説明

殺菌システム

【課題】ヒートポンプを適用した場合において、その熱源を殺菌装置における被処理体冷却後の冷却水としながらも、加熱殺菌水の生成ひいてはそれの殺菌装置への供給を安定して行うことが可能な殺菌システムを提供する。
【解決手段】本発明にかかる殺菌システムの構成は、被処理体102を収容し、被処理体の加熱殺菌および冷却を行う殺菌装置110と、被処理体の冷却に用いられる冷却水を貯留する冷却水貯留タンク(第1冷却水貯留タンク120)と、保温機能を有し、殺菌装置において昇温した冷却水を回収し一時的に貯留する冷却水回収タンク140と、冷却水回収タンクに貯留された冷却水を熱源として、被処理体の加熱殺菌に用いられる加熱殺菌水を生成するヒートポンプ150と、冷却水回収タンクに貯留された冷却水のヒートポンプへの供給量を制御する供給量制御手段170と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体の加熱殺菌処理、および加熱殺菌された被処理体の冷却処理を行う殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物を生産する食品工場や飲料工場等の工場では、内容物である飲食物を缶やペットボトル等の容器に充填した後に、その容器ごと内容物を加熱殺菌することがある。またそれらの容器は、内容物が充填される前に加熱殺菌されることもある。このような加熱殺菌に用いられる装置としては、例えば特許文献1に開示されている加熱殺菌装置を例示することができる。
【0003】
特許文献1では、被殺菌物(食品を収容した包装容器)を、耐圧容器からなる殺菌槽内に収容し、かかる殺菌槽内を高温高圧に保ちながら熱水や高温の蒸気を使用して加熱し、殺菌温度を所定時間維持することにより被殺菌物が加熱殺菌される。そして、加熱殺菌が終了したら、高温になっている被殺菌物を、冷却水を噴射することにより冷却する。特に特許文献1では、1秒以下の冷却水の噴射である短時間噴射と、冷却水噴射時間よりも長い時間の噴射休止を繰り返しながら、被殺菌物の冷却を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−94051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1では、被殺菌物(以下、被処理体と称する。)の加熱殺菌において熱水や高温の蒸気(以下、加熱殺菌水と称する。)を加熱媒体として用いているため、かかる加熱殺菌水を生成するボイラ等が必然的に必要となる。しかし、ボイラのように化石燃料を燃焼させる設備であると、加熱殺菌水生成時(燃焼時)にCOが発生するため環境負荷への観点において好ましくない。また、ボイラでは加熱殺菌水を生成するための化石燃料に莫大なランニングコストを要するため、コスト削減も要請されている。
【0006】
更に、殺菌装置では冷却水を用いて加熱殺菌後の被処理体を冷却しているが、この冷却によって昇温した冷却水はドレンとして排出されるため、ドレンが持つ熱量分のエネルギーロスが生じている。これに加えて、ドレンとして排出される冷却水の排出先が、微生物を含有する活性汚泥を用いて浄化処理を行う浄化槽であった場合、そこに高温の冷却水を排出すると活性汚泥中の微生物が死滅するおそれがある。したがって、この場合には、ドレンとして排出された冷却水を、浄化槽に排出する前に所定温度まで冷却しなければならず冷熱も必要となる。故に、従来の殺菌システムでは、システム全体への温熱および冷熱の投入エネルギー量が大きくなり、エネルギー効率が優れているとは言い難い。
【0007】
そこで近年、加熱殺菌水を生成するための熱源として、従来のボイラに替えてヒートポンプの採用が検討されている。ヒートポンプは、液体の一次冷媒(熱媒体)が、膨張して気化するときに周囲の熱を吸収し、凝縮して液化するときに熱を発する性質を利用している。これにより、殺菌システムにおける化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。またヒートポンプであれば、加熱殺菌後の被処理体の冷却に用いられた冷却水の熱を吸熱し、その熱を加熱殺菌水の生成に利用することが想定できる(廃熱利用)。したがって、被処理体の冷却に用いられた冷却水の冷却を行いつつ、その冷却によって得た熱が廃熱となることなく有効利用されるため、殺菌システムにおけるエネルギー効率の向上が図られる。
【0008】
上記のように熱源としてヒートポンプを用いれば様々な利点を享受できるものの、既存のボイラをヒートポンプに置き換えるには未だ解決するべき課題がある。詳細には、殺菌装置がバッチ方式のレトルト殺菌装置である場合には、加熱殺菌と冷却が交互に行われる。したがって、加熱が必要なときにヒートポンプの熱源となる冷却水が供給されないことになり、廃熱利用ができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、ヒートポンプを適用した場合において、その熱源を殺菌装置における被処理体冷却後の冷却水としながらも、加熱殺菌水の生成ひいてはそれの殺菌装置への供給を安定して行うことが可能な殺菌システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる殺菌システムの代表的な構成は、被処理体の加熱殺菌処理、および加熱殺菌された被処理体の冷却処理を行う殺菌システムであって、被処理体を収容し、被処理体の加熱殺菌および冷却を行う殺菌装置と、殺菌装置において被処理体の冷却に用いられる冷却水を貯留する冷却水貯留タンクと、保温機能を有し、殺菌装置において昇温した冷却水を回収し一時的に貯留する冷却水回収タンクと、冷却水回収タンクに貯留された冷却水を熱源として、殺菌装置において被処理体の加熱殺菌に用いられる加熱殺菌水を生成するヒートポンプと、冷却水回収タンクとヒートポンプとの間に設置され、冷却水回収タンクに貯留された冷却水のヒートポンプへの供給量を制御する供給量制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、殺菌装置において被処理体の冷却に用いられることにより昇温した冷却水は、冷却水回収タンクに回収され、そこで保温された状態で一時的に貯留される。そして、貯留された冷却水は、供給量制御手段によって流量制御されながらヒートポンプに供給される。したがって、被処理体冷却後の冷却水をヒートポンプの安定的な熱源とすることができるため、ヒートポンプにおける加熱殺菌水の生成、ひいては殺菌装置への加熱殺菌水の供給を確実に行うことが可能となる。また冷却水回収タンクに回収された冷却水は、ヒートポンプにおける加熱殺菌水の生成時に吸熱されて(冷却されて)低温になるため、従来冷却水の冷却に必要であった冷熱源、例えば工業用水の使用量ひいてはそのコストの削減が図れる。
【0012】
上記の殺菌装置は2段冷却式であって、当該殺菌システムは、冷却水よりも温度が低い第2冷却水を貯留する第2冷却水貯留タンクを更に備え、1段目の冷却を冷却水によって行い、2段目の冷却を第2冷却水によって行い、殺菌装置において昇温した第2冷却水を、1段目の冷却のために冷却水貯留タンクに貯留するとよい。
【0013】
加熱殺菌後の被処理体の温度が著しく高い場合や、目標とする冷却温度が著しく低い場合、上述した冷却水による1回の冷却のみでは、被処理体の温度がかかる冷却温度に到達しないことがある。これらの場合、上述した冷却水貯留タンクに加えて第2冷却水貯留タンクを設置し、殺菌装置では被処理体を2段階で冷却することとなる。従来の2段冷却式の殺菌装置では、冷却水貯留タンクに所定温度の水を供給し、第2冷却水貯留タンクには第2所定温度の水を供給しなくてならない、すなわち2つの異なる温度の水を生成しなくてはならず、且つ冷却水貯留タンクおよび第2冷却水貯留タンクにおいて大量の水が必要であった。
【0014】
そこで本発明では、殺菌装置において被処理体の冷却に用いられることにより昇温した第2冷却水を、1段目の冷却のために冷却水貯留タンクに貯留する。これにより、貯留された第2冷却水を、1段目の冷却に用いる冷却水として再利用することができる。したがって、1段目の冷却に用いる冷却水の生成に要するランニングコストや、殺菌システムにおいて冷却水および第2冷却水に要する水量を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒートポンプを適用した場合において、その熱源を殺菌装置における被処理体冷却後の冷却水としながらも、加熱殺菌水の生成ひいてはそれの殺菌装置への供給を安定して行うことが可能な殺菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す図である。
【図2】第2実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す図である。
【図3】第3実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す概略図である。図1に示す殺菌システム100は、被処理体102の加熱殺菌処理、および加熱殺菌された被処理体102の冷却処理を行う。被処理体102としては、缶や瓶、ペットボトル等の容器類や、かかる容器類に内容物が充填された製品を例示することができる。
【0019】
殺菌システム100において、充填工程等の前工程を終えた被処理体102は、台車102a等に整列または積重させられた状態で殺菌装置110に収容され、加熱殺菌および冷却が行われる。殺菌装置110には散水手段110aが設けられていて、この散水手段110aから、後述するヒートポンプ150において生成された加熱殺菌水を散水することにより被処理体102の加熱殺菌が行われる。また散水手段110aから、冷却水貯留タンク(後述する第1冷却水貯留タンク120)からの冷却水(第1冷却水)や、第2冷却水貯留タンク130からの第2冷却水を散水することにより、加熱殺菌後の被処理体102の冷却が行われる。なお、これらの詳細については後述する。
【0020】
冷却水貯留タンク(以下、混同を避けるため、第1冷却水貯留タンク120と称する。)は、殺菌装置110において被処理体102の冷却に用いられる冷却水(以下、第1冷却水と称する。)を貯留する。第1冷却水貯留タンク120は、第1冷却水供給経路122によって殺菌装置110に接続されている。これにより、第1冷却水供給経路122に設けられたポンプ122aを動力として、第1冷却水貯留タンク120に貯留された第1冷却水が殺菌装置110に供給され、散水手段110aから散水される。
【0021】
また本実施形態では、殺菌システム100は、第1冷却水貯留タンク120に加えて第2冷却水貯留タンク130を更に備える。第2冷却水貯留タンク130は、第1冷却水(冷却水)よりも温度が低い第2冷却水を貯留する。第2冷却水貯留タンク130は、第2冷却水供給経路132によって殺菌装置110に接続されている。これにより、第2冷却水供給経路132に設けられたポンプ132aを動力として、第2冷却水貯留タンク130に貯留された第2冷却水が殺菌装置110に供給され、散水手段110aから散水される。
【0022】
すなわち、本実施形態の殺菌装置110では、被処理体102の、1段目の冷却を第1冷却水によって行い、2段目の冷却を第2冷却水によって行う2段冷却式を採用している。これにより、加熱殺菌後の被処理体102の温度が著しく高い場合や、目標とする冷却温度が著しく低い場合等においても、被処理体102をかかる冷却温度まで確実に冷却することが可能となる。
【0023】
殺菌装置110において、加熱殺菌後の被処理体102の冷却に用いられた冷却水、すなわち殺菌装置110において昇温した冷却水は、第1冷却水回収経路112を通じて冷却水回収タンク140に回収される。冷却水回収タンク140は、保温機能を有し、回収された冷却水を一時的に貯留する。
【0024】
ここで、殺菌システム100は2段冷却式であるため、殺菌装置110には、第1冷却水貯留タンク120からの第1冷却水と、第2冷却水貯留タンク130からの第2冷却水が供給される。これらのうち、本実施形態では、殺菌装置110において被処理体102の冷却により昇温した第2冷却水を、第2冷却水回収経路114を通じて回収し、第1冷却水貯留タンク120(冷却水貯留タンク)に貯留する。これにより、第1冷却水貯留タンク120に貯留された第2冷却水を、1段目の冷却に用いる冷却水、すなわち第1冷却水として再利用することができる。
【0025】
以下、理解を容易にするために、殺菌装置110において加熱殺菌後の温度が123℃の被処理体102を40℃まで冷却するときに、50℃の第1冷却水および20℃の第2冷却水を用いる場合を例示して説明する。なお、この数値は例示にすぎず、これに限定するものではない。
【0026】
上述したように、加熱殺菌後の被処理体102は、まず第1冷却水貯留タンク120に貯留された50℃の第1冷却水により1段目の冷却が行われる。そして、1段目の冷却が終了したら、第2冷却水貯留タンク130に貯留された20℃の第2冷却水により2段目の冷却が行われる。このとき、被処理体102の冷却により昇温した第2冷却水の温度が50℃に達すると、これはすなわち第1冷却水に定められた温度であるため、その昇温した第2冷却水は1段目の冷却に使用可能となる。
【0027】
したがって、殺菌装置110において昇温した第2冷却水を回収して第1冷却水貯留タンク120に貯留すれば、その第2冷却水を第1冷却水として再利用可能し、第1冷却水の生成に要するランニングコストを削減することができる。また第2冷却水を再利用することにより、第1冷却水に要する水の量が減るためそのコストも削減することができ、且つ排水の量も減るため排水処理に要するコストも削減することが可能となる。
【0028】
一方、殺菌装置110において加熱殺菌後の温度が123℃の被処理体102を40℃まで冷却するとき、被処理体102の冷却により昇温した第1冷却水の温度は50℃から80℃となる。したがって、殺菌装置110において昇温した第1冷却水は、第1冷却水貯留タンク120ではなく、第1冷却水回収経路112を通じて冷却水回収タンク140に回収される。すなわち、本実施形態では、2段冷却に用いられた冷却水のうち、第2冷却水を第1冷却水貯留タンク120に、第1冷却水を冷却水回収タンク140に回収している。そして、冷却水回収タンク140に回収された第1冷却水は、ポンプ142aを動力として回収冷却水供給経路142を通じてヒートポンプ150に供給される。
【0029】
ヒートポンプ150は、第1冷却水回収経路112を通じて回収され冷却水回収タンク140に貯留された第1冷却水(以下、回収冷却水と称する。)を熱源として、殺菌装置110において被処理体102の加熱殺菌に用いられる加熱殺菌水を生成する。詳細には、ヒートポンプ150は、内部の一次冷媒循環経路150aに一次冷媒が循環していて、かかる一次冷媒循環経路150a上に、蒸発器152、圧縮手段154、凝縮器156および膨張手段158が設けられている。
【0030】
蒸発器152は、一次冷媒と、回収冷却水との熱交換を行う。この熱交換により、一次冷媒は、殺菌装置110における被処理体102の冷却によって回収冷却水(第1冷却水)が得た熱を吸熱して蒸発し、回収冷却水は一次冷媒に放熱して冷却される。そして、かかる冷却により低温となった回収冷却水は、冷却水排出経路144によってドレンとして系外に排出される。
【0031】
上記の回収冷却水の排出先は、微生物を含有する活性汚泥を用いて浄化処理を行う浄化槽(不図示)であることがある。この場合、高温の冷却水をそのまま排出すると活性汚泥中の微生物が死滅するおそれがある。したがって、浄化槽に排出する前に冷却水を所定温度まで冷却しなければならず、その冷却設備や冷媒にコストを要していた。これに対し、本実施形態では回収冷却水はヒートポンプ150での熱交換により冷却されるため、その熱交換後はそのまま浄化槽に排出することが可能である。これにより、上述したコストの削減が図れる。
【0032】
一方、ヒートポンプ150の蒸発器152での熱交換後の一次冷媒は、圧縮手段154において電力を利用して圧縮されることにより高圧状態となって高熱を発する。そして、圧縮手段154で圧縮された一次冷媒は、凝縮器156において、加熱殺菌水循環経路160を循環する加熱殺菌水との熱交換を行う。
【0033】
加熱殺菌水循環経路160は、加熱殺菌水往き経路162および加熱殺菌水戻り経路164とから構成される。凝縮器156では、殺菌装置110における被処理体102の加熱殺菌後の加熱殺菌水が加熱殺菌水戻り経路164を通じて供給され、一次冷媒は、殺菌装置110での加熱殺菌により温度が低下した加熱殺菌水に放熱して凝縮する。凝縮後の一次冷媒は、膨張手段158において減圧状態とされて膨張冷却された後、再度蒸発器152における第1冷却水との熱交換を行う。
【0034】
一方、凝縮器156における一次冷媒との熱交換により、加熱殺菌水戻り経路164からの加熱殺菌水は一次冷媒から吸熱して加熱され高温になる。そして、高温になった加熱殺菌水は、加熱殺菌水往き経路162によって殺菌装置110に供給され、被処理体102の加熱殺菌に再度用いられる。
【0035】
このように、本実施形態では、殺菌装置110において加熱殺菌に用いられた加熱殺菌水をヒートポンプ150で加熱して、再び加熱殺菌可能な温度まで高めている。すなわち加熱殺菌水を循環利用しているため、ヒートポンプ150において新たな水を加熱する場合よりも効率的に加熱殺菌水を生成することができる。
【0036】
ただし、上記構成は一例であり、これに限定するものではない。例えば、極めて高い衛生レベルが求められる場合等、加熱殺菌水の循環利用が好ましくない場合には、殺菌装置110において加熱殺菌に用いられた加熱殺菌水をドレンとして系外に排出し、ヒートポンプ150では新たな水を加熱することにより加熱殺菌水を生成してもよい。また殺菌装置110において加熱殺菌に用いられた加熱殺菌水を、第1冷却水回収経路112を通じて冷却水回収タンク140に回収し、回収冷却水供給経路142によってヒートポンプ150に供給してその熱源とすることも可能である。
【0037】
上述したようにヒートポンプ150を採用することにより、被処理体102を冷却後の第1冷却水の熱を有効利用することができるため、エネルギーロスを削減し、殺菌システム100全体のエネルギー効率向上を図ることができる。また殺菌システム100における化石燃料の使用量の削減を図ることができ、ランニングコストおよびCO2排出量を抑制することが可能となる。
【0038】
ここで、殺菌装置110は加熱殺菌と冷却が交互に行われるバッチ方式であるため、従来の装置構成では、加熱が必要なとき(加熱殺菌水の生成時)にヒートポンプ150の熱源となる冷却水が供給されないという問題があった。これに対し本実施形態では、上述したように、加熱殺菌後の被処理体102の冷却に用いられた第1冷却水(殺菌装置110において昇温した冷却水)を冷却水回収タンク140に回収して一時的に貯留している。冷却水回収タンク140は保温機能を有するため、回収された第1冷却水(回収冷却水)の温度は所定時間保持される。これにより、殺菌装置110において被処理体102の加熱殺菌が行われている場合であっても、換言すれば、殺菌システム100において第1冷却水が消費されておらずヒートポンプ150へのその供給がない場合であっても、冷却水回収タンク140において保温されながら貯留された第1冷却水をヒートポンプ150に供給することが可能となる。
【0039】
更に本実施形態においては、冷却水回収タンク140とヒートポンプ150との間に供給量制御手段170を設置している。供給量制御手段170は、冷却水回収タンク140に貯留された第1冷却水(回収冷却水)のヒートポンプ150への供給量を制御する。これにより、回収冷却水は、流量制御されながらヒートポンプ150に安定供給されるため、被処理体冷却後の第1冷却水をヒートポンプ150の安定的な熱源とすることができる。したがって、ヒートポンプ150における加熱殺菌水の生成、ひいては殺菌装置110への加熱殺菌水の供給を確実に行うことが可能となり、殺菌システム100へのヒートポンプ導入の促進が図られる。
【0040】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す図である。なお、第1実施形態の殺菌システム100の構成要素と実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図2に示す殺菌システム200では、ヒートポンプ150の一次冷媒と、冷却水回収タンク140からの第1冷却水および殺菌装置110からの加熱殺菌水とを間接的に熱交換させている。このような構成であっても、上述した殺菌システム100と同様の利点を得ることができる。また殺菌システム200のように間接熱交換にすることにより、以下に説明する利点が得られる。
【0042】
詳細には、本実施形態では、冷却水回収タンク140に貯留された第1冷却水を送出する回収冷却水供給経路142上に冷却側熱交換器210が設置されている。冷却側熱交換器210には、ヒートポンプ150の蒸発器152との間に冷却側二次冷媒を循環させる冷却側二次冷媒循環経路212が接続されている。これにより、冷却水回収タンク140からの第1冷却水は、冷却側熱交換器210において冷却側二次冷媒と熱交換し、それに放熱して冷却される。そして、その熱交換により吸熱した冷却側二次冷媒が、ヒートポンプ150の蒸発器152において放熱することにより一次冷媒が加熱される。
【0043】
したがって、仮に冷却側熱交換器210を、従来の殺菌システムにおいて系外に排出する前の冷却水を冷却していた冷却器と捉えれば、上記構成により、既設の冷却側熱交換器210の取り外しや改造を有することなく、それを有効活用しながら殺菌システム100へヒートポンプ150を適用することが可能となる。
【0044】
また本実施形態においては、加熱殺菌水循環経路160上すなわち加熱殺菌水往き経路162と加熱殺菌水戻り経路164との間に加熱側熱交換器220が設置されている。加熱側熱交換器220には、ヒートポンプ150の凝縮器156との間に加熱側二次冷媒を循環させる加熱側二次冷媒循環経路222が接続されている。かかる構成では、加熱側二次冷媒循環経路222を循環する二次冷媒は、ヒートポンプ150の凝縮器156において一次冷媒と熱交換し、それから吸熱して加熱される。
【0045】
そして、殺菌装置110からの加熱殺菌後の加熱殺菌水が、凝縮器156で加熱された加熱側二次冷媒と加熱側熱交換器220において熱交換することにより、加熱側二次冷媒の熱が加熱殺菌水に放熱され、加熱殺菌水は吸熱して加熱される。これにより、加熱殺菌水は再び加熱殺菌可能な温度に到達し、加熱殺菌水往き経路162を通じて殺菌装置110に供給される。このように、加熱殺菌水と一次冷媒とを間接熱交換にすることより、加熱殺菌水がヒートポンプ150内部を経由しないため、その衛生性をより向上させることが可能となる。
【0046】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態にかかる殺菌システムの構成を示す図である。なお、上述した殺菌システム100および200の構成要素と実質的に同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図3に示す殺菌システム300では、殺菌システム200の加熱側熱交換器220に替えて、殺菌装置110における加熱殺菌後の加熱殺菌水を貯留する加熱水貯留タンク330を設けている。これにより、加熱側二次冷媒循環経路222を循環する加熱側二次冷媒によって、殺菌装置110での加熱殺菌により低温になった加熱殺菌水を加熱水貯留タンク330に貯留しながら加熱することができる。したがって、殺菌装置110において加熱殺菌水が必要になったときに、加熱水貯留タンク330に貯留された高温の加熱殺菌水を迅速に供給することが可能となる。
【0048】
なお、上述した第1実施形態の殺菌システム100、第2実施形態の殺菌システム200および第3実施形態の殺菌システム300のいずれにおいても、殺菌装置110が1台設置されている場合を例示したが、これに限定するものではなく、殺菌装置110の数は任意に設定することが可能である。また本実施形態では2段冷却式の殺菌装置110を例示したが、これにおいても限定されず、殺菌装置110は、1段冷却式や3段以上の多段冷却式であってもよく、これらの場合は段数に応じて冷却水貯留タンクの数が変更されることは言うまでもない。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、被処理体の加熱殺菌処理、および該加熱殺菌された被処理体の冷却処理を行う殺菌システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100…殺菌システム、102…被処理体、102a…台車、110…殺菌装置、110a…散水手段、112…第1冷却水回収経路、114…第2冷却水回収経路、120…第1冷却水貯留タンク、122…第1冷却水供給経路、122a…ポンプ、130…第2冷却水貯留タンク、132…第2冷却水供給経路、132a…ポンプ、140…冷却水回収タンク、142…回収冷却水供給経路、142a…ポンプ、144…冷却水排出経路、150…ヒートポンプ、150a…一次冷媒循環経路、152…蒸発器、154…圧縮手段、156…凝縮器、158…膨張手段、160…加熱殺菌水循環経路、162…加熱殺菌水往き経路、164…加熱殺菌水戻り経路、170…供給量制御手段、200…殺菌システム、210…冷却側熱交換器、220…加熱側熱交換器、222…加熱側二次冷媒循環経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の加熱殺菌処理、および該加熱殺菌された被処理体の冷却処理を行う殺菌システムであって、
前記被処理体を収容し、該被処理体の加熱殺菌および冷却を行う殺菌装置と、
前記殺菌装置において前記被処理体の冷却に用いられる冷却水を貯留する冷却水貯留タンクと、
保温機能を有し、前記殺菌装置において昇温した前記冷却水を回収し一時的に貯留する冷却水回収タンクと、
前記冷却水回収タンクに貯留された冷却水を熱源として、前記殺菌装置において前記被処理体の加熱殺菌に用いられる加熱殺菌水を生成するヒートポンプと、
前記冷却水回収タンクと前記ヒートポンプとの間に設置され、該冷却水回収タンクに貯留された冷却水の該ヒートポンプへの供給量を制御する供給量制御手段と、
を備えることを特徴とする殺菌システム。
【請求項2】
前記殺菌装置は2段冷却式であって、
当該殺菌システムは、前記冷却水よりも温度が低い第2冷却水を貯留する第2冷却水貯留タンクを更に備え、
1段目の冷却を前記冷却水によって行い、
2段目の冷却を前記第2冷却水によって行い、
前記殺菌装置において昇温した前記第2冷却水を、前記1段目の冷却のために前記冷却水貯留タンクに貯留することを特徴とする請求項1に記載の殺菌システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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