説明

歯科器具クレンザー

本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する過硫酸塩非含有歯科器具クレンザーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する過硫酸塩非含有(persulfate-free)の歯科器具クレンザーに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
完全または部分的義歯は、欠失している歯を交換するために口腔内に装着されることを意図している。歯と同様に、義歯および他の歯科器具は、良好な口内の健康を維持するために定期的に洗浄されるべきである。歯と同様に、歯科器具はまた、美容上の理由からも、たとえばさわやかな息を維持するために定期的に洗浄されるべきである。義歯および他の歯科器具上での微生物の沈着および増殖が、患者および患者を処置する歯科医師にとって多くの問題を引き起こすことは周知である。そのような問題には、口臭、義歯誘発性の口内炎、着色および器具のみならず口腔内の不快な味が含まれる。
【0003】
歯とは異なり、義歯および他の歯科器具は、洗浄のために取り外すことができる。歯科器具はまた、比較的過酷な洗浄条件に耐えることができるアクリル酸ポリマーなどの耐久性の材料でできている。その結果、それらは過酷な洗浄条件に曝露されることがあり得、時に曝露される。それらは典型的に、2つの方法のうち1つの方法で洗浄され、すなわちそれらはクレンジング浴に一定時間浸漬されるか、または歯磨き剤もしくは特別製のクレンジングクリームでブラッシングされる。
【0004】
歯磨き剤またはクリームによるブラッシングは、機械的作用によって洗浄配合物を補うという長所を有する。残念なことに、歯に関して、ブラッシングプロセスの際に歯科器具上のしみが見逃されうるかまたは見落とされうる。その結果、ユーザーの残りの歯および歯肉が、疾患物質および望ましくない美容上の結果に曝露される可能性がある。加えて、研磨剤成分を含有する練り歯磨き剤によるブラッシングは、歯科器具材料を傷つけるまたは摩耗させる可能性がある。
【0005】
クレンジング浴に浸漬することは、洗浄のために義歯のあらゆる部分に達するという長所を与える。クレンジング浴に義歯を完全に液浸することによって、クレンジング組成物は、歯磨き剤またはクリームによる通常のブラッシングでは到達することができない咬合(occluded)または内部の表面領域に到達することができる。典型的に、活性成分は、義歯クレンザー粉末もしくは錠剤として固体形態で、または濃縮液体形態で販売されている。そして活性成分を水浴中で溶解して、クレンジング浴を形成する。
【0006】
ひどく着色した義歯または有意な細菌の汚染を有する義歯は、長時間(たとえば、終夜)の浸漬を必要とすることがあるが、患者はしばしば、自身の義歯が長時間使えないことを嫌がる。加えて、単に浸漬するだけでは、クリームおよび歯磨き剤の場合に認められる機械的なこすり洗いの長所にはかなわない。機械的洗浄がないことを補うために、義歯クレンジング錠剤および粉末は、化学的洗浄剤と共に機械的こすり洗いを模倣するために発泡系を含有してもよい。または、クレンジング浴を、モーター、振動器、超音波発生器具またはクレンジング浴を撹拌する他の手段を有する容器内で、歯科器具に適用することができる。
【0007】
ヒトの歯垢の発生の予防または除去におけるクロルヘキシジン(1,6−ジ−4’ −クロロフェニルジアグアニドヘキサン)またはその塩の有効性は、周知である。同様に、デンタルケアおよびオーラルケア組成物におけるクロルヘキシジンまたはその塩のたとえ短期間の使用であっても、歯および舌の褐色の着色を引き起こすことも周知である。1976年5月18日に発行された米国特許第3,957,967号明細書は、天然の歯および義歯の洗浄において有用な歯科用配合物におけるクロルヘキシジンの着色効果を低減させるために十分な量の尿素を用いることを教示している。1976年6月1日に発行された米国特許第3,960,745号明細書は、クロルヘキシジンと不適合性であることが教示されている陰イオン性界面活性剤などの標準的な界面活性剤よりむしろ、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである界面活性剤と共にクロルヘキシジンの可溶性の塩を含有する皮膚クレンジング組成物を教示している。1991年10月17日に公開されたWO91/15189は、モノフルオロリン酸塩がクロルヘキシジンの着色効果を低減させる、口内炎および粘膜炎に関連する細菌を低減するために、0.02%〜2.0%ジグルコン酸クロルヘキシジンと0.05%〜2.0%モノフルオロリン酸ナトリウムとを組み合わせた練り歯磨きを開示している。
【0008】
本発明者らは、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、またはその組み合わせから選択される界面活性剤を含有する、過硫酸塩非含有歯科器具クレンザー組成物において、低濃度のクロルヘキシジンまたはその塩が、歯垢に対抗するために用いられうること、およびここでクロルヘキシジンまたはその塩に関連する着色を認めないことを発見した。
【発明の概要】
【0009】
1つの態様において、本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含む、過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に関する。
【0010】
もう1つの態様において、本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩と、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、またはその組み合わせから選択される界面活性剤とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に関する。
【0011】
さらなる態様において、本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩と、過ホウ酸塩および過炭酸塩から選択される酸化剤と、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、またはその組み合わせから選択される界面活性剤とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に関する。
【0012】
なおさらなる態様において、本開示は、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、および歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法に関する。
【0013】
もう1つの態様において、本開示は、発泡系と、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、および歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法に関する。
【0014】
さらにもう1つの態様において、本開示は、発泡系と、界面活性剤と、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、ならびに歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法に関する。
【0015】
なおもう1つの態様において、本開示は、発泡系と、界面活性剤と、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング配合物によって、歯科器具を洗浄するために十分な時間、歯科器具をクレンジングする段階、歯科器具を水ですすぐ段階、ならびに装着者の口に歯科器具を入れる段階によって、歯科器具装着者の口腔内での歯垢の発生を予防するおよび/または発生数を低減させるための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
「洗浄」(clean)、「クレンジングする」(cleansing)、または「洗浄する」(cleaning)という用語は、本明細書に開示の配合物によって、歯科器具の表面上および孔内の食物粒子、着色、および他の口腔内残屑を除去することを指すために、本明細書において互換的に用いられる。
【0017】
「クロルヘキシジン」および「CHX」という用語は互換的に用いられる。
【0018】
「歯科器具」という用語は、本明細書において義歯または部分義歯、人工歯、上の歯および下の歯のタイプの取り外し可能な歯科矯正ブリッジおよび義歯床、歯科用保定器具および矯正器具、保護マウスガード、歯ぎしりおよび/または側頭下顎関節(TMJ)障害を防止するためのナイトガード等を指すために用いられる。
【0019】
「歯科用クレンザー」という用語は、本明細書において歯科器具を洗浄するために口腔外で用いるための配合物を指すために用いられる。
【0020】
本発明の歯科器具クレンザー配合物は、粉末または錠剤に作られることができ、錠剤型クレンザーとして適用するために特に有用である。さらに、1つの特異的実施形態において、錠剤は、好ましくは30〜50℃の上昇した温度まで予め加熱された水浴中に入れられる。もう1つの実施形態において、錠剤は、50〜70℃の温度に加熱された水浴中に入れられる。
【0021】
好適には、歯科器具クレンザー配合物は、総配合物の0.01〜5.00重量%(「重量%」)の量のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する。配合物における濃度の選択は、消費者が使用する際の製品の推奨される希釈によって強く影響を受けるであろう。1つの実施形態において、クロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩は、0.05重量%の量で存在する。得られた配合物は、水150mL中にクレンザー2.75gの濃度で水に適用されてもよい。クロルヘキシジン錠の0.1重量%濃度は、クレンジング溶液150mL中に2.75mgまたはクロルヘキシジン0.0018%(w/v)と同等であると理解されるであろう。クロルヘキシジン錠の0.2%濃度は、クレンジング溶液150mL中の2.75mgまたは0.0037%(w/v)と同等である。
【0022】
室温で少なくとも0.5%w/vの程度まで水に可溶性であるクロルヘキシジンの適した塩は、たとえばグルコン酸塩、イセチオネート(2−ヒドロキシエタンスルホネート)、ギ酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、モノジグリコール酸塩、ジメタンスルホン酸塩、乳酸塩、ジイソ酪酸塩、およびグルコヘプト酸塩である。
【0023】
歯科器具クレンザー配合物は、好適には少なくとも1つの酸化剤を利用する。酸化剤は、洗浄プロセスの際に必要な活性酸素源を提供する。標準的な義歯器具クレンザーとは異なり、本発明の配合物は、クロルヘキシジンと不適合性であることが見いだされた過硫酸塩酸化剤を含有しない。
【0024】
本開示において用いるための適した酸化剤には、過ホウ酸塩、過炭酸塩、および過ピロリン酸塩などの過酸基塩物質、ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属過酸化物、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。適した物質の例には、カリウム、アンモニウム、ナトリウム、およびリチウムの過ホウ酸塩の一および四水和物;ピロリン酸ナトリウム過酸化水素化物;ならびにマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、および亜鉛の過酸化物、またはその組み合わせが含まれる。好適には、有機酸過酸化物、たとえばコハク酸過酸化物、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、タンニン酸、酒石酸、コハク酸、およびその組み合わせを酸化剤として用いることができる。
【0025】
酸化剤は、15〜70%重量/重量(%w/w)の量で配合物に含有される。1つの実施形態において、過ホウ酸塩と過炭酸塩酸化物の組み合わせが存在する。この実施形態において、過ホウ酸塩酸化剤は、総組成物の5〜15%w/wの量で配合物に含有され、過炭酸塩酸化剤は、総組成物の5〜15%w/wの量で配合物に含有される。もう1つの実施形態において、酸化剤として過ホウ酸塩のみまたは過炭酸塩のみのいずれかが存在してもよい。この実施形態において、酸化剤は、総組成物の20〜30%w/wの量で配合物に含有される。酸化剤は、一般的にWilmington,DE,USAを所在地とするDuPontから入手可能である。
【0026】
クロルヘキシジンおよび酸化剤のほかに、配合物は、界面活性剤、漂白活性剤(たとえば、テトラアセチルエチレンジアミン)、キレート剤、酵素、着香料、錠剤加工のための潤滑剤(安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム)、抗菌化合物、甘味料(サッカリン、キシリトール、スクラロース)、錠剤結合剤および増量剤(ポリビニルピロリドン、セルロース酸、デンプン)、水分スカベンジャー、保存剤等が含まれるがこれらに限定されるわけではない、公知の歯科器具クレンザーにおいて好適に見いだされる1つまたは複数の賦形剤を含有してもよい。
【0027】
配合物は、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の界面活性剤を含有してもよい。配合物に含有される界面活性剤の総濃度は、総組成物の0.1〜10%w/wのあいだであってもよい。
【0028】
適した陽イオン性界面活性剤には、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムおよび硝酸ココナツアルキルトリメチルアンモニウムが含まれるがこれらに限定されるわけではない。陰イオン性界面活性剤は、それらがクロルヘキシジンとの不適合性を生じる可能性があることから、本発明の配合物においてふさわしくない。
【0029】
1つの実施形態は総組成物の0.1〜3%w/wの量の塩化セチルピリジニウムを含有する。もう1つの実施形態は、総組成物の4.0〜7.0%w/wの量の塩化セチルピリジニウムを含有する。
【0030】
適した非イオン性界面活性剤には、ポリオキシル硬化ヒマシ油、エトキシル化ソルビタンアルカノエート、脂肪酸エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪アミンエトキシレート、ポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイドブロックコポリマー(Pluronics)およびスクロースエステルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0031】
適した両性イオン性界面活性剤には、コカミドプロピルベタインおよびアルキルアミドプロピルベタインが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0032】
一般的に、本明細書において開示される界面活性剤は、Stepan Company,Northfield,Illinois,USAから販売されている。
【0033】
配合物は、カルシウム、ナトリウム、および重金属陽イオンなどの金属イオンを溶液中で維持することによって洗浄および漂白の安定性を助けるために有益である1つまたは複数のキレート剤を含有してもよい。キレート剤には、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ニトリロトリ酢酸およびエチレンジアミン四酢酸およびその塩などのアミノポリカルボキシレート、ならびにポリホスホネートおよびエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸およびその塩などのアミノポリホスホネート、ならびにその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。存在する場合、キレート剤は、総配合物の1〜20%w/wの量で配合物に含有される。1つの実施形態において、キレート剤は、Innophos,Cranbury,New Jersey,USAから販売されているポリリン酸ナトリウムであり、総組成物の約10〜18%w/wの量で見いだされる。もう1つの実施形態において、キレート剤は、Dow Chemical Company,Midland,Michigan,USAから販売されているEDTAナトリウムであり、総組成物の1〜5%w/wの量で見いだされる。なおもう1つの実施形態において、総組成物の1〜20%w/wの総範囲に関してEDTAとポリリン酸ナトリウムの組み合わせが存在する。
【0034】
開示の組成物において用いるために適した着香料には、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、レモン油、オレンジ油、アニス油、クローブ油、シナモンリーフ油、またはその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。着香料は、総組成物の0.0〜2.5%w/wの量で組成物において見いだされる。
【0035】
本開示において用いるための適した抗菌剤には、チモール、メントール、トリクロサン、フェノール、ユーカリプトール、安息香酸、4−ヘキシルレゾルシノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、サリチルアミド、安息香酸ナトリウム、およびその組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない。当業者は、記載の抗菌剤がまた、本発明の配合物において保存剤として役立つ可能性があることを認識するであろう。
【0036】
本開示において用いるために適した水分スカベンジャーには、FMC Industrial Chemicals Group,Philadelphia,PA,USAから販売されているソーダ灰(炭酸ナトリウム)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0037】
好適には、配合物は、二酸化炭素、酸素、または窒素などの気体を放出または生成するという意図される目的のために1つまたは複数の成分から成りうる発泡系を含有してもよい。単一成分の発泡系の例は、水に曝露されると放出される二酸化炭素を予め負荷されているゼオライトの使用である。多成分発泡系の例には、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、有機炭酸塩(炭酸リジン、炭酸アルギニン)、またはカルボン酸(クエン酸および酸無水物)とのアルカリ金属過硫酸塩、の組み合わせ;アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、有機炭酸塩、または酸性塩(塩酸、硝酸)とのアルカリ金属過硫酸塩;上記の化合物の適した組み合わせ、ならびに当技術分野における組成物に対して一般的な他の公知の二酸化炭素および/または酸素放出反応が含まれる。
【0038】
本開示に従う組成物は、成分を混和する段階、次に当技術分野において認識される技法に従って小袋(sachet)に入れるまたは錠剤を形成する段階によって調製されてもよい。
【0039】
歯科器具クレンザー配合物は、粉末、小袋、錠剤、ゲル、乳剤懸濁剤、または液体の形状でありうる。各々の用量形状は、当技術分野において従来の方法で包装されてもよい。固体用量形状として、歯科器具クレンジング配合物は、クレンジング組成物を形成して、クレンジングプロセスを活性化するために水中または他の適した液体中に入れられる。
【実施例】
【0040】
本開示の範囲内に入る歯科器具クレンジング配合物を、以下の非制限的な実施例と共により詳しく説明する。
【0041】
実施例1
義歯クレンジング配合物にクロルヘキシジンを含めることに起因する歯垢予防の利点を、インビトロモデルを用いて評価した。義歯の代わりに、アクリル酸(PMMA)樹脂の3”×1”スライドガラスを基板として用いた。使用前に、表面を粗くするためにスライドガラスにショットブラストを行って、洗浄剤中で洗浄して汚れおよびごみを除去して、さらなる洗浄を提供して表面を滅菌するためにメタノールに浸した。
【0042】
義歯クレンジング溶液を市販の発泡錠剤(Polident(登録商標)Antibacterial,Dungarvan,Ireland)を用いて調製した。製造元の指示に従って、錠剤1つを45℃の水道水150mlに加えて標準溶液を調製した。実験溶液を調製するために、少量のクロルヘキシジン(1.375〜5.500mg、それぞれ、錠剤0.05%〜0.20%w/wに相当)を標準溶液に加えて、軽く撹拌しながら溶解した。スライドガラスをクレンジング溶液の中に5分間液浸した後除去した。残っているクレンジング溶液の除去は、スライドガラスを乾燥させるためにとっておく前に、ビーカーの中の水にスライドガラスを浸すことによって行われた。
【0043】
スライドガラス上で歯垢を生育させるために、脱イオン水1LあたりTodd Hewitt Broth(脱水)30gおよびサッカロース10gからなるブロスを調製した。ブロスを121℃および15psiのオートクレーヴで15分間滅菌した。40℃に冷却後、ブロスに、ブロス1Lあたりヒト唾液(実験オペレータから採取されているもの)5mLを接種した。ブロス全体に唾液を分散させた後、溶液をオートクレーヴ可能なプラスチックトレイに入れたスライドガラスの上部に注いた。トレイをフタで覆って、37℃の乾燥器において18時間インキュベートした。
【0044】
インキュベーション後、スライドガラスをトレイから取り出して空気乾燥させた。ビーカーの中の水に浸すことによって軽くすすいで、残っている微量のブロスを除去した。最後の空気乾燥はスライドガラスを37℃の乾燥器に45分間入れることによって行われた。歯垢の発生の程度を赤色色素に曝露後の肉眼での検査および反射計によって評価した。典型的な実験の結果を以下に報告する。認められうるように、クロルヘキシジンの微量を含めることは、その後の生物付着物に対する表面の抵抗性を大きく増強する。
【0045】
【表1】

【0046】
クロルヘキシジン誘発着色の可能性をLucitone 199アクリル義歯(Dentsply,York,PA)の標本について調べた。1つの試験において、標本を4つの曝露サイクルの1つを用いて繰り返し処置した:
1)Polident Actibacterial中での液浸(「PoliA/B」)
2)0.05%CHXを加えたPolident Actibacterial中での液浸(「PoliA/B+CHX」)
3)0.05%CHXを加えたPolident Actibacterial中での液浸後に濃い茶での液浸(「Clean/Tea」)
4)濃い茶での液浸後に0.05%CHXを加えたPolident Actibacterial中での液浸(「tea/Clean」)
【0047】
様々なサイクルで30日間曝露後、標本をHunterLab MiniScan(HunterLab,Reston,VA)比色計によって分析して、着色の形成を検出した。
【0048】
【表2】

【0049】
いずれかの処置に帰することができる色の統計学的有意差を認めなかった。
【0050】
実施例2
クレンザー配合物の相乗活性を、使用条件を代表するインビトロ浮遊試験を用いて評価した。使用条件は、消費者のクレンザーの実際の使用(たとえば、溶解した錠剤濃度、温度、および接触時間)対義歯装着者に関する関連する口腔内生物としてのカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)を表す。
【0051】
ゼロ時間で40℃の水150mlに義歯クレンザーを加えた後、試験浮遊液108cfu/ml 2mLを加えた。5分後、溶液のアリコートを採取して、中和し、試験生物の量または対数での低減を評価するために平板培養した。
【0052】
【表3】

【0053】
クロルヘキシジン錠0.1%濃度は、洗浄液150mL中に2.75mgまたは0.0018%(w/v)と同等である。クロルヘキシジン錠0.2%濃度は、洗浄液150mL中に2.75mgまたは0.0037%(w/v)と同等である。
【0054】
【表4】

【0055】
これらの結果は、過硫酸塩非含有クレンザー配合物にクロルヘキシジンが非常に低レベルで存在することにより、クレンザー配合物の抗菌活性が有意に増加するが、クロルヘキシジン処置単独は意外にもいかなる抗菌活性も示さないことを証明している。低濃度クロルヘキシジンと過硫酸塩非含有義歯クレンザーの組み合わせの相乗効果はこのデータによって証明される。
【0056】
実施例3
以下の表は、本開示の範囲内に入る適した配合物に関する成分の一覧である。2.75g錠を参照として用いる。
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
上記の記述は、その好ましい実施形態が含まれる本発明を十分に開示している。本明細書において具体的に開示される実施形態の改変および改善は、以下の特許請求の範囲内である。さらなる説明なしに、当業者は先の記述に基づいて本発明をその最も広範な範囲まで利用できると考えられる。したがって、いずれの実施例も単なる説明であるに過ぎず、本発明の範囲は何れかの方法によっても制限されると解釈すべきでない。独占的特性または特権が請求される開示の実施形態は以下のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体中に含む、過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物。
【請求項2】
低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩と、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、またはその組み合わせから選択される界面活性剤とを、薬学的に許容される担体中に含む、過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物。
【請求項3】
低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩と、過ホウ酸塩および過炭酸塩から選択される酸化剤と、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、またはその組み合わせから選択される界面活性剤とを、薬学的に許容される担体中に含む、過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物。
【請求項4】
低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩を含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、および歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法。
【請求項5】
発泡系と低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、および歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法。
【請求項6】
発泡系と、界面活性剤と、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物に、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具を接触させ続ける段階、および歯科器具を水ですすぐ段階を含む、口腔外で歯科器具をクレンジングする方法。
【請求項7】
発泡系と、界面活性剤と、低濃度のクロルヘキシジンまたはその薬学的に許容される塩とを含む過硫酸塩非含有歯科器具クレンジング組成物によって、歯科器具を洗浄するために十分な時間歯科器具をクレンジングする段階、歯科器具を水ですすぐ段階、および歯科器具を装着者の口に入れる段階を含む、歯科器具装着者の口における歯垢の発生を予防するおよび/または発生数を低減させるための方法。

【公表番号】特表2012−509271(P2012−509271A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536577(P2011−536577)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064661
【国際公開番号】WO2010/057140
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】