説明

歯車減速機

【課題】歯車減速機を大型化することなく、樹脂製の歯車のクリープ変形を抑えられるようにする。
【解決手段】歯車減速機4Bの歯車列を構成する第1歯車40の平歯車42と第2歯車60は、共に樹脂製とされ、且つ各歯42A,64の内部にそれぞれ可撓性を有した金属板K1,K2がインサート成形されて一体的に形成されている。金属板K1,K2は、それらの板面が各歯42A,64の歯面に向けられて配置されており、金属板K1,K2により互いに噛合する各歯42A,64を支えてクリープ変形しにくいように支持する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車減速機に関する。詳しくは、歯車列の回転動力伝達により回転動力を減速させて出力する歯車減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車列を用いた動力伝達機構において、歯車列を構成する各歯車が軽量化のために樹脂成形されて形成されたものが知られている。ここで、下記特許文献1には、互いに噛合する一方側の歯車の各歯に対し、これら各歯の間に入り込んで噛合する相手側の歯車の各歯を弾性的に挟み込んでバックラッシをなくさせる板状ばねが配設された技術が開示されている。この開示では、板状ばねの挟持力により、両歯車の噛合状態時におけるバックラッシが防止されており、この挟持力により、一方側の歯車が相手側の歯車によって押圧されてもクリープ変形しにくいようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−189172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記開示の従来技術のように、板状ばねが歯車に対して軸線方向に並んで配設されていることにより、構造全体が軸線方向に大型化してしまうこととなる。
【0005】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、歯車減速機を大型化することなく、樹脂製の歯車のクリープ変形を抑えられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の歯車減速機は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、歯車列の回転動力伝達により回転動力を減速させて出力する歯車減速機である。歯車列を構成する少なくとも一の歯車は、樹脂製とされ、且つ各歯の内部に可撓性を有した金属板がインサート成形されて一体的に形成されている。金属板は、その板面が各歯の歯面に向けられて配置されており、金属板により噛合部となる各歯を支えてクリープ変形しにくいように支持する構成となっている。
【0007】
この第1の発明によれば、歯車列を構成する少なくとも一の樹脂製の歯車は、その各歯の内部に可撓性を有した金属板がインサート成形されることにより、この金属板により各歯が支えられてクリープ変形しにくくなる。このように、樹脂製の歯車の各歯の内部に金属板をインサート成形する構成としたことにより、歯車減速機の構成を大型化することなく、歯車のクリープ変形を抑えられるようにすることができる。
【0008】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、金属板が、各歯の内部において、各歯の歯形に沿って配置されるように曲げられた形でインサート成形されている。
【0009】
この第2の発明によれば、金属板が各歯の内部で各歯の歯形に沿った形に配置されるように曲げられた形でインサート成形されていることにより、金属板によって各歯のクリープ変形をより効果的に抑止できるように支持させることができる。
【0010】
次に、第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、金属板が、各歯の内部と各歯の間の歯底部の内部とを通って歯車の全周に亘ってひと繋ぎ状に配される一枚の金属板として形成されている。
【0011】
この第3の発明によれば、金属板が各歯の内部と各歯の間の歯底部の内部とを通って歯車の全周に亘ってひと繋ぎ状に配される一枚の金属板として形成されていることにより、各歯のクリープ変形を、各歯の内部とその近辺とに跨って連続的に配設されている金属板によってより効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の歯車減速機を備えた車両用シートの概略図である。
【図2】歯車減速機の分解斜視図である。
【図3】歯車減速機の組み図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】歯車減速機の内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1の歯車減速機4Bの構成について、図1〜図5を用いて説明する。この歯車減速機4Bは、図1に示されるように、車両用シートに設けられており、シートバックをシートクッションに対して背凭れ角度調整可能に連結する各側のリクライニング装置3,3に電気モータ4Aからの回転出力を減速させて出力するための機構装置となっている。ここで、上記した各リクライニング装置3,3は、シートバックの骨格を成すバックフレーム1の両サイド部と、シートクッションの骨格を成すクッションフレーム2の両サイド部とをそれぞれ連結して設けられている。
【0015】
これらリクライニング装置3,3は、常時は回転止めされた状態としてシートバックの背凭れ角度を固定した状態に保持されている。そして、各リクライニング装置3,3は、それらの中心部に挿通されたロッド3Aが、上述した電気モータ4Aと歯車減速機4Bとからなる駆動装置4によって軸回動操作されることにより、シートバックの背凭れ角度を変動させるように回転駆動するようになっている。
【0016】
ここで、上記した駆動装置4は、バックフレーム1の枠内部に設けられており、支持ブラケット1Aによってバックフレーム1の図示左方側のサイドフレームに結合固定されている。この支持ブラケット1Aは、補強パイプ1Bによって図示右方側のサイドフレームとも一体的に結合されており、両サイドフレームに対して強固に一体的に結合された状態となっている。そして、上記したリクライニング装置3,3同士を連結するロッド3Aは、上記した補強パイプ1Bの管内部に挿通されて設けられており、補強パイプ1Bによって外周部が覆われて保護されている。
【0017】
上記したシートバックは、電気モータ4Aの駆動回転に伴って、その背凭れ角度が前方側に起こし上げられたり後方側に倒し込まれたりするように回転操作されるようになっている。そして、このシートバックの前方側或いは後方側への回転移動は、バックフレーム1の各サイドフレームの外側面に接合された図示しないストッパ片が、シートバックの前方側或いは後方側への回転に伴って、クッションフレーム2に張り出し形成された前倒れ係止面2Aや後倒れ係止面2Bと当接することでそれぞれ係止されるようになっている。
【0018】
以下、上記した歯車減速機4Bの構成について、図2〜図5を用いて詳しく説明していく。この歯車減速機4Bは、図2に示されるように、樹脂製の本体ケース10及び蓋ケース20と、金属製のウォーム30と、樹脂製の第1歯車40及び第2歯車60と、金属製の丸棒状の支軸50とを有して構成されている。ここで、上記した樹脂製の本体ケース10、蓋ケース20、第1歯車40及び第2歯車60には、その側面等の広い面を有した部位に、放熱用の溝として機能する放熱溝M・・(・・は複数を表す。)が凹み形成されている。
【0019】
これら放熱溝M・・の設定により、各樹脂部品の放熱性が高められて、樹脂成形後の各部品の残存熱による熱変形が防がれて、各樹脂部品をより精度良く成形することができるようになっている。上記した歯車減速機4Bは、図3に示されるように、上記した本体ケース10と蓋ケース20とが組み付けられて構成されるハウジングケースの内部に、上記した各歯車部品や軸部品が収容されて組み付けられる構成となっている。
【0020】
そして、図5に示されるように、上記した本体ケース10には、その頭部に形成された台座部13に、電気モータ4Aが取り付けられてセットされている。なお、本実施例における電気モータ4Aは、特開2008−86110号公報等の文献に開示された公知の構成のものであるため、これについての詳細な説明は省略することとする。ここで、図2に戻って、本体ケース10は、第1歯車40がセットされる凹状の第1収容凹部11と、第2歯車60がセットされる凹状の第2収容凹部12と、前述した電気モータ4Aがセットされる台座部13と、蓋ケース20にネジ締めされるネジ締め口14・・とを有した形状に形成されている。
【0021】
上記した第1収容凹部11は、後述する第1歯車40のウォームホイール41をその凹み内部に受け入れられるように、ウォームホイール41の外径よりもひとまわり大きな外径をもった円筒容器型の凹形状に形成されている。そして、第1収容凹部11の中心部には、後述する丸棒状の支軸50の一端部を受け入れて同端部を軸回転可能に支持する第1軸受け孔11Aが形成されている。そして、第1収容凹部11の側面には、台座部13の中心部から真っ直ぐに貫通して形成された差込口13Aを第1収容凹部11に対して露呈させる開口窓11Bが形成されている。
【0022】
また、第2収容凹部12は、上述した第1収容凹部11に対して段差の上がった位置に形成されており、後述する第2歯車60をその凹み内部に受け入れられるように、第2歯車60の外径よりもひとまわり大きな外形をもった円筒容器型の凹形状に形成されている。そして、図4に示されるように、第2収容凹部12の中心部には、第2歯車60の軸部61を受け入れて、同軸部61を軸回転可能に支持する第2軸受け孔12Aが形成されている。そして、図2に戻って、第2収容凹部12の第2歯車60の側面と対面する内側面には、円弧状に突出した第2軸受け突起12Bが形成されている。
【0023】
この第2軸受け突起12Bは、図4に示されるように、これと対面する第2歯車60の側面に凹み形成された環状の凹部63内に差し込まれることで、第2歯車60を軸回転可能に支持する機能部位となっている。次に、図2に戻って、蓋ケース20について説明する。この蓋ケース20は、上述した本体ケース10の第1収容凹部11と対面する内側面に円弧状に突出して形成された第1軸受け突起21Aと、この第1軸受け突起21Aに囲まれた中心部に形成された第1軸受け孔21Bと、本体ケース10の第2収容凹部12と対面する内側面に貫通形成された第2軸受け孔22Aと、本体ケース10のネジ締め口14・・に合わせられてネジ締めされて本体ケース10に一体的に締結固定されるネジ締め口24・・とを有した形状に形成されている。
【0024】
上記した第1軸受け突起21Aは、上述した本体ケース10の第1収容凹部11内にセットされる第1歯車40の平歯車42を受け入れて、第1歯車40を軸回転可能に支持する機能部位となっている。また、第1軸受け孔21Bは、前述した丸棒状の支軸50の他端部を受け入れて、同端部を軸回転可能に支持する機能部位となっている。また、第2軸受け孔22Aは、本体ケース10の第2収容凹部12内にセットされる第2歯車60の軸部62を受け入れて、第2歯車60を軸回転可能に支持する機能部位となっている。
【0025】
続いて、図2に戻って、上記した本体ケース10と蓋ケース20との間にセットされる各歯車部品や軸部品の構成について説明する。先ず、ウォーム30の構成について説明する。すなわち、ウォーム30は、金属製の丸棒部材にネジ状の歯31が切られた周知の構成となっている。このウォーム30は、本体ケース10の台座部13の中心部から真っ直ぐに貫通形成された差込口13A内に差し込まれることにより、上記したネジ状に切られた歯31が本体ケース10の開口窓11Bに露呈した状態となって本体ケース10にセットされるようになっている。
【0026】
上記したウォーム30には、その軸の上端部に、電気モータ4Aの出力軸に直結されて動力伝達を受けるフレキシブルワイヤ32が差し込まれて回転方向に一体的な状態に装着されている。このフレキシブルワイヤ32は、細い鋼材が角筒状に巻かれて形成されており、ウォーム30や電気モータ4Aに差し込まれて連結される両端部分が硬く巻かれ、その間の軸方向の中央部分が首振り状に撓めるように軟らかく巻かれて形成されている。
【0027】
このフレキシブルワイヤ32は、電気モータ4Aの出力軸が、ウォーム30の中心軸に対してある程度位置ずれして組み付けられたとしても、その中央部分を首振りさせることで、この偏心量を吸収して、電気モータ4Aからの回転出力をウォーム30に良好に伝達できるようになっている。次に、第1歯車40の構成について説明する。すなわち、第1歯車40は、上記したウォーム30と噛合して動力伝達を受けるウォームホイール41と、このウォームホイール41よりも小さな外径の平歯車42とが、互いに同軸まわりに一体的に軸回転するように軸方向に並んで形成された構成となっている。
【0028】
上記した第1歯車40は、その中心部に貫通形成された軸孔43内に前述した丸棒状の支軸50が挿通され、この支軸50によって本体ケース10と蓋ケース20とに対して軸回転可能に支持された状態となって組み付けられるようになっている。詳しくは、第1歯車40は、上述した組み付けにより、ウォームホイール41部分が本体ケース10の第1収容凹部11内にセットされ、その歯41Aが開口窓11B内に入り込んでウォーム30の歯31と噛合した状態となって組み付けられるようになっている。
【0029】
また、第1歯車40は、上記した組み付けによって、平歯車42が蓋ケース20の第1軸受け突起21Aによって囲まれた空間内に入り込んだ状態にセットされ、その歯42Aの外周面が第1軸受け突起21Aの内周面によって軸回転可能に外周側から軸受けされて支えられた状態となって組み付けられるようになっている。
【0030】
次に、第2歯車60の構成について説明する。この第2歯車60は、上述した第1歯車40の平歯車42と噛合して動力伝達を受ける平歯車として形成されている。この第2歯車60は、図4に示されるように、その中心部に、本体ケース10の第2軸受け孔12A内に差し込まれて軸受けされる軸部61と、蓋ケース20の第2軸受け孔22A内に差し込まれて軸受けされる軸部62とが、それぞれ軸線方向の一方側と他方側とに円筒形状に突出して形成されている。
【0031】
上記した第2歯車60は、上記した一方側の軸部61を本体ケース10の第2軸受け孔12A内に差し込んでセットして、他方側の軸部62を、蓋ケース20を本体ケース10に被せるようにセットして蓋ケース20の第2軸受け孔22A内に差し込んでセットすることにより、本体ケース10と蓋ケース20とに軸回転可能に支持された状態となって組み付けられる。詳しくは、第2歯車60は、上述した組み付けにより、本体ケース10の第2収容凹部12内にセットされた状態となり、その歯64が第1歯車40の平歯車42の歯42Aと噛合した状態となって組み付けられる。
【0032】
また、第2歯車60は、上記した組み付けにより、前述した本体ケース10と対面する側面に凹み形成された環状の凹部63内に、本体ケース10に形成された円弧状に突出した第2軸受け突起12Bが入り込んだ状態となり、この第2軸受け突起12Bによっても軸回転可能に軸受けされて支持された状態となる。ここで、第2歯車60の中心部には、前述した出力軸となるロッド3A(図1参照)が挿通される軸孔65が軸線方向に貫通して形成されている。
【0033】
上記した軸孔65の内周面やロッド3Aの外周面には、互いに嵌合し合うようにセレーション状の溝が切られており、ロッド3Aを軸孔65内に挿通することにより、ロッド3Aが第2歯車60に対して回転方向に一体的となった状態に連結されるようになっている。したがって、以上の組み付けにより、ウォーム30と第1歯車40と第2歯車60とロッド3Aとが、互いに動力伝達可能に噛合した状態となって組み付けられることとなる。
【0034】
これにより、歯車減速機4Bは、電気モータ4Aから出力された回転動力を、ウォーム30とウォームホイール41との間の歯数差や、平歯車42と第2歯車60との間の歯数差によって、それぞれの歯数差に応じた減速比で減速させた状態にしてロッド3Aに出力するようになっている。ところで、図5に示されるように、上記した樹脂成形されて形成された第1歯車40の平歯車42と第2歯車60には、それぞれ、内部に可撓性を有した薄い金属板K1,K2がインサート成形されて一体的に形成されている。
【0035】
上記した第1歯車40の平歯車42にインサートされた金属板K1は、長板状に形成されており、平歯車42の外周部に沿って全周に亘ってひと繋ぎ状に配設されている。詳しくは、金属板K1は、その板面が平歯車42の歯面に向けられて配設されており、各歯42Aの内部と各歯42Aの間の歯底部42Bの内部とを通って平歯車42の全周に亘ってひと繋ぎ状に配されるように折り曲げられて形成されている。より詳しくは、金属板K1は、各歯42Aの内部において、各歯42Aの歯形に沿った形に折り曲げられて形成されており、その板面が各歯42Aの歯面に向けられて配設されている。
【0036】
これにより、上記構成の平歯車42は、その内部にインサートされた金属板K1によって、各歯42Aが撓み変形しにくいように内部側から支えられた構成となっている。一方、第2歯車60にインサートされた金属板K2も、上記した金属板K1と同じように長板状に形成されており、第2歯車60の外周部に沿って全周に亘ってひと繋ぎ状に配設されている。詳しくは、金属板K2は、その板面が第2歯車60の歯面に向けられて配設されており、各歯64の内部と各歯64の間の歯底部64Bの内部とを通って第2歯車60の全周に亘ってひと繋ぎ状に配されるように折り曲げられて形成されている。
【0037】
より詳しくは、金属板K2は、各歯64の内部において、各歯64の歯形に沿った形に折り曲げられて形成されており、その板面が各歯64の歯面に向けられて配設されている。これにより、上記構成の第2歯車60は、その内部にインサートされた金属板K2によって、各歯64が撓み変形しにくいように内部側から支えられた構成となっている。したがって、上記構成の第1歯車40の平歯車42と第2歯車60とは、図1において前述したシートバックの傾動回転を係止させるストッパ構造(前倒れ係止面2Aや後倒れ係止面2Bによるストッパ構造)によって、互いの伝動回転が係止された状態において、その入力側或いは出力側から受ける負荷荷重によって互いの押圧し合っている噛合歯間(歯42Aと歯64との間)に強制的な変形を伴わせる回転方向のクリープ力がかけられても、それらにインサートされた金属板K1,K2によって支えられて、クリープ変形が抑えられて保持されるようになっている。
【0038】
このように、本実施例の歯車減速機4Bによれば、歯車減速機4Bの歯車列を構成する樹脂製の第1歯車40の平歯車42と樹脂製の第2歯車60は、それらの各歯42A,64の内部に可撓性を有した金属板K1,K2がインサート成形されていることにより、これら金属板K1,K2により各歯42A,64が支えられてクリープ変形しにくいように保持される。このように、第1歯車40や第2歯車60の構成(歯車減速機4Bの構成)を大型化することなく、樹脂製の第1歯車40や第2歯車60の各歯42A,64のクリープ変形を抑えられるようにすることができる。
【0039】
また、金属板K1,K2が第1歯車40の各歯42Aや第2歯車60の各歯64の内部で各歯形に沿った形に配置されるように曲げられた形でインサート成形されていることにより、金属板K1,K2によって各歯42A,64のクリープ変形をより効果的に抑止できるように支持させることができる。また、金属板K1,K2が各歯42A,64の内部と各歯42A,64の間の歯底部42B,64Bの内部とを通って第1歯車40や第2歯車60の全周に亘ってひと繋ぎ状に配される一枚の金属板としてそれぞれ形成されていることにより、各歯42A,64のクリープ変形を、各歯42A,64の内部とその近辺とに跨って連続的に配設されている金属板K1,K2によってそれぞれより効果的に抑止することができる。
【0040】
また、各金属板K1,K2は、第1歯車40の各歯42Aや第2歯車60の各歯64の歯厚に比べて、板厚が非常に薄い板状部材として形成されたものとなっているため、第1歯車40や第2歯車60の重量を大きく増大させることなく各歯42A,64の剛性を高められるようにすることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。例えば、本発明の歯車減速機は、車両用シートを昇降させてフロアに対する設置高さを変化させるための駆動装置や、シートバックを中折れ作動させるための駆動装置や、アクティブヘッドレストを作動させるための駆動装置など、車両用シートに関連して設けられる様々な駆動装置の回転出力を減速させるための減速機として適用することができる。
【0042】
また、本発明の歯車減速機は、上記した車両用シートに関連した用途以外にも、歯車列の回転動力伝達によって回転動力を減速させて出力するための様々な用途に用いることができる。また、上記実施例では、樹脂成形された第1歯車40の平歯車42と第2歯車60の双方に金属板K1,K2をインサート成形したものを例示したが、どちらか一方にのみ金属板がインサート成形されたものであってもよい。また、金属製のウォーム30と噛合する樹脂製の第1歯車40のウォームホイール41にも金属板をインサート成形して形成したものとしてもよい。また、金属板をインサート成形する歯車は、平歯車に限定されず、はすば歯車等の他の歯車であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 バックフレーム
1A 支持ブラケット
1B 補強パイプ
2 クッションフレーム
2A 前倒れ係止面
2B 後倒れ係止面
3 リクライニング装置
3A ロッド
4 駆動装置
4A 電気モータ
4B 歯車減速機
10 本体ケース
11 第1収容凹部
11A 第1軸受け孔
11B 開口窓
12 第2収容凹部
12A 第2軸受け孔
12B 第2軸受け突起
13 台座部
13A 差込口
14 ネジ締め口
20 蓋ケース
21A 第1軸受け突起
21B 第1軸受け孔
22A 第2軸受け孔
24 ネジ締め口
30 ウォーム
31 歯
32 フレキシブルワイヤ
40 第1歯車
41 ウォームホイール
41A 歯
42 平歯車
42A 歯
42B 歯底部
43 軸孔
50 支軸
60 第2歯車
61 軸部
62 軸部
63 凹部
64 歯
64B 歯底部
65 軸孔
M 放熱溝
K1 金属板
K2 金属板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車列の回転動力伝達により回転動力を減速させて出力する歯車減速機であって、
前記歯車列を構成する少なくとも一の歯車は、樹脂製とされ、且つ各歯の内部に可撓性を有した金属板がインサート成形されて一体的に形成されており、当該金属板はその板面が前記各歯の歯面に向けられて配置されており、当該金属板により噛合部となる各歯を支えてクリープ変形しにくいように支持する構成となっていることを特徴とする歯車減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車減速機であって、
前記金属板が前記各歯の内部において当該各歯の歯形に沿って配置されるように曲げられた形でインサート成形されていることを特徴とする歯車減速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の歯車減速機であって、
前記金属板が前記各歯の内部と当該各歯の間の歯底部の内部とを通って前記歯車の全周に亘ってひと繋ぎ状に配される一枚の金属板として形成されていることを特徴とする歯車減速機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−17368(P2011−17368A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161802(P2009−161802)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】