説明

毛髪処理剤

【課題】 組成物中に含まれる着色性成分の経時変化を減少し、保存安定性に優れた毛髪処理剤、特にパーマネントウェーブ及び縮毛矯正用第1剤を提供すること。
【解決手段】 次の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする毛髪処理剤を提供する。
(A)着色性成分、0.00001重量%以上0.1重量%未満。
(B)ラノリン、0.1重量%〜10重量%。
(C)グリチルリチン酸及びその塩、又はグリチルレチン酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上、0.001重量%〜1重量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物中に含まれる着色性成分の経時変化を減少し、保存安定性に優れた毛髪処理剤、特にパーマネントウェーブ及び縮毛矯正用第1剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪処理剤には様々な理由で着色されることが少なくない。例えば商品のイメージを反映するためや他のアイテムと区別するため等の理由により着色性成分が用いられている。特にパーマネントウェーブ剤や縮毛矯正剤では第1剤と第2剤の剤型が類似の場合に誤使用を防止するため、あるいはシリーズ内でのハードやソフト等のタイプを混同使用しないための着色は重要な要素でもある。
【0003】
ところが、パーマネントウェーブ剤や縮毛矯正剤のようにアルカリ剤や還元剤を多く含む毛髪処理剤中では着色性成分の安定性が極めて悪く、特に紫外線による褪色が問題で、従来より各メーカーが取り組んできた課題である。例えば黄色203号や橙色205号、緑色201号、クチナシ青色素等比較的安定な色素を見出し、古くからこれらを使用してきたが褪色が全くないわけではなかった。
【0004】
特許文献1では、これら比較的安定な特定の色素を3種用いて厚さ1mmの塩ビ製容器に充填されたパーマネントウェーブ用第1剤を識別している。しかしながら厚さ1mmの塩ビ製容器ほどの遮光性を持たないプラスティックフィルム製の薄い容器、例えばアプリケーターやポンプ容器への詰め替え用に多用されている厚さ約0.2mmのポリエチレン製乳白色のパウチのような容器では紫外線等による褪色は免れず、得策を待ち望んでいた。
【0005】
さらに環境問題のため、焼却の際ダイオキシンを発生するおそれのある塩ビ製容器や、ごみの減容化も叫ばれている昨今、上述のパウチのような薄い袋等への置き換えが進んできている業界としても深刻な問題にもなってきている。
【0006】
【特許文献1】 特開2002−179537号公報
【特許文献2】 特開平11−302139号公報
【特許文献3】 特開2005−281191号公報
【特許文献4】 特開2002−53436号公報
【特許文献5】 特開2003−146844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、組成物中に含まれる着色性成分の褪色を減少し、保存安定性に優れた毛髪処理剤、特にパーマネントウェーブ及び縮毛矯正用第1剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする毛髪処理剤を提供する。
(A)着色性成分、0.00001重量%以上0.1重量%未満。
(B)ラノリン、0.1重量%〜10重量%。
(C)グリチルリチン酸及びその塩、又はグリチルレチン酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上、0.001重量%〜1重量%。
【0009】
更に(A)成分としては直接染料及び植物系天然着色性成分から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、(C)成分としてはグリチルリチン酸ジカリウムが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪処理剤は、組成物中に含まれる着色性成分の経時変化を減少し、保存安定性に優れた毛髪処理剤であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の(A)成分である着色性成分としては、酸性染料、中性染料及び塩基性染料等の直接染料の他、植物から抽出された天然の着色性成分等がある。
【0012】
酸性染料としては、赤色102号、同106号、同201号、同227号、同401号、黄色4号、同202号、同203号、同403号、同406号、同407号、青色1号、同2号、同205号、緑色3号、同201号、同401号、紫色401号、黒色401号及び橙色205号等の法定色素が挙られる。
【0013】
中性染料としては、HC Red3、同 Yellow2、同 Yellow4、同 Orange1及び同 Blue2等のHC染料、Disperse Black9及び同 Violet1等の分散染料の他2−Amino−6−Chloro−4−Nitrophenol(商品名:HUCOL 2A6)等のニトロ染料も挙げられる。
【0014】
塩基性染料としては、Basic Red76(商品名:ARIANOL MADDER RED(H))、同 Yellow57(同:STRAW YELLOW(H))、同 Brown17(同:SIENNA BROWN(H))、同
Brown16(同:MAHOGANY(H))、同 Blue99(同:STEEL BLUE(H))、同 Blue3及び同 Violet10(法定色素:赤色213号)等が挙げられる。
【0015】
ただしパーマネントウェーブ又は縮毛矯正剤に配合する場合、現行法では法定色素以外は使用できないので、上記酸性染料及び赤色213号(塩基性染料)を配合するのが望ましい。
【0016】
本発明における植物系天然着色性成分としては、あらゆる植物から抽出されたものが使用できる。ただしパーマネントウェーブや縮毛矯正剤に配合する場合、現行法で使用できるものは、ウコン(黄色)、β−カロチン(黄色)、グアイアズレン(青色)、クチナシ(黄色、青色)、コチニール(赤色)、シコニン(紫色)、クロロフィル(緑色)及びベニバナ(赤色、黄色)等が挙げられるが、これらの一部には着色以外の他の効果も併せ持つものがあるので目的に応じて使用でき、特にグアイアズレンはアルカリに対する抗炎症効果が期待できるのでより好ましい。
【0017】
特許文献2にはこれらの着色性成分0.1重量%〜10重量%を含む染毛パーマネントウェーブ又は染毛縮毛矯正用毛髪処理剤が提示されているが、本発明における毛髪処理剤は染毛を目的としないので、配合量は0.00001重量%以上0.1重量%未満、好ましくは0.0005重量%〜0.05重量%でよい。0.00001重量%未満であると着色効果が得られず、0.1重量%以上であると毛髪を染色してしまうので好ましくない。
【0018】
なお植物系天然着色性成分以外の天然の着色性成分としては、まず赤酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、グンジョウ(群青)及びコンジョウ(紺青)等鉱物系の着色性成分等が挙げられる。ただしパーマネントウェーブや縮毛矯正剤に配合する場合は、還元剤と金属イオンが反応するので好ましくない。また、動物系の着色性成分としては、イカスミ、オキアミ及びグロスフィリン等の色素が挙げられるが、供給が豊富でない上イメージも良くないので好ましくない。
【0019】
本発明の(B)成分であるラノリンは特許文献3に記載のように抱水性を有する油分として公知であり、種々の化粧料や毛髪処理剤にも使用されている(特許文献4及び特許文献5)。ところが、本発明においてはラノリンの公知の特性以外に着色性成分の安定化に寄与する効果を見出したのである。
【0020】
市販のラノリンとしては、スーパーラノリン(クローダジャパン社製)、ラノリン(伊那貿易社製)及びYOFCOラノリン(日本精化社製)等が挙げられる。配合する場合は本来の目的を兼ねられるので、配合量としては毛髪処理剤中に0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜5重量%である。0.1重量%未満では褪色防止効果が得られず、10重量%を超えて配合すると毛髪処理剤が油っぽくなりすぎるので好ましくない。
【0021】
本発明の(C)成分であるグリチルリチン酸及びその塩、又はグリチルレチン酸誘導体としてはグリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸二カリウム塩)、グリチルレチン酸ステアリル及びサクシニルグリチルレチン酸二ナトリウム塩(カルベノキソロン二ナトリウム)等が挙げられる。
【0022】
これらのグリチルリチン酸及びその塩、又はグリチルレチン酸誘導体は、従来より抗炎症効果を期待して毛髪処理剤に配合されてきた。しかしながら(B)成分同様本発明においては新たに着色性成分の褪色防止効果を見出したのである。なお、市販品としては丸善製薬社製グリチリチン(登録商標、以下(R)で示す。)K2(グリチルリチン酸ジカリウム)、同社製シーオーグレチノール(R)(グリチルレチン酸ステアリル)及び同社製3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム(サクシニルグリチルレチン酸二ナトリウム塩)等が挙げられる。
【0023】
配合量としては0.001重量%〜1重量%が好ましく、0.005重量%〜0.1重量がより好ましい。0.001重量%未満では効果が得られず、1重量%を超えて配合してもあまり効果が変わらないので不経済である。これら(C)成分のうちグリチルリチン酸ジカリウムは水溶性なので扱い易く特に好ましい。
【0024】
本発明における毛髪処理剤は毛髪の変形又は軟化のための還元剤を含む。例えばパーマネントウェーブ又は縮毛矯正剤用第1剤の他、これらの施術に使用する前処理剤・中間処理剤・後処理剤やカーリング剤、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー及び整髪料等の形態で用いられる。
【0025】
還元剤としてはチオグリコール酸又はチオグリコール酸アンモニウム及びチオグリコール酸モノエタノールアミン等その塩、システイン又はシステイン塩酸塩、及びその誘導体であるアセチルシステイン等のシステイン類、システアミン又はその塩酸塩、チオ乳酸又はその塩及びチオグリセリン等のチオール化合物の他、亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩等が挙げられ、配合量は通常概ね1重量%〜15重量%である。ただし、パーマネントウェーブ又は縮毛矯正剤用第1剤の場合は使用できる成分及び配合量に法規制があるので注意する。
【0026】
また本発明における毛髪処理剤にはアルカリ性(pH=7〜13)にするため、必要に応じて適宜アルカリ剤及び/又はpH緩衝剤を含む。これらの成分は通常用いられている公知の成分でよく、例えばアンモニア水やモノエタノールアミン等のアミン類や水酸化物等のアルカリ剤、アルカリ金属やアミン類の炭酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、クエン酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩等のpH緩衝剤が挙げられ、通常これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
【0027】
さらに本発明による毛髪処理剤には、目的の効果が損なわれない範囲で通常の毛髪処理剤に用いられる任意の成分を配合することができる。例えば、溶剤、保湿剤、防腐剤、着香剤、抗炎症剤、帯電防止剤及び紫外線防止剤等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量は重量%とする。
【0029】
本発明の実施例及び比較例を表1及び表2に示した。また、評価方法については以下に示した。
(評価方法)まず、実施例及び比較例の毛髪処理剤を約220mLのガラス瓶に充填した後、「Color Detector」(たけとんぼ社製:W400×D250×H240mm)に横転して並べる。この装置には天井に蛍光灯(10W×5本)が設置されているので常にガラス瓶が露光されるようにして保存する。
【0030】
同時に実施例及び比較例の全てについてそれぞれ(A)成分を半量にしたものを別途作成して冷暗所(遮光必須)に保存し、それぞれの50%褪色の標準品とする。
【0031】
保存後1日、3日、7日、14日、21日、30日、45日、60日及び90日目に実施例及び比較例の毛髪処理剤の色をそれぞれの標準品と目視で比較し、標準品より薄い場合は50%以上褪色したものとしてこれを着色半減日数とする。評価は以下の基準で行う。
○:90日を経過しても標準品より色が濃い。
△:21日〜90日間で標準品より色が薄くなった。
×:14日以内に標準品より色が薄くなった。
【0032】
なお、実施例及び比較例における各成分は次のものを使用した。
(A)赤色106号:葵巳化成社製
(A)赤色213号:同社製
(A)赤色227号:同社製
(A)黄色203号:同社製
(A)グアイアズレン:25%、甲南化工社製
(溶剤としてポリソルベート80=40%、コカミドDEA=35%含む)
(B)ラノリン:クローダジャパン社製、スーパーラノリン
(C)グリチルリチン酸ジカリウム:丸善製薬社製、グリチリチン(R)K2
(C)グリチルレチン酸ステアリル:同社製、シーオーグレチノール(R)
(C)3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム塩:同社製
【0033】
さらに、その他の成分については以下のものを使用した。
(基剤)セタノール:花王社製、カルコール(R)6098
(基剤)ミリスチン酸イソプロピル:コグニスジャパン社製、I.P.M.
(基剤)セトリモニウムクロリド:
東邦化学工業社製、カチナールCTC−70ET
(基剤)ベヘントリモニウムクロリド:DEGUSSA社製、
VARISOFT BT85FLAKE
(基剤)セテス−30(ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)):
日光ケミカルズ社製、NIKKOL(R)BC−30TX
(基剤)ステアリン酸グリセリル:同社製、NIKKOL(R)MGS−ASEV
(還元剤)50%チオグリコール酸モノエタノールアミン:佐々木化学社製、
チオグリコール酸として50%含有
(還元剤)50%チオグリコール酸アンモニウム:同社製、ATG 50%、
チオグリコール酸として50%含有
(還元剤)L−システイン塩酸塩:サン・オリエント化学社製
(還元剤)50%システアミン塩酸塩:オリエンタルケミカル社製、
システアミンとして50%含有
(反応調整剤)40%ジチオジグリコール酸ジアンモニウム:佐々木化学社製、
ジチオジグリコール酸として40%含有
(アルカリ剤)アンモニア水:大盛化工社製、25%アンモニア水
(アルカリ剤)エタノールアミン:佐々木化学社製、
80%モノエタノールアミン
(pH緩衝剤)炭酸水素アンモニウム:住友化学工業社製
(キレート剤)EDTA−4Na:昭和電工社製
【0034】
実施例1〜5は、それぞれ成分(A)、(B)及び(C)を含む組み合わせで、いずれも90日を経過しても着色は半減しなかった。なお、実施例4はカーリング剤でその他はパーマネントウェーブ又は縮毛矯正用第1剤である。
【0035】
比較例1は、実施例1から成分(B)及び成分(C)を省いたもので3日目で着色が半減した。
【0036】
比較例2は、実施例1の成分(B)のラノリンを1/100(0.01%)にしたもので、21日目に着色が半減した。
【0037】
比較例3は、実施例1の成分(C)のグリチルリチン酸ジカリウムを1/20(0.0005%)にしたもので30日目に着色が半減した。
【0038】
比較例4は、実施例5から成分(B)及び成分(C)を省いたもので60日目で着色が半減した。
【0039】
比較例5は、比較例1から還元剤とアルカリ剤を抜いたもので90日を経過しても着色は半減しなかった。
【0040】
以上のように実施例1〜5に示す各毛髪処理剤は、いずれも着色性成分の経時変化が少なく、保存安定性に優れた毛髪処理剤であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする毛髪処理剤。
(A)着色性成分、0.00001重量%以上0.1重量%未満。
(B)ラノリン、0.1重量%〜10重量%。
(C)グリチルリチン酸及びその塩、又はグリチルレチン酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上、0.001重量%〜1重量%。
【請求項2】
(A)成分が直接染料及び植物系天然着色性成分から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
(C)成分がグリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
還元剤を含み、pHが7〜13の範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
パーマネントウェーブ用又は縮毛矯正用第1剤である請求項1〜請求項4に記載の毛髪処理剤。

【公開番号】特開2008−127380(P2008−127380A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341931(P2006−341931)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(397031304)エステートケミカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】