説明

歯科治療用ハンドピース

【課題】マイクロエンジンハンドピースとエアータービンハンドピースの機能を1本のハンドピースで達成し、トルクが必要な切削はマイクロモータのトルクを用いて切削し、高速回転が必要な切削はエアータービンの回転を用いて切削する。
【解決手段】ヘッド2内に回転筒10を有し、該回転筒10の外周に、エアーが吹き付けられるタービン羽根11と、ハンドピース1内に設けられたモータによって回転される歯車15に噛合して回転される歯車13とが設けられている。トルクが必要な切削の場合には、歯車13と15を噛合させ、モータによって回転筒10(切削バー3)を回転し、高速回転が必要な切削の場合には、歯車13と15の噛合を解き、タービン羽根11によって回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用ハンドピース、より詳細には、単一の歯科治療用ハンドピースで、従来より周知の、マイクロエンジンハンドピースとエアータービンハンドピースの両機能を達成できるようにしたもの、換言すれば、単一のハンドピースで、モータの回転トルクを用いて歯牙等の切削を行うことと、エアータービンによる回転を用いて切削等を行うことの両方を達成できるようにした歯科治療用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来より周知のエアータービンハンドピースの一例を説明するための図で、図2(A)において、1はハンドピース部(握持部)、2はヘッド部、3は該ヘッド部2に着脱自在に装着される歯科治療具(例えば、切削バー)、4はハンドピース部1にエアー,電気,水等を供給するためのインスツルメントホースで、ヘッド部2内には、図2(B)に示すように、外周部にタービン羽根11を有する回転筒10が回転自在に設けられ、エアー通路12から噴射されるエアーをタービン羽根11に吹き付けることによって回転されるようになっている。回転筒10内には、周知のように、蓋部材5の押下によって開放され(切削バー3の挿脱を可能にする)、押下力を解くことによってチャックする(切削バー3を掴む)チャック機構が設けられており、該チャック機構により歯科治療具(例えば、切削バー)3が着脱自在に装着され、該歯科治療具3により、歯牙等の切削が行われる。
【0003】
図3は、従来より周知のマイクロエンジンハンドピースの一例を説明するための図で、図3(A)において、1はハンドピース部、2はヘッド部、3は該ヘッド部2に着脱自在に装着される歯科治療具(例えば、切削バー)、4はハンドピース部1にエアー,電気,水等を供給するためのインスツルメントホース、5はハンドピース部1内に設けられるモータMの収納部で、ヘッド部2内には、図3(B)に示すように、外周部に歯車13を有する回転筒10が回転自在に設けられ、該歯車13は、ハンドピース部1内に設けられたモータMによって回転される回転軸14に設けられた歯車15と噛合し、これによって、回転筒10はハンドピース部1内に設けられたモータMによって回転される。
【0004】
上述のように、従来、エアータービンハンドピースとマイクロエンジンハンドピースとは別々に構成され、治療目的等、必要に応じて使い分けられていた。例えば、歯牙切削時、回転トルクが必要な場合は、マイクロエンジンハンドピースを使用し、高い回転数が必要な場合は、エアータービンハンドピースを使用していた。具体的には、マイクロエンジンハンドピースの場合は、最近では、回転筒10(従って、切削バー3)の最高回転速度をモータMの回転速度を5倍速くした200,000RPMのマイクロエンジンハンドピースを使用し、エアータービンハンドピースの場合は、回転筒10(従って、切削バー3)の回転速度を300,000〜400,000RPMとしたエアータービンハンドピースを使用する等、切削状況に応じて(歯牙を深く切削するか、浅く切削するか等により)、これら2本のハンドピースを使い分けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のごとき、2本のハンドピース(マイクロエンジンハンドピースとエアータービンハンドピース)の機能を1本のハンドピースで達成し、トルクが必要な切削はマイクロモータのトルクを用いて切削し、高回転数が必要な切削はエアータービンを用いて切削するようにし、1本のハンドピースを、これら使用目的に応じ使い分け可能とすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ヘッド内に、チャック機構を備えた回転筒を有し、該回転筒の外周に、エアーが吹き付けられるタービン羽根とハンドピース内に設けられたモータによって回転される歯車に噛合して回転される歯車とを有し、該回転筒が前記エアーの吹き付け又はモータによって選択的に回転されるようにしたことを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記回転筒に設けられている歯車と噛合する歯車の回転軸は、前記モータによって回転される回転軸に対して軸方向へ移動可能に連結されており、常時は、ばね力によって前記回転筒に向けて押圧されて、前記移動可能な回転軸に取り付けられている歯車が前記回転筒の歯車と噛合していることを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記回転筒に設けられている歯車と噛合する歯車の回転軸は、前記モータによって回転される回転軸の軸心に設けられている中心孔に対して軸方向に移動可能にかつ回転不可に連結されており、常時は、ばね力により前記回転筒に向けて押圧されて、前記移動可能な回転軸の歯車が前記回転筒の歯車と噛合していることを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記中心孔は排気通路に連通しており、前記回転筒がタービン羽根に吹き付けられたエアーによって回転される時、タービン羽根に吹き付けられた後のエアー圧によって前記移動可能な回転軸が移動されて前記歯車の噛合が解除されることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、1本のハンドピースで、トルクが必要な切削はマイクロエンジンを用い、高速回転が必要な切削はエアータービンを用いて行うことが可能で、状況に応じて、必要な方を選択して用いて切削することができ、その都度、ハンドピースを取り換えることなく、1本のハンドピースで両切削作業を行うことができるので、効率よい歯科治療を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明による歯科治療用ハンドピースの一例を説明するための要部(ヘッド部)概略構成図で、図中、1はハンドピース本体部、2はハンドピースのヘッド部、3は歯科治療具(切削バー)、10は回転筒で、該回転筒10内には、前述のように、チャック機構が設けられており、歯科治療具3は、前述のように、蓋部材5を押下することにより、該チャック機構により回転筒10に着脱自在に装着されるようになっている。回転筒10の外周部には、図2に示したタービン羽根11、及び、図3に示した歯車13が設けられており、前述のように、エアー通路12よりタービン羽根11にエアーが吹き付けられて回転筒10が回転し、或いは、ハンドピース部1内のモータMの回転によって回転される回転軸14の回転によって歯車13が回転されて、回転筒(換言すれば、歯科治療具3)が回転されて、例えば、歯牙の切削等が行われる。
【0012】
歯牙の切削に当り、トルクを必要とする時(切削深さが深い時)は、マイクロモータを用い、高速回転を必要とする時(切削深さが浅い時)は、エアータービンを用いるが、現在、マイクロモータを用いたマイクロエンジンハンドピースにおいては、マイクロモータの回転数を増速する増速ギアを用いて5倍速にした約200,000RPMのマイクロエンジンハンドピースが使用されており(マイクロモータを用いた場合でも、回転数が高いほど、切削効率がよい)、好ましくは、200,000RPMまではマイクロモータを用いて切削し、200,000RPM以上ではエアータービンを用いて切削する。
【0013】
マイクロモータMによって5倍速回転される回転軸14の先端には、該回転軸14に対して軸方向に移動可能で回転方向には固定されている回転軸16が設けられ、該回転軸16の先端には回転筒10の歯車13と噛合する歯車15が設けられている。この回転軸16は、ばね部材17によって、常時は、歯車15が歯車13に噛合するように回転筒10側に押圧されており、これにより、マイクロモータMを駆動した時は、該マイクロモータの回転が5倍速変換ギアを介して回転軸14に伝達され、該回転軸14の回転が移動回転軸16を通して歯車15に伝達され、該歯車15と歯車13との噛合により、回転筒10が回転される。
【0014】
回転筒10を、タービン羽根によって回転する時は、歯車13と15を噛合させたままの状態で、エアー通路12よりタービン羽根11にエアーを吹き付けると、回転筒10が回転するが、その際、吹き込まれたエアーによってタービン羽根室20の圧力が上昇するので、この圧力を利用して回転軸16をばね17の押圧力に抗して押し返して、歯車13と15の噛合を解き、これにより、エアータービンとしての利用を可能にしている。
【0015】
例えば、モータによって回転される回転軸14の中心に移動軸16が係合する中心孔18を設け、この中心孔18内に移動回転軸16が軸方向に移動可能にかつ回転不可に連結するとともに、この中心孔18に連通する排気孔19を設けておくと、回転移動軸16はタービン羽根室に吹き込まれたエアーの圧力によって矢印A方向に押され、これによって、歯車13と15の噛合が解かれ、回転筒10(従って、切削バー3)をエアータービンで回転させることができる。なお、この場合、中心孔18と移動軸16は気密に連結されている必要があるが、気密連結が困難な時は、移動軸16の先端にピストンリング16’等を設け、排気通路19との気密を保つようにすると、タービン羽根室20内のエアー圧によって、より確実に移動軸16を矢印A方向に移動することができる。
【0016】
上述のように、本発明によると、単一のハンドピースを用いて、トルクを必要とする切削時でのマイクロモータによる回転と、高速回転を必要とする切削時でのエアータービンによる回転とを使い分けて使用することができ、歯科治療作業を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による歯科治療用ハンドピースの一例を説明するための要部(ヘッド部)概略構成図である。
【図2】従来より周知のエアータービンハンドピースの一例を説明するための図である。
【図3】従来より周知のマイクロエンジンハンドピースの一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
1…ハンドピース部、2…ヘッド部、3…歯科治療具(切削バー)、4…インスツルメントホース、10…回転筒、11…タービン羽根、12…エアー通路、13…歯車、14…モータによって回転される回転軸、15…歯車、16…移動(回転)軸、17…ばね部材、18…中心孔、19…排気孔、20…タービン羽根室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド内に、チャック機構を備えた回転筒を有し、該回転筒の外周に、エアーが吹き付けられるタービン羽根とハンドピース内に設けられたモータによって回転される歯車に噛合して回転される歯車とを有し、該回転筒が前記エアーの吹き付け又はモータによって選択的に回転されるようにしたことを特徴とする歯科治療用ハンドピース。
【請求項2】
前記回転筒に設けられている歯車と噛合する歯車の回転軸は、前記モータによって回転される回転軸に対して軸方向へ移動可能に連結されており、常時は、ばね力によって前記回転筒に向けて押圧されて、前記移動可能な回転軸に取り付けられている歯車が前記回転筒の歯車と噛合していることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療用ハンドピース。
【請求項3】
前記回転筒に設けられている歯車と噛合する歯車の回転軸は、前記モータによって回転される回転軸の軸心に設けられている中心孔に対して軸方向に移動可能にかつ回転不可に連結されており、常時は、ばね力により前記回転筒に向けて押圧されて、前記移動可能な回転軸の歯車が前記回転筒の歯車と噛合していることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療用ハンドピース。
【請求項4】
前記中心孔は排気通路に連通しており、前記回転筒がタービン羽根に吹き付けられたエアーによって回転される時、タービン羽根に吹き付けられた後のエアー圧によって前記移動可能な回転軸が移動されて前記歯車の噛合が解除されることを特徴とする請求項3に記載の歯科治療用ハンドピース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−167159(P2007−167159A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365781(P2005−365781)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】