説明

殺菌消毒剤含有ウェットワイパー

【課題】殺菌消毒剤を均一に不織布に含浸させ、優れた殺菌性能を有するウェットワイパーを提供すること。
【解決手段】ウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなる不織布と、前記不織布に含浸させた第四級アンモニウム塩を含む殺菌消毒剤水溶液と、を含有するウェットワイパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌消毒剤を含有するウェットワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第四級アンモニウム塩は防かび剤、防腐剤、消毒剤、脱臭剤として、主として病院及び食品加工場の消毒、繊維、塗料、及び化粧品などの防かび、並びに木材の防腐などに使用されている。
第四級アンモニウム塩の殺菌効果については、次の様に考えられている。第四級アンモニウム塩は陽電荷を有し、菌体の細胞膜は陰電荷を帯びているため、菌体表面に第四級アンモニウム塩が集積する。菌体表面に集積した第四級アンモニウム塩が、菌体タンパク質を変性させることにより、殺菌効果を発揮する。
具体的には、第四級アンモニウム塩の殺菌メカニズムとして、清浄作用や角質溶解作用、乳化作用により、第四級アンモニウム塩は、細胞壁に取り込まれ、細胞膜の表面張力を低下させて殺菌効果を発揮すると考えられている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、第四級アンモニウム塩の不織布基布への吸着を低減する目的で、キレート剤及びアミノ酸型界面活性剤などを含有する殺菌消毒剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−127516号公報
【特許文献2】特開2000―191521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的にウェットワイパーに使用される、不織布のセルロース成分が負の電荷を帯びているために、第四級アンモニウム塩は吸着されやすく、不織布に均一に含浸できず防かび性を悪化させる原因となっている。特に、ロール巻きの形態であるウェットワイパーにおいて、殺菌消毒剤を含浸させる際に、ロールの下部まで殺菌消毒剤が浸透せずに保存期間中にかびが発生することも少なくない。
また、特許文献1及び特許文献2に開示された殺菌消毒剤においても、第四級アンモニウム塩を均一に含浸させることは困難である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、殺菌消毒剤を均一に不織布に含浸させ、優れた殺菌性能を有するウェットワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、第四級アンモニウム塩を含有する殺菌消毒剤水溶液をウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなる不織布に含浸させることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のウェットワイパーを提供する。
[1]ウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなる不織布と、前記不織布に含浸させた第四級アンモニウム塩を含む殺菌消毒剤水溶液と、を含有するウェットワイパー。
[2]前記第四級アンモニウム塩がアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩である、前記[1]に記載のウェットワイパー。
[3]前記アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩のアルキル基がオクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、及びセチル基からなる群から選択される少なくとも1種である、前記[2]に記載のウェットワイパー。
[4]前記合成繊維がポリエステル繊維である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のウェットワイパー。
[5]吸着溶解率が均一に0.5%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のウェットワイパー。
[6]吸着溶解率の最大/最小比率が5以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のウェットワイパー。
[7]前記不織布がロール状に巻き取られた形態である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のウェットワイパー。
[8]ウイルスに対する殺菌効果を有する、前記[1]〜[7]のいずれかに記載のウェットワイパー。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、不織布に均一に殺菌消毒剤を含浸させることができる。また、本発明において、殺菌消毒剤水溶液を不織布に均一に含浸させることができるので、優れた防かび性能を有し、また、優れた殺菌性能を有するウェットワイパーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1枚のウェットワイパーの概略側面図を示す。図1中の、A、B、C、Dは、ウェットワイパーをロール状とした不織布に上方部側(A)から、底部側(D)へ殺菌消毒剤水溶液を含浸させた場合における試験片の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施の形態のウェットワイパーは、ウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなる不織布と、不織布に含浸させた第四級アンモニウム塩を含む殺菌消毒剤水溶液と、を含有するウェットワイパーである。
【0013】
(殺菌消毒剤水溶液)
本実施の形態における殺菌消毒剤水溶液は、殺菌消毒作用を有する有効成分として、第四級アンモニウム塩を含む水溶液である。
第四級アンモニウム塩は、四級アンモニウム塩構造を分子内に有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などが挙げられ、下記式(1)〜(4)で示される第四級アンモニウム塩が挙げられる。
[R(CH)]X ・・・・式(1)
[R(CH)N(CHCHO)H[(CHCHO)H]]X ・・・・式(2)
[R(CH)CH]X ・・・・式(3)
[RPy]X ・・・・式(4)
(式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、Xは、それぞれ独立して、1価又は2価の陰イオンを表す。lは、それぞれ独立して、1又は2の整数を表し、m及びnは、それぞれ独立して、2〜40の整数を表す。)
本実施の形態における第四級アンモニウム塩において、アルキル基としては、長鎖アルキル基であることにより著しい殺菌力を示すため、炭素数8〜18の飽和炭化水素基であることが好ましく、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、及びセチル基であることがより好ましく、ラウリル基であることがさらに好ましい。
第四級アンモニウム塩は、F、Cl、Br、I等のハロゲン化物イオン、NO、及びSO2−などとの塩であり、電気陰性度が高いClなどとの塩であることが好ましい。
本実施の形態において、これらの第四級アンモニウム塩を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本実施の形態においては、殺菌性能の観点で、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキル基は炭素数が8〜18のものがより好ましく、さらに好ましくはラウリルベンジルジメチルアンモニウム塩である。
【0015】
本実施の形態における殺菌消毒剤水溶液において、第四級アンモニウム塩の含有量としては、十分な殺菌性能を持たせながら、皮膚刺激性を抑えることができるので、殺菌消毒剤水溶液中、0.01〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0016】
本実施の形態における第四級アンモニウム塩の殺菌効果は、菌に対して殺菌的な作用であることが好ましいが、静菌的な作用による菌の増殖を抑制する作用であってもよい。
本実施の形態において、第四級アンモニウム塩の殺菌効果により、ウェットワイパーとして清浄、殺菌、及び除菌作用などを有する。また、第四級アンモニウム塩が、殺菌消毒剤水溶液として、不織布に含浸されていることにより、不織布による拭き取り効果と、第四級アンモニウム塩の殺菌効果により、ウェットワイパーとして清浄、殺菌、及び除菌作用などを有する。本実施の形態のウェットワイパーは、第四級アンモニウム塩の揮発等による殺菌効果の低下が少ないため、長期間に渡り殺菌効果を持続する。
【0017】
本実施の形態における殺菌消毒剤水溶液には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、必要に応じて界面活性剤、低級アルコール、キレート剤、及び防腐剤などを配合することができる。また、本実施の形態の殺菌消毒剤水溶液には、その他の成分として着色料、香料、及び安定剤などを配合することができる。
【0018】
本実施の形態における界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤などが挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ショ糖ラウリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類、モノステアリン酸エチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ステアリルジメチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド類などが挙げられる。
【0019】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸塩類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−アシルアミノ塩酸類、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩類、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム等のN−アシルタウリン塩類、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。
本実施の形態において、これらの界面活性剤を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本実施の形態における低級アルコールは、例えば、炭素数1〜4の水溶性アルコール類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、メトキシイソプロパノール等のモノオール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、メチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、ブチンジオール等のジオール類、グリセリン、ブタントリオール、エリスリトール等のポリオール類などが挙げられる。
本実施の形態において、これらの低級アルコールを1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本実施の形態におけるキレート剤は、金属捕獲作用があれば特に限定されないが、例えば、コンプレキサン、アラニン、エチレンジアミンヒドロキシエチル3酢酸3ナトリウム、エデト酸、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、エデト酸3ナトリウム、エデト酸4ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。この中でも、アラニン、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ポリリン酸ナトリウム、及びメタリン酸ナトリウムが好ましい。
本実施の形態において、これらのキレート剤を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本実施の形態における防腐剤は、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ウンデレン酸、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類及びその塩等の有機酸及びその誘導体、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロロチモール、クロロフェネシン、クロロクレゾール、ジクロロキシレノール、ジクロロベンジルアルコール、チオビスクロロフェノール、チモール、トリクロロカルバニリド、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、ナトリウムフェノキシド、パラクロロフェノール、ハロカルバン、フェニルエチルアルコール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム、フェノキシエタノール、フェノール、フェキサクロロフェン、ベンジルアルコール等のフェノール類、プラトニン、ピオニン、ルミネキス、感光素NK143等の感光素、茶エキス、ヒノキキチオール、リンゴエキス、ポリリジン等の抗菌活性を持つ植物抽出液、グルタラール、クロラミンT、クロルヘキシジン、ジイセチオン酸ジプロモプロパミジン、ジンクピリチオン、トリクロサン、ピリチオンNa、フルフラール、クロラミンTなどが挙げられる。
本実施の形態において、これらの防腐剤を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
(不織布)
本実施の形態における殺菌消毒剤水溶液を含浸させる不織布は、ウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなるものである。
【0024】
本実施の形態におけるウッドパルプ繊維は、一般的なものであれば特に限定されず、例えば、回転する円筒型のストーンの軸に平行に原木を押し付け、発生する摩擦熱により繊維間のリグニンを軟化させるなど機械的な方法と、水酸化ナトリウムのアルカリ溶液あるいは亜硫酸水溶液で木材を蒸解してリグニンを溶解させるなど化学的な方法により繊維を解離し単繊維化したものが挙げられる。
本実施の形態において、これらのウッドパルプ繊維を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本実施の形態における合成繊維は、繊維形成性を有する熱可塑性重合体からなる単一重合体からなる合成繊維、又は2種類以上の重合体が用いられる。 熱可塑性重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、 ナイロン66、ナイロン610、ナイロン46等のポリアミド、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維などが挙げられ、複合繊維の場合にはポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリアミド繊維と、の組み合わせなどが挙げられる。本実施の形態においては、通気性があり、柔軟性を持たせることができるので、ポリエステル繊維が好ましい。
本実施の形態において、これらの合成繊維を1種単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本実施の形態における不織布は、シート状に並べたウッドパルプ繊維及び合成繊維を高圧のごく細い水流で叩いて繊維を絡ませて布地を作るスパンレース製法により製造される不織布であり、優れた吸水性、柔軟性、及び透湿性を有する。
本実施の形態において、不織布の目付量は薄すぎても厚すぎても使用しにくいため10〜120g/mであることが好ましく、15〜80g/mであることがより好ましい。
【0027】
本実施の形態における不織布に殺菌消毒剤水溶液を含浸させる方法としては、殺菌消毒剤水溶液として不織布に適用され、第四級アンモニウム塩が、不織布の全面に均一に含浸される方法であれば特に限定されない。例えば、ボトル容器にロール状に巻き取られた不織布を、ロール面(ロール状の形状になっている面をいう。)がボトル容器の底部に接するように入れ、ロール状に巻き取られた不織布の上方ロール面側より殺菌消毒剤水溶液を投入することにより含浸させることができる。
本実施の形態において、不織布に均一に含浸されるとは不織布表面に殺菌消毒剤水溶液が偏らずに存在することを意味し、不織布に均一に殺菌消毒剤水溶液が含浸されることにより局部的なかびの発生を防止することができる。
【0028】
本実施の形態における不織布に殺菌消毒剤水溶液を含浸させる方法としては、殺菌消毒剤水溶液により不織布が含浸しているウェットワイパーを提供することのできる方法であれば、上記記載の方法に限られない。
例えば、不織布に殺菌消毒剤溶液を含浸させて、殺菌消毒剤溶液における溶媒を必要に応じて蒸留などにより留去し、次いで、水を含浸させることによっても、本実施の形態のウェットワイパーとすることができる。また、不織布に殺菌消毒剤水溶液を含浸させて、殺菌消毒剤水溶液における溶媒を必要に応じて蒸留などにより留去することによっても、本実施の形態のウェットワイパーとすることができる。留去される溶媒は、ウェットワイパーに残存していてもよい。
【0029】
本実施の形態において、殺菌消毒剤水溶液を不織布に含浸する割合は、殺菌効果の観点で、不織布1質量部に対して殺菌消毒剤水溶液0.5質量部以上であることが好ましく、拭き残りを考慮すると5質量部以下であることが好ましい。
【0030】
本実施の形態において不織布に均一に殺菌消毒剤水溶液が含浸されていることを示す指標として、不織布に対する第四級アンモニウム塩の吸着溶解率が挙げられる。
本実施の形態における吸着溶解率(%)とは、殺菌消毒剤水溶液を含浸させた不織布を水に浸漬させた時に、水に溶解した第四級アンモニウム塩の質量を算出し、不織布質量との比率として求めたものである。
吸着溶解率は、均一に0.5%以上であることが好ましい。本実施の形態において、吸着溶解率が均一に0.5%以上であるとは、不織布の任意の部分において、吸着溶解率が0.5%以上であることを意味する。吸着溶解率が0.5%以上であることにより、防かび性に優れるウェットワイパーとすることができる。
吸着溶解率は、清拭後の拭き残りや、不織布を触った際のぬめり感の観点から0.5〜5.0%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0%である。
【0031】
本実施の形態における吸着溶解率の最大/最小比率は5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下である。本実施の形態における吸着溶解率の最大/最小比率とは、吸着溶解率の最大値と最小値の比率を意味する。
吸着溶解率の最大/最小比率が5以下であることにより、均一に殺菌消毒剤水溶液が含浸したウェットワイパーとすることができる。
【0032】
本実施の形態の不織布の形態は、例えば不織布をシート状に裁断し、Z折をして重ねて、殺菌消毒剤水溶液を含浸させピロー包装したものや不織布をロール状に巻き、殺菌消毒剤水溶液を含浸させたボトル仕様のものが挙げられ、不織布をロール状に巻いた形態のものが好ましい。
【0033】
本実施の形態の殺菌消毒剤水溶液を含浸させたウェットワイパーは各種表面の清浄、殺菌、及び除菌を目的として、例えば、病院のドアノブ、手すり、ベッド、手術台、モニターのタッチパネル等の器具類、シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工透析装置、人工呼吸器等のME機器類、例えば、食品工場のベルトコンベア、作業台、ステンレス容器、冷蔵庫、調理器具等の作業用品類、洗面台、便座、家具等の住宅用品類、介護用施設の器具類などに好適に用いることができ、さらには人体の清浄、殺菌、及び除菌などにも好適に用いられる。
【0034】
本実施の形態における殺菌消毒剤水溶液は、細菌及び真菌(カビを含む)などの菌体だけに限られず、ウイルスに対しても殺菌効果を発揮する。
本実施の形態の殺菌消毒剤水溶液を含浸させたウェットワイパーは、ウイルスの感染予防にも利用できる。中でも、ノロウイルスなどのエンベロープ(外殻)を有さないウイルスに対する殺菌効果に優れるため、ノロウイルスなどのエンベロープ(外殻)を有さないウイルスに対する感染予防に好適に利用できる。
【実施例】
【0035】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、本実施の形態で用いられる評価方法及び測定方法は下記のとおりである。
【0036】
<吸着溶解率の測定方法>
ロール状に巻き取られた不織布をボトル容器にロール状の面が接するように配置した場合の上方部から底部までの4ヶ所から試験片を切り取り、水中に30分間浸漬させ抽出した後に、水中に溶解した第四級アンモニウム塩の濃度を高速液体クロマトグラフ(UV検出器SPD−6AV 検出波長 256nm 島津製作所製)、カラムにODSカラム(CAPCELL PAK UG80型 資生堂製)、移動相にはアセトニトリルと1.3%過塩素酸ナトリウム水溶液の混合物(混合比55/45)を用いて定量した。吸着溶解率を下記計算式より求めた。
[計算式]
吸着溶解率(%)=試験片中から水に抽出された第四級アンモニウム塩の質量(W1)/試験片不織布の質量(W2)×100
W1=試験片の抽出水溶液中の第四級アンモニウム塩の濃度(質量%)×{抽出水の質量(W4)+試験片不織布中の水の質量(W3)}
【0037】
<吸着溶解率の最大/最小比率>
ロール外側、ロール中央、ロール内側のシートよりそれぞれ上方部から底部までの4ヶ所の試験片における吸着溶解率の最大値と最小値から、各シートにおける吸着溶解率の最大/最小比率を求めた。
ここで、n枚のロール巻きとした場合に、ロール外側とは、外側から数えて1枚目を意味し、ロール中央とは、n/2枚目を意味し、ロール内側とは、n枚目のロール巻きの最中心のシートを意味する。
【0038】
<防かび性の評価方法>
ロール状に巻き取られた不織布から上記と同様に切り取った試験片をポリデキストロース寒天培地(栄研化学株式会社製)に貼付し、カビ懸濁液(クラドスポリウムかび10〜10cfu/mL)1mLを滴下しコンラージ棒で広げ培養を行った。培養時間は25℃で2週間とした。評価基準は以下の通りである。
○:試験片不織布にかびが全く発生しない。
△:試験片不織布の3分の1未満がかびで覆われている。
×:試験片不織布の3分の1以上がかびで覆われている。
【0039】
<殺菌消毒剤水溶液の調整>
殺菌消毒剤として50質量%ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド水溶液1.5質量部と精製水98.5質量部をステンレス容器に投入し、15分間、300rpmで攪拌を行い、0.75質量%殺菌消毒剤水溶液を調整した。
【0040】
<ノロウイルス不活性化の評価>
上記の0.75質量%殺菌消毒水溶液1mLにネコカリシウイルス浮遊液0.1mLを添加し、室温で30分間作用させた後、細胞維持培地(新生コウシ血清2%添加Eagle MEN)にてウイルス感染価(50%組織培養感染量:TCID50)をReed−Muench法により測定する。評価基準は下記の通りである。
ノロウイルスは、エンベロープを有さない一本鎖RNAウイルスである、カリシウイルス科ノロウイルス属に属するウイルスである。本実施例では、人工培養が確立されていないノロウイルスに代えて、ノロウイルス不活性化の一般的な評価方法として、ネコカリシウイルスを用いて評価を行った。
A:試験開始時のウイルス感染価(TCID50)の対数値
B:30分後のウイルス感染価(TCID50)の対数値
○:AからBを引いた差が3以上
×:AからBを引いた差が3未満
【0041】
[実施例1]
目付量51g/mのパルプ系不織布(組成比 ウッドパルプ/ポリエステル=54/46 デュポン社製 style8838)を幅14cmのシート状に裁断し、図1に示すように長さ方向に18cmごとにミシン目2を入れて1枚のウェットワイパー1とし、90枚のロール巻きとした。このロール巻きの質量に対して2.5倍量の殺菌消毒剤水溶液を上方ロール面側から含浸させてウェットワイパーを製造した。
ボトル容器に入れて蓋をして、14日間放置後、図1のように不織布の含浸方向より不織布をロール外側(1枚目)、ロール中央(45枚目)、ロール内側(90枚目)より各々4箇所(上方部から底部へ、A,B,C,D)として3.5cm×4.5cmの大きさに切り取り線3を入れて試験片4を切り取り、それぞれの吸着溶解率及び防かび性を表1及び表2に示す。
【0042】
[実施例2]
実施例1と同じ不織布の90枚のロール巻きを使用し、このロール巻きの質量に対して3.5倍量の殺菌消毒剤水溶液を上方ロール面側から含浸させてウェットワイパーを製造した。実施例1と同様に評価を実施した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0043】
[比較例1]
目付量40g/mのレーヨン系不織布(組成比 ビスコースレーヨン/ポリプロピレン・ポリエチレン=80/20 大和紡績株社製 AS40)を幅14cmのシート状に裁断し、長さ方向に20cmごとにミシン目2を入れて1枚のウェットワイパー1とし、60枚のロール巻きとした。このレーヨン系不織布に対して質量で2.5倍量の殺菌消毒剤水溶液を上方ロール面側から含浸させてウェットワイパーを製造した。
ボトル容器に入れて蓋をして、14日間放置後、図1のように不織布の含浸方向より不織布をロール外側(1枚目)、ロール中央(30枚目)、ロール内側(60枚目)より各々4箇所(上方部から底部へ、A,B,C,D)として3.5cm×5.0cmの大きさに切り取り線3を入れて試験片4を切り取り、それぞれの吸着溶解率及び防かび性を表1及び表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1及び表2の結果から、実施例1及び実施例2のウェットワイパーは、ロール外側からロール内側までの不織布のいずれの部位においても吸着溶解率は0.5%以上であり均一に殺菌消毒剤水溶液が不織布に含浸したウェットワイパーであり、いずれの部位においてもかびの発生は認められないものであった。
一方、レーヨン及び合成繊維の組成を有する不織布に含浸させた比較例1のウェットワイパーは、ロール外側からロール内側までの不織布の測定部位Dにおいて吸着溶解率は0.5%未満であり、殺菌消毒剤水溶液を均一に不織布に含浸できるものではなく、不織布の測定部位Dにおいては、かびの発生が認められた。
【0047】
[実施例3]
0.75質量%殺菌消毒剤水溶液1mLのノロウイルス不活性化の評価を実施した。測定結果を表3に示す。評価結果が○であり、ノロウイルスの感染予防に効果があると考えられた。
[比較例2]
0.75質量%殺菌消毒剤水溶液1mLの代わりに精製水を用いてノロウイルス不活性化の評価を実施した。測定結果を表3に示す。評価結果が×であり、ノロウイルスの感染予防に効果がないと考えられた。
【0048】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、殺菌消毒剤を均一に不織布に含浸させ、優れた殺菌性能を有するウェットワイパーを提供することができる。本発明のウェットワイパーは、各種表面の清浄、殺菌、及び除菌を目的として、例えば、病院のドアノブ、手すり、ベッド、手術台、モニターのタッチパネル等の器具類、シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工透析装置、人工呼吸器等のME機器類、例えば、食品工場のベルトコンベア、作業台、ステンレス容器、冷蔵庫、調理器具等の作業用品類、洗面台、便座、家具等の住宅用品類、介護用施設の器具類などに好適に用いることができ、さらには人体の清浄、殺菌、及び除菌などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ウェットワイパー
2 ミシン目
3 切り取り線
4 試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウッドパルプ繊維及び合成繊維の組成からなる不織布と、前記不織布に含浸させた第四級アンモニウム塩を含む殺菌消毒剤水溶液と、を含有するウェットワイパー。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム塩がアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩である、請求項1に記載のウェットワイパー。
【請求項3】
前記アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩のアルキル基がオクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、及びセチル基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のウェットワイパー。
【請求項4】
前記合成繊維がポリエステル繊維である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェットワイパー。
【請求項5】
吸着溶解率が均一に0.5%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウェットワイパー。
【請求項6】
吸着溶解率の最大/最小比率が5以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のウェットワイパー。
【請求項7】
前記不織布がロール状に巻き取られた形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のウェットワイパー。
【請求項8】
ウイルスに対する殺菌効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のウェットワイパー。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256338(P2009−256338A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71723(P2009−71723)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】