説明

歯科用治療椅子

【課題】歯科治療椅子のバックレスト、コンターシート上にエアーバッグを設け、該エアーバッグに導入するエアーの量と患者自身の操作によって調整可能とし、患者の好みや体形に合ったクッションを得る。
【解決手段】上記課題を解決するために、バックレスト及びコンターシートの上面にエアーバッグ21b、21cを配設し、該エアーバッグに導入するエアーの量を患者自身で調整する。患者自身が操作できる操作スイッチを有し、該操作スイッチは、患者が治療椅子に座った状態で操作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用治療椅子、より詳細には、バックレスト及びコンターシート上にエアーバッグを有し、これらエアーバッグに導入するエアーの量を患者の操作により調整可能とし、もって、患者の好みや体形に合ったエアークッションに調整可能とした歯科用治療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、本発明が適用される歯科用治療椅子を備えた歯科治療ユニットの一例を説明するための概略全体構成図で、図中、10は歯科用治療ユニットで、該歯科治療ユニット10は、治療椅子1(1aは安頭台、1bはバックレスト、1cはコンターシート、1dはレッグレスト、1eはフットレストから成る),ワークテーブル2,スピットンボックス3,無影灯4,インスツルメントホルダー5,フットスイッチ6,アシスタント用インスツルメントホルダー7等から成り、インスツルメントホルダー5には、歯科治療において術者が使用する種々のインスツルメント8が収納されており、周知のように、歯科治療に当たり、患者は椅子1に座り、頭を安頭台1aに固定して治療を受ける。治療中、術者は操作パネル9の操作ボタンを操作して治療椅子1を上下動,起倒,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。
【0003】
図4は、操作パネル9の一例を説明するための図で、9aはメモリ/オート(M&A)ボタン、9b1,9b2はバックレストの起倒動ボタン、9c1,9c2は治療椅子の上下動ボタン、9d1,9d2は治療椅子の傾斜動(チルト)ボタン、9eはリターンボタンで、該歯科治療椅子においては、椅子の治療位置及びうがい位置が予め設定されてメモリに記憶されており、前記メモリ/オートボタン9aを押すと、椅子はその記憶されたうがい位置(うがいしやすい位置)又は治療位置(治療しやすい位置)に自動的に移動する。治療後、リターンボタン9eを押すと、歯科治療椅子1は初期状態(乗降位置)に戻り、患者は治療椅子より降りることができる。
【0004】
図3においては、歯科治療椅子1を倒(寝)状態にして、術者が患者の背部(安頭台1aの後側)から歯科治療を行う例を示しているが、歯科治療中に患者がうがいをする時等においては、図5に示すように、アシスタント又は術者が歯科用治療椅子1を起状態にして、患者がうがいをしやすくしている。また、患者が歯科用治療椅子1に乗降する際には、歯科治療椅子1を起状態にし(つまり、図5に示す状態にして)、かつ、最下位まで下げて、患者が歯科用治療椅子に乗降しやすいようにしている。
【0005】
図6は、本出願人が先に提案した歯科用治療椅子の一例を示す図で、バックレスト1b、コンターシート1c等の上面に多数の袋体(エアーバッグ)11よりなるクッションを設け、該袋体11の内部圧力を、患者が該歯科用治療椅子に座った時の体圧を体圧測定センサ12で測定し、その測定信号に基いて制御し、袋体11のクッション性を調整するようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−87289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された発明においては、バックレスト、コンターシート等の上面に複数の袋体11を設け、該袋体内の空気圧力(クッション性)を、患者が該歯科用治療椅子に座った時の各袋体11にかかる体圧を体圧測定センサ12によって測定し、その測定信号に基いて調整するようにしているため、患者自身の好みや体形(大小、痩せ、太め)にシートが合わない場合があり、また、頭の形によっては、ヘッドレストが患者の頭に合わない場合がある。
【0008】
更には、患者が歯科用治療椅子に乗る(患者導入)時、足の悪い人や高齢者は、足の力が弱い為、シート面に勢いよく腰を落としてしまうケースがあり、時には打撲などの怪我をしてしまうことがある。患者が歯科用治療椅子から降りる(患者退出)時、通常、コンターシートの面がバックレストに向かって傾斜している為、高齢者や太っている人、身体の硬い人や妊娠している人等は、椅子から立ち上がり難い場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、バックレスト及びコンターシートの上面に配設されたエアーバッグと、該エアーバッグに導入するエアーの量を調整するエアー調整弁と、該エアー調整弁の開閉を制御する操作スイッチとを有し、前記操作スイッチは、患者が治療椅子に座った状態で操作可能であることを特徴としたものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記エアーバッグ内のエアー圧が所定圧以上に上昇した時に、該エアーバッグ内のエアーを自動的に排出する排気弁を有することを特徴としたものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、ヘッドレストの左右上面にエアーバッグを有し、各エアーバッグに導入するエアーの量を同時に、又は、個別に調整可能であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
歯科用治療椅子のバックレスト、コンターシート、ヘッドレスト上に設けられたエアーバッグ(エアークッション)内の空気圧を患者自身の操作で調整できるようにし、自分(患者)好みのシート形状、クッションに調整可能とする。患者が歯科用治療椅子に乗る(患者導入)時、エアーバッグを膨らませて、排気弁が開くようにしておく事で、患者が勢い良く着座した場合に、患者の体の跳ね返りを効果的に吸収して打撲等の怪我を防ぐことができる。
患者が歯科用治療椅子から降りる(患者退出)時、エアーバッグを膨らませることにより、患者の立ち上がり動作をサポート出来る。
ヘッドレストの左右のエアーバッグ内の圧力を調整する事により、今まで調整出来なかった患者の口腔位置の左右方向の微調整が簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による歯科用治療椅子の一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明において使用される患者操作スイッチの例を説明するための図である。
【図3】本発明が適用される歯科用治療椅子を具備する歯科治療ユニットの一例を説明するための図である。
【図4】歯科用治療椅子を操作する操作スイッチの例を示す図である。
【図5】本発明が適用される歯科用治療椅子の例を示す図である。
【図6】エアーバッグを有する従来の歯科用治療椅子の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明による歯科用治療椅子の一実施例を説明するための外観図で、図1(A)は、治療椅子に患者が座っていない時の状態、図1(B)は、患者が座っている時の状態を示し、図中、21a(21a1、21a2)、21b、21cは、それぞれ、ヘッドレスト1a、バックレスト1b、コンターシート1cの上面に設けられたエアーバッグ(エアーバッグ)で、これらエアーバッグ内に供給されるエアーは、歯科治療ユニットの例えばスピットンボックス3内に設けられているコンプレッサによって発生され、歯科治療具として用いられるエアータービン等を駆動する圧縮空気が用いられ、供給されるエアーの量(クッション)は、患者によって調整可能となっている。エアーバッグ内に空気を入れた状態で、患者が歯科治療椅子に座ると、図1(B)に示すように、患者の体圧がかかっている部分のエアーバッグは沈み、体圧がかかっていない部分のエアーバッグは体圧のかかり具合に応じて浮き上がり、患者の体形、座り方等に応じて変形し、患者の体形にフィットするが、そのフィット具合は、患者の好みに応じて患者自身で調整することができる。
【0015】
歯科治療に当って、まず、患者は、歯科治療椅子1に乗るが、その際、足の悪い患者や高齢の患者は、足の力が弱いため、コンターシート面に勢い良く腰を落としてしまうことがあり、時には、打撲等の怪我をしてしまうことがある。このようなケースに対して、本発明によると、アシスタントが、椅子操作スイッチ(図4のスイッチ9e)を押すことで歯科用治療椅子1を初期状態(歯科治療椅子を患者導入・退出ポジション)へ移動させる。かつ、その際、つまり、椅子下降中にエアーバッグを膨らませておき、患者が椅子に勢い良く着座した場合に、患者の体をクッション効果により保持し、打撲等の怪我を防止する。その際、エアーバッグ内の空気圧が所定圧以上になった時に、該エアーバッグ内の空気を自動的に排出する排気弁を設けておく時は、エアーバッグの跳ね返りを防止して、患者をより効果的に保護することができる。
【0016】
図2は、図1に示した歯科用治療椅子のエアーバッグのクッション性を調整する操作スイッチ30の例を示す図で、この操作スイッチ30は、アシスタントや術者も操作可能であるが、基本的には、患者が操作するものであり、患者が操作できる範囲内(例えば、椅子の肘掛け)に配設されるが、コード配線あるいはリモコンによって操作するようにしてもよい。
【0017】
図2において、31は全てのエアーバッグに共通の操作スイッチ、32はヘッドレスト用、33はバックレスト用、34はコンターシート用の操作スイッチで、31aを押すと、ヘッドレスト用エアーバッグ1a1、1a2、バックレスト用エアーバッグ1b、及び、コンターシート用エアーバッグ1cの全てに圧縮空気が供給され、これら全てが一様に膨張し、31bを押すと、これらに供給された圧縮空気が一様に放出され、これにより患者は、全体を略自分の好みに合った空気圧(クッション)に調整することができる。
【0018】
上述のようにして、患者は、全体のクッション性を自分の好みに設定した後、スイッチ32aを押すことによって、ヘッドレス用エアーバッグ1a1、1a2を更に膨らませて(或いは、スイッチ32bを押すことによって、両エアーバッグ1a1、1a2を萎ませて)、頭に対するクッション性を自分の好みに合せ、更には、32a1を押すことによって、ヘッドレストに設けられている右側のエアーバッグ1a1に圧縮空気を供給して該エアーバッグ1a1を膨らませて(或いは、32b1を押すことによって左側のエアーバッグ1a2の圧縮空気を抜いて該エアーバッグ1a2を萎ませて)、顔(頭)を左側に向け、或いは、ヘッドレストの左側に設けられているエアーバッグ1a2を膨らませ(或いは、右側に設けられているエアーバッグ1a1を萎ませて)、顔(頭)を右側に向ける等、患者の体形、好みに合せて、患者の顔(頭)の向きを患者自身のスイッチ操作によって調整することができる。同様にして、スイッチ33a、33bを操作して、バックレスト1bのクッション性を自分の好み、自分の体形に合せ、スイッチ34a、34bを操作して、コンターシート1cのクッション性を自分の好み、体形に合せることができる。
【0019】
上述のようにして、各部のエアーバッグの封入空気量(クッション性)を調整した後、メモリスイッチ35を押すと、以降、各部の空気圧は、前記設定した空気圧に記憶・保持され、クリアボタン36を押した時に、全てのメモリが消去され、以降、自由に再設定可能となる。
【0020】
更に、歯科治療においては、患者が治療椅子に乗ったり、該治療椅子から降りたりするが、その際、患者が乗降しやすいように、治療椅子を最下位置まで下げ、その位置で、患者は治療椅子に乗り、治療後は、その位置で治療椅子から降りるが、その際の治療椅子の昇降は、前述のように、例えば、操作パネル9に設けられたリターンスイッチ9eをアシスタント又は術者が操作することによって行われる。
【0021】
まず、歯科治療が終了すると、アシスタント又は術者は、患者が治療椅子から降りやすくするために、該治療椅子を最下位置まで下げるが、その際、コンターシート上のエアーバッグを更に膨らませると、患者が治療椅子から立ち上がる際、その立ち上がり動作を助けることができ、更には、バックレストのエアーバッグを膨らませることにより、患者を前方に押して、患者が治療椅子から降りるのを助けることができる。更に、通常、コンターシートはバックレストに向って傾斜しており、患者がバックレストに好適に凭れ掛けられるようになっている。そのため、治療椅子(コンターシート)から立ち上がる時に、後ろ向きの力がかかってしまい、腰を持ち上げるのが大変であるが、前述のようにコンターシート上のエアーバッグの圧力を高めると、患者が治療椅子から立ち上がろうとして腰を持ち上げると、その部分(腰を下ろしていた部分)のエアーバッグが膨らみ、患者の立ち上がり動作を助けることができる。
【0022】
また、歯科治療に際し、患者が歯科治療椅子に乗る前に、アシスタント又は術者は、ヘッドレスト、バックレスト、コンターシート内のエアーバッグの空気圧を高め、これらエアーバッグを膨らませておくことができ、このようにして、エアーバッグを膨らませておく時は、足の悪い人や高齢者等、足の力が弱い患者が勢い良くコンターシートに腰を下ろしても、クッション効果により、患者を打撲等の怪我から護ることができる。その際、エアーバッグ内の圧力が所定圧力になった時(コンプレッサの最高発生圧力以上)に自動的に開放する開放弁を設けておく時は、リバウンドを抑え、より効果的に患者を保護することができる。
【0023】
また、歯科治療中、患者はうがいをするが、その際、患者は前傾姿勢をとるため、アシスタント又は術者は、この動作を助けるため、コンターシート、バックレスト、ヘッドレスト等のエアーバッグに圧縮空気を導入して、これらエアーバッグを膨らませると、特に、コンターシートの後部が持ち上がり、患者は、楽にうがい姿勢に移ることができる。うがいが終わったら、エアーバッグ内の圧力を抜き、元のメモリ空気圧に戻すので、患者のフィット感を損なうことはない。
【符号の説明】
【0024】
1a…ヘッドレスト、1b…バックレスト、1c…コンターシート、21a1,21a2…ヘッドレスト用エアーバッグ、21b…バックレスト用エアーバッグ、21c…コンターシート用エアーバッグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックレスト及びコンターシートの上面に配設されたエアーバッグと、
該エアーバッグに導入するエアーの量を調整するエアー調整弁と、
該エアー調整弁の開閉を制御する操作スイッチとを有し、
前記操作スイッチは、患者が治療椅子に座った状態で操作可能であることを特徴とする歯科用治療椅子。
【請求項2】
前記エアーバッグ内のエアー圧が所定圧以上に上昇した時に、該エアーバッグ内のエアーを自動的に排出する排気弁を有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用治療椅子。
【請求項3】
ヘッドレストの左右上面にエアーバッグを有し、各エアーバッグに導入するエアーの量を同時に、又は、個別に調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用治療椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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