説明

歯磨組成物及び歯磨組成物の変色を防止する方法

【解決手段】 (a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトと(b)ポリリジン又はその塩を含有し、前記(a)成分の配合量が組成物全体の0.05〜1.0質量%であり、(b)/(a)の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨組成物。
更に、上記歯磨組成物に、(c)殺菌剤として、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種又は2種以上を配合する。
【効果】 本発明の歯磨組成物は、口腔内細菌に対する高い抗菌効果を有し、ムシ歯や歯周疾患の予防効果に優れ、かつ変色に関する経時安定性が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムシ歯や歯周疾患の予防効果に優れ、かつ変色に関する安定性が良好な歯磨組成物、及び抗菌性金属イオンを担持したゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周疾患の第一原因は歯垢の蓄積にあることは、一般に広く認められているところである。口腔内常在菌であるストレプトコッカス・ミュータンスは、シュークロースを基質としてグルコシルトランスフェラーゼの作用により非水溶性グルカンを産生し、歯牙表面に強固に付着して歯垢を形成する。上述の過程で糖の分解により産生される乳酸等の有機酸により、歯質が脱灰される現象がう蝕である。また、歯垢が堆積して嫌気環境が整い、グラム陰性菌等の歯周病原菌が定着、増殖してくると、菌の産生する毒素や起炎物質等により歯肉炎が起こり、やがて歯周疾患に発展する。この歯垢形成を抑制する技術として、口腔用組成物に無機又は有機物質からなる抗菌剤を用いることは従来から知られている。
【0003】
しかし、歯垢、即ちバイオフィルムは、抗菌剤の浸透性が悪いなどの理由から、浮遊性の状態の口腔内細菌には効果がある殺菌剤であっても、歯垢中の口腔内細菌には効き難く、思ったような歯垢抑制効果が得られないという問題点があった。
【0004】
この問題を解決する手段としては、ゼオライトに抗菌性金属イオンを担持したゼオライトなどの利用が知られており(特許文献1;特開昭60−181002号公報、特許文献2;特開平3−2113号公報)、特にフェノール系抗菌剤、エーテル系抗菌剤、四級アンモニウム系抗菌剤、ピリジニウム系抗菌剤と併用することで相乗的な効果が期待できる。
【0005】
しかしながら、これら抗菌性金属イオン担持ゼオライトに使用する金属は反応性が高く、歯磨組成物中の成分と反応し、組成物が経時的に変色するという問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−181002号公報
【特許文献2】特開平3−2113号公報
【特許文献3】特開平8−26955号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイェティー、第85巻、p2149−2154(1963年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔内細菌に対する優れた抗菌効果を有し、ムシ歯や歯周疾患の予防効果に優れ、かつ変色に関する経時安定性が良好な歯磨組成物、及び抗菌性金属イオンを担持したゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトと(b)ポリリジン又はその塩とを併用し、かつ前記(a)成分の配合量を組成物全体の0.05〜1.0質量%とし、(b)成分/(a)成分の質量比を1〜5の範囲とすることにより、抗菌性金属イオン担持ゼオライト由来の変色を抑制し得、口腔内細菌に対して高い抗菌効果を発揮し、ムシ歯や歯周疾患の予防効果に優れ、しかも、経時で変色がほとんど生じることのない変色安定性に優れた歯磨組成物が得られること、更に、(c)殺菌剤として、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種又は2種以上を配合することにより、より高い抗菌効果が得られ、更に優れた特性を発揮し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、
(I)(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトと(b)ポリリジン又はその塩を含有し、前記(a)成分の配合量が組成物全体の0.05〜1.0質量%であり、(b)/(a)の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨組成物、
(II)更に、(c)殺菌剤として、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種又は2種以上を配合してなることを特徴とする上記歯磨組成物、
(III)(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトを組成物中に0.05〜1.0質量%配合してなる歯磨組成物に、変色防止剤として(b)ポリリジン又はその塩を、前記(b)/(a)の質量比が1〜5の範囲で併用することにより、(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を防止する方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯磨組成物は、口腔内細菌に対する高い抗菌効果を有し、ムシ歯や歯周疾患の予防効果に優れ、かつ変色に関する経時安定性が良好であり、本発明の方法によれば、抗菌性金属イオンを担持したゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨組成物は、練歯磨、液状歯磨等として、特に練歯磨として好適に調製されるもので、(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライト、(b)ポリリジン又はその塩を配合してなる。
【0012】
本発明の歯磨組成物に配合する抗菌性金属イオンを担持したゼオライトにおいて、抗菌性金属としては、例えば銀、銅、亜鉛、鉛、錫、ビスマス、カドミウム、クロム、ニッケル、コバルトなどが例示される。特に、銀、亜鉛、銅から選択される1種以上の抗菌性金属は、抗菌作用、人体に対する安全性などの観点からより好ましく使用され、特に銀、亜鉛の併用が好ましい。
【0013】
抗菌性金属イオン担持ゼオライトは、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンを抗菌性金属のイオンで置換したものである。ゼオライトは、一般に三次元骨格構造を有するアルミノシリケートであり、下記一般式(1)で表されるものである。
XM2/nO・Al23・YSiO2・ZH2O (1)
【0014】
上記式(1)において、Mは、イオン交換可能なイオンを表し、通常は1価又は2価の金属イオンであり、例えばナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等である。nは金属イオンの原子価である。Xは金属酸化物の係数、Yはシリカの係数であり、Zは結晶水の数を表す。
【0015】
ここで、ゼオライトは、天然のものと、合成のものの両者があり、天然のものは約40種、合成のものは約200種以上が既に知られており、本発明においては、天然ゼオライト及び合成ゼオライトのいずれであってもよい。ゼオライトの具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばA−型ゼオライト、X−型ゼオライト、Y−型ゼオライト、T−型ゼオライト、高シリカゼオライト、ソーダライト、モルデナイト、アナルサイム、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト等を挙げることができる。中でも、天然ゼオライトは夾雑物を含み均質性に欠けるため、合成ゼオライトの方が好ましく、とりわけA−型ゼオライト、X−型ゼオライト、Y−型ゼオライト、モルデナイトが好ましい。
【0016】
本発明にかかわる抗菌性金属イオン担持ゼオライトは、上記式(1)で表されるゼオライト中のイオン交換可能なイオン(M)を上記抗菌性金属の金属イオンで置換したものであり、この場合、抗菌性金属イオンの含有量は、抗菌効果の点から総量でゼオライト中に0.1〜25%(質量%、以下同様)含有されていることが好ましい。
【0017】
このような抗菌性金属イオン担持ゼオライトとしては、市販品を使用でき、また、その製法は特に定めるものではないが、抗菌性金属イオン担持ゼオライトの製造方法として、例えば特許文献3(特開平8−26955号公報)に記載された下記方法を採用して調製されたものを好適に使用することができる。
【0018】
即ち、予め調製した銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等の抗菌性金属イオンを含有する混合水溶液にゼオライトを接触させて、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンと上記抗菌性金属イオンとを置換させる。接触は、10〜70℃、好ましくは40〜60℃で3〜24時間、好ましくは10〜24時間行うことが好適である。なお、上記混合水溶液のpHは3〜10、好ましくは5〜7に調整することが適当である。このような調整により、銀の酸化物等のゼオライト表面又は細孔内への析出を防止できるので好ましい。また、混合水溶液中の各抗菌性金属イオンは、通常いずれも塩として供給される。例えば、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩等を用いることができる。
【0019】
ゼオライト中の抗菌性金属イオンの含有量は、前記混合水溶液中の各抗菌性金属イオン濃度を調整することによって適宜制御することができる。例えば、抗菌性金属イオン担持ゼオライトが銀イオンを含有する場合、前記混合水溶液中の銀イオン濃度を0.002〜0.15mol/Lとすることによって、適宜銀イオン含有量0.1〜5%の抗菌性金属イオン担持ゼオライトを得ることができる。また、抗菌性金属イオン担持ゼオライトが更に銅イオン、亜鉛イオンを含有する場合、前記混合水溶液中の銅イオン濃度を0.1〜0.85mol/L、亜鉛イオン濃度を0.15〜1.2mol/Lとすることによって、適宜銅イオン含有量0.1〜8%、亜鉛イオン含有量0.1〜8%の抗菌性金属イオン担持ゼオライトを得ることができる。抗菌性金属イオン担持ゼオライトは、上記の混合水溶液以外に、各抗菌性金属イオンを単独で含有する水溶液を用い、各水溶液とゼオライトとを逐次接触させることによってイオン交換することもできる。各水溶液中の各抗菌性金属イオンの濃度は、前記混合水溶液中の各抗菌性金属イオン濃度に準じて定めることができる。
【0020】
イオン交換が終了したゼオライトは、十分に洗浄した後、乾燥する。乾燥は105〜115℃、又は減圧(0.1〜4kPa)下において70〜90℃で行うことが好ましい。なお、錫、ビスマス等適当な水溶性塩類のないイオンや有機イオンのイオン交換は、アルコールやアセトン等の有機溶媒溶液を用いて難溶性の塩基性塩が析出しないように反応させることにより行うことができる。
【0021】
本発明における抗菌性金属イオン担持ゼオライトの配合量は、総量で組成物中0.05〜1.0%、好ましくは0.1〜0.5%である。配合量が0.05%未満では、本発明の効果が十分得られず、1.0%を超えると、変色を防止するのが困難になる。
【0022】
次に、本発明で用いる(b)成分のポリリジンは、塩基性アミノ酸の1種のリジンの重合体(ペプチド)である。ポリリジンは、重合するアミノ基の位置によりα−ポリリジンとε−ポリリジンの二つの構造を取り得るが、ε−ポリリジンは、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces albulus)により産生され、既存添加物辞典に収載の食品保存料であり、本発明では、安全性の点から、特にε−ポリリジンを用いることが好ましい。
【0023】
また、上記ペプチドは、市販されている物だけでなく、ペプチド合成に常用される固相法などで、容易に合成することが可能である。例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイェティー、第85巻、p2149−2154(1963年)(非特許文献1)記載のメリフィードらの方法に準じて合成することが可能である。また、市販のペプチドシンセサイザーなどによっても合成することができる。また、リジンのペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を利用することで遺伝子工学的手法を用いて、微生物細胞、植物細胞、動物細胞において大量に生産することが可能である。
【0024】
得られた粗合成ペプチドは、ゲル濾過、順相、逆相HPLC、イオン交換カラム精製など、通常の蛋白質・ペプチドの精製に用いられる手段により、更に高純度化することが可能である。
【0025】
本発明で用いるポリリジンにおいて、その数平均分子量は、好ましくは300〜500,000、より好ましくは1,000〜50,000であり、300より小さいと変色防止効果が不十分となる場合があり、500,000を超えると肌荒れといった歯磨の外観が損なわれる可能性がある。なお、ここで、数平均分子量とは、分子量Miの分子がNi個存在するとき、数平均分子量MnはMn=ΣMiNi/ΣNiで与えられる平均分子量であり、測定法としては浸透圧法、沸点上昇法、凝固点降下法やGPC(Gel Permeation Chromatography)法などが挙げられる。GPC法は分子量分布を測定するが、分子量をポリスチレンなどの標準物質に換算する方法と低角度光散乱法(LALLS:Low Angle Laser Light Scattering)や多角度光散乱法(MALLS:Multi Angle Laser Light Scattering)により測定するGPC−LALLS法、GPC−MALLS法がある。また、GPCはSEC(Size Exclusion Chromatography)とも呼ばれる。数平均分子量の測定法は特に限定されるものではないが、たとえば以下の条件にて測定される。
GPC−LALLS法
カラム :Tosoh Biosep G5000 PWXL、7.8mm×30cm
移動層 :0.1mol/L リン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)
流 量 :0.5mL/min
カラム温度:40℃
【0026】
本発明で、ポリリジンは遊離の形態又は塩の形態で用いることもでき、塩の形態には、塩酸塩や硫酸塩等の無機酸塩の他、クエン酸塩やリンゴ酸塩等の有機酸塩が包含される。
【0027】
(b)ポリリジン又はその塩は、変色防止剤として配合されるもので、本発明においては、(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライトを配合した歯磨組成物に、変色防止剤として(b)ポリリジン又はその塩を特定割合で併用することにより、(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を効果的に防止することができる。この場合、(b)ポリリジン又はその塩の配合量は、変色防止の観点から、(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライトに対して、(b)/(a)の質量比が1〜5である範囲とするもので、特に(b)/(a)の質量比が2〜5の範囲であることが好ましい。ポリリジン又はその塩の配合量が抗菌性金属イオン担持ゼオライトの配合量より少ない、即ち(b)/(a)が1に満たないと、抗菌性金属イオン担持ゼオライト由来の変色の抑制効果が不十分であり、また、(b)/(a)の質量比が5を超えると、ポリリジン自体による着色が認められる。更に、ポリリジン又はその塩の配合量は、組成物全体の0.05〜5.0%、特に0.1〜0.5%が好ましく、5.0%を超えるとポリリジン由来の着色が認められる場合がある。
【0028】
本発明では、これら(a)、(b)成分を組み合わせ配合し、更に(c)抗菌剤を併用配合することが好ましく、これにより抗菌活性を相乗的に向上させることができる。
(c)成分としての相乗効果のある殺菌剤としては、フェノール系抗菌剤、エーテル系抗菌剤、四級アンモニウム系抗菌剤、ピリジニウム系抗菌剤から選ばれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0029】
ここで、フェノール系抗菌剤としては、イソプロピルメチルフェノールの各異性体として知られている一般名ビオゾール,チモール,カルバクロール、エーテル系抗菌剤としてはトリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)、四級アンモニウム系抗菌剤としては塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム系抗菌剤としては塩化セチルピリジニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、これら殺菌剤の中では、特にイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウムが好適に使用される。
【0030】
上記(c)殺菌剤を配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.0001〜5%、特に0.0005〜2%、とりわけ0.001〜1%が好適である。配合量が0.0001%に満たないと十分な配合効果が得られず、優れた殺菌効果が発揮されない場合があり、5%を超えると製剤の安定性、使用感、コスト等の面で不利となる場合がある。
【0031】
また、これら殺菌剤の中で、特に水溶性が低いトリクロサン等のエーテル系抗菌剤、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール系抗菌剤を配合する場合は、殺菌剤を予めアルコール類等の溶剤で可溶化後に水系製剤に配合したり、あるいは、界面活性剤配合製剤に配合することが好ましい。
【0032】
本発明の歯磨剤組成物は、上記必須成分に加えて任意成分としてその他の添加剤を配合できる。練歯磨の場合は、例えば研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、香料、甘味剤、防腐剤、各種有効成分、着色剤等を配合でき、これら成分と水とを混合して製造することができる。
【0033】
研磨剤としては、無水ケイ酸、非晶質無水ケイ酸、歯磨用リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウムを配合し得るほか、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン等の無機系研磨剤、ポリメタクリル酸メチル、結晶性セルロース等の有機系研磨剤が挙げられる。研磨剤の配合量は、組成物全体の5〜60%が好適であり、好ましくは10〜50%である。
【0034】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等が挙げられるが、特にソルビット、キシリットが好ましい。これら湿潤剤の配合量は、組成物全体の10〜60%、特に20〜50%とすることが好ましい。
【0035】
粘結剤としては、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム等のガム類、ポリビニルアルコール、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム等のカルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの有機系粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機系粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.1〜5%、より好ましくは0.5〜3%である。
【0036】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を配合し得る。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどを使用することができる。カチオン性界面活性剤としてはアルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチンなどが挙げられる。界面活性剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0〜8%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0037】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、アスパルテーム、キシリトールなどが、通常の配合量で配合できる。
【0038】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、香料の配合量は特に限定されないが、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0040】
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等を挙げることができる。防腐剤としては、各種パラベンや安息香酸ナトリウム、精油成分等が有効量で配合できる。
【0041】
更に、有効成分として、デキストラナーゼ,ムタナーゼ,アミラーゼ,リゾチーム,プロテアーゼ,溶菌酵素,スーパーオキシドディスムターゼなどの酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム,フッ化ナトリウムなどのフッ化物、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、イプシロンアミノカプロン酸、トラネキサム酸、アスコルビン酸及びその塩類、トコフェロールや、オウゴン,オオバク,ローズマリー,チョウジ,タイムなどの生薬抽出物などを配合でできる。なお、上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【0042】
本発明の歯磨組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常歯磨組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、アルミニウムチューブ、アルミニウムの両面をプラスチック等でラミネートしたラミネートチューブ、プラスチックチューブ、あるいはボトル状容器、エアゾール容器等の容器が使用できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
また、下記のいずれの実施例及び比較例においても、(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライトはシナネンゼオミック社製ZeomicAJ10N(銀イオン含有率2.5質量%、亜鉛イオン含有率14質量%)を、(b)ポリリジンは三栄源エフ・エフ・アイ社製サンキーパー No.381(ポリリジン50質量%粉末、低角度光散乱法(GPC−LALLS法)で測定した数平均分子量4,000)を使用した。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%であり、ポリリジンに関してのみ純分換算した配合量を示した。
【0044】
〔実施例1〜12、比較例1〜6〕
表1〜3に示す組成の練歯磨剤組成物を常法により調製し、口径8mmのラミネートチューブに充填した。得られた練歯磨組成物のバイオフィルム内口腔細菌への抗菌効果並びに変色について、以下の方法により評価した。結果を表1〜3に併記する。
【0045】
〔評価法〕
バイオフィルム内口腔細菌への抗菌効果:
口腔内細菌5種、ストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175株,ストレプトコッカス・サングイニス ATCC10556株,アクチノマイセス・ナエスランディー ATCC51655株,フゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10953株及びベイヨネラ・パルブラ ATCC17745株を用いたバイオフィルムをハイドロキシアパタイトディスク上に形成させた。具体的には、回転板にハイドロキシアパタイトを設置した連続培養ベッセル中のBMM培地(下記組成参照)700mlに上記各菌を107個/mlとなるように植菌し、37℃で一晩嫌気培養した。その後、BMM培地を連続培養ベッセルに70ml/時間となるようにポンプで連続供給し、同量の培養液を他のポンプで排出することにより連続培養を行った。培地連続供給後、11時間30分後に培地を排出し、ショ糖1%を含むトッド・ヒューイット培地(以下、THBと略記する。(ベクトンディッキンソン社製))に置換し、30分間、37℃で培養した。同培地を排出し、再度BMM培地700mlで置換して連続培養を11時間30分行い、1%ショ糖添加THBで30分培養するサイクルを4回行い、ハイドロキシアパタイト表面にバイオフィルムを形成した。バイオフィルム形成後のハイドロキシアパタイトを取り出し、生理食塩水で洗浄した後、10mMリン酸緩衝液,pH6で4倍希釈した歯磨組成物の遠心上清を37℃、1分間作用させた。処理後のハイドロキシアパタイトを生理食塩水で2回洗浄後、ハートインフュージョン培地(ベクトンディッキンソン社製)1.5mlにて24穴プレートで、37℃で一晩嫌気培養した。これを生理食塩水で2回洗浄後、生理食塩水2mlを加えてバイオフィルムを超音波ホモジナイザーで分散し、適宜希釈してからTHB寒天シャーレに塗沫して37℃で5日間嫌気培養した。培養後のコロニーを計測してバイオフィルム中の生菌数とし、緩衝液で処理したものを100としたときの各歯磨組成物で処理したものの生菌数の割合を測定し、以下の基準で示した。
【0046】
評価基準;
◎:残存生菌数1%未満
○:残存生菌数1%以上〜10%未満
△:残存生菌数10%以上〜50%未満
×:残存生菌数50%超
【0047】
BMM(Basal Medium Mucin)培地組成
プロテオースペプトン*1 0.2%
イーストエキストラクト*1 0.1
トリプチケースペプトン*1 0.1
ブタ胃ムチン*2 0.25
KCl*3 0.05
L−システイン塩酸塩*3 0.01
イオン交換水 残
合計 100%
*1:日本ベクトンディッキンソン(株)製
*2:シグマアルドリッチジャパン(株)製
*3:和光純薬(株)製
【0048】
変色:
ラミネートチューブに充填した歯磨組成物を40℃恒温槽で1ヶ月間保存した後、紙に押し出して目視し、−5℃恒温槽で1ヶ月間保存した歯磨組成物を対照品として比較し、下記基準により評価した。
評価基準;
◎:対照品と比較して色の変化が認められない。
○:対照品と比較して色の変化がほとんど認められない。
△:対照品と比較して色の変化がやや認められる。
×:対照品と比較して色の変化が認められる。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
表1〜3の結果から明らかなように、抗菌性金属イオン担持ゼオライト単独では練歯磨組成物の変色が認められたが、抗菌性金属イオン担持ゼオライトを0.05〜1.0%配合し、かつポリリジンを抗菌性金属イオン担持ゼオライトに対して質量比で等量から5倍量の間で配合した歯磨組成物では、抗菌活性を認め、かつ変色はほとんど認められなかった。また、変色した練歯磨組成物の抗菌力は概ね低かったことから、変色により抗菌性金属の抗菌活性が低下しているものと推察される。
【0053】
次に、下記組成の歯磨組成物を常法により調製し、上記と同様に評価したところ、いずれも歯垢中の口腔内細菌に対して優れた抗菌効果を示し、また変色に関しても安定であった。
【0054】
〔実施例13〕練歯磨
プロピレングリコール 3%
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.7
ソルビトール(70%) 45
無水ケイ酸 20
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライト 0.3
(b)ポリリジン 0.9
イソプロピルメチルフェノール 0.05
香料 1.2
精製水 バランス
計 100%
(b)/(a)の質量比:3
【0055】
〔実施例14〕練歯磨
プロピレングリコール 3%
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.7
ソルビトール(70%) 45
無水ケイ酸 20
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライト 0.5
(b)ポリリジン 2.5
トリクロサン 0.3
香料 1.2
精製水 バランス
計 100%
(b)/(a)の質量比:5
【0056】
〔実施例15〕練歯磨
プロピレングリコール 3%
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.7
ソルビトール(70%) 45
無水ケイ酸 20
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライト 0.05
(b)ポリリジン 0.1
塩化ベンザルコニウム 0.01
香料 0.98
精製水 バランス
計 100%
(b)/(a)の質量比:2
【0057】
〔実施例16〕練歯磨
プロピレングリコール 3%
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.7
ソルビトール(70%) 45
無水ケイ酸 20
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライト 0.1
(b)ポリリジン 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.02
塩化セチルピリジニウム 0.03
香料 1.1
精製水 バランス
計 100%
(b)/(a)の質量比:5
【0058】
〔実施例17〕練歯磨
プロピレングリコール 3%
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.7
ソルビトール(70%) 45
無水ケイ酸 20
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
サッカリンナトリウム 0.15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
(a)抗菌性金属イオン担持ゼオライト 0.1
(b)ポリリジン 0.3
イソプロピルメチルフェノール 0.02
トリクロサン 0.02
香料 0.98
精製水 バランス
計 100%
(b)/(a)の質量比:3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトと(b)ポリリジン又はその塩を含有し、前記(a)成分の配合量が組成物全体の0.05〜1.0質量%であり、(b)/(a)の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨組成物。
【請求項2】
抗菌性金属が、銀、亜鉛、銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の歯磨組成物。
【請求項3】
更に、(c)殺菌剤として、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種又は2種以上を配合してなることを特徴とする請求項1又は2記載の歯磨組成物。
【請求項4】
(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトを組成物中に0.05〜1.0質量%配合してなる歯磨組成物に、変色防止剤として(b)ポリリジン又はその塩を、前記(b)/(a)の質量比が1〜5の範囲で併用することにより、(a)抗菌性金属イオンを担持したゼオライトの配合による歯磨組成物の変色を防止する方法。

【公開番号】特開2007−8843(P2007−8843A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189857(P2005−189857)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】