクル除去効果が得られることも知られている(特許文献4参照)。
【0003】
一方、アルキル硫酸塩は優れた泡立ちを示すために広く使用されており、特にラウリル硫酸ナトリウムが従来から繁用されているが、ラウリル硫酸ナトリウムは、それ自身に若干の口腔粘膜刺激性があり(特許文献5参照)、直鎖状水溶性ポリリン酸塩との併用により口腔粘膜刺激性が増強される問題点があった。
【0004】
また、ソルビットは糖アルコールの一種であり、歯磨剤組成物において湿潤剤として配合されており、歯磨製剤の使用感向上、製剤の乾燥防止や液分離抑制などの目的で市販の多くの歯磨剤組成物に配合されている成分である。ソルビットを直鎖状水溶性ポリリン酸塩含有歯磨剤組成物に配合すると、経時で変色劣化が生じること、および加速される問題点があった。
【0005】
ソルビットは、グルコース、フルクトース、ソルボースなどの単糖を還元することで得られ、その製法上において未反応原料として還元糖を微量ながら含むことが知られている。歯磨製剤における還元糖量の影響に関しては、例えば銅化合物を含有する口腔用組成物において、糖アルコールを20〜60%(質量百分率、以下同じ)含有し、組成物中の還元糖含有量が0.03%以下である場合に銅化合物含有組成物の色調変化が抑えられることが開示されている(特許文献6参照)。
【0006】
また、ε−アミノカプロン酸及び/又はトラネキサム酸を含有する歯磨剤組成物において、組成物中の直接還元糖の含有量が0〜0.0060%未満である場合に歯磨剤組成物の色調変化が抑えられることが開示されている(特許文献7参照)。
【0007】
しかしながら、組成物中の直接還元糖含量がある一定量以上であるソルビットと直鎖状水溶性ポリリン酸塩を含有する歯磨剤組成物において、経時で変色劣化が生じること、および加速されることを抑える技術については全く記載されていない。
【0008】
以上のことより、口腔内の刺激が少なく、泡立ちと着色汚れ除去効果、使用性(分散性)が良好で、長期保存における経時での変色抑制効果および耐乾燥性に優れた歯磨剤組成物が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開平9−175966号公報
【特許文献2】特開平10−182389号公報
【特許文献3】特開平9−175966号公報
【特許文献4】特開2003−342141号公報
【特許文献5】特開2005−320255号公報
【特許文献6】特許第2785298号公報
【特許文献7】特開2006−182655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、直鎖状水溶性ポリリン酸塩とアルキル硫酸塩を含有する歯磨剤組成物の口腔内の刺激が少なく、泡立ちと着色汚れ除去効果、分散性が良好で、長期保存における経時での変色抑制効果および耐乾燥性に優れた歯磨剤組成物の提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、水溶性ポリリン酸塩に対し、直接還元糖含量が0.030%未満のソルビットを選択的に使用し、特定量含有させることで、組成物中の直接還元糖の含有量を0.0060%未満と極めて少量に低下させると共に、水溶性ポリリン酸塩とアルキル硫酸塩の含有量を特定範囲とすることで、口腔内の刺激が少なく、泡立ちと着色汚れ除去効果、使用性(分散性)が良好で、長期保存における経時での変色抑制効果および耐乾燥性に優れた歯磨剤組成物を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、(A)Mn+2n3n+1(但し、MはNa又はKを示し、nは2〜3の整数である)で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を0.5〜2.0質量%、(B)アルキル硫酸塩を組成物全体の0.5〜1.5質量%、(C)直接還元糖含量が0.030質量%未満のソルビットを20〜45質量%、組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060質量%未満であることを特徴とする歯磨剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の歯磨剤組成物は、口腔内の刺激が少なく、長期保存しても変色することがほとんどなく、製剤の分散性、耐乾燥性に優れ、泡立ちと着色汚れ除去効果が良好な使用感を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
直鎖状の水溶性ポリリン酸塩は、下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、nは2〜3の整数である。)
で示されるもので、重合度n=2のピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製、東北化学(株)製等)やピロリン酸カリウム(太平化学産業(株)製、東亜合成化学(株)製等)、n=3のトリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製、セントラル硝子(株)製、日本ビルダー(株)製等)やトリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製等)などが挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることができる。nが3を超えると歯磨き後の清掃実感に劣る傾向がある。これらの中ではピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)が汎用されている。
【0015】
上記直鎖状の水溶性ポリリン酸塩の配合量は、組成物全体の0.5〜2.0%、特に1.0〜1.6%とすることが好ましい。配合量が0.5%未満であると、優れた歯の着色汚れ除去効果が得られない場合があり、2.0%を超えると、口腔内粘膜に刺激が生じる場合がある。
【0016】
次に、アルキル硫酸塩としては炭素数が8〜12のものを用いることができ、特に炭素数10〜12、とりわけ12のものが泡立ちの点で好ましく、特にラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製)が汎用される。脂肪酸の炭素数が8未満のものや12を超えるものは、泡立ちの面で劣る。
【0017】
上記アルキル硫酸塩の配合量は、歯磨剤組成物全体の0.5〜1.5%、特に0.8〜1.0%が好ましい。アルキル硫酸塩の配合量が0.5%未満では、充分な泡立ちが得られず、優れた歯の着色汚れ除去効果がない場合があり、1.5%を超えると口腔内に刺激が生じる場合がある。
【0018】
刺激の点から直鎖状の水溶性ポリリン酸塩とアルキル硫酸塩の合計配合量は3.0%未満が好ましい。合計配合量が3.0%以上だと口腔内に強い刺激が生じる場合がある。
【0019】
また、ソルビットとしては、直接還元糖の含有量が0.030%未満のもの、好ましくは下限値0%以上0.015%未満のものを配合する。このようなソルビットとしては、市販品としては例えばNEOSORB70/02SBという製品名でロケット社等から購入することができる。ソルビットの直接還元糖含量が0.030%以上のものを使用すると、経時において組成物が黄変〜褐変し易くなる。
【0020】
上記ソルビットの配合量は、組成物全体の20〜45%であり、歯磨剤組成物の耐乾燥性、分散性の点から好ましくは30〜40%である。ソルビットの配合量が20%未満では、歯磨剤組成物の耐乾燥性が低下し、口元が固化し易くなることで使用性が悪くなり、45%を超えると歯磨製剤の粘性が高く、口腔内での分散性が低下して使用性が悪くなる。なお、ソルビットに関しては、使用性の観点から70%水溶液として用いられることが好ましい。
【0021】
更に、歯磨剤組成物中の直接還元糖の含有量は、下限値0%以上0.0060%未満であることが必須であり、好ましくは0〜0.0050%未満である。歯磨剤組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060%以上では、直鎖状水溶性ポリリン酸塩含有歯磨剤組成物に配合した際、経時で変色劣化が生じる。また、変色劣化が加速されてしまう。
【0022】
本発明組成物においては、組成物中の直接還元糖の含有量は、配合するソルビット中の直接還元糖量に依存しており、上記したような直接還元糖量が特定値未満にコントロールされたソルビットを使用して特定量配合することにより、組成物中の直接還元糖の含有量を上記範囲内にコントロールすることが可能である。なお、本発明においては、上記した組成中の直接還元糖の含有量が上記範囲内であれば、上記ソルビット以外に、必要に応じてその他の糖アルコール、例えばマルチット、ガラクチトール、リボシトール等を添加してもよい。
【0023】
上記した直接還元糖含量はJIS K1509におけるソルビットの直接還元糖量の測定方法に従って測定することができる。
【0024】
本発明の歯磨剤組成物は、上記必須成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で任意成分としてその他の添加剤を配合できる。例えば研磨剤、粘調剤(保湿剤)、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し、製造でき、研磨剤としては、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケ−ト、ポリメチルメタアクリレ−ト、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなどが挙げられる。これらの研磨剤の中ではデキストラナーゼの安定性の観点からシリカ系研磨剤及び水酸化アルミニウムを研磨剤として用いることが好ましい。通常これら研磨剤の配合量の合計は、約10〜50%である。
【0025】
また、清掃助剤として、重曹、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸等の有機酸及びその塩も配合できる。
【0026】
粘稠剤としては、ソルビット以外のもの、例えばグリセリン、プロピレングリコ−ル、分子量200〜6000のポリエチレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等の少なくとも1種以上が使用できる。ソルビット以外の粘稠剤の配合量は組成物全体の0〜60%、特に1〜60%が好ましい。
【0027】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロ一ス、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カ−ボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル、それにモンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられる。通常これら粘結剤の配合量の合計は、約0.5〜3%である。
【0028】
界面活性剤としては、(B)成分のアルキル硫酸塩以外にも本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としてはラウロイルサルコシン塩、ミリスチルサルコシン塩、N一ラウロイルタウリン塩等が挙げられる。ノニオン活性剤としては、例えばアルキル鎖長C8〜C16であるアルキルグリコシド、ショ糖モノ及びジラウレート等の脂肪酸基の炭素数が12〜18であるショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレ−ト、ラウロイルジエタノールアミド等のアルキロイルエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これら界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて配合することができ、配合量は通常、組成物全量に対して0.1〜5.0%である。
【0029】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテ−ム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
防腐剤としては、各種パラベンのほか安息香酸ナトリウム、トリクロサン等の非イオン性抗菌剤、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性抗菌剤、精油成分等が配合可能である。
【0031】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、および、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1.2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0032】
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1質量%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0033】
着色剤としては赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0034】
各種有効成分としては、(A)成分の直鎖状の水溶性ポリリン酸塩以外にも添加することができる。例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ等のフッ化物、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミンC、E 等の抗炎症剤、銅クロロフィル、グルコン酸銅、セチルピリジウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム等の知覚過敏予防剤も配合できる。なお、有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0035】
本発明の歯磨剤組成物は、上記成分を配合して剤型に応じて常法により調製することができる。また、歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用でき、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器、ラミネート(AL(アルミニウム)−プラスチック)容器、金属容器等が使用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0037】
〔実施例1〜14、比較例1〜7〕
以下、本発明の歯磨剤組成物に該当する実施例を示して本発明の特徴及び効果を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0038】
下記表2〜4に示す組成の歯磨剤組成物を下記製造法により調製した。
(製造法)
(1)精製水中に水溶成分(粘結剤、プロピレングリコールを除く)を常温で混合溶解させたA相を調製する。
(2)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたB相を調製する。
(3)攪拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製する。
(4)C相中に、香料、研磨剤、アニオン性界面活性剤等の水溶性成分以外の成分を1.5Lのニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、減圧による脱泡を行い、歯磨剤組成物1.2kgを得た。
これらの歯磨剤組成物の調製にはピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)、ピロリン酸カリウム(太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製)を用いた。その他、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、メチルパラベン、水は粧原基規格品を用い、フッ化ナトリウムは外原規規格品を用いた。ソルビットについては、表1に示したものを配合したが、ソルビット純分は70%であり、表中のソルビットの配合量及び直接還元糖含量は純分換算した値である。なお、直接還元糖含量は、JIS K1509におけるソルビットの直接還元糖量の測定方法に従って測定した値を示した。表1に示すソルビットを使用し、表2に示す組成の歯磨剤組成物を常法により調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口部内径5mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。得られた歯磨剤組成物の(1)刺激のなさ、(2)着色汚れ除去効果、(3)分散性、(4)泡立ち、(5)耐乾燥性、(6)変色について以下の方法により評価した。結果を表2〜4に併記する。
【0039】
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【0040】
(1)歯磨時の刺激のなさの評価方法
また、表2〜4に示した歯磨剤組成物について、専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。1gを歯ブラシ上に乗せ、約3分間通常の方法で歯を磨き、口腔内の刺激の程度について以下の基準で評価した。なお、対照サンプルとして比較例4のサンプルを使用し、これを基準として評価を行った。
(口腔内の刺激の程度(評点))
3点:対照サンプルと比較して刺激が弱い。
2点:対照サンプルと比較して刺激がやや弱い。
1点:対照サンプルと比較して刺激が同等、又は刺激が強い。
10名の評価結果を平均し、以下の評価基準で口腔内での刺激を判断した。
(評価基準)
◎:口腔内での刺激が2.5点以上3.0点以下
○:口腔内での刺激が2.0点以上2.5点未満
△:口腔内での刺激が1.5点以上2.0点未満
×:口腔内での刺激が1.5点未満
【0041】
(2)歯の着色汚れ除去効果の評価方法
まず、未処理のハイドロキシアパタイトペレット表面の色を基準色として色差計で測定し、その値をL0とした。このペレットを30分間、37℃で唾液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、表面の水分を取り除いた。あらかじめ調製したカルシウムイオン0.74mM、リン酸イオン2.59mM、NaCl50mMを混合した再石灰化液で次に示す3種類の浸漬液(0.5%アルブミン再石灰化溶液、1%紅茶再石灰化溶液、0.6%クエン酸鉄アンモニウム再石灰化溶液)を作り、先のペレットに対し0.5%アルブミン再石灰化溶液→3%日本茶+1%コーヒー+1%紅茶再石灰化溶液→0.6%クエン酸鉄アンモニウム再石灰化溶液で1時間ずつ繰り返し浸漬する操作を50回繰り返した。常温で1日風乾した後、流水で洗浄し、再び風乾して完成した着色ペレット表面の色を測定、その値をL1とした。この着色ペレットの表面に表2〜4に示した歯磨剤組成物1gをのせ、歯ブラシで1000回ブラッシングした後、流水で軽く洗浄、乾燥させ、再度色を測定、その値をL2とした。次式により着色汚れ除去率を算出し、歯の着色汚れ除去効果を下記基準で評価した。
着色汚れ除去率(%)=(L1−L2)/(L1−L0)×100
(評価基準)
◎:除去率80%以上
○:除去率60%以上80%未満
△:除去率40%以上60%未満
×:除去率40%未満

【0042】
(3)歯磨時の泡立ちの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。表2〜4に示した歯磨剤組成物を歯ブラシ上に約1g乗せ、通常の方法で歯を磨き、使用中の口腔内での歯磨組成物の泡立ちについて以下の基準で評価した。
(口腔内の泡立ちの程度(評点))
3点:泡立ちが極めて良好である。
2点:泡立ちが良好である。
1点:泡立ちが殆どない。
10名の評価結果を平均し、以下の通り口腔内の泡立ちの程度を判断した。
(評価基準)
◎:口腔内での泡立ちが2.5点以上3.0点以下
○:口腔内での泡立ちが2.0点以上2.5点未満
△:口腔内での泡立ちが1.5点以上2.0点未満
×:口腔内での泡立ちが1.5点未満
【0043】
(4)分散性の評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。表2〜4に示した歯磨剤組成物を歯ブラシ上に約1g乗せ、通常の方法で歯を磨き、使用中の口腔内での歯磨組成物の分散性ついて以下の基準で評価した。
(口腔内の分散性の程度(評点))
4点:分散性がかなり良い。
3点:分散性が良い。
2点:分散性が悪い。
1点:分散性がかなり悪い。
10名の評価結果を平均し、以下の通り口腔内の分散性の程度を判断した。
(評価基準)
◎:口腔内での分散性が3.5点以上4.0点以下
○:口腔内での分散性が3.0点以上3.5点未満
△:口腔内での分散性が2.5点以上3.0点未満
×:口腔内での分散性が2.5点未満
【0044】
(5)耐乾燥性の評価方法
歯磨剤組成物を充填したラミネートチューブのふたを開け、50℃恒温槽で24時間保管したのち、歯磨剤組成物を15cm紙に押し出して目視し、下記基準により乾燥による固化を評価した。
(評価基準)
◎:固化していない。
○:わずかに口元部分の乾燥が認められる(口元から1cmまでの範囲)。
△:口元から1cmを超えて2cmまでの範囲で乾燥し、固化している。
×:口元から2cmを超えて乾燥し、固化している。
【0045】
(6)変色の評価方法
ラミネートチューブに充填した歯磨剤組成物を40℃恒温槽で3ヵ月間保管したのち、紙に押し出して目視した。なお、各々のサンプルを−5℃恒温槽で3ヵ月間保管した歯磨剤組成物を対照品として比較し、下記基準により官能評価した。
(評価基準)
◎:対照品と40℃、3ヶ月保存品とを比べて、色の変化がない。
○:対照品と40℃、3ヶ月保存品とを比べて、色の変化がほとんどなく、問題のないレベルである。
△:対照品と40℃、3ヶ月保存後とを比べて、色の変化が同等、又は色の変化がややある。
×:対照品の40℃、3ヶ月保存後とを比べて、色の変化がある。
【0046】
ソルビットとしては表1に示したものを配合したが、ソルビット純分は70%であり、表中のソルビットの配合量及び直接還元糖含量は純分換算した値である。なお、直接還元糖量は、JIS K1509におけるソルビットの直接還元糖量の測定方法に従って測定した値である。
【0047】
【表1】



【0048】
【表2】



【0049】
【表3】



【0050】
【表4】

【0051】
表2〜4の結果から、Mn+2n3n+1(但し、MはNa又はKを示し、nは2〜3の整数である)で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を0.5〜2.0%、アルキル硫酸塩を組成物全体の0.5〜1.5%、直接還元糖含量が0.030%未満のソルビットを20〜45%含有し、組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060%未満である歯磨剤組成物は口腔内の刺激が少なく、泡立ちと着色汚れ除去効果、使用性(分散性)が良好で、長期保存における経時での変色抑制効果および耐乾燥性に優れていることを確認した。


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)Mn+2n3n+1(但し、MはNa又はKを示し、nは2〜3の整数である)で示される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩から選ばれる少なくとも1種を0.5〜2.0質量%、(B)アルキル硫酸塩を組成物全体の0.5〜1.5質量%、(C)直接還元糖含量が0.030質量%未満のソルビットを20〜45質量%を含有し、組成物中の直接還元糖の含有量が0.0060質量%未満であることを特徴とする歯磨剤組成物。





























【公開番号】特開2009−155286(P2009−155286A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336742(P2007−336742)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】