説明

殺菌剤の調製方法

本発明は、式(I):


の化合物を調製する方法に関し、該方法は、対応するアミドを対応する置換化アリールと、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む。式中、YはCHCHR6(R7)、C=C(A)Z、CY2(R2)Y3(R3)、C=N−NR4(R5)であり;Y2及びY3は独立してO,S,Nであり;A及びZは独立してC1-6アルキルであり;R1はCF3又はCF2Hであり;R2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく;R4及びR5は独立してC1-8アルキルであり;Bは単結合又は二重結合であり;R6及びR7は独立して水素又はC1-6アルキルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの調製方法、及び該方法で使用される中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミド、例えば3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドは、有用な殺菌剤である。これらはWO04/035589に記載されている。
【0003】
WO04/035589には、下記スキーム1及び2に示される、ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの調製方法が記載されている。Het,R’,R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,X及びYは、WO04/035589に記載された通りである。
【0004】
【化1】

【0005】
スキーム1に示されるプロセスに従い、式(IIa)のエステルを式(IIIa)のアニリンとNaN(TMS)2の存在下で反応させることにより、式(Ia)の化合物を調製し得る。スキーム2に示される第1のプロセスに従い、式(II’a)の酸を式(IIIa)のアニリンと活性化剤(例えば、BOP−Cl)及び2当量の塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で反応させることにより、式(Ia)の化合物を調製し得る。スキーム2に示される第2のプロセスに従い、式(II’a)の酸をハロゲン化剤(例えば、チオニルクロリド)で処理して式(II’’a)のハロ−酸クロリドを得た後、塩基の存在下で式(IIIa)のアニリンと反応させて、式(Ia)の化合物を得る。水に対する過敏性に起因してハロ−酸が関与する反応には、幾つかの技術的な問題がある。
【0006】
WO2007/031323には、ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの調製方法の改良に関して記載されているが、該改良は、WO04/035589に記載された合成経路の初期ステップに関する。
【0007】
金属触媒によるハロゲン化アリールのアミド化に関する反応は、公知である(例えば、Klapars等,J.Am.Chem.Soc,2002,124,7421−7428,WO2008/006575,及びIkawa等,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,13001−13007)。これらの反応は、金属原子周辺における反応物質及び配位子のキレート化を介して進行すると理解されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの大規模製造を容易にするために、高収率で、好ましくは大規模に製造することが可能な別の合成経路を見出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、オルト置換ベンゾノルボルネン化合物を、ピラゾリル−4−アミドと、金属及び配位子を含む触媒の存在下で反応させることにより、ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドを高収率で調製し得るという知見が得られた。
【0010】
この知見は、種々の理由から、予想外であった。まず、ベンゾノルボルネン化合物の巨大な縮合三環系により、芳香族環のオルト位に高度の立体障害が生じ、オルト位へのアクセスを困難にする。加えて、金属触媒によるアリール−アミドカップリングに関する提案された反応メカニズムを考慮すると、ノルボルネンの縮合環系が金属原子周辺の配位スペースのうち大部分を占領し、これにより、金属原子に対して反応物質及び配位子が効果的にキレート化する可能性が有意に減少することが予想される。
【0011】
したがって、本発明は、広義には、金属を含む触媒の存在下でのオルト置換ベンゾノルボルネン化合物とピラゾリル−4−アミドとの反応による、ピラゾリル−4−カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの合成に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様では、式(I):
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、
YはCHCHR6(R7),C=C(A)Z,CY2(R2)Y3(R3)又はC=N−NR4(R5)であり;
2及びY3は独立してO,S,Nであり;
A及びZは独立してC1-6アルキルであり;
1はCF3又はCF2Hであり;
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく;
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり;
Bは単結合又は二重結合であり;
6及びR7は独立して水素又はC1-6アルキルである。]
の化合物を調製する方法であって、
式(II):
【0015】
【化3】

【0016】
[式中、
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートであり;
Y及びBは式(I)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物を、
式(III):
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R1は式(I)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物と、
銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0019】
本発明には、式(I)の化合物の異性体(例えば、立体異性体、幾何異性体及び互変異性体)を調製する方法が包含される。特に、本発明には、式(I)の化合物の立体異性体(例えば、Y部分が芳香族環の平面の上又は下に位置する化合物)を調製する方法が包含される。本発明にはまた、式(I)の化合物の塩を調製する方法が包含される。一般的に、ある特定の化合物に関する言及には、特に明記しない限り、該化合物の立体異性体、幾何異性体、互変異性体及び塩に関する言及が包含される。
【0020】
YがCY2(R2)Y3(R3)であるとき、Y2及びY3はともに炭素原子に直接結合し、R2はY2に直接結合し、R3はY3に直接結合する。
【0021】
好ましい置換基に関する下記定義は、本発明の全ての態様に適用され、互いに組み合わして任意の組み合わせとしてもよい。
【0022】
好ましくは、A及びZは互いに独立してC1-4アルキルである。
好ましくは、A及びZは互いに独立してCH3である。
【0023】
好ましくは、Y2及びY3は互いに独立してO又はSである。
好ましくは、Y2及びY3は互いに独立してOである。
【0024】
好ましくは、Bは単結合である。
【0025】
好ましくは、R1はCF3,CHF2又はCH2Fである。
好ましくは、R1はCF3又はCHF2である。
好ましくは、R1はCHF2である。
【0026】
好ましくは、R2及びR3は互いに独立してC1-4アルキルであるか;又はR2及びR3は一緒になって4−6員環である。
好ましくは、R2及びR3は互いに独立してメチル又はエチルであるか;又はR2及びR3は一緒になってエチレン又はプロピレン基である。
好ましくは、R2及びR3は互いに独立してメチルであるか、又はR2及びR3は一緒になってエチレン基である。
【0027】
好ましくは、R4及びR5は互いに独立してC1-4アルキルである。
好ましくは、R4及びR5は互いに独立してメチル又はエチル、好ましくはメチルである。
【0028】
好ましくは、R6及びR7は互いに独立してメチル又はエチル、好ましくはメチルである。
【0029】
好ましくは、YはCHCHR6(R7)又はC=C(A)Zである。
好ましくは、YはCHCH(CH3)CH3又はC=C(CH3)CH3である。
好ましくは、YはCHCH(CH3)CH3である。
【0030】
好ましくは、X(例えば、式(II)中のX)はCl,Br又はIであり、さらに好ましくはClであり、例えば、式(II)の化合物はベンゾノルボルネン−5−yl−クロリドであり得る。
【0031】
「スルホネート」という用語は、当該技術分野で承認された用語であり、
一般式:
【0032】
【化5】

【0033】
[式中、R*は電子対,水素,アルキル,シクロアルキル又はアリールである。]
で表され得る基が包含される。例えば、Xはトリフラート,トシレート,メシレート又はノナフレート(nonaflate)、例えば、トリフルオロメタンスルホネートエステル,p−トルエンスルホネートエステル,メタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネートエステルであり得る。特に、Xはトシレート又はメシレートであり得る。
【0034】
炭素鎖、例えばアルキルは、分岐鎖状又は非分岐鎖状であり得る。
【0035】
さらなる態様では、式(I)の化合物のうち、式(IA):
【0036】
【化6】

【0037】
[式中、
YはCHCHR6(R7)又はC=C(A)Zであり;
Bは単結合又は二重結合であり;
A及びZは独立してC1-6アルキルであり;
1はCF3又はCF2Hであり;そして
6及びR7は独立して水素又はC1-6アルキルである。]
の化合物を調製する方法であって、
式(IIA):
【0038】
【化7】

【0039】
[式中、
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートであり;
Y及びBは式(IA)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物を、
式(IIIA):
【0040】
【化8】

【0041】
[式中、R1は式(IA)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物と、
銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0042】
ベンゾノルボルネン−5−イル−クロリドが関与する反応は、効率のよい定量的収率で進行することが見出された。アリールC−Cl結合は、対応するアリールC−Br又はアリールC−I結合と比較して、反応性がかなり低く、実際、当業界において、芳香族炭素−塩素結合の高安定性によってアリールクロリドの利用が非常に困難であることが知られている(Grushin and Alper,Chem.Rev.,1994,1047−1062)。金属触媒によるクロロ置換アリールのアミド化に関する少数の報告が存在するが、クロロ位置の立体障害は重要な考慮事項ではなかったし、アリールクロリドが官能化される際の収率は低かった(Klapars等,J.Am.Chem.Soc,2002,124,7421−7428;Ikawa等,J.Am.Chem.Soc.,2007,129,13001−13007)。上記の通り、本発明は、クロロ位置における高度の立体障害が存在する点で、これらの報告と異なる。この点及びアリールC−Cl結合の不活性という特性を考慮すると、この結果は、全く予想外であった。
【0043】
銅は、銅原子又はイオン、例えば、任意の銅塩(例えば、Cu(I)又はCu(II))に由来するものであり得る。例えば、銅は、CuCl,CuBr,CuI,CuCl2,Cu2O,CuBr2,CuI2,CuO,CuSCN,CuSO4,Cu(OAc)2,Cu(acac)2(acac=アセチルアセトネート),又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、本発明の触媒は、CuCl,CuBr,CuI又はそれらの2種以上の混合物を含む。
【0044】
触媒に含まれる配位子は、キレート配位子(例えば、二座配位子)であり得る。配位子媒介キレート化に関与する1又は2以上の原子(通常はルイス塩基の原子)は、独立して窒素,酸素,リン又はヒ素から選択され得るが、好ましくは窒素である。誤解を避けるためであるが、「ある配位子」を含む触媒に関する言及において、該触媒は1種よりも多くの配位子を含み得る。同様に、「特定の配位子」を含む触媒に関する言及において、該触媒は、言及された特定の配位子に加え、1種以上のその他の配位子を含み得る。
【0045】
好適な配位子の具体例としては、アルキルアルコール、アリールアルコール(例えば、フェノール)、アルキルアミン、ジアミン(例えば、1,2−ジアミン又は1,3−ジアミン)、1,2−アミノアルコール、1,2−アミノエーテル(例えば、トリス(3,6,−ジオキサヘプチル)アミン)、1,2−アミノ酸(例えば、ピペコリン酸)、1,2−ジオール、イミダゾリウムカルベン、ピリジン、1,10−フェナントロリン、1,3−ジケトン(例えば、2,4−ペンタジオン)が挙げられ、それぞれ置換されていてもよい。好ましくは、配位子は、ジアミン、例えば、置換されていてもよい1,2−ジアミン及び/又は置換されていてもよい1,10−フェナントロリンである。
【0046】
例えば、1又は2以上の配位子は、1,2−ジアミノアルカン、1,3−ジアミノアルカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,10−フェナントロリン、2−ヒドロキシエチルアミン又は1,2−ジアミノエタンであり得、それぞれが置換されていてもよい。好ましくは、配位子は、置換されていてもよい1,2−ジアミノシクロヘキサン又は置換されていてもよい1,2エチレンジアミン(例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、N−トリル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン)である。好ましくは、配位子は、N,N’ジメチル1,2ジアミンシクロヘキサン、N,N’ジメチル1,2ジエチルアミン又はN1−メチル−プロパン−1,3−ジアミンである。好ましくは、配位子は、N,N’ジメチル1,2ジアミンシクロヘキサン又はN,N’ジメチル1,2ジエチルアミンである。
【0047】
その他の好適な配位子の具体例としては、2−フェニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、1−ナフトール、EDTA、8−ヒドロキシキノリン、8−アミノキノリン、DBU、2−(ジメチルアミノ)エタノール、エチレングリコール、N,N−ジエチルサリチルアミド、2−(ジメチルアミノ)グリシン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、5−ニトロ−1,10−フェナントロリン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、(メチルイミノ)二酢酸、エタノールアミン、1,2−ジアミノエタン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド、及び/又はトリス(3,6−トリオキサヘプチル)アミンが挙げられる。
【0048】
好ましくは、配位子は、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサンである。好ましくは、反応混合物中のシス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサンに対するトランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサンのモル比は、45%に対して55%以上、40%に対して60%以上、30%に対して70%以上、20%に対して80%以上、10%に対して90%以上、5%に対して95%以上、1%に対して99%以上である。幾つかの場合、配位子の実質的に全てが、トランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサン、例えば、100%トランス−N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノシクロヘキサンであり得る。
【0049】
誤解を避けるためであるが、一般的に、「置換していてもよい」という用語は、1又は2以上の基による置換又は非置換を意味する。例えば、「置換していてもよい1,2−ジアミン」は、1,2−ジアミン又は置換化1,2−ジアミンを意味する。「置換化1,2−ジアミン」には、1又は2以上の(官能)基で置換された1,2−ジアミンが含まれる。
【0050】
ある特定の配位子が異性体(例えば、シス−トランス異性体及び/又は立体異性体)となり得る場合、配位子は、ある特定の異性体(例えば、シス又はトランス異性体)であってもよいし、異性体の混合物を使用してもよい。例えば、触媒に含まれる配位子が1,2−ジアミノシクロヘキサンである場合、配位子は、シス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン、又はシス−及びトランス−1,2ジアミノシクロヘキサンの混合物であり得る。
【0051】
本発明の方法は、式(III)の化合物を触媒と接触させる前に、液状の式(III)の化合物を準備し、反応を開始することを含み得る。例えば、本発明の方法は、銅を配位子と式(III)の化合物の存在下で接触させることにより反応を開始することを含み得、銅を配位子と接触させるときに式(III)の化合物は液状で存在している。式(III)の化合物は、例えば、溶媒に溶解したとき又は溶融したときに、液状となる。実験結果は、式(III)の化合物の不存在下で触媒を加熱すると、触媒効率が低減し得ることを示唆する。好ましくは、触媒は、式(III)の化合物の不存在下で加熱されない。
【0052】
本発明は、例えば触媒を形成するために、銅を式(III)の化合物の存在下で配位子と接触させることを含み得、ここで、式(III)の化合物は、例えば、触媒を形成するために銅を配位子に接触させたときに、銅及び/又は触媒と複合体を形成し得るように供給される。銅を配位子に接触させるステップを実施する前、銅及び配位子は分離されている(すなわち、接触していない)。
【0053】
反応が開始される時間には、例えば、式Iの化合物の形成以前の、試薬及び触媒が混合される時間が含まれる。
【0054】
例えば、本発明は、下記ステップ:
a)液状の式(III)の化合物を準備するステップ、
b)銅を式(III)の化合物と接触させるステップ、
c)配位子を式(III)の化合物と接触させるステップ、
を含み得、ここで、ステップb)又はステップc)はステップa)の前に実施され得るが、ステップb)及びc)のうち少なくとも1つはステップa)の後に実施されることが好ましい。ステップa)は、式(III)の化合物を溶媒に接触(例えば溶解)することを含み得る。この結果、使用される式(III)の化合物全てが溶媒に溶解してもよいし、そうでなくてもよい。式(III)の化合物のうち少なくとも一部分が溶媒に溶解する場合、式(III)の化合物は、その後、触媒との複合体化に利用し得る。好ましくは、銅の量に対して0.5モル当量以上、0.7モル当量以上、1.0モル当量以上、1.5モル当量以上、2モル当量以上、3モル当量以上、4モル当量以上又は5モル当量以上の式(III)の化合物を、式(III)の化合物を触媒と接触させる前に、溶解させる。さらに好ましくは、銅の量に対して1モル当量以上の式(III)の化合物を溶解させる。
【0055】
ステップa)は、式(III)の化合物を加熱することを含み得る。好ましくは、式(III)の化合物は、ステップa)において(例えば、式(III)の化合物を銅及び配位子と接触させる前に)、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、105℃以上又は110℃以上に加熱される。
【0056】
反応は、溶媒中、好ましくは、極性有機溶媒中で実施し得る。式(II)の化合物及び/又は配位子は、溶媒として機能し得るし、溶媒は異なる成分であってもよい。幾つかの場合、式(III)の化合物が溶媒として機能し得る。
【0057】
本発明の方法は、式(III)の化合物を溶媒(例えば式(II)の化合物)と接触させること、並びに、配位子及び銅を溶媒と接触させる前に加熱することを含み得る。加熱は、式(III)の化合物の溶媒和を促進し、それにより触媒との複合体化に利用可能な式(III)の化合物が増加し得る。好ましくは、溶媒及び式(III)の化合物は、ステップa)において(例えば、銅及び配位子を溶媒中で接触させる前に)、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上又は140℃以上、例えば、50〜200℃、80〜180℃、100〜170℃、130〜160℃に加熱される。溶媒及び式(III)の化合物は、上記温度のいずれかの温度で、所望の時間、例えば、1秒〜24時間(例えば、1〜1000分間、10〜500分間、30〜300分間)、加熱され得る。溶媒及び式(III)の化合物は、上記温度のいずれかの温度で、1分間以上、10分間以上、30分間以上、60分間以上又は200分間以上、加熱され得る。好ましくは、溶媒及び該溶媒に溶解した式(III)の化合物は、銅及び配位子を溶媒に接触させる前に、100℃以上で100分間以上、加熱され得る。
【0058】
溶媒が式(II)の化合物である場合、本発明の方法は、式(III)の化合物と接触させる前に、式(II)の化合物を溶融する追加のステップを含み得る。
【0059】
式(II)の化合物は、任意の段階で、その他の試薬と組み合わせてもよい。
【0060】
一般的に、触媒中の銅に対する配位子のモル比は、1に対して10以上、1に対して5以上、1に対して3以上、1に対して2.5以上、1に対して2以上、1に対して1.5以上、1に対して1以上、1に対して0.5以上、1に対して0.1以上であり得る。例えば、触媒中の銅に対する配位子のモル比は、1に対して10未満、1に対して5未満、1に対して3未満、1に対して2.5未満、1に対して2未満、1に対して1.5未満、又は1に対して1未満であり得る。例えば、触媒中の銅に対する配位子のモル比は、10:0.1〜0.1:10、5:1〜1:5、3:1〜1:3、2.5:1〜1:2.5、2:1〜1:2、又は1.5:1〜1:1.5の範囲であり得る。例えば、触媒中の銅に対する配位子のモル比は、好ましくは、1に対して1以上、例えば、1に対して2以上、具体的には、1に対して約2.2である。
【0061】
反応が開始した後(例えば、開始後の1又は2以上の時点で)、追加の配位子を反応混合物に加え得る。追加の配位子は、バッチ式、連続式、又は両法の組み合わせにより、加え得る。例えば、反応開始から10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上又は60分以上経過後、例えば、反応開始から1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上又は5時間以上経過後に、追加の配位子を加え得る。反応過程で加えられる追加の配位子のモル量は、反応開始時に存在する銅のモル量の0.1倍以上、0.5倍以上、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、8倍以上又は10倍以上であり得る。例えば、反応開始時に、配位子が銅とほぼ同じモル濃度で存在する場合、配位子の最終モル濃度が、銅のモル濃度の2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、8倍以上又は10倍以上となるように、追加の配位子を反応過程で加え得る。
【0062】
同様に、反応が開始した後(例えば、反応開始後の1又は2以上の時点で)、追加の銅を反応混合物に加え得る。追加の銅は、バッチ式、連続式、又は両法の組み合わせにより、加え得る。例えば、反応開始から10分以上、20分以上、30分以上、40分以上、50分以上又は60分以上経過後、例えば、反応開始から1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上又は5時間以上経過後に、追加の銅を加え得る。反応過程で加えられる追加の銅のモル量は、反応開始時に存在する銅の量の0.1倍以上、0.5倍以上、1倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、8倍以上又は10倍以上であり得る。銅の最終モル濃度は、反応開始時の銅のモル濃度の2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、8倍以上又は10倍以上であり得る。
【0063】
同様に、反応が開始した後、追加の銅及び配位子を、例えば、同時に、順番に又は別々に、反応混合物に加え得る。付加反応の安全性の観点から、式(II)の化合物をゆっくりと反応物に加え得る。反応過程で、溶媒及び/又は水を留去し得る。次いで、例えば反応物の流動性を維持するために、溶媒を再投入し得る。
【0064】
本発明の反応は、溶媒中、特に反応物質及び触媒を実質的に溶解し得る溶媒中で実施し得る。溶媒の具体例としては、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテル、THF、2−メチル−THF、ジオキサン);ハロゲン化溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、4−フルオロトルエン);脂肪族化合物(直鎖状、分岐鎖状又は環状)又は芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、ベンゼン、リグロイン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン);エステル及びケトン(例えば、酢酸エチル、アセトン2−ブタノン、メチルイソブチルケトン);アミン(例えば、アニソール)、非プロトン性極性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド);並びにアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−BuOH、ジエチレングリコール)が挙げられる。2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
好ましくは、溶媒は、極性有機溶媒、すなわち、1以上の炭素原子を含む溶媒である。溶媒は、プロトン性であってもよいし非プロトン性であってもよい。溶媒の具体例としては、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテル、THF、2−メチル−THF、ジオキサン);ハロゲン化溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、4−フルオロトルエン);エステル及びケトン(例えば、酢酸エチル、アセトン2−ブタノン、メチルイソブチルケトン);アミン(例えば、アニソール)、非プロトン性極性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド);並びにアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−BuOH、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、又はそれ以上の長鎖アルコール、及びジエチレングリコール)が挙げられる。溶媒は、式(II)の化合物であり得る。2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよく、1又は2以上の非極性溶媒が含まれていてもよい。
【0066】
Xがハロゲン化物である場合、溶媒は、ハロゲン化物塩の溶解度が低い溶媒、例えば、塩が実質的に不溶性である上記非極性溶媒であり得、これにより、反応の間に放出されるハロゲン化物イオンが実質的に反応溶液から除去される。また、溶媒を組み合わせて使用してもよく、上記に列挙した溶媒のうち、1種又は2種以上極性溶媒、特に非プロトン性極性溶媒、及び1種又は2種以上の非極性溶媒を組み合わせた溶媒を、バルク溶媒極性 対 ハロゲン化物塩溶媒和を調整するために使用し得る。その具体例は、DMF及びキシレンの混合物であり、該混合物は、幾つかの場合、各溶媒を約50%v/v含有し得る。
【0067】
溶媒は、例えば、DMF、ジグリム、キシレン又はそれらの混合物(例えば、ジグリムとキシレンの混合物)であり得る。
【0068】
本発明の反応は、特に金属が銅である場合、100℃を超える、110℃を超える、120℃を超える、130℃を超える、140℃を超える、150℃を超える、160℃を超える、又は170℃を超える沸点(標準的な条件下で測定された沸点)を有する溶媒を用いて実施し得る。好ましくは、本発明の反応は、150℃を超える沸点を有する溶媒を用いて実施される。
【0069】
反応は、0〜200℃、特に、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上又は190℃以上の温度で実施し得る。反応は、0℃−200℃、100℃−200℃、110℃−200℃、120℃−200℃、130℃−200℃、140℃−200℃、150℃−200℃、160℃−200℃、170℃−200℃、180℃−200℃、190℃−200℃、100℃−190℃、100℃−180℃、100℃−170℃、120℃−160℃、130℃−190℃、140℃−180℃、140℃−170℃、140℃−160℃の範囲で、又は145℃−155℃の範囲で実施し得る。
【0070】
驚くべきことに、金属が銅である場合、苛酷な条件(例えば、140℃を超える反応温度)を用いても、通常、副反応(例えば、ベンゾノルボルネンの脱ハロゲン化)が観察されないことが見出された。
【0071】
本発明の反応は、大気圧よりも高い圧力で実施し得る。例えば、反応は、約1bar又は1.1bar以上、1.2bar以上、1.3bar以上、1.4bar以上、1.5bar以上、1.6bar以上、1.7bar以上、1.8bar以上、1.9bar以上、2bar以上、3bar以上、4bar以上又は5bar以上であって、例えば、10bar未満、5bar未満、2bar未満の圧力、具体的には、1bar〜10bar、1bar〜5bar、1bar〜4bar、1bar〜3bar、1bar〜2bar、1bar〜1.9bar、1bar〜1.8bar、1bar〜1.7bar、1bar〜1.6bar、1bar〜1.5bar、1bar〜1.4bar、1bar〜1.3bar、1bar〜1.2bar又は1bar〜1.1barの範囲の圧力で実施し得る。選択された溶媒が所望の反応温度未満の沸点を有する場合、1barよりも高い圧力を使用し得る。本発明の目的上、1barは一般的に大気圧を表すとみなし得る。
【0072】
好ましくは、反応は塩基の存在下で実施される。塩基は、任意のブレンステッド塩基であってよく、例えば、カルボネート、カルボキシレート、ホスフェート、オキシド、ヒドロキシド、アルコキシド、アリールオキシド、アミン、銅アミド、フルオリド、若しくはグアニジン、又はそれらの1種又は2種以上の混合物であり得る。塩基は、カルボン酸の金属塩、例えば、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ナトリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、又はそれらの混合物であり得る。好適な塩基の具体例としては、K3PO4,K2CO3,Na2CO3,Ti2CO3,Cs2CO3,K(OtBu),Li(OtBu),Na(OtBu),K(OPh),Na(OPh),又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、塩基は、カルボネート、例えば、炭酸カリウムである。化合物(II)の量を基準として、通常約1〜2モル当量、好ましくは約1モル当量(例えば1.1)の炭酸カリウムが使用される。
【0073】
反応混合物から水を除去(例えば連続除去)するための準備を行い得る。好適な方法は、水の共沸除去である。水の共沸除去を実施するための好適な装置は当業者に公知である。
【0074】
使用される銅の量は、化合物(II)の量を基準として50mol%未満、例えば、化合物(II)の量を基準として25mol%未満、20mol%未満、10mol%未満、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満又は0.1mol%未満であり得る。使用される銅の量は、化合物(II)の量を基準として0.01mol%以上、例えば、化合物(II)の量を基準として0.1mol%以上、1mol%以上、2mol%以上、5mol%以上又は10mol%以上であり得る。使用される銅の量は、化合物(II)の量を基準として0.01〜50mol%の範囲、0.1〜25mol%の範囲、1〜20mol%の範囲又は5〜15mol%の範囲であり得る。好ましくは、銅の量は、化合物(II)の量を基準として約1mol%であり、10mol%以下であり得る。
【0075】
使用される銅の量は、化合物(III)の量を基準として50mol%未満、例えば、化合物(III)の量を基準として25mol%未満、20mol%未満、10mol%未満、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満又は0.1mol%未満であり得る。使用される銅の量は、化合物(III)の量を基準として0.01mol%以上、例えば、化合物(III)の量を基準として0.1mol%以上、1mol%以上、2mol%以上、5mol%以上又は10mol%以上であり得る。使用される銅の量は、化合物(III)の量を基準として0.01〜50mol%の範囲、化合物(III)の量を基準として0.1〜25mol%、1〜20mol%又は5〜15mol%の範囲であり得る。好ましくは、銅の量は、化合物(III)の量を基準として約1mol%であり、10mol%以下であり得る。
【0076】
使用される配位子の量は、化合物(II)の量を基準として100mol%未満、例えば、化合物(II)の量を基準として50mol%未満、25mol%未満、20mol%未満、10mol%未満、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満、又は0.1mol%未満であり得る。使用される配位子の量は、化合物(II)の量を基準として0.01mol%以上、例えば、化合物(II)の量を基準として0.1mol%以上、1mol%以上、2mol%以上、5mol%以上、10mol%以上、20mol%以上、又は50mol%以上であり得る。使用される配位子の量は、化合物(II)の量を基準として0.01〜100mol%の範囲、1〜50mol%の範囲、5〜40mol%の範囲、10〜30mol%の範囲、又は15〜25mol%の範囲であり得る。
【0077】
使用される配位子の量は、化合物(III)の量を基準として100mol%未満、例えば、化合物(III)の量を基準として50mol%未満、25mol%未満、20mol%未満、10mol%未満、5mol%未満、2mol%未満、1mol%未満、0.5mol%未満、又は0.1mol%未満であり得る。使用される配位子の量は、化合物(III)の量を基準として0.01mol%以上、例えば、化合物(III)の量を基準として0.1mol%以上、1mol%以上、2mol%以上、5mol%以上、10mol%以上、20mol%以上、又は50mol%以上であり得る。使用される配位子の量は、化合物(III)の量を基準として0.01〜100mol%の範囲、1〜50mol%の範囲、5〜40mol%の範囲、10〜30mol%の範囲、又は15〜25mol%の範囲であり得る。
【0078】
本発明の反応において、化合物(II)の化合物(III)に対するモル比は、10:1〜1:10、5:1〜1:5、2:1〜1:2又は1.2:1〜1:1.2の範囲であり得る。特に、化合物(II)の化合物(III)に対するモル比は、1.1:1〜1:1.1の範囲、例えば、約1:1であり得る。一般に、触媒が銅又はパラジウムを含む場合、反応開始時において、反応物質の比は約1:1である。但し、反応後の後処理でノルボルネン化合物を反応産物から分離するのは困難であるので、ノルボルネン化合物全体を確実に反応させるために、若干過剰のアミドを使用するのが望ましいかもしれない。なお、反応過程で反応物質の比を適宜変更し得る場合、反応過程で反応物質を順次供給し得る。
【0079】
反応混合物の後処理は、有機合成化学の周知の方法に従って達成し得る。例えば、水系後処理は、水(又はその他の水溶液)を添加すること、及び適当な有機溶媒を用いて反応産物を所望の反応産物の沈殿物又は抽出物としてろ過することにより達成し得る。また、反応産物は、蒸留、例えば減圧下での蒸留によって残存溶媒を除去することにより単離し得る。反応産物の精製は、多数の方法(例えば、蒸留、再結晶及びクロマトグラフィー)のうちの任意のものによって達成し得る。
【0080】
本発明のさらなる態様では、式(X):
【0081】
【化9】

【0082】
の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【0083】
【化10】

【0084】
の化合物を、式(XII):
【0085】
【化11】

【0086】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClである。]
の化合物と、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0087】
本発明のさらなる態様では、式(XIV):
【0088】
【化12】

【0089】
の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【0090】
【化13】

【0091】
の化合物を、式(XV):
【0092】
【化14】

【0093】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClである。]
の化合物と、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0094】
本発明のさらなる態様では、式(XVII):
【0095】
【化15】

【0096】
の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【0097】
【化16】

【0098】
の化合物を、式(XVIII):
【0099】
【化17】

【0100】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClである。]
の化合物と、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0101】
本発明のさらなる態様では、式(XIX):
【0102】
【化18】

【0103】
の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【0104】
【化19】

【0105】
の化合物を、式(XXVII):
【0106】
【化20】

【0107】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClである。]
の化合物と、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む前記方法が提供される。
【0108】
式(II)の化合物は、式(XXII),(XXIII)又は(XXIV):
【0109】
【化21】

【0110】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClであり、A及びZは独立して水素又はC1-6アルキルである。]
の化合物であり得る。
【0111】
式(XXII),(XXIII)及び(XXIV)の化合物の具体例としては、それぞれ、式(XII),(XV)及び(XVIII):
【0112】
【化22】

【0113】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネート、好ましくはClである。]
の化合物が挙げられる。
これらの化合物は、本発明のさらなる態様である。
【0114】
本発明のさらなる態様では、
i.式(XXX):
【0115】
【化23】

【0116】
の化合物を調製する工程であって、
下記ステップ:
(a)式(XXXI):
【0117】
【化24】

【0118】
[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物のケトン基を、適当な保護試薬を用いて保護するステップ、
(b)ステップ(a)で調製した化合物を、式(XI):
【0119】
【化25】

【0120】
の化合物と、銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップ、並びに
(c)前記ケトン基を脱保護するステップ
を含む前記工程を含む方法が提供される。
【0121】
好適な保護基は、当業者に自明であり、その具体例として、アルコール(例えば、1,2アルコール)、チオール(例えば、1,2チオール)、アミン(例えば、1,2アミン)及びヒドラジンが挙げられる。
【0122】
例えば、ステップ(a)の産物は、式(XXXII)又は(XXXIII):
【0123】
【化26】

【0124】
[式中、
2及びY3は独立してO,S,Nであり、
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく、
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり、
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物であり得る。
【0125】
例えば、ステップ(b)の産物は、式(XXXV)又は(XXXVI):
【0126】
【化27】

【0127】
[式中、Y2,Y3,R2,R3,R4及びR5は、式(XXXII)及び(XXXIII)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物であり得る。
【0128】
本発明の方法は、
ii.必要な場合には、式(XXX):
【0129】
【化28】

【0130】
の化合物を、式(XXXIV):
【0131】
【化29】

【0132】
の化合物に変換する工程を含み得、該工程は、例えば、式(XXX)の化合物を適当な試薬(例えば、トリフェニルホスフィン及び四塩化炭素)と反応させることにより実施し得る。
【0133】
本発明はまた、ステップ(b)に記載される式(XXXV)又は(XXXVI)の化合物を調製する方法を提供する。
【0134】
本発明はまた、式(XXXI),(XXXII),(XXXIII),(XXVII),(XVIII),(XXXV)又は(XXXVI):
【0135】
【化30】

【0136】
[式中、
2及びY3は独立してO,S,Nであり、
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく、
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり、
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。
但し、式(XXXV)の化合物は、
i.Y2がOであり,Y3がOであり,R2がC37−(n)であり,R3がC37−(n)である化合物;
ii.Y2がOであり,Y3がOであり,R2がC25であり,R3がC25である化合物;
iii.Y2がOであり,Y3がOであり,R2及びR3が一緒になって−CH2−CH2−である化合物
ではない。]
の化合物に関する。
【0137】
好ましくは、XはClである。
【0138】
式(III)の化合物は、例えば、下記スキームに従って調製し得る:
【0139】
【化31】

【0140】
液体又は気体アンモニアを使用してもよいし、アンモニウム塩(例えば、酢酸アンモニウム)を使用してもよい。好適な溶媒(例えば、THF)及び反応条件は、当業者が選択し得る。酸クロリドは、文献(例えばWO04/035589)記載の方法に従って調製し得る。また、アミドは、アンモニアを対応する複素環のエステルと反応させることにより調製し得る。
【0141】
式(II)の化合物は、例えば、WO04/035589及びWO2007/068417に記載の方法を用いて調製し得る。式(XII)の化合物は、下記スキームに従って調製し得る:
【0142】
【化32】

【0143】
式(XV),(XII)及び(XVIII)の化合物は、WO2007/068417に記載の方法を用いて調製し得る。反応a及びcは、WO2007/068417に記載のように、例えば、炭素に対する水素化触媒(例えば、5%Pd/C,5%ラネーニッケル又は5%ロジウム)を、溶媒(例えば、メタノール,エタノール,THF又は酢酸エチル)中で使用することにより実施し得る。また、反応bは、WO2007/068417に記載の方法を、対応するニトロ/アミン置換化ノルボルネンに対して使用することにより実施し得る。また、水素化の程度は、例えば、ウィルキンソン触媒(RhCl(PPh33)を使用することによりコントロールし得る。化合物(XXVII)は、反応a又はbの過程で調製し得る。該化合物は、公知の方法(例えば、HPLC)に従って単離し得る。
【0144】
さらなる態様において、本発明は、上記方法において、触媒を、鉄及び配位子を含む触媒、又はパラジウム及び配位子を含む触媒に置き換えた方法を提供する。
【0145】
触媒がパラジウムを含む場合、パラジウムは、パラジウム原子又はイオン、例えば、任意のパラジウム塩(例えば、Pd(0)又はPd(II))に由来するものであり得る。例えば、パラジウムは、Pd(OH)2,PdCl2,Pd(OAc)2,Pd(NO32,Pd(dba)2,Pd2(dba)3,(dba=ジベンジリデンアセトン),Pd(acac)2,Pd(CH3CN)2Cl2,ジクロロ−ビス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II),テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0),Pd/C,パラジウムナノ粒子,又はそれらの2種以上の混合物であり得る。
【0146】
触媒がパラジウムを含む場合、好適な配位子の具体例としては、カルベン及びホスフィン配位子が挙げられる。特に、1又は複数の配位子は、公知の広範なホスフィン又はカルベン配位子から選択し得る。例えば、配位子は、キサントホス(xantphos)配位子、フェロセンビホスフィン(ferrocine biphosphine)配位子、ジョシホス(JosiPhos)配位子、ビアリールモノホスフィン配位子であり得、各々、置換されていてもよい。例えば、配位子は、Ikawa等,J.Am.chem.Soc.,2007,129,13001−13007に記載されたもの、例えば、(9,9−ジメチル−4−5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン),トリス(t−ブチル)ホスフィン,1,1’−ビス(ジ−i−プロピルホスフィノ)フェロセン,{(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン},具体的には、配位子A,B,C,D及びEのいずれかであり得る。
【0147】
【化33】

【0148】
配位子は、好ましくはA又はDであり、さらに好ましくはDである。本発明において、触媒がパラジウムを含み、比較的安価である場合、配位子Dが有効な配位子であることが見出された。
【0149】
触媒がパラジウムを含む場合、その他の好適な配位子としては、例えば、Singer等,Tetrahedron Letters,2006,47,3727−3731に記載されたもの、具体的には、下記配位子F,G,H及びIから選択されたものが挙げられる:
【0150】
【化34】

【0151】
化合物Fにおいて、Rzは、t−Bu又はシクロヘキシルであり得る。化合物Gにおいて、Rzは、t−Bu又はi−Prであり得る。特に、触媒がパラジウムを含む場合、配位子はIであり得る。
【0152】
触媒が鉄を含む場合、鉄は、鉄原子又はイオン、例えば、任意の鉄塩(例えば、Fe(II)又はFe(III))に由来するもの、具体的には、鉄酸化物(例えば、Fe23,FeO)、鉄ハロゲン化物(例えば、FeCl3)、鉄オキソハロゲン化物(例えば、Fe(ClO42)、塩(例えば、Fe(acac)3)であり得る。アリールC−Nを形成するための鉄触媒の使用は、文献(例えば、Correa and Bolm,Angew.Chem.Int.Ed.,2007,46,8862−8865;Taillefer等,Angew.Chem.,2007,119,952−954;Correa等,Chem.Soc.Rev.,2008,37,1108−1117)に報告されている。
【0153】
触媒が鉄を含む場合、好適な配位子の具体例としては、ジアミン、アミノ酸、アミノアルコール及びホスフィンが挙げられる。特に、1又は複数の配位子は、Correa and Bolm,Angew.Chem.Int.Ed.,2007,46,8862−8865;Taillefer等,Angew.Chem.,2007,119,952−954;Correa等,Chem.Soc.Rev.,2008,37,1108−1117に記載されたもの、例えば、置換されていてもよい1,2−ジアミン(例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(DMEDA))、ジオン(例えば、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)又はアセチルアセトネートであり得る。
【0154】
幾つかの態様において、触媒は、異なる種類の金属の混合物(例えば、Fe,Pd及びCuのうち2種又は全種の混合物)を含み得る。例えば、触媒は、Cu及びFeの混合物、Cu及びPdの混合物、Pd及びFeの混合物、又はPd,Fe及びCuの混合物、特に、Cu及びFeの混合物を含み得る。
【0155】
銅系触媒に関して上記した反応条件は、パラジウム又は鉄を含む触媒に関しても好適である。
【0156】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。当業者は、それらの方法から、反応物質に関する、並びに反応条件及び技術に関する変更を容易に理解するであろう。
【0157】
明細書中で言及された全ての参考文献は、その全体が引用により明細書中に組み込まれる。本発明の全ての態様及び好ましい特徴は、明らかに不可能である場合を除き、互いに組み合わせ得る。
【実施例】
【0158】
実施例1:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルのアンモノリシス
【0159】
【化35】

【0160】
固体3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル(2.05g,10mmol)を飽和アンモニア水溶液(30mL)に加え、35−40℃で一晩攪拌した。その間に、新たな白色固形物が水溶液中に形成された。その固形物をろ別し、残りの水層を、酢酸エチル/メタノールの60/40混合物(3x25mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、ブライン及びMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮し、第2の白色固形物を得た。両方の白色固形物を合わせると、単離産物収率は76%であった。GCによる純度は99%であった。固体強度(solid strength)は99%であった。
【0161】
実施例2:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのCu−触媒によるアミド化
【0162】
【化36】

【0163】
CuI(190mg,3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドに対して10mol%)を、窒素下、乾燥/真空反応容器に投入した後、N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(340μL,3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドに対して22mol%)及び無水DMF(4mL)を投入した。青色懸濁液を室温で攪拌しながら、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.76g,10mmol),炭酸カリウム(2.9g,21mmol)及び5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.20g,10mmol)を加えた。得られた青色懸濁液を150℃で一晩攪拌した。その後、懸濁液を冷却し、アセトン(15mL)で希釈し、反応物をセライトパッドでろ過し、アセトン(25mL)で洗浄した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、薄茶色固形物を得た。
反応産物の収率は80%であり、固体強度は92%であった。
【0164】
実施例3:N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン/CuBr触媒の添加前に部分的に溶解させた3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化
【0165】
【化37】

【0166】
オーブン乾燥させた多口フラスコを真空にし、窒素を3回補充した。3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.75g,10mmol)、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.20g,10mmol)、炭酸カリウム(0.77g,5.5mmol)及び溶媒であるエチレングリコールジエチルエーテル(5mL)をフラスコに投入し、フラスコを真空にし、もう1回窒素を補充した。この懸濁液を150℃に加熱し、20分間攪拌した。この温度で混合物をさらに2時間攪拌した後、予め混合しておいた臭化銅(I)(280mg,20mol%)及びN,N’−ジメチルシクロヘキサンジアミン(0.69mL,44mol%)を添加し、150℃でさらに12時間攪拌したところ、in situ反応産物収率は92%であり、残りは残存する出発原料であった。得られた懸濁液を室温まで冷却し、小容量のアセトン(1−2mL)を加えて懸濁液の流動性を向上させた。固形物の析出(crash out)が開始するまで、水(0.1%H3PO4含有)を懸濁液に加えた。得られた懸濁液を1.5時間放置し、固形物を(青色)水溶液から析出させた。固体産物を減圧下でろ別し、トルエン(5−10mL)で洗浄し、回収した固形物から多量の暗色物を除去した。単離した反応産物の収率(最適化されていない)は86%であった。
【0167】
実施例4:N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン/CuBr触媒とともに3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化(この際、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド又は5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのいずれか一方が最後に加えられる)
オーブン乾燥した多口フラスコを真空にし、窒素を3回補充した。3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.75g,10mmol)又は5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.20g,10mmol)の一方を、炭酸カリウム(0.77g,5.5mmol)及びジエチレングリコールジエチルエーテル(5mL)とともに、フラスコに投入し、フラスコを真空にし、窒素をもう1回補充した。この懸濁液を150℃に加熱しながら、20分間攪拌した。この温度で混合物をさらに2時間攪拌した後、予め混合しておいた臭化銅(I)(280mg,20mol%)及びN,N’−ジメチルシクロヘキサンジアミン(0.69mL,44mol%)を加え、150℃でさらに1時間攪拌した。残りの試薬であるアリールクロリド又はアミドを反応混合物に加え、懸濁液を150℃でさらに12時間攪拌した。in situ反応産物収率は、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンを最後に加えた場合には88%であり、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを最後に加えた場合には26%であり、残りは出発原料であった。
【0168】
実施例5:N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン/CuBr触媒とともに3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化(この際、CuBr又はN,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンのいずれか一方が最後に加えられる)
(i)CuBr塩が最後の場合
オーブン乾燥したシュレンク管に、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.39g,8mmol)、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(1.75g,8mmol)、炭酸カリウム(600mg,4.4mmol)を投入し、真空にし、窒素を3回補充した。ジグリム(4mL)を加え、窒素下、150℃で2時間、混合物を磁気攪拌した。次いで、N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン(500mg,3.4mmol,44mol%)を150℃で反応物に加え、5分間攪拌した。次いで、固体臭化銅(I)(230mg,1.6mmol,20mol%)を150℃で反応混合物に加え、得られた濃緑色/褐色反応物を150℃でさらに18時間攪拌した。18時間後にGC分析した結果、変換率は84%であった。
【0169】
(ii)N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンが最後の場合
オーブン乾燥したシュレンク管に、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.39g,8mmol)、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(1.75g,8mmol)、炭酸カリウム(600mg,4.4mmol)を投入し、真空にし、窒素を3回補充した。ジグリム(4mL)を加え、窒素下、150℃で2時間、混合物を磁気攪拌した。次いで、固体臭化銅(I)(230mg,1.6mmol,20mol%)を150℃で反応物に加え、5分間攪拌し、濃橙色混合物を得た。次いで、N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン(500mg,3.4mmol,44mol%)を150℃で反応混合物に加え、得られた濃緑色/褐色反応物を150℃でさらに18時間攪拌した。18時間後にGC分析した結果、変換率は90%であった。
【0170】
実施例6:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化に対する溶媒効果
表1に示す種々の溶媒及び温度を用いて、実施例3に記載の方法を繰り返し実施した。
【0171】
【表1】

【0172】
実施例7:N,N’−ジメチルエチレンジアミンを配位子として用いるとともに、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化
オーブン乾燥した多口フラスコを真空にし、窒素を3回補充した。3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.75g,10mmol)、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.20g,10mmol)、炭酸カリウム(0.77g,5.5mmol)、臭化銅(280mg,20mol%)及びシクロヘキサノール(5mL)をフラスコに投入し、フラスコを真空にし、窒素をもう1回補充した。この懸濁液を150℃に加熱しながら、20分間攪拌した。この温度で、混合物をさらに2時間攪拌した後、表面下にN,N’−ジメチルエチレンジアミン(0.47mL,44mol%)を加え、150℃でさらに12時間攪拌した。in situ反応産物収率は88%であり、残りは出発原料であった。
【0173】
揮発性配位子の損失を避けるために密閉管中で操作を繰り返した結果、反応が一層速まり、わずか5時間後に78%が変換され、残りは出発原料であった。
【0174】
実施例8:N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン/CuBr触媒とともに3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化
5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.2g,10mmol)を計量して丸底フラスコに投入し、攪拌しながら加熱し、完全に溶融させた。次いで、1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(0.44g,2.5mmol)及びK2CO3(0.2g,1.4mmol)を加え、得られた懸濁液を150℃に加熱し、この温度を2時間維持した。次いで、臭化銅(70mg,20mol%)及びN,N’−ジメチルエチレンジアミン(0.12mL,44mol%)を懸濁液に加え、わずかに正圧の窒素下、反応物を150℃で一晩攪拌した。その後、HPLCで分析するために反応物からサンプルを採取した。HPLCで測定した変換率は89%であった(DFP−アミド基準)。
【0175】
実施例9:N1−メチル−プロパン−1,3−ジアミン/CuBr触媒とともに3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミドを用いた、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレンのアミド化
オーブン乾燥したフラスコを真空にし、窒素を3回補充した後、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(2.20g,10mmol)、1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(1.75g,10mmol)、炭酸カリウム(0.8g,5.7mmol)、並びにCuBr(280mg,20mol%)及びジグリム(5mL)を加えた。懸濁液を攪拌しながら150℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した後、配位子であるN1−メチル−プロパン−1,3−ジアミン(0.31mL,44mol%)を加え、150℃で一晩攪拌した。その後、HPLCで分析するためにサンプルを採取した。HPLCで測定した変換率は64%であった。
【0176】
実施例10:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製
(a)5−クロロ−9,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(化合物2)の調製
【0177】
【化38】

【0178】
オーブン乾燥した50mL容量の3口フラスコに、窒素下、化合物1(4g,20.8mmol)、オルトギ酸トリメチル(2.9mL,28.2mmol)を投入した後、メタノール5mLを投入し、得られた混合物を60℃で攪拌した。次いで、硫酸(200μL,50%w/v)を滴下して加え、得られた混合物を20分間攪拌した。10分後に低レベルの反応産物析出物が観察された(白色固形物)。反応混合物を0℃に冷却し(20分間)、減圧ろ過により析出物を回収し、冷メタノール(10mL)で洗浄し、化合物2を白色固形物として収率95%(4.7g)で得た。残存する出発原料は、ろ液をジエチルエーテルで抽出した後、減圧濃縮することにより回収可能である(150mg,4%)。
【0179】
その他に利用可能な保護基の具体例は次の通りである:
【0180】
【化39】

【0181】
式中、nは例えば1〜4である。
【0182】
(b)3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9,9−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミド(化合物4)の調製
【0183】
【化40】

【0184】
オーブン乾燥したシュレンク管に、化合物3(1.39g,8mmol)、化合物2(1.89g,8mmol)、K2CO3(600mg,4.4mmol)を投入し、真空にし、窒素を3回補充した。ジグリム(4mL)を加え、得られた混合物を、窒素下、150℃で2時間、磁気攪拌した。次いで、固体臭化銅(I)(230mg,1.6mmol,20mol%)を反応混合物に150℃で加えた後、N,N’−ジメチル−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン(500mg,3.4mmol,44mol%)を加えた。得られた濃緑色/褐色反応物を150℃でさらに18時間攪拌した。18時間後にGC分析した結果、化合物4への変換率は81%であった。
【0185】
(c)3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミド(化合物5)の調製
【0186】
【化41】

【0187】
オーブン乾燥したシュレンク管に、化合物4(100mg,0.26mmol)を投入し、アセトン(1mL)に溶解させた。塩酸を加え(37%,2滴)、得られた混合物を、窒素下、50℃で30分間攪拌した。GCMS分析によって、出発原料が完全に変換したことを確認し、水を混合物に加えた(5mL)。酢酸エチル(3×5mL)で抽出した後、減圧濃縮し、化合物5を得た(定量的変換)。
【0188】
(d)3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−ジクロロメチレン−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミド(化合物6)の調製
【0189】
【化42】

【0190】
化合物5(400mg,1.2mmol)及びトリフェニルホスフィン(mg,2.7mmol,2.2eq)のアセトニトリル(2.5mL)懸濁液を室温で攪拌した。次いで、四塩化炭素(mg,mmol,eq)を5分間滴下して加えた。次いで、反応混合物を60℃で攪拌したところ、直ちに濃橙色溶液となった。6時間後、反応を停止し、室温に冷却した(GCMSで完了したことを確認した)。このステップにおける化合物6の化学収率は計算値で76%であった。
【0191】
当業者は、実施例10a,10b及び10cにおいて、保護/脱保護をin situで一段階で実施可能であることを容易に理解するであろう。
【0192】
実施例11:パラジウム触媒による1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン−5−イル)−アミドの調製
【0193】
【化43】

【0194】
オーブン乾燥したシュレンク管に、1−メチル−3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸アミド(175mg,1mmol)、5−クロロ−9−イソプロピル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノ−ナフタレン(220mg,1mmol)、NaOtBu(202mg,2.1mmol)、Pd2(dba)3(92mg,0.1mmol)及び2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−3,4,5,6−テトラメチル−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(65mg,0.11mmol)を投入し、真空にし、窒素を3回補充した。t−ブタノール(4mL)を加え、得られた混合物を、窒素下、80℃で一晩、磁気攪拌した。18時間後にLC分析した結果、変換率は21%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
YはCHCHR6(R7),C=C(A)Z,CY2(R2)Y3(R3)又はC=N−NR4(R5)であり;
2及びY3は独立してO,S,Nであり;
A及びZは独立してC1-6アルキルであり;
1はCF3又はCF2Hであり;
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく;
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり;
Bは単結合又は二重結合であり;
6及びR7は独立して水素又はC1-6アルキルである。]
の化合物を調製する方法であって、
式(II):
【化2】

[式中、
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートであり;
Y及びBは式(I)の化合物に関して定義した通りである。]
の化合物を、
式(III):
【化3】

[式中、R1は式(I)の化合物に関して定義した通りである。];
の化合物と、
銅及び配位子を含む触媒の存在下で反応させるステップを含む、前記方法。
【請求項2】
XがClである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒がCuI,CuBr及び/又はCuClを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記配位子が1,2ジアミン又は1,3ジアミンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記配位子がN,N’ジメチル1,2ジアミンシクロヘキサン,N,N’ジメチル1,2ジエチルアミン又はN1−メチル−プロパン−1,3−ジアミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(III)の化合物を前記触媒と接触させる前に、液状の式(III)の化合物を準備し、前記反応を開始することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
下記ステップ:
a)液状の式(III)の化合物を準備するステップ、
b)前記銅を式(III)の化合物と接触させるステップ、
c)前記配位子を式(III)の化合物と接触させるステップ、
を含み、ステップb)及びc)のうち少なくとも1つを工程a)の後に実施する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記反応を極性有機溶媒中で実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が式(II)の化合物である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記銅が式(II)又は式(III)の化合物に対して5モル%未満で存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応を100℃以上の温度で実施する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(X):
【化4】

の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【化5】

の化合物を、式(XII):
【化6】

[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物と反応させるステップを含む前記方法、あるいは、
式(XIV):
【化7】

の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【化8】

の化合物を、式(XV):
【化9】

[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物と反応させるステップを含む前記方法、あるいは、
式(XVII):
【化10】

の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【化11】

の化合物を、式(XVIII):
【化12】

[XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物と反応させるステップを含む前記方法、あるいは、
式(XIX):
【化13】

の化合物を調製する方法であって、
式(XI):
【化14】

の化合物を、式(XXVII):
【化15】

[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物と反応させるステップを含む前記方法である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
i.式(XXX):
【化16】

の化合物を調製する工程であって、
下記ステップ:
(a)式(XXXI):
【化17】

[式中、XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物のケトン基を、適当な保護試薬を用いて保護するステップ;
(b)請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法に従い、ステップ(a)で調製した化合物を、式(XI):
【化18】

の化合物と反応させるステップ;及び
(c)前記ケトン基を脱保護するステップ
を含む前記工程と、
ii.必要な場合には、式(XXX)の化合物を、式(XXXIV):
【化19】

の化合物に変換する工程と
を含む方法。
【請求項14】
ステップ(a)で調製された化合物が、式(XXXII)又は(XXXIII):
【化20】

[式中、
2及びY3は独立してO,S,Nであり;
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく;
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり;
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。]
の化合物である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式(XXXI),(XXXII),(XXXIII),(XXVII),(XVIII),(XXXV)又は(XXXVI):
【化21】

[式中、
2及びY3は独立してO,S,Nであり;
2及びR3は独立してC1-8アルキルであり、R2及びR3は一緒になって5−8員環を形成してもよく;
4及びR5は独立してC1-8アルキルであり;
XはF,Cl,Br,I又はスルホネートである。
但し、式(XXXV)の化合物は、
i.Y2がOであり,Y3がOであり,R2がC37−(n)であり,R3がC37−(n)である化合物;
ii.Y2がOであり,Y3がOであり,R2がC25であり,R3がC25である化合物;
iii.Y2がOであり,Y3がOであり,R2及びR3が一緒になって−CH2−CH2−である化合物
ではない。]
の化合物。

【公表番号】特表2012−513961(P2012−513961A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542773(P2011−542773)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067283
【国際公開番号】WO2010/072631
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】