説明

歯科用接触部状況表示方法及びそのプログラム

【課題】咬合調整方法及びそのプログラムまた、削合、咬合調整の確認や合否プログラムを提供する。
【解決手段】歯科用接触部状況表示プログラムにおいて、上下顎データを入力するデータ入力段階1、前記上下顎データの咬合状態を再現4して、上下顎データの位置を決定する上下顎データ位置決定段階5、上下顎データの特定の近似範囲に特定の対合顎データが有する部分を表示する上下顎データ接触位置状況表示段階をコンピュータに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用接触部状況表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義歯作成後に、削合という工程にて上下顎の義歯の擦り合わせを調整していた。削合には義歯を咬合器に取り付け、上下顎の接触する部分を見極めながら、少しずつ研削材で削ることで調整する工程と、その後、砥粒の入ったペースト状態のものを咬合面に塗布して、上下顎の義歯を擦り合わせて、調整する工程という2つの工程が実施されていた。義歯の状態により、これらの一方の工程でのみで調整されることも少なくなかった。しかし、削合する部分を正しく判断したかどうか明確に知るすべもなく、正しく削合が行えたかどうかを判断することも難しかった。
【0003】
更に、対合歯が天然歯の場合、作製した補綴物を削合若しくは咬合調整する必要がある。補綴物の接触する部分を見極めながら、補綴物を少しずつ研削材で削ることで調整し、研磨仕上げを行う。しかし、咬合調整する部分を正しく判断したかどうか明確に知るすべもなく、正しく咬合調整が行えたかどうかを判断することも難しかった。
【0004】
また更に、歯科学生は、補綴物の削合や咬合調整を各大学で教育される。補綴物の削合位置や咬合調整は、各大学の先生方が丁寧に教えるものの、難解な作業である為に、学生の上達には時間を要していた。また、学生同士で、客観的にうまくいった削合や咬合調整とそうでない状況との差を明確に知る方法が少なく、自らの習得度合いも知ることは難しかった。削合や咬合調整ができているかどうかを知る方法は歯科教官に確認する必要があり、独自に客観的に判断する方法は知られていなかった。
【0005】
特許文献1は、上段の作業テーブルで歯科模型の底面のピン植立用ドリル作業を可能とし、下段の作業テーブルで歯科模型の内外の輪郭面の削合作業を可能とした歯科模型用加工装置を開示している。この加工装置は、咬合面を削合するものでなく、咬合面を削合することには構造状利用できない。
特許文献2は、削合された人工歯を用いることを記載しているが、義歯の作製時に発生する床の小さな変形などを調整しなければならない為、削合調整は必要である。従って、特許文献2は本発明と関係がない。
特許文献3には、人工歯の削合と咬合調整を行う咬合器に発振回路と接続する振動子を設置して、振動子を削合用の駆動装置とすることにより、咬合器上での人工歯の削合効率を高めることを目的とした、人工歯削合用駆動装置を開示している。しかし、この装置では、上下顎の義歯を擦り合わせて削合を行う為に、任意の調整を実施することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−95968号公報
【特許文献2】特開平10−225469号公報
【特許文献3】特開2000−316876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、上下顎の削合は熟練した技工士による作業である。この削合作業では、咬合面の接触部分を判断し、削り過ぎない様に少しずつ削合を繰り返していた。咬合面に有る複数の面を擦れ合うまで調整することは至難の技である。熟練した技工士は容易に再現できたが、そうでない者は再現するのに労を要していた。
熟練した技工士であっても完全に咬合面の接触部分を合わせる事は難しく、1時間以上要していた。
上下顎が接触する部分である人工歯は、不定形であるため、上下顎の接触している部分を見極めることが難しく、接触位置を明確に定めることが難しかった。上下顎の間に咬合紙を挟むことにより、咬合接触状態を見極めることを行われている。咬合紙の厚みによる測定誤差が生じる。接触部分のみが染色されるのみで、咬合面のどの部位が染色部と対応するのか、動的接触なのか静的接触なのかなどの情報をえることができなかった。
咬合調整においては、天然歯の形態に合わせて、調整することにより、天然歯を傷めない方法を選択することが必要であった。
上下顎の削合は、咬合紙を上下顎の間に噛ませ、上下顎の接触状況を確認し、少しずつ削ることにより実現させる。上下顎の接触面を増やすことで調整する。咬合紙は接触している部分は穴が開き、接触していなくとも、咬合紙の厚さより近づくと、咬合紙が圧接されて薄くなる。薄くなった程度は光の透過で確認することができ、光の透過量で隙間量を確認できる。図1に示すような各歯を接触させる為に、咬合紙で上下顎の接触しているところを確認しながら咬合紙の厚さの程度を診て、削合を進める。
当然、上下顎は咬合器の上で自由に動き回り、更には接触面がどこまで、接滑するのか分からない中で、咬合紙のみがたよりとなる。高度な技術が必要であった。
本発明は、義歯の削合部分を簡単かつ迅速に決定し、容易に削合を行うことができ、歯科学生が、独自に実施した削合や咬合調整が治療として耐えうるものであるかどうかを見極めることができ、確認テストや合格ラインの選別として用いることができる歯科用義歯の削合方法、咬合調整方法及びそのプログラムまた、削合、咬合調整の確認や合否プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、
上下顎の接触部の状況を表示する歯科用接触部状況表示プログラムにおいて、
上下顎データを入力するデータ入力段階、
前記上下顎データの咬合状態を再現して、上下顎データの位置を決定する上下顎データ位置決定段階、
上下顎データの特定の近似範囲に特定の対合顎データが有する部分を表示する上下顎データ接触位置状況表示段階をコンピュータに実行させるための歯科用接触部状況表示プログラムである。
【0009】
本発明は、上下顎の接触部の状況を表示する前記歯科用接触部状況表示プログラムにおいて、
前記データ入力手段が、上下顎の顎関係再現条件と、該顎関係再現条件とそれぞれの位置関係を定められる標点を有する標点付き上下顎データを入力するデータ入力手段であり、
前記上下顎データ位置決定手段が、入力データの顎関係再現条件に合わせて標点を用い上下顎データの位置関係を決定する上下顎データ位置決定段階であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
従来の咬合調整は熟練を必要とした作業であり、咬合面の上下顎の接触部分を判断し、削り過ぎない様に少しずつ削り、繰り返すことにより咬合調整を実施してきた。
どの方向に動か(歯ぎしり)しても全ての歯が滑るように接触する「両側性平衡咬合」という様式があり、これは咬合面に有する複数の面を擦れ合うまで調整することである。しかし、このように調整することは至難の技であり、熟練した技工士でも再現するのに労を要していた。
熟練した技工士であっても完全に咬合面の接触部分を合わせる事は難しく、1時間以上要する作業でもあった。
本発明を用いれば、熟練した技工士でなくても容易に「両側性平衡咬合」を再現することができる。
技工士による差がなくなり、一定の咬合調整された義歯の作製をすることができる。
上下顎が接触する部分である人工歯は不定形であり、従来のカーボン紙を用いる方法では上下顎の接触している部分を見極めることが難しく、接触位置を明確に定めることが難しかった。
上下顎の間に咬合紙を挟むことにより咬合接触状態を見極めることを行われている。しかし、咬合紙の厚みによる測定誤差が生じることや、接触部分のみが印記されるのみで、印記部位の対応関係が明確ではなかったため、見極めることは難しかった。更に、静的接触のみならず動的接触状態についても、咬合調整が必要である。この場合、更なる熟練を要していたが、本発明を用いれば容易に咬合調整することができる。
天然歯牙が残っている場合の咬合調整においては、天然歯の形態に合わせて、調整することにより、天然歯を傷めずに容易に咬合調整を実施することができた。
本発明の応用として、歯科学の学生が独自に実施した咬合調整が治療として、正しく行なえているか確認することができる。
本発明によれば、熟練した技工士でなくても、上下顎の理想的な関係を義歯に再現することができる。本発明はCAMで削合を実施する為、切削片で怪我をすることもなく、策に粉塵を吸い込むこともない為、作業者は人体に心配なく作業をすることができる。特に陶歯などを利用する場合は硬い為に削合が大変であり、技工士は苦労していた。本発明を用いることで容易に陶歯の削合を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】義歯削合方法を示すフローチャート。
【図2】漂点を有する要咬合器に上下顎模型を装着した状態を示す斜視図。
【図3】上下顎の咬合面の三次元データを3次元空間上で表示した図。
【図4】上下顎の咬合面の3次元データを咬合させた状態を示す図。
【図5】(a)は上下顎の咬合面の3次元データで囲まれた部分を示す図、(b)は上下顎の咬合面の削合部分を示す図。
【図6】咬合面の削合部分を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
義歯の製造における削合を実施するための方法であって、義歯の咬合を調整する方法及びプログラムについて説明する。このプログラムを用いて、義歯の削合部分を判別し、CAD/CAMを用いて咬合面の不要な部分を削合するものである。
【0013】
一般に、義歯を作製する工程は、以下の通りである。
1.患者の口腔内の型をとって印象を作製する。
2.印象から患者の口腔の模型を石膏で作製し、この模型上に構成樹脂のベースプレートを作製する。
3.型枠にワックスを流し込んでアーチ型に固まらせ、このワックスをベースプレートの上に載置して、人工歯を排列するための蝋提を作製する。この蝋提とベースプレートを合わせて咬合床と称する。
4.咬合床を患者に装着し、咬合を採得する。
5.咬合床を装着した上顎と下顎の模型を咬合器に装着し、咬合状態を咬合器上で再現する。
6.患者に合った人工歯を選択して、まず上顎の前歯の人工歯を上顎の蝋提に排列し、続いて下顎の前歯の人工歯を下顎の蝋提に排列する。
7.咬合器のインサイザルポールを調整して上顎の高さを少し上げて、下顎と上顎の臼歯の人工歯を蝋提に排列する。
8.咬合器のインサイザルポールを元の状態に戻して、高い部分を削る咬合調整を行う。咬合調整では、上顎と下顎の間に咬合紙を挟み、強く当たっている部分を削る。
9.前歯の歯頸部(生え際)と歯肉部の状態を再現する。
10.咬合床に人工歯を排列した義歯模型を患者の口腔内への試適し、修正を加えるべき情報を得る。
11.情報に従って修正すべき箇所を修正する。
12.義歯模型をフラスコ(枠)に容れて石膏に埋没し、固まらせる。
13.フラスコに熱を加えて義歯模型のワックスを軟化させた後、フラスコを分離してワックスを溶かすと、鋳型が完成する。
14,鋳型の石膏部分に分離材を塗布してから、鋳型に床用レジン(合成樹脂)を注入し、上下の型枠を合わせてプレスにより圧力をかける。
15.余剰のレジンを取り除き、上下の型枠を合わせた後、熱を加えてレジンを硬化させる。
16.型枠を外して、石膏を取り除き、義歯を掘り出す。
17.義歯を再度、咬合器に取り付け、レジン硬化時の収縮により生じた咬合のくるいを修正する。咬合修正では、咬合紙を使用する。
18.顎を前後左右に動かしたときの噛み合わせを、咬合紙を使用して調整する(この調整は最終の咬合調整であり、削合とも言う)。
19.レジンのバリを削り取り、研磨を行う。
【0014】
義歯を作製する工程において、口腔内の型を取り、蝋堤を作製し、人工歯を並べた後、ロストワックス法にて蝋を樹脂に置き換えたとき、樹脂の収縮により、人工歯の位置関係がずれ、義歯として上下顎で噛み合わせた場合に干渉する。この干渉部分を調整することが削合である。また、義歯上で噛み合わせが正しく出来たとしても、患者の口腔内の状況に合わせて、咬合関係を変更する為に、削合を行ったりする。これは患者の顎の動きに合わせて調整するものである。
これらの一連の作業は、プログラムを用いて容易に実施することができる。
ここで、義歯削合方法の場合は総義歯であることが好ましい。又は部分義歯であっても、上下顎が義歯の組み合わせの場合も用いることができる。
【0015】
1.義歯削合方法
義歯削合方法は、図1に示すように、以下の段階からなる。
(1)顎関係再現段階
(2)削合前義歯作製段階
(3)標点付き義歯データ測定段階
(4)噛合状態再現段階
(5)削合部分決定段階
(6)削合データ及び標点付き義歯データ作成段階
(7)削合前義歯削合段階
【0016】
(1)患者の顎の条件を再現できる顎関係再現条件を決定し、顎関係を再現する顎関係再現段階について説明する。
顎関係再現段階とは、義歯を作製する前に、患者の上下顎の位置関係を再現するものである。通常は咬合器を用いて、顎の動きに合わせて咬合器の顆路の動きや切歯の動きを調整することにより、咬合器上で上下顎の動きを再現する。
上下顎の中心咬合位の位置から、咀嚼運動や開口・閉口運動時を想定した動く方向を決める必要がある。
患者の顎の条件とは、静的条件や動的条件であり、代表的には中心咬合位の位置や、前方運動・側方運動の方向、場合によっては蝶番運動の方向を含む。
これらの咬合状態を再現できるものとしては咬合状態再現器であり、代用的なものは咬合器である。咬合器は静的関係、動的関係を的確に再現できる。
顎関係再現条件としては、矢状顆路傾斜度、平衡側側方顆路、イミディエイト・サイドシフトの調節機構、作業側側方顆路角調節機構などがあり、切歯路調節機構としては、矢状切歯路傾斜度、側方切歯路誘導角などがある。
患者の状態に合わせて顎運動の近似値を用いる方法も一般的である。例えば、標準的な顆頭間距離を110mm、上弓・下弓間距離を110mm、最大開口角を120°、矢状顆路傾斜度を30°、側方顆路角を15°とすることができる。
ここで重要なのは中心咬合位から側方運動した場合の下顎に対して上顎がどの様に動くかを明確になることである。
また、最も単純な方法として、中心咬合位から上顎が前方10°に下顎に平行に滑走し、また、更に中心咬合位から上顎が咬合面から左右20°の上方向に滑走するように設定することも可能である。
近年においては顎運動をそのまま再現する方法についても研究が進められ、顎運動測定装置が開発されている。この顎運動測定装置により直接顎運動を取得して、顎運動再現装置にて顎運動を再現しても良い。
【0017】
(2)咬合状態再現器の顎関係再現条件に合わせて義歯を作製し、削合する前までの削合前義歯を作製する削合前義歯作製段階について説明する。
削合前義歯作製段階では、前記咬合状態再現段階で得られた上下顎の関係に合わせて義歯を作製する段階であり、通常の義歯の作製段階である(前述の義歯作製工程のステップ6.7)。代表的な工程としては、蝋提を作製し、人工歯を排列し、ロストワックス法にて削合前義歯を作製する段階である。ここでの作成方法は特に限定するものではないが、通常の方法で作製することができる。
削合前義歯は削合をしていないので、咬合状態再現器上で未だ正しい咬合ができない。咬合状態再現器上で正しい咬合をする為に咬合面を削合する。
【0018】
(3)咬合状態再現器と義歯の位置関係を示す標点と共に義歯の咬合面の3次元画像データである標点付き義歯データを測定する標点付き義歯データ測定機にて標点付き義歯データを測定する標点付き義歯データ測定段階について説明する。
この段階では、作製された削合前義歯の3Dデータを取得すると共に、コンピュータの中で咬合状態を再現できる様に咬合状態再現器のどの位置に削合前義歯が有するのかを計測する。咬合状態再現器の上下顎の関係を事前に設定することにより、咬合状態を再現することができる。
再現器の各上下弓のそれぞれには、最低でも3点の標点が必要である。3つの辺でも良い。好ましいのは1つの辺と1つの点である。具体的には3つの針状又は球面(好ましくは球状)で構成しても良いし、再現器の真直な辺と球面の組合せでも良い。ここでは3Dデータがコンピュータ上で再現される上下顎の関係を正確に算出する為の標点であることが必要であり、3Dデータをコンピュータ上で一致させる為には、球面が好ましい。
義歯削合方法に用いられる顎関係再現条件を決定する咬合状態再現器は、図2に示すように、咬合状態再現器が上顎模型1が装着される上弓2および下顎模型3が装着される下弓4を有する咬合器5であり、上弓2および下弓4それぞれに標点6a、6b、6c,標点7a、7b、7cを有することが好ましい。
【0019】
(4)顎関係再現条件を利用して、標点付き義歯データの咬合状態を再現する咬合状態再現段階について説明する。
この段階では、咬合状態をコンピュータ上で再現する。コンピュータ上で咬合状態再現器の上下顎の関係を任意に設定することができる。
ここではコンピュータの空間の中で、上下顎の位置関係を正確にシミュレーションできる。コンピュータの中では上下顎の顎の静的関係が示されており、その関係には3Dデータを取得する時に用いた標点データを有する。コンピュータの空間中で上下顎の3Dデータが静的関係を示すように上下顎運動をシュミレーションさせる。
好ましくは下顎の直交座標軸系と上顎の直交座標軸系を設定する。ある任意の上下顎の位置関係から、上下顎の咬合状態を再現する様に、下顎直交座標軸系に対して上顎直交座標軸系が移動する方向を任意に算出できれば良い。
図3に示すように、下顎の直交座標軸系と上顎の直交座標軸系に有する標点をコンピュータ空間上の標点に一致させることによって、上顎の義歯データ8と下顎の義歯データ9の動きの関係を再現できることが好ましい。
各直交座標軸系にはそれぞれの標点の位置を定め、義歯データ測定段階で得られた義歯データの位置合わせをする。
図4に示すように、それぞれの座標軸が咬合状態再現段階で示した下顎の義歯データ9に対する上顎の義歯データ8の動きをする様に下顎直交座標軸系に対して上顎直交座標軸系が動く様に設定することもできる。
【0020】
(5)再現された咬合状態から上下顎の画像で囲まれる部分から、動的条件や設定された条件にて削合データを決定する削合部分決定段階について説明する。
ここでは、咬合状態再現段階にて合わせられた3Dデータに囲まれた範囲、すなわち図4に示すように、上顎の人工歯の咬合面と下顎の人工歯の咬合面とが重なる範囲に注目する。
3Dデータで囲まれた範囲が少ない場合は、義歯が安定感に欠けるため、上顎の3Dデータを蝶番運動させ、若しくは咬合高径を下げる方向に移動させて、上下顎の3Dデータが重なる部分を調整する。もし、3Dデータが重なる部分が多い場合は、切削が多く、咬頭が無くなるため、上顎の3Dデータを蝶番運動させ、若しくは咬合高径を上げる方向に移動させて、上下顎の3Dデータが重なる部分の調整を実施する。蝶番運動若しくは咬合高径の移動については任意に組み合わせて利用してもよい。
次に、図5(a)に示すように、3Dデータが重なる部分Aを、上下顎が運動する場合に擦動する様に、上顎又は下顎の3Dデータ8,9を移動させて、削合面を決定する。これは3Dデータが中心咬合位から前方運動、後方運動、側方運動時に各3Dデータが重なり合う部分を任意に定めた削合面Sに沿って切り取る。
削合面Sは、上下顎の3Dデータが重なり合う部分内を通らなくても良いが、上下顎の3Dデータ8,9が重なり合う部分内を通ることが好ましい。図5(b)に示すように、この3Dデータ8,9が重なり合う部分内の削合面Sで延長される面で囲まれる咬頭の部分B,Cが切削される部分となる。これらの部分を削合部分といいそのデータを削合データという。
任意に定めた削合面Sとは、前方運動、後方運動、側方運動時の運動方向に沿った面であり、各面の角度は咬合平面に対して任意に設定することができる。咬合平面に対して、削合面Sは、5度〜60度に設定することが好ましい。更に、前方運動、後方運動の場合に咬頭が接する面は5度から45度好ましく、側方運動の場合は20度〜60度が好ましい。
【0021】
運動方向は、上顎の3Dデータと下顎の3Dデータで囲まれた範囲の任意の点における下顎の直交座標軸系に対して、上顎の直交座標軸系が咬合状態再現段階で示された動的関係により、移動する方向である。本運動方向は直線であることが好ましいが、曲線の場合もある。直線に近似して適用することもできるが、曲線のまま構成してもよい。即ち、直線もしくは曲面である。好ましくは直線または円柱面である。
また、上顎の3Dデータ8と下顎の3Dデータ9で囲まれた範囲Aの任意の点は、上顎の3Dデータ8と下顎の3Dデータ9で囲まれた範囲の重心Gであることが好ましい。
この重心Gは、上顎の3Dデータ8と下顎の3Dデータ9で囲まれた範囲が空間上のn個の点で示されている場合、それぞれ下顎座標軸系若しくは上顎座標軸系XYZ軸を同じ直交座標軸系に換算し、XYZそれぞれの値の和をn個で割ったX’Y’Z’の値として算出することが好ましい。削合面Sは、このX’Y’Z’の値を通る下顎に対して上顎の運動方向を含む面である。
この運動方向は咬合状態再現段階で示された再現方法により算出されるが、たとえば、咬合器により再現された場合は、アルコン型咬合器若しくはコンダイラー型咬合器どちらの場合でも、これらの調整機構をコンピュータ上で再現することができる。好ましくはアルコン型である。
咬合器の顆頭間距離は50〜170mm好ましくは80〜140mm、更に好ましくは100〜120mmである。110mmという平均的な顆頭間距離を固定値で有することが好ましい。上弓下弓間距離は80〜120mm程度である。上弓下弓間距離は任意に設定できれば十分である。
顆頭間距離及び上弓下弓間距離は、咬合器の上下顎の動きを規定している顆路調節機構、切歯路調節機構により予め設定された数値から算出される。
具体的には顆路調節機構として、矢状顆路傾斜度、平衡側側方顆路、イミディエイト・サイドシフトの調節機構、作業側側方顆路角調節機構などがあり、切歯路調節機構としては、矢状切歯路傾斜度、側方切歯路誘導角などがある。
矢状顆路傾斜度は−30°〜+90°であり、好ましくは−20°〜+80°、更に好ましくは−0°〜+50°である。
平衡側側方顆路は0°〜+40°であり、好ましくは0°〜+30°、更に好ましくは+10°〜+20°である。
イミディエイト・サイドシフトの調節機構は0〜10mm好ましくは0〜8mm、更に好ましくは0〜5mmである。
作業側側方顆路角調節機構−50°〜+60°であり、好ましくは−40°〜+50°、更に好ましくは−30°〜+30°である。
矢状切歯路傾斜度は、−30°〜+90°であり、好ましくは−20°〜+80°、更に好ましくは−10°〜+75°である。
側方切歯路誘導角は、−0°〜+90°であり、好ましくは−0°〜+50°である。
これらの調節機構に合わせて動く下顎直交座標軸系に対する上顎直交座標軸系を算出する。
好ましくは市販の咬合器の名称等から、調整項目のみを適宜選択できる設定が好ましい。更に、調整ができない咬合器を利用している場合は、その咬合器の固定値が咬合器名の名称を選んだ場合に固定で入力されることが好ましい。設定された条件とは、上下顎がスムーズに擦れ合って上下顎が引っかからない様に、突起部分を削除する様に設定された条件であることが好ましい。
本段階で得られた削合データはCADデータとして利用され、後で示される削合前義歯削合段階で加工用のNCプログラムが作成され機械工作において工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御するコンピュータ数値制御(CNC)によって、義歯の削合を行う。このことをCAMという。
【0022】
図6は、咬合面の削合が行われる面を示す図である。左右ほぼ対称に削合される為、1,2,3の引き出し線は片方の顎のみを示している。上下顎が咬合された場合に上下顎が接触する咬合小面は面で接触し、顎の動きに合わせて擦れ合う面となる。
引き出し線の1は前方咬合小面、2は後方咬合小面、3は平衡咬合小面である。
符号の説明において、1.同一角度に削合される面部分、2.別の同一角度に削合される面部分、3.また別の同一角度に削合される面部分としたが、これらは一例である。咬合の静的関係、動的関係を考えた場合に、その面が正しい方向に擦れ合う様に、面の角度を調整または算出されることが好ましい。しかし、近似的に同一角度に削合される面部分であってもよい。
【0023】
(6)標点付き義歯データに削合データを追加した削合データ付き標点付き義歯データを作成する削合データ付き標点付き義歯データ作成段階について説明する。
前記削合データである削合面を標点付き義歯データと合わせて、削合部分を定め、削合データ付き標点付き義歯データとする。ここで重要なことは、削合してはいけない部分と削合する部分が標点を基準に定められていることである。
このことから、義歯の位置関係を示す標点指示部と削合データ付き標点付き義歯データの標点部分を重ね合わせることにより、義歯の削合する部分を決定することができる。
【0024】
(7)削合データ付き標点付き義歯データを元に削合前義歯を削合する削合前義歯削合段階について説明する。
削合データはCADデータとして利用され、本段階で加工用のNCプログラムを作成する。これは機械工作において、工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御するコンピュータ数値制御(CNC)のプログラムである。本プログラムより、義歯の削合を行う。
【0025】
2.削合前義歯の削合部分算出用プログラム
前記各段階を一連のプログラムにより実施することが好ましい。
具体的には、歯科用削合前義歯削合部算出用プログラムは、
上下顎の顎関係再現条件と、該顎関係再現条件と上顎と下顎の位置関係を定められる標点とを有する標点付き上下顎義歯データを入力するデータ入力手段、
入力データの顎関係再現条件に合わせて標点を用い上下顎義歯データの位置関係を決定する上下顎義歯データ位置確認手段、
上下顎の義歯データを顎関係再現条件や咬合高径の高さ変更により作成される上下顎の義歯データにより囲まれた範囲を決定する削合部位決定手段、
削合部位決定手段により得られた上下顎の義歯データにより囲まれた範囲を顎関係再現条件又は術者の入力により決められた咬合面との角度にて削合面を決定し、上下顎義歯データの削合面で囲まれた削合データを算出する削合データ算出手段を有する。
また、削合データ算出手段は、削合部位決定手段により得られた上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の任意の点から顎関係再現条件から上下顎の義歯データにより囲まれた範囲を形成する過程に見られる運動方向と事前若しくは術者の入力により決められた咬合面との角度にて削合面を決定し、上下顎義歯データの削合面で囲まれた削合データを算出してもよい。
上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の運動方向とは、上下顎義歯データが上下顎の顎関係再現条件により、上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の任意の点が、上下顎の義歯データにより囲まれた範囲が生成されるときから、消滅されるまでの軌跡方向のことである。本軌跡が複雑な動きをする場合は近似値を用いて、運動方向を決めても良い。
【0026】
歯科用削合前義歯削合部算出用プログラムに加え、算出された削合データを基に、加工用のNCプログラムを作成し義歯の削合手段を有する歯科用義歯削合プログラムとするこことが好ましい。削合データを用いて、加工用のNCプログラムを作成し義歯の削合を実施する歯科用咬合削合機を構成することができる。プログラムを利用することにより、熟練した技工士でなくても容易に削合をすることができる。CAMシステムを利用することにより、削合作業を器械が実施する為、切削片で怪我をすることもなく、研削時に粉塵を吸い込むこともない為、作業者は健康を心配することなく作業をすることができる。
削合はダイヤモンド切削材で実施することが好ましく、最終仕上げとして、バフ研磨することが好ましい。
【0027】
上下顎の標点付き義歯データの片方又は両方を動かして、動的関係もしくは咬合高径を変更することから、上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の個数により、上下顎の義歯データの最終位置を決定することが好ましい。上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の個数は、3〜62面である。更に、好ましくは9〜62面である。
更に好ましくは前方咬合小面については前歯・左側・右側に1面ずつ合計3面、後方咬合小面については左側・右側に2面ずつ合計4面、平衡咬合小面については左側・右側に2面ずつ合計4面以上の面を有することが好ましい。咀嚼や嚥下により義歯の転覆を抑えることができる。
これらの位置関係は義歯全体の画像認識により、上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の位置関係を算出することが好ましい。前歯部分、臼歯の頬側咬頭、咬合面部分という様に義歯の形態を大まかに分割して、それらの中に接する部分がいくつあるかで算出する方法もある。更に、人工歯の咬頭にあらかじめ作製されている面を算出して、それらの角度から前方咬合小面、後方咬合小面、平衡咬合小面を割り出し、その中の接触数から算出することもできる。またこれらを組み合わせても良い。
【0028】
また、人工歯咬合面の画像データをプログラムに設定することで、得られた義歯データから人工歯の部分を見つけ出し、任意の前方咬合小面、後方咬合小面、平衡咬合小面を削合できる様に設定も可能である。このことにより、的確に上下顎の削合部分を決めることができる。
更に、上下顎の義歯データにより囲まれた範囲の体積を算出し、最終位置を決定することができる。また、一定の量を超えるとエラーが発生して削合を実施しない様にプログラムすることで、削合しすぎるトラブルを避けうる事ができる。
【0029】
義歯削合方法に用いる人工歯は、該人工歯の隣り合う咬頭間に有する前方咬合小面と後方咬合小面間が0.5〜3.0mmの食物流動溝を有する自動削合用人工歯であることが好ましい。歯科用咬合削合機にて切削する場合、各咬合小面間の切削時に別の場所を誤って切削しない為に、あらかじめ前方咬合小面と後方咬合小面を離して作成されることが好ましい。前方咬合小面と後方咬合小面間の好ましい範囲は1.0〜2.0mmである。この程度離れていることにより、研削材が誤って異なる部分を削除することを抑制することができる。また、前方咬合小面と後方咬合小面間の深さ範囲は0.2〜3.0mmである。好ましい深さ範囲は0.5〜1.5mmである。
【0030】
3.削合方法の咬合調整方法への利用
前記削合にかかる発明は咬合調整の発明に概ね用いることができる。同様に咬合調整にかかる発明は削合の発明に概ね用いることができる。
また、咬合調整の発明は、義歯の中でも補綴物に用いることができ、特にインレイやオンレイなどにも用いることができる。好ましくは充填された補綴物の咬合状態を調整する時に用いることができる。患者と歯科医の間で調整が正しく行われたかどうかを容易に確認することが容易にできる。治療後、時間が経過した後に、治療当時の状況の記録として用いることができ、治療に対する正当性も容易に判断することができる。
削合にかかる発明の(1)〜(4)(6)については同様な方法にて咬合調整の方法等を構成することができる。
【0031】
ただし、削合にかかる発明の技術の(2)の削合前義歯作製段階については、咬合調整の方法は削合ではない為、咬合調整前義歯作製段階となる。削合を咬合調整と読み替えることにて、咬合調整前義歯作製段階の説明となる。
(2)咬合状態再現器の顎関係再現条件に合わせて義歯を作製し、削合し、咬合調整する前までの咬合調整前義歯を作製する咬合調整前義歯作製段階について説明する。
咬合調整前義歯作製段階では、前記咬合状態再現段階で得られた上下顎の関係に合わせて義歯を作製する段階であり、通常の義歯の作製段階である。代表的な工程としては、蝋提を作製し、人工歯を排列し、ロストワックス法にて義歯を作製し、削合する段階である。ここでの作製方法は特に限定するものではないが、通常の方法で作製することができる。
従来の削合のみをした状態では、患者に合わせた未だ正しい咬合ができない。患者に適した正しい咬合をする為に咬合面を咬合調整する。
【0032】
(6)については咬合調整データを用いることができる。
咬合調整方法を構成する場合は上下顎に擦れ合う天然歯データを有する3Dデータであれば、好ましく構成できる。
(6)標点付き義歯データに咬合調整データを追加した咬合調整データ付き標点付き義歯データを作成する咬合調整データ付き標点付き義歯データ作成段階について説明する。
前記咬合調整データである咬合調整面を標点付き義歯データと合わせて、咬合調整部分を定め、咬合調整データ付き標点付き義歯データとする。ここで重要なことは、咬合調整してはいけない部分と削合する部分が標点を基準に定められていることである。
このことから、義歯の位置関係を示す標点指示部と咬合調整データ付き標点付き義歯データの標点部分を重ね合わせることにより、義歯の咬合調整する部分を決定することができる。
【0033】
(5)の再現された咬合状態から上下顎の画像で囲まれる部分から、動的条件や設定された条件にて咬合調整データを決定する咬合調整部分決定段階について説明する。
前記削合部分決定段階で用いた技術を用いることができる。
しかし、咬合状態再現段階にて合わせられた3Dデータに囲まれた範囲に注目する点は一致するが、咬合調整の場合は方顎が天然歯データであり、その天然歯は削らないようにしなければならない。そこで、補綴物データ側のみを削るように研削部分を決める。
このことから、咬合調整方法では上下顎に擦れ合う天然歯データを有する3Dデータであることが好ましい。
擦れ合う天然歯データを有しない3Dデータの場合は、顎関係再現条件を基に削合データを作成した要領で、咬合調整部分を決定する。
擦れ合う天然歯データとは、3Dデータ上で、上顎データと下顎データとをそれぞれ1つの面として見た場合に、上下の顎データで囲まれない状態を維持するデータ部分を意味する。
【0034】
4.天然歯の場合
上下顎に擦れ合う天然歯データを有する3Dデータである場合について説明する。
(A)少なくとも1つ以上の上下顎に擦れ合う天然歯データ部分を有する上下顎の3Dデータを認定する。
(B)上下顎の擦れ合う天然歯部データ部分を重ねることで、上下顎の3Dデータを再認定し、擦れ合う天然歯部分面データとする。前記、擦れ合うとは滑動であることが好ましい。
(C)少なくとも1つ以上の擦れ合う天然歯部分面データに合わせて上下顎の3Dデータを動かすことで構成される3Dデータに囲まれた範囲の軌跡を補綴物データ側に残すことでその3Dデータで囲まれた範囲を咬合調整部分として決定する。
【0035】
擦れ合う天然歯部分面データは同一平面にない複数の擦れ合う天然歯部分面データであることが好ましい。更に好ましくは、3箇所以上であることが好ましい。また更に、その面が、前方運動、後方運動、側方運動時に構成される面であることが好ましい。
擦れ合う天然歯部分面データが補綴物に対して、近心側の咬頭と遠心側咬頭にそれぞれ有することが好ましい。
【0036】
(B)の部分にて、天然歯データ部分で擦れ合うように3Dデータを重ねる。このことは補綴物部分のみが、上下顎の3Dデータによって囲まれた範囲を構成する。削合時と異なる部分として、天然歯は削らない為、補綴物が咬合調整される部分となる。その為、天然歯3Dデータ内に侵入した補綴物データ部分が咬合調整される。
咬合調整されるとは、データ上で示された部分を、実際の補綴物が削られることを意味する。
次に、顎の運動時に擦れ合う咬合調整の部分を決定するために、上下3Dデータの擦り合う範囲を設定し、その画像部分を擦り合わすことにより、天然歯3Dデータによって囲まれた範囲である補綴物3Dデータ部分が研削される咬合調整部分となる。
【0037】
(B)の擦れ合う天然歯部分面データの決定方法はどの様な方法でも良いが、以下に一例を示す。
上下顎の擦れ合う天然歯部データ部分をそれぞれ、平面データに近似する。
次に、対応する上下顎の擦れ合う天然歯データ部分の平面が出来るだけ一致する様に重ね合わせ、最も一致する部分で、対応する上下顎の擦れ合う天然歯部データ部分の平面データを近似して最終の上下顎の擦れ合う天然歯部データ部分が共通して保有する平面データとする。擦れ合う天然歯データ部分を上下顎の重ね合わせ部分を同一データとして平面に近似して再認定することで、上顎が擦れ合う共通して保有する平面データとすることができる。
【0038】
5.歯科用補綴物の咬合調整部分を示す方法
また、コンピュータ3Dデータを用いて歯科用補綴物の咬合調整部分を示す方法において、上下顎に擦れ合う天然歯データを含む、補綴物データとそれに対向する天然歯データを有する3Dデータを用いている方法とまたそのプログラムについて説明する。
この方法は、次の段階を有する。
(A)上下顎に擦れ合う天然歯データ部分を上下顎の3Dデータ内に認定する上下顎が擦れ合う天然歯データ部分認定段階:
この擦れ合う部分は天然データ全体でも問題ない。また、補綴物の咬合面部分を指定してその部分以外の部分を全て擦れ合う部分として認定しても差し支えない。
(B)上下顎の擦れ合う天然歯データ部分が重なる様に且つ、重ね合わされた擦れ合う天然歯データ部分で滑動する様に認定する天然歯部分面データ滑動認定段階:
ここでは滑る面にて滑動する様にコンピュータ上に認定する。
(C)少なくとも1つ以上の擦れ合う天然歯部分面データに合わせて上下顎の3Dデータを動かすことで構成される3Dデータに囲まれた範囲の軌跡を補綴物データ側に残すことでその3Dデータで囲まれた範囲を咬合調整部分として決定する咬合調整部分決定段階:
この方法にて得られた3Dデータに囲まれた範囲の軌跡を残した補綴物データを表示することは重要である。
【0039】
6.歯科用接触部状況表示プログラム
上下顎の接触部の状況を表示する歯科用接触部状況表示プログラムについて説明する。
前記、削合や咬合調整にかかる発明の技術は歯科用接触部状況表示プログラムの発明の技術に概ね用いることができる。同様に歯科用接触部状況表示プログラムにかかる発明の技術は削合や咬合調整の発明の技術に概ね用いることができる。
上下顎の接触部の状況を表示する歯科用接触部状況表示プログラムとは、削合や咬合調整、人工歯の排列状況を確認することができるプログラムである。歯科学生が削合や咬合調整、人工歯の排列状況を容易に確認することができる。更に、医師の適切な作業の証拠として用いることができ、更に削合や咬合調整、人工歯の排列が正しく行われたかどうかを確認することができる。合格範囲を設けることで、学生の共通の試験に用いることができ、全国共通の試験に用いることができる。このプログラムは上下顎状態を3Dデータで確認し、上下顎の関係をスケルトンの状態で観察することで上下顎の状態を明確に目視する為のものである。
スケルトンの状態とは、PC画面上で立体を点や線で表し、立体物の前後に配置しても、概ねどちらの形状も把握することができる状態である。網目状の線上で示すワイヤリングされていることが好ましい。
上下顎データを入力するデータ入力手段とは、上下顎の3Dデータをコンピュータ内に入力することをいう。顎データとは口腔内の天然歯牙データや、補綴物を含む歯牙データ、更には補綴物データも含む。顎データは上下顎の接触する咬合面側のデータで用いることができる。
【0040】
上下顎データの顎関係を再現する上下顎データ位置決定手段とは、前記発明の方法も用いることができる。
顎関係を再現する方法としては、上下顎の接する面を特定し特定面とする。これらの面は3〜62面である。更に、好ましくは9〜62面である。特定面の3Dデータから平面を算出する。算出方法は最小二乗法を用いることができる。平面の設定位置は特定面の重心((X)=ΣXn/n、(Y)=ΣYn/n、(Z)=ΣZn/n)で算出し、その点を通る平面を設定する。それぞれの対応する上下顎の特定面の重心の距離の和が最も少ない様に設定することができる。また、それぞれの対応する上下顎の特定面に垂線を設け、それぞれの対応する上下顎の特定面に垂線同士で構成される角度の和が最小になる様に角度を調整すると共に、それぞれの対応する上下顎の特定面の重心の距離の和が最も少ない様に設定することができる。
【0041】
上下顎データに特定の近似範囲に特定の対合顎データが有する部分を表示する上下顎データ接触位置状況表示手段とは、上下顎データの位置関係が明確となり、上下顎のデータから上顎の特定の位置関係にある範囲を表示する。表示方法は、範囲の大きさ(面積、体積)、点滅や色彩を変更する方法などがある。表示範囲は、上下顎の一方の顎データから、もう一方の顎データまでの距離を測定し、最も距離が短いものを該顎データのもう一方の顎データまでの距離とする。顎データのそれぞれの距離を測定し、0〜100μmのものを表示することが好ましく、更に好ましくは0〜50μmであり、また更に好ましくは0〜20μmである。また、距離に合わせて、層状に色彩を変更して表示することも好ましい。
【0042】
データ入力手段の一例である上下顎の顎関係再現条件と、該顎関係再現条件とそれぞれの位置関係を定められる標点を有する標点付き上下顎データを入力するデータ入力手段について説明する。顎関係再現条件はデータ入力手段は標点付き上下顎義歯データを入力するデータ入力手段を用いることができる。前記発明のデータを入力する手段を用いることができる。
上下顎データ位置決定手段の一例である入力データの顎関係再現条件に合わせて標点を用い上下顎データの位置関係を決定する上下顎データ位置確認手段について説明する。これらの方法についても、前記方法を用いることができる。
【0043】
7.歯科治療の評価方法
歯科用接触部状況表示プログラムを歯科治療の評価に用いる方法について、以下に説明する。
歯科治療の評価に用いる方法では、歯科用接触部状況表示プログラムにて算出された表示が、スコアー若しくは数値データであることが好ましい。
スコアーは、あらかじめ上下顎が接触する特定部位を定め、接触状況と判断できるか否かで合否を判断することが好ましい。左臼歯、右臼歯、前歯(中切歯から犬歯)に分け、それぞれを特定部位と定め、特定部位ごとの接触状況をスコアーとして表示することが好ましい。任意に特定部位を定め、接触状況のスコアーとして用いることができる。前方運動、後方運動、側方運動時に接する面を特定部位と定め、接触状況を表示することが好ましい。また、表示方法は、面積若しくは体積であることが好ましく、更に好ましくは面積である。
例えば、削合時の接触部状況表示に関しては、方顎の接する面をそれぞれのスコアーとして、接触状況と判断できる数をスコアー換算することで合否判定することができる。
結果としては、左側の後方運動時に接する面の最も優れた接触部位の数がnの場合、前記プログラムを用いて、最も優れた接触部位への接触状況の結果がn-mの場合、(n-m)/nや(n-m)/n×100%と表示することが好ましい。これらの表示を左右の前方運動、後方運動、側方運動時とを組み合わせた場合や、特定の接触部位への接触状況の表示を面積若しくは体積を組み合わせて表示することが好ましい。
咬合調整の場合は、前記削合時の特定部位を補綴物の範囲として算出することでスコアー若しくは数値データで表示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は義歯を作製時に用いることができる。また、補綴物の咬合調整に用いることができる。更に、削合や咬合調整の完成度合いを確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下顎の接触部の状況を表示する歯科用接触部状況表示プログラムにおいて、
上下顎データを入力するデータ入力段階、
前記上下顎データの咬合状態を再現して、上下顎データの位置を決定する上下顎データ位置決定段階、
上下顎データの特定の近似範囲に特定の対合顎データが有する部分を表示する上下顎データ接触位置状況表示段階をコンピュータに実行させるための歯科用接触部状況表示プログラム。
【請求項2】
上下顎の接触部の状況を表示する請求項1記載の歯科用接触部状況表示プログラムにおいて、
前記データ入力手段が、上下顎の顎関係再現条件と、該顎関係再現条件とそれぞれの位置関係を定められる標点を有する標点付き上下顎データを入力するデータ入力手段であり、
前記上下顎データ位置決定手段が、入力データの顎関係再現条件に合わせて標点を用い上下顎データの位置関係を決定する上下顎データ位置決定段階であることを特徴とする歯科用接触部状況表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81281(P2012−81281A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255075(P2011−255075)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【分割の表示】特願2011−141994(P2011−141994)の分割
【原出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【特許番号】特許第4920795号(P4920795)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【Fターム(参考)】