説明

歯科用重合性組成物

【課題】操作性が良好で気泡混入が少なく、色調、研磨性、硬化時及び硬化体の変色、機械的特性等に優れ、義歯床や人工歯の修復、歯冠用最終補綴物や橋義歯が完成するまでの間に使用される暫間補綴物等多目的に利用される、2組成物タイプの歯科用重合性組成物の提供。
【解決手段】組成物Iが重合性単量体(a)およびラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)を含有し、組成物IIが10〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径および5万〜25万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(d)と、粒度分布、メディアン径は上記に同一で、30万〜70万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(e)を主成分として有する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマ−粒子(de)、およびラジカル発生剤(b)を含有し、そして組成物Iと組成物IIを混合したとき硬化させることができる歯科用重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用重合性組成物に関する。更に詳しくは、2組成物タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性が良好で、気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物、橋義歯が完成するまで暫間クラウン等多目的に利用される歯科用重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉末と(メタ)アクリル酸エステルモノマーの粉液混合型即時重合レジンは義歯床の修理や暫間用クラウンの作製、人工歯の修理等に多用されている。近年、インプラント治療など長期間歯肉の回復を待って最終補綴物を装着する場合のように、色調、機械的強度、耐変色性が長期に渡って安定な暫間クラウン等が要望されるようになり、様々な製品が上市されている。この暫間クラウンの作製は主に技工用の筆を(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする液材で濡らし、その筆に(メタ)アクリル酸エステルポリマー粉末を付着させて操作する筆積み法が多用されている。このクラウンを筆積み法で作製する場合、筆に採取した粉液泥が垂れ易いと築盛が困難であり、クラウンの細かな形態の作製に支障をきたし、垂れがなさ過ぎると、筆で薄く延ばせない等の問題点が発生する。また、重合開始剤に有機過酸化物と第三級芳香族環アミンを使用するため硬化時に黄変して審美性を損なったり、硬化体が口腔内で変色、着色して早期に審美性が損なわれる等の欠点がある。この問題を解決するため、ピリミジントリオン誘導体と有機金属化合物を含む粉材と、有機ハロゲン化合物と芳香族環三級アミンを含有する液材とを使用して筆積み操作性、気泡の混入や審美性を改良する方法が提案されている(特許文献1)。また、硬化時の変色防止に特定のトリアゾール系化合物を添加する方法も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−219919号公報
【特許文献2】特公平5−78531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、2組成物タイプ、特に、粉液タイプの常温重合型レジンにおいて、筆積み法、混和法による操作性が良好で、気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物、橋義歯が完成するまで暫間クラウン等多目的に利用される歯科用重合性組成物を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
2つの組成物IとIIからなる歯科用重合性組成物であって、
組成物Iが重合性単量体(a)およびラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)を含有し、
組成物IIが10〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径および5万〜25万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(d)と、
10〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径および30万〜70万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(e)を主成分として有する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー粒子(de)、およびラジカル発生剤(b)を含有し、
そして組成物Iと組成物IIを混合したとき硬化させることができることを特徴とする歯科用重合性組成物により達成される。
上記(d)成分の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は4.4〜12が好ましく、また上記(e)成分の(Mw)/(Mn)が2.2〜4.4であるのが好ましく、これらを共に含有することがより好ましい。
【0006】
組成物IIは更に無機酸化物粒子(f)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合体粒子(g)を更に含有することが好ましい。
上記のポリマーと無機酸化物の複合体粒子と共に、三官能以上の多官能重合性単量体から誘導されたポリマー(j)をさらに含有することが好ましい。
上記複合体粒子(g)は粒度分布が1〜100μm、メディアン径が1〜40μmの範囲にあることが好ましい。
上記ラジカル発生剤(b)は80℃での分解半減期が10時間以下であることが好ましい。
組成物Iがヒンダードフェノール系化合物(h)の重合禁止剤をさらに含むことが好ましい。
組成物Iはベンゾフェノン系の紫外線吸収剤(i)をさらに含むことが好ましい。
組成物Iが(a)成分、(c)成分、(h)成分および(i)成分の合計100重量部に対して(a)成分が90〜99.5重量部であり、(c)成分が0.5〜10重量部であり、(h)成分が0〜0.5重量部であり、(i)成分が0〜5重量部であり、組成物IIが(d)成分、(e)成分、(f)成分および/または(g)成分および(b)成分の合計100重量部に対して(d)成分が20〜75重量部であり、(e)成分が20〜75重量部であり、(f)および/または(g)成分が1〜20重量部であり、(b)成分が0.05〜10重量部であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2組成物タイプの常温重合型レジンは、筆積み法、混和法による操作性が良好で、気泡の混入が少なく、色調、研磨性、機械的特性、耐変色性等に優れる義歯床、人工歯の修復や、歯冠用補綴物、橋義歯が完成するまで暫間クラウン等多目的に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、特に説明がない限り、化合物名や官能基名において「(メタ)アクリ・・・」とあるは、「アクリ・・・、及び/又は、メタクリ・・・」の意であり、好適なる数値範囲において「XX〜YY」(XX、YYはそれぞれ該当する数値)とあるは、「XX以上、及び/又は、YY以下」の意である。
【0009】
先ず、組成物Iと組成物IIの性状について説明する。組成物Iは単量体を含むので、通常は、液体形態であることが多い。場合によってはペースト状である。一方、組成物IIは、ポリマー粒子を含み、かつ、安定性が余り高くないラジカル発生剤を含むので、粉末等の固体形態であることが好ましい。そういうわけで、以下の説明では、組成物Iについては、液体形態の態様にて、組成物IIについては、粉末形態の態様にて、専ら説明するが、本発明は、これらの態様になんら限定されるものではない。本発明は、組成物IとIIを混合し、必要に応じて、レドックス重合等によって、当該混合物を硬化できる歯科用重合性組成物である。
【0010】
組成物I中に含まれる重合性単量体(a)について説明する。重合性単量体(a)としては公知の重合性化合物が使用できる。その具体例としては、(i)単官能重合性単量体、(ii)二官能重合性単量体、(iii)三官能重合性単量体、(iv)四官能以上の重合性単量体などが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物が特に好ましい。下記に具体的に例示する。重合性単量体(a)は、単独であるいは2種類以上一緒に用いることができる。
【0011】
(i)単官能重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が挙げられる。
【0012】
また、公知の酸性基含有重合性単量体も本発明の性能を発現できれば併用可能である。このような化合物しては、例えば、リン酸基含有重合性単量体、ピロリン酸基含有重合性単量体、チオリン酸基含有重合性単量体、カルボン酸基含有重合性単量体、スルホン酸基含有重合性単量体等を挙げることができる。併用量としては重合性単量体(a)の、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。ここで、10重量%を超えると酸性基によって硬化体の耐水性が劣る虞があるので好ましくない。
【0013】
このうちリン酸基含有重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、(8−(メタ)アクリロイルオキシ)オクチル−3−ホスホノプロピネート等を挙げることができる。
【0014】
ピロリン酸基含有重合性単量体としては、例えばピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕等を挙げることができる。
【0015】
チオリン酸基含有重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート等を挙げることができる。
【0016】
カルボン酸基含有重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物、6−(メタ)アクリロイルアミノヘキシルカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルアミノオクチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0017】
スルホン酸基含有重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、4−(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸、10−(メタ)アクリルアミドデシルスルホン酸等を挙げることができる。
【0018】
(ii)二官能重合性単量体
芳香族系重合性化合物として、例えば2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのよう水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とメチルベンゼンジイソシアネ−トや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加から得られるウレタン系重合性単量体等が挙げられる。
【0019】
また、脂肪族系化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどエチレングリコール系またはプロピレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、またはエトキシ化シクロヘキサンジ(メタ)アクリレートのような環状、直鎖状、分岐状の脂肪族と、また、エチレングリコールまたはプロピレングリコールとが結合したジ(メタ)アクリレート化合物、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、あるいは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのよう水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物とヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるウレタン系重合性単量体等が挙げられる。
【0020】
(iii)三官能重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0021】
(iv)四官能以上の重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシナネートの間に脂肪族を有するジイソシアネート化合物、メチルベンゼンジイソシアネートや4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、水酸基を含有する二官能以上の(メタ)アクリレ−ト化合物との付加から得られるウレタン系重合性単量体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特公平7−80736に記載されているポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレート系化合物も使用できる。
【0022】
上記の重合性単量体のなかで好ましい化合物は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の常圧での沸点が150℃以下、好ましくは120℃以下の化合物である。この特性を持つ重合性単量体を使用すると、重合硬化時の重合熱で未反応の重合性単官能性が揮発して未重合層を形成しなくなるので好ましく利用できる。
【0023】
また、重合速度の加速や硬化体の耐摩耗性を向上させるために単官能重合性単量体と二官能以上の重合性単量体を同時に混合して使用することが好ましい。その比率は重合性化合物の重合性能や未重合層の形成状態等から適宜選択すれば良いが、単官能重合性単量体対二官能以上の多官能重合性単量体が、好ましくは99.5〜60対0.5〜40重量%、より好ましくは98〜65対2〜35重量%、更に好ましくは95〜70対5〜30重量%である。ここで、多官能重合性単量体が0.5重量%未満であると耐摩耗性の向上が望めず、逆に40重量%を超えると硬化時に未重合層が残り、アセトン等の溶剤を含ませたティッシュ等で拭き取らなくてはならず操作性が煩雑になるので好ましくない。ここで、多官能重合性単量体の好ましい化合物を例示すると、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのように水酸基を持つ(メタ)アクリレート化合物とヘキサメチレンジソシアネート、メチルベンゼンジイソシアネート、4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加から得られるウレタン系重合性単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、硬化体の耐水性が良いことからジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく使用される。
【0024】
次にラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)について述べる。(c)としては、有機系化合物、無機系化合物が限定されず使用できるが、硬化体の吸水率を抑えるために有機系化合物が好ましく使用できる。また、後述するラジカル発生剤(b)を効率よく分解することができる芳香族系アミンが好ましく、なかでもN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン,N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン等の芳香族環第3級アミン;N,N−ジフェニルグリシン、N−フェニルグリシンなど、あるいはそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。また、これらの還元剤は単独であるいは2種類以上を一緒に配合してもよい。
【0025】
組成物Iの保存安定性の向上や重合時の黄変化を抑止するために、組成物Iには重合禁止剤を添加しても良い。組成物Iの保存安定性の向上や重合硬化時の変色、口腔内での硬化体の変色を抑制する効果があれば種類は限定されるものではないが、2,6−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン等のヒンダ−ドフェノール系の重合禁止剤(h)が上記の効果を発現する上で好ましく使用できる。また、組成物Iの保管時の変色を抑制するために紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤の種類は組成物Iの保管時の変色を抑制する効果があれば限定されるものではないが、組成物Iと硬化体の変色を同時に抑制する2,4−ジヒドロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−2−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤(i)が好ましい。これらの(h)、(i)成分の添加量は後述する。
【0026】
次に、組成物II中の(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(de)について説明する。(メタ)アクリル酸エステルポリマーとしては公知の化合物が使用できる。具体的には前述の重合性単量体を懸濁重合、エマルジョン重合等で製造した単独重合体、共重合体、それらの混合物のポリマー粉体が使用できる。好ましいポリマーを例示すれば、(メタ)アクリル酸メチルポリマー、(メタ)アクリル酸エチルポリマー、(メタ)アクリル酸ブチルポリマー、(メタ)アクリル酸プロピルポリマー、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸プロピルの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンの共重合体等を挙げることができ、なかでも、(メタ)アクリル酸メチルポリマー、(メタ)アクリル酸エチルポリマー、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸エチルの共重合体は、これらを使用すると機械的特性が良好な硬化体を作製できるので特に好ましく使用できる。更に、耐汚染性を向上するために、組成物Iとの馴染みが良ければ、フッ素基含有(メタ)アクリル酸エステルポリマー、例えば、トリフロロエチル(メタ)アクリレートポリマー、パーフロロオクチル(メタ)アクリレートポリマー、(メタ)アクリル酸メチルとトリフロロエチル(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリル酸エチルとトリフロロエチル(メタ)アクリレートの共重合体等も使用できる。
【0027】
また、本発明の歯科用重合性組成物の操作性、硬化性を損なわず、硬化体の耐摩耗性や機械的特性、耐着色性を向上させる範囲で、(メタ)アクリル酸メチルとトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの架橋性ポリマー粉体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの架橋性ポリマー粉体、単官能重合性単量体と多官能重合性単量体の共重合体の粉体等の架橋ポリマー粉体(j)を添加してもよい。添加量としては、上記(de)100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは3〜20重量部である。ここで、1重量部未満であると硬化体の耐摩耗性の向上が望めない。また、50重量部を超えると、ポリマー粉体の粉材(組成物II)への混ざりが悪くなって築盛が困難になる。ポリマーの架橋部に液材(組成物I)が浸透し難いため、硬化体のマトリックス部分とポリマー部分が剥離し、耐摩耗性や機械的特性が低下する等の虞があるので好ましくない。また、架橋体を使用する場合の粒度分布やメディアン径も上記の範囲であれば良いが、分子量は、溶媒に溶解しないから後述する測定法等では測定困難なため、特定できないので、架橋体の粉材膨潤度等を予め測定して分子量の目安にすることができる。
【0028】
ポリマー粉体の性状としては、本発明の特性を発揮すれば特に制限ないが、
数平均分子量(Mn)が5万〜25万の範囲にある成分(d)と、30万〜70万の範囲にある成分(e)を有する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー粒子(de)である。成分(d)と成分(e)の粒度分布幅は10〜400μm、好ましくは、15〜400μm、更に好ましくは20〜350μmの範囲である。ここで、粒度が10μm未満になると、粉液泥の粘度が操作中に上昇して操作性が悪くなるので好ましくない。逆に400μmを超えると、組成物IIが組成物Iに溶解し難くなり、粉液泥にざらつきが発生して操作性を悪化する結果となるので好ましくない。尚、(de)の粒子分布、メディアン径は島津レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000Aを用い、測定範囲0.03〜700μmで、分散助剤にエタノールを使用した時の値である。
【0029】
メディアン径は上記(d)成分、(e)成分および(de)成分では70〜120μm、好ましくは70〜100μm、更に好ましくは75〜100μmである。ここで、70μm以下になると粒子が細かすぎて粉液泥の粘度が上昇し築盛操作性が悪くなり、逆に120μmを超えると、粒子が粗すぎて粉液泥にざらつきが発生して操作性が悪くなる。また、メディアン径と平均粒径の差が10μm以内、好ましくは5μm以内、更に好ましくは3μm以内であり、モード径が70〜100μm、好ましくは75〜95μm、更に好ましくは75〜90μmであると筆積み操作性の良い歯科用重合性組成物を得ることができる。メディアン径と平均粒径の差及びモード径が下限を外れれば、粉液泥の粘度が操作中に上昇して操作性が悪くなるので好ましくない。また、上限を超えれば、組成物IIが組成物Iに溶解し難くなり、粉液泥にざらつきが発生して操作性を悪化するばかりか、組成物Iに膨潤し難い組成物IIが残存して硬化体の機械的特性が劣る結果となるので好ましくない。
上限を外れれば組成物IIが組成物Iに溶解し難くなり、硬化体の機械的特性が劣る結果となるので好ましくない。ここで、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用したメディアン径、平均粒径、モード径については島津製作所(株)のホームページで検索可能である。
【0030】
また、上記ポリマー粉体(de)のポリマーは数平均分子量(Mn)が、5万〜25万の範囲にある成分(d)と、30万〜70万の範囲にある成分(e)を主成分として有することを必須とする。前記ポリマー中、成分(d)と(e)の合計は70重量%以上であり、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0031】
成分(d)、(e)の分子量、分子量分布について更に詳細に説明する。ポリマー粉末の分子量、分子量分布の測定はGPCを使い、カラム(PLgel 10μ MIXED−B,Polymer laboratories社)、カラム温度(常温)、移動層(テトラハイドロフラン)、PMMA換算で求めたデータを用いることが好ましい。尚、(d)、(e)の分子量、分子量分布、トップピークの分子量は本発明の性能を発揮すれば限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステルポリマー成分(d)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは7万〜25万、更に好ましくは7万〜20万の範囲の成分である。また、重量平均分子量(Mw)は好ましくは60万〜110万、より好ましくは70万〜110万、更に好ましくは80万〜110万の範囲であり、トップピークの分子量(Mp)は好ましくは70万〜110万、より好ましくは80万〜110万、更に好ましくは90万〜100万の範囲である。(メタ)アクリル酸エステルポリマー成分(e)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは30万〜60万、更に好ましくは30万〜50万の範囲の成分である。重量平均分子量(Mw)は好ましくは115〜160万、より好ましくは120万〜160万、更に好ましくは125万〜160万の範囲であり、Mpは好ましくは120万〜160万、より好ましくは120万〜155万、更に好ましくは125万〜155万の範囲である。また、上記(d)、(e)の分子量分布も粉材(組成物I)への溶解性、膨潤性、それに伴う粉液泥の操作性に影響を与えるため重要である。上記(d)の分子量分布(Mw/Mn)は、4.4〜12が好ましく、5〜10が更に好ましく、5〜7の範囲であることが特に好ましい。また、(e)の分子量分布(Mw/Mn)は2.2〜3.8が好ましく、2.5〜3.8が更に好ましく、3〜8の範囲であることが特に好ましい。ここで、(d)の分子量分布幅が下限を超えると、垂れが発生し、上限を超えると内部気泡が多くなるので好ましくない。また、(e)の分子量幅が下限を超えると、垂れ易くなり、上限を超えると伸び難くなるので好ましくない。
【0032】
本発明の特徴のひとつは前述したように好ましい粒度特性の(d)、(e)のポリマー成分を使用することは勿論であるが、特定の分子量特性を持ったものを同時に使用することが重要である。何故なら、(d)成分のみを使用すると組成物Iの馴染みが良すぎて垂れが発生して筆積み法による築盛には好ましくない。また、(e)成分のみを使用すると組成物Iへの馴染みが悪く、垂れは発生しないが伸びがなくなりこれも筆積み法による築盛には好ましくない。しかし、(d)、(e)を少なくとも同時に配合すると、驚くべきことに、両者の欠点を相殺し、組成物Iへの馴染みが良くて組成物Iで濡らした技工用の筆に組成物IIを採取し易くなり、築盛時に垂れ難く、しかも伸びがある粉液泥になるため非常に操作性が良く、更に気泡の混入も少ないため機械的特性が良好になることが判明した。ここで、(d)と(e)の混合比は本発明の操作等から適宜配合すればよいが、一般には(d)対(e)が5〜95対95〜5重量%、好ましくは、20〜80対80〜20重量%、更に好ましくは30〜70対70〜30重量%である。(d)が5重量%未満であると、組成物Iへの馴染みが悪く、垂れは発生しないが伸びがなく、また気泡の混入も本発明の歯科用レジン組成物よりは多いので筆積み法による築盛には好ましくない。また、(d)が95重量%を超えると組成物Iの馴染みが良すぎて垂れが発生して筆積み法による築盛には好ましくない。
【0033】
なお、成分(d)、(e)の混合形態は、特に限定されるものではなく、
(1)実質上成分(d)のみよりなる粒子と実質上成分(e)のみよりなる粒子が混在する形態、
(2)成分(d)、(e)が混合されたブレンドポリマーより粒子が形成されている形態、
(3)前記(1)と(2)が混在した形態、
等の態様が挙げられる。
【0034】
また、硬化体の研磨性、耐摩耗性を向上させるために組成物IIに無機酸化物粒子(f)、ポリマーと無機酸化物の複合粒子(g)を単独または同時に添加しても良い。尚、(f)、(g)はそれぞれ単独であるいは2種類以上を配合しても良い。また、(f)、(g)の種類及び形状は限定されない。無機酸化物粒子(f)の種類としては、公知のものが限定されず使用できる。例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属原子を含有する酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、珪酸塩、及びこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より詳しくは、二酸化珪素、ストロンチュウムガラス、ランタンガラス、バリュウムガラス、(硼)珪酸ガラス等のガラス粉体、石英粉体、酸化アルミニウム粉体、酸化チタン粉体、ガラス繊維、フッ化バリウム粉体、タルクを含有するガラス粉体、ジルコニウム酸化物粉体、スズ酸化物粉体、その他のセラミックス粉体、金属ウイスカ等である。無機酸化物粉体はそのまま組成物IIに配合しても良いが、機械的性能や耐摩耗性の良い硬化体を作製するために疎水化して使用しても良い。表面処理剤としては、公知のものが使用でき、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネート、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシランヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤、シリコーン(系カップリング剤)等を挙げることができる。表面処理方法としては、(A)ボールミル、V−ブレンダー、ヘンシェルミキサー等で無機酸化物粉体と表面処理剤を直接混合する方法(乾燥式法)、(B)表面処理剤をエタノール水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した有機溶剤含有の水溶液で希釈したものを無機酸化物粉体に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(湿式法)、(C)高温の無機酸化物粉体に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレー法)等を挙げることができる。勿論、市販品が既に表面処理されているものはそのまま使用しても良いし、上記の方法等で更に表面処理を追加しても良い。無機酸化物粉体に対する表面処理剤の量は、無機酸化物粉体の比表面積等から最適値を決定すれば良いが、一般的には無機酸化物粉体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部であり、更に好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。無機酸化物粉体の粒度分布は本発明の特性を発揮すれば制限ないが、1〜100μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmの範囲である。
【0035】
また、メディアン径は1〜40μm、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは1〜5μmの範囲である。粒度分布及びメディアン径が下限を外れると、硬化体の機械的特性や耐摩耗性の向上が望めないため好ましくない。また、上限を超えると、研磨時に光沢感のある表面が得られないばかりか、組成物II中の上記(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(d)及び(e)と無機酸化物粒子(f)が比重差から分層し、均一な粉体が得られない可能性があるので好ましくない。
【0036】
ポリマーと無機酸化物の複合粒子(g)について説明する。まず、ポリマーの種類としては、その種類は限定されないが、上記で説明した重合性単量体(a)もしくはそのオリゴマーから誘導されたポリマーが好適に使用できる。勿論、ポリマーは単独重合体であっても、2種類以上の重合性単量体から誘導された共重合体であっても良い。また、複合体の機械的強度を向上させるために重合性基を2個以上有する多官能重合性単量体(を含む重合性単量体もしくはそのオリゴマー)から誘導されたポリマーが好ましい。更に、重合性基を3個以上有する多官能重合性単量体を含む重合性単量体から誘導されたポリマーを使用すると、複合体表面に反応性を持つ二重結合が残存し、硬化時に組成物I中の重合性単量体(a)と共重合する結果、フィラーの脱落が抑制されるため長期的に機械的特性が優れる硬化体が得られるので好ましい。ここで、ポリマー中の重合性基を3個以上有する多官能重合性単量体から誘導されたポリマーの比率は本発明の性能を発揮すれば特に限定するものではないが、複合体を構成する全ポリマー(3個以上有する多官能重合性単量体から誘導されたポリマーも含む。)に対して20重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましいは60重量%以上である。ここで、複合体を構成する全ポリマーに対して20重量%未満であると複合体表面に反応性を持つ二重結合の量が少なく、重合時に組成物I中の重合性単量体(a)と共重合し難くなる結果、フィラーが脱落し、機械的特性の低下を招くので好ましくない。
【0037】
重合性基を3個以上有する重合性単量体の好ましい化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等であり、それと組み合わせる重合性単量体はジ((メタ)アクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタンなどのウレタン系重合性単量体もしくは2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族環とエーテル結合を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体等が好ましい。また、加熱下で複合体を製造する場合、芳香族環、エーテル結合もしくはウレタン結合、ヘテロ原子等を有する重合性単量体を全重合性単量体に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましく30重量%以下で使用すると加熱重合して複合体を製造する時や後述する熱処理時に黄変し難く、着色の殆どない複合体を製造することができる。好ましい重合性単量体の組み合わせ及び重量比は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び/またはジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートとジ((メタ)アクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン及び/または2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンであり、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び/またはジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートを40〜99重量%、好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは50〜90重量%である。
【0038】
複合体に使用される無機酸化物としては、特に限定されず上述した無機酸化物粒子(f)やAEROSIL(グレード例示すると、50、70、130、200、200V、200CF、200FDA、300、300CF、380、R972、R972V、R972CF、R974、RX200、RY200、R202、R805、R809、R812、RX200、RX300、TT600、K320D、R976、R976S、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RM50:日本アエロジル(株)製)等の平均粒径が0.001〜1μmの微粒子無機酸化物(f1)を挙げることができる。勿論、2種類以上の無機酸化物粉体の混合物を使用して複合体を製造してもよい。尚、複合体に添加される無機酸化物粒子としては複合体粉体(g)を配合した硬化体の研磨性が良い等の理由から上記(f1)が好ましく用いられ、なかでもAEROSILがより好ましい。
【0039】
複合体に使用される無機酸化物粉体はそのまま複合体の製造に供しても良いが、複合体の粉体を配合した硬化体の機械的特性を向上させるために無機酸化物粉体の表面を上述した方法で表面処理することが好ましい。また、上記のAEROSIL R972、R812等購入時に予め疎水化処理されている無機酸化物粉体(f1)を使用する場合は上記方法で再度表面処理してもよいが、あえて表面処理を施さなくても良い。
【0040】
複合体中の無機酸化物粉体の含有率としては特に限定されないが、その含有率が余りに少なすぎると硬化体の機械的特性の向上が望めず、逆に多すぎると複合体の製造時に重合性単量体中に無機酸化物を練り込む際に粉体が十分に分散せずムラができ、複合体の粉体を含有する硬化体の透明性や機械的特性が劣る虞があるので好ましくない。そのため、複合体の無機酸化物粉体の比率は30〜80重量%、好ましくは30〜75重量%、更に好ましくは35〜60重量%である。
【0041】
複合体の製造法としては限定されるものではない。製造法を例示すると、重合性単量体(a)、無機酸化物(f、f1)、後述するラジカル発生剤(b)を乳鉢、ロール、ニーダー、高粘度攪拌機等で機械的に混ぜ合わせペースト化し、塊状重合する方法を挙げることができる。ここで、(b)の添加率としては重合性単量体に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%であり、金属板などの型板にペーストを入れ加熱圧縮成型機等で1〜50MPa程度に加圧して、80〜200℃、好ましくは100〜150℃で数分間〜数時間、好ましくは5分間〜1時間塊状重合して複合体を製造する方法するが好ましい。
勿論、複合体の製造に使用される重合性単量体もしくはそのオリゴマー自体が熱重合するものであれば、重合開始剤を含まない前駆体をそのまま加熱重合して製造してもよい。
【0042】
製造された複合体が粉体であれば、そのままの状態もしくは分級して使用すれば良いし、塊状体であれば粉砕して粉体とすれば良い。粉砕方法としては、特に限定されないが、一般には、ボールミル、振動ミル等を使用して機械的に粉砕し、篩いや分級機等で所定の粒度を持つ粉体を採取する方法が好適に使用される。複合体粒子の粒度分布、メディアン径、その利点は無機酸化物(f)と同様である。
【0043】
複合体粒子はこのまま組成物IIの成分として使用してもよいが、複合体粒子中に残存する重合開始剤などの安定性低下因子を失活させ、組成物IIの保存安定性を向上させる事が好ましい。失活方法としては、特に限定されないが、操作が簡便である理由から、粉体を60〜250℃、好ましくは80〜150℃で数十分間〜数十時間、好ましくは5時間〜200時間熱処理する方法が好適に採用できる。熱処理は常圧、減圧、加圧下のいずれの方法で行ってもよい。また、粉体を黄変させ難くするために窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下や気流下で熱処理すると良い。また、硬化体からの複合体粒子の脱落を更に高めるため複合体粒子は上述した表面処理剤で表面処理したり、複合体を構成する重合性単量体が実質的に溶解し得る溶剤と共に処理して表面に存在する未反応モノマーの一部あるいは全量を溶解・除去し、その表面に微細な凸凹を形成させてアンカー効果を付与したり、また複合体の粒子をグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を含有する重合性単量体等と反応させても良い。
【0044】
次にラジカル発生剤(b)について説明する。(b)は上述の還元剤(c)によってラジカルを発生する化合物であれば有機系化合物、無機系化合物に限定されないが、硬化体の耐水性を考慮すると有機系化合物が好ましい。また、有機系化合物のなかで有機過酸化物が好ましく、その種類に制限はないが、レドックス重合のラジカル発生効率を高める上で、80℃での分解半減期が10時間以下である化合物が好ましい。より好ましくは7時間以下、更に好ましくは5時間以下である。また、下限値については、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは3時間以上である。前記数値範囲の上限値を上回ると硬化時間が遅延して暫間補綴物が完成するまでの時間が遅くなり、下限値を下回ると硬化が早くなり過ぎて築盛操作中に粉液泥が固まる等、技工操作に支障をきたすため、何れも好ましくない。具体的に好適な化合物を例示すると、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;tert−ブチルパ−オキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパ−オキシネオデカネート等のパーオキシエステル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシドなどの過酸化スルホネート等を挙げることができ、ベンゾイルパーオキサイドが好適に使用できる。また、ラジカル発生剤(b)、還元剤(c)にバルビツール酸、もしくはその誘導体を組み合わせた重合開始剤系を使用してもよい。
【0045】
上記で説明した組成物I、組成物IIの成分組成比は本発明の特性を発揮すれば特に限定されないが、組成物Iの保存安定性の向上や変色の抑制、2組成物泥の操作性、硬化性、また形成された硬化体の機械的特性、耐摩耗性等を良好にするため、組成物I組成は、組成物I組成の合計100重量部(重合性単量体(a)+還元剤(c)+重合禁止剤(h)+紫外線吸収剤(i))に対して(a)は90〜99.5重量部、好ましくは95〜98重量部、更に好ましくは96〜98重量部である。(c)は0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部である。(h)は0〜0.5重量部、好ましくは0.005〜0.3重量部、更に好ましくは0.01〜0.1重量部である。そして、(i)は0〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、更に好ましくは0.5〜2重量部である。組成物I組成において(h)、(i)を添加しなくても保存安定性や変色が臨床上許容されれば問題ないが、添加することで、保存安定性や変色が抑制されるため添加した方が好ましい。
【0046】
組成物II組成は、組成物II組成の合計100重量部に対して、上記の(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(d)を20〜75重量部、好ましくは25〜70重量部、更に好ましくは30〜60重量部、(メタ)アクリル酸エステルポリマー粒子(e)を20〜75重量部、好ましくは25〜70重量部、更に好ましくは30〜60重量部、無機酸化物粒子(f)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合体粒子(g)を0〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、更に好ましくは3〜10重量部、ラジカル発生剤(b)を0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。また、機酸化物粒子(f)及び/またはポリマーと無機酸化物の複合粒子(g)を一緒に含有する場合には(f)と(g)の合計100重量部に対して(f)は1〜95重量部、好ましくは20〜80重量部、更に好ましくは30〜70重量部の範囲である。組成物I、組成物IIの組成比の範囲外の場合、築盛性を損ない、また硬化体の機械的特性が発揮されない可能性があるの好ましくない。
【0047】
ここで、筆積み法による組成物IIと組成物Iの比率は、筆に染み込ませる組成物Iの量を適宜調整して筆積みし易い組成で使用すれば良いが、一回の盛り付けが約0.1〜0.5gにするのが一般的である。混和法による組成物IIと組成物Iの比率も、暫間補綴物を作製する上で好ましい粘度になるように適宜調整すれば良い、一般には組成物II対組成物Iは1:1〜2:1重量比である。
また、組成物IIには有機顔料、無機系顔料、骨材等を添加しても良い。
以下に、本発明の内容を実施例で具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
製造例1(シリカ/ジルコニアフィラーの製造と表面処理:ZMFの製造
無機酸化物粉体として、以下の方法によりシリカ/ジルコニアフィラーを製造した。イソプロパノール(IPA)1.50Lにテトラエトキシシラン(TES)441g(2.12モル)、1.3重量%塩酸水溶液15g(HO/TESモル比=0.39、HCl/TESモル比=0.0025)を添加し均一化した後、室温下で2時間静置した(A1溶液の調製)。IPA0.38Lにテトラブトキシジルコニウム(TBZR)120g(0.31モル)を室温下添加して均一化した溶液を先ほど調製したA1溶液に添加して均一化した(B1溶液の調製)。セパラブルフラスコにIPA3.75L、25%アンモニア水1.5Lを添加して室温下、攪拌し均一溶液(C1溶液)とした後、IPA0.09LにTES7.5g(0.04モル)を溶解した溶液(D1溶液)を滴下ロートに入れ5分間で滴下した後、B1溶液を滴下ロートに入れて5時間掛けて滴下した。滴下終了後さらに室温で16時間攪拌を継続した後、攪拌を停止し、この溶液を減圧濾過して、白色の反応析出物を採取した。白色析出物を窒素雰囲気下80℃で減圧乾燥して溶媒を除去し、乾燥体191gを得た。この乾燥体をφ40mmのアルミナボールを10個入れた2Lのアルミナポットに入れ10時間解砕し、350℃で3時間、650℃で3時間焼成して白色のシリカー/ジルコニアフィラー152gを得た。このフィラー152gをエタノール0.30Lに懸濁し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを7.2g、精製水1.4gを添加し、2時間環流した。溶媒をエバポレーターで除去した後、窒素雰囲気下で2時間/80℃で処理し、フィラーを表面処理した。表面処理化フィラーのメディアン径および粒度分布を測定したところ、メディアン径は11.0μm、粒度分布は1〜100μmであった。以下このフィラーをZMFと云う。
【0049】
製造例2(無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉体の製造:TU
トリメチロールプロパントリメタクリレート/ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサンジウレタン=70/30(重量%)50gにR972(日本アエロジル(株))50gをTest Mixing Roll(安田精機製作所(株)製)を使用して機械的に十分練り混んでペースト化した。このペーストに0.3gの過酸化ベンゾイルを更に煉り込んだ後、170mm×170mm×5mmの穴の開いた金型に入れ圧縮成型機(YSR−10:神藤金属工業(株)製)で20MPa加圧下、120℃で10分間重合した。重合体をハンマーで約1cm角に砕いた後、1Lの磁性ポット(φ25mmの磁性ボール30個、φ15mmの磁性ポット30個入り)に入れ、20時間粉砕した。100メッシュの篩いを通過した粉体を窒素気流下、140℃で8時間減圧熱処理し無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉(以下TUと云う)を得た。TUのメジアン径は23.0μm、粒度分布は1〜100μmであった。
試験条件を以下に示す。
【0050】
筆積み性
(1)垂れ:テフロン(登録商標)の平板に筆積み法で採取した約0.5gの粉液泥の玉(X)を置き、10秒後に再び採取した約0.5gの粉液泥の玉(Y)をXの上に置き、5秒静置した後のXとYの玉形状の変化より垂れの程度を調べた。
○:XとYの形状がそのまま維持している。
×:XとYの形状が山型に崩れている。
(2)伸び:テフロン(登録商標)の平板に筆積み法で採取した約0.5gの粉液泥の玉(X)を置き、なにも付けていない筆を用いてXを伸ばして調べた。
○:筆で伸ばしたXに切れがなく、滑らかに延ばせる。
×:筆で伸ばしたXに切れが認められ、滑らかに延ばせない。
【0051】
気泡
φ4mm、厚さ2mmの穴を開けたテフロン(登録商標)モールドの片側にセロファンを敷いたガラスを置き、テフロン(登録商標)とガラスをクリップで挟んだ。
モールドの穴に筆積み法で粉液泥を盛り、セロハンを敷いたガラスを置き、ガラス同士をクリップで挟んだ。透過光に透かしてみて、気泡の混入状態を調べた。
少:気泡が5個以下
多:気泡が6個以上
【0052】
曲げ特性
ガラス板にセロファンを敷き、2×30×2mmの穴の開いたテフロン(登録商標)モールドを置いて、2対1の粉液重量比で混和法に調整した泥を穴に流し込み、上にセロハンを敷いたガラス板を置きクリップでガラス板同士を挟んだ。加圧重合器(NO−1:松風(株)製)で5分間重合させた後、サンプルをモールドから取り出し、37℃の水中に24時間浸漬した。曲げ試験は(島津製作所(株)製オートグラフAGS−2000G)を用い、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minで室温にて3点曲げ強度試験法により測定した。
【0053】
重合硬化時の黄変化
φ4mm、厚さ2mmの穴を開けたテフロン(登録商標)モールドの片側にセロファンを敷いたガラスを置き、テフロン(登録商標)とガラスをクリップで挟んだ。モールドの穴に筆積み法で粉液泥を盛り、セロハンを敷いたガラスを置き、ガラス同士をクリップで挟んだ。加圧重合器(NO−1:松風(株)製)で5分間重合させた後、サンプルをモールドから取り出し、サンプルを白色板の上に置き、目視にて黄変の有無を調べた。
○:黄変なし
△:淡黄色変化
×:黄色変化、または茶褐色化
【0054】
組成物Iの変色
組成物Iを透明ガラス瓶に採取して透過光にかざして観察した。
○:組成物Iが無色透明液体
×:組成物Iが有色透明液体
使用した原材料を示す。
【0055】
組成物I
MMA:メチルメタクリレート
1,6Hx:1,6−ヘキシルジメタクリレート
DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
BHT:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
MEHQ:p−メトキシフェノール
BZ:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
CN:2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール
【0056】
組成物II
Y:メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重合粉体(成分d)
粒度分布:22〜313μm、メディアン径:83.8μm、平均粒径:84.3μm、モード径:84.6μm; 数平均分子量:141,000、重量平均分子量:951,000、分子量分布:6.75、ピークトップ分子量:990,000
Z:メタアクリル酸メチルとメタアクリル酸エチルの共重合粉体(成分e)
粒度分布:28〜382μm、メディアン径:85.1μm、平均粒径:85.4μm、モード径:84.6μm; 数平均分子量:42,4000、重量平均分子量:1,490,000、分子量分布:3.52、ピークトップ分子量:1,440,000
ZMF:シリカ−ジルコニアフィラー、粉体特性は製造例1に記載
TU:無機酸化物粉体とポリマーとの複合体粉体、粉体特性は製造例2に記載
BPO:過酸化ベンゾイル
実施例1〜9
表1の通り組成物I、組成物IIを調整して組み合わせ、操作性、変色、機械的特性を調べた。
【0057】
【表1】

【0058】
比較例1〜4
表2の通り組成物I、組成物IIを調整して組み合わせ、操作性、変色、機械的特性を調べた。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例10〜12及び比較例5〜8
表3の通り組成物Iと組成物IIを組み合わせ変色を調べた。
【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの組成物IとIIからなる歯科用重合性組成物であって、
組成物Iが重合性単量体(a)およびラジカル発生剤(b)を分解し得る還元剤(c)を含有し、
組成物IIが10〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径および5万〜25万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(d)と、
10〜400μmの粒度分布、70〜120μmの範囲にあるメディアン径および30万〜70万の範囲にある数平均分子量(Mn)を有する成分(e)を主成分として有する(メタ)アクリル酸エステル系ポリマ−粒子(de)、およびラジカル発生剤(b)を含有し、
そして組成物Iと組成物IIを混合したとき硬化させることができることを特徴とする歯科用重合性組成物。
【請求項2】
上記(d)成分および(e)成分の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、それぞれ4.4〜12および2.2〜4.4である請求項1に記載の歯科用重合性組成物。
【請求項3】
組成物IIが無機酸化物粒子(f)及び/またはポリマ−と無機酸化物からなる複合体粒子(g)を更に含有する請求項1または2に記載の歯科用重合性組成物。
【請求項4】
三官能以上の多官能重合性単量体から誘導されたポリマ−(j)をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
【請求項5】
無機酸化物粒子(f)および複合体粒子(g)の粒度分布が1〜100μmであり、メディアン径が1〜40μmの範囲にある請求項3または4に記載の歯科用重合性組成物。
【請求項6】
ラジカル発生剤(b)の80℃での分解半減期が10時間以下である請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
【請求項7】
組成物Iがヒンダ−ドフェノ−ル系化合物(h)の重合禁止剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
【請求項8】
組成物Iが、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤(i)をさらに含有する請求項1〜7のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。
【請求項9】
組成物Iが(a)成分、(b)成分、(h)成分および(i)成分の合計100重量部に対して(a)成分が90〜99.5重量部であり、(c)成分が0.5〜10重量部であり、(h)成分が0〜0.5重量部であり、(i)成分が0〜5重量部であり、そして組成物IIが(d)成分、(e)成分、(f)および/または(g)成分、および(b)成分の合計100重量部に対して(d)成分が20〜75重量部であり、(e)成分が20〜75重量部であり、(f)成分および/または(g)成分が1〜20重量部であり、(b)成分が0.05〜10重量部である請求項1〜8のいずれかに記載の歯科用重合性組成物。

【公開番号】特開2008−174461(P2008−174461A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7191(P2007−7191)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(592093578)サンメディカル株式会社 (61)
【Fターム(参考)】