説明

歯科用診療装置

【課題】テーブルを大きくすることなくマウスの操作スペースを別途確保し、コンピュータモニタ装置を用いた診療が円滑になし得る新規な歯科用診療装置を提供する。
【解決手段】診療台2と、その周辺部に設置されたコンピュータモニタ装置12と、移動アーム11に水平状態を維持して支持され且つ上記診療台2の近傍位置を移動自在とされた本体テーブル10とを備えた歯科用診療装置において、上記本体テーブル10の下部には、上記コンピュータモニタ装置12の制御用マウスmを移動操作させる為の補助テーブル13が、上記本体テーブル10の側辺近傍部に取出し自在に収納保持され、該補助テーブル13は、本体テーブル10の側辺近傍部に取出された時には水平状態に保持されるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータモニタ装置を診療台の周辺部に備え、このコンピュータモニタ装置により診療台上の患者に病状説明等を行うことができる歯科用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科の診療装置においては、診療台上に患者を着座させ或いは仰臥させて口腔内の診断・治療を行うだけでなく、診療台の周辺部(例えば、トレーテーブルやユニットテーブル上或いはデンタルライト用支柱更にはスピットン用基台等)に、コンピュータモニタ装置を設置し、このコンピュータモニタ装置に口腔内の映像やX線撮影写真等を映し出しながら、患者に病状等の説明をし得るようにしたシステムが採用されるようになった。このようなシステムの採用により、術者と患者との意思の疎通が図れ、より的確な診断・治療の実施に大きく貢献することとなった。特許文献1には、トレーテーブルの一側部にモニタディスプレイを設置し、術者と患者とが同時にモニタディスプレイを見ることができるようにして術者と患者との位置の疎通を図るようにした歯科診療装置が開示されている。
【0003】
ところで、上記のようなモニタディスプレイはコンピュータモニタ装置の一部を構成するものであるが、そのコンピュータモニタ装置の制御操作は、トレーテーブル或いはユニットテーブル(以下、これらを総称してテーブルと言う)上にマウスを置き、術者がそのマウス操作によってなされることになる。しかし、テーブル上には通常薬品や治療器具が置かれている為、マウス操作をする為のスペースを十分に確保することが難しく、狭いスペース内で無理してマウス操作をしようとすると円滑な移動操作がなされず、また、トレー上の薬品等を落下させてしまうような事態も発生する。特許文献2には、ユニットテーブルを、アームへの取付部を有するテーブル本体と、テーブル本体に対して変位可能な移動テーブル台とで構成した歯科用診療台装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−325594号公報
【特許文献2】特公昭62−22628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献2に開示された歯科用診療台装置におけるユニットテーブルは、ハンガーに係止されているシリンジにはチューブがたれ下がっている為にユニットテーブルを患者の胸上に位置させることができない一方、治療に必要な薬品等は患者の胸上に位置している方が治療に望ましいこともあることから、薬品等を載置する移動テーブル台を、シリンジのハンガーを備えるテーブル本体に対して変位可能としたものであるが、テーブル上面の作業スペースを新たに増加するものではないから、上記のようにマウスの操作スペースを確保しようとすると上記と同様の問題点が生じることになる。また、テーブルにマウス操作用の新たなスペースを確保せんとすると、テーブルが大きくなり、診療台側部における患者や術者の通行の邪魔になる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、テーブルを大きくすることなくマウスの操作スペースを別途確保し、コンピュータモニタ装置を用いた診療が円滑になし得る新規な歯科用診療装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る歯科用診療装置は、診療台と、その周辺部に設置されたコンピュータモニタ装置と、移動アームに水平状態を維持して支持され且つ上記診療台の近傍位置を移動自在とされた本体テーブルとを備えた歯科用診療装置において、上記本体テーブルの下部には、上記コンピュータモニタ装置の制御用マウスを移動操作させる為の補助テーブルが、上記本体テーブルの側辺近傍部に取出し自在に収納保持され、該補助テーブルは、本体テーブルの側辺近傍部に取出された時には水平状態に保持されるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項1の本発明において、前記補助テーブルは、請求項2の発明のように、前記本体テーブルの下部又は側部に固設された垂直支柱に水平旋回可能に取付けられ、この垂直支柱周りに回動させることによって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされているものとしたり、請求項3の発明のよう、前記本体テーブルの下部に設けられた水平スライド機構に支持され、この水平スライド機構に沿ってスライドさせることによって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされているものとしたり、或いは請求項4の発明のように、前記本体テーブルの下部又は側部に取付けられた水平支軸を支点として垂直面域内を回動可能に支持され、この水平支軸周りの垂直面域内での回動によって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされているものとすることができる。
【0008】
請求項5の発明に係る歯科用診療装置は、診療台と、その周辺部に設置されたコンピュータモニタ装置と、移動アームに水平状態を維持して支持され且つ上記診療台の近傍位置を移動自在とされた本体テーブルとを備えた歯科用診療装置において、上記本体テーブルには、上記コンピュータモニタ装置の制御用マウスを移動操作させる為の補助テーブルが着脱自在に装着され、該補助テーブルは、本体テーブルに装着された時には本体テーブルの側辺近傍部に水平状態に保持されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
そして上記いずれかの本発明において、請求項6の発明のように、前記診療台が、上下昇降自在な座板と、該座板の一端に連結され平行リンク機構により傾動自在とされた背板とよりなり、前記移動アームは上記平行リンク機構の背板側リンクに固設され、前記本体テーブルは、平行リンク機構の動作による背板の上下傾動に伴い水平状態を維持して上下動するよう移動アームに支持されているものとすることも可能である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1或いは請求項5の発明によれば、補助テーブルが、コンピュータモニタ装置の制御用マウスを移動操作させる為の専用テーブルとして使用されるから、上記本体テーブル上に置かれる薬品や器具等によってその操作スペースの制約を受けず、コンピュータモニタ装置を用いた診療が円滑になされる。これにより、患者と術者との意思疎通を図った診療普及に大いに貢献することになる。また、補助テーブルを使用しない時には、この補助テーブルは本体テーブルの下部に収容され(請求項1)、或いは取外されて(請求項5)別置きすることができるから、治療作業や本体テーブル側部の通行に邪魔になることもない。
【0011】
また、補助テーブルを請求項2〜4の発明のような構成によって、本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能となるようにすれば、垂直支柱周りに回動させたり、或いは、水平スライド機構に沿ってスライドさせ、更には、水平支軸周りの垂直面域内で回動させたりするだけで、補助テーブルの収納・取出しがなされるから、その操作が簡易で煩わしさを伴わず、診療の円滑性を損なうようなことがない。
【0012】
更に、診療台を請求項6の発明のように構成すれば、背板の傾動動作に伴い、本体テーブルが水平状態を保ったまま患者の起伏位置に応じた位置に上下動するから、本体テーブル上での作業が各診療態様に応じた適正位置でなされることになる。また、補助テーブルも本体テーブルの上下動に連動して上下動するから、マウス操作も夫々の位置で円滑になされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明の歯科用診療装置の一例を示す正面図、図2は同平面図、図3は補助テーブルの一実施例を示す図2におけるA−A線縦断面図、図4は補助テーブルの他の実施例を示し、(a)は図3と同様図、(b)はその動作状態を示す図、(c)は(a)におけるB−B線断面図、図5は補助テーブルの他の実施例の図3と同様図、図6(a)は同実施例の平面図、(b)は(a)におけるC−C線矢視図、(c)は(a)におけるD−D線矢視図、図7(a)は同実施例の動作状態を示す側面図、(b)は(a)におけるE−E線矢視図、図8は補助テーブルの他の実施例を示し、(a)は図3と同様図、(b)はその平面図、図9は本発明の歯科用診療装置の他の実施例を示す正面図、図10は同平面図である。
【実施例1】
【0014】
図1及び図2において、1は歯科診療台2を支持する基台であり、該基台1内には診療台2を上下昇降させる為の油圧等による昇降機構1aが内蔵されており、診療台2は実質的にこの昇降機構1aにより支持されている。診療台2は、昇降機構1aに支持された座席シート(座板)3と、該座席シート3の一端に起伏自在に連結された背板シート(背板)4と、該背板シート4の他端に傾動自在に取付けられたヘッドレスト5とよりなる。上記昇降機構1a及び背板シート4を起伏させるための機構(不図示)等は、床面に配置されるフートコントローラ6の足踏み操作によりその駆動制御がなされる。背板シート4の肩部には、歯科治療用の各種ハンドピース、バキュームシリンジなどの各種インスツルメント7が、繰出し自在に保持されている。
【0015】
また、上記診療台2の側部にはうがい用スピットン8が設置され、このスピットン8の基台8aにはデンタルライト用支柱9aが立設され、この支柱9aには水平旋回且つ屈折可能なハンガーアーム9bを介してデンタルライト9が取付けられている。スピットン8は、歯科治療中患者が口腔内を清浄化するためのもので、給水栓8b、うがい液を排出するためのベースン8c等から構成される。デンタルライト9は、診療台2上に着座し、或いは仰臥した患者の口腔内を照射するものであり、水平旋回且つ上下・左右屈折可能な多関節のハンガーアーム9bの先端に首振り可能に取付けられており、術者の手動操作或いは電動操作によって、適正位置に位置決めされ口腔内に照射される。
【0016】
座席シート3の下面であって、背板シート4の連結部近傍で且つ幅方向ほぼ中央部には、トレーテーブル(本体テーブル)10用の移動アーム11を取付ける為の取付けブラケット11aが固設されている。このブラケット11aには、移動アーム11が水平旋回可能に枢着されている。該移動アーム11は、第1アーム11b及び第2アーム11cからなり、第1アーム11bの基部が上記ブラケット11aに枢着されている。この第1アーム11bは、座席シート3のほぼ外周部までの長さを有し、またL型に形成されてトレーテーブル10の適正高さ位置を確保するようになされている。該第1アーム11bの先端(上端)には第2アーム11cの基部が枢着され、第2アーム11cが第1アーム11bに対して相対的に水平旋回可能とされている。そして、第2アーム11cの先端にはトレーテーブル10が軸回転可能に支持されている。
【0017】
トレーテーブル10の下面(背面)中心部には垂直支持軸10aが固設され、上記第2アーム11cの先端部には、この垂直支持軸10aを軸回転可能且つ軸方向に沿って摺動可能に受止するスリーブ部11dが形成されている。従って、トレーテーブル10は、手操作によりこの垂直支持軸10aの軸心を中心として水平回転させることができる。また、スリーブ部11dには、先端が垂直支持軸10aの周面に緊合してトレーテーブル10を所望高さ位置に保持するための操作ノブ付ロック手段11eが螺装されている。このロック手段11eを緩めれば、垂直支持軸10aのスリーブ部11dに対する摺動をしてトレーテーブル10を上下動させることができ、所望の高さ位置でロック手段11eを締め付ければ、トレーテーブル10はその位置で保持される。
【0018】
トレーテーブル10は、基本的には左右線対称に形成されるが、使い勝手を重視するような場合は左右対称でなくても良い。また、その表面または側面には薬品や治療器具等を置く為の凹み部や各種インスツルメント7を背板シート4の肩部から繰出し一時的に係止するための係止部を設けられている。このトレーテーブル10の一側部には、コンピュータモニタ装置の一部を構成するモニタディスプレイ装置12が設置され、前記口腔内の映像やX線撮影写真等の映像等が適宜映し出されるようになされている。コンピュータモニタ装置を構成するコンピュータ本体は、図示は省略するが、診療台2周辺の適宜位置に設置され、後記するマウス操作による制御信号を受信し、この受信信号に基づく映像信号をモニタディスプレイ装置12に送信してディスプレイ上に再生する。尚、モニタディスプレイ装置12の設置場所は、トレーテーブル10の一側部に限らず、例えば、スピットン8の基台8aやデンタルライト用支柱9a等、術者及び患者が同時に見ることができる位置であればよい。
【0019】
図2は、本歯科用診療装置において、背板シート4を図1の二点鎖線のように倒し、患者を仰臥させた状態で治療する場合に、トレーテーブル10が様々な位置を取り得ることを示す。即ち、実線で示す位置は、術者がヘッドレスト5の延長線上、所謂12時の位置で治療する場合に、術者が薬品や治具などを扱い或いはモニタディスプレイ装置12を見るのに最も適した位置である。また、患者もこのモニタディスプレイ装置12を術者と同時に見ることができ、両者の意思疎通が図られる。二点鎖線で示す位置は、術者が9時ないし10時の位置で治療する場合に適した位置である。図には示さないが、診療台2の中心線を挟んでこれらと対象の位置にトレーテーブル10を移動させることができ、左利きの術者にも扱い易い位置にトレーテーブル10を位置移動させることができる。
【0020】
上記のようなトレーテーブル10の位置設定は、術者がこのトレーテーブル10を持って、適宜移動アーム11を旋回させ、或いはトレーテーブル10をその支持軸10aの周りに回転させることによりなされるから、極めて簡易になされる。しかも、移動アーム11は背板シート4の背後の空間で旋回されるから、診療台2上の患者上を横断することがなく、患者に圧迫感を与えることがない。
【0021】
上記トレーテーブル10の一側辺部下部には、マウスmを移動操作させる為の補助テーブル13が、トレーテーブル10の側辺近傍部に取出し自在に収納保持されている(但し、図1、図2は取出した状態を示す)。この補助テーブル13の詳細を図3により説明する。トレーテーブル10の一側辺部下面には垂直支柱14が固設され、一方補助テーブル13の一側部上面には、断面T字形の支持ピン13aが固設されている。この支持ピン13aの小径部にはスリーブ13bが套嵌され、スリーブ13bと支持ピン13aとは相互の回動が可能とされている。垂直支柱14の下端に形成された保持穴14aに、嵌合状態のスリーブ13bと支持ピン13aとを下から挿入し、垂直支柱14の外周より固定ピン14bでスリーブ13bを垂直支柱14に固定することにより補助テーブル13が垂直支柱14の軸周りに回動可能に保持される。
【0022】
図3における2点鎖線は、補助テーブル13がトレーテーブル10の下部に収納保持されている状態を示し、この状態から補助テーブル13を、手操作により垂直支柱14の軸周りに回動させれば、図の実線のようにトレーテーブル10の側辺近傍位置に取出すことができ、補助テーブル13のテーブル面上では、マウスの移動操作が可能とされる。特に、トレーテーブル10とは別個に設けられているから、薬品や器具等によりその操作スペースが制約されず、円滑なマウスの移動操作が保証される。そして、マウス操作をしない場合は、補助テーブル13上にマウスを置いたまま垂直支柱14の軸周りに回動させることにより、補助テーブル13をトレーテーブル10の下部に収納保持させることができ、補助テーブル13が診療作業やトレーテーブル10の側辺部の通行の邪魔になることがない。尚、補助テーブル13のテーブル面上に、マウスの移動操作を円滑にする為のマウスパッド(不図示)を置き或いは貼り付けるようにしてもよい。また、垂直支柱14をトレーテーブル10の側部に固設してもよい。
【実施例2】
【0023】
図4に示す例は、補助テーブル13が、スライド機構15によってユニットテーブル(本体テーブル)10の下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされている例を示すものである。ユニットテーブル10は厚みがあり、この厚み内に補助テーブル13の収納空所15aが形成されている。この収納空所15aの底板10bの上面に2本の平行な断面鈎型のレール15b、15bが固設され、補助テーブル13の下面には、レール15b、15bの夫々に係合する2本の平行な断面鈎型のスライド部材15c、15cが固設され、レール15b、15b及びスライド部材15c、15cの係合関係によりスライド機構15が構成される。レール15bにおける収納空所15a内の奥端部には、ストッパー15dが形成され、スライド部材15cの挿入側端部のストッパー15dへの当接により、補助テーブル13の過挿入を防止するようになされている。また、スライド部材15cの挿入側端部下面にはボス15eが形成され、一方、上記底板10bの外側縁部上面には隆起部15fが形成され、補助テーブル13の取出し時にこのボス15eと隆起部15fとの当接係合により補助テーブル13の抜出し脱落が防止される。
【0024】
上記補助テーブル13は、図4(a)の収納位置から、スライド機構15をして矢示方向にスライドさせることによってユニットテーブル10の側辺近傍位置に取出し、図4(b)のようにその位置で水平状態に保持することができる。従って、上記同様補助テーブル13のテーブル面上で、マウスの移動操作を円滑に行うことができる。また、補助テーブル13を収納する場合は、補助テーブル13を上記とは逆方向にスライドさせるだけで、図4(a)の収納位置に復帰させることができ、この状態も上記同様補助テーブル13がユニットテーブル10の側辺部に突出しないから診療作業等の邪魔に成ることがない。尚、図例のように各2本の平行なレール15b及びスライド部材15cによってスライド機構15を構成する場合、スライド動作が安定して望ましいが、各1本ずつのレールとスライド部材との係合によりスライド機構を構成するようにしてもよい。また、レール15bとスライド部材15cとの間にスライド可能な新たなレール部材を介在させてスライド機構を構成することも可能である。
【実施例3】
【0025】
図5〜図7は、補助テーブル13を、トレーテーブル(本体テーブル)10の下部又は側部に取付けられた水平支軸16aを支点として垂直面域内を回動させることによってトレーテーブル10の下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされている例を示すものである。トレーテーブル10の側辺部下面には、断面がコの字形の1対の回動支持部材17が、その横溝17aが水平で且つ互い向き合う状態で隔設されている。横溝17aの溝底中央部には上記水平支軸16aを受容し支持する軸支穴17bが形成され、水平支軸16aはこの軸支穴17bに両端部が挿入され、軸回転可能に支持されている。
【0026】
補助テーブル13の下面には、上辺部が横向き直状関係で上記水平支軸16aを構成する略U形の支持ブラケット16が固設されている。該支持ブラケット16の左右の支持アーム部16b、16bは、手操作により弾性変形可能とされ、この支持アーム部16b、16bを互いに向き合う方向に弾性変形させることによって前記軸支穴17bに水平支軸16aを挿入し、その復元弾力により水平支軸16aの両端部が軸支穴17bに嵌り込んだ状態に維持される。図5は、補助テーブル13を、トレーテーブル10の下部に収納保持した状態から、矢視のようにトレーテーブル10の側辺近傍部に取出保持させる動作の変化を示す。図5の2点鎖線は、補助テーブル13がトレーテーブル10の下部に収納保持された状態であって、上記各支持アーム部16bの水平支軸16aに連なる屈折部16cが、回動支持部材17における水平な横溝17aの溝壁に担持され、これにより補助テーブル13が自重で回動することなく、トレーテーブル10の下部に水平状態に保持される。
【0027】
補助テーブル13を、上記収納保持状態からトレーテーブル10の側辺近傍部へ取出す場合、手操作により支持アーム部16b、16bを互いに向き合う方向に撓ませ、水平支軸16aを軸支穴17bから少許抜出すようにすれば、前記屈折部16cの横溝17aの溝壁に対する担持関係が解除され(図7参照)、補助テーブル13は水平支軸16aの軸心回りに回動可能とされる。この状態で補助テーブル13を押し下げるようにし、途中図5の1点鎖線で示す垂直位置或いは図7(a)(b)に示す位置を経た後押し上げるように操作し、補助テーブル13がトレーテーブル10の側辺近傍部の水平位置(図5の実線位置)に達すると、支持アーム部16b、16bの復元弾力により水平支軸16aが軸支穴17bに深く嵌り込むと共に屈折部16cが横溝17aの溝壁に担持され、図5の実線位置或いは図6に示すようにトレーテーブル10の側辺近傍部に水平状態で保持される。
【0028】
上記のようなトレーテーブル10の側辺近傍部への取出し位置では、トレーテーブル10上の薬品や器具等の制約を受けることなく、補助テーブル13のテーブル面上でのマウス操作が円滑になされる。また、補助テーブル13を使用しない時には、上記とは逆の操作で補助テーブル13をトレーテーブル10の下部に収納保持させることができるから、操作は簡単であり、この収納状態では補助テーブル13がトレーテーブル10の側辺部に突出しないから、診療作業等の邪魔になることもない。
【実施例4】
【0029】
図8は、補助テーブル13をトレーテーブル10の側辺部に着脱自在に装着した例を示すものである。トレーテーブル10の側辺部下面には断面コの字形の支持部18が形成され、一方、補助テーブル13の下面には、支持プレート19がその一部が補助テーブル13の側辺部より突出するよう固設されている。支持部18の横向凹部18aは水平状態とされ、また、横向凹部18aの開口縁部には開口部を狭める突条18bが形成されている。支持プレート19の突出端部は肉厚部19aとされ、この肉厚部19aを支持部18の横向凹部18aに挿入保持させることにより、補助テーブル13をトレーテーブル10の側辺近傍部に水平状態で保持させることができる。そして、この保持状態では、肉厚部19aと突条18bとの係合により、補助テーブル13が図8(b)の反矢示方向Gへ不意に抜出し落下するようなことが防止される。
【0030】
支持部18を剛体で形成する場合は、図8(b)の矢示方向Fより上記補助テーブル13の挿入保持がなされ、反矢示方向Fへの操作によりその脱着がなされる。また、支持部18、特に突条18bを含む下辺部を弾性変形可能な部材で構成すれば、矢示方向Gより肉厚部19aを支持部18の横向凹部18aに圧入することにより、補助テーブル13の上記水平状態での保持が可能とされ、また反矢示方向Gへの操作によりその脱着がなされる。このような装脱着の態様は、設計的事項として適宜選択されるものである。
【0031】
上記のように、補助テーブル13がトレーテーブル10に着脱可能に装着されるものとすれば、使用しない時には取外して適宜保管することができる。また、補助テーブル13が毀損したような場合にはこれのみを交換することができ、メンテナンス性のメリットも付加される。その他の作用効果は上記と同様であるので、ここではその説明を割愛する。
【実施例5】
【0032】
図9及び図10は、本発明の歯科用診療装置の他の実施例を示すものであり、座席シート(座板)3の一端に連結される背板シート(背板)4が平行リンク機構20により傾動自在とされ、本体テーブル10を支持する移動アーム11は平行リンク機構20の背板側リンクに固設されている。即ち、背板シート4は座席シート3に対して連結軸(ピン)20a介し傾動自在に連結され、背板シート4内のヘッドレスト5側部分にはピン20bを介してリンク(片)20cの一端が枢支されている。また、このリンク20cの他端と座席シート3の機枠3aとの間にピン20d、20eを介しリンク20fが連架されている。ピン20a及びピン20e間の距離とピン20b及びピン20d間の距離は同一とされ、また、ピン20a及びピン20b間の距離とピン20d及びピン20e間の距離は同一とされ、これらにより平行リンク機構20が構成される。
【0033】
座席シート3内には、背板シート4を傾動させる為の駆動手段としての油圧シリンダ21が設置され、その伸縮ロッド21aの先端部が背板シート4の機枠基端部4aに枢着されている。従って、この伸縮ロッド21aの伸縮動作によって、背板シート4は連結軸20aを支点として起伏がなされる。油圧シリンダ21の作動に伴う背板シート4の起伏動作の際、リンク20fはピン20eを支点として上下に揺動するが、ピン20a及び20e間を結ぶ線分に相当する仮想リンク(片)は固定であるから、これに平行なリンク20cはその仮想リンクと平行状態を保ったまま上下に揺動する。
【0034】
上記リンク20cには横向き水平な棒状ブラケット11aが固設され、その先側は背板シート4の側部に突出している。このブラケット11aの先端には第1アーム11bが水平旋回可能に枢着され、更に、該第1アーム11bの先端に第2アーム11cが水平旋回可能に枢着され、これらによりユニットテーブ(本体テーブル)10を移動可能に支持する移動アーム11が構成される。第2アーム11cにはユニットテーブ10が水平状態で設置され、該ユニットテーブ10は第2アーム11cと共に第1アーム11bに対して操作ノブ11fによって上下位置調整が可能とされている。
【0035】
斯くして、上記のように平行リンク機構20を構成する背板シート4側のリンク20cに移動アーム11の基部が固設されているから、油圧シリンダ21を作動させて背板シート4を起伏させる際、ユニットテーブ10は水平状態を保ったまま上下に移動し、常に診療態様に応じた適正な位置に位置付けられることになる。また、ユニットテーブ10は移動アーム11をして診療台2の近傍位置を移動自在とされており、図10は、背板シート4を略水平に倒し、仰臥診療を行う際に、ユニットテーブ10は所謂12時の位置に位置付けた状態を示しているが、これを図2の2点鎖線のように9時の位置での診療に適応させるよう移動させ得ることは言うまでもない。
【0036】
ユニットテーブ10の一側部には前記と同様のモニタディスプレイ装置12が設置され、また他側部には各種インスツルメントを係留するためのハンガー22が形設されている。更に、ユニットテーブ10の側辺部下面には垂直支柱14を介してマウスを移動操作する為の補助テーブル13が、該垂直支柱14の軸心周りの回動をしてユニットテーブ10の下部及び側辺近傍部間で収納・取出し可能に取付けられている。而して、補助テーブル13も背板シート4の起伏動作に連動してユニットテーブ10と共に上下動するから、マウス操作がし易い夫々の適正位置に常配置され、その操作が円滑になされる。この補助テーブル13の取付機構は、図例の垂直支柱14によるものに代え、上記各実施例の機構が採用され得ることは言うまでもない。ここでの補助テーブル13の他の作用効果は上記と同様であるのでその説明を割愛する。また、図9及び図10では省略したが、図1及び図2で示されたスピットン8やデンタルライト9等の付帯装置が診療台2の側部に適宜配設し得ることは言うまでもない。その他の構成は上記と同様であるので共通部分には同一の符号を付してその説明を割愛する
【0037】
尚、本体テーブル10としてのユニットテーブル及びトレーテーブルと補助テーブル13の各種取付・支持機構との組合せは実施例のものに限定されず、他の組合せも可能であることは言うまでもない。また、本発明を逸脱しない限り補助テーブル13の取付・支持機構として他の機構が採用可能であることも言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の歯科用診療装置の一例を示す正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】補助テーブルの一実施例であって、図2におけるA−A線縦断面図である。
【図4】補助テーブルの他の実施例を示し、(a)は図3と同様図、(b)はその動作状態を示す図、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図5】補助テーブルの他の実施例の図3と同様図である。
【図6】(a)は同実施例の平面図、(b)は(a)におけるC−C線矢視図、(c)は(a)におけるD−D線矢視図である。
【図7】(a)は同実施例の動作状態を示す側面図、(b)は(a)におけるE−E線矢視図である。
【図8】補助テーブルの他の実施例を示し、(a)は図3と同様図、(b)はその平面図である。
【図9】本発明の歯科用診療装置の他の実施例を示す正面図である。
【図10】同平面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 診療台
3 座席シート(座板)
4 背板シート(背板)
10 本体テーブル
11 移動アーム
12 モニタディスプレイ装置(コンピュータモニタ装置)
13 補助テーブル
14 垂直支柱
15 水平スライド機構
16a 水平支軸
20 平行リンク機構
20c 平行リンク機構の背板側リンク
m マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療台と、その周辺部に設置されたコンピュータモニタ装置と、移動アームに水平状態を維持して支持され且つ上記診療台の近傍位置を移動自在とされた本体テーブルとを備えた歯科用診療装置において、
上記本体テーブルの下部には、上記コンピュータモニタ装置の制御用マウスを移動操作させる為の補助テーブルが、上記本体テーブルの側辺近傍部に取出し自在に収納保持され、該補助テーブルは、本体テーブルの側辺近傍部に取出された時には水平状態に保持されるようにしたことを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科用診療装置において、
前記補助テーブルが、前記本体テーブルの下部又は側部に固設された垂直支柱に水平旋回可能に取付けられ、この垂直支柱周りに回動させることによって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされていることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科用診療装置において、
前記補助テーブルが、前記本体テーブルの下部に設けられた水平スライド機構に支持され、この水平スライド機構に沿ってスライドさせることによって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされていることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項4】
請求項1に記載の歯科用診療装置において、
前記補助テーブルが、前記本体テーブルの下部又は側部に取付けられた水平支軸を支点として垂直面域内を回動可能に支持され、この水平支軸周りの垂直面域内での回動によって本体テーブルの下部及び側辺近傍部間で収納・取出しが可能とされていることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項5】
診療台と、その周辺部に設置されたコンピュータモニタ装置と、移動アームに水平状態を維持して支持され且つ上記診療台の近傍位置を移動自在とされた本体テーブルとを備えた歯科用診療装置において、
上記本体テーブルには、上記コンピュータモニタ装置の制御用マウスを移動操作させる為の補助テーブルが着脱自在に装着され、該補助テーブルは、本体テーブルに装着された時には本体テーブルの側辺近傍部に水平状態に保持されるようにしたことを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の歯科用診療装置において、
前記診療台が、上下昇降自在な座板と、該座板の一端に連結され平行リンク機構により傾動自在とされた背板とよりなり、前記移動アームは平行リンク機構の背板側リンクに固設され、前記本体テーブルは、平行リンク機構の動作による背板の上下傾動に伴い水平状態を維持して上下動するよう移動アームに支持されていることを特徴とする歯科用診療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−115924(P2006−115924A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304398(P2004−304398)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】