説明

毛包形成を増強するための表皮刺激

本発明は、毛包細胞の移植による毛髪形成の効率を改善する方法を特徴とする。この方法は、被験体の皮膚中の角化細胞を刺激することにより、移植毛包細胞(例えば、真皮乳頭細胞、真皮鞘細胞および/または外毛根鞘細胞)由来の毛髪誘導シグナルに対して、角化細胞の受容性を高めるための表皮刺激(ES)の使用を含む。一実施形態において、受容者の外皮表面に移植した際の毛包細胞により、毛包の形成を増強するための方法が提供され、この方法は、表皮刺激(ES)によって該受容者の外皮表面から角化細胞を除去するステップ、および該ESの前または後に、該受容者の外皮表面下に該毛包細胞を移植するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真皮乳頭(DP細胞)などの毛包細胞(follicular cell)の移植後の毛包形成に関する。
【背景技術】
【0002】
DP細胞などの培養毛包細胞の移植による毛の再生が、げっ歯類モデルにおいて実証されている。それに加え、こうした細胞は、ヒトに移植することにより、毛髪形成を誘発して脱毛を治療できるという原理の証拠が存在する。
【0003】
移植できる他の型の毛包細胞には、真皮鞘(dermal sheath)(DS)細胞および/または外毛根鞘(outer root sheath)(ORS)細胞が挙げられる。
【0004】
毛幹自体は、DP細胞の指示の下で特殊化した表皮細胞から形成される。
【0005】
これは、1つの過程または2つの過程の組合せによって起こることが示唆されている。毛幹は、表皮細胞シグナル伝達過程に寄与することにより、小さい産毛を更新し、毛幹の肥厚を生じるDP細胞によって形成し得る。いわゆる「毛包新生」は、DP細胞が、毛包間表皮角化細胞を動員し、該細胞を毛包表皮細胞に分化転換(trans−differentiate)させ、次いで分化細胞が毛包に発達し、毛幹を産生する場合に起こり得る。
【0006】
したがって、この過程には、今のところ同定されていないシグナルを生じる活性な毛包(例えば、DP/DS/ORS)細胞、およびそのシグナル(複数可)に適当に応答できるコンピテントな表皮細胞が必要である。
【0007】
げっ歯類モデルにおける毛髪誘導の実証は、成功しているとは言え、非効率的であり、ヒトに細胞を移植する方法を直接教示するものではない。これは、両種間の皮膚構造の本質的差異による。ヒト被験体にDP細胞を移植し、高度の毛髪形成を後に効率的に起こす方法が、必要とされている。
【0008】
「テープ剥がし(tape stripping)」による角化細胞の増殖刺激が、実証されている。この方法は、粘着テープを用いて角化細胞の外部角質層を除去し、角化細胞の下層における細胞分裂を刺激する(参考として本明細書に援用される、非特許文献1を参照のこと)。
【0009】
「テープ剥がし」は、毛球が除いた毛髪に依然として付着しているように、成長期の無損傷毛髪を1つまたは複数のドナー領域から除去するためにも使用されている(参考として本明細書に援用されるGHO’ST HOLDING B.V.:特許文献1)。
【0010】
DP細胞の移植と同時に起こる創傷治癒は、マウスにおける毛髪形成を刺激するであろうと文献中に述べられている(参考として本明細書に援用される、非特許文献2)。しかし、創傷形成(針で切傷し、表皮下にトンネルを作ること)に使用する当該方法は、ヒト被験体に使用するには適当ではない。同様に、全層切除創傷およびメス切傷による創傷形成も、適切ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第98/47471号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pottenら、Cell Proliferation(2000年)33巻(4号):231〜246頁
【非特許文献2】McElweeら、J.Invest.Dermatology(2003年)121巻:121267〜121275頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、毛包細胞の移植による毛髪形成の効率を改善する方法である。
【0014】
本発明によれば、受容者の外皮表面中に(例えば、毛髪を生成する上皮細胞に密接して)移植した際の毛包細胞により、毛包の形成を増強する方法が提供され、この方法は、表皮刺激(ES)によって受容者の外皮表面から角化細胞を除去するステップ、およびESの前または後に、受容者の外皮表面下に毛包細胞を移植するステップを含む。
【0015】
別の態様では、受容者の外皮表面中に(例えば、毛髪を生成する上皮細胞に密接して)移植した際の毛包細胞により、毛包の形成を増強する方法が提供され、ここで、ESが、外皮表面から角化細胞を除去することにより達成され、この細胞が、ESを実施する前または後に、外皮表面下に移植される。
【0016】
この方法は、被験体の皮膚内角化細胞を刺激するためにESを使用することにより、角化細胞が、移植毛包細胞に由来する毛髪誘導シグナルを受容し易くする。驚くべきことに、この方法は、(i)毛包形成の増強、および(ii)発毛の改善を生じる。
【0017】
本発明による毛包形成の増強は、ESを用いない移植と比較して、毛包細胞の移植後に形成される毛髪が、多くおよび/または濃くなり得る。
【0018】
理論に拘束されずに、本発明者らは、活発に増殖している角化細胞が、移植した真皮乳頭(DP)細胞および/または真皮鞘(DS)細胞および/または外毛根鞘(ORS)細胞による毛髪誘導をより受容し易いと考えている。増殖中の角化細胞は、休止中の角化細胞より動き易い(表皮中で運動し、移動できる)。角化細胞の増殖および移動は、毛髪形成の特質である。
【0019】
本発明によれば、ESは、皮膚表面から一部の角化細胞を除去することにより達成される。「角化細胞の除去」という用語は、角化細胞層の完全な除去を必要としない。
【0020】
ESは、細胞移植の直前に行うことができ、または移植後まもなく行うことができる(例えば、数日以内から1週間後まで)。
【0021】
好ましくは、ESは、移植細胞を受け容れようとする(または最近受け容れた)被験体の頭皮上に実施される。他の皮膚領域をESで処置して、毛包の形成を増強し、発毛を改善してもよい。
【0022】
ESの一法は、テープ剥がしによる。この方法は、皮膚表面から角化細胞を除去するために、粘着テープ(例えば、Gorilla tapeRTMまたはSellotapeRTM)を使用する。特に、テープ剥がしに粘着性のテープまたはパッチを用いて、角質層(死んだ角化細胞で形成される外皮層)を除去し、ESを生じ得る。
【0023】
テープ剥がしに代わる方法は、剥離(「皮膚擦傷法」と称することもある)であり、その方法では、研磨材(例えば、紙やすり、またはUniversal Electro−Surgical Tip Cleaner[Universal Hospital Supplies,London,UJ、製品コード:UN58200]のような手術用チップクリーナーなどの類似品)を用いて皮膚を剥離する。皮膚擦傷法は、外部側の角化細胞層(例えば、角質層および/または角質層下にある他の角化細胞層、(順に)淡明層、顆粒層、有棘層および/または基底層などを含む)を除去する。これによって、テープ剥がしと同じ結果、即ち、失われた層に代わって補填するような角化細胞の増殖および移動が達成される。
【0024】
ESを達成する更なる代替手段は、化学的表皮剥離、および創傷形成(例えば、引掻き、掻き取りまたは削り取り)による皮膚表面の小損傷である。
【0025】
本発明は、厳密に美容目的のために行ってもよい。法律上許されれば、本発明は、医療処置の一部であってもよい。
【0026】
本発明の方法は、DP細胞の移植によって行い得る。
【0027】
移植できる他の型の毛包細胞には、DS細胞および/またはORS細胞が挙げられる。
【0028】
DP細胞および/またはDS細胞および/またはORS細胞の移植以外に、他の毛包細胞(例えば、追加の角化細胞)も細胞混合物に添加して、毛髪形成の効率を改善することができよう。
【0029】
好ましい実施形態では、毛包細胞(例えば、DP細胞、DS細胞および/またはORS細胞)は、例えば、共に参考として本明細書に援用される米国特許出願第2003/0161815号および同第2005/0147652号において教示される方法を用いて、ヒトに移植される。例えば、毛包細胞は、反復ディスペンサー(例えばGastight(登録商標)LTシリンジなどのHamiltonシリンジと共に使用される、例えばPB600−1反復ディスペンサー)を取り付けたシリンジ(例えば、Hamiltonシリンジ)を用いて移植し得る。
【0030】
本発明の具体的実施形態を、限定せずに、添付の図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の方法において送達デバイスと共に使用する、先行技術の反復ディスペンサーの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例1)毛包形成の増強
先ず、剥がそうとする領域から毛髪を刈り取る、または剃り取る。次いで、この領域を清浄にして、汚れおよび油を除くと共に刈り込んだ毛髪を除く。テープ剥がしは、テープ(好ましくは、Gorilla tapeRTMまたはSellotapeRTMなどの皮膚に強く粘着する粘着剤の付いたテープ)の粘着面を皮膚に当てることにより行う。そのテープを、急激に引張ることにより除く。この過程は、テープが清浄に見え、皮膚から見掛上まったく物質が除かれなくなるまで、反復する。普通、皮膚が赤くなり、ひりひりしているように見える。
【0033】
テープ剥がしは、細胞移植の直前に行うことができ、または移植後まもなく行うことができる(例えば、数日以内から1週間後まで)。
【0034】
(実施例2)毛包形成の増強に対するテープ剥がし法と皮膚擦傷法との比較
方法および材料
必要な材料
以下の詳細な方法説明で言及する材料に加え、制御送達の改良品を備えたHamiltonシリンジ(例えば、米国特許出願第2003/0161815号および第2005/0147652号に例示され、図1に示されるような「制御送達デバイス」)、針(使用者によって決定される)およびネジ回しが必要であった。
【0035】
図1に描出した制御送達の改良品は、Hamilton PB600−1反復ディスペンサー(Hamilton Company,US)であり、これは、プランジャー(2)および目盛ロッド(3)を有するディスペンサーアセンブリー(1)を備える。目盛ロッドは、プランジャーアーム(4)に取り付けられ、該アームは、プランジャーアームネジ(5)によってHamiltonシリンジのプランジャー(輪郭9で示す)に固定する。フランジネジ(6)は、シリンジの外筒(輪郭8で示す)をディスペンサーアセンブリー中に固定する。シリンジおよびディスペンサーアセンブリーの連結部は、Oリング(7)で密封する。
【0036】
患者
患者グループは、男性型脱毛症を示す志願者からなっていた。実験開始の8週前に、自家DP細胞を培養するために、各患者から頭皮生検を採取した。注入プロトコール(下記を参照)の後、毛髪成長を1、6、12、24、36および48週にモニターし、記録した。
【0037】
ICX−TRC送達デバイスの準備
ポリプロピレンチューブ中にICX−TRC細胞懸濁物を含有し、プラスチック外袋中に密封したバイアルを開放し、棚に入れた適当な媒体と共に、使用するまで冷蔵庫に保存した。ICX−TRC細胞懸濁物は、HypothermosolRTM中のヒト自家DP細胞の200μl懸濁物であった。各バイアルは、各患者から培養した4×10個DP細胞/mlの原液から調製した、約8×10個のDP細胞を含有していた。
【0038】
送達デバイスに針を取り付ける前に、媒体でシリンジを2回満たし、分注することにより、その注入デバイスを前処理した。ICX−TRC細胞懸濁物がバイアルの底に沈降した場合、細胞を再懸濁させるために、バイアルを振り落とし、または「はじいた」。図1を参照すると、注入デバイス上のプランジャー先端が、目盛ロッド(3)を完全に伸ばしたとき、50μlの印より僅かに上に位置していることを確実にするためにチェックした。プランジャーの位置が不適正な場合、プランジャーアームネジ(5)を滅菌ネジ回しで緩め、プランジャーを再配置し、そのネジをネジ回しで再び締めた。
【0039】
未だ針を取り付けないまま、シリンジにICX−TRC細胞懸濁物を注意深く満たした。満たした後のシリンジに適当な針を取り付け、針の先端を上に向けて、ICX−TRCの一定の量が針先端に丁度現れ始めるまで、ディスペンスボタンを押し入れた。針のハブはおよそ30〜35μlの容量を有する。
【0040】
針を取り付けた状態で、シリンジ外筒がICX−TRCを45〜50μl含有するようにシリンジを満たした。ICX−TRCは、バイアルを開放してから15分以内に使用した。
【0041】
針が鈍らになったとき、該デバイスに新しい針をあてがい、デバイスを再び前処理した後に続けた。
【0042】
ICX−TRCの分注および取扱い手順
(i)ICX−TRC注入用の頭皮の準備
ICX−TRCパッケージを開放する前に、目標処置領域を準備した。手術前に、生検創傷を乱さないように注意を払って、手洗い消毒液(antiseptic scrub)で頭皮を注意深く洗浄し、清潔なタオルで半乾燥にした。必要であれば、手順中の鎮静のために経口用ジアゼパムを投与した。
【0043】
1cmの区画注入部位を同定するために、入れ墨(小さい黒色点)を用いた。次いで、各被験体について選択した領域、ならびに領域の位置およびサイズを症例記録表(CRF)の図上に記録し、写真を撮った(下記を参照)。
【0044】
ゲンチアナバイオレットのペンを用いて、1cmの円(中心に入れ墨点のある)を打点し、下記に記載するように半々に分割した。
【0045】
次いで、選択領域を囲む頭皮中にアドレナリン20万分の1を含む0.5〜1%リグノカインを注射することにより、その領域を麻酔し、穿刺試験を行って、その領域が麻痺していることを確実にした。
【0046】
適用できる場合には、ICX−TRC細胞の注入直前に、下記のように選択領域に表皮刺激を施した。
【0047】
使用時には、存在するチューブ数、媒体の色、包装などをCRF中に記録した。
【0048】
ICX−TRCの滅菌状態に疑義がある場合、またはパッケージから材料を取り出す際もしくはそれを取り扱う際に、滅菌状態が危うい場合は、それを使用しなかった。
【0049】
(ii)ICX−TRCの送達/分注
ICX−TRC包装の開放が許容できることを確認する際に、ICX−TRCをパッケージから取り出すために、以下の指示を適用した。
【0050】
消毒し、手袋をはめた手で密封プラスチック外袋を開放し、ポリプロピレンチューブを取り出し、滅菌野の中へ移した。チューブスタンドにチューブを置く前に、チューブを激しく振って、できる限り多くのICX−TRCをチューブの底まで動かした。
【0051】
チューブの蓋を静かにネジ開け、前記のように注入デバイスを前処理し、装填した。
【0052】
次いで、ICX−TRCを選択した処置領域中に注入した。
【0053】
以下の注入法を用いた(すべての注入が2mmを超える深さにならないことを確実にした)。
【0054】
区画注入領域の右半分では、27G−4mm針を用いた50回の注入を含む1段階毛包間注入手順を行った。
【0055】
区画注入領域の左半分では、以下3通りの注入手順のうち1つを行った:
(1)20Gまたは21G針で孔あけ後、27G−4mm針を用いた注入の2段階による50×1μl注入;
(2)27G−4mm針を用いた現存毛包中への50×1μl毛包内注入;
(3)27G−1/2インチ針を用いた1×50μl皮内注入。
【0056】
注入手順を以下により詳細に説明する。
【0057】
注入手順
1段階毛包間について:
Hamiltonシリンジおよび27G−4mm針を用いて、注意深く毛包をすべて回避しながら針を頭皮に押し込んだ。ディスペンサーボタンを押して細胞を送入した後、余分な吸引をしないようにゆっくり針を引き抜いた。注入する際に注入デバイスを保持しながら、手で頭皮上に押し下げることは、皮膚を圧迫し、以前の注入から細胞を搾り出す恐れがあるので、避けるようにした。拭き取りまたは軽い叩き当ても避けた。出血/浸出が新たな注入に流入しないように、底部から上方に作業することが好ましかった。拭き取り前に待つことは、細胞を凝血などにより針跡中に固定できるので、好ましかった。プランジャーが進んでいることを保証するために、該デバイスを定期的にチェックした。必要があれば、そのネジを締め付けた。このチェックは、開始時および定期的に(例えば、再充填の都度その後に)行った。
【0058】
2段階毛包間について:
鋭い針(20Gまたは21G)を用いて孔をあけ、約2mmの深さに制御するために、斜めになった部分(bevel)の上端までに挿入を留めた。始めに孔を作り、その後上記の1段階毛包間技術を用いた。上記の1段階毛包間法の鈍らな針の方が、孔へ挿入し易かったので、これを使用した。
【0059】
1段階毛包内(現存毛包)について:
これは、針を現存ミニチュア毛包に直接挿入する以外、1段階毛包間法と同じであった。これは、鈍らな針を用いて最も容易に成し遂げられた。一部の患者では、ミニチュア化毛包の密度が、目標領域で50回注入を行うには不十分であった。できる限り多数回(50回まで)の注入を行い、注入回数を記録した。
【0060】
1段階皮内について:
針を注入領域の中線上にあって円端部にある点に挿入した。針の先端が、中線と90°をなす半径の中間点に達するまで、針を皮内に押し込んだ。針の輪郭が皮膚の下に見えるように、皮膚の下にできる限り浅くおよそ0.5cm針を挿入した。プランジャーを押し下げると、抵抗があり、皮膚は白くなり、小水胞が出現した。プランジャー(ディスペンサーボタンではない)を完全に押し下げて、シリンジの中味全50μlを1回の注入で注入した。
【0061】
すべての注入を頭の頂部の選択領域内に行った。注入の回数、深さおよび角度をCRF上に書き記し、記録した。それ以外に、注入を行うのに要した時間、およびチューブ数も記録した。かゆみ、浮腫および紅斑の存在を含む皮膚の質も、記録した。
【0062】
処置直後に、被験体が手順中の疼痛を感じたか否かを記録し、および起こった出血量も記録した。
【0063】
使用しなかったICX−TRCは、適切に処分した。
【0064】
次の薬剤:シプロフロキサシン(点滴薬)、ムピロシン(局所薬)および硫酸ネオマイシン(局所薬)は、ICX−TRCとの直接接触が許容された。
【0065】
粘着テープを用いた刺激:
粘着テープ(Gorilla tapeRTMまたはSellotapeRTM)を皮膚に当て、急激に引張ることにより除いた。この過程は、テープが清浄になり、皮膚からもはや更なる物質がまったく除かれないように見えるまで、反復した。
【0066】
皮膚擦傷法を用いた刺激:
Universal Electro−Surgical Tip Cleaner(Universal Hospital Supplies,London,UJ、製品コード:UN58200)を用いて皮膚を剥離し、外部角化細胞層を除去した。剥離は、ピンポイント出血が観察されるまで継続した。
【0067】
結果:
試験した大多数の患者において、表皮刺激は、非表皮刺激対照と比較して、ICX−TRC毛包細胞の注入後の患者に認められる毛髪の本数を増加させることが判明した。毛髪形成の増強を示した代表的患者が、テープ剥がし(1〜3番患者)または皮膚擦傷法(4〜7番患者)による表皮刺激について表1に示してあり、注入から1週、6週、12週、24週、36週および48週後に記録されている(利用できる場合)。
【0068】
【表1】

更に、上記患者について、直径30ミクロンを超える毛髪の本数は、表2に示すように、表皮刺激を用いた方が多くの場合高かった。
【0069】
【表2】

この実施例は、本発明による表皮刺激が、毛包の形成を増強し、生成する毛髪の数および/または太さを増加させることを示している。
【0070】
他の実施形態
本明細書で引用したすべての刊行物および特許出願は、独自の各刊行物または特許出願が、参照により組み込まれていることを具体的に個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0071】
本発明は、その具体的な実施形態に関して説明してきたが、それは更に改変することができ、本出願は、本発明の原理一般に従っており、しかも、本発明が関係し、本明細書に示した必須の特徴に適用し得る、当技術分野内の公知または慣例の実施に入るような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変更、使用または適合を包含することを意図していることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容者の外皮表面に移植した際の毛包細胞により、毛包の形成を増強するための方法であって、該方法は、表皮刺激(ES)によって該受容者の外皮表面から角化細胞を除去するステップ、および該ESの前または後に、該受容者の外皮表面下に該毛包細胞を移植するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記ESが移植の前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ESが移植の後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ESが、前記外皮表面から角化細胞を除去するために、粘着テープを用いるテープ剥がしにより達成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記毛包細胞が、真皮乳頭(DP)細胞を含む、またはそれからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記毛包細胞が、真皮鞘(DS)細胞を含む、またはそれからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記毛包細胞が、外毛根鞘(ORS)細胞を含む、またはそれからなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記毛包細胞が、真皮乳頭(DP)細胞、真皮鞘(DS)細胞および外毛根鞘(ORS)細胞からなる群から選択される毛包細胞の混合物を含む、またはそれからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記毛包細胞が角化細胞を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ESが皮膚擦傷法により達成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ESが化学的表皮剥離により達成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ESが創傷形成により達成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
美容処置である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
医療処置である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記毛包細胞が、制御送達デバイス(例えば、PB600−1反復ディスペンサーを取り付けたHamiltonシリンジなどの、反復ディスペンサーを取り付けたシリンジ)を用いて移植される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
実質的に本明細書に記載するような、受容者の外皮表面に移植した際の毛包細胞により、毛包の形成を増強するための方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540425(P2010−540425A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525430(P2010−525430)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003186
【国際公開番号】WO2009/037474
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(507069346)インターサイテックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】