説明

毛細管動脈疾患治療用医薬組成物

本発明は、麦角誘導体すなわちエルゴリン類の使用に関連し、特にリスリドおよびテルグリドを使用した狭窄性毛細管動脈疾患の予防および治療に関するものである。狭窄性毛細管動脈疾患とは、肺動脈性肺高血圧症、内因性または外因性糸球体硬化症の他、続発性レイノー症候群をいう。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦角誘導体あるいはエルゴリン類の使用に関し、特にリスリドおよびテルグリドを使用した狭窄性毛細管動脈疾患の予防および治療に関する。狭窄性毛細管動脈疾患とは、肺動脈性肺高血圧症、内因性又は外因性糸球体硬化症の他、続発性レイノー症候群又はレイノー現象をいう。
【0002】
狭窄性毛細管動脈疾患は、ヒトのびまん性狭窄性動脈病変の一病態であって、血管壁の再構成により不可逆性狭窄を起こし細動脈の閉塞に至ることがある。機能面では、毛細管圧の上昇や血管抵抗の増加が起こる場合がある。
【0003】
種々の病因により起こる狭窄性毛細管動脈疾患が多様な組織の毛細血管床に認められる。本発明は、毛細管動脈疾患の中でも、細動脈圧の長期上昇をきたす臓器特異的な病変であって、血管抵抗の上昇、血管痙縮の増悪や続発する構造的な閉塞を特徴とする病変に関するものである。このように、本発明で使用する「毛細管動脈疾患」という用語、特に「狭窄性毛細管動脈疾患」は、糸球体硬化症や続発性レイノー症候群および/またはレイノー現象の徴候を意味する。
【0004】
本発明の目的は、麦角誘導体、特にリスリドおよびテルグリドの更なる使用法を提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1の記載内容により達成される。また、従属項、実施例および明細書に、課題を解決するその他の有利な実施態様を示す。
【0006】
本願発明者は、麦角誘導体やエルゴリン類、特にリスリドおよびテルグリドが(狭窄性)毛細管動脈疾患の予防および治療に適していることを発見した。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表される化合物に関するものであって、
【化1】

式中、
R1およびR4は、独立して、−H、−CHO、−COCH3、−COC2H5、−COC3H7、−CO−cyclo-C3H5、−COCH(CH3)2、−COC(CH3)3、−COOH、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC3H7、−COO−cyclo-C3H5、−COOCH(CH3)2、−COOC(CH3)3、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC2H5、−CONHC3H7、−CONH−cyclo-C3H5、−CONH[CH(CH3)2]、−CONH[C(CH3)3]、−CON(CH3)2、−CON(C2H5)2、−CON(C3H7)2、−CON(cyclo-C3H5)2、−CON[CH(CH3)2]2、−CON[C(CH3)3]2、−NH2、−NHCH3、−NHC2H5、−NHC3H7、−NH−cyclo-C3H5、−NHCH(CH3)2、−NHC(CH3)3、−N(CH3)2、−N(C2H5)2、−N(C3H7)2、−N(cyclo-C3H5)2、−N[CH(CH3)2]2、−N[C(CH3)3]2、−SOCH3、−SOC2H5、−SOC3H7、−SO−cyclo-C3H5、−SOCH(CH3)2、−SOC(CH3)3、−SO2CH3、−SO2C2H5、−SO2C3H7、−SO2−cyclo-C3H5、−SO2CH(CH3)2、−SO2C(CH3)3、−SO3H、−SO3CH3、−SO3C2H5、−SO3C3H7、−SO3−cyclo-C3H5、−SO3CH(CH3)2、−SO3C(CH3)3、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CH2-CH2Cl、-CH2-CH2Br、-CH2-CH2I、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、-C(CH3)3、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C5H11、-C6H13、-C7H15、-C8H17、−cyclo-C3H5、-cyclo-C4H7、-cyclo-C5H9、-cyclo-C6H11、-Ph、-CH2-Ph、-CPh3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、−C2H4−CH=CH2、−CH=C(CH3)2、-C≡CH、-C≡C-CH3、または-CH2-C≡CHを表し、
R2およびR3は、独立して-R6、-R7を表し、この基は、-R8から-R43のうちの少なくとも一により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和アルキル基であって;-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-CO-アルキル基であって;-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-NH-CO-アルキル基であって;-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-NH-CO-NH-または-NH-CO-N(ジアルキル基)アルキル基であって;アリール基もしくはシクロアルキル基または二環式もしくは三環式の炭素環化合物であって、-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよく;ヘテロアリール基もしくはヘテロ環式基または二環式もしくは三環式飽和もしくは不飽和ヘテロ環化合物であって、-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよいものを表し、
R5は−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CNまたは−NO2のうちのいずれか一つの残基を表し、
R6からR43は、独立に−H、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OC3H7、−O−cyclo-C3H5、−OCH(CH3)2、−OC(CH3)3、−OC4H9、-OPh、-OCH2-Ph、-OCPh3、−SH、−SCH3、−SC2H5、−SC3H7、−S−cyclo-C3H5、−SCH(CH3)2、−SC(CH3)3、−NO2、−F、−Cl、−Br、−I、−N3、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH3、−COC2H5、−COC3H7、−CO−cyclo-C3H5、−COCH(CH3)2、−COC(CH3)3、−COOH、−COCN、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC3H7、−COO−cyclo-C3H5、−COOCH(CH3)2、−COOC(CH3)3、−OOC−CH3、−OOC−C2H5、−OOC−C3H7、−OOC−cyclo-C3H5、−OOC−CH(CH3)2、−OOC−C(CH3)3、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC2H5、−CONHC3H7、−CONH−cyclo-C3H5、−CONH[CH(CH3)2]、−CONH[C(CH3)3]、−CON(CH3)2、−CON(C2H5)2、−CON(C3H7)2、−CON(cyclo-C3H5)2、−CON[CH(CH3)2]2、−CON[C(CH3)3]2、−NH2、−NHCH3、−NHC2H5、−NHC3H7、−NH−cyclo-C3H5、−NHCH(CH3)2、−NHC(CH3)3、−N(CH3)2、−N(C2H5)2、−N(C3H7)2、−N(cyclo-C3H5)2、−N[CH(CH3)2]2、−N[C(CH3)3]2、−SOCH3、−SOC2H5、−SOC3H7、−SO−cyclo-C3H5、−SOCH(CH3)2、−SOC(CH3)3、−SO2CH3、−SO2C2H5、−SO2C3H7、−SO2−cyclo-C3H5、−SO2CH(CH3)2、−SO2C(CH3)3、−SO3H、−SO3CH3、−SO3C2H5、−SO3C3H7、−SO3−cyclo-C3H5、−SO3CH(CH3)2、−SO3C(CH3)3、−OCF3、−OC2F5、−O−COOCH3、−O−COOC2H5、−O−COOC3H7、−O−COO−cyclo-C3H5、−O−COOCH(CH3)2、−O−COOC(CH3)3、−NH−CO−NH2、−NH−CO−NHCH3、−NH−CO−NHC2H5、−NH−CO−NHC3H7、−NH−CO−NH−cyclo-C3H5、−NH−CO−NH[CH(CH3)2]、−NH−CO−NH[C(CH3)3]、−NH−CO−N(CH3)2、−NH−CO−N(C2H5)2、−NH−CO−N(C3H7)2、−NH−CO−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CO−N[CH(CH3)2]2、−NH−CO−N[C(CH3)3]2、−NH−CS−NH2、−NH−CS−NHCH3、−NH−CS−NHC2H5、−NH−CS−NHC3H7、−NH−CS−NH−cyclo-C3H5、−NH−CS−NH[CH(CH3)2]、−NH−CS−NH[C(CH3)3]、−NH−CS−N(CH3)2、−NH−CS−N(C2H5)2、−NH−CS−N(C3H7)2、−NH−CS−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CS−N[CH(CH3)2]2、−NH−CS−N[C(CH3)3]2、−NH−C(=NH)−NH2、−NH−C(=NH)−NHCH3、−NH−C(=NH)−NHC2H5、−NH−C(=NH)−NHC3H7、−NH−C(=NH)−NH−cyclo-C3H5、−NH−C(=NH)−NH[CH(CH3)2]、−NH−C(=NH)−NH[C(CH3)3]、−NH−C(=NH)−N(CH3)2、−NH−C(=NH)−N(C2H5)2、−NH−C(=NH)−N(C3H7)2、−NH−C(=NH)−N(cyclo-C3H5)2、−NH−C(=NH)−N[CH(CH3)2]2、−NH−C(=NH)−N[C(CH3)3]2、−O−CO−NH2、−O−CO−NHCH3、−O−CO−NHC2H5、−O−CO−NHC3H7、−O−CO−NH−cyclo-C3H5、−O−CO−NH[CH(CH3)2]、−O−CO−NH[C(CH3)3]、−O−CO−N(CH3)2、−O−CO−N(C2H5)2、−O−CO−N(C3H7)2、−O−CO−N(cyclo-C3H5)2、−O−CO−N[CH(CH3)2]2、−O−CO−N[C(CH3)3]2、−O−CO−OCH3、−O−CO−OC2H5、−O−CO−OC3H7、−O−CO−O−cyclo-C3H5、−O−CO−OCH(CH3)2、−O−CO−OC(CH3)3、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CH2-CH2Cl、-CH2-CH2Br、-CH2-CH2I、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、-C(CH3)3、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C5H11、-C6H13、-C7H15、-C8H17、−cyclo-C3H5、-cyclo-C4H7、-cyclo-C5H9、-cyclo-C6H11、-Ph、-CH2-Ph、-CPh3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、−C2H4−CH=CH2、−CH=C(CH3)2、-C≡CH、-C≡C-CH3または-CH2-C≡CHを表し、
Xは単結合または二重結合を表し、
nは1から10までの整数を表す化合物の他、
上述の化合物の塩、光学異性体、光学異性体の混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、水和物、溶媒和物およびラセミ体を使用してなる、狭窄性毛細管動脈疾患、すなわち肺動脈性肺高血圧症、内因性および外因性糸球体硬化症ならびに続発性レイノー症候群を治療、予防する上述の医薬組成物に関する。
【0007】
一般式(I)の化合物は、アルカリであるので、有機酸や無機酸を加えることによって酸付加塩が得られる。化学式(I)の化合物に対して酸付加塩を形成する酸としては、以下の酸があり、すなわち、硫酸、スルホン酸、リン酸、硝酸、亜硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、塩酸、メタン酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸(グリコン酸、デキストロン酸)、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸(ヒドロキシマロン酸、ヒドロキシプロパン二酸)、フマル酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、(o−、p−、m−)トルイル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルファニル酸、カンファースルホン酸、キナ酸(キニン酸)、o−メチルマンデル酸、ベンゼンスルホン酸、ピクリン酸(2,4,6−トリニトロフェノール)、アジピン酸、d−o−トリル酒石酸、メチオニン、トリプトファン、アルギニンなどのアミノ酸、特にグルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸がある。
【0008】
酸基が存在する場合には、塩基付加塩が形成され、その例としてはアルカリ金属塩の他アミン類との塩がある。すなわち、例えば、リジンなどの塩基性アミノ酸によって、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩やマグネシウム塩といったアルカリ金属塩やカルシウム塩、アルキルアミノ塩やアミノ酸塩を生成することができる。
【0009】
一般式(I)には、立体異性体、光学異性体、光学異性体の混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物も含まれるが、以下の式(II)〜(IIE)で示されるキラル化合物が望ましい。
【化2】

更に好ましくは、R3が水素原子である化合物である。更に好ましくは、本発明で示す全ての構造式でR3が式(II)、(IIA)、(IIB)に示すもの、すなわち、R3が平面から上に出ており、R2が平面より下に出ているものである。それゆえに、8−α−エルゴリン類は好ましい。Xが一重結合である場合には、一般式(III)−(IIIE)に示すように、C5位とC10位の水素原子がトランスの位置関係にあることが好ましい。
【化3】

式中、
残基R1〜R43は、上述したとおりである。
【0010】
R1および/またはR4は、水素原子または炭素数が1から8のアルキル基であることが好ましい。R3は、単環式、二環式または三環式ヘテロ環が結合したカルボニル基であることが好ましい。
【0011】
更に、R2は、−NH−CO−NH2
−NH−CO−NHCH3、−NH−CO−NHC2H5、−NH−CO−NHC3H7、−NH−CO−NH−cyclo-C3H5、−NH−CO−NH[CH(CH3)2]、−NH−CO−NH[C(CH3)3]、−NH−CO−N(CH3)2、−NH−CO−N(C2H5)2、−NH−CO−N(C3H7)2、−NH−CO−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CO−N[CH(CH3)2]2、−NH−CO−N[C(CH3)3]2、−NH−CS−NH2、−NH−CS−NHCH3、−NH−CS−NHC2H5、−NH−CS−NHC3H7、−NH−CS−NH−cyclo-C3H5、−NH−CS−NH[CH(CH3)2]、−NH−CS−NH[C(CH3)3]、−NH−CS−N(CH3)2、−NH−CS−N(C2H5)2、−NH−CS−N(C3H7)2、−NH−CS−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CS−N[CH(CH3)2]2、−NH−CS−N[C(CH3)3]2、−NH−C(=NH)−NH2、−NH−C(=NH)−NHCH3、−NH−C(=NH)−NHC2H5、−NH−C(=NH)−NHC3H7、−NH−C(=NH)−NH−cyclo-C3H5、−NH−C(=NH)−NH[CH(CH3)2]、−NH−C(=NH)−NH[C(CH3)3]、−NH−C(=NH)−N(CH3)2、−NH−C(=NH)−N(C2H5)2、−NH−C(=NH)−N(C3H7)2、−NH−C(=NH)−N(cyclo-C3H5)2、−NH−C(=NH)−N[CH(CH3)2]2または−NH−C(=NH)−N[C(CH3)3]2であり、特に−NH−CO−N(CH3)2、−NH−CO−N(C2H5)2、−NH−CO−N(C3H7)2、−NH−CO−N(cyclo-C3H5)2または−NH−CO−N[CH(CH3)2]2であることが好ましい。この場合には、更にR3が水素であることが好ましい。
【0012】
式(IID)および(IIID)において、R*は、残基R6〜R43のうちの一つであって、窒素原子と結合してもよい。特に、R*は、炭素数が1から20の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和アシル基であって、炭素環、ヘテロ環または芳香族環を炭素鎖中に含んでよく、かつ当該炭素鎖は更にR6〜R43の残基の中から選ばれる一以上の基によって置換されてもよい。
【0013】
式(IIE)および(IIIE)のR**は、残基R6〜R43のうちの一つであり、好ましくはアミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基であって、一または複数のアルキル基の炭素数が1から20であり、複数のアルキル基は、炭素環化合物、ヘテロ環化合物または芳香族系を含み、そのアルキル基は直鎖または分岐鎖であってよく、飽和されていても不飽和でもよく、残基R6〜R43のうちの一以上により置換されてよい。特に好ましくは、R**は、-CH2F、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CH2-CH2Cl、-CH2-CH2Br、-CH2-CH2I、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、-C(CH3)3、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C5H11、-C6H13、-C7H15、-C8H17、−cyclo-C3H5、-cyclo-C4H7、-cyclo-C5H9、-cyclo-C6H11、-Ph、-CH2-Ph、-CPh3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、−C2H4−CH=CH2、−CH=C(CH3)2、-C≡CH、-C≡C-CH3および-CH2-C≡CHである。
【0014】
特に好ましくは、次の式(I)の化合物であり、8−α−エルゴリン類、8−α−1,6−ジメチルエルゴリン類、8−α−1−メチルエルゴリン類、8−α−6−メチルエルゴリン類、8−α−10−メトキシエルゴリン類、リスリド(CAS番号:18016−80−3、3−(9,10−ジデヒドロ−6−メチルエルゴリン−8−α−イル)−1,1−ジエチルウレア)、d−イソリセルグ酸、d−イソ李セルグ酸アミド、d−イソリセルグ酸ジエチルアミド、プロテルグリドおよびテルグリド((+)−1,1−ジエチル−3−(6−メチル−8α−エルゴリニル)−ウレア)である。特に好ましくは、テルグリド(トランス−ジヒドロリスリド)およびリスリドである。
【0015】
上述の物質および一般式(I)〜(IIIE)の化合物は、特に肺動脈性肺高血圧症、内因性および外因性糸球体硬化症あるいは続発性レイノー現象およびレイノー症候群の予防や治療に使用することに適している。
【0016】
一般式(I)で示す化合物が狭窄性毛細管動脈疾患の予防および治療に適していることは、驚くべきことであって、当業者は先行技術に基づいてこのような化合物に想到することはなかった。すなわち、これらの症状は、一般式(I)の化合物や8−α−エルゴリン類の副作用とみなされていたからである。例えば、シェーリング社は、テルグリドとして8―α−エルゴリンを含む医薬品テルロン(登録商標)の添付文書において、例えばレイノー現象やレイノー症候群が起こりうることを述べている。更に文献からは、8―α―エルゴリンを含む麦角アルカロイドには、線維性病変の原因となるおそれのあることが知られている。当業者には、レイノー現象、血管痙攣、複視、後腹膜線維症、胸水および心臓弁線維症が知られている。これらの否定的な所見によって、当業者は式(I)の化合物を上記症状の予防や治療に使用することは全く想到しえなかった。
【0017】
このように、一般式(I)に示す化合物、特にリスリドやテルグリドを肺動脈性肺高血圧症、内因性または外因性糸球体硬化症および続発性レイノー症候群という疾患に特徴付けられる狭窄性毛細管動脈疾患の予防や治療に使用することは、当業者にとっては、想到しえないことであった。特に、レイノー現象またはレイノー症候群および肺動脈性肺高血圧症の症状は、8―α―エルゴリン類の有効成分による副作用と明示されているため、当業者がこれらの症状を考えることは全くなかったと言ってよい。特に、このような副作用が8−α―エルゴリン類の有効成分からなる群に含まれる医薬品の添付文書に記載されているので、当業者であれば、有効成分に関して徹底的な臨床試験が実施されていると考えてしまう。そのため、当業者が医薬品の添付文書に記載のある情報に対して疑いを抱く理由はない。
【0018】
体位性高血圧症は、リスリドおよびテルグリドを含むドーパミン作動性麦角誘導体による副作用であることが知られている。エルゴリン類や麦角誘導体を投与することによって、悪心や吐き気といった重度の消化器系副作用が生じることから、治療の有益性に対して部分的に異議を唱える声が原則的にあった。
【0019】
それゆえに、テルグリドやリスリドに治療効果があって、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、内因性または外因性糸球体硬化症および続発性レイノー現象やレイノー症候群の疾患に対して当然想定される禁忌ではないと発見されたことは、更に驚くべきことであった。これらの疾患を本発明では、狭窄性毛細管動脈疾患と総称する。
【0020】
高血圧症は、血圧が高い状態を表す医学用語である。「血圧」とは、血液が動脈血管内壁に沿って循環する際に生じる圧力をいう。血圧は、心拍と心拍との間で心臓が収縮、弛緩を繰り返す際に生じる動脈圧の二種類の測定値(収縮期血圧および拡張期血圧)によって表されるのが一般的である。
【0021】
血圧には、日中変動があり、加齢と共に増加するのが通常である。また、身体運動も血圧に影響を及ぼす。身体的および心理的ストレスによって、血圧は増加する。高血圧症患者は、安静時においても血圧が高い(ほとんどの場合140/90mmHgを越える)。未治療高血圧症では、心臓や動脈のストレスが増大して、組織に障害が生じることがある。その結果、リスク因子となって、心臓障害、心梗塞(心筋梗塞)や心臓発作を起こす場合がある。
【0022】
対照的に、肺高血圧症や糸球硬化症では、血管反応性が局所的に変化することにより、局所的血圧上昇が起こるものの、全身血圧の上昇は検知されない例もある。
【0023】
例えば、肺高血圧症の場合には、肺循環系に高血圧が認められる。対照的に、上腕その他の身体部位で測定した血圧では、正常であったり低かったりする。このように肺高血圧症は、(一般的な)高血圧症と大きく異なっている。肺高血圧症は、一般的に心臓および/または肺の疾患が原因である。肺高血圧症は、肺動脈の血圧が正常全身血圧を超える場合を意味し、血管反応性や細い動脈すなわち小動脈の構造が局所的に変化することによる。その結果心臓右側にストレスが発生する。肺高血圧症は、重篤な障害である。わずかな運動をしただけで息切れが生じたり、疲労感を覚えたり、意識が遠くなったり、胸部に痛みを感じたりする症状が現れる。このような症状によって、運動や活動が制限されるのが通例である。
【0024】
高血圧症(本態性高血圧症または全身性高血圧症とも呼ばれる。)や肺高血圧症の治療に関して病因や対処方法が異なるため、両疾患の相違は明らかである。カプトプリルなどのACE阻害剤、フロセミドなどの利尿剤、ロサルタンなどのアンジオテンシンII受容体拮抗剤、プラゾシンやプロパノロールなどのαおよびβ遮断剤、ミノキシジルなどの直接血管に作用する血管拡張剤やクロニジンなどの中枢神経系に作用する薬剤が高血圧症の治療に用いられているが、これらの有効成分は、いずれも肺高血圧症の治療には適しておらず、その目的で使用されてもいない。
【0025】
それゆえ、リスリドやテルグリドが肺動脈性肺高血圧症に及ぼす効果によって高血圧症に対して効果が生じることはなく、その逆も成り立たない。
【0026】
更に、本発明は、一般式(I)で表される少なくとも一の化合物あるいはその塩を用い、特にリスリドやテルグリドを用いてなる医薬組成物に関するものである。
【0027】
この医薬組成物には、一般式(I)で表される少なくとも一の化合物、特にリスリドやテルグリドが一回の投与量あたり有効成分として0.1から10mg含まれている他、少なくとも一の薬理学的に妥当な基剤、助剤または溶媒が含まれている。
この医薬組成物は、好ましくは錠剤、多層錠剤、丸薬、カプセル剤、マイクロカプセル剤、徐放性経口製剤、経皮システム、座薬、ミクロ製剤、ナノ製剤、リポソーム製剤、液剤、点鼻剤、点鼻噴霧剤、エアロゾル、アンプル剤、水溶液、エマルジョン、分散剤、粉末剤、粉末吸入剤、結晶性ミクロ製剤や噴霧吸入剤により、経口投与、舌下投与、非経口投与、皮膚投与、頬側投与、経皮投与、吸入投与や経鼻投与を行う。
【0028】
薬理学的に妥当な基剤には、乳糖、デンプン、ソルビトール、ショ糖、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、滑石粉、マンニトール、エチルアルコール等が使用できる。粉末剤や錠剤は、このような基剤を5〜95%含んでよい。
【0029】
更に、デンプン、ゼラチン、天然糖、アカシアガムやグアーガムなどの天然ゴムや合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールおよびろうを粘結剤として使用できる。ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を滑沢剤として用いることができる。
【0030】
更に、崩壊剤、着色剤、調味剤および/または粘結剤を前記医薬組成物に添加することができる。
【0031】
液剤には、水溶液、懸濁液、噴霧剤、エマルジョンが含まれる。例えば、水を基材にした注射液や注射剤に水―プロピレングリコールを用いることができる。
【0032】
低融点のろう、脂肪酸エステルやグリセリドは、座剤の調製用に好ましい。
【0033】
カプセルは、例えばメチルセルロース、ポリビニルアルコールや変性ゼラチンや変性デンプンから製造される。
【0034】
デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、イナゴマメガム、カラヤガム、トラガカントおよび寒天などの天然および合成ゴムやメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体の他アルギン酸塩、アルミナやベントナイトを崩壊剤として用いることができる。これらの成分量は、2〜30%の範囲で使用できる。
【0035】
糖類、穀物デンプン、米デンプンやジャガイモデンプン、アカシアガムなどの天然ゴム、ゼラチン、トラガカント、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アンモニウムカルシウムアルギン酸(ammonium calcium alginate)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンの他ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの無機化合物を粘結剤として添加することができる。粘結剤の成分量は、1〜30%の範囲で添加できる。
【0036】
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウムなどのステアリン酸塩、ステアリン酸、高融点のろうの他、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの水溶性滑沢剤やロイシンなどのアミノ酸を滑沢剤として用いることができる。これらの滑沢剤の成分量は、0.05〜15%の範囲で使用できる。
皮下投与製剤や経皮システムは、より好ましい剤型である。このような皮下投与製剤や経皮システムは、好ましくは基剤を含み、特に生分解性ポリマー基剤であって式(I)で示される化合物を少なくとも一つ、好ましくはリスリドかテルグリドを含浸したものを含むことが望ましい。この基剤の製造には、生分解性ポリマーを使用することが好ましい。
【0037】
生分解性ポリマーの例としては、以下のものを挙げることができる。ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグルコリドの共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート)、ポリ(1,4―ジオキサン−2,3―ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ無水マレイン酸などのポリ酸無水物、ポリ(ヒドロキシメタアクリレート)、フィブリン、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(カプロラクトンジメチルアクリレート)、ポリ(βマレイン酸)、ポリ(カプロラクトン−ブチルアクリレート)、オリゴカプロラクトンジオールとオリゴジオキサンジオールなどからなるマルチブロックポリマー、PEGやポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエーテルエステルマルチブロックポリマーがある。その他、ポリ(ピバロラクトン)、ポリグリコール酸トリメチルカルボネートエステル、ポリカプロラクトングリコシド、ポリ(γ―エチルグルタメート)、ポリ(DTH−イミノカルボネート)、ポリ(DTE−コ−DTカルボネート)、ポリ(ビスフェノール−A―イミノカルボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカルボネート、ポリトリメチルカルボネート、ポリイミノカルボネート、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[(p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリ無水物、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、骨格中にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステル、およびそれらの共重合体のようなポリエーテルエステル、カラギーナン、フィブリノーゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質を基材とするポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、改変ゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、改変、未改変のフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチル硫酸、アルブミン、さらにヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、およびPEGとポリプロピレングリコールとの共重合体、アラビアゴム、グアーガム、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、上記の物質の改変体および共重合体および/または混合物が適している。
【0038】
デンプン、変性デンプン、セルロース、グリコサミノグリカンおよびコラーゲンなどの生物由来ポリマーが好ましい他、シリコン、シリコンエラストマー、ポリジメチルシロキサン、二酸化ケイ素を含むポリジメチルシロキサン、ポリアルキレンオキシドを含むポリジメチルシロキサン(ゲレスト(登録商標))、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリエチレングリコール、ポリラクチドとポリグリコリドの共重合体、ポリ酸無水物、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、セルロースエチルエーテル、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタンおよびスチレンとブタジエンの共重合体などの半合成および合成ポリマーが好ましい。
【0039】
更にこのような経皮システムは、一般式(I)で表される少なくとも一の化合物を含むミクロ球状粒子、ナノ粒子やミクロ結晶により構成されてよい。更にこのような粒子をゲルに導入し、その形状で施用することができる。
【0040】
更に、ヒドロキシアパタイトなどの生体適合性があるセラミックのミクロ粒子も使用可能であって、式(I)で表される化合物を粒子の表面上に付着させたり内部に封入して使用する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】高濃度セロトニン存在下で、成長因子であるセロトニンによる平滑筋細胞増殖を示す図である。リスリドやテルグリドなどの一般式(I)で表される化合物が存在すると、この細胞増殖は、これらの物質の(5−HT2受容体に対する)拮抗作用により大幅に低下する。このインビトロモデルから、セロトニンの局所性あるいは全身性分泌増加が起こる条件下であっても、治癒過程において上記化合物により血管の平滑筋細胞の過剰増殖を抑制できることが分かる。
【図2】リスリドの化学構造式である。
【図3】テルグリドの化学構造式である。
【図4】セロトニンやテルグリドが肺動脈由来平滑筋細胞のCol1A2遺伝子の発現に対して及ぼす作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
抗増殖性作用
6ウェルプレートを使用して、ヒト肺平滑筋細胞(PromoCell)をPromoCell培地で製造メーカーの指示に従いコンフルーエンスになるまで培養した。それから肺平滑筋細胞をウェル当たりの細胞密度が5×10個となるようにPromoCell培地を入れた24ウェルプレートに播種した。細胞の付着が起こった後、培地を交換し、0.2%ウシ胎児血清を含む培地で48時間培養して、成長を停止した。
【0043】
被験物質の抗増殖性作用を調べるため、細胞に対して最初に有効成分を10μmol/lでプレ培養しておいた。セロトニン(10−8mol/l)により、細胞成長を刺激した。細胞増殖度を測定するため、[3H]チミジン(アマシャム社)を培養液に加えて、24時間培養した。細胞を氷冷したリン酸緩衝生理食塩水で2回培養した後、氷冷した10%トリクロロ酢酸により4℃で30分間培養した。その後細胞を0.1モルの水酸化ナトリウム水溶液(0.5ml/ウェル)に溶解した。酢酸で中和後、液体シンチレーション計測により[3H]チミジンの取り込みを測定した。測定は、3個のサンプルを用いて行った。図1には、それぞれの場合の平均値を示す。
【実施例2】
【0044】
テルグリド経口製剤の調製
微粉化したテルグリド25.0gを一例として4035.0gの乳糖、1800.0gの微結晶性セルロースと120.0gのクロスカルメロースナトリウムに加え、回転混合装置により162rpmで5分間混合した。補助成分は、あらかじめふるいにかけておいた。この予備混合物をメッシュサイズ0.8mmのふるいにかけた。ステアリン酸マグネシウム20.0gを加えて、更に1分間混合した。このようにして得られた打錠用粉体を適当な打錠機(ロータリー式打錠機など)により打錠し、直径7mmで重量120mgの錠剤を50,000個(理論値)製造した。この錠剤は、一錠当たりのテルグリド用量が0.5mgに相当する。このようにして製造した錠剤は、水中に入れると即座に有効成分を放出し、最長でも60分後までにはほぼ完全に放出が終了している。
【実施例3】
【0045】
徐放性リスリド経口製剤の調製
微粉化したマレイン酸水素リスリド2.0gを一例として750.0gのヒドロキシエチルセルロース(Tylose(登録商標)H)と243.0gの微結晶性セルロースとに加え、回転混合装置により180rpmで5分間混合した。補助成分は、あらかじめふるいにかけておいた。この予備混合物をメッシュサイズ0.8mmのふるいにかけた。ステアリン酸マグネシウム5.0gを加えて、更に1分間混合した。このようにして得られた打錠用粉体を適当な打錠機(ロータリー式打錠機など)により打錠し、直径6mmで重量100mgの錠剤を10,000個(理論値)製造した。この錠剤は、一錠当たりのマレイン酸水素リスリド用量が0.2mgに相当する。このようにして製造した錠剤は、水中に入れると徐々に有効成分を放出し、ほぼ2時間後で製剤から用量の60〜70%が放出される。
【実施例4】
【0046】
溶解後に注射用剤として使用するマレイン酸水素リスリド滅菌凍結乾燥剤の調製
マレイン酸水素リスリド2.0gを乳糖一水和物20.0g、クエン酸一水和物0.4gおよびクエン酸ナトリウム二水和物1.0gとともに976.6gの注射用精製水に溶解した。得られた無色から淡黄色の水溶液は、pHが4.5から5.4である。この水溶液を先ずメンブレンフィルターによりろ過し、次に別のメンブレンフィルター(0.2μm)により無菌状態でろ過した。このようにして得られた水溶液を充填容量が6mlの滅菌バイアルに1.0gずつ充填した。バイアルには、後に続く凍結乾燥工程に適したゴム製の蓋をして、凍結乾燥器で−40℃から−50℃で凍結した。続いて乾燥工程または後乾燥工程を真空で行い、乾燥したケーキ状物質が得られた。無菌条件でバイアルに蓋をして、巻き締めを行った。このようにして、凍結乾燥したマレイン酸水素リスリドが2mg入ったバイアルを1000個(理論値)製造した。凍結乾燥製剤は、滅菌した生理食塩水に溶解することで再構成でき、注射用または点滴用滅菌溶液としてすぐに使用可能である。
【実施例5】
【0047】
テルグリド経皮施用マトリックス型貼付剤の調製
テルグリド2.5gを2.13gのアセトンと51.54gのアルカリ性ブチルメタクリル酸共重合体の水溶液(Eudragit100水溶液)に加える。5.0gのポリビニルピロリドン(ポビドン25)、2.5gのプロピレングリコール、5.0gのN、N−ジメチルアミノ酢酸ドデシル(あるいは、5.0gの1−ドデカノール)、1.0gのフォーラルE105および0.65gの酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソールなど)を水溶液に加える。このようにして調製したコーティング剤水溶液を、コーティング装置により適当な加工条件下でポリエチレンのポリマーシート上に繰り返し塗布し、乾燥して基準重量が50mg/10cm2(±5%)のコート被膜を得る。片面をシリコン化したポリマーシート上に、以上の方法で製造した粘着性マトリックスを積層し、更にパンチカットによって施用に適した大きさ(20cm2など)に切断して貼付剤とし、アルミサッシェに入れて包装した。このようにして製造したテルグリド貼付剤を毛が生えていない通常の状態の皮膚に施用すると、0.1から0.5μg/cm2/時の速度で、数日間にわたって連続的に有効成分を放出する。
【実施例6】
【0048】
リスリド経皮施用膜型貼付剤の調製
微細孔ポリエチレン膜(Solupor(登録商標)10P05A)を制御膜とし(あるいはエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、Cotran(登録商標)3M 9728)を代替品とする。)、実験室用コーティング装置を用いて皮膚適合性があるシリコン接着剤(BioPSA(登録商標)7− 4202、あるいは代替品としてポリイソブチレン接着剤であるオッパノール(登録商標))を塗布し、乾燥させて基準重量をおよそ10〜25mg/cm2とする。その後片面をシリコン化した剥離ライナー(ポリエチレン)で被覆する。
【0049】
適当な密封装置を用いて、上記の方法で製造した積層物に対して、小さな開口部を除き熱溶着ポリエチレンで環状に密封し、パンチした。適当な注入器により、1%リスリド2−プロパノール溶液約0.5ml、ヒドロキシプロピルセルロース(クルーセル(登録商標)LF)およびトコフェノールを開口部から窪み部分に注入した後完全に封印した。
【0050】
成分が平衡化した後に、剥離ライナーを剥がして、膜型貼付剤を毛が生えていない通常の状態の皮膚に貼付すると、リスリドを一定の速度で定常的に放出することができる。用量は、貼付剤の大きさを変えることで調節可能である。
【実施例7】
【0051】
テルグリド皮下投与用滅菌製剤の調製
微粉化テルグリド50gをポリジメチルシロキサン50gと均一に混合し、標準的な方法、好ましくは押出成形によりひも状のコアマトリックスとする。このひも状成形物を30mmの大きさに切り分ける。寸法が同一で有効成分を含まないコア押出成形物も上記の方法により製造する。第二段階として、市販の二酸化ケイ素を含むポリジメチルシロキサンあるいは、例えばプラチナ触媒存在下で架橋したポリアルキレンオキシドを含むポリジメチルシロキサン(ゲレスト(登録商標))により、肉厚が0.2mmの管状膜を製造する。膜を長さ60mmに切断し、シクロヘキサン中で膨らませる。次に有効成分含有コアマトリックスを挿入し、有効成分非含有押出成形物を管状膜の両側から挿入し、例えば有効成分含有コアの両側と有効成分非含有押出成形物との間におよそ1〜3mmの空気の隙間ができるようにする。それからシクロヘキサンを蒸発させた後、この製剤を長さが50mmとなるように切断すると、製剤の両側に有効成分非含有コア素材で蓋をした形状となる。この製剤を標準的な方法(エチレンオキシド、H)によりガス滅菌する。施用部位における製剤の位置は、含有する空気を超音波により検知することによっていつでも確認可能である。
【実施例8】
【0052】
肺高血圧症
実験の説明
モノクロタリン(60mg/kg、シグマ)を実験当日ラットに単回投与した。投与用にモノクロタリンを0.5モルの塩酸に溶解し、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.4に調製した。この水溶液を用量60mg/kgでオスのスプレーグ・ドーリーラットに単回皮下投与した。対照ラットには、同量の等張生理食塩水を投与した。
【0053】
実験開始から14〜28日目に、6匹のラットからなる群に対して食道管により、リスリド0.25mg/kgまたはテルグリド2.5mg/kgを連日投与した。これらの群は、第1日目にモノクロタリン処理したラットである。本例における用量は、遊離塩基を基準に定めている。使用した被験物質は、水素マレアート塩または遊離塩基であった。少量のアスコルビン酸を含む蒸留水に被験物質を加えて、食道管により容量2mLを朝夕投与した。対照ラットには、同量の水を投与した。
【0054】
実験第28日目には、被験物質の最終投与から2時間後にペントバルビタールによりラットに全身麻酔を施した。次にラットに気管開口術を行って、一回呼吸量を10ml/kgとし60回/秒の頻度で人工換気した(SAR830A/P、IITC)。麻酔維持は、イソフルランの吸入により行った。
【0055】
平均動脈圧および右心室収縮期血圧を測定した。全身動脈圧は、ミラーカテーテルを用いて左頸動脈で測定した。血圧センサー付きミラーカテーテル(ミラーインスツルメンツ社、型番SPR−534)を右頸静脈に挿入し、心臓の右心室に到達するまで押し上げ、右室収縮期圧(RVSP)の測定に使用した。信号は、HSEカプラーシリーズ型番500により増幅し、記録装置に送って評価を行った。
【0056】
血圧測定を終了後、ラットに生理食塩水の潅流を行った。右肺を摘出し、冷凍保存後処理して、コラーゲン含有量を測定した。このためには、ベルク法により(Meths Enzymol 82, 372 (1982))先ず組織を均質化し、分析した。最初にサンプルを116℃の6モル塩酸で16時間加水分解した。ヒドロキシプロリンを酸化してピロールとした後、p−ジメチルアミノベンズアルデヒドにより錯体を形成した。得られた呈色錯体に対して560nmで光度測定を行い、検量曲線によりサンプル中のヒドロキシプロリン含有量を決定した。結果は、肺組織中のタンパク質1g当たりのμg量で表示した。
【0057】
結果
実験第15〜28日目におけるリスリドまたはテルグリド治療が右室収縮期圧(RVPsys)および全身動脈圧(SAP)に及ぼす影響
【0058】
【表1】

結果は、平均±SEM(N=6)。
【0059】
実験第15〜28日目におけるリスリド及びテルグリド治療が肺のヒドロキシプロリン量に及ぼす影響
【0060】
【表2】

結果は、平均±SEM(N=6)。
【0061】
実験結果の評価
肺内皮の損傷は、結合組織の過剰増殖と肺高血圧症の発症を招くが、ラットではモノクロタリン投与により誘発される。コラーゲンの蓄積は、肺組織中のヒドロキシプロリン含有量や右室収縮期圧の上昇により測定されるが、このような構造的、機能的病変を反映する。リスリドやテルグリドによる治療効果をこの肺高血圧モデルで調べた。実験条件下では、モノクロタリン処置の時点では、治療は開始していない。すなわち、治療を開始したのは、損傷が発生した時点ではなく、14日後であった。この時点で血管における顕著な変化と血圧上昇が起こることが文献から知られている。リスリドまたはテルグリドによる治療により、右心室圧上昇が低下するが、これは、治療的に望ましい作用という意味において肺高血圧症に対し間接的な効果を及ぼしている。
【0062】
構造的に相関性がある因子として、モノクロタリンにより上昇したヒドロキシプロリン含有量の低下が観察されたが、これは、両物質を用いた治療による「逆リモデリング」としての意味がある。この確立された動物モデルにおいて、リスリドとテルグリドには、肺高血圧症患者に対する効果的な治療薬としての作用が認められた。
【0063】
上述のリスリドおよびテルグリドを用いた実験例により、エルゴリン類を肺高血圧症の治療に使用できることが示された。
【実施例9】
【0064】
肺高血圧症
実験の説明
モノクロタリン(60mg/kg、シグマ)を実験当日ラットに単回投与した。投与用にモノクロタリンを0.5モルの塩酸に溶解し、0.5モルの水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.4に調製した。この水溶液を用量60mg/kgでオスのスプレーグ・ドーリーラットに単回皮下投与した。対照ラットには、同量の等張生理食塩水を投与した。
【0065】
肺動脈性肺高血圧症の誘発
実験第1〜28日目に、1.2mg/kgのテルグリドを4匹のラットからなる群に対して1日2回腹腔内投与した。各群は、第1日目にモノクロタリン処置をしたラットである。少量のアスコルビン酸を含む蒸留水にテルグリドを加えて、食道管により容量2mLを朝夕に投与した。対照ラットには、同量の生理食塩水を投与した。
【0066】
実験第28日目には、被験物質の最終投与から2時間後にペントバルビタールによりラットに全身麻酔を施した。次にラットに気管開口術を行って、一回呼吸量を10ml/kgとし60回/秒の頻度で人工換気した(SAR830A/P、IITC)。麻酔維持は、イソフルランの吸入により行った。
【0067】
右室収縮期圧(RVSP)およびSAP(全身動脈圧)の測定
平均動脈圧および右心室収縮期血圧を測定した。全身動脈圧は、ミラーカテーテルを用いて左頸動脈で測定した。血圧センサー付きミラーカテーテル(ミラーインスツルメンツ社、型番SPR−534)を右頸静脈に挿入し、心臓の右心室に到達するまで押し上げ、右室収縮期圧(RVSP)の測定に使用した。信号は、HSEカプラーシリーズ型番500により増幅し、記録装置に送って評価を行った。
【0068】
右室肥大の測定
血圧測定を終了後、ラットに生理食塩水の潅流を行った。心臓を摘出し、各心臓の右室の他隔壁や左室を切開しサンプルを調製した。組織標本を冷凍保存した後、乾燥重量を測定した。各ラットに対して、左室と隔壁の重量に対する右室重量の比(RV/LV+S)を測定し、右室肥大の指標とした。
【0069】
肺毛細管動脈の筋化測定
肺を摘出し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。パラフィン切片を採取し、標準プロトコールに従い免疫組織化学的染色による二重染色を行った。血管の平滑筋細胞はアクチン抗体により染色し、内皮細胞はフォンビルブラント因子に対する抗体により染色した。評価には、直径が50μm以下の細葉内動脈80本以上を用いた。血管は、平滑筋細胞を有する血管の横断面のライニング度合いに応じて3区分に分けた。ライニングが20%以下のものを非筋化血管、ライニングが20%から70%未満のものを部分的筋化血管、ライニングが70%を越えるものを完全筋化血管とした。
【0070】
結果
a)実験第1〜28日目におけるテルグリド治療が右室収縮期圧(RVSP)および全身動脈圧(SAP)に及ぼす影響
【0071】
【表3】

結果は、平均±SD(N=4)。
【0072】
b)左室と隔壁の重量に対する右室重量の比で測定した、実験第1〜28日目におけるテルグリド治療が右室肥大に及ぼす影響
【0073】
【表4】

結果は、平均±SD(N=4)。
【0074】
c)実験第1〜28日目におけるテルグリド治療が肺の毛細管動脈(直径20〜50μm)の筋化に及ぼす影響
【0075】
【表5】

結果は、平均±SD(N=4)。
【0076】
実験結果の評価
肺内皮の損傷は、肺毛細管動脈平滑筋細胞の過剰増殖と肺高血圧症の発症を招くが、ラットではモノクロタリン投与により誘発される。全身血圧に変化がないにもかかわらず右室収縮期圧が上昇するとともに右室肥大が見られることは、このような構造的、機能的病変を反映している。
【0077】
テルグリドによる治療効果をこの肺高血圧モデルで調べた。実験条件下では、モノクロタリン投与後すぐに治療を開始した。テルグリドによる治療の間、肺高血圧症の間接的な指標である右心室圧上昇は、ほとんど常に抑制されていた。実験条件下では、全身血圧の変化は、検出されなかった。
モノクロタリン誘発性右室肥大は、治療中完全に抑制されていた。治療効果として、毛細管動脈血管におけるモノクロタリン誘発性筋化の低下が治療中認められた。この確立された動物モデルにおいて、機能的、構造的評価項目により、テルグリドには、肺高血圧症患者に対する効果的な治療薬としての作用が認められた。
【実施例10】
【0078】
肺動脈平滑筋細胞におけるCol1A2遺伝子の発現阻害
セロトニンによるCol A2遺伝子発現の刺激作用やテルグリドによる抑制作用を本実験により調べた。実験は、ヒト肺平滑筋細胞(Cambrex)で行った。製造メーカーの規定に従い、細胞をCC−3182培地(Cambrex)で培養した。セロトニン除去した5%ウシ胎仔血清(FCS)(HyClone)を活性炭素で前処理した後に添加した。
【0079】
融合性細胞ローン(lawn)が得られた後、その細胞を更に2日間5%FCSで培養した。実験には、0.5%FCSを加えた培地を用いた。セロトニン(100nmol/L)および/またはテルグリド(100nmol/L)を加えた後、更に48時間細胞を培養した。インキュベーションは、3個のサンプルを用いて行った。
【0080】
RNeasyキット(Qiagen)を製造メーカーの規定に従って使用し、全RNAを得た。オリゴdTプライマー(ロシュ)を用いてcDNAに逆転写した。
標準プロトコールに従いABI Prism 7700 Sequence Detection System(アプライドバイオシステムズ、アメリカ合衆国カリフォルニア州フォスター市)を用いたSYBR緑色リアルタイムPCRにより、遺伝子発現を定量した。ヒトCol1 A2に特異的なPCR分析用プライマーの組み合わせとして、フォワードプライマーには5’-GGTCAGCACCA-CCGATGTC-3’を、リバースプライマーには5’-CACGCCTG-CCCTTCCTT-3’を用いた。
【0081】
個々のサンプルの全RNA量の相違を標準化するため、構成的に発現する酵素であるグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現量に対してCol1 A2遺伝子の発現量を正規化した。そのため、フォワードプライマーには5’-CAATGC-CTCCTGCACCACCAAC-3’を、リバースプライマーには5’-AGGGGCCATCCACAGTCTTCT-3’を用いた。
個々のサンプルにおけるCol1 A2およびGAPDHの発現状況は、標準的な評価方法により測定し、Col1 A2/GAPDH比として定量化した。
結果は、箱ひげ図により表示した。
【0082】
図から明らかなように、100nmol/Lのセロトニン存在下では対照バッチと比較して、ヒト肺動脈由来平滑筋細胞中のCol1 A2発現は有意に増加した。 この結果から、セロトニンには賦活作用のあることが示される。コラーゲンの過剰な沈着は、平滑筋細胞の増殖とあいまって、肺動脈性肺高血圧症の病因となる。
【0083】
Col1 A2の発現は、テルグリドの存在により阻害され、この阻害作用は、セロトニンの存在により一層明確にある。それゆえ、テルグリドには肺高血圧症患者の治療に関し効果があることは、ここで述べた効能により説明することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化学物質であって、

式中、
R1およびR4は、独立して、−H、−CHO、−COCH3、−COC2H5、−COC3H7、−CO−cyclo-C3H5、−COCH(CH3)2、−COC(CH3)3、−COOH、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC3H7、−COO−cyclo-C3H5、−COOCH(CH3)2、−COOC(CH3)3、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC2H5、−CONHC3H7、−CONH−cyclo-C3H5、−CONH[CH(CH3)2]、−CONH[C(CH3)3]、−CON(CH3)2、−CON(C2H5)2、−CON(C3H7)2、−CON(cyclo-C3H5)2、−CON[CH(CH3)2]2、−CON[C(CH3)3]2、−NH2、−NHCH3、−NHC2H5、−NHC3H7、−NH−cyclo-C3H5、−NHCH(CH3)2、−NHC(CH3)3、−N(CH3)2、−N(C2H5)2、−N(C3H7)2、−N(cyclo-C3H5)2、−N[CH(CH3)2]2、−N[C(CH3)3]2、−SOCH3、−SOC2H5、−SOC3H7、−SO−cyclo-C3H5、−SOCH(CH3)2、−SOC(CH3)3、−SO2CH3、−SO2C2H5、−SO2C3H7、−SO2−cyclo-C3H5、−SO2CH(CH3)2、−SO2C(CH3)3、−SO3H、−SO3CH3、−SO3C2H5、−SO3C3H7、−SO3−cyclo-C3H5、−SO3CH(CH3)2、−SO3C(CH3)3、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CH2-CH2Cl、-CH2-CH2Br、-CH2-CH2I、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、-C(CH3)3、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C5H11、-C6H13、-C7H15、-C8H17、−cyclo-C3H5、-cyclo-C4H7、-cyclo-C5H9、-cyclo-C6H11、-Ph、-CH2-Ph、-CPh3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、−C2H4−CH=CH2、−CH=C(CH3)2、-C≡CH、-C≡C-CH3、または
-CH2-C≡CHを表し、
2およびR3は、独立して-R6、-R7を表し、この基は、-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和アルキル基;
-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-CO-アルキル基;
-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-NH-CO-アルキル基;
-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよい、直鎖または分岐鎖の炭素数が1〜10の飽和または不飽和-NH-CO-NH-または-NH-CO-N(ジアルキル基)アルキル基;
アリール基もしくはシクロアルキル基または二環式もしくは三環式の炭素環化合物であって、-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよく、
ヘテロアリール基もしくはヘテロ環式基または二環式もしくは三環式飽和もしくは不飽和ヘテロ環化合物であって、-R8から-R43のうちの一以上により置換されてもよいものを表し、
R5は−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CNまたは−NO2のうちのいずれか一つの残基を表し、
R6からR43は、独立して−H、−OH、−OCH3、−OC2H5、−OC3H7、−O−cyclo-C3H5、−OCH(CH3)2、−OC(CH3)3、−OC4H9、-OPh、-OCH2-Ph、-OCPh3、−SH、−SCH3、−SC2H5、−SC3H7、−S−cyclo-C3H5、−SCH(CH3)2、−SC(CH3)3、−NO2、−F、−Cl、−Br、−I、−N3、−CN、−OCN、−NCO、−SCN、−NCS、−CHO、−COCH3、−COC2H5、−COC3H7、−CO−cyclo-C3H5、−COCH(CH3)2、−COC(CH3)3、−COOH、−COCN、−COOCH3、−COOC2H5、−COOC3H7、−COO−cyclo-C3H5、−COOCH(CH3)2、−COOC(CH3)3、−OOC−CH3、−OOC−C2H5、−OOC−C3H7、−OOC−cyclo-C3H5、−OOC−CH(CH3)2、−OOC−C(CH3)3、−CONH2、−CONHCH3、−CONHC2H5、−CONHC3H7、−CONH−cyclo-C3H5、−CONH[CH(CH3)2]、−CONH[C(CH3)3]、−CON(CH3)2、−CON(C2H5)2、−CON(C3H7)2、−CON(cyclo-C3H5)2、−CON[CH(CH3)2]2、−CON[C(CH3)3]2、−NH2、−NHCH3、−NHC2H5、−NHC3H7、−NH−cyclo-C3H5、−NHCH(CH3)2、−NHC(CH3)3、−N(CH3)2、−N(C2H5)2、−N(C3H7)2、−N(cyclo-C3H5)2、−N[CH(CH3)2]2、−N[C(CH3)3]2、−SOCH3、−SOC2H5、−SOC3H7、−SO−cyclo-C3H5、−SOCH(CH3)2、−SOC(CH3)3、−SO2CH3、−SO2C2H5、−SO2C3H7、−SO2−cyclo-C3H5、−SO2CH(CH3)2、−SO2C(CH3)3、−SO3H、−SO3CH3、−SO3C2H5、−SO3C3H7、−SO3−cyclo-C3H5、−SO3CH(CH3)2、−SO3C(CH3)3、−OCF3、−OC2F5、−O−COOCH3、−O−COOC2H5、−O−COOC3H7、−O−COO−cyclo-C3H5、−O−COOCH(CH3)2、−O−COOC(CH3)3、−NH−CO−NH2、−NH−CO−NHCH3、−NH−CO−NHC2H5、−NH−CO−NHC3H7、−NH−CO−NH−cyclo-C3H5、−NH−CO−NH[CH(CH3)2]、−NH−CO−NH[C(CH3)3]、−NH−CO−N(CH3)2、−NH−CO−N(C2H5)2、−NH−CO−N(C3H7)2、−NH−CO−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CO−N[CH(CH3)2]2、−NH−CO−N[C(CH3)3]2、−NH−CS−NH2、−NH−CS−NHCH3、−NH−CS−NHC2H5、−NH−CS−NHC3H7、−NH−CS−NH−cyclo-C3H5、−NH−CS−NH[CH(CH3)2]、−NH−CS−NH[C(CH3)3]、−NH−CS−N(CH3)2、−NH−CS−N(C2H5)2、−NH−CS−N(C3H7)2、−NH−CS−N(cyclo-C3H5)2、−NH−CS−N[CH(CH3)2]2、−NH−CS−N[C(CH3)3]2、−NH−C(=NH)−NH2、−NH−C(=NH)−NHCH3、−NH−C(=NH)−NHC2H5、−NH−C(=NH)−NHC3H7、−NH−C(=NH)−NH−cyclo-C3H5、−NH−C(=NH)−NH[CH(CH3)2]、−NH−C(=NH)−NH[C(CH3)3]、−NH−C(=NH)−N(CH3)2、−NH−C(=NH)−N(C2H5)2、−NH−C(=NH)−N(C3H7)2、−NH−C(=NH)−N(cyclo-C3H5)2、−NH−C(=NH)−N[CH(CH3)2]2、−NH−C(=NH)−N[C(CH3)3]2、−O−CO−NH2、−O−CO−NHCH3、−O−CO−NHC2H5、−O−CO−NHC3H7、−O−CO−NH−cyclo-C3H5、−O−CO−NH[CH(CH3)2]、−O−CO−NH[C(CH3)3]、−O−CO−N(CH3)2、−O−CO−N(C2H5)2、−O−CO−N(C3H7)2、−O−CO−N(cyclo-C3H5)2、−O−CO−N[CH(CH3)2]2、−O−CO−N[C(CH3)3]2、−O−CO−OCH3、−O−CO−OC2H5、−O−CO−OC3H7、−O−CO−O−cyclo-C3H5、−O−CO−OCH(CH3)2、−O−CO−OC(CH3)3、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2I、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CH2-CH2Cl、-CH2-CH2Br、-CH2-CH2I、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、C(CH3)3、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C5H11、-C6H13、-C7H15、-C8H17、−cyclo-C3H5、-cyclo-C4H7、-cyclo-C5H9、-cyclo-C6H11、-Ph、-CH2-Ph、-CPh3、-CH=CH2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、−C2H4−CH=CH2、−CH=C(CH3)2、-C≡CH、-C≡C-CH3または-CH2-C≡CHであって、
Xは一重または二重結合を表し、
nは1から10までの整数を表す化合物または
上述の化合物の塩、光学異性体、光学異性体の混合物、ジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、水和物、溶媒和物もしくはラセミ体、狭窄性毛細管動脈疾患の治療予防用医薬組成物の使用法。

【請求項2】
狭窄性毛細管動脈疾患が肺動脈性肺高血圧症、内因性および外因性糸球体硬化症の他、続発性レイノー症候群である請求項1に記載の使用法。

【請求項3】
一般式(I)で表される化合物がリスリドまたはテルグリドである請求項2に記載の使用法。

【請求項4】
一般式(I)で表される少なくとも一の化合物を一回の投与量あたり有効成分として0.1から10mg含む他薬理学的に妥当な基剤、助剤および/または溶媒を含む医薬組成物。

【請求項5】
経口投与、舌下投与、非経口投与、皮膚投与、頬側投与、経皮投与、皮下投与、吸入投与または経鼻投与に適した請求項4に記載の医薬組成物。

【請求項6】
錠剤、多層錠剤、カプセル、徐放性経口製剤、経皮システム、座薬、ミクロ製剤、ナノ製剤、リポソーム製剤、液剤、点鼻剤、点鼻噴霧剤、エアロゾル、アンプル剤、水溶液、エマルジョン、分散剤、粉末剤、粉末吸入剤、結晶性ミクロ製剤や噴霧吸入剤、あるいは皮下投与製剤により投与する請求項4または5に記載の医薬組成物。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510273(P2010−510273A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537565(P2009−537565)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010360
【国際公開番号】WO2008/061805
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509144203)エルゴネクス ファルマ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】