説明

歯科用安頭台

【課題】術者の手を煩わせることなく、また、患者に苦痛を与えることなく患者の頭を安頭台にフィットさせることができるようにした歯科用安頭台を提供する。
【解決手段】安頭台本体20と、該安頭台本体20の後方に配置され、該安頭台本体20を支持する安頭台受け部材30とから成る。安頭台本体20内は圧縮空気で満され、少なくとも、その前面が柔軟部材で形成されており、患者Kが頭を載せた時の荷重分布により、図1(A)に示す状態になったり、図1(B)に示す状態になったりし、患者Kの姿勢に応じて、自動的に、患者の頭にフィットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療に当り、患者が頭を載せる安頭台に係り、より詳細には、できるだけ術者の手を煩わすことなく、かつ、患者にも負担をかけることなく、患者にフィットするようにした歯科用安頭台に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図で、該歯科治療ユニットは、治療椅子1,ワークテーブル2,スピットン3,無影灯4,インスツルメントホルダ5,フットスイッチ6,アシスタントインスツルメントホルダ7,ハンドピース(インスツルメント)8等から成り、インスツルメントホルダ5には、歯科治療において使用する種々のハンドピース、例えば、エアータービン、マイクロエンジン、超音波スケーラ、マルチシリンジ等のハンドピース8が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は椅子1に座り、頭を安頭台9に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。
【0003】
図7は、本発明が適用される歯科用安頭台の一例を説明するための要部概略構成図で、図中、10は安頭台本体、11は該安頭台本体10を回動自在に支持する安頭台本体支持部材、12は安頭台本体10(安頭台本体支持部材11)を上下方向に高さ位置調節をする摺動杆、Kは患者、Dは術者で、歯科治療に当り、患者Kは、椅子1に座り、頭を安頭台本体10に載せて頭を安定させた状態で歯科治療を受ける。図7(A)は、患者Kが治療椅子に対して傾斜して座っている時の安頭台本体10と患者Kの頭との関係を示す図、図7(B)は、患者が治療椅子に対して直立して座っている時の安頭台本体10と患者Kの頭との関係を示す図である。
【0004】
図7に示すように、術者Dは、患者Kの治療姿勢に応じて、安頭台本体10の角度を矢印A方向に変えて患者Kの頭が安頭台本体10にフィットするように調整しているが、その操作は、術者Dが手動で行っており、それが術者に対して負担になっており、同時に、操作時に患者は頭を前後に大きく移動する必要があり、特に、お年寄りには首に力を入れるのが苦痛であり、それが患者に対する負担となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、特に、歯科用安頭台において、術者の手を煩わせることなく、また、患者に苦痛を与えることなく、患者の頭を安頭台にフィットさせることができるようにした歯科用安頭台を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、安頭台本体と、該安頭台本体の後方に配置され、該安頭台本体を支持する安頭台本体受け部材とから成り、前記安頭台本体内は圧縮空気で満され、少なくとも、その前面が柔軟部材で形成され変形可能であることを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記安頭台本体内の圧縮空気の量は調節可能であることを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記安頭台本体が上下2個の安頭台本体からなり、かつ、両者が空気通路にて連通されており、内部の空気が前記空気通路を通して移動可能であることを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記空気通路は、上方の安頭台本体から下方の安頭台本体へ空気を流す第1の空気通路と、下方の安頭台本体から上方の安頭台本体へ空気を流す第2の空気通路と、これら空気通路の一方を開とし、他方を閉とする切換弁を有することを特徴としたものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記切換弁は電磁弁であることを特徴としたものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記安頭台本体は、上下2個の安頭台本体からなり、これら上下2個の安頭台本体がそれぞれ独立して内部の圧縮空気の量を調節可能であることを特徴としたものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記安頭台本体の左右両側に更に圧縮空気が入った安頭台本体を有することを特徴としたものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記左右の安頭台本体は、空気通路を通して連通していることを特徴としたものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7の発明において、前記左右の安頭台本体は、相互に独立して、内部の圧縮空気の量を調整可能であることを特徴としたものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項4又は9の発明において、前記上下の安頭台本体及び左右の安頭台本体が全て空気通路を通して連通していることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、安頭台本体は圧縮空気が封入され、少なくとも、患者の頭が載る前面側の面が柔軟性の部材で構成されているので、患者が安頭台に頭を載せた時に、その加重分布に従って安頭台本体の表面側が自動的に変形して頭を支えるので、術者が手を加えて調節するような負担はなく、また、患者も頭の移動を強制されることなく、ごく自然に安頭台に頭がフィットされるので、首に力を入れる必要もなく、術者に対しても、患者に対しても、負担なく楽に歯科治療を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明による安頭台の一実施例を説明するための要部概略構成図で、図中、20は圧縮空気が封入された袋状の安頭台本体で、この安頭台本体20は、図7に示した安頭台本体10に代るものである。この安頭台本体20は、それ自体では、患者の頭を支えることはできないので、図7に示した安頭台支持部材11に代る安頭台本体受け部材30を設け、この受け部材30の上に載置するようにしている。従って、この安頭台本体20は、受け部材30に対して独立して存在するものでもなく、また、この受け部材30に対して回動するものでもない。この安頭台本体20は、少なくとも、頭を載せる側の面が柔軟性の部材で構成されており、歯科治療に当って、患者が頭を載せた時に、その頭を載せた時の荷重分布に従って変形し、図1(A)或いは図1(B)に示すように、患者の頭にフィットする。この安頭台本体20内の圧縮空気は、予め密閉された一定圧の圧縮空気でもよいが、圧力調整を可能にしておき、患者の頭の重さ、患者の好み等に応じて任意の圧力に調整できるようにしておいてもよい。
【0018】
図2は、本発明の他の実施例を説明するための要部概略構成図で、この実施例は、前述の安頭台本体20を2つの安頭台本体201,202で構成し、これらを上下に配設して空気通路21で連通したものであるが、このようにしておけば、例えば、図2(A)に示すように、上部の安頭台201に荷重が大きくかかる時は、上部の安頭台本体201がその圧力に応じて萎み、その分、下部の安頭台本体202が膨らみ、荷重が頭部のほぼ全域にわたって均等にかかり、患者の頭部を安定に保持する。逆に、図2(B)に示すように、下側の安頭台本体202に大きな荷重がかかる時は、下側の安頭台本体202が萎み、上側の安頭台本体201が膨らみ、患者の頭を安定に保持する。
【0019】
図3は、上側の安頭台本体201と下側の安頭台本体202を2本の空気通路211,212で連通し、各空気通路211,212にそれぞれ逆方向に作用する逆止弁221,222を設けるとともに、切換弁23を設けておき、例えば、常態では、図3(A)に示す状態(上側の安頭台本体201と下側の安頭台本体202が同じ圧力)にしておき、患者を図3(B)に示す姿勢にする時は、切換弁23によって、空気通路211側を開いて、上側の安頭台201内の空気通路211を開き、患者が安頭台本体に頭を載せた時に、上側の安頭台本体201側の空気が下側の安頭台本体202側に流れて、上側の安頭台本体201が萎み、下側の安頭台本体202が膨らむようにする。逆に、患者を図2(B)に示した姿勢にする時は、例えば、図3(C)に示す構成の切換弁23を切り換えて、空気通路211を閉じ、212を開くと、下側の安頭台本体202内の空気が上側の安頭台本体201に流れ、下側の安頭台本体202が萎み、上側の安頭台本体201が膨らみ、図2(B)に示した状態にすることができる。
【0020】
図4は、本発明の他の実施例を説明するための要部構成図で、この実施例は、上側の安頭台本体201と下側の安頭台本体202とを2本の空気通路211,212で連結するとともに、これら空気通路211,212に、図3に示した切換弁23に代る電磁弁24を設け、これら空気通路211,212を電磁弁24によって遠隔操作によって切換えるようにしたものである。
【0021】
なお、以上には、上下2つの安頭台本体201,202内に一定圧力に空気を封入しておき、これらを空気通路21又は211,212によって連通するようにした例を示したが、それぞれ独立して圧力調整可能にしておけば、例えば、図2(A)に示す状態にする時は、上側の安頭台本体201の空気圧を下げて、該上側の安頭台本体201を萎ませ、下側の安頭台本体202の空気圧を上げて該上側の安頭台本体202を膨らませ、図2(B)の状態にする時は、その逆に、上側の安頭台本体201を膨らませ、下側の安頭台本体202を萎ませるとよい。
【0022】
図5は、本発明の他の実施例を説明するための要部概略構成図で、図5(A)は本発明による安頭台を前方より見た正面図、図5(B)は上方より見た平面図で、この実施例は、上下の安頭台本体201,202に加えて、左右の安頭台本体203,204を設けたものである。これらの左右の安頭台本体203,204も前述の上下の安頭台本体と全く同様にして機能させることができ、これによって、患者の左右の姿勢に対しても安頭台をフィットさせることができる。
【0023】
以上には、安頭台本体内に予め圧縮空気を封入しておき、患者が安頭台本体に頭を載せた時の圧力分布に応じて該安頭台本体内の空気が移動して、患者の頭が安頭台本体にフィットするようにした例を示したが、各安頭台本体201〜204にそれぞれ独立して空気を供給可能とし、かつ、その圧力調整を可能にしておくことにより、安頭台本体201〜204の膨らみ具合或いは萎み具合を調整し、患者の頭の姿勢を、安頭台本体の膨らみ具合或いは萎み具合を調整することによってきめ細かに決めるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による歯科用安頭台の一実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図2】本発明による歯科用安頭台の他の実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図3】本発明による歯科用安頭台の他の実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図4】本発明による歯科用安頭台の他の実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図5】本発明による歯科用安頭台の他の実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図6】本発明が適用される安頭台を備えた歯科用ユニットの一例を説明するための図である。
【図7】従来の歯科用安頭台の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
9…安頭台、20,201〜204…安頭台本体、21,211,212…空気通路、221,222…逆止弁、23…切換弁、24…電磁弁、30…安頭台本体受け部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安頭台本体と、該安頭台本体の後方に配置され、該安頭台本体を支持する安頭台本体受け部材とから成り、前記安頭台本体内は圧縮空気で満され、少なくとも、その前面が柔軟部材で形成され変形可能であることを特徴とする歯科用安頭台。
【請求項2】
前記安頭台本体内の圧縮空気の量は調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用安頭台。
【請求項3】
前記安頭台本体が上下2個の安頭台本体からなり、かつ、両者が空気通路にて連通されており、内部の空気が前記空気通路を通して移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用安頭台。
【請求項4】
前記空気通路は、上方の安頭台本体から下方の安頭台本体へ空気を流す第1の空気通路と、下方の安頭台本体から上方の安頭台本体へ空気を流す第2の空気通路と、これら空気通路の一方を開とし、他方を閉とする切換弁を有することを特徴とする請求項3に記載の歯科用安頭台。
【請求項5】
前記切換弁は電磁弁であることを特徴とする請求項4に記載の歯科用安頭台。
【請求項6】
前記安頭台本体は、上下2個の安頭台本体からなり、これら上下2個の安頭台本体がそれぞれ独立して内部の圧縮空気の量を調節可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用安頭台。
【請求項7】
前記安頭台本体の左右両側に更に圧縮空気が入った安頭台本体を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の歯科用安頭台。
【請求項8】
前記左右の安頭台本体は、空気通路を通して連通していることを特徴とする請求項7に記載の歯科用安頭台。
【請求項9】
前記左右の安頭台本体は、相互に独立して、内部の圧縮空気の量を調整可能であることを特徴とする請求項7に記載の歯科用安頭台。
【請求項10】
前記上下の安頭台本体及び左右の安頭台本体が全て空気通路を通して連通していることを特徴とする請求項4又は9に記載の歯科用安頭台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate