説明

段ボール外装用ライナ

【課題】撥水性と防滑性を両立しつつ、印刷適性を同時に確保できる段ボール外装用ライナを提供する。
【解決手段】紙層が3層以上で構成された段ボール外装用ライナであって、少なくとも一方の表面に、撥水剤と多孔質の無機粒子とバインダーとを含む塗工液の塗被層を設け、撥水度がR7(JIS−P8137)以上、滑り角度が25度(JIS−P8147)以上、平滑度が10〜50秒(JIS−P8119)の段ボール外装用ライナを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段ボール外装用ライナ( 以下、単に「外装用ライナ」ともいう) に関するものであり、詳しくは、特に撥水性と防滑性を兼ね備えかつ印刷適性が良好で、食品輸送、保護、 保管用の段ボールケース、紙容器などに好適に使用できる外装用ライナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、鮮魚や青果物などの食品輸送、保護、 保管用の段ボールケース、紙容器などに用いる外装用ライナは耐水性や撥水性が要求される。紙に撥水性を付与するためには、例えば、天然ワックス・石油樹脂エマルジョン、パラフィンワックスエマルジョン、パラフィンワックス・ジルコニウム化合物、合成樹脂・ワックス合成品、合成炭化水素系樹脂・特殊ワックス、特殊フッソ系エマルジョン、変性ワックス、シリコーンオイル、オレフィン系樹脂及びエマルジョン等が使用されている。
【0003】
ところが、これらの撥水剤を塗布して撥水性を持たせたものは、例えば、段ボールケースをトラックで輸送する際や倉庫内でフォークリフトで移動する際に、段ボールケースが非常に滑りやすく、荷崩れが発生するという問題がある。また、段ボールケースへの印刷はその大半が水性インキを使用したフレキソ印刷であることから、段ボールケースへの撥水性の付与と相反し、印刷インキの着肉、乾燥性が悪くなり、段ボールケースの表面に精度の高い印刷や、美粧性を高めた印刷を行うことができないという問題があった。また、製紙会社で巻取りを仕上げる時に、巻取紙が竹の子状になり易いため、特別に帯鉄などでバンド掛けを行わざるを得ない状況となっている。
【0004】
そこで、撥水性を付与しながら防滑性を改善した外装用ライナとして、ガラス転移点が−50〜40℃の高分子ラテックスと撥水剤を混合した混合物に耐摩耗強度を得るための表面強度改良剤を添加した混合物を表面に塗工したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、一対の紙層の中間に合成樹脂エマルジョンから成る防湿層を設けた重層紙を少なくとも一方のライナーに用いた段ボール容器であって、容器の内面又は外面となる表層に、アルミ粉末と白色顔料の少なくとも一方とワックス系などの撥水剤を含有する塗工層を有し、表面の撥水度をR8以上とした保冷段ボール容器も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平7−26495号公報
【特許文献2】特開平9−110081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では確かに防滑性は向上しているものの、その摩擦角度は高くても25度であり、トラックでの輸送や倉庫内でのフォークリフトでの移動における段ボールケースの荷扱いを、撥水加工を施していない一般の段ボールケースと同等に効率的な作業環境を得るためには、なお改善が必要な状況である。
【0007】
また、特許文献2記載の段ボール容器やそのライナーは、表面の撥水度によって結露水の浸透を防止し、防湿層と表面のアルミ粉末や白色顔料による高い熱放射率によって断熱・保冷性を確保するようにしているが、撥水性と防滑性を両立するのは困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、撥水性と防滑性を両立しつつ、印刷適性を同時に確保できる外装用ライナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の外装用ライナは、紙層が3層以上で構成された段ボール外装用ライナであって、少なくとも一方の表面に、撥水剤と多孔質の無機粒子とバインダーを含む塗工層を設け、塗被層表面のJIS−P8137による撥水度をR7以上、JIS−P8147による滑り角度を25度以上、JIS−P8119による平滑度を10〜50秒としたものである。
【0010】
この構成によると、撥水剤と多孔質の無機粒子とを含む塗工層を設けたことにより、撥水剤にて撥水性を確保しつつ無機粒子にて撥水性とは背反関係を持たずに防滑性が確保でき、撥水性と防滑性を両立できる。また、多孔質の無機粒子を用いることにより高いインキの吸収定着性が得られ、良好な印刷適性を確保することができる。
【0011】
JIS−P8137による撥水度をR7以上とするためには、塗工液中に撥水剤は固形分重量%で1〜20%含有されていることが好ましい。より好ましくは3〜12%である。1%未満であると撥水効果が低下し、20%を超えると撥水効果は頭打ちになる。また、過剰な撥水剤は抄紙機の汚れ、紙面の汚れとなり、新たな問題を引き起こす原因となる。
【0012】
バインダーは、固形分重量%で0.6〜10%含有されていることが好ましい。0.6%未満であると表面強度、表面性が低下し印刷適性が悪化する。10%を超えると撥水性が低下する。
【0013】
無機粒子は、シリカを主成分とする無機物質が好適である。含有量は、重量%で0.1〜2.0%含有されていることが好ましい。より好ましくは0.2〜0.6%である。0.1%未満であると防滑性及び印刷適性が低下し、2.0%を超えると撥水性が低下する。無機粒子の平均粒子径は、撥水性と防滑性、印刷適性のバランスを得るためには、平均粒子径が1〜30μm(島津製作所製 レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000J による)の無機粒子が好ましく、3〜15μmの無機粒子がより好ましい。
【0014】
また、無機粒子は、比表面積が100〜400m2 /gであるものが好ましい。比表面積が100m2 /g未満であると防滑性及び印刷適性が低下し、400m2 /gを超えると撥水性が低下する。無機粒子の比表面積、紙表面に粒子状で存在する無機粒子の割合などが、本来相反する撥水性と防滑性とのバランスに影響していると考えられる。これらにより、塗被層表面のJIS−P8137による撥水度をR7以上、JIS−P8147による滑り角度を25度以上、JIS−P8119による平滑度を10〜50秒とすることができ、撥水性と防滑性を両立しつつ、印刷適性も同時に確保できる。
【0015】
また、塗工層における塗工量は、固形分0.1〜1.3g/m2 とすることが好適である。こうすることで、塗工層の表面から無機粒子の一部が突出し、高い防滑性を得ながら撥水性と表面強度、表面性を確保することができる。
【0016】
また、表面層又は裏面層又はその両者の紙層に撥水剤または湿潤紙力増強剤を内添すると、より高い撥水性及び防滑性を有する外装用ライナをることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撥水剤と多孔質の無機粒子とを含む塗被層を設けたことにより、撥水剤にて撥水性を確保しつつ無機粒子にて撥水性とは背反関係を持たずに防滑性が確保できて撥水性と防滑性を両立でき、かつ多孔質の無機粒子にて高いインキの吸収定着性が得られて良好な印刷適性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の外装用ライナとその製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
本発明の外装用ライナは、紙層が3層以上で構成された段ボール外装用ライナであって、少なくとも一方の表面に、撥水剤と多孔質の無機粒子とバインダーを含む塗工液の塗工層を設けたものである。基紙となる外装用ライナは、複数層例えば5層の紙層を有し、その最表層が白色である白ライナーが、化粧印刷などの各種印刷を施すのに好適である。勿論、最表層の紙層が染料で染色したカラーライナーであっても良い。
【0020】
外装用ライナが5層の場合、表層の紙層は、上質紙(LBKP、NBKPを原料として抄造した紙)の白損から成る上白古紙を主原料とする原料パルプを用いて抄造し、2層目の表下層の紙層は、上白古紙とコート紙の白損から成るケント古紙などを適宜配合したものを主原料とする原料パルプを用いて抄造し、3〜5層目の中間層及び裏層の紙層は、紙器製造時に発生する裁落損紙、新聞・雑誌などを原料として抄造した白ボールなどの地券古紙を主原料とする原料パルプを用いて抄造している。このような外装用ライナは、長網多層抄紙機などにより各層の紙層を順次抄き合わせることによって抄造される。外装用ライナの坪量は、120〜300g/m2 程度のものが、鮮魚や青果物などの食品輸送、保護、 保管用の段ボールケース、紙容器などに用いる外装用ライナなどに用いるものとして適している。
【0021】
こうして抄造された外装用ライナの表層上に塗工液が塗工される。塗工液を構成する撥水剤としては、パラフィンワックスを主体したものが好適に用いられる。例えば、パラフィンワックスエマルジョン、天然ワックス・樹脂エマルジョン、パラフィンワックス・ジリコニウム化合物、合成樹脂・ワックス合成品、変性ワックスなどが用いられ、その他にも特殊フッソ系エマルジョン、シリコーンオイル、オレフィン系樹脂などを用いることができる。具体的には、例えば、「WR3908」(星光PMC社製)などが好適に用いられる。
【0022】
本発明でいう多孔質の無機粒子とは、内部に大小さまざまな孔をもつ固体の総称であり、孔のない(つまり無孔質の)固体とは種々異なる性質をもっている。これは単に孔があるためばかりでなく、孔の存在によリ固体構造自体に変化が生じるためであり、また孔の表面の微細構造によって様々な性質に変化すると考えられる。多孔質の無機粒子として、具体的には、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、微粉ケイ酸、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができるが、上記撥水剤に添加混合する多孔質の無機粒子としては、微粉ケイ酸やゼオライト、コロイダルシリカなどが好適に用いられる。特にシリカを主成分とする微粉ケイ酸は、撥水性の低下を抑えながら効果的に防滑性と印刷適性を高めることができる点でより好ましい。
【0023】
一般的に無機粒子の比表面積は0.8〜1700m/g程度まで多種多様な粒子が存在するが、本発明では少なくとも比表面積が50m/g以上の無機粒子を用いる。好ましくは比表面積が100〜400m2 /gの無機粒子が好適である。比表面積が100m2 /g未満になるとインクの吸収が悪くなり、50m/g未満になると印刷インクの吸収性が極端に悪くなるため、インクが外装ライナ表面に染み込まず、泳いだ状態となり、印刷仕上りは実用レベルに達しない。また、比表面積が400m/gを超える場合は、インクの吸水性が良すぎるため、撥水効果が得られず、また、表面のぼこつきが発生するなどの問題が発生する。具体的には、水澤化学工業社製の商品名「ミズカシルP−75」などが好適に用いられる。紙の塗工用顔料や填料として一般的に使用されているカオリンや炭酸カルシウム、タルクは、比表面積が1〜40m2 /gであり、その配合率、配合量に関わらず、撥水性と防滑性、印刷適性のバランスを良好に得ることが難しい。
【0024】
バインダーとしては、澱粉、酸化澱粉及びその変性物、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジェンラテックス、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその変性物などが挙げられる。このうち撥水度の点から親水性である澱粉やポリビニールアルコールなどよりも、疎水性であるスチレンブタジエンラテックスなどが好適である。ラテックスのガラス転移点は−20〜50℃が好ましい。−20℃より低いとコルゲーターでの熱によりラテックスが軟化し、段ボールシートの汚れ、コルゲーターの汚れなどの新たなトラブルを引き起す。50℃より高いと塗被層が硬くなりクッション性が低下し印刷適性が悪くなり、また、段ボールケースに加工すると背割れを起し、この背割れ部分には撥水効果がないため、水が浸透し段ボールケースの強度が低下し段ボールケースの潰れなどの問題を引き起こす。
【0025】
塗工液の組成としては、撥水剤が固形分重量比で1〜20%含有されるものが好ましい。より好ましくは3〜12%である。1%未満であると撥水効果が低下し、20%を超えると撥水効果は頭打ちになり、また、比表面積が100〜400m/gの無機粒子を使用しても防滑効果を得にくくなる。また、過剰な撥水剤は抄紙機の汚れ、紙面の汚れとなり、新たな問題を引き起こす原因となる。無機粒子は重量%で0.1〜2.0%含有されていることが好ましい。より好ましくは0.2〜0.6%である。0.1%未満であると防滑性及び印刷適性が低下し、2.0%を超えると防滑効果は頭打ちになり、また、比表面積が100〜400m/gの無機粒子を使用しても防滑効果を得にくくなる。バインダーは、固形分重量%で0.6〜10%含有されていることが好ましい。0.6%未満であると表面強度、表面性が低下し印刷適性が悪化する。10%を超えると撥水性が低下する。さらに公知の防滑剤を併用してもよい。
【0026】
以上のように調製した塗工液を基紙としての外装用ライナの最表層の表面上にバーコーターなどの塗工設備により0.1〜1.3g/m2 塗工するのが好適である。より好ましくは0.3〜1.1g/m2 である。塗工量が0.1g/m2 未満では、JIS−P8137による撥水度R7以上を確保できず、1.3g/m2 を越えると、上記のような無機粒子の配合率で、表面上に無機粒子の一部が突出して高い防滑性を得るという作用が得難く、JIS−P8147による滑り角度を25度以上確保できなくなるとともに、薬品コストが高くなる。
【0027】
上記塗工液を基紙へ塗工するための塗工装置としては特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工等が適宜使用される。しかしながら、撥水剤のエマルジョンは機械的衝撃に弱いため、例えばカレンダー塗工の場合はカレンダーニップにより撥水剤のエマルジョンが壊れ、これが粕となり、製造工程で汚れ、 更には断紙するなどのトラブルが発生する。したがって、塗工方法はバーコーター、ロッドコーターが好ましい。
【0028】
こうして塗工液を塗工した後、カレンダーにてカレンダー処理行って、JIS−P8119による表面平滑度が10〜50秒となるようにする。原紙を表面平滑化処理するための装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、又はヤンキードライヤー等が適宜使用される。
【実施例】
【0029】
次に、本発明のいくつかの実施例と比較例を説明する。
【0030】
(実施例1)
第1層の表層は上白古紙を主成分とした原料スラリーを用い、第2層の表下層は上白古紙とケント古紙を1:1の重量比で配合したものを主成分とした原料スラリーを用い、第3層〜第5層の中間層及び裏層は地券古紙を主成分とした原料スラリーを用い、これらの第1〜第5層の紙層を抄き合わせ、坪量が250g/m2 の5層構造の外装用ライナを抄造した。こうして抄造した外装用ライナの表層上に次の組成
撥水剤 :「WR3908」(星光PMC社製 固形分30%) 固形分1%
無機粒子 :微粉ケイ酸「ミズカシルP−75」(水澤化学工業製、平均粒子径7μm、 比表面積170m2 /g) 0.3%
バインダー:「PA30244」(日本エーアンドエル社製 固形分48% Tg=−1 ℃ 、スチレンブタジエン系) 固形分5%
を混合し、調製した塗工液をバーコーターにて固形分0.8g/m2 の塗工量で塗工し、その後4段のマシンカレンダーにてカレンダー処理した。カレンダー圧力はスチールロールの自重で行った。
【0031】
(実施例2〜20)
塗工液の組成と塗工量を、表1のように変化させた以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0032】
(実施例21)
無機粒子を、微粉ケイ酸「ミズカシル P−832」(水澤化学工業製、平均粒子径3μm、比表面積50m2 /g)とした以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0033】
(実施例22)
無機粒子を、微粉ケイ酸「ミズカシル P−527」(水澤化学工業製、平均粒子径7μm、比表面積55m2 /g)を粉砕し、平均粒子径1μm、比表面積99m2 /gとしした以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0034】
(実施例23)
無機粒子を、ゼオライト「ファインシール X−12」(トクヤマ社製、平均粒子径10μm、比表面積285m2 /g)とした以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0035】
(実施例24)
無機粒子を微粉ケイ酸「ミズカシル P−78A 」(水澤化学工業製、平均粒子径6μm、比表面積360m2 /g)した以外は、実施例1と同様に段ボール外装用ライナを得た。
【0036】
(実施例25)
バインダーを酸化澱粉とした以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0037】
(実施例26)
バインダーをポリビニールアルコールとした以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0038】
(比較例1〜6)
塗工液の組成と塗工量を、表1のように変化させた以外は、実施例1と同様に外装用ライナを得た。
【0039】
(比較例7)
無機粒子をタルク「Aタルク」(エリエール商工株式会社製、平均粒子径10μm、比表面積4m2 /g)とし、塗工液の組成と塗工量を、表1のように変化させた以外は、実施例3と同様に外装用ライナを得た。
【0040】
(比較例8)
無機粒子を炭酸カルシウム「PX」(白石工業製、固形分52%、平均粒子径1.8μm、比表面積24m2 /g)とし、塗工液の組成と塗工量を、表1のように変化させた以外は、実施例3と同様に外装用ライナを得た。
【0041】
(比較例9)
無機粒子を微粉ケイ酸「Nipsil E−743」(東ソー・シリカ社製、平均粒子径1.5μm、比表面積45m2 /g)した以外は、実施例3と同様に外装用ライナを得た。
【0042】
(比較例10)
無機粒子を微粉ケイ酸「NIPGEL BY−6A1」(東ソー・シリカ社製、平均粒子径6μm、比表面積450m2 /g)とした以外は、実施例3と同様に外装用ライナを得た。
【0043】
(比較例11)
無機粒子を使用しなかった以外は、実施例3と同様に外装用ライナを得た。
【0044】
以上の実施例1〜26及び比較例1〜11の外装用ライナについて、JIS−P8137による撥水度、JIS−P8147による滑り角度、JIS−P8119による平滑度をそれぞれ測定した。また、印刷適性評価を次のようにして行った。
【0045】
JIS−P8129に規定するIGT印刷適性試験機を用い、インクとして、東洋インキ製造株式会社製、「ロックVF」を用いて外装用ライナ表面に印刷を行い、印刷カスレ及びインク吸収状況を目視で確認し、次の評価基準
◎:印刷カスレがなく、インクの吸収は良好であった
○:印刷カスレはないが、インクの吸収が少ないため、薄い印刷仕上がりとなった
△:インクは吸収しているが、カスレが目立つ
×:インクが吸収せずインクが紙表面で泳いでおり、カスレが甚だしい。または、イン クの吸収が多過ぎて、印刷後4時間経過してもインクが乾燥していない状態であっ た
で印刷適性評価を行った。
【0046】
なお、無機粒子の比表面積は、次のようにして測定した。段ボール外装用ライナの表面の塗被層からかみそりで削り取った塗被物を攪拌機で攪拌(20℃、30分)しながらアセトンに溶かし、濾紙で濾過後、乾燥機(100℃)で10分乾燥させた。その後、濾紙上のサンプル1gを取り、Quantachrome社の高速比表面積・細孔径測定装置「NOVA3200」を用いて、ガス吸着法で比表面積の測定を行った。
【0047】
【表1】

上記実施例1〜26及び比較例1〜11について、塗工液の組成と、その固形分重量%、塗工量、滑り角度、撥水度、平滑度、印刷適性評価、及び滑り角度と撥水度、平滑度、印刷適性による総合評価の結果を表1に示した。
【0048】
実施例1〜26では、滑り角度、撥水度、平滑度について所定の条件を満たし、印刷適性評価が良好な結果が得られ、良好な総合評価が得られているが、比較例1〜11では、滑り角度、撥水度、平滑度の何れか1又は複数の条件を満たさず、また印刷適性評価の不良なものがあって、総合評価が不良である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層が3層以上で構成された段ボール外装用ライナにおいて、少なくとも一方の表面に、撥水剤と多孔質の無機粒子とバインダーを含む塗被層を設け、塗被層表面のJIS−P8137による撥水度がR7以上、JIS−P8147による滑り角度が25度以上、JIS−P8119による平滑度が10〜50秒であることを特徴とする段ボール外装用ライナ。
【請求項2】
前記多孔質の無機粒子が、シリカを主成分とする無機物質である請求項1記載の段ボール外装用ライナ。
【請求項3】
前記多孔質の無機粒子の比表面積が、100〜400m/gであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の段ボール外装用ライナ。

【公開番号】特開2007−204081(P2007−204081A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23015(P2006−23015)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】