毒素結合性オリゴ糖および重合体粒子を含有する医薬組成物
本明細書では毒素媒介性疾患の治療における方法および組成物が提供される。本発明の一態様は、毒素と相互作用するオリゴ糖をベースとする治療薬およびその使用方法である。一実施形態では、本発明のオリゴ糖をベースとする治療薬には、オリゴ糖結合部分が付着した状態の重合体粒子が含まれる。クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢を含む、抗生物質関連性下痢および偽膜性大腸炎などの毒素媒介性疾患の治療において本発明の組成物を使用することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細菌外毒素は、多数の機序を進行させることで高感受性を示す真核生物の標的細胞内部の重要な代謝過程を改変している、広範囲の分泌細菌タンパク質を表す。一般に、これらの毒素は、宿主細胞膜を損傷させるかまたは細胞内の正常な生理学的過程の維持にとって重要なタンパク質を修飾することによって作用を発揮する。
【0002】
偽膜性大腸炎(PMC)は、重篤でかつ致死性を示す場合がある胃腸疾患として理解されている。グラム陽性の胞子形成細菌であるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、PMCおよび抗生物質関連性大腸炎(AAC)の主要な原因菌として既知のものである。
【0003】
PMCまたはCDAD患者に対する現行の治療には、関連の抗菌剤または化学療法剤の中止、非特異的な支援策、およびクロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗生物質による治療が含まれる。最も一般的な抗菌治療の選択肢として、バンコマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、フシジン酸、およびバシトラシンが挙げられる。抗生物質によるCDADの治療は疾患の臨床上の再発に関連する。再発の頻度は5〜50%であり、再発率の20〜30%は最も一般的に引用される数字であることが報告されている。再発はほぼ等しい頻度で起き、これは上に挙げた抗生物質のいずれかを用いる主な治療における薬剤、用量、または期間とは無関係である。対照の抗生物質が問題を提起する場合、治療上の主な課題は複数回にわたって再発した患者の管理において認められる。
【0004】
腸管でのクロストリジウム・ディフィシル毒素活性の直接中和におけるいくつかのアプローチが報告されている。第1に、数グラムの量のコレスチラミンおよびコレスチポールなどのアニオン交換樹脂が抗生物質と組み合わせて経口投与されている。このアプローチを用い、軽度から中程度の疾患患者、ならびにCDADの再発をした個人の治療が行われている。テデスコ,F.J.(Tedesco,F.J.)(1982年)「Treatment of recurrent antibiotic−associated pseudomembranous colitis」Am J Gastroenterol 77(4):220−1頁;モグ、G.A.(Mogg,G.A.)、Y.アラビ(Y.Arabi)ら(1980年)「Therapeutic trials of antibiotic associated colitis」Scand J Infect Dis Suppl(Suppl22):41−5頁を参照のこと。イオン交換樹脂による治療では、毒素Aの特異的除去がもたらされることなく、対照のCDADに対し樹脂と相乗的に作用することが意図された抗生物質が除去されうる。さらに、毒素Aを除去するのに必要な大量の樹脂をそれらの不快な味と組み合わせることで、上記アプローチの使用が抑えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮すると、クロストリジウム・ディフィシルに起因するPMC症候群および毒素に起因する他の疾患を治療する化合物または化合物の組み合わせに対して需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、毒素媒介性疾患(toxin mediated disorder)の治療に対する組成物および方法に関する。
【0007】
本発明の一態様は、毒素結合性オリゴ糖などの毒素結合性部分、ならびに疎水性ブロックおよび1種もしくは複数種の付加的重合体ブロックを含むブロック共重合体(例えば、ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子)を含む毒素結合性組成物である。好ましくは、毒素結合性部分は、ブロック共重合体の1種もしくは複数種の付加的重合体ブロックに付着するかまたは連結される(すなわち連結部分によって直接的もしくは間接的に共有結合される)。
【0008】
本発明のこの態様の範囲内の好ましい実施形態では、毒素結合性組成物は毒素結合性オリゴ糖およびブロック共重合体(例えば、ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子として)を含む。ブロック共重合体(または共重合体粒子)は疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含み、毒素結合性オリゴ糖はブロック共重合体の親水性ブロックに付加されているかまたは連結されている状態にある。
【0009】
本発明のこの態様の範囲内の別の好ましい実施形態では、毒素結合性組成物は毒素結合性部分およびブロック共重合体(ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子など)を含む。ブロック共重合体は、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含みうる。ブロック共重合体が水性媒体内でミセルを形成しうるように、疎水性ブロックは化学的に架橋されるかまたは物理的に包まれる。毒素結合性部分は、親水性ブロックに付着されているかまたは連結されている。
【0010】
本発明の別の態様は、毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含む毒素結合性組成物であり、毒素結合性部分はナノ粒子に連結されかつナノ粒子は実質的に胃腸内腔(gastrointestinal lumen)から胃腸粘膜細胞内に吸収されない。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であり、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理され、約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の同組成物により、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの少なくとも約90%が結合される。
【0012】
本発明のさらなる態様は、重合体粒子などの粒子に付着されているかまたは連結されているクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖を有する毒素結合性組成物であり、粒子の単位表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3μ当量/m2もしくは約1μmol/m2よりも大きい。
【0013】
本発明の第3の態様は、重合体粒子などの粒子に付着されているか連結されているオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、粒子の単位表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3μ当量/m2もしくは約1μmol/m2よりも大きい。オリゴ糖は水可溶性タンパク質に結合しうる。好ましくは、粒子はタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、かつ分子として水溶性を示さない。これらの組成物は、好ましくは約0.5m2/gm〜約600m2/gmの表面積を有し、それに加えまたはその代わりとして、単位重量当たりのオリゴ糖のモル含量は粒子の1グラム当たり約100μmolよりも大きい。
【0014】
本発明の第1、第2または第3の態様のいずれかの範囲内に含まれた実施形態を含む一部の実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)が親水性ブロックに付着されるかまたは連結される場合、粒子は疎水性および親水性ブロックを有する共重合体粒子でありうる。ブロック共重合体は、コアを形成する疎水性ブロックおよびシェルを形成する親水性ブロックを有するミセルの形態であってもよい。例えば付加的単量体から形成された付加的重合体または重合体ブロックを含めることで、例えば疎水性コアが形成されるかまたは安定化される。特に好ましいアプローチでは、ミセルは、ブロック共重合体の疎水性ブロックに化学的に架橋するかまたは物理的に包むかまたはそうでなければ安定化させる付加的重合体または重合体ブロックを含んでもよい。適切な付加的単量体(付加的なコアを安定化させる重合体の形成に適する)の例として、これらに限定されないが、スチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルが挙げられる。好ましくは、親水性ブロックはジメチルアクリルアミドの重合体であり、かつ疎水性ブロックは、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、スチレン、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルの重合体または共重合体である。好ましくは、オリゴ糖は8−メトキシカルボニルオクチル−α−D−ガラクトピラノシル−(1,3)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1,4)−O−β−D−グルコピラノシドである。本発明の実施形態のいずれ場合でも、本発明の粒子を微粒子と称することが可能である。しかし、特定の実施形態が微粒子と称される場合でさえ、かかる実施形態が必ずしも特定の大きさの範囲の粒子に限定されることはない。それゆえ、微粒子の言及においては、一般に、例えば全直径が約1mm未満の小型粒子に言及する。しかし特に、微粒子の言及においては、ミクロン規模もしくはナノ規模の寸法(例えば直径)を有することを含む、実質的により小さい粒子を除外するつもりはない。本明細書では、毒素結合性オリゴ糖などのオリゴ糖を含む粒子を糖粒子と称してもよい。
【0015】
一般に、本発明の第1、第2または第3の態様の実施形態では、毒素結合性部分は細菌外毒素などの細菌毒素に対して結合親和性を示しうる。それゆえ、毒素結合性部分は、ヒト細胞を含む哺乳類細胞などの真核細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を示しうる。毒素結合性部分は、宿主の粘膜表面上で作用可能な毒素に結合するかそれを中和させることが可能である。特に粘膜表面は、口、鼻、呼吸器、胃腸、泌尿器、生殖器および耳の粘膜表面からなる群から選択可能である。
【0016】
毒素媒介性疾患の治療において本明細書に記載の組成物を使用してもよい。一部の実施形態では、組成物は下痢、偽膜性腸炎、または抗生物質関連性大腸炎などのクロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患の治療において使用される。
【0017】
本明細書において記述されたすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の出版物もしくは特許出願が参照により援用されるものとして具体的かつ個別に示される場合と同程度に、本明細書において参照により援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において毒素と結合しかつ毒素媒介性疾患を治療するための方法および組成物が提供される。好ましい実施形態では、組成物は、毒素結合性部分で機能的にされる粒子、および好ましくは特定のオリゴ糖配列など、単位重量または単位表面積当たりで高密度な毒素結合性部分を含む。オリゴ糖などの毒素結合性部分は細菌毒素などの毒素に結合可能である。好ましい組成物は、毒素Aおよび/または毒素Bなどのクロストリジウム・ディフィシル毒素に結合する組成物である。クロストリジウム・ディフィシル毒素に照らして本明細書に記載の多数の実施形態が説明されかつ検討されるが、本発明はそれらに限定されることはない。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、本来ならクロストリジウム・ディフィシル毒素に対して中程度の親和性を示す、本明細書で用いられるオリゴ糖配列は、粒子表面上に高密度に提示されると極めて高い結合速度を示した。特定の理論に拘束されたくないが、表面に付着される高密度のオリゴ糖部分は多価効果をもたらし、毒素への結合が増強される結果になると考えられる。すなわち、オリゴ糖を有する粒子の広範囲の親和性は個々のオリゴ糖の親和性の合計分よりも高い。第1の結合事象が生じていると、第2の毒素部分が、エンタルピー的および/またはエントロピー的に結合に親和性を示すように第2のオリゴ糖に提示されると考えられる。好ましくは、本発明の毒素結合性粒子は、粒子表面での表面単位および/または限られたコンフォメーションの程度(conformation degree)につき高密度のオリゴ糖を含有する。これらの特徴は、CDADなどの状態における毒素中和にとってより高い毒素結合能および/またはより大きな効力を可能にすると考えられる。
【0020】
クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢などの毒素媒介性疾患の治療および/または予防において本明細書に記載の粒子を使用することが可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、クロストリジウム・ディフィシル毒素で汚染された腸管から毒素を除去するための組成物である。好ましくは、毒素を除去するためのこの組成物は、表面が約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5またはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きい密度で共有結合されたオリゴ糖に提示された粒子を含有する。好ましい密度範囲は約1μ当量/m2〜約15μ当量/m2であり、さらにより好ましい密度範囲は約3μ当量/m2〜約8μ当量/m2である。使用されるオリゴ糖配列は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類およびこれらより大きい分子量のオリゴ糖であり、かつ細菌毒素に対して適度の親和性を示しうる。適切なオリゴ糖は、分岐状、線状、または樹状でありうる。
【0022】
粒子
粒子は、好ましくはシリカ、二酸化チタン、珪藻岩、ゼオライト、ベントナイト、および他の金属ケイ酸塩などの無機物質、またはスチレン、オレフィン、アクリル、メタクリルおよびビニル単量体、重縮合物、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ホルムアルデヒドをベースとする樹脂、ポリアミンおよびポリオールをベースとする架橋ヒドロゲル、セルロースエーテルおよびセルロースエステルなどの半天然高分子から調製された有機高分子から選択される。好ましくは、選択された高分子は非毒性、非生体分解性および非吸収性を示す。本明細書で用いられる「重合体」という用語は共重合体を含む。粒径は、直径で好ましくは約5nm〜約1000ミクロン、より好ましくは約50nm〜約100ミクロン、さらにより好ましくは約75nm〜約10ミクロン、さらにより好ましくは約75nm〜約1ミクロン、および最も好ましくは約100nm〜約500nmの範囲である。
【0023】
様々な実施形態の一部には、重合体粒子が含まれる。好ましくは、重合体粒子は共重合体である。これらの一実施形態は、毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含有する毒素結合性組成物であり、毒素結合性部分はナノ粒子に連結されかつ実質的にナノ粒子は胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない。これに照らすと、ナノ粒子は約1ミクロン未満の平均粒径を有する粒子である。好ましい実施形態では、ナノ粒子の粒径は約50nm〜約800nm、好ましくは約100nm〜約500nmの範囲である。さらにこれらの実施形態については、毒素結合性組成物は、対象への投与時に動物および好ましくは、例えばヒトならびに他の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ネコ、イヌ、ブタ、ニワトリ、ウシおよびウマ)を含む哺乳動物などの対象の胃腸内腔内に局在化される。「胃腸内腔」という用語は、本明細書において動物の腸管と呼びうる胃腸管内の空間または空洞を示す「内腔」という用語と同義的に用いられる。一部の実施形態では、毒素結合性組成物は胃腸粘膜を介して吸収されない。「胃腸粘膜」は、胃腸内腔を身体の他の部分から区別する細胞の層を示し、小腸粘膜などの胃腸粘膜を含む。一部の実施形態では、胃腸粘膜細胞による毒素結合性組成物の取り込み時に、胃腸内腔内に流出することによって内腔での局在化がなされる。本明細書において用いられる「胃腸粘膜細胞」は、例えば腸細胞(intestinal enterocyte)、結腸細胞(colonic enterocyte)、腸細胞先端(apical enterocyte)などの腸管上皮細胞を含む任意の胃腸粘膜細胞を示す。本明細書において用語、関連用語および文法上のバリエーションが用いられる際、かかる流出によって非吸収性に関する正味の効果が得られる。
【0024】
好ましいアプローチでは、毒素結合性組成物は実質的に胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない組成物でありうる。そのようなものとして本明細書において用いられる「吸収されない」とは、毒素結合性組成物の有意な量、好ましくは統計学的に有意な量、より好ましくは本質的に全部が胃腸内腔内に残存するように調節された組成物を示しうる。例えば、毒素結合性組成物の少なくとも約80%、85%、90%、95%、または98%が(統計学的に関連性があるデータセットに基づくいずれの場合にも)胃腸内腔内に残存する。
【0025】
血清バイオアベイラビリティの観点で相互に述べると、対象への投与後に毒素結合性組成物の生理学的に有意でない量が対象の血清内に吸収される。例えば、対象への毒素結合性組成物の投与時、(例えば投与後に検出可能な血清バイオアベイラビリティに基づき)毒素結合性組成物の約20%以下の投与量が対象の血清内にあり、好ましくは毒素結合性組成物の約15%以下、および最も好ましくは毒素結合性組成物の約10%以下が対象の血清内にある。一部の実施形態では、約5%以下、約2%以下、好ましくは約1%以下、およびより好ましくは約0.5%以下が(統計学的に関連性があるデータセットに基づくいずれの場合にも)対象の血清内にある。
【0026】
「吸収されない」という用語は、本明細書において「非吸収性の(non−absorbed)」、「非吸収性(non−absorbedness)」、「非吸収(non−absorption)」という用語およびその他の文法的なバリエーションとともに交互に用いられる。
【0027】
様々な好ましい実施形態には、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物が含まれる。約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.1mg/mL〜約20mg/mLであり、毒素結合性組成物およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中でインキュベートされる。好ましくは、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.5mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約0.8mg/mL〜約5mg/mL;さらにより好ましくは約1mg/mL〜約3mg/mLである。他の好ましい実施形態では、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.1mg/mL〜約20mg/mLであり、毒素結合性組成物およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Bは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中でインキュベートされる。好ましくは、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.8mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約1mg/mL〜約6mg/mLである。
【0028】
これらの様々な実施形態の一部では、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBは精製される。毒素結合性組成物とのクロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび/またはBのインキュベーションを約2時間〜約36時間;好ましくは約4時間〜約24時間;より好ましくは約12時間〜約18時間実施してもよい。インキュベーションは通常、約30℃〜約40℃;好ましくは約37℃の範囲の温度で実施される。重合体粒子に結合される毒素の量は、クロストリジウム・ディフィシル毒素のELISAによって上清中の遊離毒素の量を測定しかつ混合物に添加されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の量から差し引くことから算出された。試験から得られた値は、表8に一覧されかつ実施例8ではより詳細に述べられる。
【0029】
粒子は任意の適切な形状、好ましくは球形、層状、または不規則であってもよい。最も好ましい形状は球形である。粒子自体は、微孔性、マクロ孔質性(macroporous)、メソ細孔性、または非多孔性を示しうる。もし大きな粒子が使用される場合、毒素結合に使用可能な表面が高くなるようにこれらの粒子が多孔性であることが好ましい。孔サイズの分布は、好ましくは毒素が粒子の内部表面を横切ることを可能にするように選択される。例えば、クロストリジウム・ディフィシルによって分泌された毒素AおよびBなどの高分子量の毒素に対して要求される孔サイズは毒素の直径よりも少なくとも2倍大きい。球形ビーズなどの非多孔性粒子における表面は外面に限られることから、好ましくは特定の用量でGI内に存在する毒素負荷を中和させるのに十分な表面が利用可能であるようにビーズの大きさが調節される。
【0030】
好ましい実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の表面密度は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5もしくはこれら以上のμmol/m2より大きくてもよい。例えば、粒子における毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の単位表面密度当たりのモル含量は約1μmol/m2より大きくてもよく、例えば約1μmol/m2〜約10μmol/m2、好ましくは約1μmol/m2〜約5μmol/m2および一部の実施形態では約1μmol/m2〜約3μmol/m2の範囲であってもよい。特定の実施形態では、表面密度は約2もしくは約3μmol/m2であってもよい。他の好ましい実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の表面密度は、約0.5、0.1もしくは1.5μmol/m2より大きくてもよい。それに加えまたはその代わりとして、粒子における毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の単位重量当たりのモル含量は、好ましくは約10μmol/gm〜約1000μmol/gmの範囲であってもよい。粒子における好ましい毒素結合(例えばオリゴ糖)の単位重量当たりのモル含量は、約10μmol/gm〜約500μmol/gm、または約10μmol/gm〜約200μmol/gm、または約10μmol/gm〜約100μmol/gmの範囲であってもよい。一部の実施形態では、単位重量当たりのモル含量は約70μmol/gmであってもよい。
【0031】
表1中の情報は、所定のオリゴ糖含量に対する粒径および有孔性の選択上の指針として使用されうる。
【0032】
【表1】
【0033】
一部の実施形態では、粒子は、リン脂質の会合から形成されるリポソームまたは小胞、ならびにブロック共重合体ミセルなどの他の同様のタイプの高分子集合体である。他の実施形態では、粒子は当該分野で公知の樹状構造をとり、例えば、本明細書において参照により援用される、グレイソン S.M.(Grayson S.M.)ら、Chemical Reviews、2001年、101:3819−3867頁;およびボズマン A.W.(Bosman A.W.)ら、Chemical Reviews、1999年、99;1665−1688頁を参照のこと。
【0034】
一実施形態では、毒素結合性組成物は互いに付着し合う少なくとも2種類の粒子から構成され、オリゴ糖が粒子の一方に付着される。好ましくは、粒子の一方は共重合体である。特定の実施形態では、第2の粒子はラテックス粒子、シリカ粒子、メチルオキシドナノ粒子、疎水性重合体、コロイドポリマーであるかまたは本明細書に記載の他の適切な物質からなる。
【0035】
粒子の形成
オリゴ糖担体として選択される粒径および形態に依存し、様々な合成手順を用いることが可能である。例えばゾル−ゲルプロセス、特にStoberプロセスを用いると、非多孔性の球形形状を有するシリカ粒子が簡便に調製され、Stoberプロセスにより、ケイ素アルコキシドがアンモニアと共加水分解される(ストーバー(Stober)ら、Journal of Colloid and Interface Science、1968年、26、62頁)。有機金属かまたは金属塩を使用する他のゾル−ゲルプロセスもまた、金属酸化物のナノ粒子を生成することで周知である。エアロゾルおよびジェッティングプロセスもまた、本発明に適する大きさおよび有孔性についての特性を有する制御性に優れた無機および有機材料粉末を調製することで周知である。懸濁液、マイクロサスペンション、エマルジョン、ミニエマルジョン、マイクロエマルジョンの重合方法など、分散媒体中での重合により、有機ポリマービーズを調製することが可能である。多孔性粒子が使用される場合、懸濁液重合プロセスが好ましく、多官能性単量体(multifunctional monomer)を含むフリーラジカル重合可能な単量体の混合物が分散剤を含む水相中で乳化され、該単量体相は種々の希釈剤およびポロゲン溶媒も含む。後者の溶媒は、形成された粒子の微小/巨大/中程度な有孔性を制御する。多段階で播種される懸濁液重合によるかあるいは膜乳化またはジェッティングプロセスを用いて、モノ−サイズの粒子が調製される。一般に、かかる重合体粒子を調製するのに共重合体化されうる単量体には、スチレン、ジビニルベンゼン(全異性体)で置換されたスチレン、アルキルアクリレート、置換されたアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、置換されたアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、N−ビニルアミド、マレイン酸誘導体、ビニルエーテル、アリル、メタリル単量体およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の単量体が含まれる。これらの単量体の官能化された種類も使用可能である。本発明にて使用可能な特定の単量体または共単量体には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全異性体)、ブチルメタクリレート(全異性体)、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全異性体)、ブチルアクリレート(全異性体)、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、ビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノスチレン(全異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノα−メチルスチレン(全異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アリルアミン、メタリルアミン、アリルアルコール、メチル−ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、酢酸ビニルおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
様々な経路に従い、例えばまず、好ましくは糖類の還元末端上に位置付けられるアミン反応性末端基を有するオリゴ糖配列を官能化し、さらにアミン反応性の官能性糖をチオイソシアナート基などのアミンで官能化された粒子に反応させることにより、粒子表面上にオリゴ糖部分を付着させてもよい。このアプローチの変形として、アミン官能基をオリゴ糖上に付着させ、それをエポキシド基などの求電子物質で官能化された粒子と反応させる。
【0037】
別の方法では、まず重合可能な部分がオリゴ糖に付着され、エマルジョン重合プロセスにおいてこのオリゴ糖官能性単量体を粒子を形成する単量体と共重合させる。この一般的プロセスの変形および好ましい実施形態は、第1にリビング重合技術を用いてオリゴ糖官能性単量体を第2の共単量体と重合して第1の親水性ブロックを形成し;第2にこの親水性ブロックを用いて第2の疎水性ブロックをさらに成長させ、ジブロック共重合体を形成し;第3に水性媒体中でブロック共重合体を分散させることである。ブロック共重合体の合成については、陰イオン重合、陽イオン重合、グループトランスファー重合および制御されるフリーラジカル重合などの多数のリビング重合技術によって実施可能である。後者の技術には、ニトロキシドに媒介される重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)が含まれ、この後者の技術は好ましい。RAFT技術では、ジチオエステル、ジチオカルバメート、ジチオカーボネート、またはジチオカルバゼートから選択される連鎖移動剤(CTA)が用いられる。同アプローチの概略図は図1Aおよび図1Bに示される。両親媒性ブロック共重合体は、崩壊した疎水性ブロックのコアとオリゴ糖官能性親水性ブロックのシェルを含むミセル内部に自発的に集合する。別の好ましい実施形態では、ブロック共重合体ミセルの疎水性コアは、さらなる第3の単量体または「コア充填(core−filling)」単量体を重合することによってさらに架橋される。このコア充填単量体は、好ましくは疎水性単量体、多官能性単量体、またはこれらの組み合わせである。コア充填単量体のブロック共重合体に対する重量比は、典型的には約0.1〜約100、好ましくは約0.5〜約10からなる。
【0038】
ブロック共重合体における分子量は約2000〜約200,000、好ましくは約500〜約200,000、より好ましくは約10,000〜約100,000、最も好ましくは約20,000〜約50,000の範囲内にあり;親水性の疎水性に対する比には約9:1〜約1:9、好ましくは約3:1〜約1:3、より好ましくは約2:1〜約1:2、さらにより好ましくは約1.1:1、および最も好ましくは約1.5:1が含まれ;かつ親水性ブロック中のオリゴ糖のモルパーセントは約2モルパーセント〜約100モルパーセント、好ましくは約5モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲内にある。
【0039】
樹状スペーサ(dendritic spacer)の使用により、オリゴ糖は様々な方法を介して重合体粒子に付着されうる。例えば、樹状スペーサの使用方法については、ランドクイスト(Lundquist)およびトゥーン(Toone)、「The Cluster Glycoside Effect」、Chem.Rev.、2002年、102、555−578頁に記載されている。
【0040】
特定の好ましい実施形態では、オリゴ糖は高い局所密度で固体表面上に強力に固定される。糖密度の制御については、上記の合成手順によって行ってもよい。プロセス変数には、ブロック共重合体中の糖含量、糖含有ブロックの疎水性ブロックに対する比、およびブロック共重合体のコア充填単量体に対する比が含まれる。糖の表面密度は、第一に粒子表面および配合中の糖含量から見積もることが可能である。粒子表面については、電子顕微鏡、動的光散乱またはフラウンホッファー光回折法(Fraunhoffer light diffraction methods)によって測定された粒径から算出することが可能である。あるいは、オリゴ糖のモル含量は初期の糖濃度を知ることによって判定することが可能である。好ましくは、オリゴ糖の表面密度は約1μmol/m2より大きく、好ましくは約5μmol/m2より大きく、および最も好ましくは約10μmol/m2より大きい。光学密度範囲は、下記の如く生化学および細胞生物学の標準的手順によって測定された毒素の結合能によって決定される。
【0041】
本発明の別の態様では、リンカー修飾のためにメチルエステルハンドルを有する三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcを合成することを目的とした方法が提供される。かかる修飾の例として、種々の重合体のバックボーン構造の付加におけるリンカーとして機能するジアミン基の導入が挙げられる。本発明の別の態様では、フリーラジカル重合技術に基づく重合体のバックボーンおよび三糖−リンカー−重合体組成物の生成のための方法が記載される。かかる技術には糖に由来するアクリレート、メタクリレート、スチレン、およびビニル単量体を用いる重合可能な糖単量体の直接重合が含まれ;付加的な技術には、求核アミン糖を使用した糖部分での完全な重合体の後修飾によるエポキシドもしくは活性化エステル基を含有する共重合体との反応が含まれる。改変によって高親和性の毒素A結合剤を生成可能な三糖−リンカー−重合体の特性には、重合体の大きさ、重合体内部のオリゴ糖密度、完成した重合体における疎水性/親水性のバランス、および単量体サブユニットの構造/形態(すなわち、線状、ブロック、スター、グラフト、およびゲル)が含まれる。
【0042】
毒素結合性オリゴ糖
本明細書に記載の組成物中に使用可能な適切なオリゴ糖の例として、毒素Aおよび/または毒素Bに結合するオリゴ糖が挙げられる。適切なオリゴ糖として、βGlc;αGlc(1−2)βGal;αGlc(1−4)βGlc(麦芽糖);βGlc(1−4)βGlc(セロビオース);αGlc(1−6)αGlc(1−6)βGlc(ソマルトース);αGlc(1−6)βGlc(イソマルトース);βGlcNAc(1−4)βGlcNAc(キトビオース)などのクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖が挙げられる。他の適切なクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖として以下のものが挙げられる。
【0043】
【表2】
【0044】
コレラ毒素に適するオリゴ糖として、Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β)(NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、Gal(β)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、GalNAc(β1,4)−Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、およびFuc(αl,2)Gal(β,3)−GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミドが挙げられる。
【0045】
熱不安定性毒素に対するオリゴ糖の例としてGM1が挙げられる。破傷風毒素に適するオリゴ糖は、Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,8))NeuAc(2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)−Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、およびNeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8)−NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミドである。
【0046】
ボツリヌス毒素AおよびEに適するオリゴ糖はNeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)−Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;ボツリヌス毒素B、C、およびFの場合にはNeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;ならびにボツリヌス毒素Bの場合にはGal(β)−セラミドである。
【0047】
デルタ毒素に適するオリゴ糖はGalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;毒素Aの場合にはGal(αl,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;シガ様毒素(SLT)−IおよびSLT−II/IIcの場合にはGal(αl,4)Gal(β)(P1二糖類)、Gal(αl,4)Gal(β1,4)GlcNAc(β)(P1三糖)、またはGal(αl,4)Gal(β1,4)Glc(β)(Pk三糖);シガトキシンの場合にはGal(αl,4)Gal(β)−セラミド;ベロ毒素の場合にはGal(αl,4)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;百日咳毒素の場合にはNeuAc(α2,6)Gal;ならびに赤痢菌毒素の場合にはGlcNAc(β1)である。
【0048】
本発明の一態様は、粒子に付着したオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、ここで粒子の表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1もしくはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きく、オリゴ糖は可溶性タンパク質に結合し、かつ粒子はタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、分子として水溶性を示さない。本発明の別の態様は、粒子に付着したオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、ここで粒子の表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1もしくはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きく、オリゴ糖は可溶性タンパク質に結合し、かつ粒子はタンパク質またはカーボンナノチューブではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、分子として水溶性を示さない。かかる粒子の例として、脂質、リン脂質および本明細書に記載の他の粒子が挙げられる。
【0049】
処理方法
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、毒素に結合しかつそれを中和させるのに用いる。本明細書に記載の組成物は、毒素の全体もしくは一部に結合しかつ/またはそれらを中和させることが可能である。例えば、毒素は、経口粘膜および胃腸管、鼻道および気道、尿管および生殖器官、ならびに耳道を含む宿主の粘膜表面上で作用しうる。さらに外傷における使用として、本発明の組成物および方法が含まれる。細胞表面の標的の機能を不活化するかまたは破壊する作用モードを有する毒素が含まれ、その例が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)によって産生される超抗原毒素のファミリー、ストレプトリシン、パーフリンゴリジン、α毒素、ロイコトキシン、アエロリジン、デルタヘモリシン、および大腸菌(E.coli)病原型(pathovars)によってコードされる様々な溶血素などの細胞浸透性毒素、ならびにバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のエンテロトキシン(非−LPS)などの付着因子機能を遮断する毒素において見出される。本発明を標的細胞表面に結合する毒素に対して用いることも可能であり、それを細胞質内に転位させ、細胞内標的を破壊するかまたは不活化する。この群の中には、(i)ジフテリア毒素、緑膿菌(P.aeruginosa)外毒素A、およびシガトキシンなどのタンパク質合成阻害剤と;(ii)炭疽菌毒素、百日咳毒素および百日咳アデニル酸シクラーゼ毒素、コレラ毒素、ならびに大腸菌のLT毒素、ヘモフィルス・デュクレイ(H.ducreyi)、大腸菌、シゲラ、およびカンピロバクターによって産生される細胞致死性膨張毒素、ウェルシュ菌(C.perfringens)のα毒素、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびB、ならびに大腸菌およびボルデテラ種の細胞毒性壊死性因子などの関連する熱不安定毒素を含むシグナル伝達阻害剤と;(iii)ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の空胞化毒素、破傷風毒素、ボツリヌス毒素の粘膜輸送、およびC2ボツリヌス菌(C.botulinum)毒素を含む、細胞内輸送ならびに細胞骨格の毒素とが含まれる。
【0050】
毒素媒介性疾患の治療および/または予防に対し、本明細書において提供される組成物および方法が用いられる。かかる毒素は、細菌毒素およびウイルス粒子、プリオン、抗体、付着因子、レクチン、セレクチン、シグナル伝達ペプチド、ホルモン、特に免疫系応答および/または自己免疫疾患に関与するホルモン、ならびにGI管において副作用を有する他の分子などの他の毒性ポリペプチドを含みうるがこれらに限定されない。
【0051】
本明細書に記載の組成物および方法は、標的細胞表面にて作用する細菌毒素および感受性細胞の細胞内標的上で作用する毒素に対して用いることが可能である。第1の群の一般的な例として、黄色ブドウ球菌およびストレプトコッカス・ピオゲネスの毒素、ならびに黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ウェルシュ菌、リステリア・モノサイトゲネス(L.monocytogenes)、大腸菌、エロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)およびその他を含む多数のグラム陽性菌およびグラム陰性菌によって分泌される、孔を形成する毒素が挙げられる。細胞内で作用する毒素の中で受容体媒介性機構によって標的細胞に入る毒素の例として、多数の他の例とともに、緑膿菌の外毒素A、志賀赤痢菌(S.dysenteriae)のシガトキシン、コレラ菌(V.cholerae)のコレラ毒素、大腸菌の不安定毒素、ヘリコバクター・ピロリの空胞化毒素、ボツリヌス菌の神経毒素、ならびにクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBが挙げられる。細胞内作用性毒素(intracellular−acting toxin)の第2の群は毒素の標的細胞内への直接注射によって移入されるが、かかるタイプIIIおよびタイプIVで分泌される毒素の周知の例として、エルシニア症(Y.spp.)のYopタンパク質、百日咳菌(B.pertussis)の百日咳毒素、およびヘリコバクター・ピロリのCagAタンパク質が挙げられる。数種類の細菌毒素は、宿主の粘膜表面の細胞に作用する。これらの例として、コレラ菌毒素、大腸菌の熱不安定毒素、志賀赤痢菌の(EHECおよびEPEC変異体を含む)シガトキシン、クロストリジウム・ディフィシル毒素A、百日咳菌の百日咳毒素、ならびに黄色ブドウ球菌およびストレプトコッカス・ピオゲネスによってコードされる超抗原毒素が挙げられる。
【0052】
クロストリジウム・ディフィシル毒素産生株は、CDADおよびPMC症候群に関与する2種類の外毒素を産生する(リアーリ,D.M.(Lyerly,D.M.)、H.C.クリバン(H.C.Krivan)ら(1988年)「Clostridium difficile:its disease and toxins」Clin Microbiol Rev1(1):1−18頁)。毒素A(CdtA、308kDa)は、動物モデルおよび回腸移植片において流体分泌を誘発するエンテロトキシンであり、臨床症状の発生に関与する一次毒素として一般に認められる(トリアダフィロプロス,G.(Triadafilopoulos,G.)、C.ポソウラキス(C.Pothoulakis)ら、(1987年)「Differential effects of Clostridium difficile toxins A and B on rabbit ileum」 Gastroenterology 93(2):273−9頁)。毒素B(CdtB、279kDa)は、毒素の培養細胞に対する著しい細胞変性作用および動物モデルにおけるその腸毒性の相対的損失によって規定される細胞毒素である。細胞変性作用のみの測定により、毒素Bは毒素Aよりも100倍以下〜1000倍高い毒性を示す(トリアダフィロプロス,G.(Triadafilopoulos,G.)、C.ポソウラキス(C.Pothoulakis)ら、(1987年)「Differential effects of Clostridium difficile toxins A and B on rabbit ileum」 Gastroenterology 93(2):273−9頁;リマ,A.A.(Lima,A.A.)、D.M.リアーリ(D.M.Lyerly)ら、(1988年) 「Effects of Clostridium difficile toxins A and B in rabbit small and large intestine in vivo and on cultured cell in vitro」 Infect Immun 56(3):582−8頁;リーグラー,M.(Riegler,M.)、R.セディヴィ(R.Sedivy)ら(1995年)「Clostridium difficile toxin B is more potent than toxin A in damaging human colonic epitherium in vitro」 J Clin Invest 95(5):2004−11頁;シャベス−オラルテ,E.(Chaves−Olarte,E.)、M.ワイドマン(M.Weidmann)ら(1997年) 「Toxins A and B from Clostridium difficile differ with respect to enzymatic potencies,cellular substrate specificities,and surface binding to cultured cells」 J Clin Invest 100(7):1734−41頁;ストゥッベ,H.(Stubbe,H.)、J.ベルドズ(J.Berdoz)ら(2000年)「Polymeric IgA is superior to monomeric IgA and IgG carrying the same variable domain in preventing Clostridium difficile toxin A damaging of T84 monolayers」 J Immunol 164(4):1952−60頁)。
【0053】
本明細書に記載の組成物および方法によると、GTPの結合に関与するトレオニン残基のモノグルコシル化によるRho GTPアーゼの毒素不活化への作用により、クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性状態に対する治療および/または予防が可能である。Rho GTPアーゼのグルコシル化により、アクチン細胞骨格を調節するエフェクタータンパク質を有するこれらのシグナル伝達分子間の相互作用が遮断される。さらに、Rho GTPアーゼの不活化により、細胞における分泌過程、エンドサイトーシス、タンパク質合成、細胞周期進行、および多数の他の基本的な細胞「ハウスキーピング」機能の制御が破壊される可能性がある。好ましくは、毒素結合性組成物は宿主の細胞表面受容体へのクロストリジウム・ディフィシル毒素の結合を阻害する。
【0054】
毒素Aは、Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcおよび/またはタイプ2のコアを含む最小の二糖単位Gal(β1−4)Glcを含有する複合糖質(Oと連結、Nと連結、またはグリコスフィンゴリピド)に結合する(カスタグリウオロ,I.(Castagliuolo,I.)、J.T.ラモン(J.T.LaMont)ら(1996年)「A Receptor Decoy Inhibits the Enterotoxic Effects of Clostridium difficile Toxin A in Rat Ileum」Gastroenterology 111:433−8頁;米国特許第5,484,773号明細書;および米国特許第5,635,606号明細書)。毒素Aに対して合意が得られた受容体構造は種々の非ヒト哺乳類細胞において同定されているが、ヒト組織内でGal(α1−3)Gal(β1−4)Glc構造が自然に見出されることはない。好ましくは、本発明の粒子において使用されるオリゴ糖配列は、毒素Aのこれらの複合糖質への結合を妨げるか阻害する。
【0055】
細菌毒素によって媒介される疾患の治療に加え、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、および寄生虫の感染サイクルなどのタンパク質−炭水化物の認識事象を含む他の病理学的相互作用において本明細書に記載の組成物を使用してもよい。
【0056】
本発明のさらなる態様では、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素Bによって媒介される下痢の治療に対する方法が提供され、同方法はCDADに罹患した対象に重合体支持体に連結される三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcを含む組成物の有効量を投与するステップを含み、該オリゴ糖配列は毒素Aに結合し、感染した胃腸管の内腔から毒素Aを除去する。同様に、組成物は毒素Bに結合してそれを除去することで、タンパク質の腸上皮細胞に対する細胞毒性作用を防止することが可能である。重合体組成物は許容可能な医薬品担体中で調合され、胃腸管から除去される能力を有する。
【0057】
本発明の別の態様では、典型的にはメトロニダゾール(フラジール(Flagyl))または経口バンコマイシンからなる、CDADに対する抗生物質療法に伴い、重合体支持体に連結される三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcからなる組成物が送達される。すなわち、別々の製剤としてまたは薬剤の決まった組み合わせにおいて併用療法の提供が可能である。
【0058】
本発明では、組成物を他の活性医薬品とともに同時投与してもよい。この同時投与は、2種類の薬剤の同一の剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、および分離投与を含みうる。例えばCDADの治療においては、特定の抗生物質などのCDADを誘発する薬剤とともに組成物を同時投与してもよい。同時投与される薬剤を同一の剤形で共に調合し、同時投与してもよい。あるいは、両方の薬剤が別々の製剤中に存在する場合、それらを同時投与してもよい。もう一つの代替案では薬剤は別々に投与される。分離投与プロトコルでは、数分または数時間または数日置いて薬剤を投与することが可能である。
【0059】
さらに別の方法では、本発明の毒素結合性組成物は、有効量の抗生物質とともに同時投与される。毒素結合性組成物の投与は、有効量の抗生物質の投与より前、それと同時、またはその後であってもよい。様々な抗生物質の用量および治療法は、当該技術で周知である。一実施形態では、抗生物質は、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。あるいは、抗生物質は、テイコプラニン、フシジン酸、バシトラシン、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。さらなる方法では、対象は、毒素結合性組成物と、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質とで治療され、その後に必要に応じて、毒素結合性組成物と、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質とで治療される。
【0060】
本明細書で用いられる「治療する」という用語は、治療効果および/または予防的な利益を得ることを含む。治療効果とは、治療される基礎疾患の撲滅、改善、または予防を意味する。例えば偽膜性大腸炎(PMC)患者では、治療効果には腸管の粘膜表面に付着した内在する偽膜性で滲出性のプラークの撲滅または改善が含まれる。さらに、患者は依然として基礎疾患に悩まされる場合があるにもかかわらず、患者において改善が認められるような基礎疾患に関連する1つもしくは複数の生理的な兆候の撲滅、改善、または予防によって治療効果が得られる。例えば、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性組成物のPMCを患う患者への投与により、患者の下痢が減少する場合だけではなく、患者においてPMCを併発する他の疾患と比べて改善が認められる場合にも治療効果が得られる。予防的な利益の例として、たとえPMCの診断がなされていなくても、本明細書に記載の組成物がPMCを発症するリスクがある患者またはPMCに関する1つもしくは複数の生理的な兆候を報告する患者に投与される場合が挙げられる。組成物は毒素媒介性疾患の再発の予防における使用にも適する。
【0061】
本発明の医薬組成物には、重合体が有効量すなわち治療的または予防的な利益を得るための有効量で存在する場合の組成物が含まれる。特定の用途に対する実際の有効量は、患者(例えば、年齢、体重など)、治療がなされる状態、および投与経路に依存するであろう。当業者の能力の範囲内で、特に本明細書における開示内容を考慮すれば、有効量の判定は十分になされる。
【0062】
ヒト使用における有効量は、動物モデルから決定されうる。例えば、動物において有効であることが判明している胃腸濃度を得ることで、ヒトに対する用量の調製が可能である。
【0063】
動物における重合体の用量は、治療がなされる疾患、投与経路、および治療される患者の身体特性に依存するであろう。重合体の治療的および/または予防的使用における用量レベルは約0.5gm/日〜約30gm/日でありうる。これらの重合体は食事とともに投与されることが好ましい。組成物は、1日1回、1日2回、または1日3回投与されうる。最も好ましい用量は約15gm以下/日である。好ましい用量範囲は、約5gm/日〜約20gm/日、より好ましくは約5gm/日〜約15gm/日、さらにより好ましくは約10gm/日〜約20gm/日、および最も好ましくは約10gm/日〜約15gm/日である。別の好ましい用量は約1gm/日〜約5gm/日である。
【0064】
本明細書に記載の重合体組成物を他の適切な活性剤と組み合わせて使用してもよい。例えば、PMCまたはCDADの治療において、重合体組成物はバンコマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、フシジン酸、およびバシトラシンなどの抗生物質と組み合わせて使用されうる。他の併用療法には、抗−毒素A免疫グロブリンまたは経口投与されるウシ抗−毒素A免疫グロブリン、毒素Aトキソイドワクチン、および可溶性のスルホン酸ポリスチレン樹脂をベースとする経口の非吸収性高分子の毒素結合剤を用いる受動免疫療法が含まれうる。
【0065】
本明細書に記載の組成物をコレスチラミンおよびコレスチポールなどのイオン交換樹脂と組み合わせて使用してもよい。併用可能な他の適切な重合体は、陽性基と疎水基を有する適切な重合体について記載する、米国特許第6,007,803号明細書;米国特許第6,034,129号明細書;および米国特許第6,290,947号明細書、ならびに陰イオン基を有する重合体に関する、米国特許第6,270,755号明細書;米国特許第6,419,914号明細書;米国特許第6,517,827号明細書;米国特許第6,890,523号明細書;および米国特許出願公開第2005/0214246号明細書に記載されている。
【0066】
別の方法では、線状の毒素Aに結合するエピトープGal(α1−3)Gal(β1−4)Glc、および様々な誘導体を固体の不活性支持体に付着させると、毒素A(SYNSORB)に対する結合能および中和能を有する不溶性物質が生成された(ヒーアツェ(Heerze)、アームストロング(Armstrong)1996年)。オリゴ糖配列は、毒素Aの除去に特異的な結合部位をもたらし、この受容体模倣体は、非ペプチジルのリンカーアームを通って不活性支持体にカップリングされる。米国特許第5484773号明細書では、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合する、固体医薬品に共有結合したオリゴ糖配列についての記載がある一方、米国特許第6,013,635号明細書では、同じ概念についての記載があるが、クロストリジウム・ディフィシル毒素Bが対象である。
【0067】
クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患を治療する別の方法には、それを必要とする対象への毒素結合性部分および重合体粒子を含有する有効量の毒素結合性組成物の投与が含まれる。少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の組成物によって結合され、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理される。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの約90%に結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.5mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約0.8mg/mL〜約5mg/mL;さらにより好ましくは約1mg/mL〜約3mg/mLである。クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患を治療する別の方法には、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物の有効量の必要としている対象への投与が含まれる。少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の組成物によって結合され、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理される。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの約90%に結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.8mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約1mg/mL〜約6mg/mLである。
【0068】
様々な実施形態の一部では、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBは精製される。約2時間〜約36時間;好ましくは約4時間〜約24時間;より好ましくは約12時間〜約18時間かけて、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性組成物のインキュベーションを行いうる。インキュベーションは通常、約30℃〜約40℃;好ましくは約37℃の範囲の温度で行われる。上清中の遊離毒素の量をクロストリジウム・ディフィシル毒素におけるELISAによって測定し、遊離毒素の量を混合物に添加されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の量から差し引くことから、重合体粒子に結合される毒素の量が算出された。試験から得られた値は、表8に一覧され、実施例8ではより詳細に記載される。
【0069】
製剤、投与経路、用量
本明細書に記載の組成物またはそれらの医薬的に許容できる塩を多種多様な経路または投与様式を用いて患者に送達することが可能である。投与のための最も好ましい経路は、口、腸または直腸である。
【0070】
必要に応じ、組成物を他の治療薬と併用して投与することが可能である。本発明の化合物とともに同時投与可能な治療薬の選択は、一つには治療される条件に依存するであろう。
【0071】
重合体(またはそれらの医薬的に許容できる塩)は、それ単独で、あるいは活性化合物が1種もしくは複数種の医薬的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤との混合剤または混合物の中に存在する医薬組成物の形態で投与されうる。活性化合物の医薬品として使用可能な製剤に至るまでの処理を促進する賦形剤および補助剤を含む1種もしくは複数種の生理学的に許容できる担体を使用する従来の方法で、本発明による使用を意図した医薬組成物を調合することが可能である。適切な製剤は、選択される投与経路に依存している。
【0072】
これらの組成物が好ましい経口投与用に使用される場合、種々の方法で同組成物を調合することが可能である。好ましくは、それは凍結乾燥、液体、固体、または半固体の形態であろう。水またはヒマシ油などの医薬品として不活性な液体担体を含有する組成物は経口投与に適すると考えうる。他の医薬品として適合する液体または半固体も使用可能である。かかる液体および半固体の使用は、当業者にとっては周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年を参照のこと。
【0073】
アップルソース、アイスクリームまたはプディングなどの半固体状食品と混合可能な組成物が好ましい場合がある。不快な味もしくは後味のない製剤が好ましい。組成物を直接に胃に送達するのに経鼻胃チューブも使用可能である。
【0074】
固体組成物も使用可能であり、場合によって都合よく、好ましくは錠剤またはカプセル形態で提示される乳糖、澱粉、デキストリンまたはステアリン酸マグネシウムなどの従来の固体担体を含む、医薬品として不活性な担体を含有する製剤において使用可能である。カプセルはまた、カプセルを含有する液体またはゲルであってもよい。特にカプセル形態で使用する場合、不活性な医薬担体を加えずに組成物を単独で使用することも可能である。
【0075】
通常、感染した患者の消化管に見出される毒素の中和および除去をもたらすように用量を選択する。有用な用量は、約1〜100μmolのオリゴ糖/kg体重/日、好ましくは約10〜50μmolのオリゴ糖/kg体重/日である。用量レベルおよび投与スケジュールは、使用される特定のオリゴ糖の構造ならびに対象の年齢および状態などの因子に依存して変化する可能性がある。
【0076】
先に検討したように経口投与は好ましいが、経直腸などの他の投与手段として製剤を検討することも可能である。これらの製剤の有用性は、使用される特定の組成物および同治療を受ける特定の対象に依存する場合がある。これらの製剤は、油性、水性、乳状でありうる液体担体を含有するかまたは投与様式に適する特定の溶媒を含有する。組成物は、単位用量形態かまたは複数回用量もしくはサブユニット用量で調合されうる。
【実施例】
【0077】
実施例1:毒素結合性組成物の合成
以前に報告したように、SM1前駆体1を合成した。国際公開第02/044190号パンフレットを参照のこと。
【化1】
【0078】
SM1の合成:
エチレンジアミン(370mmol)25mLおよびジメチルホルムアミド30mLの溶液に、10gmのSM1前駆体1(14.8mmol)を添加し、反応混合物を85℃で18時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン:メタノール:水=6:4:0.15)によって反応の進行を監視した。反応完了時に,ロータリーエバポレーターを用いて混合物を20mLに濃縮し、濃縮物をイソプロパノール1.5Lに注ぐことによってSM1前駆体2を白沈として得た。濾過した沈殿物を真空下で10時間乾燥させ、後のアクリロイル化に対して直接使用した。
【0079】
粗SM1前駆体2をMeOH/水混合物(容量比1:1)80mL中に懸濁し、氷槽内で撹拌した。4.6gmの炭酸ナトリウム(44mmol)の添加後、塩化アクリロイル(44mmol)3.6mLを滴下漏斗で10分かけて添加した。混合物を0℃から室温になるまで4時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン:メタノール:水=6:4:0.3)によって反応の進行を監視した。反応完了時に無機塩を濾過して取り除き、45℃未満でロータリーエバポレーターを用いて濾過物を濃縮した。カラムクロマトグラフィー精製(5:1〜2:1のジクロロメタン:メタノール混合物で溶出)によってアクリロイル化された生成物SM1(7.5g、10mmol)を得た。
【0080】
ブロック共重合体の合成
0.25gmのSM1、0.05gmのジメチルアクリルアミドおよび7mgのジチオエステルRAFT剤に、水/ジメチルホルムアミド混合物(容量比1:1)1.36mLを添加し、それを50℃に加熱した。水30μl中で0.98mgの開始剤、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(ワコ(Wako)製VA−044)を添加した。プロトンNMRによって単量体変換を追跡し、GPC分析によって重合体の分子量を得た。2〜3時間後に第1のブロック単量体の90%を超える変換とともに、0.27gmのn−ブチルアクリレートを半連続的に3時間かけて添加した。ブチルアクリレート添加の完了時に、反応混合物をさらに3時間撹拌し、次いで水8mLを混合物に添加し、それをラテックスの調製に直接に使用するかまたはエマルジョン重合に先立ち水で透析した。
【0081】
ラテックスの調製
【0082】
【表3】
【0083】
KPSストック:
脱イオン水2mL中、50mgのKPS
【0084】
SM1ブロック共重合体溶液10mL、水30mLおよびスチレン0.33mLを100mLの三首モルトンフラスコに添加した。反応混合物をアルゴンで軽く洗浄し、マグネットバーを用いて700rpm、室温で2時間撹拌した。KPSストック溶液108μlの添加によって重合を誘起し、温度を60℃に上昇させた。KPSの添加の1.5〜3時間後、残存するスチレン(2×0.33mL)を添加した。6時間重合後、温度を室温にし、グラスウールおよび0.45μmのGMFフィルタによってラテックス溶液を濾過した。10日にわたる脱イオン水での透析によって残存単量体の除去を行った。
【0085】
このプロトコルを用いて様々な単量体組成物を除いた同ブロック共重合体を含む数種類の粒子懸濁液を生成した。表2を参照のこと。
【0086】
【表4】
【0087】
粒子表面に存在する糖の表面密度を以下のように算出した。
表面密度(μ当量/m2)=糖のμ当量/固体のgm*(6/(d*D))−1(式中、dは重合体粒子の密度、Dはミクロン単位の粒子直径である。)
【0088】
ラテックスの調製−非イオン性開始剤
【0089】
【表5】
【0090】
H2O2ストック溶液の配合:30重量%の過酸化水素33μlを脱イオン水167μlに添加した。
【0091】
アスコルビン酸ストック溶液の配合:10mgのアスコルビン酸を脱イオン水2mLに添加した。
【0092】
反応手順:SM1ブロック共重合体溶液7mL、水35mLおよびスチレン0.3mLを、窒素下、100mLの三首モルトンフラスコ内で700rpm、室温で2時間撹拌した。それに続き、反応混合物を2時間かけて60℃に加熱した。次いで、H2O2ストック溶液116mLおよびアスコルビン酸ストック溶液112mLを混合物に添加した。60℃で60分間攪拌後、残存スチレン(0.7〜0.9mL)を40分ごとに240分かけて半連続的に添加した。スチレン添加サイクルの完了時に反応混合物をさらに2時間撹拌し、次いで温度を室温にし、ラテックス溶液を25μmの孔サイズの濾紙によって濾過した。脱イオン水での10日にわたる透析によって残存単量体の除去を行った。
【0093】
メソ細孔性ヒドロゲルを含有するSM1の合成
【0094】
【表6】
【0095】
グローブボックス内で10ppm未満の酸素濃度でヒドロゲルの調製を行った。0.325gmもしくは0.35gmの単量体(SM1、ビニルホルムアミド、ベンジルアクリルアミドおよびN,N’−エチレンビスアクリルアミド)、1.3mLのポロゲンおよび1.5mgのVA−044を添加した。混合物を50℃で一晩撹拌し、白い不透明なゴム状固体を得て、これを水8mL中の微粒子懸濁液中に3分間の超音波処理によって粉末化した。懸濁液をDI水で2日間透析し、凍結乾燥機で乾燥させた(2日)。
【0096】
実施例2:インビトロでの(ELISAおよび細胞培養)アッセイ
2つのインビトロアッセイを用い、実施例1で合成した微粒子の毒素結合性特性および中和特性について測定した。図2は、微粒子で処理した毒素分子の生物活性の測定に用いたELISAおよび組織培養アッセイの概要を表す。毒素のELISAアッセイにおいて微粒子(1〜10mg/mLの範囲の試験濃度)を毒素(濃度1ng/mL〜160μg/mL)とともに混合物を振動させることなく37℃でインキュベートした。18時間のインキュベーション後、微粒子/毒素混合物を遠心分離し、微粒子と結合された毒素の複合体を表すペレット状物質を除去した。この遠心分離ステップから得られる上清は、結合されていない毒素分子と、固定化毒素分子を検出するのに使用される、西洋わさびペルオキシターゼと共役されたポリクローナル抗体とを「捕捉する」ための、PCG−4モノクローナル抗体からなる標準的なELISAアッセイによって定量される結合されていない毒素分子を含有する。リアーリ,D.M.(Lyerly,D.M.)、C.J.フェルプス(C.J.Phelps),J.トス(J.Toth)、およびT.D.ウィルキンズ(T.D.Wilkins)、1986年、「Characterization of toxins A and B of Clostridium difficile with monoclonal antibodies」 Infect Immun.54:70−6頁を参照のこと。4つの異なる微粒子組成物に対する代表的なELISA特性を図3に示す。TM473B、TM473A、およびTM466Dの物質は、試験微粒子の最低濃度(1mg/mL)でインキュベーション混合物中の遊離毒素A(開始濃度1ng/mL)を50%よりも大きく低下させた。クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの開始濃度での異なる微粒子のIC90(毒素の90%が上清から除去される場合の微粒子の濃度)を表2に示す。
【0097】
哺乳類上皮細胞での細胞培養アッセイは、試験微粒子とのインキュベーション後に結合されていない毒素分子の生物活性を評価するのに用いられる第2の方法を表す。このアッセイでは、標準の96−ウェル組織培養形式でベロ細胞系(アフリカグリーンモンキーの腎臓上皮細胞)を培養し、(上記の如く)これに微粒子/毒素混合物とそれに続いて遠心分離ステップから得られた上清の希釈物を重ね合わせた。このアッセイを結合されていない遊離毒素を定量するためのELISA測定と組み合わせることで、結合されていない毒素に対する生物活性の測定が可能になる。いかなる場合でも、微粒子での予備処理により、細胞培養アッセイによる測定の如く、残存する結合されていない毒素が不活化されることはなかった。
【0098】
細胞培養アッセイを用いることで、毒素との混合時に微粒子によってもたらされる中和の度合いも定量される。このアッセイでは、様々な濃度の微粒子(1〜20mg/mL)を、「細胞の円形化」(すなわち細胞の塑性表面への正常な付着を破壊する細胞毒性作用であり、通常、細胞死または細胞内糸状構造の損失を示す)を誘発することで知られる固定量の毒素(0.3pg/mL〜1ng/mL)と混合させる。一部の場合では、半透性膜(すなわち毒素に浸透可能)を有するトランスウェルを使用することにより、微粒子を細胞と直接接触した状態にならないようにした。これは微粒子−細胞の接触が細胞の毒素作用からの保護にとって不要であることを示すためであった。複数の細胞フィールド(>10)の顕微鏡検査によって毒素中和の相対範囲を比較し、コンフルエントな細胞成長のバックグラウンドにおける円形化された細胞の百分率を定量する。細胞の円形化からの95%を超える保護をもたらす最小有効用量の微粒子を使用することで微粒子活性の測定が可能になる。表3にデータを示す。
【0099】
【表7】
【0100】
SM1含有微粒子は毒素Bの活性を中和させることも可能であった。上記の方法を用いることで、微粒子が10mg/mLの用量で使用される場合、負荷用量0.3pg/mLの毒素Bに対する95%を超える保護が得られた(図4参照)。
【0101】
図7は、微粒子tm473bにおける濃度範囲による結合された毒素AおよびBの百分率を示す。
【0102】
実施例3:微粒子(TM473B)の結合能
ブロッキング用緩衝液(5%ウシ胎児血清を含有する1倍のリン酸塩で緩衝化した生理食塩水)で微粒子を希釈することにより、実施例1の微粒子試料の1種であるTM473Bを20、10、5、および2.5mg/mLの濃度の2倍溶液中に作製した。精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびB(テックラブ(TechLab)のT3001およびT3002)を、ブロッキング用緩衝液で360〜2μg/mLの範囲の2倍溶液に希釈した。チェッカーボード法で両希釈物を混合し微粒子に対する毒素の最終的な比率を1:1にした。
【0103】
微粒子を平衡結合に至らせるために、試料を37℃で18時間インキュベートした。10,000rpmで1時間の遠心分離により、結合された毒素AまたはBを微粒子とともにペレット化した。遊離/平衡状態の毒素を含有する上清を回収し、毒素A用または毒素AおよびB用ELISAキット(テックラブ(TechLab)のC.Diff Tox−A Test T5001またはC.Diff Tox−A/BII Test T5015)によって濃度を測定した。
【0104】
結合された毒素の濃度を判定するため、平衡濃度を開始量から差し引いた。次いで、μg/mLの結合された毒素の濃度をmg/mLの微粒子濃度で除することによって結合能を算出した。図5および図6に結果を示す。
【0105】
実施例4:インビボにおける微粒子の有効性試験:ウサギ回腸ループの毒性試験
ウサギ回腸ループのモデル試験にて実施例1における2種類の微粒子試料のTM473AおよびTM473Bをインビトロにおいて試験した。ウサギ回腸ループのモデルは、細菌タンパク質毒素の腸毒性を明らかにするためのモデルである(ダンカン(Duncan)およびストロング(Strong)、1969年)。同モデルを使用することで、コレラ毒素、大腸菌の不安定毒素、シガトキシン、ならびにウェルシュ菌のエンテロトキシンおよびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aを含む様々なクロストリジウム毒素の腸管毒性活性を特徴付ける。
【0106】
クロストリジウム・ディフィシル毒素Aのウサギ回腸ループ試験用プロトコルは以下の通りである。
・ウサギ(雌雄いずれか、12週齢超)を一晩絶食させ、次いで周縁耳静脈(marginal ear vein)にて静脈内注射したジアゼパム(5mg/mL)0.25mLと混合した塩酸ケタミン(100mg/mL)0.25mLで麻酔した。
・ガス麻酔機を介して送達するハロタン(1.5〜2.5%で作用)、亜酸化窒素(2l/分の流れ)および酸素(1l/分)を使用して麻酔状態を維持した。
・麻酔をかけた各ウサギの腹部中央部の毛を剃り、一連のベタジンとイソプロピルアルコールの洗浄を交互に用いて無菌で調製し、5cmの腹部切開を行った。
・回腸を慎重に引き抜き、最大6つの回腸ループ(長さ〜7〜10cm以内)を、回腸部の各末端の1cmまでを無菌の綿による結紮により密封することによって構成した。
・試験微粒子(最大20mg/mL)と毒素A(10μg/mL)の混合物を含有する流体(0.5mL/ループ)を、各試験ループにおける近位の単結紮の約0.5cm直下位置に26−ゲージ針によって注射した。
・注射部位を隔離し、穿刺部位の約0.5cm遠位でのさらなる結紮による漏れを防止した。
・ループにおける接種後、回腸を温かい生理食塩水に再び湿らし、ゆっくりと腹腔に戻した。筋肉壁を縫合し皮膚切開を閉じた後、麻酔回復期間に動物を保温し監視した。オキシモルホン(0.25mL 筋肉内/ウサギ;1.5mg/mL)を麻酔回復前と手術の6〜8時間後に再度投与した。手術後、食物と水を控えた。
・手術の約8〜12時間後、ビューサネージアD(Beuthanasia D)(390mg/mLのペントバルビタール、50mg/mLのフェニトイン)の0.5〜1.0mLの静脈内注射によってウサギを安楽死させた。
・回腸を取り除き、個々のループ内に蓄積した流体を視覚的に評価した。次いで、陽性の各ループの長さおよび重量を測定し、グラム単位のループ含量の重量に対するセンチメートル単位のループ長さの比であるV/L(容量−長さ)比を算出するのにその含量を秤量した。
・V/L比>0.3を有しかつ無圧で水の一貫性を有する漿液血液状流体を含有するものとして、陽性ループ(流体を蓄積させるもの)を定義した。陰性ループは、回復可能な内容物、すなわちV/L比<0.1を有するそれらのループを有しなかった。
【0107】
このプロトコルを用いて、微粒子の試験試料であるTM473BおよびTM473Aは、2.5mg/mLで投与される場合、毒素A(10μgm/mL)の腸毒性に対する保護を可能にした。表4を参照のこと。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例5:炭水化物単量体の含量が低下したジブロックミセルおよび微粒子の調製および試験
さらなる実験セットでは、ジブロック共重合体ミセルと、炭水化物単量体(SM1)の含量が低下した、対応する微粒子との製剤をさらに調製し、インビトロにおいて評価した。特に、約33重量%の炭水化物単量体SM1(本明細書において「ジブロック共重合体A」として示される)を含み、かつそれとは別に約21重量%の炭水化物単量体SM1(本明細書において「ジブロック共重合体B」として示される)を含むジブロック共重合体を調製した。ジブロック共重合体に含有される炭水化物単量体の含量は、実施例1に記載の如く調製されたジブロック共重合体に含有される約44重量%をなす炭水化物単量体SM1と比べて実質的に低下した。ジブロック共重合体Bから形成されるミセル溶液を細胞培養アッセイでインビトロにおいて実質的に評価した。さらに、ジブロック共重合体Aとジブロック共重合体Bの各々からラテックス微粒子を合成し、さらにインビトロにおいて評価した。
【0110】
ジブロック共重合体AおよびBの調製
炭水化物単量体SM1を、実質的に実施例1に記載のごとく調製した。炭水化物単量体(SM1)の含量が相対的に低下した、ジブロック共重合体の2種類の製剤を表5に記載の試薬および量を用いて以下のように調製した。
【0111】
【表9】
【0112】
ジブロック共重合体AおよびBの各々については、THMA、DMA、炭水化物単量体(SM1)およびCTAの混合物に水/DMF混合物3.4mLを添加し、グローブボックス内で50℃に加熱した。VA−044ストック溶液(DI水0.2mL中20mg)20μLを添加し、混合物を3時間撹拌した。n−ブチルアクリレートを次の3時間にわたり半連続的に添加し、その後で混合物を室温まで冷却する前に3時間重合した。DI水10mLを混合物に添加し、その後でジブロック共重合体をDI水で24時間透析し、ジブロックミセル溶液を形成した。
【0113】
インビトロでのジブロック共重合体Bミセルの細胞培養アッセイ
インビトロにおける細胞培養アッセイで、ジブロック共重合体Bから形成したミセル溶液を評価した。このアッセイでは、様々な濃度のジブロック共重合体Bミセル(0.78mg/mL、1.56mg/mLおよび3.125mg/mL)を有する溶液でベロ細胞を処理した。ここで各場合においては、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの固定量(1ng/mL)と混合した。固定量の毒素は、それ単独で使用される場合、「細胞の円形化」(すなわち、細胞の塑性表面への正常な付着を破壊する細胞毒性作用であり、通常は細胞死または細胞内糸状構造の損失を示す)を誘発することがわかった。一対照として、処理していない(すなわち毒素またはジブロック共重合体Bミセルで処理していない)単層のベロ細胞を使用した。別の対照として、クロストリジウム・ディフィシル毒素A(1ng/mL)単独で処理したベロ細胞を使用した。複数の細胞領域(>10)の顕微鏡検査によって毒素中和における相対的な範囲を比較し、コンフルエントな細胞成長のバックグラウンドにおける円形化された細胞の百分率を定量した。図8に結果を示す。
【0114】
ジブロック共重合体AおよびBを使用する微粒子の調製
表6に記載の試薬および量を使用し、ジブロック共重合体Aとジブロック共重合体Bの各々からラテックス微粒子を合成した。本明細書では生成された微粒子の各々を糖粒子AおよびBと称し、それぞれtilm209Aおよびtilm209Bとも称する。
【0115】
【表10】
【0116】
以下に示すように、微粒子A(tilm209A)およびB(tilm209B)をジブロック共重合体AおよびBの各溶液から別々に合成した。250mLの三首モルトンフラスコに、ジブロック溶液、スチレン0.8mLおよびDI水70mLを添加し、窒素下、室温で一晩撹拌した。温度を60℃に上昇させ、KPSストック溶液(DI水1mL中25mg)240μLの添加前にさらに4時間撹拌した。次の5時間の間にスチレン1.6mLを添加した。スチレンの添加完了の2時間後に、t−ブチルペルオキシベンゾエート10μLおよびアスコルビン酸25mgを添加した。次の10時間の間に重合体混合物を連続撹拌し、孔サイズが25μmの濾紙(ワットマン(Whatman)製)によって濾過した。生成される糖粒子懸濁液をDI水で10日間透析した。
【0117】
微粒子AおよびBのインビトロでのELISAアッセイ
インビトロでのELISAアッセイを用い、微粒子A(tilm209A)およびB(tilm209B)によって結合された毒素AおよびBの百分率を測定した。微粒子AおよびBの各々に対する別々の実験において、5%FBSを含有するPBS中での5〜0.25mg/mLの範囲の濃度の微粒子を、10μg/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはB(テックラブ(TechLab))とともに37℃で12〜18時間インキュベートした。混合物を10,500rpm、4℃で30分間遠心分離し、結合された毒素と微粒子の複合体を沈殿させた。毒素Aに特異的なELISA(テックラブ(TechLab) #T5001 クロストリジウム・ディフィシル Tox−A試験)または毒素AおよびBに特異的なELISA(テックラブ(TechLab) #T5015 クロストリジウム・ディフィシル Tox−A/BII試験)により、上清中に残存する遊離毒素の量を測定した。図9Aおよび図9Bに結果を示す。
【0118】
微粒子Bのインビトロでの細胞培養アッセイ
インビトロでの細胞培養による細胞毒性アッセイにて、微粒子B(tilm209B)を評価した。このアッセイでは、10%ウシ胎児血清を加えたMEM(メディアテック(Mediatech))を有する96−ウェルプレートでベロ細胞(ATCC)のコンフルエントな単層を成長させた。最終濃度1ng/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素A(テックラブ(TechLab))を、成長培地内で5mg/mLのtilm209B微粒子と混合し、37℃、5% CO2/95%空気で18時間かけて単層に適用した。インキュベーション後、細胞の毒素媒介性形態変化に対して顕微鏡検査を行い、単層の破壊および細胞の円形化によって細胞を同定した。図10A〜10Cに示す結果は、1ng/mLの毒素Aのベロ細胞に対する作用が5mg/mLのtilm209Bによって中和させることを明らかにしている。
【0119】
実施例6:インビトロでの競合結合実験−Galα(1,3)Galβ(1,4)Glcの特異性
この実施例では、インビトロでの競合結合アッセイを含む一連の実験を行い、実質的に実施例1に記載の如く調製したクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子の特異性を明らかにした。
【0120】
別々の実験で、三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc、その異性体のグロボトリオース(Galα(1,4)Galβ(1,4)Glc)、乳糖(Galβ(1,4)Glc)、およびセロビオース(Glcβ(1,4)Glc)を含む4種類の各遊離オリゴ糖における、毒素Aおよび毒素Bの結合に対するクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子との競合能についてアッセイした。10μg/mLの毒素Aまたは毒素Bへの結合における2mg/mLの毒素結合性微粒子に対する各場合において、6.25mM〜50mMの範囲の濃度で遊離オリゴ糖の試験を行った。混合物を37℃で16時間インキュベートした。遠心分離によって結合された毒素を含む微粒子を沈殿させ、ELISA(テックラブ(TechLab))によって上清中の遊離毒素量を測定した。
【0121】
図11Aおよび図11Bに、これらの競合結合実験から得られた結果を示す。図11Aについては、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは、上記オリゴ糖において濃度が相対的に高くても、遊離オリゴ糖であるグロボトリオース(Galα(1,4)Galβ(1,4)Glc)、乳糖(Galβ(1,4)Glc)、およびセロビオース(Glcβ(1,4)Glc)の全体に存在する毒素結合性微粒子に特異的に結合する。それに対し、毒素結合性微粒子によるクロストリジウム・ディフィシル毒素Aの結合範囲は、遊離した三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glcの濃度に依存して変化した。これらのデータは、毒素結合性微粒子と毒素Aの相互作用における特異的な性質を明らかにし、かつ微粒子による毒素Aの結合はGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって特異的に媒介されることを裏付けている。それに対し、図11Bは、毒素Bが、上記オリゴ糖において濃度が相対的に高くても、試験対象の三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc、グロボトリオース、乳糖およびセロビオースといった4種類の各遊離オリゴ糖の全体に存在する毒素結合性微粒子に特異的に結合することを示す。それゆえ、毒素Bは毒素結合性微粒子によって結合されるが(図7および実施例2でのそれに関する考察を参照)、遊離した三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc(他の3種類のオリゴ糖のいずれでもない)が毒素Bへの結合のために微粒子とうまく競合することから、毒素Bの結合は毒素結合性微粒子のGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって直接的に媒介されるようには見られない。
【0122】
さらなる実験では、炭水化物単量体のSM1(αGal−C8−リンカー;実質的に実施例1に記載の如く調製されたもの)における、毒素Aの結合および毒素Bの結合に対するクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子との競合能について同様にアッセイした。10μg/mLの毒素Aまたは毒素Bへの結合における2mg/mLの毒素結合性微粒子に対し、12.5mM〜50mMの範囲の濃度でSM1単量体の試験を行った。混合物を37℃で16時間インキュベートした。遠心分離によって結合された毒素を含む微粒子を沈殿させ、ELISA(テックラブ(TechLab))によって上清中の遊離毒素量を測定した。
【0123】
図11Cに結果を示す。予想どおり図11Aに関連して上で検討した結果に基づき、微粒子による毒素Aの結合は、微粒子上および炭水化物単量体SM1上の両方に存在するGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって競合的に媒介される。毒素Bの結合については、図11Cは、炭水化物単量体SM1がより高い濃度で毒素結合性微粒子と競合することで毒素Bと結合可能であることを示す。これは理論に縛られることなく、(遊離オリゴ糖を含む図11Bのデータには媒介が全く認められないことから)毒素結合性糖粒子とクロストリジウム・ディフィシル毒素Bの間の相互作用が、(例えば炭水化物単量体SM1の)疎水部分または三糖リガンドと(例えば炭水化物単量体SM1の)疎水部分の組み合わせにより、少なくとも部分的に媒介されるといういくつかの証拠をもたらす。
【0124】
実施例7:インビボにおけるハムスターのクロストリジウム・ディフィシル負荷試験
この実施例では、クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢の治療のために、インビボでハムスターモデルを使用し、実質的に実施例1(本明細書ではY103A2と指定)に記載の如く調製された毒素結合性微粒子について試験した。
【0125】
ハムスターモデル
一般に、クロストリジウム・ディフィシルへの暴露に先立ち抗生物質をハムスターに投与すると、3〜5日後、下痢や大腸炎に加え、死さえも招くことが知られている。ハムスターにおいてクロストリジウム・ディフィシルによって誘発される全腸炎は盲腸および末端回腸で発症し、粘膜出血を伴う粘膜上皮細胞の増殖および細胞上での変性性の表面変化を特徴とする。それに対し、ヒト疾患は滲出および炎症状態での巣状腺窩壊死として結腸内に見られる(プライス(Price)ら、1979年)(以下に十分に記載)。これらの組織学的な違いにもかかわらず、クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢の細菌由来およびその活性疾患における毒素AおよびBの分泌への依存性により、ハムスターモデルがヒト疾患の適切な模倣となる(バートレット(Bartlett)ら、1978a;バートレット(Bartlett)ら、1978b;チャン(Chang)ら、1978年)。
バートレット,J.(Bartlett,J.)、C.TW、およびG.M.1978a.「Antibiotic−associated pseudomembranous colitis due to toxin−producing clostridia」New England Journal of Medicine. 298:531−534頁
バートレット,J.G.(Bartlett,J.G.)、T.W.チャン(T.W.Chang)、N.ムーン(N.Moon)、およびA.B.オンダードンク(A.B.Onderdonk)1978b.「Antibiotic−induced lethal enterocolitis in hamsters:studies with eleven agents and evidence to support the pathogenic role of toxin−producing Clostridia」Am J Vet Res.39:1525−30頁
チャン,T.W.(Chang,T.W.)、J.G.バートレット(J.G.Bartlett)、S.L.ゴルバッハ(S.L.Gorbach)、およびA.B.オンダードンク(A.B.Onderdonk)1978年「Clindamycin−induced enterocolitis in hamsters as a model of pseudomembranous colitis in patients」Infect Immun.20:526−9頁
プライス,A.B.(Price,A.B.)、H.E.ラルソン(H.E.Larson)、およびJ.クロウ(J.Crow.)1979年「Morphology of experimental antibiotic−associated enterocolitis in the hamster:a model for human pseudomembranous colitis and antibiotic−associated diarrhoea」 Gut.20:467−75頁
を参照のこと。
【0126】
ハムスターの株および数
これらの実験では、ハーラン・ラボラトリーズ(Harlan Laboratories)からハムスターを入手し、治療開始前に7日間隔離状態で保持した。隔離後、ハムスターの体重を測り、無作為に4群に割り付けた。下記の表7にまとめたように、群1は6匹の動物を含む対照群であった。群2〜4はそれぞれ8匹の動物を含む治療群であった。
【0127】
収容
ハムスターを、水および食物への接近を自由にした状態で陽圧のケージ内に個別に収容した(マイクロベント・エンバイロンメンタル・システム(Micro−Vent Environmental System)、アレンタウン・ケージング・アンド・イクイップメント(Allentown Caging and Equipment Co.)、Allentown、ニュージャージー州)(Purina 5000)。
【0128】
治療モデル
2日前、下記の表7に示すレジメンに従い、予防的栄養を開始した。1日前、すべての群内の動物に、経口栄養によりクロストリジウム・ディフィシル(VPI10463)の一晩培養液由来の洗浄した細胞106個で感染させた。全4群中の動物に、0日目(1日前の翌日)に1kg当たり10mgのリン酸クリンダマイシンを皮下注射し、疾患を誘発した。以下のレジメンに従い、2日前〜6日目にハムスターに3通りの等しい1日用量で栄養した。
【0129】
【表11】
【0130】
リン酸塩で緩衝化した生理食塩水中に毒素結合性微粒子を20mg/mLで投与した。栄養前に動物における罹患率および死亡率ならびにクリンダマイシン治療後の14日間、少なくとも1日2回を基本に動物における下痢の有無について観察した。
【0131】
図12に示す結果は、毒素結合性微粒子がクロストリジウム・ディフィシルで負荷されたハムスターを保護することを明示している。対照群1(対照;毒素結合性微粒子を含まない)において、動物7匹が14日間試験のうちの2日目の試験で死亡した。治療群2〜4において、これらのデータは、生存が用量に依存し、再発を全く観察しなかったことを示す。特に群2では、ハムスターは試験を通して1匹も死亡しなかった。群3では、1日目に動物1匹が死亡し、2種類の動物の尾が湿っている(下痢の証拠)ことが観察されたが、動物は完全に回復しなかった。群4では、動物5匹が死亡し、これらのうちの1匹の動物の尾が湿っていることが観察され、動物はこの観察の48時間以内に死亡した。すべての他の死亡は一般に急性であった(すなわち湿った尾を事前に観察することがなかった)。
【0132】
実施例8:Y103A2ナノ粒子による毒素結合性の測定
5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液(PBS)中で0.25〜5mg/mLの範囲の濃度のY103A2ナノ粒子(メディアテック(Mediatech,Inc.)、Herndon、バージニア州)を、10μg/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはB(テックラブ(TechLab)、Blacksburg、バージニア州)とともに37℃で12〜18時間インキュベートした。混合物を10,500×g、4℃で30分間遠心分離し(ソーバル(Sorvall))、結合された毒素とナノ粒子の複合体を沈殿させた。テックラブ(TechLab)製クロストリジウム・ディフィシル毒素用ELISAキットを使用して上清中に残存する遊離毒素の量を定量し、結合された毒素の百分率を算出した。このデータから90%の毒素に結合したナノ粒子の濃度を算出した。表8は、Y103A2のバッチから得られたスクリーニングデータを列挙する。
【0133】
【表12】
【0134】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示されかつ記載されている一方、かかる実施形態があくまでも例として提供されることは当業者には明らかであろう。ここで当業者であれば、本発明から逸脱することなく、極めて多数の変形、変化、および置換えについて着想するであろう。本発明の実施に際し、本明細書に記載の発明の実施形態に対する様々な選択肢を利用可能であることが理解される必要がある。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、かつそれによりこれらの特許請求の範囲の中の方法および構造ならびにそれらの等価物が網羅されるように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】毒素結合性粒子を合成する方法(図1A)およびかかる方法から得られる毒素結合性粒子を表す概略図(図1B)である。
【図1B】毒素結合性粒子を合成する方法(図1A)およびかかる方法から得られる毒素結合性粒子を表す概略図(図1B)である。
【図2】微粒子で処理される毒素分子の生物活性を測定するのに用いられるELISAおよび組織培養アッセイの概要を表す概略図である。
【図3】4つの相異なる毒素結合微粒子組成物に対するELISAの特性データを図示するグラフである。
【図4】細胞を図示しかつベロ細胞用アッセイでSM1含有微粒子によって可能になる毒素Bの保護を示す4つの画像を含む。
【図5】微粒子のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに対する結合能を表すグラフである。
【図6】微粒子のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bに対する結合能を表すグラフである。
【図7】異なる濃度の微粒子によってクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBが除去される割合(%)を表すグラフである。
【図8】細胞を図示しかつベロ細胞用アッセイでジブロック共重合体Bを含有するミセル溶液によって可能になる毒素Aの保護を示す5つの画像を含む。
【図9A】クロストリジウム・ディフィシル毒素A(図9A)および毒素B(図9B)に対する2つの異なる毒素結合微粒子についてのELISAの特性データを図示するグラフである。
【図9B】クロストリジウム・ディフィシル毒素A(図9A)および毒素B(図9B)に対する2つの異なる毒素結合微粒子についてのELISAの特性データを図示するグラフである。
【図10A】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図10B】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図10C】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図11A】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図11B】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図11C】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図12】インビボにおけるハムスターのクロストリジウム・ディフィシル負荷試験の結果を要約するデータを図示するグラフである。
【技術分野】
【0001】
細菌外毒素は、多数の機序を進行させることで高感受性を示す真核生物の標的細胞内部の重要な代謝過程を改変している、広範囲の分泌細菌タンパク質を表す。一般に、これらの毒素は、宿主細胞膜を損傷させるかまたは細胞内の正常な生理学的過程の維持にとって重要なタンパク質を修飾することによって作用を発揮する。
【0002】
偽膜性大腸炎(PMC)は、重篤でかつ致死性を示す場合がある胃腸疾患として理解されている。グラム陽性の胞子形成細菌であるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、PMCおよび抗生物質関連性大腸炎(AAC)の主要な原因菌として既知のものである。
【0003】
PMCまたはCDAD患者に対する現行の治療には、関連の抗菌剤または化学療法剤の中止、非特異的な支援策、およびクロストリジウム・ディフィシルに特異的な抗生物質による治療が含まれる。最も一般的な抗菌治療の選択肢として、バンコマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、フシジン酸、およびバシトラシンが挙げられる。抗生物質によるCDADの治療は疾患の臨床上の再発に関連する。再発の頻度は5〜50%であり、再発率の20〜30%は最も一般的に引用される数字であることが報告されている。再発はほぼ等しい頻度で起き、これは上に挙げた抗生物質のいずれかを用いる主な治療における薬剤、用量、または期間とは無関係である。対照の抗生物質が問題を提起する場合、治療上の主な課題は複数回にわたって再発した患者の管理において認められる。
【0004】
腸管でのクロストリジウム・ディフィシル毒素活性の直接中和におけるいくつかのアプローチが報告されている。第1に、数グラムの量のコレスチラミンおよびコレスチポールなどのアニオン交換樹脂が抗生物質と組み合わせて経口投与されている。このアプローチを用い、軽度から中程度の疾患患者、ならびにCDADの再発をした個人の治療が行われている。テデスコ,F.J.(Tedesco,F.J.)(1982年)「Treatment of recurrent antibiotic−associated pseudomembranous colitis」Am J Gastroenterol 77(4):220−1頁;モグ、G.A.(Mogg,G.A.)、Y.アラビ(Y.Arabi)ら(1980年)「Therapeutic trials of antibiotic associated colitis」Scand J Infect Dis Suppl(Suppl22):41−5頁を参照のこと。イオン交換樹脂による治療では、毒素Aの特異的除去がもたらされることなく、対照のCDADに対し樹脂と相乗的に作用することが意図された抗生物質が除去されうる。さらに、毒素Aを除去するのに必要な大量の樹脂をそれらの不快な味と組み合わせることで、上記アプローチの使用が抑えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を考慮すると、クロストリジウム・ディフィシルに起因するPMC症候群および毒素に起因する他の疾患を治療する化合物または化合物の組み合わせに対して需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、毒素媒介性疾患(toxin mediated disorder)の治療に対する組成物および方法に関する。
【0007】
本発明の一態様は、毒素結合性オリゴ糖などの毒素結合性部分、ならびに疎水性ブロックおよび1種もしくは複数種の付加的重合体ブロックを含むブロック共重合体(例えば、ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子)を含む毒素結合性組成物である。好ましくは、毒素結合性部分は、ブロック共重合体の1種もしくは複数種の付加的重合体ブロックに付着するかまたは連結される(すなわち連結部分によって直接的もしくは間接的に共有結合される)。
【0008】
本発明のこの態様の範囲内の好ましい実施形態では、毒素結合性組成物は毒素結合性オリゴ糖およびブロック共重合体(例えば、ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子として)を含む。ブロック共重合体(または共重合体粒子)は疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含み、毒素結合性オリゴ糖はブロック共重合体の親水性ブロックに付加されているかまたは連結されている状態にある。
【0009】
本発明のこの態様の範囲内の別の好ましい実施形態では、毒素結合性組成物は毒素結合性部分およびブロック共重合体(ブロック共重合体粒子を例として含む重合体粒子など)を含む。ブロック共重合体は、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含みうる。ブロック共重合体が水性媒体内でミセルを形成しうるように、疎水性ブロックは化学的に架橋されるかまたは物理的に包まれる。毒素結合性部分は、親水性ブロックに付着されているかまたは連結されている。
【0010】
本発明の別の態様は、毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含む毒素結合性組成物であり、毒素結合性部分はナノ粒子に連結されかつナノ粒子は実質的に胃腸内腔(gastrointestinal lumen)から胃腸粘膜細胞内に吸収されない。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であり、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理され、約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の同組成物により、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの少なくとも約90%が結合される。
【0012】
本発明のさらなる態様は、重合体粒子などの粒子に付着されているかまたは連結されているクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖を有する毒素結合性組成物であり、粒子の単位表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3μ当量/m2もしくは約1μmol/m2よりも大きい。
【0013】
本発明の第3の態様は、重合体粒子などの粒子に付着されているか連結されているオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、粒子の単位表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3μ当量/m2もしくは約1μmol/m2よりも大きい。オリゴ糖は水可溶性タンパク質に結合しうる。好ましくは、粒子はタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、かつ分子として水溶性を示さない。これらの組成物は、好ましくは約0.5m2/gm〜約600m2/gmの表面積を有し、それに加えまたはその代わりとして、単位重量当たりのオリゴ糖のモル含量は粒子の1グラム当たり約100μmolよりも大きい。
【0014】
本発明の第1、第2または第3の態様のいずれかの範囲内に含まれた実施形態を含む一部の実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)が親水性ブロックに付着されるかまたは連結される場合、粒子は疎水性および親水性ブロックを有する共重合体粒子でありうる。ブロック共重合体は、コアを形成する疎水性ブロックおよびシェルを形成する親水性ブロックを有するミセルの形態であってもよい。例えば付加的単量体から形成された付加的重合体または重合体ブロックを含めることで、例えば疎水性コアが形成されるかまたは安定化される。特に好ましいアプローチでは、ミセルは、ブロック共重合体の疎水性ブロックに化学的に架橋するかまたは物理的に包むかまたはそうでなければ安定化させる付加的重合体または重合体ブロックを含んでもよい。適切な付加的単量体(付加的なコアを安定化させる重合体の形成に適する)の例として、これらに限定されないが、スチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルが挙げられる。好ましくは、親水性ブロックはジメチルアクリルアミドの重合体であり、かつ疎水性ブロックは、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、スチレン、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルの重合体または共重合体である。好ましくは、オリゴ糖は8−メトキシカルボニルオクチル−α−D−ガラクトピラノシル−(1,3)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1,4)−O−β−D−グルコピラノシドである。本発明の実施形態のいずれ場合でも、本発明の粒子を微粒子と称することが可能である。しかし、特定の実施形態が微粒子と称される場合でさえ、かかる実施形態が必ずしも特定の大きさの範囲の粒子に限定されることはない。それゆえ、微粒子の言及においては、一般に、例えば全直径が約1mm未満の小型粒子に言及する。しかし特に、微粒子の言及においては、ミクロン規模もしくはナノ規模の寸法(例えば直径)を有することを含む、実質的により小さい粒子を除外するつもりはない。本明細書では、毒素結合性オリゴ糖などのオリゴ糖を含む粒子を糖粒子と称してもよい。
【0015】
一般に、本発明の第1、第2または第3の態様の実施形態では、毒素結合性部分は細菌外毒素などの細菌毒素に対して結合親和性を示しうる。それゆえ、毒素結合性部分は、ヒト細胞を含む哺乳類細胞などの真核細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を示しうる。毒素結合性部分は、宿主の粘膜表面上で作用可能な毒素に結合するかそれを中和させることが可能である。特に粘膜表面は、口、鼻、呼吸器、胃腸、泌尿器、生殖器および耳の粘膜表面からなる群から選択可能である。
【0016】
毒素媒介性疾患の治療において本明細書に記載の組成物を使用してもよい。一部の実施形態では、組成物は下痢、偽膜性腸炎、または抗生物質関連性大腸炎などのクロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患の治療において使用される。
【0017】
本明細書において記述されたすべての出版物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の出版物もしくは特許出願が参照により援用されるものとして具体的かつ個別に示される場合と同程度に、本明細書において参照により援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において毒素と結合しかつ毒素媒介性疾患を治療するための方法および組成物が提供される。好ましい実施形態では、組成物は、毒素結合性部分で機能的にされる粒子、および好ましくは特定のオリゴ糖配列など、単位重量または単位表面積当たりで高密度な毒素結合性部分を含む。オリゴ糖などの毒素結合性部分は細菌毒素などの毒素に結合可能である。好ましい組成物は、毒素Aおよび/または毒素Bなどのクロストリジウム・ディフィシル毒素に結合する組成物である。クロストリジウム・ディフィシル毒素に照らして本明細書に記載の多数の実施形態が説明されかつ検討されるが、本発明はそれらに限定されることはない。
【0019】
特定の好ましい実施形態では、本来ならクロストリジウム・ディフィシル毒素に対して中程度の親和性を示す、本明細書で用いられるオリゴ糖配列は、粒子表面上に高密度に提示されると極めて高い結合速度を示した。特定の理論に拘束されたくないが、表面に付着される高密度のオリゴ糖部分は多価効果をもたらし、毒素への結合が増強される結果になると考えられる。すなわち、オリゴ糖を有する粒子の広範囲の親和性は個々のオリゴ糖の親和性の合計分よりも高い。第1の結合事象が生じていると、第2の毒素部分が、エンタルピー的および/またはエントロピー的に結合に親和性を示すように第2のオリゴ糖に提示されると考えられる。好ましくは、本発明の毒素結合性粒子は、粒子表面での表面単位および/または限られたコンフォメーションの程度(conformation degree)につき高密度のオリゴ糖を含有する。これらの特徴は、CDADなどの状態における毒素中和にとってより高い毒素結合能および/またはより大きな効力を可能にすると考えられる。
【0020】
クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢などの毒素媒介性疾患の治療および/または予防において本明細書に記載の粒子を使用することが可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、クロストリジウム・ディフィシル毒素で汚染された腸管から毒素を除去するための組成物である。好ましくは、毒素を除去するためのこの組成物は、表面が約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5またはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きい密度で共有結合されたオリゴ糖に提示された粒子を含有する。好ましい密度範囲は約1μ当量/m2〜約15μ当量/m2であり、さらにより好ましい密度範囲は約3μ当量/m2〜約8μ当量/m2である。使用されるオリゴ糖配列は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類およびこれらより大きい分子量のオリゴ糖であり、かつ細菌毒素に対して適度の親和性を示しうる。適切なオリゴ糖は、分岐状、線状、または樹状でありうる。
【0022】
粒子
粒子は、好ましくはシリカ、二酸化チタン、珪藻岩、ゼオライト、ベントナイト、および他の金属ケイ酸塩などの無機物質、またはスチレン、オレフィン、アクリル、メタクリルおよびビニル単量体、重縮合物、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ホルムアルデヒドをベースとする樹脂、ポリアミンおよびポリオールをベースとする架橋ヒドロゲル、セルロースエーテルおよびセルロースエステルなどの半天然高分子から調製された有機高分子から選択される。好ましくは、選択された高分子は非毒性、非生体分解性および非吸収性を示す。本明細書で用いられる「重合体」という用語は共重合体を含む。粒径は、直径で好ましくは約5nm〜約1000ミクロン、より好ましくは約50nm〜約100ミクロン、さらにより好ましくは約75nm〜約10ミクロン、さらにより好ましくは約75nm〜約1ミクロン、および最も好ましくは約100nm〜約500nmの範囲である。
【0023】
様々な実施形態の一部には、重合体粒子が含まれる。好ましくは、重合体粒子は共重合体である。これらの一実施形態は、毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含有する毒素結合性組成物であり、毒素結合性部分はナノ粒子に連結されかつ実質的にナノ粒子は胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない。これに照らすと、ナノ粒子は約1ミクロン未満の平均粒径を有する粒子である。好ましい実施形態では、ナノ粒子の粒径は約50nm〜約800nm、好ましくは約100nm〜約500nmの範囲である。さらにこれらの実施形態については、毒素結合性組成物は、対象への投与時に動物および好ましくは、例えばヒトならびに他の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ネコ、イヌ、ブタ、ニワトリ、ウシおよびウマ)を含む哺乳動物などの対象の胃腸内腔内に局在化される。「胃腸内腔」という用語は、本明細書において動物の腸管と呼びうる胃腸管内の空間または空洞を示す「内腔」という用語と同義的に用いられる。一部の実施形態では、毒素結合性組成物は胃腸粘膜を介して吸収されない。「胃腸粘膜」は、胃腸内腔を身体の他の部分から区別する細胞の層を示し、小腸粘膜などの胃腸粘膜を含む。一部の実施形態では、胃腸粘膜細胞による毒素結合性組成物の取り込み時に、胃腸内腔内に流出することによって内腔での局在化がなされる。本明細書において用いられる「胃腸粘膜細胞」は、例えば腸細胞(intestinal enterocyte)、結腸細胞(colonic enterocyte)、腸細胞先端(apical enterocyte)などの腸管上皮細胞を含む任意の胃腸粘膜細胞を示す。本明細書において用語、関連用語および文法上のバリエーションが用いられる際、かかる流出によって非吸収性に関する正味の効果が得られる。
【0024】
好ましいアプローチでは、毒素結合性組成物は実質的に胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない組成物でありうる。そのようなものとして本明細書において用いられる「吸収されない」とは、毒素結合性組成物の有意な量、好ましくは統計学的に有意な量、より好ましくは本質的に全部が胃腸内腔内に残存するように調節された組成物を示しうる。例えば、毒素結合性組成物の少なくとも約80%、85%、90%、95%、または98%が(統計学的に関連性があるデータセットに基づくいずれの場合にも)胃腸内腔内に残存する。
【0025】
血清バイオアベイラビリティの観点で相互に述べると、対象への投与後に毒素結合性組成物の生理学的に有意でない量が対象の血清内に吸収される。例えば、対象への毒素結合性組成物の投与時、(例えば投与後に検出可能な血清バイオアベイラビリティに基づき)毒素結合性組成物の約20%以下の投与量が対象の血清内にあり、好ましくは毒素結合性組成物の約15%以下、および最も好ましくは毒素結合性組成物の約10%以下が対象の血清内にある。一部の実施形態では、約5%以下、約2%以下、好ましくは約1%以下、およびより好ましくは約0.5%以下が(統計学的に関連性があるデータセットに基づくいずれの場合にも)対象の血清内にある。
【0026】
「吸収されない」という用語は、本明細書において「非吸収性の(non−absorbed)」、「非吸収性(non−absorbedness)」、「非吸収(non−absorption)」という用語およびその他の文法的なバリエーションとともに交互に用いられる。
【0027】
様々な好ましい実施形態には、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物が含まれる。約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.1mg/mL〜約20mg/mLであり、毒素結合性組成物およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中でインキュベートされる。好ましくは、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.5mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約0.8mg/mL〜約5mg/mL;さらにより好ましくは約1mg/mL〜約3mg/mLである。他の好ましい実施形態では、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.1mg/mL〜約20mg/mLであり、毒素結合性組成物およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Bは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中でインキュベートされる。好ましくは、約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bと結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.8mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約1mg/mL〜約6mg/mLである。
【0028】
これらの様々な実施形態の一部では、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBは精製される。毒素結合性組成物とのクロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび/またはBのインキュベーションを約2時間〜約36時間;好ましくは約4時間〜約24時間;より好ましくは約12時間〜約18時間実施してもよい。インキュベーションは通常、約30℃〜約40℃;好ましくは約37℃の範囲の温度で実施される。重合体粒子に結合される毒素の量は、クロストリジウム・ディフィシル毒素のELISAによって上清中の遊離毒素の量を測定しかつ混合物に添加されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の量から差し引くことから算出された。試験から得られた値は、表8に一覧されかつ実施例8ではより詳細に述べられる。
【0029】
粒子は任意の適切な形状、好ましくは球形、層状、または不規則であってもよい。最も好ましい形状は球形である。粒子自体は、微孔性、マクロ孔質性(macroporous)、メソ細孔性、または非多孔性を示しうる。もし大きな粒子が使用される場合、毒素結合に使用可能な表面が高くなるようにこれらの粒子が多孔性であることが好ましい。孔サイズの分布は、好ましくは毒素が粒子の内部表面を横切ることを可能にするように選択される。例えば、クロストリジウム・ディフィシルによって分泌された毒素AおよびBなどの高分子量の毒素に対して要求される孔サイズは毒素の直径よりも少なくとも2倍大きい。球形ビーズなどの非多孔性粒子における表面は外面に限られることから、好ましくは特定の用量でGI内に存在する毒素負荷を中和させるのに十分な表面が利用可能であるようにビーズの大きさが調節される。
【0030】
好ましい実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の表面密度は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5もしくはこれら以上のμmol/m2より大きくてもよい。例えば、粒子における毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の単位表面密度当たりのモル含量は約1μmol/m2より大きくてもよく、例えば約1μmol/m2〜約10μmol/m2、好ましくは約1μmol/m2〜約5μmol/m2および一部の実施形態では約1μmol/m2〜約3μmol/m2の範囲であってもよい。特定の実施形態では、表面密度は約2もしくは約3μmol/m2であってもよい。他の好ましい実施形態では、毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の表面密度は、約0.5、0.1もしくは1.5μmol/m2より大きくてもよい。それに加えまたはその代わりとして、粒子における毒素結合性部分(例えばオリゴ糖)の単位重量当たりのモル含量は、好ましくは約10μmol/gm〜約1000μmol/gmの範囲であってもよい。粒子における好ましい毒素結合(例えばオリゴ糖)の単位重量当たりのモル含量は、約10μmol/gm〜約500μmol/gm、または約10μmol/gm〜約200μmol/gm、または約10μmol/gm〜約100μmol/gmの範囲であってもよい。一部の実施形態では、単位重量当たりのモル含量は約70μmol/gmであってもよい。
【0031】
表1中の情報は、所定のオリゴ糖含量に対する粒径および有孔性の選択上の指針として使用されうる。
【0032】
【表1】
【0033】
一部の実施形態では、粒子は、リン脂質の会合から形成されるリポソームまたは小胞、ならびにブロック共重合体ミセルなどの他の同様のタイプの高分子集合体である。他の実施形態では、粒子は当該分野で公知の樹状構造をとり、例えば、本明細書において参照により援用される、グレイソン S.M.(Grayson S.M.)ら、Chemical Reviews、2001年、101:3819−3867頁;およびボズマン A.W.(Bosman A.W.)ら、Chemical Reviews、1999年、99;1665−1688頁を参照のこと。
【0034】
一実施形態では、毒素結合性組成物は互いに付着し合う少なくとも2種類の粒子から構成され、オリゴ糖が粒子の一方に付着される。好ましくは、粒子の一方は共重合体である。特定の実施形態では、第2の粒子はラテックス粒子、シリカ粒子、メチルオキシドナノ粒子、疎水性重合体、コロイドポリマーであるかまたは本明細書に記載の他の適切な物質からなる。
【0035】
粒子の形成
オリゴ糖担体として選択される粒径および形態に依存し、様々な合成手順を用いることが可能である。例えばゾル−ゲルプロセス、特にStoberプロセスを用いると、非多孔性の球形形状を有するシリカ粒子が簡便に調製され、Stoberプロセスにより、ケイ素アルコキシドがアンモニアと共加水分解される(ストーバー(Stober)ら、Journal of Colloid and Interface Science、1968年、26、62頁)。有機金属かまたは金属塩を使用する他のゾル−ゲルプロセスもまた、金属酸化物のナノ粒子を生成することで周知である。エアロゾルおよびジェッティングプロセスもまた、本発明に適する大きさおよび有孔性についての特性を有する制御性に優れた無機および有機材料粉末を調製することで周知である。懸濁液、マイクロサスペンション、エマルジョン、ミニエマルジョン、マイクロエマルジョンの重合方法など、分散媒体中での重合により、有機ポリマービーズを調製することが可能である。多孔性粒子が使用される場合、懸濁液重合プロセスが好ましく、多官能性単量体(multifunctional monomer)を含むフリーラジカル重合可能な単量体の混合物が分散剤を含む水相中で乳化され、該単量体相は種々の希釈剤およびポロゲン溶媒も含む。後者の溶媒は、形成された粒子の微小/巨大/中程度な有孔性を制御する。多段階で播種される懸濁液重合によるかあるいは膜乳化またはジェッティングプロセスを用いて、モノ−サイズの粒子が調製される。一般に、かかる重合体粒子を調製するのに共重合体化されうる単量体には、スチレン、ジビニルベンゼン(全異性体)で置換されたスチレン、アルキルアクリレート、置換されたアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、置換されたアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、エチレングリコールジメタクリレート、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、N−ビニルアミド、マレイン酸誘導体、ビニルエーテル、アリル、メタリル単量体およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種類の単量体が含まれる。これらの単量体の官能化された種類も使用可能である。本発明にて使用可能な特定の単量体または共単量体には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全異性体)、ブチルメタクリレート(全異性体)、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全異性体)、ブチルアクリレート(全異性体)、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全異性体)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、ビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノスチレン(全異性体)、α−メチルビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノα−メチルスチレン(全異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アリルアミン、メタリルアミン、アリルアルコール、メチル−ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、酢酸ビニルおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
様々な経路に従い、例えばまず、好ましくは糖類の還元末端上に位置付けられるアミン反応性末端基を有するオリゴ糖配列を官能化し、さらにアミン反応性の官能性糖をチオイソシアナート基などのアミンで官能化された粒子に反応させることにより、粒子表面上にオリゴ糖部分を付着させてもよい。このアプローチの変形として、アミン官能基をオリゴ糖上に付着させ、それをエポキシド基などの求電子物質で官能化された粒子と反応させる。
【0037】
別の方法では、まず重合可能な部分がオリゴ糖に付着され、エマルジョン重合プロセスにおいてこのオリゴ糖官能性単量体を粒子を形成する単量体と共重合させる。この一般的プロセスの変形および好ましい実施形態は、第1にリビング重合技術を用いてオリゴ糖官能性単量体を第2の共単量体と重合して第1の親水性ブロックを形成し;第2にこの親水性ブロックを用いて第2の疎水性ブロックをさらに成長させ、ジブロック共重合体を形成し;第3に水性媒体中でブロック共重合体を分散させることである。ブロック共重合体の合成については、陰イオン重合、陽イオン重合、グループトランスファー重合および制御されるフリーラジカル重合などの多数のリビング重合技術によって実施可能である。後者の技術には、ニトロキシドに媒介される重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)が含まれ、この後者の技術は好ましい。RAFT技術では、ジチオエステル、ジチオカルバメート、ジチオカーボネート、またはジチオカルバゼートから選択される連鎖移動剤(CTA)が用いられる。同アプローチの概略図は図1Aおよび図1Bに示される。両親媒性ブロック共重合体は、崩壊した疎水性ブロックのコアとオリゴ糖官能性親水性ブロックのシェルを含むミセル内部に自発的に集合する。別の好ましい実施形態では、ブロック共重合体ミセルの疎水性コアは、さらなる第3の単量体または「コア充填(core−filling)」単量体を重合することによってさらに架橋される。このコア充填単量体は、好ましくは疎水性単量体、多官能性単量体、またはこれらの組み合わせである。コア充填単量体のブロック共重合体に対する重量比は、典型的には約0.1〜約100、好ましくは約0.5〜約10からなる。
【0038】
ブロック共重合体における分子量は約2000〜約200,000、好ましくは約500〜約200,000、より好ましくは約10,000〜約100,000、最も好ましくは約20,000〜約50,000の範囲内にあり;親水性の疎水性に対する比には約9:1〜約1:9、好ましくは約3:1〜約1:3、より好ましくは約2:1〜約1:2、さらにより好ましくは約1.1:1、および最も好ましくは約1.5:1が含まれ;かつ親水性ブロック中のオリゴ糖のモルパーセントは約2モルパーセント〜約100モルパーセント、好ましくは約5モルパーセント〜約50モルパーセントの範囲内にある。
【0039】
樹状スペーサ(dendritic spacer)の使用により、オリゴ糖は様々な方法を介して重合体粒子に付着されうる。例えば、樹状スペーサの使用方法については、ランドクイスト(Lundquist)およびトゥーン(Toone)、「The Cluster Glycoside Effect」、Chem.Rev.、2002年、102、555−578頁に記載されている。
【0040】
特定の好ましい実施形態では、オリゴ糖は高い局所密度で固体表面上に強力に固定される。糖密度の制御については、上記の合成手順によって行ってもよい。プロセス変数には、ブロック共重合体中の糖含量、糖含有ブロックの疎水性ブロックに対する比、およびブロック共重合体のコア充填単量体に対する比が含まれる。糖の表面密度は、第一に粒子表面および配合中の糖含量から見積もることが可能である。粒子表面については、電子顕微鏡、動的光散乱またはフラウンホッファー光回折法(Fraunhoffer light diffraction methods)によって測定された粒径から算出することが可能である。あるいは、オリゴ糖のモル含量は初期の糖濃度を知ることによって判定することが可能である。好ましくは、オリゴ糖の表面密度は約1μmol/m2より大きく、好ましくは約5μmol/m2より大きく、および最も好ましくは約10μmol/m2より大きい。光学密度範囲は、下記の如く生化学および細胞生物学の標準的手順によって測定された毒素の結合能によって決定される。
【0041】
本発明の別の態様では、リンカー修飾のためにメチルエステルハンドルを有する三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcを合成することを目的とした方法が提供される。かかる修飾の例として、種々の重合体のバックボーン構造の付加におけるリンカーとして機能するジアミン基の導入が挙げられる。本発明の別の態様では、フリーラジカル重合技術に基づく重合体のバックボーンおよび三糖−リンカー−重合体組成物の生成のための方法が記載される。かかる技術には糖に由来するアクリレート、メタクリレート、スチレン、およびビニル単量体を用いる重合可能な糖単量体の直接重合が含まれ;付加的な技術には、求核アミン糖を使用した糖部分での完全な重合体の後修飾によるエポキシドもしくは活性化エステル基を含有する共重合体との反応が含まれる。改変によって高親和性の毒素A結合剤を生成可能な三糖−リンカー−重合体の特性には、重合体の大きさ、重合体内部のオリゴ糖密度、完成した重合体における疎水性/親水性のバランス、および単量体サブユニットの構造/形態(すなわち、線状、ブロック、スター、グラフト、およびゲル)が含まれる。
【0042】
毒素結合性オリゴ糖
本明細書に記載の組成物中に使用可能な適切なオリゴ糖の例として、毒素Aおよび/または毒素Bに結合するオリゴ糖が挙げられる。適切なオリゴ糖として、βGlc;αGlc(1−2)βGal;αGlc(1−4)βGlc(麦芽糖);βGlc(1−4)βGlc(セロビオース);αGlc(1−6)αGlc(1−6)βGlc(ソマルトース);αGlc(1−6)βGlc(イソマルトース);βGlcNAc(1−4)βGlcNAc(キトビオース)などのクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖が挙げられる。他の適切なクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性オリゴ糖として以下のものが挙げられる。
【0043】
【表2】
【0044】
コレラ毒素に適するオリゴ糖として、Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β)(NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、Gal(β)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、GalNAc(β1,4)−Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、およびFuc(αl,2)Gal(β,3)−GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミドが挙げられる。
【0045】
熱不安定性毒素に対するオリゴ糖の例としてGM1が挙げられる。破傷風毒素に適するオリゴ糖は、Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,8))NeuAc(2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)((NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)−Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド、およびNeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8)−NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミドである。
【0046】
ボツリヌス毒素AおよびEに適するオリゴ糖はNeuAc(α2,8)NeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)−Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;ボツリヌス毒素B、C、およびFの場合にはNeuAc(α2,3)Gal(β1,3)GalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,8))NeuAc(α2,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;ならびにボツリヌス毒素Bの場合にはGal(β)−セラミドである。
【0047】
デルタ毒素に適するオリゴ糖はGalNAc(β1,4)(NeuAc(α2,3))Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;毒素Aの場合にはGal(αl,3)Gal(β1,4)GlcNAc(β1,3)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;シガ様毒素(SLT)−IおよびSLT−II/IIcの場合にはGal(αl,4)Gal(β)(P1二糖類)、Gal(αl,4)Gal(β1,4)GlcNAc(β)(P1三糖)、またはGal(αl,4)Gal(β1,4)Glc(β)(Pk三糖);シガトキシンの場合にはGal(αl,4)Gal(β)−セラミド;ベロ毒素の場合にはGal(αl,4)Gal(β1,4)Glc(β)−セラミド;百日咳毒素の場合にはNeuAc(α2,6)Gal;ならびに赤痢菌毒素の場合にはGlcNAc(β1)である。
【0048】
本発明の一態様は、粒子に付着したオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、ここで粒子の表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1もしくはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きく、オリゴ糖は可溶性タンパク質に結合し、かつ粒子はタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、分子として水溶性を示さない。本発明の別の態様は、粒子に付着したオリゴ糖を含むタンパク質結合組成物であり、ここで粒子の表面積当たりのオリゴ糖のモル含量は約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1もしくはこれらを超えるμ当量/m2よりも大きく、オリゴ糖は可溶性タンパク質に結合し、かつ粒子はタンパク質またはカーボンナノチューブではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、分子として水溶性を示さない。かかる粒子の例として、脂質、リン脂質および本明細書に記載の他の粒子が挙げられる。
【0049】
処理方法
一部の実施形態では、本発明の組成物および方法は、毒素に結合しかつそれを中和させるのに用いる。本明細書に記載の組成物は、毒素の全体もしくは一部に結合しかつ/またはそれらを中和させることが可能である。例えば、毒素は、経口粘膜および胃腸管、鼻道および気道、尿管および生殖器官、ならびに耳道を含む宿主の粘膜表面上で作用しうる。さらに外傷における使用として、本発明の組成物および方法が含まれる。細胞表面の標的の機能を不活化するかまたは破壊する作用モードを有する毒素が含まれ、その例が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)およびストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)によって産生される超抗原毒素のファミリー、ストレプトリシン、パーフリンゴリジン、α毒素、ロイコトキシン、アエロリジン、デルタヘモリシン、および大腸菌(E.coli)病原型(pathovars)によってコードされる様々な溶血素などの細胞浸透性毒素、ならびにバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のエンテロトキシン(非−LPS)などの付着因子機能を遮断する毒素において見出される。本発明を標的細胞表面に結合する毒素に対して用いることも可能であり、それを細胞質内に転位させ、細胞内標的を破壊するかまたは不活化する。この群の中には、(i)ジフテリア毒素、緑膿菌(P.aeruginosa)外毒素A、およびシガトキシンなどのタンパク質合成阻害剤と;(ii)炭疽菌毒素、百日咳毒素および百日咳アデニル酸シクラーゼ毒素、コレラ毒素、ならびに大腸菌のLT毒素、ヘモフィルス・デュクレイ(H.ducreyi)、大腸菌、シゲラ、およびカンピロバクターによって産生される細胞致死性膨張毒素、ウェルシュ菌(C.perfringens)のα毒素、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびB、ならびに大腸菌およびボルデテラ種の細胞毒性壊死性因子などの関連する熱不安定毒素を含むシグナル伝達阻害剤と;(iii)ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の空胞化毒素、破傷風毒素、ボツリヌス毒素の粘膜輸送、およびC2ボツリヌス菌(C.botulinum)毒素を含む、細胞内輸送ならびに細胞骨格の毒素とが含まれる。
【0050】
毒素媒介性疾患の治療および/または予防に対し、本明細書において提供される組成物および方法が用いられる。かかる毒素は、細菌毒素およびウイルス粒子、プリオン、抗体、付着因子、レクチン、セレクチン、シグナル伝達ペプチド、ホルモン、特に免疫系応答および/または自己免疫疾患に関与するホルモン、ならびにGI管において副作用を有する他の分子などの他の毒性ポリペプチドを含みうるがこれらに限定されない。
【0051】
本明細書に記載の組成物および方法は、標的細胞表面にて作用する細菌毒素および感受性細胞の細胞内標的上で作用する毒素に対して用いることが可能である。第1の群の一般的な例として、黄色ブドウ球菌およびストレプトコッカス・ピオゲネスの毒素、ならびに黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ウェルシュ菌、リステリア・モノサイトゲネス(L.monocytogenes)、大腸菌、エロモナス・ハイドロフィラ(A.hydrophila)およびその他を含む多数のグラム陽性菌およびグラム陰性菌によって分泌される、孔を形成する毒素が挙げられる。細胞内で作用する毒素の中で受容体媒介性機構によって標的細胞に入る毒素の例として、多数の他の例とともに、緑膿菌の外毒素A、志賀赤痢菌(S.dysenteriae)のシガトキシン、コレラ菌(V.cholerae)のコレラ毒素、大腸菌の不安定毒素、ヘリコバクター・ピロリの空胞化毒素、ボツリヌス菌の神経毒素、ならびにクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBが挙げられる。細胞内作用性毒素(intracellular−acting toxin)の第2の群は毒素の標的細胞内への直接注射によって移入されるが、かかるタイプIIIおよびタイプIVで分泌される毒素の周知の例として、エルシニア症(Y.spp.)のYopタンパク質、百日咳菌(B.pertussis)の百日咳毒素、およびヘリコバクター・ピロリのCagAタンパク質が挙げられる。数種類の細菌毒素は、宿主の粘膜表面の細胞に作用する。これらの例として、コレラ菌毒素、大腸菌の熱不安定毒素、志賀赤痢菌の(EHECおよびEPEC変異体を含む)シガトキシン、クロストリジウム・ディフィシル毒素A、百日咳菌の百日咳毒素、ならびに黄色ブドウ球菌およびストレプトコッカス・ピオゲネスによってコードされる超抗原毒素が挙げられる。
【0052】
クロストリジウム・ディフィシル毒素産生株は、CDADおよびPMC症候群に関与する2種類の外毒素を産生する(リアーリ,D.M.(Lyerly,D.M.)、H.C.クリバン(H.C.Krivan)ら(1988年)「Clostridium difficile:its disease and toxins」Clin Microbiol Rev1(1):1−18頁)。毒素A(CdtA、308kDa)は、動物モデルおよび回腸移植片において流体分泌を誘発するエンテロトキシンであり、臨床症状の発生に関与する一次毒素として一般に認められる(トリアダフィロプロス,G.(Triadafilopoulos,G.)、C.ポソウラキス(C.Pothoulakis)ら、(1987年)「Differential effects of Clostridium difficile toxins A and B on rabbit ileum」 Gastroenterology 93(2):273−9頁)。毒素B(CdtB、279kDa)は、毒素の培養細胞に対する著しい細胞変性作用および動物モデルにおけるその腸毒性の相対的損失によって規定される細胞毒素である。細胞変性作用のみの測定により、毒素Bは毒素Aよりも100倍以下〜1000倍高い毒性を示す(トリアダフィロプロス,G.(Triadafilopoulos,G.)、C.ポソウラキス(C.Pothoulakis)ら、(1987年)「Differential effects of Clostridium difficile toxins A and B on rabbit ileum」 Gastroenterology 93(2):273−9頁;リマ,A.A.(Lima,A.A.)、D.M.リアーリ(D.M.Lyerly)ら、(1988年) 「Effects of Clostridium difficile toxins A and B in rabbit small and large intestine in vivo and on cultured cell in vitro」 Infect Immun 56(3):582−8頁;リーグラー,M.(Riegler,M.)、R.セディヴィ(R.Sedivy)ら(1995年)「Clostridium difficile toxin B is more potent than toxin A in damaging human colonic epitherium in vitro」 J Clin Invest 95(5):2004−11頁;シャベス−オラルテ,E.(Chaves−Olarte,E.)、M.ワイドマン(M.Weidmann)ら(1997年) 「Toxins A and B from Clostridium difficile differ with respect to enzymatic potencies,cellular substrate specificities,and surface binding to cultured cells」 J Clin Invest 100(7):1734−41頁;ストゥッベ,H.(Stubbe,H.)、J.ベルドズ(J.Berdoz)ら(2000年)「Polymeric IgA is superior to monomeric IgA and IgG carrying the same variable domain in preventing Clostridium difficile toxin A damaging of T84 monolayers」 J Immunol 164(4):1952−60頁)。
【0053】
本明細書に記載の組成物および方法によると、GTPの結合に関与するトレオニン残基のモノグルコシル化によるRho GTPアーゼの毒素不活化への作用により、クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性状態に対する治療および/または予防が可能である。Rho GTPアーゼのグルコシル化により、アクチン細胞骨格を調節するエフェクタータンパク質を有するこれらのシグナル伝達分子間の相互作用が遮断される。さらに、Rho GTPアーゼの不活化により、細胞における分泌過程、エンドサイトーシス、タンパク質合成、細胞周期進行、および多数の他の基本的な細胞「ハウスキーピング」機能の制御が破壊される可能性がある。好ましくは、毒素結合性組成物は宿主の細胞表面受容体へのクロストリジウム・ディフィシル毒素の結合を阻害する。
【0054】
毒素Aは、Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcおよび/またはタイプ2のコアを含む最小の二糖単位Gal(β1−4)Glcを含有する複合糖質(Oと連結、Nと連結、またはグリコスフィンゴリピド)に結合する(カスタグリウオロ,I.(Castagliuolo,I.)、J.T.ラモン(J.T.LaMont)ら(1996年)「A Receptor Decoy Inhibits the Enterotoxic Effects of Clostridium difficile Toxin A in Rat Ileum」Gastroenterology 111:433−8頁;米国特許第5,484,773号明細書;および米国特許第5,635,606号明細書)。毒素Aに対して合意が得られた受容体構造は種々の非ヒト哺乳類細胞において同定されているが、ヒト組織内でGal(α1−3)Gal(β1−4)Glc構造が自然に見出されることはない。好ましくは、本発明の粒子において使用されるオリゴ糖配列は、毒素Aのこれらの複合糖質への結合を妨げるか阻害する。
【0055】
細菌毒素によって媒介される疾患の治療に加え、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、および寄生虫の感染サイクルなどのタンパク質−炭水化物の認識事象を含む他の病理学的相互作用において本明細書に記載の組成物を使用してもよい。
【0056】
本発明のさらなる態様では、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素Bによって媒介される下痢の治療に対する方法が提供され、同方法はCDADに罹患した対象に重合体支持体に連結される三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcを含む組成物の有効量を投与するステップを含み、該オリゴ糖配列は毒素Aに結合し、感染した胃腸管の内腔から毒素Aを除去する。同様に、組成物は毒素Bに結合してそれを除去することで、タンパク質の腸上皮細胞に対する細胞毒性作用を防止することが可能である。重合体組成物は許容可能な医薬品担体中で調合され、胃腸管から除去される能力を有する。
【0057】
本発明の別の態様では、典型的にはメトロニダゾール(フラジール(Flagyl))または経口バンコマイシンからなる、CDADに対する抗生物質療法に伴い、重合体支持体に連結される三糖Gal(α1−3)Gal(β1−4)Glcからなる組成物が送達される。すなわち、別々の製剤としてまたは薬剤の決まった組み合わせにおいて併用療法の提供が可能である。
【0058】
本発明では、組成物を他の活性医薬品とともに同時投与してもよい。この同時投与は、2種類の薬剤の同一の剤形での同時投与、別々の剤形での同時投与、および分離投与を含みうる。例えばCDADの治療においては、特定の抗生物質などのCDADを誘発する薬剤とともに組成物を同時投与してもよい。同時投与される薬剤を同一の剤形で共に調合し、同時投与してもよい。あるいは、両方の薬剤が別々の製剤中に存在する場合、それらを同時投与してもよい。もう一つの代替案では薬剤は別々に投与される。分離投与プロトコルでは、数分または数時間または数日置いて薬剤を投与することが可能である。
【0059】
さらに別の方法では、本発明の毒素結合性組成物は、有効量の抗生物質とともに同時投与される。毒素結合性組成物の投与は、有効量の抗生物質の投与より前、それと同時、またはその後であってもよい。様々な抗生物質の用量および治療法は、当該技術で周知である。一実施形態では、抗生物質は、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。あるいは、抗生物質は、テイコプラニン、フシジン酸、バシトラシン、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。さらなる方法では、対象は、毒素結合性組成物と、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質とで治療され、その後に必要に応じて、毒素結合性組成物と、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質とで治療される。
【0060】
本明細書で用いられる「治療する」という用語は、治療効果および/または予防的な利益を得ることを含む。治療効果とは、治療される基礎疾患の撲滅、改善、または予防を意味する。例えば偽膜性大腸炎(PMC)患者では、治療効果には腸管の粘膜表面に付着した内在する偽膜性で滲出性のプラークの撲滅または改善が含まれる。さらに、患者は依然として基礎疾患に悩まされる場合があるにもかかわらず、患者において改善が認められるような基礎疾患に関連する1つもしくは複数の生理的な兆候の撲滅、改善、または予防によって治療効果が得られる。例えば、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性組成物のPMCを患う患者への投与により、患者の下痢が減少する場合だけではなく、患者においてPMCを併発する他の疾患と比べて改善が認められる場合にも治療効果が得られる。予防的な利益の例として、たとえPMCの診断がなされていなくても、本明細書に記載の組成物がPMCを発症するリスクがある患者またはPMCに関する1つもしくは複数の生理的な兆候を報告する患者に投与される場合が挙げられる。組成物は毒素媒介性疾患の再発の予防における使用にも適する。
【0061】
本発明の医薬組成物には、重合体が有効量すなわち治療的または予防的な利益を得るための有効量で存在する場合の組成物が含まれる。特定の用途に対する実際の有効量は、患者(例えば、年齢、体重など)、治療がなされる状態、および投与経路に依存するであろう。当業者の能力の範囲内で、特に本明細書における開示内容を考慮すれば、有効量の判定は十分になされる。
【0062】
ヒト使用における有効量は、動物モデルから決定されうる。例えば、動物において有効であることが判明している胃腸濃度を得ることで、ヒトに対する用量の調製が可能である。
【0063】
動物における重合体の用量は、治療がなされる疾患、投与経路、および治療される患者の身体特性に依存するであろう。重合体の治療的および/または予防的使用における用量レベルは約0.5gm/日〜約30gm/日でありうる。これらの重合体は食事とともに投与されることが好ましい。組成物は、1日1回、1日2回、または1日3回投与されうる。最も好ましい用量は約15gm以下/日である。好ましい用量範囲は、約5gm/日〜約20gm/日、より好ましくは約5gm/日〜約15gm/日、さらにより好ましくは約10gm/日〜約20gm/日、および最も好ましくは約10gm/日〜約15gm/日である。別の好ましい用量は約1gm/日〜約5gm/日である。
【0064】
本明細書に記載の重合体組成物を他の適切な活性剤と組み合わせて使用してもよい。例えば、PMCまたはCDADの治療において、重合体組成物はバンコマイシン、メトロニダゾール、テイコプラニン、フシジン酸、およびバシトラシンなどの抗生物質と組み合わせて使用されうる。他の併用療法には、抗−毒素A免疫グロブリンまたは経口投与されるウシ抗−毒素A免疫グロブリン、毒素Aトキソイドワクチン、および可溶性のスルホン酸ポリスチレン樹脂をベースとする経口の非吸収性高分子の毒素結合剤を用いる受動免疫療法が含まれうる。
【0065】
本明細書に記載の組成物をコレスチラミンおよびコレスチポールなどのイオン交換樹脂と組み合わせて使用してもよい。併用可能な他の適切な重合体は、陽性基と疎水基を有する適切な重合体について記載する、米国特許第6,007,803号明細書;米国特許第6,034,129号明細書;および米国特許第6,290,947号明細書、ならびに陰イオン基を有する重合体に関する、米国特許第6,270,755号明細書;米国特許第6,419,914号明細書;米国特許第6,517,827号明細書;米国特許第6,890,523号明細書;および米国特許出願公開第2005/0214246号明細書に記載されている。
【0066】
別の方法では、線状の毒素Aに結合するエピトープGal(α1−3)Gal(β1−4)Glc、および様々な誘導体を固体の不活性支持体に付着させると、毒素A(SYNSORB)に対する結合能および中和能を有する不溶性物質が生成された(ヒーアツェ(Heerze)、アームストロング(Armstrong)1996年)。オリゴ糖配列は、毒素Aの除去に特異的な結合部位をもたらし、この受容体模倣体は、非ペプチジルのリンカーアームを通って不活性支持体にカップリングされる。米国特許第5484773号明細書では、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合する、固体医薬品に共有結合したオリゴ糖配列についての記載がある一方、米国特許第6,013,635号明細書では、同じ概念についての記載があるが、クロストリジウム・ディフィシル毒素Bが対象である。
【0067】
クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患を治療する別の方法には、それを必要とする対象への毒素結合性部分および重合体粒子を含有する有効量の毒素結合性組成物の投与が含まれる。少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の組成物によって結合され、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理される。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの約90%に結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.5mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約0.8mg/mL〜約5mg/mL;さらにより好ましくは約1mg/mL〜約3mg/mLである。クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介性疾患を治療する別の方法には、クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物の有効量の必要としている対象への投与が含まれる。少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の組成物によって結合され、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは約5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の毒素結合性組成物で処理される。好ましくは、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの約90%に結合するのに必要な毒素結合性組成物の濃度は約0.8mg/mL〜約10mg/mL;より好ましくは約1mg/mL〜約6mg/mLである。
【0068】
様々な実施形態の一部では、クロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBは精製される。約2時間〜約36時間;好ましくは約4時間〜約24時間;より好ましくは約12時間〜約18時間かけて、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性組成物のインキュベーションを行いうる。インキュベーションは通常、約30℃〜約40℃;好ましくは約37℃の範囲の温度で行われる。上清中の遊離毒素の量をクロストリジウム・ディフィシル毒素におけるELISAによって測定し、遊離毒素の量を混合物に添加されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の量から差し引くことから、重合体粒子に結合される毒素の量が算出された。試験から得られた値は、表8に一覧され、実施例8ではより詳細に記載される。
【0069】
製剤、投与経路、用量
本明細書に記載の組成物またはそれらの医薬的に許容できる塩を多種多様な経路または投与様式を用いて患者に送達することが可能である。投与のための最も好ましい経路は、口、腸または直腸である。
【0070】
必要に応じ、組成物を他の治療薬と併用して投与することが可能である。本発明の化合物とともに同時投与可能な治療薬の選択は、一つには治療される条件に依存するであろう。
【0071】
重合体(またはそれらの医薬的に許容できる塩)は、それ単独で、あるいは活性化合物が1種もしくは複数種の医薬的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤との混合剤または混合物の中に存在する医薬組成物の形態で投与されうる。活性化合物の医薬品として使用可能な製剤に至るまでの処理を促進する賦形剤および補助剤を含む1種もしくは複数種の生理学的に許容できる担体を使用する従来の方法で、本発明による使用を意図した医薬組成物を調合することが可能である。適切な製剤は、選択される投与経路に依存している。
【0072】
これらの組成物が好ましい経口投与用に使用される場合、種々の方法で同組成物を調合することが可能である。好ましくは、それは凍結乾燥、液体、固体、または半固体の形態であろう。水またはヒマシ油などの医薬品として不活性な液体担体を含有する組成物は経口投与に適すると考えうる。他の医薬品として適合する液体または半固体も使用可能である。かかる液体および半固体の使用は、当業者にとっては周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年を参照のこと。
【0073】
アップルソース、アイスクリームまたはプディングなどの半固体状食品と混合可能な組成物が好ましい場合がある。不快な味もしくは後味のない製剤が好ましい。組成物を直接に胃に送達するのに経鼻胃チューブも使用可能である。
【0074】
固体組成物も使用可能であり、場合によって都合よく、好ましくは錠剤またはカプセル形態で提示される乳糖、澱粉、デキストリンまたはステアリン酸マグネシウムなどの従来の固体担体を含む、医薬品として不活性な担体を含有する製剤において使用可能である。カプセルはまた、カプセルを含有する液体またはゲルであってもよい。特にカプセル形態で使用する場合、不活性な医薬担体を加えずに組成物を単独で使用することも可能である。
【0075】
通常、感染した患者の消化管に見出される毒素の中和および除去をもたらすように用量を選択する。有用な用量は、約1〜100μmolのオリゴ糖/kg体重/日、好ましくは約10〜50μmolのオリゴ糖/kg体重/日である。用量レベルおよび投与スケジュールは、使用される特定のオリゴ糖の構造ならびに対象の年齢および状態などの因子に依存して変化する可能性がある。
【0076】
先に検討したように経口投与は好ましいが、経直腸などの他の投与手段として製剤を検討することも可能である。これらの製剤の有用性は、使用される特定の組成物および同治療を受ける特定の対象に依存する場合がある。これらの製剤は、油性、水性、乳状でありうる液体担体を含有するかまたは投与様式に適する特定の溶媒を含有する。組成物は、単位用量形態かまたは複数回用量もしくはサブユニット用量で調合されうる。
【実施例】
【0077】
実施例1:毒素結合性組成物の合成
以前に報告したように、SM1前駆体1を合成した。国際公開第02/044190号パンフレットを参照のこと。
【化1】
【0078】
SM1の合成:
エチレンジアミン(370mmol)25mLおよびジメチルホルムアミド30mLの溶液に、10gmのSM1前駆体1(14.8mmol)を添加し、反応混合物を85℃で18時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン:メタノール:水=6:4:0.15)によって反応の進行を監視した。反応完了時に,ロータリーエバポレーターを用いて混合物を20mLに濃縮し、濃縮物をイソプロパノール1.5Lに注ぐことによってSM1前駆体2を白沈として得た。濾過した沈殿物を真空下で10時間乾燥させ、後のアクリロイル化に対して直接使用した。
【0079】
粗SM1前駆体2をMeOH/水混合物(容量比1:1)80mL中に懸濁し、氷槽内で撹拌した。4.6gmの炭酸ナトリウム(44mmol)の添加後、塩化アクリロイル(44mmol)3.6mLを滴下漏斗で10分かけて添加した。混合物を0℃から室温になるまで4時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン:メタノール:水=6:4:0.3)によって反応の進行を監視した。反応完了時に無機塩を濾過して取り除き、45℃未満でロータリーエバポレーターを用いて濾過物を濃縮した。カラムクロマトグラフィー精製(5:1〜2:1のジクロロメタン:メタノール混合物で溶出)によってアクリロイル化された生成物SM1(7.5g、10mmol)を得た。
【0080】
ブロック共重合体の合成
0.25gmのSM1、0.05gmのジメチルアクリルアミドおよび7mgのジチオエステルRAFT剤に、水/ジメチルホルムアミド混合物(容量比1:1)1.36mLを添加し、それを50℃に加熱した。水30μl中で0.98mgの開始剤、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(ワコ(Wako)製VA−044)を添加した。プロトンNMRによって単量体変換を追跡し、GPC分析によって重合体の分子量を得た。2〜3時間後に第1のブロック単量体の90%を超える変換とともに、0.27gmのn−ブチルアクリレートを半連続的に3時間かけて添加した。ブチルアクリレート添加の完了時に、反応混合物をさらに3時間撹拌し、次いで水8mLを混合物に添加し、それをラテックスの調製に直接に使用するかまたはエマルジョン重合に先立ち水で透析した。
【0081】
ラテックスの調製
【0082】
【表3】
【0083】
KPSストック:
脱イオン水2mL中、50mgのKPS
【0084】
SM1ブロック共重合体溶液10mL、水30mLおよびスチレン0.33mLを100mLの三首モルトンフラスコに添加した。反応混合物をアルゴンで軽く洗浄し、マグネットバーを用いて700rpm、室温で2時間撹拌した。KPSストック溶液108μlの添加によって重合を誘起し、温度を60℃に上昇させた。KPSの添加の1.5〜3時間後、残存するスチレン(2×0.33mL)を添加した。6時間重合後、温度を室温にし、グラスウールおよび0.45μmのGMFフィルタによってラテックス溶液を濾過した。10日にわたる脱イオン水での透析によって残存単量体の除去を行った。
【0085】
このプロトコルを用いて様々な単量体組成物を除いた同ブロック共重合体を含む数種類の粒子懸濁液を生成した。表2を参照のこと。
【0086】
【表4】
【0087】
粒子表面に存在する糖の表面密度を以下のように算出した。
表面密度(μ当量/m2)=糖のμ当量/固体のgm*(6/(d*D))−1(式中、dは重合体粒子の密度、Dはミクロン単位の粒子直径である。)
【0088】
ラテックスの調製−非イオン性開始剤
【0089】
【表5】
【0090】
H2O2ストック溶液の配合:30重量%の過酸化水素33μlを脱イオン水167μlに添加した。
【0091】
アスコルビン酸ストック溶液の配合:10mgのアスコルビン酸を脱イオン水2mLに添加した。
【0092】
反応手順:SM1ブロック共重合体溶液7mL、水35mLおよびスチレン0.3mLを、窒素下、100mLの三首モルトンフラスコ内で700rpm、室温で2時間撹拌した。それに続き、反応混合物を2時間かけて60℃に加熱した。次いで、H2O2ストック溶液116mLおよびアスコルビン酸ストック溶液112mLを混合物に添加した。60℃で60分間攪拌後、残存スチレン(0.7〜0.9mL)を40分ごとに240分かけて半連続的に添加した。スチレン添加サイクルの完了時に反応混合物をさらに2時間撹拌し、次いで温度を室温にし、ラテックス溶液を25μmの孔サイズの濾紙によって濾過した。脱イオン水での10日にわたる透析によって残存単量体の除去を行った。
【0093】
メソ細孔性ヒドロゲルを含有するSM1の合成
【0094】
【表6】
【0095】
グローブボックス内で10ppm未満の酸素濃度でヒドロゲルの調製を行った。0.325gmもしくは0.35gmの単量体(SM1、ビニルホルムアミド、ベンジルアクリルアミドおよびN,N’−エチレンビスアクリルアミド)、1.3mLのポロゲンおよび1.5mgのVA−044を添加した。混合物を50℃で一晩撹拌し、白い不透明なゴム状固体を得て、これを水8mL中の微粒子懸濁液中に3分間の超音波処理によって粉末化した。懸濁液をDI水で2日間透析し、凍結乾燥機で乾燥させた(2日)。
【0096】
実施例2:インビトロでの(ELISAおよび細胞培養)アッセイ
2つのインビトロアッセイを用い、実施例1で合成した微粒子の毒素結合性特性および中和特性について測定した。図2は、微粒子で処理した毒素分子の生物活性の測定に用いたELISAおよび組織培養アッセイの概要を表す。毒素のELISAアッセイにおいて微粒子(1〜10mg/mLの範囲の試験濃度)を毒素(濃度1ng/mL〜160μg/mL)とともに混合物を振動させることなく37℃でインキュベートした。18時間のインキュベーション後、微粒子/毒素混合物を遠心分離し、微粒子と結合された毒素の複合体を表すペレット状物質を除去した。この遠心分離ステップから得られる上清は、結合されていない毒素分子と、固定化毒素分子を検出するのに使用される、西洋わさびペルオキシターゼと共役されたポリクローナル抗体とを「捕捉する」ための、PCG−4モノクローナル抗体からなる標準的なELISAアッセイによって定量される結合されていない毒素分子を含有する。リアーリ,D.M.(Lyerly,D.M.)、C.J.フェルプス(C.J.Phelps),J.トス(J.Toth)、およびT.D.ウィルキンズ(T.D.Wilkins)、1986年、「Characterization of toxins A and B of Clostridium difficile with monoclonal antibodies」 Infect Immun.54:70−6頁を参照のこと。4つの異なる微粒子組成物に対する代表的なELISA特性を図3に示す。TM473B、TM473A、およびTM466Dの物質は、試験微粒子の最低濃度(1mg/mL)でインキュベーション混合物中の遊離毒素A(開始濃度1ng/mL)を50%よりも大きく低下させた。クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの開始濃度での異なる微粒子のIC90(毒素の90%が上清から除去される場合の微粒子の濃度)を表2に示す。
【0097】
哺乳類上皮細胞での細胞培養アッセイは、試験微粒子とのインキュベーション後に結合されていない毒素分子の生物活性を評価するのに用いられる第2の方法を表す。このアッセイでは、標準の96−ウェル組織培養形式でベロ細胞系(アフリカグリーンモンキーの腎臓上皮細胞)を培養し、(上記の如く)これに微粒子/毒素混合物とそれに続いて遠心分離ステップから得られた上清の希釈物を重ね合わせた。このアッセイを結合されていない遊離毒素を定量するためのELISA測定と組み合わせることで、結合されていない毒素に対する生物活性の測定が可能になる。いかなる場合でも、微粒子での予備処理により、細胞培養アッセイによる測定の如く、残存する結合されていない毒素が不活化されることはなかった。
【0098】
細胞培養アッセイを用いることで、毒素との混合時に微粒子によってもたらされる中和の度合いも定量される。このアッセイでは、様々な濃度の微粒子(1〜20mg/mL)を、「細胞の円形化」(すなわち細胞の塑性表面への正常な付着を破壊する細胞毒性作用であり、通常、細胞死または細胞内糸状構造の損失を示す)を誘発することで知られる固定量の毒素(0.3pg/mL〜1ng/mL)と混合させる。一部の場合では、半透性膜(すなわち毒素に浸透可能)を有するトランスウェルを使用することにより、微粒子を細胞と直接接触した状態にならないようにした。これは微粒子−細胞の接触が細胞の毒素作用からの保護にとって不要であることを示すためであった。複数の細胞フィールド(>10)の顕微鏡検査によって毒素中和の相対範囲を比較し、コンフルエントな細胞成長のバックグラウンドにおける円形化された細胞の百分率を定量する。細胞の円形化からの95%を超える保護をもたらす最小有効用量の微粒子を使用することで微粒子活性の測定が可能になる。表3にデータを示す。
【0099】
【表7】
【0100】
SM1含有微粒子は毒素Bの活性を中和させることも可能であった。上記の方法を用いることで、微粒子が10mg/mLの用量で使用される場合、負荷用量0.3pg/mLの毒素Bに対する95%を超える保護が得られた(図4参照)。
【0101】
図7は、微粒子tm473bにおける濃度範囲による結合された毒素AおよびBの百分率を示す。
【0102】
実施例3:微粒子(TM473B)の結合能
ブロッキング用緩衝液(5%ウシ胎児血清を含有する1倍のリン酸塩で緩衝化した生理食塩水)で微粒子を希釈することにより、実施例1の微粒子試料の1種であるTM473Bを20、10、5、および2.5mg/mLの濃度の2倍溶液中に作製した。精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびB(テックラブ(TechLab)のT3001およびT3002)を、ブロッキング用緩衝液で360〜2μg/mLの範囲の2倍溶液に希釈した。チェッカーボード法で両希釈物を混合し微粒子に対する毒素の最終的な比率を1:1にした。
【0103】
微粒子を平衡結合に至らせるために、試料を37℃で18時間インキュベートした。10,000rpmで1時間の遠心分離により、結合された毒素AまたはBを微粒子とともにペレット化した。遊離/平衡状態の毒素を含有する上清を回収し、毒素A用または毒素AおよびB用ELISAキット(テックラブ(TechLab)のC.Diff Tox−A Test T5001またはC.Diff Tox−A/BII Test T5015)によって濃度を測定した。
【0104】
結合された毒素の濃度を判定するため、平衡濃度を開始量から差し引いた。次いで、μg/mLの結合された毒素の濃度をmg/mLの微粒子濃度で除することによって結合能を算出した。図5および図6に結果を示す。
【0105】
実施例4:インビボにおける微粒子の有効性試験:ウサギ回腸ループの毒性試験
ウサギ回腸ループのモデル試験にて実施例1における2種類の微粒子試料のTM473AおよびTM473Bをインビトロにおいて試験した。ウサギ回腸ループのモデルは、細菌タンパク質毒素の腸毒性を明らかにするためのモデルである(ダンカン(Duncan)およびストロング(Strong)、1969年)。同モデルを使用することで、コレラ毒素、大腸菌の不安定毒素、シガトキシン、ならびにウェルシュ菌のエンテロトキシンおよびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aを含む様々なクロストリジウム毒素の腸管毒性活性を特徴付ける。
【0106】
クロストリジウム・ディフィシル毒素Aのウサギ回腸ループ試験用プロトコルは以下の通りである。
・ウサギ(雌雄いずれか、12週齢超)を一晩絶食させ、次いで周縁耳静脈(marginal ear vein)にて静脈内注射したジアゼパム(5mg/mL)0.25mLと混合した塩酸ケタミン(100mg/mL)0.25mLで麻酔した。
・ガス麻酔機を介して送達するハロタン(1.5〜2.5%で作用)、亜酸化窒素(2l/分の流れ)および酸素(1l/分)を使用して麻酔状態を維持した。
・麻酔をかけた各ウサギの腹部中央部の毛を剃り、一連のベタジンとイソプロピルアルコールの洗浄を交互に用いて無菌で調製し、5cmの腹部切開を行った。
・回腸を慎重に引き抜き、最大6つの回腸ループ(長さ〜7〜10cm以内)を、回腸部の各末端の1cmまでを無菌の綿による結紮により密封することによって構成した。
・試験微粒子(最大20mg/mL)と毒素A(10μg/mL)の混合物を含有する流体(0.5mL/ループ)を、各試験ループにおける近位の単結紮の約0.5cm直下位置に26−ゲージ針によって注射した。
・注射部位を隔離し、穿刺部位の約0.5cm遠位でのさらなる結紮による漏れを防止した。
・ループにおける接種後、回腸を温かい生理食塩水に再び湿らし、ゆっくりと腹腔に戻した。筋肉壁を縫合し皮膚切開を閉じた後、麻酔回復期間に動物を保温し監視した。オキシモルホン(0.25mL 筋肉内/ウサギ;1.5mg/mL)を麻酔回復前と手術の6〜8時間後に再度投与した。手術後、食物と水を控えた。
・手術の約8〜12時間後、ビューサネージアD(Beuthanasia D)(390mg/mLのペントバルビタール、50mg/mLのフェニトイン)の0.5〜1.0mLの静脈内注射によってウサギを安楽死させた。
・回腸を取り除き、個々のループ内に蓄積した流体を視覚的に評価した。次いで、陽性の各ループの長さおよび重量を測定し、グラム単位のループ含量の重量に対するセンチメートル単位のループ長さの比であるV/L(容量−長さ)比を算出するのにその含量を秤量した。
・V/L比>0.3を有しかつ無圧で水の一貫性を有する漿液血液状流体を含有するものとして、陽性ループ(流体を蓄積させるもの)を定義した。陰性ループは、回復可能な内容物、すなわちV/L比<0.1を有するそれらのループを有しなかった。
【0107】
このプロトコルを用いて、微粒子の試験試料であるTM473BおよびTM473Aは、2.5mg/mLで投与される場合、毒素A(10μgm/mL)の腸毒性に対する保護を可能にした。表4を参照のこと。
【0108】
【表8】
【0109】
実施例5:炭水化物単量体の含量が低下したジブロックミセルおよび微粒子の調製および試験
さらなる実験セットでは、ジブロック共重合体ミセルと、炭水化物単量体(SM1)の含量が低下した、対応する微粒子との製剤をさらに調製し、インビトロにおいて評価した。特に、約33重量%の炭水化物単量体SM1(本明細書において「ジブロック共重合体A」として示される)を含み、かつそれとは別に約21重量%の炭水化物単量体SM1(本明細書において「ジブロック共重合体B」として示される)を含むジブロック共重合体を調製した。ジブロック共重合体に含有される炭水化物単量体の含量は、実施例1に記載の如く調製されたジブロック共重合体に含有される約44重量%をなす炭水化物単量体SM1と比べて実質的に低下した。ジブロック共重合体Bから形成されるミセル溶液を細胞培養アッセイでインビトロにおいて実質的に評価した。さらに、ジブロック共重合体Aとジブロック共重合体Bの各々からラテックス微粒子を合成し、さらにインビトロにおいて評価した。
【0110】
ジブロック共重合体AおよびBの調製
炭水化物単量体SM1を、実質的に実施例1に記載のごとく調製した。炭水化物単量体(SM1)の含量が相対的に低下した、ジブロック共重合体の2種類の製剤を表5に記載の試薬および量を用いて以下のように調製した。
【0111】
【表9】
【0112】
ジブロック共重合体AおよびBの各々については、THMA、DMA、炭水化物単量体(SM1)およびCTAの混合物に水/DMF混合物3.4mLを添加し、グローブボックス内で50℃に加熱した。VA−044ストック溶液(DI水0.2mL中20mg)20μLを添加し、混合物を3時間撹拌した。n−ブチルアクリレートを次の3時間にわたり半連続的に添加し、その後で混合物を室温まで冷却する前に3時間重合した。DI水10mLを混合物に添加し、その後でジブロック共重合体をDI水で24時間透析し、ジブロックミセル溶液を形成した。
【0113】
インビトロでのジブロック共重合体Bミセルの細胞培養アッセイ
インビトロにおける細胞培養アッセイで、ジブロック共重合体Bから形成したミセル溶液を評価した。このアッセイでは、様々な濃度のジブロック共重合体Bミセル(0.78mg/mL、1.56mg/mLおよび3.125mg/mL)を有する溶液でベロ細胞を処理した。ここで各場合においては、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aの固定量(1ng/mL)と混合した。固定量の毒素は、それ単独で使用される場合、「細胞の円形化」(すなわち、細胞の塑性表面への正常な付着を破壊する細胞毒性作用であり、通常は細胞死または細胞内糸状構造の損失を示す)を誘発することがわかった。一対照として、処理していない(すなわち毒素またはジブロック共重合体Bミセルで処理していない)単層のベロ細胞を使用した。別の対照として、クロストリジウム・ディフィシル毒素A(1ng/mL)単独で処理したベロ細胞を使用した。複数の細胞領域(>10)の顕微鏡検査によって毒素中和における相対的な範囲を比較し、コンフルエントな細胞成長のバックグラウンドにおける円形化された細胞の百分率を定量した。図8に結果を示す。
【0114】
ジブロック共重合体AおよびBを使用する微粒子の調製
表6に記載の試薬および量を使用し、ジブロック共重合体Aとジブロック共重合体Bの各々からラテックス微粒子を合成した。本明細書では生成された微粒子の各々を糖粒子AおよびBと称し、それぞれtilm209Aおよびtilm209Bとも称する。
【0115】
【表10】
【0116】
以下に示すように、微粒子A(tilm209A)およびB(tilm209B)をジブロック共重合体AおよびBの各溶液から別々に合成した。250mLの三首モルトンフラスコに、ジブロック溶液、スチレン0.8mLおよびDI水70mLを添加し、窒素下、室温で一晩撹拌した。温度を60℃に上昇させ、KPSストック溶液(DI水1mL中25mg)240μLの添加前にさらに4時間撹拌した。次の5時間の間にスチレン1.6mLを添加した。スチレンの添加完了の2時間後に、t−ブチルペルオキシベンゾエート10μLおよびアスコルビン酸25mgを添加した。次の10時間の間に重合体混合物を連続撹拌し、孔サイズが25μmの濾紙(ワットマン(Whatman)製)によって濾過した。生成される糖粒子懸濁液をDI水で10日間透析した。
【0117】
微粒子AおよびBのインビトロでのELISAアッセイ
インビトロでのELISAアッセイを用い、微粒子A(tilm209A)およびB(tilm209B)によって結合された毒素AおよびBの百分率を測定した。微粒子AおよびBの各々に対する別々の実験において、5%FBSを含有するPBS中での5〜0.25mg/mLの範囲の濃度の微粒子を、10μg/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはB(テックラブ(TechLab))とともに37℃で12〜18時間インキュベートした。混合物を10,500rpm、4℃で30分間遠心分離し、結合された毒素と微粒子の複合体を沈殿させた。毒素Aに特異的なELISA(テックラブ(TechLab) #T5001 クロストリジウム・ディフィシル Tox−A試験)または毒素AおよびBに特異的なELISA(テックラブ(TechLab) #T5015 クロストリジウム・ディフィシル Tox−A/BII試験)により、上清中に残存する遊離毒素の量を測定した。図9Aおよび図9Bに結果を示す。
【0118】
微粒子Bのインビトロでの細胞培養アッセイ
インビトロでの細胞培養による細胞毒性アッセイにて、微粒子B(tilm209B)を評価した。このアッセイでは、10%ウシ胎児血清を加えたMEM(メディアテック(Mediatech))を有する96−ウェルプレートでベロ細胞(ATCC)のコンフルエントな単層を成長させた。最終濃度1ng/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素A(テックラブ(TechLab))を、成長培地内で5mg/mLのtilm209B微粒子と混合し、37℃、5% CO2/95%空気で18時間かけて単層に適用した。インキュベーション後、細胞の毒素媒介性形態変化に対して顕微鏡検査を行い、単層の破壊および細胞の円形化によって細胞を同定した。図10A〜10Cに示す結果は、1ng/mLの毒素Aのベロ細胞に対する作用が5mg/mLのtilm209Bによって中和させることを明らかにしている。
【0119】
実施例6:インビトロでの競合結合実験−Galα(1,3)Galβ(1,4)Glcの特異性
この実施例では、インビトロでの競合結合アッセイを含む一連の実験を行い、実質的に実施例1に記載の如く調製したクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子の特異性を明らかにした。
【0120】
別々の実験で、三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc、その異性体のグロボトリオース(Galα(1,4)Galβ(1,4)Glc)、乳糖(Galβ(1,4)Glc)、およびセロビオース(Glcβ(1,4)Glc)を含む4種類の各遊離オリゴ糖における、毒素Aおよび毒素Bの結合に対するクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子との競合能についてアッセイした。10μg/mLの毒素Aまたは毒素Bへの結合における2mg/mLの毒素結合性微粒子に対する各場合において、6.25mM〜50mMの範囲の濃度で遊離オリゴ糖の試験を行った。混合物を37℃で16時間インキュベートした。遠心分離によって結合された毒素を含む微粒子を沈殿させ、ELISA(テックラブ(TechLab))によって上清中の遊離毒素量を測定した。
【0121】
図11Aおよび図11Bに、これらの競合結合実験から得られた結果を示す。図11Aについては、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aは、上記オリゴ糖において濃度が相対的に高くても、遊離オリゴ糖であるグロボトリオース(Galα(1,4)Galβ(1,4)Glc)、乳糖(Galβ(1,4)Glc)、およびセロビオース(Glcβ(1,4)Glc)の全体に存在する毒素結合性微粒子に特異的に結合する。それに対し、毒素結合性微粒子によるクロストリジウム・ディフィシル毒素Aの結合範囲は、遊離した三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glcの濃度に依存して変化した。これらのデータは、毒素結合性微粒子と毒素Aの相互作用における特異的な性質を明らかにし、かつ微粒子による毒素Aの結合はGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって特異的に媒介されることを裏付けている。それに対し、図11Bは、毒素Bが、上記オリゴ糖において濃度が相対的に高くても、試験対象の三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc、グロボトリオース、乳糖およびセロビオースといった4種類の各遊離オリゴ糖の全体に存在する毒素結合性微粒子に特異的に結合することを示す。それゆえ、毒素Bは毒素結合性微粒子によって結合されるが(図7および実施例2でのそれに関する考察を参照)、遊離した三糖Galα(1,3)Galβ(1,4)Glc(他の3種類のオリゴ糖のいずれでもない)が毒素Bへの結合のために微粒子とうまく競合することから、毒素Bの結合は毒素結合性微粒子のGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって直接的に媒介されるようには見られない。
【0122】
さらなる実験では、炭水化物単量体のSM1(αGal−C8−リンカー;実質的に実施例1に記載の如く調製されたもの)における、毒素Aの結合および毒素Bの結合に対するクロストリジウム・ディフィシル毒素結合性微粒子との競合能について同様にアッセイした。10μg/mLの毒素Aまたは毒素Bへの結合における2mg/mLの毒素結合性微粒子に対し、12.5mM〜50mMの範囲の濃度でSM1単量体の試験を行った。混合物を37℃で16時間インキュベートした。遠心分離によって結合された毒素を含む微粒子を沈殿させ、ELISA(テックラブ(TechLab))によって上清中の遊離毒素量を測定した。
【0123】
図11Cに結果を示す。予想どおり図11Aに関連して上で検討した結果に基づき、微粒子による毒素Aの結合は、微粒子上および炭水化物単量体SM1上の両方に存在するGalα(1,3)Galβ(1,4)Glcリガンドによって競合的に媒介される。毒素Bの結合については、図11Cは、炭水化物単量体SM1がより高い濃度で毒素結合性微粒子と競合することで毒素Bと結合可能であることを示す。これは理論に縛られることなく、(遊離オリゴ糖を含む図11Bのデータには媒介が全く認められないことから)毒素結合性糖粒子とクロストリジウム・ディフィシル毒素Bの間の相互作用が、(例えば炭水化物単量体SM1の)疎水部分または三糖リガンドと(例えば炭水化物単量体SM1の)疎水部分の組み合わせにより、少なくとも部分的に媒介されるといういくつかの証拠をもたらす。
【0124】
実施例7:インビボにおけるハムスターのクロストリジウム・ディフィシル負荷試験
この実施例では、クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢の治療のために、インビボでハムスターモデルを使用し、実質的に実施例1(本明細書ではY103A2と指定)に記載の如く調製された毒素結合性微粒子について試験した。
【0125】
ハムスターモデル
一般に、クロストリジウム・ディフィシルへの暴露に先立ち抗生物質をハムスターに投与すると、3〜5日後、下痢や大腸炎に加え、死さえも招くことが知られている。ハムスターにおいてクロストリジウム・ディフィシルによって誘発される全腸炎は盲腸および末端回腸で発症し、粘膜出血を伴う粘膜上皮細胞の増殖および細胞上での変性性の表面変化を特徴とする。それに対し、ヒト疾患は滲出および炎症状態での巣状腺窩壊死として結腸内に見られる(プライス(Price)ら、1979年)(以下に十分に記載)。これらの組織学的な違いにもかかわらず、クロストリジウム・ディフィシル関連性下痢の細菌由来およびその活性疾患における毒素AおよびBの分泌への依存性により、ハムスターモデルがヒト疾患の適切な模倣となる(バートレット(Bartlett)ら、1978a;バートレット(Bartlett)ら、1978b;チャン(Chang)ら、1978年)。
バートレット,J.(Bartlett,J.)、C.TW、およびG.M.1978a.「Antibiotic−associated pseudomembranous colitis due to toxin−producing clostridia」New England Journal of Medicine. 298:531−534頁
バートレット,J.G.(Bartlett,J.G.)、T.W.チャン(T.W.Chang)、N.ムーン(N.Moon)、およびA.B.オンダードンク(A.B.Onderdonk)1978b.「Antibiotic−induced lethal enterocolitis in hamsters:studies with eleven agents and evidence to support the pathogenic role of toxin−producing Clostridia」Am J Vet Res.39:1525−30頁
チャン,T.W.(Chang,T.W.)、J.G.バートレット(J.G.Bartlett)、S.L.ゴルバッハ(S.L.Gorbach)、およびA.B.オンダードンク(A.B.Onderdonk)1978年「Clindamycin−induced enterocolitis in hamsters as a model of pseudomembranous colitis in patients」Infect Immun.20:526−9頁
プライス,A.B.(Price,A.B.)、H.E.ラルソン(H.E.Larson)、およびJ.クロウ(J.Crow.)1979年「Morphology of experimental antibiotic−associated enterocolitis in the hamster:a model for human pseudomembranous colitis and antibiotic−associated diarrhoea」 Gut.20:467−75頁
を参照のこと。
【0126】
ハムスターの株および数
これらの実験では、ハーラン・ラボラトリーズ(Harlan Laboratories)からハムスターを入手し、治療開始前に7日間隔離状態で保持した。隔離後、ハムスターの体重を測り、無作為に4群に割り付けた。下記の表7にまとめたように、群1は6匹の動物を含む対照群であった。群2〜4はそれぞれ8匹の動物を含む治療群であった。
【0127】
収容
ハムスターを、水および食物への接近を自由にした状態で陽圧のケージ内に個別に収容した(マイクロベント・エンバイロンメンタル・システム(Micro−Vent Environmental System)、アレンタウン・ケージング・アンド・イクイップメント(Allentown Caging and Equipment Co.)、Allentown、ニュージャージー州)(Purina 5000)。
【0128】
治療モデル
2日前、下記の表7に示すレジメンに従い、予防的栄養を開始した。1日前、すべての群内の動物に、経口栄養によりクロストリジウム・ディフィシル(VPI10463)の一晩培養液由来の洗浄した細胞106個で感染させた。全4群中の動物に、0日目(1日前の翌日)に1kg当たり10mgのリン酸クリンダマイシンを皮下注射し、疾患を誘発した。以下のレジメンに従い、2日前〜6日目にハムスターに3通りの等しい1日用量で栄養した。
【0129】
【表11】
【0130】
リン酸塩で緩衝化した生理食塩水中に毒素結合性微粒子を20mg/mLで投与した。栄養前に動物における罹患率および死亡率ならびにクリンダマイシン治療後の14日間、少なくとも1日2回を基本に動物における下痢の有無について観察した。
【0131】
図12に示す結果は、毒素結合性微粒子がクロストリジウム・ディフィシルで負荷されたハムスターを保護することを明示している。対照群1(対照;毒素結合性微粒子を含まない)において、動物7匹が14日間試験のうちの2日目の試験で死亡した。治療群2〜4において、これらのデータは、生存が用量に依存し、再発を全く観察しなかったことを示す。特に群2では、ハムスターは試験を通して1匹も死亡しなかった。群3では、1日目に動物1匹が死亡し、2種類の動物の尾が湿っている(下痢の証拠)ことが観察されたが、動物は完全に回復しなかった。群4では、動物5匹が死亡し、これらのうちの1匹の動物の尾が湿っていることが観察され、動物はこの観察の48時間以内に死亡した。すべての他の死亡は一般に急性であった(すなわち湿った尾を事前に観察することがなかった)。
【0132】
実施例8:Y103A2ナノ粒子による毒素結合性の測定
5%ウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液(PBS)中で0.25〜5mg/mLの範囲の濃度のY103A2ナノ粒子(メディアテック(Mediatech,Inc.)、Herndon、バージニア州)を、10μg/mLの精製したクロストリジウム・ディフィシル毒素AまたはB(テックラブ(TechLab)、Blacksburg、バージニア州)とともに37℃で12〜18時間インキュベートした。混合物を10,500×g、4℃で30分間遠心分離し(ソーバル(Sorvall))、結合された毒素とナノ粒子の複合体を沈殿させた。テックラブ(TechLab)製クロストリジウム・ディフィシル毒素用ELISAキットを使用して上清中に残存する遊離毒素の量を定量し、結合された毒素の百分率を算出した。このデータから90%の毒素に結合したナノ粒子の濃度を算出した。表8は、Y103A2のバッチから得られたスクリーニングデータを列挙する。
【0133】
【表12】
【0134】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示されかつ記載されている一方、かかる実施形態があくまでも例として提供されることは当業者には明らかであろう。ここで当業者であれば、本発明から逸脱することなく、極めて多数の変形、変化、および置換えについて着想するであろう。本発明の実施に際し、本明細書に記載の発明の実施形態に対する様々な選択肢を利用可能であることが理解される必要がある。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、かつそれによりこれらの特許請求の範囲の中の方法および構造ならびにそれらの等価物が網羅されるように意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1A】毒素結合性粒子を合成する方法(図1A)およびかかる方法から得られる毒素結合性粒子を表す概略図(図1B)である。
【図1B】毒素結合性粒子を合成する方法(図1A)およびかかる方法から得られる毒素結合性粒子を表す概略図(図1B)である。
【図2】微粒子で処理される毒素分子の生物活性を測定するのに用いられるELISAおよび組織培養アッセイの概要を表す概略図である。
【図3】4つの相異なる毒素結合微粒子組成物に対するELISAの特性データを図示するグラフである。
【図4】細胞を図示しかつベロ細胞用アッセイでSM1含有微粒子によって可能になる毒素Bの保護を示す4つの画像を含む。
【図5】微粒子のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに対する結合能を表すグラフである。
【図6】微粒子のクロストリジウム・ディフィシル毒素Bに対する結合能を表すグラフである。
【図7】異なる濃度の微粒子によってクロストリジウム・ディフィシル毒素AおよびBが除去される割合(%)を表すグラフである。
【図8】細胞を図示しかつベロ細胞用アッセイでジブロック共重合体Bを含有するミセル溶液によって可能になる毒素Aの保護を示す5つの画像を含む。
【図9A】クロストリジウム・ディフィシル毒素A(図9A)および毒素B(図9B)に対する2つの異なる毒素結合微粒子についてのELISAの特性データを図示するグラフである。
【図9B】クロストリジウム・ディフィシル毒素A(図9A)および毒素B(図9B)に対する2つの異なる毒素結合微粒子についてのELISAの特性データを図示するグラフである。
【図10A】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図10B】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図10C】細胞を図示し、かつ処理されていないベロ細胞の単層(図10A)、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aで処理されたベロ細胞(図10B)、およびクロストリジウム・ディフィシル毒素Aと毒素結合性微粒子の両方で処理されたベロ細胞(図10C)を示す画像である。
【図11A】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図11B】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図11C】遊離オリゴ糖に対して測定された毒素A(図11A);遊離オリゴ糖に対して測定された毒素B(図11B);および遊離炭水化物単量体SM1に対して測定された毒素Aと毒素Bの両方(図11C)を含むインビトロでの競合アッセイにおいて、本発明の毒素結合性微粒子によって結合されたクロストリジウム・ディフィシル毒素の百分率を図示するグラフである。
【図12】インビボにおけるハムスターのクロストリジウム・ディフィシル負荷試験の結果を要約するデータを図示するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毒素結合性オリゴ糖および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該重合体粒子が共重合体を含有し、該共重合体が第1の重合体および第2の重合体を含有し、該毒素結合性オリゴ糖が該第1の重合体に連結されている、毒素結合性組成物。
【請求項2】
前記共重合体が、第1の重合体ブロックおよび疎水性ブロックである第2の重合体ブロックを含むブロック共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の重合体ブロックが親水性ブロックである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
粒子に連結されたオリゴ糖を含有する毒素結合性組成物であって、該粒子の単位表面積当たりの該オリゴ糖のモル含量が約0.5μ当量/m2よりも大きく、該オリゴ糖がクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)毒素結合性オリゴ糖である、毒素結合性組成物。
【請求項5】
粒子に連結されたオリゴ糖を含有するタンパク質結合組成物であって、該オリゴ糖が水可溶性タンパク質に結合し、該粒子がタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、かつ分子として水溶性を示さず、該粒子の単位表面積当たりの該オリゴ糖のモル含量が約0.5μ当量/m2よりも大きい、タンパク質結合組成物。
【請求項6】
前記粒子の単位表面積当たりの前記オリゴ糖のモル含量が約1μ当量/m2よりも大きい、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子が重合体粒子である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子の表面積が約0.5m2/gm〜約600m2/gmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
単位重量当たりの前記オリゴ糖のモル含量が前記粒子の1グラム当たりで約100μmolよりも大きい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
単位重量当たりの前記オリゴ糖のモル含量が前記粒子の1グラム当たりで約200μmolよりも大きい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック共重合体を含有し、前記オリゴ糖が該親水性ブロックに連結されている、請求項4〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記共重合体が水性媒体内でミセルを形成可能である、請求項2、3または11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該重合体粒子が親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック共重合体を含有し、該疎水性ブロックが、該ブロック共重合体が水性媒体内でミセルを形成するように化学的に架橋されているかまたは物理的に包まれ、該毒素結合性部分が該親水性ブロックに連結されている、毒素結合性組成物。
【請求項14】
前記水可溶性タンパク質が毒素であり、それによって前記オリゴ糖が毒素結合性部分である、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が細菌毒素に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が細菌外毒素に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が真核細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が哺乳類細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分がヒト細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が宿主の粘膜表面上で作用する毒素と結合するかまたはそれを中和させる、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記粘膜表面が口、鼻、呼吸器、胃腸、泌尿器、生殖器および耳の粘膜表面からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が毒素中和部分である、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ミセルが前記疎水性ブロックを含むコアと前記親水性ブロックを含むシェルを含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項24】
前記重合体粒子が第2の粒子上に吸着される、請求項1〜3、11〜13、または23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記ミセルが、付加的単量体から形成される付加的重合体ブロックを含有し、該付加的重合体ブロックが、前記共重合体の前記疎水性ブロックを化学的に架橋するかまたはそれを物理的に包む、請求項12、13、または23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記付加的重合体ブロックが、前記ブロック共重合体の前記疎水性ブロックの間の単量体を重合させることによって架橋するかまたは包む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記付加的単量体が疎水性単量体、多官能性単量体、またはこれらの組み合わせである、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記付加的単量体が、スチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1種類の単量体である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第2の重合体または疎水性ブロックが、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、スチレン、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つの反復単位を含む重合体である、請求項1〜3、11〜13、23、または25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1の重合体または第1の重合体ブロックがジメチルアクリルアミドの重合体である、請求項1〜3、11〜13、23、または25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記オリゴ糖または前記毒素結合性部分が8−メトキシカルボニルオクチル−α−D−ガラクトピラノシル−(1,3)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1,4)−O−β−D−グルコピラノシドである、請求項1〜12および14〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物における粒子半径が約75nm〜約1μmである、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
毒素媒介性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に請求項1〜32のいずれか一項に記載の有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記毒素媒介性疾患がクロストリジウム・ディフィシル毒素Aまたはクロストリジウム・ディフィシル毒素Bの一方または両方によって媒介される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記毒素媒介性疾患がクロストリジウム・ディフィシル関連性下痢、偽膜性腸炎、または抗生物質関連性大腸炎である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
有効量の抗生物質を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗生物質が、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗生物質が、テイコプラニン、フシジン酸、バシトラシン、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該毒素結合性部分が該ナノ粒子に連結されかつ該ナノ粒子が実質的に胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない、毒素結合性組成物。
【請求項40】
前記毒素結合性部分がクロストリジウム・ディフィシル毒素に結合する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記ナノ粒子が共重合体である、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ナノ粒子がリポソームではない、請求項39〜41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の該組成物によって結合され、該クロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約5%のウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の該毒素結合性組成物で処理される、毒素結合性組成物。
【請求項44】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約0.5mg/mL〜約10mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約0.8mg/mL〜約5mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約1mg/mL〜約3mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【請求項1】
毒素結合性オリゴ糖および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該重合体粒子が共重合体を含有し、該共重合体が第1の重合体および第2の重合体を含有し、該毒素結合性オリゴ糖が該第1の重合体に連結されている、毒素結合性組成物。
【請求項2】
前記共重合体が、第1の重合体ブロックおよび疎水性ブロックである第2の重合体ブロックを含むブロック共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の重合体ブロックが親水性ブロックである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
粒子に連結されたオリゴ糖を含有する毒素結合性組成物であって、該粒子の単位表面積当たりの該オリゴ糖のモル含量が約0.5μ当量/m2よりも大きく、該オリゴ糖がクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)毒素結合性オリゴ糖である、毒素結合性組成物。
【請求項5】
粒子に連結されたオリゴ糖を含有するタンパク質結合組成物であって、該オリゴ糖が水可溶性タンパク質に結合し、該粒子がタンパク質ではなく、デンドリマーまたはリポソームの形態ではなく、かつ分子として水溶性を示さず、該粒子の単位表面積当たりの該オリゴ糖のモル含量が約0.5μ当量/m2よりも大きい、タンパク質結合組成物。
【請求項6】
前記粒子の単位表面積当たりの前記オリゴ糖のモル含量が約1μ当量/m2よりも大きい、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子が重合体粒子である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子の表面積が約0.5m2/gm〜約600m2/gmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
単位重量当たりの前記オリゴ糖のモル含量が前記粒子の1グラム当たりで約100μmolよりも大きい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
単位重量当たりの前記オリゴ糖のモル含量が前記粒子の1グラム当たりで約200μmolよりも大きい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック共重合体を含有し、前記オリゴ糖が該親水性ブロックに連結されている、請求項4〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記共重合体が水性媒体内でミセルを形成可能である、請求項2、3または11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該重合体粒子が親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック共重合体を含有し、該疎水性ブロックが、該ブロック共重合体が水性媒体内でミセルを形成するように化学的に架橋されているかまたは物理的に包まれ、該毒素結合性部分が該親水性ブロックに連結されている、毒素結合性組成物。
【請求項14】
前記水可溶性タンパク質が毒素であり、それによって前記オリゴ糖が毒素結合性部分である、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が細菌毒素に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が細菌外毒素に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が真核細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が哺乳類細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分がヒト細胞内の代謝過程を改変する分泌細菌タンパク質に対して結合親和性を有する、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が宿主の粘膜表面上で作用する毒素と結合するかまたはそれを中和させる、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記粘膜表面が口、鼻、呼吸器、胃腸、泌尿器、生殖器および耳の粘膜表面からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記毒素結合性オリゴ糖または毒素結合性部分が毒素中和部分である、請求項1〜3および8〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ミセルが前記疎水性ブロックを含むコアと前記親水性ブロックを含むシェルを含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項24】
前記重合体粒子が第2の粒子上に吸着される、請求項1〜3、11〜13、または23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記ミセルが、付加的単量体から形成される付加的重合体ブロックを含有し、該付加的重合体ブロックが、前記共重合体の前記疎水性ブロックを化学的に架橋するかまたはそれを物理的に包む、請求項12、13、または23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記付加的重合体ブロックが、前記ブロック共重合体の前記疎水性ブロックの間の単量体を重合させることによって架橋するかまたは包む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記付加的単量体が疎水性単量体、多官能性単量体、またはこれらの組み合わせである、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】
前記付加的単量体が、スチレン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1種類の単量体である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記第2の重合体または疎水性ブロックが、アクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、メタクリル酸のC1〜C12アルコールエステル、スチレン、ビニルトルエン、およびC2〜C12カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つの反復単位を含む重合体である、請求項1〜3、11〜13、23、または25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1の重合体または第1の重合体ブロックがジメチルアクリルアミドの重合体である、請求項1〜3、11〜13、23、または25〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記オリゴ糖または前記毒素結合性部分が8−メトキシカルボニルオクチル−α−D−ガラクトピラノシル−(1,3)−O−β−D−ガラクトピラノシル−(1,4)−O−β−D−グルコピラノシドである、請求項1〜12および14〜30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物における粒子半径が約75nm〜約1μmである、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
毒素媒介性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に請求項1〜32のいずれか一項に記載の有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記毒素媒介性疾患がクロストリジウム・ディフィシル毒素Aまたはクロストリジウム・ディフィシル毒素Bの一方または両方によって媒介される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記毒素媒介性疾患がクロストリジウム・ディフィシル関連性下痢、偽膜性腸炎、または抗生物質関連性大腸炎である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
有効量の抗生物質を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗生物質が、メトロニダゾール、バンコマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗生物質が、テイコプラニン、フシジン酸、バシトラシン、カルベンシリム、アンピシリン、クロキサシリン、オキサシリン、ピペラシリン、セファクロール、セファマンドール、セファゾリン、セフォペラゾン、セフタキシム、セフォキシチン、セフタジジム、セフトリアゾン、イミペネム、メロペネム、ナリジクス酸、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、パロモマイシン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
毒素結合性部分およびポリマーナノ粒子を含有する毒素結合性組成物であって、該毒素結合性部分が該ナノ粒子に連結されかつ該ナノ粒子が実質的に胃腸内腔から胃腸粘膜細胞内に吸収されない、毒素結合性組成物。
【請求項40】
前記毒素結合性部分がクロストリジウム・ディフィシル毒素に結合する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記ナノ粒子が共重合体である、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ナノ粒子がリポソームではない、請求項39〜41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
クロストリジウム・ディフィシル毒素結合性部分および重合体粒子を含有する毒素結合性組成物であって、少なくとも約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約0.1mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度の該組成物によって結合され、該クロストリジウム・ディフィシル毒素Aが約5%のウシ胎児血清を含有するリン酸塩緩衝溶液中の該毒素結合性組成物で処理される、毒素結合性組成物。
【請求項44】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約0.5mg/mL〜約10mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約0.8mg/mL〜約5mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
約90%のクロストリジウム・ディフィシル毒素Aに結合するのに必要な前記組成物の濃度が約1mg/mL〜約3mg/mLである、請求項43に記載の組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公表番号】特表2008−515996(P2008−515996A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536902(P2007−536902)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/036901
【国際公開番号】WO2006/044577
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507123512)イリプサ, インコーポレイテッド (6)
【出願人】(507123109)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/036901
【国際公開番号】WO2006/044577
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507123512)イリプサ, インコーポレイテッド (6)
【出願人】(507123109)
【Fターム(参考)】
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