説明

歯車成形装置

【課題】ダイスの耐久性を向上させることができる歯車成形装置を提供すること。
【解決手段】歯車成形装置は、素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する。パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340は、軸方向下端部分340を径方向外周側から見たときに軸方向下端部分340における周方向一方側の側面341に位置する鈍角側角部35が切除してある。スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440は、軸方向上端部分440を径方向外周側から見たときに軸方向上端部分440における周方向他方側の側面442に位置する鈍角側角部45が切除してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外歯を有する歯車を成形するに当たっては、切削、転造等を行って成形することが一般的である。これに対し、例えば、特許文献1の歯車鍛造装置等に開示されるように、冷間密閉鍛造によって歯車を成形する方法がある。この歯車鍛造装置においては、外周面に歯面を有する歯車を成形するに際し、パンチコア、パンチ、ダイス及びダイスリーブによって囲んで形成された密閉鍛造空間において、パンチを構成するインナーパンチ及びアウターパンチによって歯車用素材を加圧するタイミングを適宜調整して、ダイスの歯型成形穴によって外歯を成形している。また、密閉鍛造空間を形成する際には、ダイスリーブの外周に形成したスリーブ外周歯をダイスの歯型成形穴に係合し、アウターパンチの下端部をダイスの歯型成形穴の上方開口部の周辺に当接させている。
また、アウターパンチの外周にパンチ外周歯を形成し、このパンチ外周歯をダイスの歯型成形穴に係合して、密閉鍛造空間を形成することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記冷間密閉鍛造を行う際には、ダイスの歯型成形穴を構成するダイス内周歯には、素材が流動して据え込まれるときの大きな圧力が作用する。このとき、つるまき状(螺旋状)の外歯を有するはすば歯車を成形する場合において、スリーブ外周歯をダイスの歯型成形穴に係合するとともに、パンチ外周歯をダイスの歯型成形穴に係合して冷間密閉鍛造を行う際には、次の問題が生じる。すなわち、スリーブ外周歯の歯山部の軸方向上端部分に対向する位置のダイス内周歯の歯山部と、パンチの外周歯の歯山部の軸方向下端部分に対向する位置のダイス内周歯の歯山部とにおいて、密閉鍛造空間内の素材から、周方向一方側の側面に作用する力と、周方向他方側の側面に作用する力とが釣り合わなくなる。
【0005】
そのため、長期間の使用による繰返し疲労により、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が生じるおそれがあることがわかった。
また、上記素材からダイス内周歯の歯山部に作用する力の不釣り合いにより、この歯山部が変形し、はすば歯車は、この変形に倣って成形されることになる。そのため、はすば歯車の外歯の成形精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、はすば歯車の成形精度を向上させるとともに、ダイスの耐久性を向上させることができる歯車成形装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する装置であって、
上記外歯を成形するためのダイス内周歯を形成したダイス成形穴を有し、付勢手段によって上方に付勢されたダイスと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するパンチ外周歯を有し、上記素材の上面を加圧するパンチと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するスリーブ外周歯を有し、上記パンチから上記素材に加わる荷重を受けるダイスリーブと、を備えており、
上記ダイスと、上記パンチ及び上記ダイスリーブとは、上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って互いに相対的に摺動回転可能であり、
上記パンチ外周歯及び上記スリーブ外周歯を上記ダイス内周歯に係合して形成される鍛造空間において、上記パンチ及び上記ダイスリーブによる加圧力を与えて上記素材の一部を上記ダイス内周歯に流動させて、上記はすば歯車を成形するよう構成してあり、
上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分は、該軸方向下端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向下端部分における周方向一方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることを特徴とする歯車成形装置にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する装置であって、
上記外歯を成形するためのダイス内周歯を形成したダイス成形穴を有し、付勢手段によって上方に付勢されたダイスと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するパンチ外周歯を有し、上記素材の上面を加圧するパンチと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するスリーブ外周歯を有し、上記パンチから上記素材に加わる荷重を受けるダイスリーブと、を備えており、
上記ダイスと、上記パンチ及び上記ダイスリーブとは、上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って互いに相対的に摺動回転可能であり、
上記パンチ外周歯及び上記スリーブ外周歯を上記ダイス内周歯に係合して形成される鍛造空間において、上記パンチ及び上記ダイスリーブによる加圧力を与えて上記素材の一部を上記ダイス内周歯に流動させて、上記はすば歯車を成形するよう構成してあり、
上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分は、該軸方向上端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向上端部分における周方向他方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることを特徴とする歯車成形装置にある(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明の歯車成形装置において、はすば歯車を成形するに当たっては、ダイスのダイス成形穴内に素材を配置し、パンチ外周歯をダイス内周歯に係合するとともにスリーブ外周歯をダイス内周歯に係合して鍛造空間を形成する。そして、パンチを下降させ、鍛造空間内において、パンチとダイスリーブとによって素材を加圧する。このとき、パンチ及びダイスリーブによる加圧力を受けて、素材の一部がダイス成形穴のダイス内周歯へ流動し、素材の外周部に、ダイス内周歯による螺旋状の歯型形状が転写される。なお、パンチ及びダイスリーブによって素材を加圧するときには、素材が圧縮されるとともに、パンチ及びダイスリーブに対してダイスがダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って相対的に摺動回転する。
こうして、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車が成形される。
【0010】
ところで、パンチ及びダイスリーブによって素材を加圧する際に、素材の一部がダイス内周歯へ流動するときには、ダイス内周歯の周方向両側の側面には、素材の一部が据え込まれる(押し込まれる)ことによる圧力が作用する。このとき、パンチ外周歯の形成状態に何ら工夫がない場合には、ダイス内周歯が螺旋状傾斜を有して形成されていることにより、ダイス内周歯の歯山部においては、鍛造空間内の素材から、周方向一方側の側面に作用する力と周方向他方側の側面に作用する力とが釣り合わないことになる。
【0011】
この場合、特に、パンチ外周歯の歯山部の軸方向下端部分における周方向他方側に位置する鋭角側角部に対向する、ダイス内周歯の歯山部の螺旋状傾斜に垂直な方向においては、鋭角側角部に対向する周方向一方側の側面にのみ、素材から圧力が加わる状態が形成される。そのため、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が生じ易くなる。
また、上記素材からダイス内周歯の歯山部に作用する力の不釣り合いにより、この歯山部が変形し、この変形に倣って成形されるはすば歯車の外歯の成形精度が低下してしまうおそれがある。
【0012】
これに対し、本発明においては、パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分は、軸方向下端部分を径方向外周側から見たときに軸方向下端部分における周方向一方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してある。これにより、パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分に対向する位置において、ダイス内周歯の歯山部における周方向両側の側面に加わる力の不均衡を緩和することができる。
そのため、歯車成形装置を長期間繰り返し使用したときでも、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が生じないようにすることができる。
また、上記力の不均衡を緩和することにより、成形するはすば歯車の外歯の成形精度を向上させることができる。
【0013】
それ故、本発明の歯車成形装置によれば、はすば歯車の成形精度を向上させるとともに、ダイスの耐久性を向上させることができる。
【0014】
第2の発明の歯車成形装置においても、上記第1の発明と同様に、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車が成形される。
また、パンチ及びダイスリーブによって素材を加圧する際に、スリーブ外周歯の形成状態に何ら工夫がない場合には、上記第1の発明と同様の力の不釣り合いが想定される。
【0015】
この場合、特に、スリーブ外周歯の歯山部の軸方向下端部分における周方向一方側に位置する鋭角側角部に対向する、ダイス内周歯の歯山部の螺旋状傾斜に垂直な方向においては、鋭角側角部に対向する周方向他方側の側面にのみ、素材から圧力が加わる状態が形成される。そのため、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が生じ易くなる。
また、上記素材からダイス内周歯の歯山部に作用する力の不釣り合いにより、この歯山部が変形し、この変形に倣って成形されるはすば歯車の外歯の成形精度が低下してしまうおそれがある。
【0016】
これに対し、本発明においては、スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分は、軸方向上端部分を径方向外周側から見たときに軸方向上端部分における周方向他方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してある。これにより、スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分に対向する位置において、ダイス内周歯の歯山部における周方向両側の側面に加わる力の不均衡を緩和することができる。
そのため、歯車成形装置を長期間繰り返し使用したときでも、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が生じないようにすることができる。
また、上記力の不均衡を緩和することにより、成形するはすば歯車の外歯の成形精度を向上させることができる。
【0017】
それ故、第2の発明の歯車成形装置によれば、はすば歯車の成形精度を向上させるとともに、ダイスの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例にかかる、パンチの軸方向下端付近を、径方向外周側の斜め下方から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例にかかる、ダイスリーブの軸方向上端付近を、径方向外周側の斜め上方から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、はすば歯車を示す斜視図。
【図4】実施例にかかる、歯車成形装置を示す断面図。
【図5】実施例にかかる、内周パンチ部によって素材の加圧を開始する状態を示す断面図。
【図6】実施例にかかる、内周パンチ部によって素材を加圧する状態を示す断面図。
【図7】実施例にかかる、外周パンチ部及び内周パンチ部によって素材を加圧する状態を示す断面図。
【図8】実施例にかかる、素材からダイス内周歯に加わる力の状態を示す説明図。
【図9】実施例にかかる、他のパンチ及び他のダイスリーブを用いた場合に、素材からダイス内周歯に加わる力の状態を示す説明図。
【図10】従来例にかかる、素材からダイス内周歯に加わる力の状態を示す説明図。
【図11】従来例にかかる、ダイス内周歯に生じる変形、及び成形するはすば歯車の外歯に生じる精度不良を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述した第1、第2の発明の歯車成形装置における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分には、上記鈍角側角部の角度を大きくするよう、当該パンチの軸方向に垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面が形成してあることが好ましい(請求項3)。
第2の発明において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分には、上記鈍角側角部の角度を大きくするよう、当該ダイスリーブの軸方向に垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面が形成してあることが好ましい(請求項5)。
これらの場合には、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等が一層生じ難くすることができる。
【0020】
また、第1の発明において、上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分の上記鈍角側角部は、当該パンチ外周歯の歯谷部と略同一面になるまで切除してあることが好ましい(請求項4)。
また、第2の発明において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分の上記鈍角側角部は、当該ダイスリーブ外周歯の歯谷部と略同一面になるまで切除してあることが好ましい(請求項6)。
これらの場合には、ダイス内周歯の歯山部に、亀裂、欠損等がより一層生じ難くすることができる。
【0021】
また、第1の発明において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分は、該軸方向上端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向上端部分における周方向他方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には、はすば歯車の成形精度及びダイスの耐久性をより向上させることができる。
【0022】
また、上記歯車成形装置によって成形する上記はすば歯車は、軸中心に軸穴を有するものであり、上記歯車成形装置は、上記ダイスリーブの軸中心に形成したスリーブ穴と、上記軸穴とに下端部分を挿入配置するマンドレルを有しており、上記パンチは、上記パンチ外周歯を形成してなる円環断面形状の外周パンチ部と、該外周パンチ部の内周側であって上記マンドレルの外周側に配置する円環断面形状の内周パンチ部とからなり、上記マンドレルの下端部分を上記スリーブ穴と上記軸穴とに挿入配置した状態で、上記ダイスを上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って従動回転させながら、上記内周パンチ部によって上記素材の上面内周側部分を加圧し、次いで、上記外周パンチ部及び上記内周パンチ部によって上記素材の上面を加圧し、その後、上記内周パンチ部による加圧力を減少させた状態で上記外周パンチ部によって上記素材の上面外周側部分を加圧するよう構成することが好ましい(請求項8)。
【0023】
この場合には、外周パンチ部と内周パンチ部とを用いて、素材に対して分流成形を行うことができ、螺旋状の外歯を有するとともに軸穴を有するはすば歯車を、精度よく成形することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の歯車成形装置1にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の歯車成形装置1は、図3、図4に示すごとく、素材80に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯81を有するはすば歯車8を成形するものである。
歯車成形装置1は、図4、図5に示すごとく、外歯81を成形するためのダイス内周歯22を形成したダイス成形穴21を有するダイス2と、外周にダイス内周歯22に係合するパンチ外周歯33を有するパンチ3と、外周にダイス内周歯22に係合するスリーブ外周歯43を有するダイスリーブ4と、を備えている。ダイス2は、付勢手段25によって上方に付勢されており、パンチ3は、素材80の上面801、802を加圧するよう構成してあり、ダイスリーブ4は、パンチ3から素材80に加わる荷重を受けるよう構成してある。ダイス2と、パンチ3及びダイスリーブ4とは、ダイス内周歯22の螺旋状傾斜αに沿って互いに相対的に摺動回転可能である(図8参照)。
【0025】
歯車成形装置1は、パンチ外周歯33及びスリーブ外周歯43をダイス内周歯22に係合して形成される鍛造空間11において、パンチ3及びダイスリーブ4による加圧力を与えて素材80の一部をダイス内周歯22に流動させて、はすば歯車8を成形するよう構成してある。
図1に示すごとく、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340は、軸方向下端部分340を径方向外周側から見たときに軸方向下端部分340における周方向一方側の側面341に位置する鈍角側角部35が切除してある。図2に示すごとく、スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440は、軸方向上端部分440を径方向外周側から見たときに軸方向上端部分440における周方向他方側の側面442に位置する鈍角側角部45が切除してある。
【0026】
以下に、本例の歯車成形装置1につき、図1〜図11を参照して詳説する。
本例の各図においては、ダイス成形穴21(及びパンチ3、ダイスリーブ4)の軸方向を矢印Lで示し、径方向を矢印Rで示し、周方向を矢印Cで示す。
図3に示すごとく、本例の歯車成形装置1によって成形するはすば歯車8は、軸中心に軸穴82を有するものである。冷間鍛造に用いる素材80は、軸穴82を設けた円環形状に形成されている。
【0027】
図4、図5に示すごとく、歯車成形装置1は、素材80の軸穴82に挿入配置するマンドレル5を備えている。本例のパンチ3は、素材80に対して分流成形を行うために、外周パンチ部31と内周パンチ部32とに分割して形成してある。本例のダイスリーブ4は、その軸中心位置に、マンドレル5の下端部分を挿入配置するスリーブ穴421を有している。また、成形後のはすば歯車8を取り出すことを容易にするため、本例のダイスリーブ4は、スリーブ外周歯43を設けた外周スリーブ部41と、外周スリーブ部41の内周側に配置する内周スリーブ部42とに分割して形成してある。スリーブ穴421は、内周スリーブ部42に形成してある。
【0028】
外周パンチ部31は、ダイス成形穴21のダイス内周歯22に係合するパンチ外周歯33を形成してなるとともに円環断面形状を有している。内周パンチ部32は、外周パンチ部31の内周側であってマンドレル5の外周側に配置する円環断面形状を有している。
外周パンチ部31、内周パンチ部32及びマンドレル5は、パンチホルダ36内に配設してある。パンチホルダ36は、パンチベース30として、油圧、電動等の第1駆動源P1による推力を受けて下降するよう構成してある。本例の歯車成形装置1は、パンチベース30を下降させる1ショット動作を行って、軸穴82を有する素材80から、軸穴82を有するはすば歯車8を成形するものである。また、内周パンチ部32は、油圧、電動等の第2駆動源P2による推力を受けて、外周パンチ部31を含むパンチベース30に対して下降可能に配設されている。
【0029】
図4に示すごとく、ダイス2は、はすば歯車8を成形するために、外周パンチ部31及び内周パンチ部32によって素材80を加圧して螺旋状の外歯81を成形する際、及び成形後のはすば歯車8を取り出す際に、ダイス内周歯22の螺旋状傾斜αに倣って回転するよう構成されている。
ダイス2は、ダイスホルダ26内に配置してある。ダイス2の下方には、ダイスホルダ26内において、上下にスライド可能であると共に回転可能である軸受部27が設けてある。軸受部27は、付勢手段25としてのガスクッション25によって上方へ付勢されており、ダイス2は、ガスクッション25によって、軸受部27を介して上方へ付勢されている。ガスクッション25は、ガスの圧力による所定の力を、一定方向である上方に向けて常時付与するものである。
また、パンチベース30には、成形後のはすば歯車8をダイス2のダイス成形穴21から取り出す際に、ダイス2を押し下げる押下げロッド37が配設してある。
【0030】
図5〜図7に示すごとく、本例の歯車成形装置1は、マンドレル5の下端部分をダイスリーブ4のスリーブ穴421と素材80の軸穴82とに挿入配置した状態で、ダイス2をそのダイス内周歯22の螺旋状傾斜αに沿って従動回転させながら、内周パンチ部32によって素材80の上面内周側部分802を加圧し、次いで、外周パンチ部31及び内周パンチ部32によって素材80の上面801、802を加圧し、その後、内周パンチ部32による加圧力をなくした状態で外周パンチ部31によって素材80の上面外周側部分801を加圧するよう構成してある。
ここで、内周パンチ部32による加圧力をなくした状態とは、第2駆動源P2による推力を内周パンチ部32に作用させず、鍛造空間11内を流動する素材80によって押されて、内周パンチ部32が上方に位置ずれ可能な状態をいう。
【0031】
図1に示すごとく、本例のパンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340には、鈍角側角部35の角度を大きくするよう、パンチ3の軸方向Lに垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面331が形成してある。パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340の鈍角側角部35は、パンチ外周歯33の歯谷部34Xと略同一面になるまで切除してある。本例のパンチ外周歯33の歯山部34におけるテーパ状端面331は、径方向外周側から見て、軸方向Lに垂直な方向に対して周方向一方側が上がるように傾斜している。
【0032】
図2に示すごとく、本例のスリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440には、鈍角側角部45の角度を大きくするよう、ダイスリーブ4の軸方向Lに垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面431が形成してある。スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440の鈍角側角部45は、スリーブ外周歯43の歯谷部44Xと略同一面になるまで切除してある。本例のスリーブ外周歯43の歯山部44におけるテーパ状端面431は、径方向外周側から見て、軸方向Lに垂直な方向に対して周方向他方側が下がるように傾斜している。
【0033】
また、パンチ外周歯33の歯山部34の軸方向下端部分340における鈍角側角部35の切除は、軸方向下端部分340にテーパ状端面331を形成する以外にも、次のようにして行うことができる。すなわち、パンチ外周歯33の歯山部34の軸方向下端部分340における鈍角側角部35を曲面状(又は面取り状)に形成することによって、鈍角側角部35の一部を切除することもできる(後述する図9参照。)。
【0034】
また、スリーブ外周歯43の歯山部44の軸方向上端部分440における鈍角側角部45の切除は、軸方向上端部分440にテーパ状端面431を形成する以外にも、次のようにして行うことができる。すなわち、スリーブ外周歯43の歯山部44の軸方向上端部分440における鈍角側角部45を曲面状(又は面取り状)に形成することによって、鈍角側角部45の一部を切除することもできる(後述する図9参照。)。
【0035】
次に、本例の歯車成形装置1によって、はすば歯車8を成形する方法につき説明する。
歯車を成形するに当たっては、図4に示すごとく、ダイス2及びダイスリーブ4を、ダイスリーブ4のスリーブ外周歯43がダイス2のダイス成形穴21におけるダイス内周歯22に係合した原位置にし、ダイス2のダイス成形穴21内において、ダイスリーブ4の上面に円筒形状の素材80を載置する。次いで、第1駆動源P1によってパンチベース30を下降させることによって、マンドレル5、内周パンチ部32及び外周パンチ部31を同時に下降させる。
【0036】
そして、図5に示すごとく、マンドレル5の下端部分が、素材80の軸穴82とダイスリーブ4のスリーブ穴421とに連続して挿入配置される。また、外周パンチ部31のパンチ外周歯33がダイス成形穴21のダイス内周歯22に係合し、内周パンチ部32の下端面が素材80の上面801、802に当接する。これにより、ダイス2、外周パンチ部31、内周パンチ部32、ダイスリーブ4によって囲まれ、素材80が配置された状態の鍛造空間11が形成される。
【0037】
次いで、図6に示すごとく、外周パンチ部31によってダイス2が下方に押し下げられるとともに、ダイスリーブ4によって荷重を受け止めた状態で、第2駆動源P2による推力を受けた内周パンチ部32によって素材80の上面内周側部分802が加圧される。ダイス2は、付勢手段25の付勢力に抗して、ダイス内周歯22の螺旋状傾斜αに沿って回転しながら押し下げられる。このとき、内周パンチ部32によって素材80の内周側部分が押し潰されて厚みが縮小し、素材80の外周側部分が外周側に向けてダイス内周歯22の壁面へ流動する。
次いで、図7に示すごとく、内周パンチ部32による素材80の加圧状態を維持したままで、第1駆動源P1によってパンチベース30をさらに下降させる。このとき、外周パンチ部31によってダイス2がさらに押し下げられ、ダイスリーブ4によって荷重を受け止めた状態で、外周パンチ部31によって素材80の上面外周側部分801が加圧される。
【0038】
次いで、図示は省略するが、第2駆動源P2による推力をゼロにして、内周パンチ部32による素材80の加圧力をなくし、パンチベース30をさらに下降させて、外周パンチ部31によってさらに素材80の上面外周側部分801を加圧する。これにより、素材80の上端部分を、外周側部分の上端部へ流動させるとともに内周側部分の上端部へも流動させて分流成形を行い、鍛造空間11の外周側部分の上端部へ効果的に素材80の一部を流動させることができる。そして、素材80の外周側部分がダイス成形穴21のダイス内周歯22の壁面へ流動し、素材80の外周部に、ダイス内周歯22による螺旋状の歯型形状が転写される。こうして、図3に示すごとく、外周に螺旋状の外歯81を有するはすば歯車8が成形される。
その後、パンチベース30を上昇させる一方、押下げロッド37によって、ダイスホルダ26に対してダイス2を押し下げて、ダイス成形穴21から成形後のはすば歯車8を取り出す。
【0039】
ところで、パンチ3及びダイスリーブ4によって素材80を加圧する際に、素材80の一部がダイス内周歯22へ流動するときには、ダイス内周歯22の周方向両側の側面231、232には、素材80の一部が据え込まれる(押し込まれる)ことによる圧力が作用する。このとき、パンチ外周歯33及びスリーブ外周歯43の形成状態に何ら工夫がない場合には、ダイス内周歯22が螺旋状傾斜αを有して形成されていることにより、ダイス内周歯22の歯山部23においては、鍛造空間11内の素材80から、周方向一方側の側面231に作用する力と周方向他方側の側面232に作用する力とが釣り合わないことになる。
【0040】
この場合、特に、パンチ外周歯33の歯山部34の軸方向下端部分340における周方向他方側に位置する鋭角側角部36に対向する、ダイス内周歯22の歯山部23の螺旋状傾斜αに垂直な方向においては、鋭角側角部36に対向する周方向一方側の側面231にのみ、素材80から圧力が加わる状態が形成される。また、この場合、特に、スリーブ外周歯43の歯山部44の軸方向上端部分440における周方向一方側に位置する鋭角側角部46に対向する、ダイス内周歯22の歯山部23の螺旋状傾斜αに垂直な方向においては、鋭角側角部46に対向する周方向他方側の側面232にのみ、素材80から圧力が加わる状態が形成される。そのため、ダイス内周歯22の歯山部23に、亀裂、欠損等が生じ易くなる。
【0041】
図10は、パンチ外周歯93Yの歯山部94Yにおける軸方向下端面がテーパ状端面331に形成されていない従来のパンチ9Yと、スリーブ外周歯93Xの歯山部94Xにおける軸方向上端面がテーパ状端面431に形成されていない従来のダイスリーブ9Xとを用いた場合において、素材80からダイス内周歯22の歯山部23に加わる力の状態を示す。同図においては、歯山部23を網掛け状のハッチングを行って示す。
また、鍛造空間11内を流動する素材80から、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向両側の側面231、232に作用する力を矢印Fで示す。
【0042】
同図において、パンチ外周歯93Yの歯山部94Yの軸方向下端部分940Yの近傍においては、鍛造空間11内を流動する素材80から、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231にのみ力F(a)が作用することがわかる。そして、周方向他方側に、力F(a)に対向する力Fが存在しないことがわかる。
そのため、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231にモーメント荷重(曲げ応力)が作用し、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231に亀裂K1が発生するおそれがある。また、亀裂K1が発展して、ダイス内周歯22の歯山部23が欠損してしまうおそれもある。
【0043】
パンチ外周歯93Yの歯山部94Yの軸方向下端部分940Yにおいては、パンチ外周歯93Yの周方向他方側に位置する鋭角側角部96Yの近傍において、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231からダイス内周歯22の歯山部23に作用する力F(a)は、パンチ外周歯93Yの周方向一方側に位置する鈍角側角部95Yにまで到達する場合もあると考えられる。
この場合、パンチ外周歯93Yの鈍角側角部95Yにモーメント荷重(曲げ応力)が作用し、パンチ外周歯93Yの鈍角側角部95Yにおける周方向一方側の側面941Yに亀裂、欠損が発生するおそれもあると考えられる。
【0044】
同図において、スリーブ外周歯93Xの歯山部94Xの軸方向下端部分940Xの近傍においては、鍛造空間11内を流動する素材80から、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232にのみ力F(b)が作用することがわかる。そして、周方向他方側に、力F(b)に対向する力Fが存在しないことがわかる。
そのため、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232にモーメント荷重(曲げ応力)が作用し、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232に亀裂K2が発生するおそれがある。また、亀裂K2が発展して、ダイス内周歯22の歯山部23が欠損してしまうおそれもある。
【0045】
また、同図において、スリーブ外周歯93Xの歯山部94Xの軸方向上端部分940Xにおいては、スリーブ外周歯93Xの周方向一方側に位置する鋭角側角部96Xの近傍において、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232からダイス内周歯22の歯山部23に作用する力F(b)は、スリーブ外周歯93Xの周方向他方側に位置する鈍角側角部95Xにまで到達する場合もあると考えられる。
そのため、スリーブ外周歯93Xの鈍角側角部95Xにモーメント荷重(曲げ応力)が作用し、スリーブ外周歯93Xの鈍角側角部95Xにおける周方向他方側の側面942Xに亀裂、欠損が発生するおそれもあると考えられる。
【0046】
これに対し、本例においては、図1に示すごとく、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端面を、鈍角側角部35の角度を大きくするよう、パンチ3の軸方向Lに垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面331に形成している。また、図2に示すごとく、スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端面を、鈍角側角部45の角度を大きくするよう、スリーブの軸方向Lに垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面431に形成している。これにより、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340に対向する位置と、スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440に対向する位置とにおいて、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向両側の側面231、232に加わる力Fの不均衡を緩和することができる。
【0047】
図8は、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端面をテーパ状端面331に形成した本例のパンチ3と、スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端面をテーパ状端面431に形成した本例のダイスリーブ4とを用いた場合において、素材80からダイス内周歯22の歯山部23に加わる力の状態を示す。同図においては、歯山部23を網掛け状のハッチングを行って示す。
また、鍛造空間11内を流動する素材80から、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向両側の側面231、232に作用する力を矢印Fで示す。
【0048】
同図において、パンチ外周歯33の歯山部34の軸方向下端部分340においては、テーパ状端面331を形成したことにより鈍角側角部35が切除されて、さらに角度の大きな鈍角側角部が形成されている。これにより、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231からダイス内周歯22の歯山部23に作用する力F(a)に対向して、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232からダイス内周歯22の歯山部23に力Fが作用することになる。
【0049】
また、同図において、スリーブ外周歯43の歯山部44の軸方向上端部分440においては、テーパ状端面431を形成したことにより鈍角側角部45が切除されて、さらに角度の大きな鈍角側角部が形成されている。これにより、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向他方側の側面232からダイス内周歯22の歯山部23に作用する力F(b)に対向して、ダイス内周歯22の歯山部23における周方向一方側の側面231からダイス内周歯22の歯山部23に力Fが作用することになる。
【0050】
そのため、本例のパンチ3及びダイスリーブ4を用いれば、歯車成形装置1を長期間繰り返し使用したときでも、ダイス内周歯22の歯山部23に、亀裂、欠損等が生じないようにすることができる。
それ故、本例の歯車成形装置1によれば、ダイス2の耐久性を向上させることができる。
また、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340、及びスリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440にも、亀裂、欠損等が生じないようにすることができる。そのため、パンチ3及びダイスリーブ4の耐久性を向上させることもできると考える。
【0051】
また、図11は、従来のダイスリーブ9X及びパンチ9Yを用いる場合において、ダイス2に生じる変形を示す。
同図において、パンチ外周歯93Yの歯山部94Yの軸方向下端部分940Yの近傍においては、上記力F(a)の作用により、スリーブ外周歯93Xの歯山部94Xの軸方向上端部分940Xにおいては、上記力F(b)の作用により、ダイス内周歯22の歯山部23に変形が生じる。
そして、はすば歯車8Xの外歯81Xは、これらの変形に沿って成形されることになる。そのため、はすば歯車8Xを使用する際に、外歯81Xの変形部分H1、H2(二点鎖線で示す。)によって、はすば歯車8X同士が片当り状態で噛み合うことになり、ギヤノイズの発生を大きくし、はすば歯車8Xの強度を低下させる要因になる。また、特に、はすば歯車8Xの下端側に生じた変形部分H2は、成形後のはすば歯車8Xをダイス2から取り出す際に、ダイス内周歯22の歯山部23に干渉し、ダイス内周歯22の磨耗を促進してしまうおそれがある。
【0052】
これに対し、本例のパンチ3及びダイスリーブ4を用いれば、上記力F(a)、F(b)の作用による力の不均衡を解消することにより、成形するはすば歯車8の外歯81の成形精度を向上させることができる。これにより、上記ギヤノイズの発生を小さくし、はすば歯車の強度を向上させることができ、上記取出し時の磨耗の問題も解消することができる。
【0053】
なお、図9には、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340の鈍角側角部35と、スリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440の鈍角側角部45とを、それぞれを曲面状に形成した場合を示す。この場合においても、パンチ外周歯33の歯山部34における軸方向下端部分340、及びスリーブ外周歯43の歯山部44における軸方向上端部分440に亀裂、欠損等が生じないようにすることができる。
また、本例においては、パンチ3及びダイスリーブ4の両方に対して、上記テーパ状端面331、431を形成した場合について説明した。これに対し、テーパ状端面331、431をパンチ3及びダイスリーブ4のいずれか一方にのみ形成する場合であっても、この一方において上記と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 歯車成形装置
11 鍛造空間
2 ダイス
21 ダイス成形穴
22 ダイス内周歯
23 歯山部
3 パンチ
31 外周パンチ部
32 内周パンチ部
33 パンチ外周歯
331 テーパ状端面
34 歯山部
340 軸方向下端部分
341 周方向一方側の側面
342 周方向他方側の側面
35 鈍角側角部
4 ダイスリーブ
43 スリーブ外周歯
431 テーパ状端面
44 歯山部
440 軸方向上端部分
441 周方向一方側の側面
442 周方向他方側の側面
45 鈍角側角部
5 マンドレル
8 はすば歯車
80 素材
81 外歯
82 軸穴
α 螺旋状傾斜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する装置であって、
上記外歯を成形するためのダイス内周歯を形成したダイス成形穴を有し、付勢手段によって上方に付勢されたダイスと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するパンチ外周歯を有し、上記素材の上面を加圧するパンチと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するスリーブ外周歯を有し、上記パンチから上記素材に加わる荷重を受けるダイスリーブと、を備えており、
上記ダイスと、上記パンチ及び上記ダイスリーブとは、上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って互いに相対的に摺動回転可能であり、
上記パンチ外周歯及び上記スリーブ外周歯を上記ダイス内周歯に係合して形成される鍛造空間において、上記パンチ及び上記ダイスリーブによる加圧力を与えて上記素材の一部を上記ダイス内周歯に流動させて、上記はすば歯車を成形するよう構成してあり、
上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分は、該軸方向下端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向下端部分における周方向一方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項2】
素材に冷間密閉鍛造を行って、外周に螺旋状の外歯を有するはすば歯車を成形する装置であって、
上記外歯を成形するためのダイス内周歯を形成したダイス成形穴を有し、付勢手段によって上方に付勢されたダイスと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するパンチ外周歯を有し、上記素材の上面を加圧するパンチと、
外周に上記ダイス内周歯に係合するスリーブ外周歯を有し、上記パンチから上記素材に加わる荷重を受けるダイスリーブと、を備えており、
上記ダイスと、上記パンチ及び上記ダイスリーブとは、上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って互いに相対的に摺動回転可能であり、
上記パンチ外周歯及び上記スリーブ外周歯を上記ダイス内周歯に係合して形成される鍛造空間において、上記パンチ及び上記ダイスリーブによる加圧力を与えて上記素材の一部を上記ダイス内周歯に流動させて、上記はすば歯車を成形するよう構成してあり、
上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分は、該軸方向上端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向上端部分における周方向他方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の歯車成形装置において、上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分には、上記鈍角側角部の角度を大きくするよう、当該パンチの軸方向に垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面が形成してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項4】
請求項2に記載の歯車成形装置において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分には、上記鈍角側角部の角度を大きくするよう、当該ダイスリーブの軸方向に垂直な方向に対して傾斜するテーパ状端面が形成してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項5】
請求項1又は3に記載の歯車成形装置において、上記パンチ外周歯の歯山部における軸方向下端部分の上記鈍角側角部は、当該パンチ外周歯の歯谷部と略同一面になるまで切除してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項6】
請求項2又は4に記載の歯車成形装置において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分の上記鈍角側角部は、当該ダイスリーブ外周歯の歯谷部と略同一面になるまで切除してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項7】
請求項1に記載の歯車成形装置において、上記スリーブ外周歯の歯山部における軸方向上端部分は、該軸方向上端部分を径方向外周側から見たときに該軸方向上端部分における周方向他方側の側面に位置する鈍角側角部が切除してあることを特徴とする歯車成形装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯車成形装置において、該歯車成形装置によって成形する上記はすば歯車は、軸中心に軸穴を有するものであり、
上記歯車成形装置は、上記ダイスリーブの軸中心に形成したスリーブ穴と、上記軸穴とに下端部分を挿入配置するマンドレルを有しており、
上記パンチは、上記パンチ外周歯を形成してなる円環断面形状の外周パンチ部と、該外周パンチ部の内周側であって上記マンドレルの外周側に配置する円環断面形状の内周パンチ部とからなり、
上記マンドレルの下端部分を上記スリーブ穴と上記軸穴とに挿入配置した状態で、上記ダイスを上記ダイス内周歯の螺旋状傾斜に沿って従動回転させながら、上記内周パンチ部によって上記素材の上面内周側部分を加圧し、次いで、上記外周パンチ部及び上記内周パンチ部によって上記素材の上面を加圧し、その後、上記内周パンチ部による加圧力を減少させた状態で上記外周パンチ部によって上記素材の上面外周側部分を加圧するよう構成してあることを特徴とする歯車成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−152769(P2012−152769A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12304(P2011−12304)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】