説明

殺菌処理ユニットパック入りの風味をつけたサトウキビジュース

18〜20%の可溶性固体を含有し、適度に希釈した後に殺菌ユニットパックに保存することが可能な、風味をつけたサトウキビジュースの保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウキビジュースの保存方法に関する。更に詳細には、本発明方法は、殺菌処理ユニットパック入りの風味をつけたサトウキビジュースの保存方法に関する。本発明方法によれば、18〜20%の可溶性固体を含有するサトウキビジュースは、適度に希釈された後に保存されてもよい。本製品は、天然の植物材料から混じりけ無しに産出され、消費者に対して健康上の恩恵を与える。そのほのかな香気をもつ本発明のジュースは、清涼飲料であり、消費者によって合成的な風味飲料よりも一層好まれている。
【背景技術】
【0002】
インドは、サトウキビの原産地であり、そしてブラジルに次ぐ世界第二の産出国である。現在、インドは、400万ヘクタールの面積に、約2億8000万トンのサトウキビを産出する。その略10〜12%が、サトウキビジュースの生産に利用されている。
【0003】
サトウキビを圧搾してジュースが得られることは周知の事実であり、そしてインドでは、消費者に対して、この生ジュースがそのまま、あるいは売り手/呼び売り商人によってグラス内のライムジュース及び/又は新鮮なジンジャーエキスが添加されて売られていることが普通である。この商取引において遭遇する重要な問題は、サトウキビの不適当な洗浄や最終製品の誤った取り扱いに起因して起こる、多くの微生物でジュースが汚染される結果となる衛生学の欠如である。生のサトウキビジュースには、炭水化物が豊富に含まれ、低酸性食品であるから、腐敗バクテリアやまた病原性バクテリアの酵母菌の生長を受け易い。サルネモラ(Salmonella)、エス・オウレス(S.aureus)、シー・ペルフリンゲンス(C.perfringens)のような病原体は、4.6を超えるpH下で、生長及び増殖することができる。これらバクテリアによる生ジュースの汚染は、食品取り扱い業者、使用される設備又はジュースが製造される環境によって起こり得る。かかる新鮮な圧搾ジュースは、それが極めて速やかに醗酵することが知られているので、数時間でさえ保存することができない。
【0004】
サトウキビジュースの保存法を開発する試みは、多くの人々によってなされてきた。しかしながら、その製造及び何らかのパッキング材料の形態での商取引に関しては、現在のところ、未だ、知識/情報が全く無い。
【0005】
CFTRI法(Shankaranarayama, M.L.、Abraham, K.O. 及び Raghavan, B. 等著のCFTRI年報、1986〜1987年、第70頁)を参照すると、そこでは、当該ジュースが、70℃下で、10分間の低音殺菌に付されている。この製品の欠点は、褐色化や異風味の生成があることであり、そのため消費者に受け入れられなかった。
【0006】
Mann & Singh(Mann, R.S. 及び Singh, S. 等著の Indian Farming(インドの農業)、第37巻、15号、1988年)を参照すると、そこでは、クエン酸と塩を含有する希釈されたサトウキビジュースが、消費者に係る有害作用を克服するために低音殺菌されている。この方法の欠点は、クラスII級の防腐剤と低い低音殺菌温度が欠如しているため、結果的に、冷蔵温度下であっても速やかに腐敗してしまうことである。
【0007】
Bhupinder等(Bhupinder, K.、Sehgal, V.K.、Sekhon, K.S. 及びSharma,K. 等著の Proc II IFCON, CFTRI、1988年、105頁)を参照すると、そこでは、即席の瓶詰めされたサトウキビジュース飲料が開発されている。この方法の欠点は、当該飲料中にクエン酸が含まれず、また、低温殺菌も80℃で、10分間行っているため、飲料の保存が不充分であることである。また、これはパック内殺菌であり、殺菌処理ユニットパックでないため、本発明とは異なる。
【0008】
また、Bhupinder等(Bhupinder, K.、Sharma, K.P. 及び Harinder, K. 等著の Int. J Trop Agric(熱帯農業協会誌)第9号、128頁、1991年)を参照すると、そこでは、上記方法が、僅かに、メタ重亜硫酸カリウム(二酸化硫黄70ppm)が添加され、更に、瓶詰の後に30分間殺菌されていることの点で変更されている。この方法の欠点は、殺菌時間が長くなっているため、結果として風味の低下が起こっている。
【0009】
1分間に85℃まで当該ジュースを直接加熱することを含むその他の方法(Sivasubramanian, G. 及び Pai, J.S.等著のInd. Food Packer(工業食品包装機)、第48(2)巻、第XLVIII(2)号、1994年)を参照する。しかしながら、得られる製品は、保存時に風味が消失している。
【0010】
入手可能なサトウキビジュースに関する19件の特許のうち、唯一1件のみが、サトウキビジュース系の果実ジュース及び当該ジュースを含む飲料の製造方法(L. Fahrasmane & M. Catherine, WO2000/0000765、2000年10月5日/2000年3月27日)と関係している。当該発明は、乾燥圧縮した未加工のサトウキビ抽出物を得るための少なくとも一の接線濾過工程からなる。また、もう1件のインド特許も、「サトウキビジュース(純正)の保存寿命を改善した保存方法」(K.P. Sharma、184435、2000年8月26日)なる発明の名称で出願されている。
【0011】
上記引用した文献から、殺菌処理ユニットパック入りの風味をつけたサトウキビジュースに関する特許及び公開情報は、全く存在しないことが明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主たる目的は、殺菌処理ユニットパック入りの風味をつけたサトウキビジュースの保存方法を提供することにある。
【0013】
本発明のその他の目的は、サトウキビジュースに配合してより良い香りと口内感覚を与えることが可能なジンジャーとライム/レモンからなる相溶性の風味配合剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明によれば、風味をつけたサトウキビジュースの製造方法、及び殺菌処理ユニットパック入りの風味をつけたサトウキビジュースの保存方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、風味をつけたサトウキビジュースの保存方法が提供され、この方法には以下の工程:
a) 0.1重量%の重亜硫酸カリウム及び0.01重量%のクエン酸を含む水中に、2〜4時間、サトウキビを浸漬する工程、
b) 工程(a)で浸漬したサトウキビを洗浄し、それを圧搾して、ブリックス濃度18〜20°を有するサトウキビジュースを得、このサトウキビジュースを濾過する工程、
c) 工程(b)で濾過したサトウキビジュースの総固体含有量を、軟飲料水を加えることによってブリックス濃度10〜16°に調整する工程、
d) 工程(c)のサトウキビジュースを、0.1〜0.3重量%のクエン酸及び0.01〜0.03重量%のクエン酸ナトリウムを加えることによって酸性にする工程、
e) 工程(d)で酸性にしたサトウキビジュースに、0.05〜0.20重量%のジンジャー含油樹脂及び/又は0.01〜0.05重量%のライムとレモンの精油からなる風味配合剤を加えて、風味をつけたサトウキビジュースを得る工程、
f) 工程(e)の風味をつけたサトウキビジュースを混合し、それを90〜110℃下で、30〜180秒間低温殺菌して、風味をつけたサトウキビジュースを得、これを殺菌処理ユニットパックに充填する工程、
が含まれる。
【0016】
本発明の一実施態様では、工程(b)において、当該サトウキビが、圧搾される前に淡水で洗浄される。
【0017】
本発明のその他の実施態様では、工程(b)において、当該サトウキビが、機械装置を用いて圧搾される。
【0018】
本発明の更なるその他の実施態様では、工程(b)において、当該サトウキビジュースが、モスリン布を用いて濾過される。
【0019】
本発明の更なるその他の実施態様では、工程(c)において、当該サトウキビジュースが、飲料水で希釈されて15%の甘味に調整される。
【0020】
本発明のその他の実施態様では、工程(d)において、当該サトウキビジュースが、0.2重量%のクエン酸と0.02重量%のクエン酸ナトリウムを加えることによって酸性にされる。
【0021】
殺菌処理ユニットパック入りサトウキビジュースの保存方法は、図1において説明されている。当該方法の新規性は、サトウキビの予備処理、ジュースのバルク中に風味が分配されるような方法でのジュースとジンジャー及びライム−レモンの風味からなる風味配合剤との均質化、及び殺菌温度下での特定の時間の低温殺菌というような欠くことができない工程が、当該サトウキビジュースを保存するために行われるその組合せ方法にある。本発明者等は、上記した方法によれば、サトウキビジュースを褐色化させ、また風味を変えること無く、サトウキビジュースの自然風味を保存し得ることを、成功裡に見出した。
【実施例】
【0022】
本発明のより好ましい態様について、以下の実施例によって更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が、これらの実施例によって限定解釈されるものでないことは言うまでのない。
【0023】
実施例1
サトウキビ(1.2トン)を入手し、根及び茎を刈り取って、1トンの汚れの無いサトウキビを得た。これを、KMS溶液中に2時間浸漬した。次いで、このサトウキビを徹底的に洗浄し、SSローラーをもつ二本ロールクラッシャーを用いてジュースを抽出した。500Lのジュース(ブリックス濃度20°)を得、これを、再循環設備をもつ冷却タンクに集めて、4℃に維持した。ブリックス濃度を、軟水(150L)を加えることによって15.4°に下げた。製品を解凍し、クエン酸(0.2%)とクエン酸ナトリウム(0.02%)を加えることによってpHを3.70に調整した。ジュースの総量は、650Lであった。pH及びブリックス濃度を調整した後、このジュースを、140バール下で、ホモジナイザーに、引き続いて殺菌器にポンプ輸送して、95℃下で、60秒間低温殺菌した。低温殺菌したジュースを、スチーム減圧室をもつ殺菌タンク内に貯蔵した。その間に、処理機器の充填部を過熱水で殺菌した。その後、当該ジュースを250mLの殺菌ユニットパックに充填した。
【0024】
実施例2
サトウキビ(1.4トン)を徹底的に洗浄して、外皮を掻き取ることによってワックス様の層を取り除いた。汚れの無いサトウキビの最終重量は1050kgであり、これを、KMS溶液に4時間浸漬した。サトウキビを流水で洗浄し、圧搾して、510Lのジュース(ブリックス濃度20°)を得た。このジュースを、軟水(160L)を加えてブリックス濃度15.2°に希釈した。これに、クエン酸(0.2%)、クエン酸ナトリウム(0.02%)及びプロピレングリコールに適当に乳化したジンジャー精油(70g)からなる風味配合剤(500mL)を添加した。このジュースを140バール下で、脱泡装置を通してホモジナイザーに、引き続いて殺菌器にポンプ輸送して、105℃下で、60秒間低温殺菌した。その後、当該ジュースを、250mLの殺菌ユニットパックに充填した。
【0025】
実施例3
1.2トンのサトウキビを入手し、根及び茎を刈り取った。このサトウキビを徹底的に洗浄し、外皮を掻き取ることによってワックス様の層を取り除いた。汚れの無いサトウキビを、KMS溶液中に4時間浸漬した。このサトウキビを、流水で洗浄し、圧搾して、約480Lのジュース(ブリックス濃度17°)を得、引き続いて軟水(55L)で希釈して、ブリックス濃度を15.2°に調整した。このジュースに、それぞれが0.2%及び0.02%の量のクエン酸とクエン酸ナトリウム、及びプロピレングリコールに適当に乳化したジンジャー精油(70g)と無テルペンライム及びレモンオイル(それぞれ7.5mL)からなる風味配合剤(500mL)を加え、これを、140バール下で、脱泡装置を通してホモジナイザーに、引き続いて殺菌器にポンプ輸送して、95℃下で、60秒間低温殺菌した。その後、当該ジュースを、250mLの殺菌ユニットパックに充填した。実施例3に係る物質収支は、図2に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】殺菌処理ユニットパック入りサトウキビの保存方法についてのフローチャートを示す。
【図2】実施例3に関して得られた成分の物質収支を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:
a) 0.1重量%の重亜硫酸カリウム及び0.01重量%のクエン酸を含む水中に、2〜4時間、サトウキビを浸漬する工程、
b) 工程(a)で浸漬したサトウキビを洗浄し、それを圧搾して、ブリックス濃度18〜20°を有するサトウキビジュースを得、このサトウキビジュースを濾過する工程、
c) 工程(b)で濾過したサトウキビジュースの総固体含有量を、軟飲料水を加えることによってブリックス濃度10〜16°に調整する工程、
d) 工程(c)のサトウキビジュースを、0.1〜0.3重量%のクエン酸及び0.01〜0.03重量%のクエン酸ナトリウムを加えることによって酸性にする工程、
e) 工程(d)で酸性にしたサトウキビジュースに、0.05〜0.20重量%のジンジャー含油樹脂及び/又は0.01〜0.05重量%のライムとレモンの精油からなる風味配合剤を加えて、風味をつけたサトウキビジュースを得る工程、
f) 工程(e)の風味をつけたサトウキビジュースを混合し、それを90〜110℃下で、30〜180秒間低温殺菌して、風味をつけたサトウキビジュースを得、これを殺菌処理ユニットパックに充填する工程、
を含む風味をつけたサトウキビジュースの保存方法。
【請求項2】
前記工程(b)において、サトウキビが、圧搾される前に淡水で洗浄される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、サトウキビが機械装置を用いて圧搾される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、サトウキビジュースがモスリン布を用いて濾過される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(c)において、サトウキビジュースが飲料水で希釈されて15%の甘味に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(d)において、サトウキビジュースが0.2重量%のクエン酸と0.02重量%のクエン酸ナトリウムを加えることによって酸性にされる、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−509517(P2006−509517A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559942(P2004−559942)
【出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005411
【国際公開番号】WO2004/054388
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】