説明

歯科用漂白材

【課題】 より高い漂白効果を得ることが可能な歯科用漂白材を提供する。
【解決手段】 溶媒にカルシウムキレート剤と増粘材が配合されているペースト状の第一成分と、溶媒に過酸化水素と過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体が配合されているペースト状の第二成分とから構成されていることを特徴とする歯科用漂白材であり、第一成分のpHが7〜10となるように、第一成分にpH調整剤が配合されていたり、第一成分に過酸化水素を活性化させる触媒が配合されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素の沈着した歯牙を漂白するために使用する歯科用漂白材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に歯の白さは美容上重要な要素であると考えられており、若い女性を中心として歯を白くしたいという希望は強く歯牙の漂白を求めるケースが増加している。この歯牙の漂白方法としては、過酸化水素水に光や熱を使用した漂白方法が一般的であり、より詳細には過酸化水素水を浸したガーゼを歯牙の唇面に乗せ、ランプで光を左右から約30分間照射する方法である。
【0003】
他に、塩酸,過酸化水素水,ジエチルエーテルの混合液を薬剤として使用する漂白方法や、過ホウ酸ナトリウムの粉末と30重量%過酸化水素水とを練和したペーストを薬剤として使用する方法や、過酸化水素水とオルトリン酸とを混合して成る歯の漂白剤及び漂白方法(例えば、特許文献1参照。)や、過酸化水素水に無水ケイ酸を混合した漂白剤及び当該漂白剤を塗布する生活歯の漂白方法(例えば、特許文献2参照。)や、歯科用漂白剤(過酸化尿素水素,過酸化水素カルバミド,カルバミドペルオキシドなど)とマトリックス材料(カルボキシメチレンなど)から成る歯科漂白組成物及びそれらを用いて歯を漂白する方法(例えば、特許文献3参照。)など数多くの過酸化水素水と各種器具と他の薬剤との組合せによる漂白剤及び漂白方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、過酸化水素を使用したこれらの従来方法では漂白に時間がかかるという欠点があった。また、短時間で充分な漂白効果を得るには過酸化水素の配合量を増す必要があり、過酸化水素の配合量を増すと知覚過敏の発生や歯肉を刺激してしまうという問題があった。
【0005】
前述のような過酸化水素を用いる漂白方法の他に、光触媒作用を有する二酸化チタン粉末と低濃度の過酸化水素とを用いた歯牙の漂白方法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、従来の二酸化チタンを用いた歯牙の漂白剤も漂白効率が悪く患者が満足する漂白効果を得るためには多大な漂白時間を要していた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−143436号公報
【特許文献2】特開平5−320033号公報
【特許文献3】特開平8−113520号公報
【特許文献4】特開平11−92351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は従来技術の欠点を解消し、より高い漂白効果を得ることが可能な歯科用漂白材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルシウムキレート剤はカルシウムを化学的に取り込む作用があるので、カルシウムキレート剤を歯科用漂白材に配合することによって、歯科用漂白材中に配合されたカルシウムキレート剤が歯表面と結びつくことで歯の表面の付着物を浮かすとともに、歯の表面から表層部へ過酸化水素が直接入り込み易くなるので歯牙を効率良く漂白することが可能となるから、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、溶媒にカルシウムキレート剤と増粘材が配合されているペースト状の第一成分と、溶媒に過酸化水素と過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体が配合されているペースト状の第二成分とから構成されていることを特徴とする歯科用漂白材であり、第一成分のpHが7〜10となるように、第一成分にpH調整剤が配合されていたり、第一成分に過酸化水素を活性化させる触媒が配合されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る歯科用漂白材は、カルシウムキレート剤:0.1〜8重量%,増粘材:1〜10重量%,pH調整剤:0.1〜8重量%,過酸化水素を活性化させる触媒:0.01〜4重量%を含む残部が溶媒から成るペースト状の第一成分と、
過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体:15〜40重量%,過酸化水素:20〜40重量%を含み残部が溶媒から成るペースト状の第二成分とから構成されている歯科用漂白剤であることがより好ましい歯科用漂白材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る歯科用漂白材を用いれば、歯科用漂白材中に配合されたカルシウムキレート剤が歯面と歯面の着色物の間に入り込むことにより歯面の着色物を浮かし、歯内部もしくは歯表面付近の内部へ過酸化水素が直接入り込み易くなるので従来と同量の過酸化水素を用いれば歯牙の漂白効率が上がり、従来と同様の漂白効果であれば短時間で漂白することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る歯科用漂白材は、第一成分にカルシウムキレート剤が配合されていることを特徴とする。カルシウムキレート剤としては、クエン酸、グリシン、メタリン酸,トリポリリン酸,テトラポリリン酸,ピロリン酸,オルソリン酸,ヘキサメタリン酸,メタリン酸ナトリウム,トリポリリン酸ナトリウム,テトラポリリン酸ナトリウム,ピロリン酸ナトリウム,オルソリン酸ナトリウム,ヘキサメタリン酸ナトリウム,メタリン酸カリウム,トリポリリン酸カリウム,テトラポリリン酸カリウム,ピロリン酸カリウム,オルソリン酸カリウム,ヘキサメタリン酸カリウム,エチレンジアミン4酢酸,ヒドロキシイミノ2酢酸,ジヒドロキシエチルギリシン,ニトリロ3酢酸,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸,ジエチレントリアミン5酢酸,トリエチレンテトラミン6酢酸,エチレンジアミン4酢酸ナトリウム,ヒドロキシイミノ2酢酸ナトリウム,ジヒドロキシエチルギリシンナトリウム,ニトリロ3酢酸ナトリウム,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸ナトリウム,ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム,トリエチレンテトラミン6酢酸ナトリウム,エチレンジアミン4酢酸カリウム,ヒドロキシイミノ2酢酸カリウム,ジヒドロキシエチルギリシンカリウム,ニトリロ3酢酸カリウム,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸カリウム,ジエチレントリアミン5酢酸カリウム,トリエチレンテトラミン6酢酸カリウム,アミノトリメチレンホスホン酸,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイド,アミノトリメチレンホスホン酸ナトリウム,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸ナトリウム,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸ナトリウム,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイドナトリウム,アミノトリメチレンホスホン酸カリウム,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸カリウム,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸カリウム,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイドカリウムが挙げられる。
【0013】
上記カルシウムキレート剤の配合量は第一成分の組成物中、好ましくは0.1〜8重量%、更に好ましくは2〜5重量%配合されていることが好ましい。0.1重量%未満であると歯の表面の付着物を浮かす効果が得られにくく、8重量%を超えると第二成分と混合した時に過酸化水素の効果を低減させてしまう傾向がある。
【0014】
従来から、エデト酸二ナトリウム,EDTA,オキシンEDTA,カルシウム二ナトリウムEDTA,アジピン酸,コハク酸,クエン酸などのカルボン酸キレート化剤や、硝酸スズ,リン酸スズなどのスズ塩が漂白材の安定化剤として用いられている(例えば、特開2002−226349号公報,特表2001−508438号公報)。しかしながらこれらのキレート剤は、周期表で遷移族に属する金属、例えば鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,マンガン,クロムなどの金属イオンが不純物として過酸化水素と共に存在すると過酸化水素の分解が促進され漂白効果の衰えが早まってしまうので、これらの安定剤を配合して過酸化水素を安定した状態で保つことを目的としていた。即ち、従来のキレート剤は過酸化水素と同時に配合されていたために漂白効果の減少も同時に起こり、高い漂白効果を得ることができなかったのである。
【0015】
また本発明に係る歯科用漂白材の第一成分には、ペースト状をなし操作性を高めるとともに歯面に効率良く留めておくために、増粘材が配合されていることが必要である。増粘材としては、従来から歯科用漂白材で用いられている例えば繊維素グルコース酸ナトリウム,アルギン酸ナトリウム,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルセルロースカルシウム,カルボキシポリメチレン,メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー,ジメチルポリシロキサン,デンプングルコース酸ナトリウム,デンプンリン酸エステルナトリウム,ポリアクリル酸ナトリウム,メチルセルロース,結晶セルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリビニルピロリドンなどの有機系増粘材や、ケイ酸マグネシウムナトリウム,ケイ酸マグネシウムナトリウムリチウム,アクリル酸/ベヘン酸コポリマー,炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム,ケイ酸マグネシウム,シリカ粉末,各種ガラス類,非晶質含水ケイ酸,ヒュームドシリカなどの無機系増粘材のような口腔内での使用に適している増粘材を特に適宜使用することができる。
【0016】
本発明に係る歯科用漂白材の第一成分に配合される増粘材の配合量は第一成分中に1〜10重量%であることが好ましく、1重量%未満であると増粘の効果が得られにくく、10重量%を超えて配合されると第一成分の粘度が高すぎて操作性が悪くなる傾向がある。この増粘材のより好ましい配合量は4〜8重量%である。
【0017】
本発明に係る歯科用漂白材の第一成分で使用される溶媒としては、生体に対して安全であり、後述する第二成分中に配合される過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体と反応したり分解させない成分であれば特に限定されないが、口腔内での使用を考慮すると水または水溶性の例えばアルコール類などを用いることが好ましい。より詳細に述べれば、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2ペンタジオール、1,2ヘキサンジオール、1,2オクタンジオールを好ましい例として挙げることができる。
【0018】
第一成分に配合される溶媒の配合量は第一成分の組成物中の他の成分の残部であるが、好ましくは70〜90重量%、更に好ましくは75〜90重量%である。70重量%未満であると粘度が高過ぎて第二成分と混合し難くなり、第二成分と混合後歯面に塗布し難くなる。また、90重量%を超えて配合されると他の成分の配合割合が減り漂白効果が減少してしまう傾向がある。
【0019】
本発明に係る歯科用漂白材の第二成分は、基本的な構成として溶媒に過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体と過酸化水素が配合されて成る。ここで使用される過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体は、例えば特表平6-505765号公報に記載されているような過酸化水素を含むポリビニルピロリドンの粉末状の複合体である。複合体中の過酸化水素の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。この過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体は、溶液中においても長期的に過酸化水素を安定な状態で保つことが可能であり、また同時にポリビニルピロリドン自体が過酸化水素による影響を長期間受けない特徴がある。更に、過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体は、ポリビニルピロリドンの特性を維持しており、配合する組成物に対して優れた増粘作用を持ち且つ生体に安全である。
【0020】
第二成分に配合される過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体の配合量は、第二成分の15〜40重量%であることが好ましく、15重量%未満では第二成分の粘度が低すぎて操作性が悪くなる傾向があり、40重量%を超えて配合すると第二成分の粘度が高くなりすぎて操作性が悪くなる傾向がある。より好ましくは、20〜30重量%である。
【0021】
また、本発明に係る歯科用漂白材の第二成分に配合される過酸化水素は、その単独での配合量が20重量%未満であると過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体中の過酸化水素と合わせても漂白効果が得られ難く、40%を超えて配合されると知覚過敏の発生や歯肉などへの刺激が強くなるから好ましくない。より好ましい配合量は25〜30重量%である。
【0022】
本発明に係る歯科用漂白材の第二成分に使用される溶媒としては、第一成分で使用される溶媒と同様に生体に対して安全であり、第二成分中に配合される過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体と反応したり分解させない成分であれば特に限定されない。口腔内での使用を考慮すると水または水溶性の例えばアルコール類などを用いることが好ましい。より詳細に述べれば、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2ペンタジオール、1,2ヘキサンジオール、1,2オクタンジオールを好ましい例として挙げることができる。
【0023】
第二成分に配合される溶媒の配合量は第二成分中の他の成分の残部である。より詳細には40〜60重量%配合されていることが好ましい。40重量%未満であると粘度が高過ぎて第一成分と混合し難くなり、また第一成分と混合後歯面に塗布し難くなる。一方60重量%を超えて配合されると他の成分の配合割合が減り漂白効果が減少してしまう傾向がある。
【0024】
本発明に係る歯科用漂白材を用いて変色した歯牙を漂白する方法は、使用直前に第一成分と後述する第二成分とを重量比1:5〜5:1にて所定の割合で混合してからその混合物を歯面に塗布したり、あるいは専用のトレーに入れて歯牙に付着させる方法で行う。このとき、歯牙の漂白を効率良く行うためには、歯面に作用させる混合物はpHが中性近辺〜弱アルカリ性であることが望ましいのであるが、過酸化水素が配合されている第二成分は、過酸化水素の保存安定性を高めるために過酸化水素本来のpH5以下、即ち酸性に保たれていることが好ましい。そこで、第一成分と第二成分とを所定の割合で混合した時にその混合物のpHが中性近辺〜弱アルカリ性となるように、第一成分のpHは7〜10になるように第一成分にpH調整剤が配合されていることが好ましい。
【0025】
第一成分に配合されるpH調整剤としては、リン酸2ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化ナトリウム,水酸化アンモニウム,炭酸ナトリウム,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンなどが好ましく用いられる。
【0026】
更に本発明に係る歯科用漂白材の第一成分は、使用直前に後述する第二成分と所定の割合で混合して用いるため第二成分に配合された過酸化水素を活性化させる触媒が配合されていることが好ましい。第一成分に配合される触媒としては、第一成分中で安定であり第二成分と混合した時にのみ第二成分中の過酸化水素を活性化させる作用がある触媒が好ましく、例えば二酸化チタン,酸窒化チタン,二酸化マンガン,鉄化合物,銅化合物などを挙げることができる。中でも、酸窒化チタンは歯科で多く用いられている光重合器の波長で最適に活性化できるために好ましい触媒である。
【0027】
本発明に係る歯科用漂白材で用いる触媒は、第一成分中に0.01〜4重量%配合されることが好ましい。0.01重量%未満であると第二成分との混合時に過酸化水素を活性化させる作用が弱くなり、4重量%を超えると混合後の過酸化水素の活性が早く進行しすぎて使用時の漂白効果が低下する傾向がある。この触媒のより好ましい配合量は0.1〜1重量%である。
【0028】
本発明に係る歯科用漂白材は触媒の種類によっては漂白効果を高めるために必要に応じて光照射を行っても良い。また本発明で使用している成分の効果を阻害しない範囲で他に香料,色素,保存剤,甘味料などの成分を配合してよいのは勿論である。
【0029】
歯牙の漂白時間は、数分間〜数十分間であり、歯面に本発明に係る歯科用漂白材を適用した後は、必要により効果が得られるまで同様の操作を間隔をあけて繰り返す。
【実施例】
【0030】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
<歯科用漂白材の作製>
表1及び表2の配合に従い、歯科用漂白材の第一成分及び第二成分を作製した。
【0032】
<漂白効果の確認>
タンニン酸鉄で着色した牛歯の着色面に、第一成分と第二成分とを表3示した割合で混合した歯科用漂白材を塗布し、表3に記した時間放置した後に水洗した。歯科用漂白材を適用する前後において各々測色を行いL表色系により数値化し、漂白前後でのL値,a値,b値の差を表すそれぞれのΔL値,Δa値,Δb値を算出して、下記の数式1に代入してΔEの値を求めた。
ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2
求めたΔEの値を下記の効果基準に照らし合わせ漂白効果を確認した。
【0033】
ΔE>15:○
15≧ΔE>10:△
10≧ΔE :×
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
Peroxydone K-30:過酸化水素を約20重量%含み、重量平均分子量が58,000である過酸化水素水ポリビニルピロリドン複合体(ISP社製)。
Peroxydone K-90:過酸化水素を約20重量%含み、重量平均分子量が1,300,000である過酸化水素水ポリビニルピロリドン複合体(ISP社製)。
【0037】
【表3】

【0038】
表3から明らかなように、本発明に係る歯科用漂白材は高い漂白効果を示すことが確認できた。比較例1は、実施例8の第一成分の配合からカルシウムキレート剤を除いた配合で実施例8と同じ時間処置した例、比較例2は実施例24の第一成分の配合からカルシウムキレート剤を除いた配合で実施例24と同じ時間処置した例であるが、比較例1及び比較例2は対応する実施例と比較して漂白効果が劣っていた。また、比較例3は実施例8の第一成分の配合からカルシウムキレート剤を除き、更に第二成分に配合される過酸化水素の量を増し実施例8と同じ時間処置した例であるが、実施例8の漂白効果には及ばなかった。比較例4は、実施例8の第一成分の配合からカルシウムキレート剤を除き、実施例8の2倍の時間処置した例であるが、それでも実施例8の漂白効果には及ばなかったことが分かる。以上の比較から、本発明に係る歯科用漂白材はカルシウムキレート剤を配合することで過酸化水素の量を増さなくても短時間で高い漂白効果を示す優れた歯科用漂白剤であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒にカルシウムキレート剤と増粘材が配合されているペースト状の第一成分と、溶媒に過酸化水素と過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体が配合されているペースト状の第二成分とから構成されていることを特徴とする歯科用漂白材。
【請求項2】
第一成分のpHが7〜10となるように、第一成分にpH調整剤が配合されている請求項1に記載の歯科用漂白材。
【請求項3】
第一成分に過酸化水素を活性化させる触媒が配合されている請求項1または2に記載の歯科用漂白材。
【請求項4】
カルシウムキレート剤 :0.1〜8重量%
増粘材 :1〜10重量%
pH調整剤 :0.1〜8重量%
過酸化水素を活性化させる触媒 :0.01〜4重量%
溶媒 :残部
を含むペースト状の第一成分と
過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体 :15〜40重量%
過酸化水素 :20〜40重量%
溶媒 :残部
を含むペースト状の第二成分とから構成されている請求項1ないし3の何れか一項に記載の歯科用漂白材。
【請求項5】
第一成分に配合されているカルシウムキレート剤が、
クエン酸、グリシン、メタリン酸,トリポリリン酸,テトラポリリン酸,ピロリン酸,オルソリン酸,ヘキサメタリン酸,メタリン酸ナトリウム,トリポリリン酸ナトリウム,テトラポリリン酸ナトリウム,ピロリン酸ナトリウム,オルソリン酸ナトリウム,ヘキサメタリン酸ナトリウム,メタリン酸カリウム,トリポリリン酸カリウム,テトラポリリン酸カリウム,ピロリン酸カリウム,オルソリン酸カリウム,ヘキサメタリン酸カリウム,エチレンジアミン4酢酸,ヒドロキシイミノ2酢酸,ジヒドロキシエチルギリシン,ニトリロ3酢酸,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸,ジエチレントリアミン5酢酸,トリエチレンテトラミン6酢酸,エチレンジアミン4酢酸ナトリウム,ヒドロキシイミノ2酢酸ナトリウム,ジヒドロキシエチルギリシンナトリウム,ニトリロ3酢酸ナトリウム,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸ナトリウム,ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウム,トリエチレンテトラミン6酢酸ナトリウム,エチレンジアミン4酢酸カリウム,ヒドロキシイミノ2酢酸カリウム,ジヒドロキシエチルギリシンカリウム,ニトリロ3酢酸カリウム,ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸カリウム,ジエチレントリアミン5酢酸カリウム,トリエチレンテトラミン6酢酸カリウム,アミノトリメチレンホスホン酸,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイド,アミノトリメチレンホスホン酸ナトリウム,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸ナトリウム,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸ナトリウム,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイドナトリウム,アミノトリメチレンホスホン酸カリウム,1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸カリウム,エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸カリウム,アミノトリメチレンホスホン酸のN−オキサイドカリウムから選ばれる少なくとも一種である請求項1ないし4の何れか一項に記載の歯科用漂白材。

【公開番号】特開2007−254419(P2007−254419A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83344(P2006−83344)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】