比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法
【課題】物理探査の比抵抗の逆解析において解析解像度と解析効率の向上を図る。
【解決手段】順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点の密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値SSを求め、求められた感度統計値SSに基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数FSを求め、この関数FSに基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を感度と物性値変化との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにした。
【解決手段】順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点の密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値SSを求め、求められた感度統計値SSに基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数FSを求め、この関数FSに基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を感度と物性値変化との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、面積数平方kmに及ぶ大規模地滑りや豪雨時の多発的な斜面崩壊など比較的広い範囲にわたって地質条件に起因する地盤災害が発生したり、重金属や揮発性有機化合物等の汚染物質による地質汚染が増加している。また、複雑な地形と地質構造を有する地域での土木構造物建設の際には、精度の高い地盤調査に対するニーズが増加している。従来、このような広域の地下構造を三次元的に精度よくかつ低コストで解明するための調査法として、地盤についてある物理量を測定し、地下の物性値分布を推定する地下構造の物理探査方法が知られている。このような物理探査方法の解析では、地盤を小領域に分割し、それぞれの小領域に物性値を与えて得られる地盤モデルを設定し、この地盤モデルに対し、理論的に計算される理論値と実際に測定した実観測値との差の自乗和が最小になるように小領域の物性値を変化させ、地盤の物性分布を推定する逆解析が行われている(例えば、特許文献1参照。)。物理探査の逆解析では、物性値の理論計算を行うための順解析グリッドと、この順解析グリッドよりも粗く分割され、複数の順解析グリッドのセルのまとまり毎に物性値を定義するモデルグリッドが使用される。
【特許文献1】特開2005−337746号公報(第10頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記モデルグリッド(パラメータグリッド)では、格子状にグリッドを分割したり、電流源からの距離の3乗の逆数で自動的にメッシュ分割を行うようにし、観測点からの距離に応じて一定の規則で分割領域を拡大するような分割が行われている。逆解析では、個々のモデルグリッドに割り当てる物性値を繰り返し修正するが、その過程で、モデルグリッドの分割状況そのものが変更されることはない。このことにより実際の物性値分布に対して分割が不適正となり、解析の収束性の悪化を招くという問題がある。このため、従来は、解析の収束性の悪化を防ぐために、隣接グリッド間の平滑化や平坦化などの制約条件を付さなければならず、得られた情報を有効に活用し、測定データに含まれる地下の情報を充分に引き出すことができないという問題があった。特に、三次元探査や解析にあたっては、二次元探査やその解析に対し、未知物性値数が膨大となり、これを解くための計算時間が増大するとともに解析の安定性も著しく低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、測定された物性値データ群に対して物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析範囲の決定にあたり地下構造の物性値分布に適合させてパラメータグリッドを変更し、解析の解像度と解析効率の向上を図ることができる比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにしたことにより、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直した後、逆解析グリッドの物性値を修正する逆解析を行うので、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度と解析効率が向上する。
【0007】
本発明の請求項2に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆順解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆順解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正するようにしたことにより、物性値変化が大きく感度が強い部位では節点密度が高められ、物性値変化が小さく感度が弱い部位では節点密度が低くなるよう修正されるので、これを繰り返しながら逆解析を行うことにより、物性値変化が関与する解析領域を適切に設定することができ、過不足が発生しにくい。しかも、物性値変化の大きい領域では小領域が細かく分割されるので、解析の解像度を向上させることができ、データに含まれる地下情報を無駄なく充分に引き出すことができる。物性値変化の大きくない領域では、小領域が細かく分割されず、粗く分割されたままとなるので、計算負荷が減じられ、解析効率と安定性が向上する。
【0009】
本発明の請求項3に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定するようにしたことにより、感度が所定の閾値以下または感度のないグリッドは解析領域から除去されるので、観測データに対して有効な解析範囲にのみ基づいて解析が行われる。
【0011】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有するようにしたことにより、第7のステップで求められた逆解析グリッドに対応する感度行列から感度適合関数を導き、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて変え、この感度に応じて設定し直された最新の逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直して解析が行われる。このため、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度と解析効率が向上する。
【0013】
本発明の請求項5に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項5に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正するようにしたことにより、逆解析中、各パラメータが充分な感度を持つと共に、不安定な要因の一つとなる過大な感度を有するパラメータが減らされ、観測値に含む地下情報を安定的かつ最大限に引き出すことができる。これを繰り返しながら逆解析を行うので、物性値変化が関与する解析領域を適切に設定することができ、過不足が発生しにくい。しかも、物性値変化の大きい領域では小領域が細かく分割されるので、解析の解像度が向上する。物性値変化の大きくない領域では、小領域が細かく分割されず、粗く分割されたままとなるので、計算負荷が減じられ解析効率と安定性が向上する。
【0015】
本発明の請求項6に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、感度適合関数が、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、感度適合関数が、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められるようにしたことにより、逆解析グリッドのグリッド節点密度を感度に適合させて最適に変更することができるので、解析解像度と解析効率が向上する。
【0017】
本発明の請求項7に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項7に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すようにしたことにより、新しいグリッドを生成するには、予め空間関数を定義するための格子を用意して生成しなければならないが、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとして用いることにより、別の空間関数に従った新しいグリッドを生成する必要がなくなるので、解析作業が効率化される。
【0019】
本発明の請求項8に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて解析を行うことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項8に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて解析を行うようにしたことにより、感度が所定の閾値以下または感度のないグリッドは解析領域から除去されるので、測定値に対して有効な解析範囲にのみ基づいて解析が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにしているので、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度が向上するとともに、計算負荷が減じられ解析効率が向上する。
【0022】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有するようにしているので、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて変え、この感度に応じて設定し直された最新の逆解析グリッドに基づいて解析を行うことができ、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度が向上するとともに、計算負荷が減じられ解析効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を工程順に説明するフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2の(A)、(B)はそれぞれ、図1の方法に用いられる解析の一例に係る二次元地盤モデルの説明図およびその電極系配置の説明図である。
【図3】図3の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(Sensitivity Adaptive Inversion、SAI法)による解析の一例を示す説明図および順解析グリッドの説明図である。
【図4】図4の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の一例を示す説明図および初期逆解析グリッドの説明図である。
【図5】図5は、感度適合関数の実例と感度のないパラメータグリッドを除去する範囲の実例を示す説明図である。
【図6】図6の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の進行に伴って、逆解析グリッドが変化する状態を示す説明図である。
【図7】図7の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の進行に伴って、逆解析グリッドが変化する状態を示す説明図および解析結果図である。
【図8】図8は図1の方法に用いられる解析の他の例に係る三次元地盤モデルの説明図である。(実施例2)
【図9】図9は、図8の地盤モデルについて解析の初期逆解析グリッドの状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図10】図10は、図8の地盤モデルについて図9の状態からさらに解析の進行に伴い逆解析グリッドが変化した状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図11】図11は、図8の地盤モデルについて図10の状態からさらに解析の進行に伴い逆解析グリッドが変化した状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図12】図12は、図8の地盤モデルについて図9の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図13】図13は、図8の地盤モデルについて図10の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図14】図14は、図8の地盤モデルについて図11の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図15】図15は、図8の地盤モデルについて図9の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図16】図16は、図8の地盤モデルについて図10の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図17】図17は、図8の地盤モデルについて図11の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図18】図18は、図11についてx=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図19】図19は、図14についてy=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図20】図20は、図18についてz=−7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図21】図21は、従来の比抵抗法の数値解析における逆解析法を工程順に説明するフローチャートである。
【図22】図22は、図8の三次元地盤モデルについて図21に示す従来の逆解析法を用いて解析の進行に伴いx=7.5mにおけるY−Z断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図23】図23は、図22の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図24】図24は、図22の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図25】図25は、図22についてx=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図26】図26は、図22についてy=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図27】図27は、図22についてz=−7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図28】図28の(A)ないし(C)はそれぞれ、従来のモデルグリッドの配置で不適合の例を示す説明図である。
【図29】図29の(A)、(B)はそれぞれ、既知の空洞を探査するにあたり、本発明に係る方法を用いて解析した解析結果と、モデルグリッドを固定する従来の方法を用いて解析した解析結果とを比較して示す解析結果の比較図である。(実施例3)
【図30】図30の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の非構造的な格子を説明する説明図である。
【図31】図31は、各イタレーションの相対平均二乗誤差RMSの変化を示す変化図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
解析の解像度と解析効率の向上を図るという目的を、入力された地形情報データと電極のソース位置データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られる地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにし、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化が大きい部位と感度が強い部位では節点密度を高め、物性値変化が小さい部位と感度が弱い部位では節点密度を低くするよう修正し、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データの測定値に対する感度が所定の閾値以下のグリッドを解析用パラメータから外して解析領域を決定するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0025】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を工程順に説明するフローチャート、図2は、図1の方法に用いられるモデル地盤の一例を示す説明図である。比抵抗モデル地盤は、図2の(A)に示すように、比抵抗が100Ωmの大地に三種類の比抵抗異常体が埋設されている地盤モデルである。図2の(B)に示す電極系により測定される観測データは数値解析により求め、これらのデータに5%のランダムノイズを与え、実測データとして解析される。
まず、図2の(A)に示すような二次元地盤比抵抗モデルを想定し、その比抵抗構造を解明するのが探査の目的である。比抵抗法によりその比抵抗構造を解明するために、図2の(B)に示すように、地表と地下に電極el(図2(A)、(B)の参照)から構成される電極系elsysを設定する。電極位置座標と地表地形座標は既知であり、この電極系から選出した4本の電極を一組(送信電極2本と受信電極2本)として、送信電流と受信電位差とを実測により観測する。このように選出された4本の電極組が、全部でn組があり、それぞれについて送信電流と受信電位差が観測されたものとする。
【0026】
以下、第1の実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法について、図1に示す解析手順に従って説明する。解析を始めるに際し、まず、地形座標データ、電極位置データ及び実測による観測データ(送信電流と受信電位差)を入力する(図1に示すStep A(第1のステップ)のS1参照)。
【0027】
これらのデータに基づいて、地下空間の離散化を行うため地下空間を非構造的な格子により多数の小領域cl(本実施例では三角形の小領域、図3の(A)、(B)参照)に分割し、図3の(A)、(B)に示すようなグリッドの節点nlの密度の高い格子を有する順解析グリッドと、図4の(A)、(B)に示すような順解析グリッドよりも節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドをそれぞれ設定し、逆解析グリッドは、グリッド節点密度が可変に制御されるように、すなわち、隣り合う節点間距離が可変に制御されるように構成される(図1に示すStep AのS2およびS3参照)。
【0028】
次に、入力された各データを用いて、見掛け比抵抗を求め、地下平均比抵抗を計算する。地下平均比抵抗は次式で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
上記数式、数1において、ρmean:平均比抵抗、n:観測データ数、ρai:i番目の見かけ比抵抗である。見かけ比抵抗は次式で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
上記数式、数2において、ΔUi:i番目電極組の受信電極間に観測された電位差(V)、Ii:i番目電極組の送信電極間に流す電流(A)、Ki:i番目電極組の電極係数である。計算された地下平均比抵抗を初期逆解析グリッドに初期物性パラメータとして付与し、初期地盤モデルを設定する(図1のStep B(第2のステップ)参照)。
【0033】
なお、メッシュとグリッドは概念上近い用語であり、格子とも呼ばれる。本実施例においては、グリッドは局所的なメッシュをいい、メッシュはグリッドを連接するネットワーク(連接関係)の全般をいう。その構成は、ともに三つの要素からなる。それは、節点(あるグリッド点)と節点を連接する線(二次元)あるいは面(三次元)とセルから構成される。メッシュの節点を連接する線(面)で囲む最も単純な空間範囲はセルという。通常、節点が変わらなくても連接する方法は多くある。節点を連接する方法は格子生成法(Mesh Generation Method)による。格子生成法では、大別すると、構造的な生成法と非構造的な生成法とがある。前者は通常四角形(二次元)あるいは六面体(三次元)を基本セルとしてメッシュを作る。後者は、通常三角形(二次元)あるいは四面体(三次元)を基本セルとしてメッシュを作る。既知の地下物性モデル、境界とソースからの物理場応答を求める問題は順問題という。順問題を解く解析は順解析という。既知のソース、境界と測定された物理場データから、その原因となる地下物性分布を推定する問題は逆問題という。逆問題を解く解析は逆解析という。逆解析の過程に、通常、順解析を含む。物理探査において逆問題を解く場合は、地下空間を多くのセル(小領域)に分割し、それぞれのセルの構成要素に物性値を与える必要がある。この場合、セルは重複しないで、全解析領域を埋め尽くす必要がある。このような地下領域の分割を地下空間の離散化といい、正しく離散化させるには適切な格子生成法を用いる必要がある。順解析に使われる格子を順解析グリッドfwg、逆解析のパラメータを定義する格子を逆解析グリッドivg(パラメータグリッドあるいはモデルグリッド)という。逆解析においては、これら順解析グリッドと逆解析グリッドの2種類のメッシュの外縁境界とコントロールされた空間が完全に一致することが求められる。
【0034】
上記第2のステップStep Bで、初期モデルが設定されると、次に、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する(図1のStep C(第3のステップ)参照)。すなわち、初期モデルにより順解析グリッドに比抵抗値ρを割り当てる。次に、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める(図1の第4のステップStep D参照)。
【0035】
次に、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う(図1の第5のステップStep E参照)。そして、この第5のステップStep Eで、誤差の範囲内と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との差が誤差の範囲内と判別された場合、つまり、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなったと判別された場合(図31参照)、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(図1の第6のステップStep F参照)。図31の相対平均二乗誤差RMSの変化に示されるように、解析用データに5%のランダムノイズを加えているため、RMSはそのノイズレベル付近に収束すれば、RMSは充分に小さくなったといえる。実際の探査中のデータに対するRMSの判別基準は実測データのノイズレベルを推定する上で設定される。ここでモデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSは次式で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
一方、第5のステップStep Eで、誤差の範囲外と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなっていなかったと判別された場合、順解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、感度行列を形成する(図1の第7のステップStep G参照)。すなわち、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求める。観測データに対するパラメータの感度とは、地下に作成したセル1単位のパラメータの物性値を変化させたときに生じる、観測データに対する物理応答の変化量のことである。感度行列とは、i番目の観測データに対するj番目のパラメータの感度を行列のi行j列に置き、この操作をすべてのiとjに対して行って、生成した行列のことをいう。つまり、図1の第7のStep Gで求められる観測データに対するパラメータの感度が、地下に作成したセル1単位のパラメータの物性値を変化させたときに生じる、観測データに対する物理応答の変化量であって、感度行列が、i番目の観測データに対するj番目のパラメータの感度を行列のi行j列に置き、この操作を1からn行と1からm列(i、j、m、nは自然数)とに対してすべて行って生成した感度行列である。
【0038】
次に、第7のステップStep Gで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数FSを求める(図1の第8のステップStep HのS4参照)。感度適合関数FSは、感度統計値から求められ、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次の(4)式により求められる。
FS=a(1+b|SS|C )・・・・・(4)
式中、FS:感度適合関数、SS:感度行列から求めた感度統計値、c:次元に関わる常数、a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、b:設定した相対解像度と関わる常数である。
感度統計値SSは、あるモデルにおいて、一つのパラメータの感度が送受信の組み合わせにより大きく異なっているので、最適な節点密度関数を求めるために、代表的な感度値は、それらの感度値から統計方法で選別される。選別された感度値を感度統計値SSという。
【0039】
次に、この感度適合関数FSに基づいて、現時点の逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直す(図1の第8のステップStep HのS5参照)。すなわち、感度適合関数FSが求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数FSに比例させて作り直す。このとき、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化が大きい部位と感度が強い部位では節点密度を高め、すなわち、節点間の距離を縮め、逆解析グリッドの節点における物性値変化が小さい部位と感度が弱い部位では節点密度を低く、すなわち、節点間の距離を広げるよう修正する。こうして新たな逆解析グリッドを作る。
【0040】
なお、通常、ある空間関数に従って新しいグリッドを生成する際には、予めその空間関数を定義するための格子を用意しなければならない。バックグランドグリッドは、そのような空間関数を定義する格子のことであり、格子生成に使われる格子のことである。ここでは、バックグランドグリッドの空間領域は生成しようとするグリッドの空間領域を包含する必要がある。
【0041】
次に、第8のステップStep HのS5で新たな逆解析グリッドが作り直されると、この逆解析グリッドに基づいて、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、新たな逆解析グリッドに対応する感度行列を形成し直す(図1の第8のステップStep HのS6参照)。すなわち、再度、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求める。そして、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドを解析対象から除いて解析領域を決定して解析用の感度行列を割り出す(図1の第8のステップStep HのS6および図5参照)。次に、観測データのモデル理論解と実測の観測データの差と新たに割り出された感度行列を使って逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し(図1の第9のステップStep I参照)、第3のステップStep Cの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップStep Cに復帰する(図1の第9のステップStep Iから第3のステップStep Cへの復帰参照)。
【0042】
すなわち、第9のステップStep Iでは、モデルグリッドへ修正された比抵抗で割り当て、第3のステップStep Cに戻り、再び、収束判定まで反復計算を行い、第5のステップStep Eで誤差の範囲内と判定されると、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(第6のステップStep F参照)。第5のステップStep Eで誤差の範囲外と判定されると、上記第7のステップStep Gから第9のステップStep Iまでを繰り返すようになっている。図6の(A)、(B)および図7の(A)は、感度適合逆解析法において、図2(A)、(B)に示す第1の実施例のデータを解析する際の逆解析グリッドの変化の状況を示している。図7の(B)は、その逆解析結果が物性モデルに再現された様子を示す。
【0043】
図5は、感度適合関数の実例と感度のないパラメータグリッドを除去する範囲の実例を示す説明図で、電極範囲から曲線(半円状曲線)の内側は有効な解析領域であり、その外側の逆解析グリッドのセルに対応するパラメータは実際の逆解析パラメータから除外するようになっている。このため、解析の進行に伴い、地下領域を実際に使われた観測データと地下比抵抗分布に適合したグリッドに分割することができ、測定されたデータ群に対して物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができる。しかも、解析範囲の決定にあたり地下構造の物性値分布に適合させてモデルグリッドのグリッドを変更することができ、解析解像度と解析効率の向上を図ることができる。このように、上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、求められた感度適合関数FS に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を制御するグリッド節点密度変更手段を設けているので、解析の進行に伴い逆解析グリッドを感度に適合させて修正することができる。
【0044】
次に、上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法の作用について説明する。上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、解析の収束判定で、誤差の範囲外となった場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列が形成され、この感度行列に基づいて、感度適合関数FSが求められる。感度適合関数FSが求められると、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密は、物性値変化と感度との大きさに応じて修正され、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするように修正されて、当該逆解析グリッドが設定し直される。このため、解析では感度がより正確に反映される。しかも所定の閾値に達しないグリッドは解析対象から除かれるので、計算負荷が軽減される。このように、本実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、有効な感度適合関数FSの適用により逆解析のパラメータを修正する毎に、モデルグリッドの分割状況を修正し、解析パラメータ数を最適化し、地下の物性値分布に適合したモデルグリッドの分割を行い、解析範囲を自動的に決定するようにしている。そして、観測点から遠い領域における解析精度も向上させることができる。これによりモデルグリッド分割にかかる主観性を低減し、自動的に観測データに適合した必要かつ充分なグリッド節点を正確な位置に配置することにより、計算量を節約することと観測データに含まれる地下情報を最大限に引き出すことができる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、物理探査の一例として図8に示す電気探査を取り上げ、図1に示す本発明のモデルグリッド(パラメータモデルグリッド)の分割態様を比抵抗分布に応じて修正して解析を行った結果(図9ないし図17参照)と、図21ないし図27に示す本発明と異なりモデルグリッドの分割態様を比抵抗分布に応じて修正しないで解析を行った従来のケースによる結果(図22ないし図24参照)とを比較して説明する。比抵抗モデル地盤は、図8に示すように、比抵抗が100Ωmの大地に比抵抗が1Ωmで一辺が5mの立方体の低比抵抗体Xが埋設されているモデル地盤が設定される。比抵抗モデル地盤が設定されると、直交2測線の電極系で2極法による二次元電気探査(電極間隔4m)を行ったときの測定値を数値解析により求め、これらのデータに3%のランダムノイズを与えたものをモデル測定値とし、モデル測定値により三次元逆解析を行った。
【0046】
図9ないし図11はそれぞれ、図8の比抵抗モデル地盤について、本発明に係る方法に基づいて求められたx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すもので、図9は、初期モデルグリッドの接点分布を、図10は、同じく、本発明の第3のステップStep Cに復帰して反復計算を2回行ったモデルグリッドの接点分布を、図11は、同じく反復計算を8回行った最終のモデルグリッドの接点分布を示している。同様に、図12ないし図14はそれぞれ、初期モデルグリッド、反復計算を2回行ったモデルグリッド、同じく反復計算を8回行った最終のモデルグリッドのそれぞれについて、y=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すものである。同様に、図15ないし図17はそれぞれ、初期モデルグリッド、反復計算を2回行ったパラメータモデルグリッド、同じく反復計算を8回行った最終のパラメータモデルグリッドのそれぞれについて、z=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すものである。
【0047】
他方、パラメータモデルグリッドを固定した従来の方法(図21のフローチャート参照)では、地下構造が未知であることから、図8に示す電極系の配置に応じて、調べたい地下領域の範囲で、グリッド間隔が規則的なグリッド分割を行う。このグリッド分割は、主観的で、一旦モデルグリッドが分割されると、解析終了まで固定され、解析を通じて分割態様が変更されることがない。
【0048】
すなわち、図22ないし図24に示す逆解析グリッドを固定して逆解析法を用い、地下構造の物理探査を行う従来の方法では、まず、最小の観測電極間隔(図8の電極の間隔4m参照)を基準とし、逆解析グリッド(図22〜図24参照)と順解析グリッドを設定し、平均見かけ比抵抗値の計算を行って、初期パラメータ値として、逆解析グリッドと順解析グリッドに付与し、初期モデルを設定する。順解析グリッドは、入力された地形情報のデータと電極位置のデータと実測による観測データとに基づいて、地下空間の離散化を行うため地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有するグリッドである。順解析グリッドの各セルは、節点が4点の四面体(または、節点が8点の六面体)からなる構造的な格子により構成される。次に、上記入力された地形情報のデータと電極位置のデータと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドを生成して設定する(図21の第1のステップStep aのS1〜S3参照)。逆解析グリッドの各セルは、図22〜図24に示すように、節点が8点の六面体の構造的な格子により構成される。そして、逆解析グリッドは、グリッド節点の位置が一旦決定されると、解析を通じて変更されることがない(図21のフローチャート参照)。
【0049】
次に、送受信電極の組み合わせにより得られた比抵抗の観測データに基づいて地下の平均物性値を求め、その平均物性値を、生成された逆解析グリッドの節点を接続した線または面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し、初期モデルを設定する(図21の第2のステップStep b参照)。このとき、初期モデルグリッドは、図22〜図24に示すように、主観的、規則的で分割され、しかも、グリッドの分割は固定されている。上記第2のステップStep bで、初期モデルグリッドが設定されると、次に、設定された初期モデルグリッドに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する(図21の第3のステップStep c参照)。すなわち、初期モデルグリッドにより順解析グリッドに比抵抗値ρを割り当てる。次に、付与された物性パラメータに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める(図21の第4のステップStep d参照)。
【0050】
次に、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う(図21の第5のステップStep e参照)。そして、この第5のステップStep eで、誤差の範囲内と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなったと判別された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(図21の第6のステップStep f参照)。
【0051】
一方、第5のステップStep eで、誤差の範囲外と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくならなかったと判別された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する。すなわち、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求め、感度行列を形成する(図21の第7のステップStep g参照)。観測データのモデル理論解と実測の観測データの差と感度行列を使って逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して、第3のステップStep cの初期モデルグリッドを、この更新モデルに代えて第3のステップStep cに復帰する(図21の第8のステップStep hから第3のステップStep cへの復帰参照)。すなわち、第8のステップStep hでは、モデルグリッドへの比抵抗割り当てを修正して第3のステップStep cに戻り、再び、収束判定まで反復計算を行い、第5のステップStep eで誤差の範囲内と判定されると、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(第6のステップStep f参照)。第5のステップStep eで誤差の範囲外と判定されると、上記第7のステップStep g、そして第8のステップStep hから第3のステップStep cに戻り繰り返すようになっている。逆解析グリッドの分割状況は解析を通じて変更されないため、できるだけ細かく分割すると、物性値パラメータ数が増大してしまう。物性値パラメータ数が増大すると、これらを決定するため、多量の観測データの取得が必要になってしまい、計算時間が増大する。さらに、観測点から遠ざかるほどモデルグリッドの観測値に対する感度が小さくなるため、観測点から遠いほど分割を粗くするのが好ましいが、一旦、モデルグリッドの分割状況が決定されると、解析の途中で変更することができず、分割状況を変更するには、最初からやり直さなければならない。
【0052】
図22〜図24はそれぞれ、図8の比抵抗モデル地盤について、モデルグリッドを固定した従来の方法に基づいて、x=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの節点分布を、y=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの節点分布を、さらに、z=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの節点分布を示している。これら節点分布から明らかなように、モデルグリッドを固定した従来の方法では、観測データに対して感度のない領域までグリッドを配置したり、節点密度がデータに含まれる情報の区分能力以上に密に設定したりすることになるので、解析計算に無駄を生じる。また、係る従来の方法では、感度が充分ある範囲で節点密度が低く配置され、データに含まれる情報が充分に利用されず、解析の解像度が低下する虞がある。また、グリッド分割が解析終了まで固定であるため、図28の(A)〜(C)に示すように、比抵抗分布に対してグリッドの大きさや境界が不適切な場合が生じ、解析精度の低下の原因となる。すなわち、図28の(A)は、比抵抗分布に対してモデルグリッドが大きい場合を、図28の(B)は、比抵抗分布に対してモデルグリッドが小さい場合を、図28の(C)は、比抵抗分布境界とモデルグリッド分割が一致せず、比抵抗分布境界とモデルグリッドが斜交している場合をそれぞれ示している。
【0053】
これに対し、本発明の第2の実施例では、例えば、図9ないし図11に示されるように、反復計算毎に比抵抗分布に適合するようにモデルグリッドの分割状況を修正して再配置を行い、データについて感度のある領域に絞って解析を行うようになっている。つまり、図22ないし図24に示すモデルグリッドを固定した例では、低比抵抗体Xの領域に含まれるパラメータグリッド数は4個のまま変わらないが、図9〜図11に示すパラメータモデルグリッドを感度適合関数に応じて修正する例では、0個から4個、4個から20個と増大し、低比抵抗体Xの範囲の再現精度を向上させている。また、図9〜図11からも明らかなように、低比抵抗体Xのある領域で細分化されることがわかる。さらに、図18ないし図20はそれぞれ、本発明の第2の実施例に基づいて導かれた逆解析の結果をCASE1として、モデルグリッドを固定して行った従来の逆解析の結果(図25〜図27参照)をCASE2として互いに比較して示すもので、100Ωmの地盤に1Ωmの低比抵抗体Xがある地盤モデルについて探査データを順解析により求め、これに3%のノイズを加えたデータを逆解析したものである。従来法のCASE2でも、モデルの範囲に低比抵抗体Xが再現されているが、解析された比抵抗値は本発明より大きく、位置もずれている。さらに、低比抵抗体Xの周囲に高比抵抗の偽像が生じている。これに対し、本発明のCASE1の比抵抗断面を見ると、CASE2に較べて、低比抵抗体Xがより明瞭に、かつ、より正確な位置に解析されており、偽像の少ない精度の高い解析結果が得られていることがわかる。
【実施例3】
【0054】
図29の(A)、(B)はそれぞれ、既知の空洞を探査するにあたり、本発明に係る方法を用いて解析した解析結果と、モデルグリッドを固定する従来の方法を用いて解析した解析結果とを比較して示すもので、図29の(A)に示す解析結果では、高比抵抗分布により既知の空洞位置Cvが解析されたが、図29の(B)では、不明瞭であった。
【0055】
なお、上記実施例では、地下構造の物理探査を行うにあたり、電気探査による例を示したが、これに限られるものではなく、表面波や反射波、振動や放射線、イオンあるいは応力やひずみによる探査にも適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、順解析グリッドおよび逆解析グリッドの設定にあたり、図30の(A)に示すように、各グリッドを節点(ノード)が3点の三角形(N1−N2−N3)とした非構造的格子で構成しているがこれに限られるものではなく、図30の(B)に示すように、節点が4点の四面体(n1−n2−n3−n4)からなる非構造的な格子により構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
fwg 順解析グリッド
ivg 逆解析グリッド
ivg モデルグリッド
rsm 地盤モデル
ρ 物性値(比抵抗値)
N1−N2−N3 グリッド節点
SS パラメータの感度統計値
FS 感度適合関数
el 電極
nl グリッド接点
cl グリッドセル
【技術分野】
【0001】
本発明は、比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、面積数平方kmに及ぶ大規模地滑りや豪雨時の多発的な斜面崩壊など比較的広い範囲にわたって地質条件に起因する地盤災害が発生したり、重金属や揮発性有機化合物等の汚染物質による地質汚染が増加している。また、複雑な地形と地質構造を有する地域での土木構造物建設の際には、精度の高い地盤調査に対するニーズが増加している。従来、このような広域の地下構造を三次元的に精度よくかつ低コストで解明するための調査法として、地盤についてある物理量を測定し、地下の物性値分布を推定する地下構造の物理探査方法が知られている。このような物理探査方法の解析では、地盤を小領域に分割し、それぞれの小領域に物性値を与えて得られる地盤モデルを設定し、この地盤モデルに対し、理論的に計算される理論値と実際に測定した実観測値との差の自乗和が最小になるように小領域の物性値を変化させ、地盤の物性分布を推定する逆解析が行われている(例えば、特許文献1参照。)。物理探査の逆解析では、物性値の理論計算を行うための順解析グリッドと、この順解析グリッドよりも粗く分割され、複数の順解析グリッドのセルのまとまり毎に物性値を定義するモデルグリッドが使用される。
【特許文献1】特開2005−337746号公報(第10頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記モデルグリッド(パラメータグリッド)では、格子状にグリッドを分割したり、電流源からの距離の3乗の逆数で自動的にメッシュ分割を行うようにし、観測点からの距離に応じて一定の規則で分割領域を拡大するような分割が行われている。逆解析では、個々のモデルグリッドに割り当てる物性値を繰り返し修正するが、その過程で、モデルグリッドの分割状況そのものが変更されることはない。このことにより実際の物性値分布に対して分割が不適正となり、解析の収束性の悪化を招くという問題がある。このため、従来は、解析の収束性の悪化を防ぐために、隣接グリッド間の平滑化や平坦化などの制約条件を付さなければならず、得られた情報を有効に活用し、測定データに含まれる地下の情報を充分に引き出すことができないという問題があった。特に、三次元探査や解析にあたっては、二次元探査やその解析に対し、未知物性値数が膨大となり、これを解くための計算時間が増大するとともに解析の安定性も著しく低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、測定された物性値データ群に対して物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析範囲の決定にあたり地下構造の物性値分布に適合させてパラメータグリッドを変更し、解析の解像度と解析効率の向上を図ることができる比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにしたことにより、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直した後、逆解析グリッドの物性値を修正する逆解析を行うので、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度と解析効率が向上する。
【0007】
本発明の請求項2に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆順解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆順解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正するようにしたことにより、物性値変化が大きく感度が強い部位では節点密度が高められ、物性値変化が小さく感度が弱い部位では節点密度が低くなるよう修正されるので、これを繰り返しながら逆解析を行うことにより、物性値変化が関与する解析領域を適切に設定することができ、過不足が発生しにくい。しかも、物性値変化の大きい領域では小領域が細かく分割されるので、解析の解像度を向上させることができ、データに含まれる地下情報を無駄なく充分に引き出すことができる。物性値変化の大きくない領域では、小領域が細かく分割されず、粗く分割されたままとなるので、計算負荷が減じられ、解析効率と安定性が向上する。
【0009】
本発明の請求項3に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定するようにしたことにより、感度が所定の閾値以下または感度のないグリッドは解析領域から除去されるので、観測データに対して有効な解析範囲にのみ基づいて解析が行われる。
【0011】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有するようにしたことにより、第7のステップで求められた逆解析グリッドに対応する感度行列から感度適合関数を導き、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて変え、この感度に応じて設定し直された最新の逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直して解析が行われる。このため、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度と解析効率が向上する。
【0013】
本発明の請求項5に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項5に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正するようにしたことにより、逆解析中、各パラメータが充分な感度を持つと共に、不安定な要因の一つとなる過大な感度を有するパラメータが減らされ、観測値に含む地下情報を安定的かつ最大限に引き出すことができる。これを繰り返しながら逆解析を行うので、物性値変化が関与する解析領域を適切に設定することができ、過不足が発生しにくい。しかも、物性値変化の大きい領域では小領域が細かく分割されるので、解析の解像度が向上する。物性値変化の大きくない領域では、小領域が細かく分割されず、粗く分割されたままとなるので、計算負荷が減じられ解析効率と安定性が向上する。
【0015】
本発明の請求項6に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、感度適合関数が、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、感度適合関数が、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められるようにしたことにより、逆解析グリッドのグリッド節点密度を感度に適合させて最適に変更することができるので、解析解像度と解析効率が向上する。
【0017】
本発明の請求項7に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項7に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すようにしたことにより、新しいグリッドを生成するには、予め空間関数を定義するための格子を用意して生成しなければならないが、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとして用いることにより、別の空間関数に従った新しいグリッドを生成する必要がなくなるので、解析作業が効率化される。
【0019】
本発明の請求項8に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて解析を行うことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項8に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて解析を行うようにしたことにより、感度が所定の閾値以下または感度のないグリッドは解析領域から除去されるので、測定値に対して有効な解析範囲にのみ基づいて解析が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにしているので、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度が向上するとともに、計算負荷が減じられ解析効率が向上する。
【0022】
本発明の請求項4に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法は、入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有するようにしているので、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて変え、この感度に応じて設定し直された最新の逆解析グリッドに基づいて解析を行うことができ、解析の進行に伴って、地下領域を、実際に使われた観測データと地下比抵抗分布とに適合したグリッドに分割することができ、物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができ、解析の解像度が向上するとともに、計算負荷が減じられ解析効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を工程順に説明するフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2の(A)、(B)はそれぞれ、図1の方法に用いられる解析の一例に係る二次元地盤モデルの説明図およびその電極系配置の説明図である。
【図3】図3の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(Sensitivity Adaptive Inversion、SAI法)による解析の一例を示す説明図および順解析グリッドの説明図である。
【図4】図4の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の一例を示す説明図および初期逆解析グリッドの説明図である。
【図5】図5は、感度適合関数の実例と感度のないパラメータグリッドを除去する範囲の実例を示す説明図である。
【図6】図6の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の進行に伴って、逆解析グリッドが変化する状態を示す説明図である。
【図7】図7の(A)、(B)はそれぞれ、上記感度適合解析法(SAI法)による解析の進行に伴って、逆解析グリッドが変化する状態を示す説明図および解析結果図である。
【図8】図8は図1の方法に用いられる解析の他の例に係る三次元地盤モデルの説明図である。(実施例2)
【図9】図9は、図8の地盤モデルについて解析の初期逆解析グリッドの状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図10】図10は、図8の地盤モデルについて図9の状態からさらに解析の進行に伴い逆解析グリッドが変化した状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図11】図11は、図8の地盤モデルについて図10の状態からさらに解析の進行に伴い逆解析グリッドが変化した状態でx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの接点分布を示す断面図である。
【図12】図12は、図8の地盤モデルについて図9の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図13】図13は、図8の地盤モデルについて図10の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図14】図14は、図8の地盤モデルについて図11の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図15】図15は、図8の地盤モデルについて図9の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図16】図16は、図8の地盤モデルについて図10の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図17】図17は、図8の地盤モデルについて図11の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示す断面図である。
【図18】図18は、図11についてx=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図19】図19は、図14についてy=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図20】図20は、図18についてz=−7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図21】図21は、従来の比抵抗法の数値解析における逆解析法を工程順に説明するフローチャートである。
【図22】図22は、図8の三次元地盤モデルについて図21に示す従来の逆解析法を用いて解析の進行に伴いx=7.5mにおけるY−Z断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図23】図23は、図22の状態でy=7.5mにおけるX−Z断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図24】図24は、図22の状態でz=−7.5mにおけるX−Y断面に投影した逆解析のグリッド図である。
【図25】図25は、図22についてx=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図26】図26は、図22についてy=7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図27】図27は、図22についてz=−7.5mの断面における逆解析の結果を示す逆解析結果図である。
【図28】図28の(A)ないし(C)はそれぞれ、従来のモデルグリッドの配置で不適合の例を示す説明図である。
【図29】図29の(A)、(B)はそれぞれ、既知の空洞を探査するにあたり、本発明に係る方法を用いて解析した解析結果と、モデルグリッドを固定する従来の方法を用いて解析した解析結果とを比較して示す解析結果の比較図である。(実施例3)
【図30】図30の(A)、(B)はそれぞれ、本発明の非構造的な格子を説明する説明図である。
【図31】図31は、各イタレーションの相対平均二乗誤差RMSの変化を示す変化図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
解析の解像度と解析効率の向上を図るという目的を、入力された地形情報データと電極のソース位置データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られる地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すようにし、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化が大きい部位と感度が強い部位では節点密度を高め、物性値変化が小さい部位と感度が弱い部位では節点密度を低くするよう修正し、各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データの測定値に対する感度が所定の閾値以下のグリッドを解析用パラメータから外して解析領域を決定するようにしたことにより実現した。
【実施例1】
【0025】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法を工程順に説明するフローチャート、図2は、図1の方法に用いられるモデル地盤の一例を示す説明図である。比抵抗モデル地盤は、図2の(A)に示すように、比抵抗が100Ωmの大地に三種類の比抵抗異常体が埋設されている地盤モデルである。図2の(B)に示す電極系により測定される観測データは数値解析により求め、これらのデータに5%のランダムノイズを与え、実測データとして解析される。
まず、図2の(A)に示すような二次元地盤比抵抗モデルを想定し、その比抵抗構造を解明するのが探査の目的である。比抵抗法によりその比抵抗構造を解明するために、図2の(B)に示すように、地表と地下に電極el(図2(A)、(B)の参照)から構成される電極系elsysを設定する。電極位置座標と地表地形座標は既知であり、この電極系から選出した4本の電極を一組(送信電極2本と受信電極2本)として、送信電流と受信電位差とを実測により観測する。このように選出された4本の電極組が、全部でn組があり、それぞれについて送信電流と受信電位差が観測されたものとする。
【0026】
以下、第1の実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法について、図1に示す解析手順に従って説明する。解析を始めるに際し、まず、地形座標データ、電極位置データ及び実測による観測データ(送信電流と受信電位差)を入力する(図1に示すStep A(第1のステップ)のS1参照)。
【0027】
これらのデータに基づいて、地下空間の離散化を行うため地下空間を非構造的な格子により多数の小領域cl(本実施例では三角形の小領域、図3の(A)、(B)参照)に分割し、図3の(A)、(B)に示すようなグリッドの節点nlの密度の高い格子を有する順解析グリッドと、図4の(A)、(B)に示すような順解析グリッドよりも節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドをそれぞれ設定し、逆解析グリッドは、グリッド節点密度が可変に制御されるように、すなわち、隣り合う節点間距離が可変に制御されるように構成される(図1に示すStep AのS2およびS3参照)。
【0028】
次に、入力された各データを用いて、見掛け比抵抗を求め、地下平均比抵抗を計算する。地下平均比抵抗は次式で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
上記数式、数1において、ρmean:平均比抵抗、n:観測データ数、ρai:i番目の見かけ比抵抗である。見かけ比抵抗は次式で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
上記数式、数2において、ΔUi:i番目電極組の受信電極間に観測された電位差(V)、Ii:i番目電極組の送信電極間に流す電流(A)、Ki:i番目電極組の電極係数である。計算された地下平均比抵抗を初期逆解析グリッドに初期物性パラメータとして付与し、初期地盤モデルを設定する(図1のStep B(第2のステップ)参照)。
【0033】
なお、メッシュとグリッドは概念上近い用語であり、格子とも呼ばれる。本実施例においては、グリッドは局所的なメッシュをいい、メッシュはグリッドを連接するネットワーク(連接関係)の全般をいう。その構成は、ともに三つの要素からなる。それは、節点(あるグリッド点)と節点を連接する線(二次元)あるいは面(三次元)とセルから構成される。メッシュの節点を連接する線(面)で囲む最も単純な空間範囲はセルという。通常、節点が変わらなくても連接する方法は多くある。節点を連接する方法は格子生成法(Mesh Generation Method)による。格子生成法では、大別すると、構造的な生成法と非構造的な生成法とがある。前者は通常四角形(二次元)あるいは六面体(三次元)を基本セルとしてメッシュを作る。後者は、通常三角形(二次元)あるいは四面体(三次元)を基本セルとしてメッシュを作る。既知の地下物性モデル、境界とソースからの物理場応答を求める問題は順問題という。順問題を解く解析は順解析という。既知のソース、境界と測定された物理場データから、その原因となる地下物性分布を推定する問題は逆問題という。逆問題を解く解析は逆解析という。逆解析の過程に、通常、順解析を含む。物理探査において逆問題を解く場合は、地下空間を多くのセル(小領域)に分割し、それぞれのセルの構成要素に物性値を与える必要がある。この場合、セルは重複しないで、全解析領域を埋め尽くす必要がある。このような地下領域の分割を地下空間の離散化といい、正しく離散化させるには適切な格子生成法を用いる必要がある。順解析に使われる格子を順解析グリッドfwg、逆解析のパラメータを定義する格子を逆解析グリッドivg(パラメータグリッドあるいはモデルグリッド)という。逆解析においては、これら順解析グリッドと逆解析グリッドの2種類のメッシュの外縁境界とコントロールされた空間が完全に一致することが求められる。
【0034】
上記第2のステップStep Bで、初期モデルが設定されると、次に、設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する(図1のStep C(第3のステップ)参照)。すなわち、初期モデルにより順解析グリッドに比抵抗値ρを割り当てる。次に、設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める(図1の第4のステップStep D参照)。
【0035】
次に、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う(図1の第5のステップStep E参照)。そして、この第5のステップStep Eで、誤差の範囲内と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との差が誤差の範囲内と判別された場合、つまり、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなったと判別された場合(図31参照)、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(図1の第6のステップStep F参照)。図31の相対平均二乗誤差RMSの変化に示されるように、解析用データに5%のランダムノイズを加えているため、RMSはそのノイズレベル付近に収束すれば、RMSは充分に小さくなったといえる。実際の探査中のデータに対するRMSの判別基準は実測データのノイズレベルを推定する上で設定される。ここでモデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSは次式で表される。
【0036】
【数3】
【0037】
一方、第5のステップStep Eで、誤差の範囲外と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなっていなかったと判別された場合、順解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、感度行列を形成する(図1の第7のステップStep G参照)。すなわち、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求める。観測データに対するパラメータの感度とは、地下に作成したセル1単位のパラメータの物性値を変化させたときに生じる、観測データに対する物理応答の変化量のことである。感度行列とは、i番目の観測データに対するj番目のパラメータの感度を行列のi行j列に置き、この操作をすべてのiとjに対して行って、生成した行列のことをいう。つまり、図1の第7のStep Gで求められる観測データに対するパラメータの感度が、地下に作成したセル1単位のパラメータの物性値を変化させたときに生じる、観測データに対する物理応答の変化量であって、感度行列が、i番目の観測データに対するj番目のパラメータの感度を行列のi行j列に置き、この操作を1からn行と1からm列(i、j、m、nは自然数)とに対してすべて行って生成した感度行列である。
【0038】
次に、第7のステップStep Gで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数FSを求める(図1の第8のステップStep HのS4参照)。感度適合関数FSは、感度統計値から求められ、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次の(4)式により求められる。
FS=a(1+b|SS|C )・・・・・(4)
式中、FS:感度適合関数、SS:感度行列から求めた感度統計値、c:次元に関わる常数、a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、b:設定した相対解像度と関わる常数である。
感度統計値SSは、あるモデルにおいて、一つのパラメータの感度が送受信の組み合わせにより大きく異なっているので、最適な節点密度関数を求めるために、代表的な感度値は、それらの感度値から統計方法で選別される。選別された感度値を感度統計値SSという。
【0039】
次に、この感度適合関数FSに基づいて、現時点の逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直す(図1の第8のステップStep HのS5参照)。すなわち、感度適合関数FSが求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数FSに比例させて作り直す。このとき、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化が大きい部位と感度が強い部位では節点密度を高め、すなわち、節点間の距離を縮め、逆解析グリッドの節点における物性値変化が小さい部位と感度が弱い部位では節点密度を低く、すなわち、節点間の距離を広げるよう修正する。こうして新たな逆解析グリッドを作る。
【0040】
なお、通常、ある空間関数に従って新しいグリッドを生成する際には、予めその空間関数を定義するための格子を用意しなければならない。バックグランドグリッドは、そのような空間関数を定義する格子のことであり、格子生成に使われる格子のことである。ここでは、バックグランドグリッドの空間領域は生成しようとするグリッドの空間領域を包含する必要がある。
【0041】
次に、第8のステップStep HのS5で新たな逆解析グリッドが作り直されると、この逆解析グリッドに基づいて、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、新たな逆解析グリッドに対応する感度行列を形成し直す(図1の第8のステップStep HのS6参照)。すなわち、再度、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求める。そして、形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドを解析対象から除いて解析領域を決定して解析用の感度行列を割り出す(図1の第8のステップStep HのS6および図5参照)。次に、観測データのモデル理論解と実測の観測データの差と新たに割り出された感度行列を使って逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し(図1の第9のステップStep I参照)、第3のステップStep Cの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップStep Cに復帰する(図1の第9のステップStep Iから第3のステップStep Cへの復帰参照)。
【0042】
すなわち、第9のステップStep Iでは、モデルグリッドへ修正された比抵抗で割り当て、第3のステップStep Cに戻り、再び、収束判定まで反復計算を行い、第5のステップStep Eで誤差の範囲内と判定されると、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(第6のステップStep F参照)。第5のステップStep Eで誤差の範囲外と判定されると、上記第7のステップStep Gから第9のステップStep Iまでを繰り返すようになっている。図6の(A)、(B)および図7の(A)は、感度適合逆解析法において、図2(A)、(B)に示す第1の実施例のデータを解析する際の逆解析グリッドの変化の状況を示している。図7の(B)は、その逆解析結果が物性モデルに再現された様子を示す。
【0043】
図5は、感度適合関数の実例と感度のないパラメータグリッドを除去する範囲の実例を示す説明図で、電極範囲から曲線(半円状曲線)の内側は有効な解析領域であり、その外側の逆解析グリッドのセルに対応するパラメータは実際の逆解析パラメータから除外するようになっている。このため、解析の進行に伴い、地下領域を実際に使われた観測データと地下比抵抗分布に適合したグリッドに分割することができ、測定されたデータ群に対して物性値変化が関与する解析領域を過不足なく適切に設定することができる。しかも、解析範囲の決定にあたり地下構造の物性値分布に適合させてモデルグリッドのグリッドを変更することができ、解析解像度と解析効率の向上を図ることができる。このように、上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、求められた感度適合関数FS に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を制御するグリッド節点密度変更手段を設けているので、解析の進行に伴い逆解析グリッドを感度に適合させて修正することができる。
【0044】
次に、上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法の作用について説明する。上記実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、解析の収束判定で、誤差の範囲外となった場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列が形成され、この感度行列に基づいて、感度適合関数FSが求められる。感度適合関数FSが求められると、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密は、物性値変化と感度との大きさに応じて修正され、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするように修正されて、当該逆解析グリッドが設定し直される。このため、解析では感度がより正確に反映される。しかも所定の閾値に達しないグリッドは解析対象から除かれるので、計算負荷が軽減される。このように、本実施例に係る比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法では、有効な感度適合関数FSの適用により逆解析のパラメータを修正する毎に、モデルグリッドの分割状況を修正し、解析パラメータ数を最適化し、地下の物性値分布に適合したモデルグリッドの分割を行い、解析範囲を自動的に決定するようにしている。そして、観測点から遠い領域における解析精度も向上させることができる。これによりモデルグリッド分割にかかる主観性を低減し、自動的に観測データに適合した必要かつ充分なグリッド節点を正確な位置に配置することにより、計算量を節約することと観測データに含まれる地下情報を最大限に引き出すことができる。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、物理探査の一例として図8に示す電気探査を取り上げ、図1に示す本発明のモデルグリッド(パラメータモデルグリッド)の分割態様を比抵抗分布に応じて修正して解析を行った結果(図9ないし図17参照)と、図21ないし図27に示す本発明と異なりモデルグリッドの分割態様を比抵抗分布に応じて修正しないで解析を行った従来のケースによる結果(図22ないし図24参照)とを比較して説明する。比抵抗モデル地盤は、図8に示すように、比抵抗が100Ωmの大地に比抵抗が1Ωmで一辺が5mの立方体の低比抵抗体Xが埋設されているモデル地盤が設定される。比抵抗モデル地盤が設定されると、直交2測線の電極系で2極法による二次元電気探査(電極間隔4m)を行ったときの測定値を数値解析により求め、これらのデータに3%のランダムノイズを与えたものをモデル測定値とし、モデル測定値により三次元逆解析を行った。
【0046】
図9ないし図11はそれぞれ、図8の比抵抗モデル地盤について、本発明に係る方法に基づいて求められたx=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すもので、図9は、初期モデルグリッドの接点分布を、図10は、同じく、本発明の第3のステップStep Cに復帰して反復計算を2回行ったモデルグリッドの接点分布を、図11は、同じく反復計算を8回行った最終のモデルグリッドの接点分布を示している。同様に、図12ないし図14はそれぞれ、初期モデルグリッド、反復計算を2回行ったモデルグリッド、同じく反復計算を8回行った最終のモデルグリッドのそれぞれについて、y=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すものである。同様に、図15ないし図17はそれぞれ、初期モデルグリッド、反復計算を2回行ったパラメータモデルグリッド、同じく反復計算を8回行った最終のパラメータモデルグリッドのそれぞれについて、z=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの点分布を示すものである。
【0047】
他方、パラメータモデルグリッドを固定した従来の方法(図21のフローチャート参照)では、地下構造が未知であることから、図8に示す電極系の配置に応じて、調べたい地下領域の範囲で、グリッド間隔が規則的なグリッド分割を行う。このグリッド分割は、主観的で、一旦モデルグリッドが分割されると、解析終了まで固定され、解析を通じて分割態様が変更されることがない。
【0048】
すなわち、図22ないし図24に示す逆解析グリッドを固定して逆解析法を用い、地下構造の物理探査を行う従来の方法では、まず、最小の観測電極間隔(図8の電極の間隔4m参照)を基準とし、逆解析グリッド(図22〜図24参照)と順解析グリッドを設定し、平均見かけ比抵抗値の計算を行って、初期パラメータ値として、逆解析グリッドと順解析グリッドに付与し、初期モデルを設定する。順解析グリッドは、入力された地形情報のデータと電極位置のデータと実測による観測データとに基づいて、地下空間の離散化を行うため地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有するグリッドである。順解析グリッドの各セルは、節点が4点の四面体(または、節点が8点の六面体)からなる構造的な格子により構成される。次に、上記入力された地形情報のデータと電極位置のデータと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドを生成して設定する(図21の第1のステップStep aのS1〜S3参照)。逆解析グリッドの各セルは、図22〜図24に示すように、節点が8点の六面体の構造的な格子により構成される。そして、逆解析グリッドは、グリッド節点の位置が一旦決定されると、解析を通じて変更されることがない(図21のフローチャート参照)。
【0049】
次に、送受信電極の組み合わせにより得られた比抵抗の観測データに基づいて地下の平均物性値を求め、その平均物性値を、生成された逆解析グリッドの節点を接続した線または面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し、初期モデルを設定する(図21の第2のステップStep b参照)。このとき、初期モデルグリッドは、図22〜図24に示すように、主観的、規則的で分割され、しかも、グリッドの分割は固定されている。上記第2のステップStep bで、初期モデルグリッドが設定されると、次に、設定された初期モデルグリッドに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する(図21の第3のステップStep c参照)。すなわち、初期モデルグリッドにより順解析グリッドに比抵抗値ρを割り当てる。次に、付与された物性パラメータに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める(図21の第4のステップStep d参照)。
【0050】
次に、モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う(図21の第5のステップStep e参照)。そして、この第5のステップStep eで、誤差の範囲内と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくなったと判別された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(図21の第6のステップStep f参照)。
【0051】
一方、第5のステップStep eで、誤差の範囲外と判定された場合、すなわち、計算されたモデル理論解と実際に測定された観測値とを比較し、モデル理論解と観測値との相対平均二乗誤差RMSが充分小さくならなかったと判別された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する。すなわち、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する感度ベクトルを求め、感度行列を形成する(図21の第7のステップStep g参照)。観測データのモデル理論解と実測の観測データの差と感度行列を使って逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して、第3のステップStep cの初期モデルグリッドを、この更新モデルに代えて第3のステップStep cに復帰する(図21の第8のステップStep hから第3のステップStep cへの復帰参照)。すなわち、第8のステップStep hでは、モデルグリッドへの比抵抗割り当てを修正して第3のステップStep cに戻り、再び、収束判定まで反復計算を行い、第5のステップStep eで誤差の範囲内と判定されると、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値ρを出力して解析を終了する(第6のステップStep f参照)。第5のステップStep eで誤差の範囲外と判定されると、上記第7のステップStep g、そして第8のステップStep hから第3のステップStep cに戻り繰り返すようになっている。逆解析グリッドの分割状況は解析を通じて変更されないため、できるだけ細かく分割すると、物性値パラメータ数が増大してしまう。物性値パラメータ数が増大すると、これらを決定するため、多量の観測データの取得が必要になってしまい、計算時間が増大する。さらに、観測点から遠ざかるほどモデルグリッドの観測値に対する感度が小さくなるため、観測点から遠いほど分割を粗くするのが好ましいが、一旦、モデルグリッドの分割状況が決定されると、解析の途中で変更することができず、分割状況を変更するには、最初からやり直さなければならない。
【0052】
図22〜図24はそれぞれ、図8の比抵抗モデル地盤について、モデルグリッドを固定した従来の方法に基づいて、x=7.5mにおけるY−Z断面に投影したモデルグリッドの節点分布を、y=7.5mにおけるX−Z断面に投影したモデルグリッドの節点分布を、さらに、z=−7.5mにおけるX−Y断面に投影したモデルグリッドの節点分布を示している。これら節点分布から明らかなように、モデルグリッドを固定した従来の方法では、観測データに対して感度のない領域までグリッドを配置したり、節点密度がデータに含まれる情報の区分能力以上に密に設定したりすることになるので、解析計算に無駄を生じる。また、係る従来の方法では、感度が充分ある範囲で節点密度が低く配置され、データに含まれる情報が充分に利用されず、解析の解像度が低下する虞がある。また、グリッド分割が解析終了まで固定であるため、図28の(A)〜(C)に示すように、比抵抗分布に対してグリッドの大きさや境界が不適切な場合が生じ、解析精度の低下の原因となる。すなわち、図28の(A)は、比抵抗分布に対してモデルグリッドが大きい場合を、図28の(B)は、比抵抗分布に対してモデルグリッドが小さい場合を、図28の(C)は、比抵抗分布境界とモデルグリッド分割が一致せず、比抵抗分布境界とモデルグリッドが斜交している場合をそれぞれ示している。
【0053】
これに対し、本発明の第2の実施例では、例えば、図9ないし図11に示されるように、反復計算毎に比抵抗分布に適合するようにモデルグリッドの分割状況を修正して再配置を行い、データについて感度のある領域に絞って解析を行うようになっている。つまり、図22ないし図24に示すモデルグリッドを固定した例では、低比抵抗体Xの領域に含まれるパラメータグリッド数は4個のまま変わらないが、図9〜図11に示すパラメータモデルグリッドを感度適合関数に応じて修正する例では、0個から4個、4個から20個と増大し、低比抵抗体Xの範囲の再現精度を向上させている。また、図9〜図11からも明らかなように、低比抵抗体Xのある領域で細分化されることがわかる。さらに、図18ないし図20はそれぞれ、本発明の第2の実施例に基づいて導かれた逆解析の結果をCASE1として、モデルグリッドを固定して行った従来の逆解析の結果(図25〜図27参照)をCASE2として互いに比較して示すもので、100Ωmの地盤に1Ωmの低比抵抗体Xがある地盤モデルについて探査データを順解析により求め、これに3%のノイズを加えたデータを逆解析したものである。従来法のCASE2でも、モデルの範囲に低比抵抗体Xが再現されているが、解析された比抵抗値は本発明より大きく、位置もずれている。さらに、低比抵抗体Xの周囲に高比抵抗の偽像が生じている。これに対し、本発明のCASE1の比抵抗断面を見ると、CASE2に較べて、低比抵抗体Xがより明瞭に、かつ、より正確な位置に解析されており、偽像の少ない精度の高い解析結果が得られていることがわかる。
【実施例3】
【0054】
図29の(A)、(B)はそれぞれ、既知の空洞を探査するにあたり、本発明に係る方法を用いて解析した解析結果と、モデルグリッドを固定する従来の方法を用いて解析した解析結果とを比較して示すもので、図29の(A)に示す解析結果では、高比抵抗分布により既知の空洞位置Cvが解析されたが、図29の(B)では、不明瞭であった。
【0055】
なお、上記実施例では、地下構造の物理探査を行うにあたり、電気探査による例を示したが、これに限られるものではなく、表面波や反射波、振動や放射線、イオンあるいは応力やひずみによる探査にも適用可能であることはいうまでもない。また、上記実施例では、順解析グリッドおよび逆解析グリッドの設定にあたり、図30の(A)に示すように、各グリッドを節点(ノード)が3点の三角形(N1−N2−N3)とした非構造的格子で構成しているがこれに限られるものではなく、図30の(B)に示すように、節点が4点の四面体(n1−n2−n3−n4)からなる非構造的な格子により構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
fwg 順解析グリッド
ivg 逆解析グリッド
ivg モデルグリッド
rsm 地盤モデル
ρ 物性値(比抵抗値)
N1−N2−N3 グリッド節点
SS パラメータの感度統計値
FS 感度適合関数
el 電極
nl グリッド接点
cl グリッドセル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、
順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、
形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すことを特徴とする比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項2】
逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とする請求項1に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項3】
各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項4】
入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、
送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、
設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、
設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、
モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、
第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、
第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、
第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、
モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有することを特徴とする比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項5】
逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とする請求項4に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項6】
感度適合関数は、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められることを特徴とする請求項4または5に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項7】
感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すことを特徴とする請求項6に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項8】
形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて逆解析を行うことを特徴とする請求項4ないし7のうちいずれか1に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項1】
入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を小領域にそれぞれ分割したグリッド節点密度の高い順解析グリッドとこの順解析グリッドよりグリッド節点密度が低い逆解析グリッドとを設定するとともに、それぞれの小領域に実際に測定した観測データに基づいて求められた物性平均値を与えて得られるグリッドに物性値を付加した地盤モデルを設定し、設定された地盤モデルから理論的に計算される理論値と観測データとを比較し、誤差の範囲内であれば逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値の解析結果を出力して地盤の物性値分布を推定し、誤差の範囲外であれば、各観測データに対する各パラメータの感度を求めて感度行列を形成し、観測データの理論値と実測値との差と感度行列とに基づいて逆解析を行い、新たにパラメータ値を求め、求められたパラメータ値を逆解析グリッドに与え、地盤モデルの更新を繰り返して解析を行う解析法であって、
順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成し、
形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、求められた感度統計値に基づいて逆解析グリッドの節点密度を制御する関数を求め、この関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直すことを特徴とする比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項2】
逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とする請求項1に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項3】
各観測データに対して各パラメータの感度を求める際、観測データに対する感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項4】
入力された地形情報データと電極のソース位置データと実測による観測データとに基づいて、地下空間を多数の小領域に分割し、グリッドの節点密度の高い格子を有する順解析グリッドと順解析グリッドより節点密度の低い格子を有する逆解析グリッドとをそれぞれ生成し、これら順解析グリッドと逆解析グリッドとの各グリッドを、三角形または四面体の非構造的な格子により構成するとともに、逆解析グリッドを、グリッド節点密度が可変に制御されるよう構成する第1のステップと、
送受信電極の組み合わせにより得られた観測データに基づいて地下の物性平均値を求め、その物性平均値を、生成された逆解析グリッドのメッシュの節点を接続した線また面で囲むセルに初期物性パラメータとして付与し初期モデルを設定する第2のステップと、
設定された初期モデルに基づいて順解析グリッドの各セルに物性パラメータを付与し物性モデルを設定する第3のステップと、
設定された物性モデルに基づいて順解析を行い、この物性モデルにおける実測と一致する電極の送受信配置で、この物性モデルに基づいて観測データに対する物理応答の理論値を求め、順解析グリッドの各節点におけるモデル理論解を求める第4のステップと、
モデル理論解と観測データとを比較し誤差の範囲内か否かの収束判定を行う第5のステップと、
第5のステップで、誤差の範囲内と判定された場合、逆解析グリッドとそのグリッドに定義された物性値を出力して解析を終了する第6のステップと、
第5のステップで、誤差の範囲外と判定された場合、逆解析グリッドの節点毎に各観測データに対する各パラメータの感度を求め、逆解析グリッドに対応する感度行列を形成する第7のステップと、
第7のステップで形成された感度行列から各パラメータの感度統計値を求め、その感度統計値から逆解析グリッドに対応し感度に適合する関数を求め、この感度適合関数に基づいて、逆解析グリッドのグリッド節点密度の疎密を物性値変化と感度との大きさに応じて修正して当該逆解析グリッドを設定し直し、感度適合関数に応じて設定し直された逆解析グリッドに基づいて感度行列を形成し直し、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析用パラメータから外して解析領域を決定する第8のステップと、
モデル理論解と観測データとの差と形成し直された感度行列とに基づいて逆解析を行い、物性パラメータを修正して新たな物性パラメータを求め、この新たに求められた物性パラメータを逆解析グリッドの各セルに付与して更新モデルを設定し、第3のステップの初期モデルを、この更新モデルに代えて第3のステップに復帰する第9のステップとを有することを特徴とする比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項5】
逆解析グリッドのグリッド節点の疎密を設定する際、逆解析グリッドの節点における物性値変化と感度とが大きい部位では節点密度を高め、前記物性値変化と感度とが小さい部位では節点密度を低くするよう修正することを特徴とする請求項4に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項6】
感度適合関数は、比抵抗法における逆解析グリッドの最適な節点密度関数であり、
次式、
FS=a(1+b|SS|C )
式中、FS:感度適合関数、
SS:感度行列から求めた感度統計値であって、感度統計値は感度行列を通したすべての送受信電極組と地下空間座標の関数でもある、
c:次元に関わる常数、
a:設定した最大解像度と解析領域の範囲と関わる常数、
b:設定した相対解像度と関わる常数
で求められることを特徴とする請求項4または5に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項7】
感度適合関数が求められると、直前の逆解析グリッドをバックグランドグリッドとしてグリッド節点の密度を感度適合関数に比例させて作り直し、作り直されたグリッドを有する最新の逆解析グリッドに基づいて、感度行列を形成し直すことを特徴とする請求項6に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【請求項8】
形成し直された感度行列のうち、感度が所定の閾値以下のグリッドに対応するパラメータを解析対象から除いて解析領域を決定して感度行列を割り出し、この割り出された感度行列に基づいて逆解析を行うことを特徴とする請求項4ないし7のうちいずれか1に記載の比抵抗法の数値解析における感度適合逆解析法。
【図1】
【図2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図30】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図28】
【図29】
【図31】
【図2】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図30】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図28】
【図29】
【図31】
【公開番号】特開2010−217036(P2010−217036A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65050(P2009−65050)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(509076580)有限会社探査環境技術事務所 (1)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(509076580)有限会社探査環境技術事務所 (1)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
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