説明

毛髪処理用組成物及び損傷毛用毛髪化粧料

【課題】新規な毛髪処理用組成物及び損傷毛用毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物及びこれを含有する損傷毛用毛髪化粧料を提供するものである。本発明のポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物及び損傷毛用毛髪化粧料は、優れた毛髪強度改善効果と毛髪摩擦力改善効果を有するものであり、損傷毛に対し張りやコシ等を付与し、切れ毛や枝毛等を予防又は改善する他、毛髪の櫛通りや感触を改善することができ、更にはポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩が従来保有している保湿作用及びこれに基づくフケ発生の予防又は改善効果や、ゴワツキやキシミ感の抑制効果、適度な毛髪への残留性等の多岐にわたる有効性も同時に発揮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有することを特徴とする毛髪処理用組成物及びその毛髪処理用組成物を含有する損傷毛用毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪は紫外線曝露等の環境的要因やブラッシング、ドライヤー等の熱、摩擦、乾燥等の物理的要因及び染毛剤やパーマネント剤、ヘアブリーチ剤等に含まれる成分等の化学的要因によって、毛髪のタンパク質構造の変性が生じ、例えばキューティクルの剥落、毛髪内部の水分含有率の低下、ケラチンタンパク質間の相互作用又は結合の消失又はタンパク質及びタンパク質以外の毛髪構成成分自体の欠落等の損傷を受ける。そして損傷を受けた毛髪は、枝毛や切れ毛の発生、毛髪表面の摩擦力の増加、毛髪の張りやコシの低下、毛髪間の絡まり、毛髪のパサツキや感触の劣化等を引き起こす。
【0003】
このような毛髪損傷の予防又は改善のため、従来よりシリコーン類や多糖類、ポリペプチド、界面活性剤、ポリオール、アミノ酸類、油脂、植物エキス、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤等が使用されている。最近では、デキストリン誘導体(特許文献1参照)や、新規シリコーン類(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)、新規ペプチド誘導体(特許文献5、特許文献6参照)等が新規に開発されている。
【0004】
更に、各成分が有する有効性を損なうことなく、各成分固有の欠点(例えば、毛髪適用時のキシミ、ゴワツキの発生や油っぽさ等の感触低下、毛髪への残留率の低下等)を補填することを目的に、様々な成分を組み合わせて製品を開発することが通常行われており、多種多様な組み合わせが従来から化粧品分野において実施されている(特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12参照)。
【0005】
単一成分として毛髪へ使用した場合、例えばシリコーン類は優れた毛髪被覆効果を有し枝毛、切れ毛を改善するが、毛髪の感触低下を発生させる。またポリオール類は優れた保湿性を有し、毛髪のパサツキを抑制するが、毛髪の損傷自体を改善する効果は非常に低い。さらに紫外線吸収剤は紫外線による毛髪の損傷を顕著に防止するが、毛髪への残留性が低く長期間にわたる効果の持続性に低い等、優れた有効性を発揮すると同時に望ましくない欠点もまた発現してしまう。また、各成分の組み合わせによる欠点の補填に関しては、製造における高い処方技術と大量の技術情報の蓄積が必要であり、毛髪の損傷を予防又は改善しかつ前述のような欠点が生じない製品を製造することは、未だ容易なものではなく、毛髪の損傷を予防又は改善すると共にその他の欠点が生じない単一成分の開発が、化粧品業界において強く望まれている。
【0006】
中でも、微生物が生産するバイオポリマーが有望視されている。バイオポリマーの中でも、アミノ酸が縮重合して構成されるポリアミノ酸と呼ばれる一群のバイオポリマーには、様々な機能が見出されており、その潜在能力に注目が集まっている。従来、ポリアミノ酸として、ポリ−γ−グルタミン酸(以下、「PGA」と表記する)、ポリ−ε−リジンおよびシアノファイシンの3種類が同定されている。
【0007】
PGAは、グルタミン酸のα−アミノ基とγ−カルボキシル基とがアミド結合したポリアミノ酸である。PGAは、古くから日本人に親しまれている納豆の糸引きの主体物質として知られる、吸水性のポリアミノ酸であるが、このように親しまれてきた背景として、その魅力的な機能性によるところが大きい。PGAの魅力的な機能としては、生分解性及び高吸水性を兼ね備えている点が知られている。これらの機能を利用して、上述した化粧料をはじめ、医療品、食品等、種々の分野、用途で用いられることが期待されている。
【0008】
PGAとしては、L−グルタミン酸及びD−グルタミン酸の両光学異性体が不規則に結合してなるPGAが一般的であるが、L−グルタミン酸のみが結合してなるPGA(特許文献13、非特許文献1〜3)や、D−グルタミン酸のみが結合してなるPGA(非特許文献4)も報告されている。また、特許文献14では、PGAの架橋体を吸水性樹脂として用いている。
【0009】
ポリ−γ−グルタミン酸架橋体は、ポリ−γ−グルタミン酸の一部が架橋した構造を有するものであり、その基本骨格は、アミノ酸が脱水縮合したポリペプチドからなるものである。ポリ−γ−グルタミン酸架橋体は、水を吸収して膨潤し、いったん吸収した水は荷重をかけても放出しにくいという性質を持っている。このようにポリ−γ−グルタミン酸架橋体は高い保水性を有するとともに、生分解性があることでも知られている。
【0010】
ポリ−γ−グルタミン酸架橋体の化粧料への応用として、例えば特開2001−72764号公報(特許文献15)ではポリ−γ−グルタミン酸架橋体の化粧料素材としての使用性や生分解性が示され、また特開2003−12442号公報(特許文献16)では、使用時にべたつかないとともに、肌や毛髪へのなじみがよく、保湿効果に優れたポリ−γ−グルタミン酸架橋体を配合した化粧料が示されている。
【0011】
しかしながら、ポリ−γ−グルタミン酸架橋体を単純に化粧料組成物中に配合したのでは、長期経時において、加水分解による組成物の粘度低下がしばしば問題となることがあった。
【0012】
なお、本明細書では、説明の便宜のため、D−グルタミン酸及びL−グルタミン酸が結合してなるPGAを「DL−PGA」と表記する。また、D−グルタミン酸のみからなるPGAを「D−PGA」と表記し、L−グルタミン酸のみからなるPGAを「ポリ−γ−L−グルタミン酸」又は「L−PGA」と表記する。
【特許文献1】特開平7−285834号公報
【特許文献2】特開平8−127519号公報
【特許文献3】特開平8−59440号公報
【特許文献4】特開平9−59132号公報
【特許文献5】特開平11−302300号公報
【特許文献6】特開2000−86462号公報
【特許文献7】特開平6−157247号公報
【特許文献8】特開平7−53332号公報
【特許文献9】特開平8−208439号公報
【特許文献10】特開平10−279436号公報
【特許文献11】特開2000−191445号公報
【特許文献12】特開2002−145741号公報
【特許文献13】特表2002−517204号公報(2002年6月18日公表)
【特許文献14】特開平10−251402号公報(1998年9月22日公開)
【特許文献15】特開2001−72764号公報
【特許文献16】特開2003−12442号公報
【非特許文献1】Aono, R., M. Ito, and T. Machida, Contribution of the Cell Wall Component Teichuronopeptide to pH Homeostasis and Alkaliphilyin the Alkaliphile Bacillus lentusC-125, Journal of Bacteriology, 1999, Vol. 181, 6600-6606.
【非特許文献2】Weber, J., Poly(gamma-glutamic acid)s are the major constituents of nematocysts in Hydra (Hydrozoa, Cnidaria), Journal of Biological Chemistry, 1990, Vol. 265, 9664-9669.
【非特許文献3】Hezayen, F. F., B. H. A. Rehm, B. J. Tindall and A. Steinbuchel, Transfer of Natrialbaasiatica B1T to Natrialba taiwanensis sp. nov. and description of Natrialba aegyptiacasp. nov., a novel extremely halophilic, aerobic, non-pigmented member of the Archaea from Egypt that produces extracellular poly(glutamic acid), International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 2001, 51, 1133-1142.
【非特許文献4】Makino, S., I. Uchida, N. Terakado, C. Sasakawa, and M. Yoshikawa, Molecular characterization and protein analysis of the cap region, which is essential for encapsulation in Bacillus anthracis, Journal of Bacteriology, 1989, 171, 722-730.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のPGAを含有する化粧料組成物では、所望の品質を有する化粧料を安定して製造することが困難であるという問題や、保湿性が不十分であるという問題点を有する。
【0014】
上述のように、現在、製品化されているDL−PGAは、化学的にヘテロなポリマーである。具体的には、PGAは、納豆菌やその類縁菌から生産されているが、D−グルタミン酸及びL−グルタミン酸が不規則に結合しており、その含有比率や、配列は生産菌の培養毎に変動する。一般に、ポリアミノ酸の構造的特徴(構成するアミノ酸の光学活性や種類、分子サイズ、結合様式など)は、その機能に強く影響を与える。上記DL−PGAは、分子毎に構造が異なるため、その性質も分子毎に異なる。これでは、所望の品質を有するDL−PGAを安定して製造することが困難である。
【0015】
また、DL−PGAの保湿性は不十分であるため、化粧料組成物としての実用化には大きな課題が残る。
【0016】
ところで、従来、L−PGAを含む化粧料組成物を製造したという報告はない。これには次の理由が考えられる。
【0017】
一般に、PGAを用いて化粧料組成物を製造する場合、保湿性が要求されるため、高分子量のPGAが不可欠である。一方で、従来、液体培養では、平均分子量が大きいL−PGAは得られていない。これでは、L−PGAを含有する化粧料組成物を製造することを着想することすら困難である。
【0018】
また、工業的な用途のPGAは、液体培養によって製造可能であることが要求される。平板培養では一度に大量の微生物を培養することが難しく、平板培地上からL−PGAを回収すると効率が悪いからである。
【0019】
具体的には、L−PGAを合成する生物として、非特許文献1では好アルカリ性細菌Bacillus haloduransが開示され、非特許文献2ではヒドラが開示されている。しかし、こ
れらの生物により合成されるL−PGAの分子量は10万程度であり、極めて小さい。
【0020】
また、特許文献13及び非特許文献3では、好塩性古細菌であるNatrialba aegyptiacaは、平板培地で培養すれば、分子量10万〜100万程度のL−PGAを生産することが報告されている。しかし、当該Natrialba aegyptiacaが液体培養条件下で合成するL−PGAは、分子量10万程度であり、かつ、その合成効率は極めて低い。
【0021】
一方、これまで得られているD−PGAは、産業上の利用に適していない。
【0022】
何故なら、非特許文献4で開示されているD−PGAを合成する菌は、強い病原性を有する炭疸菌Bacillus anthracisだからである。産業上利用するPGAの製造に、炭疸菌を使用することは極めて不適切である。
【0023】
ところで、特許文献14にはDL−PGAの架橋体が吸水性樹脂として用いられているが、DL−PGAの架橋体を化粧料組成物として用いることは困難である。
【0024】
特許文献14に開示されているDL−PGA架橋体の原料であるDL−PGAは、バチルス・ズブチルス等の納豆菌やその類縁菌によって合成されている。これでは原料となるDL−PGAの品質が一定しないため、安定して架橋体を得ることが困難である。本発明者らの検討においてもDL−PGAの架橋体は得られなかった。これは、上述のようにDL−PGAは、分子毎にその構造が異なるためであると考えられる。つまり、PGAの架橋体を作製する際の架橋効率は分子の構造に依存しており、分子毎の構造が不規則に異なる場合は、架橋効率が著しく低下する。よって、分子毎に構造が異なるDL−PGAを架橋させることは困難であり、架橋体の収率も極めて低いものとなる。
【0025】
従って、DL−PGAの架橋体を用いても、所望の品質の化粧料組成物を安定して製造することは困難である。
【0026】
一方で、従来、L−PGAの架橋体を得たという報告はない。
【0027】
これは、上述のように、液体培養では、平均分子量が大きいL−PGAは得られていないためである。低分子量の有機化合物の架橋体を得ることが極めて困難であることは技術常識であるため、当業者は、低分子量のL−PGAの架橋体を得ることを着想することすら困難である。そのため、L−PGAの架橋体を得ることを試みたという報告すら無い
また、D−PGAの架橋体は、仮に得ることができたとしても、上述のようにD−PGAの生産菌は、現在炭疸菌のみであるため、産業上の利用に適していない。
【0028】
こうした事情に鑑み、本発明者らは、従来より多機能性増粘剤として毛髪に使用されているポリグルタミン酸に関して、更なる検討を継続した結果、損傷毛に対してポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を使用することで損傷毛に優れた強度が付与され、かつ毛髪の摩擦力が低下することを見出した。そしてポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物及びこれを含有する毛髪化粧料を構成することで、損傷毛の強度を改善して毛髪に張りやコシを付与し、かつ毛髪の摩擦力を低下させ櫛通りや感触を改善することが可能であることを見出した。更には、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩の元来有する保湿作用により、フケの発生を予防又は改善することができ、ゴワツキやキシミ感も発生せず、水溶性高分子であることから適度な毛髪への残留性を示す等従来より報告されていたポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩の特性もまた充分に発揮されていることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者らは上記課題の解決のため、高い保湿性を有し、所望の品質を安定して製造することができる、天然物由来の生分解性素材を得るべく鋭意検討を行なった。その結果、高い分子量を有するL−PGAを独自に開発した。そして、当該L−PGAは、L−グルタミン酸のみが結合してなるため、光学活性が均一であり、かつ、分子量が高いことから優れた保湿性を有する。
本発明は、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物及びこれを含有する損傷毛用毛髪化粧料を提供するものである。
【0030】
すなわち、本発明は、以下のような構成からなる。
1.ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有することを特徴とする毛髪処理用組成物。
2.1の毛髪処理用組成物を含有することを特徴とする損傷毛用毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0031】
本発明のポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物は、優れた毛髪強度改善効果と毛髪摩擦力改善効果を有するものであり、損傷毛に対し張りやコシ等を付与し、切れ毛や枝毛等を改善する他、毛髪の櫛通りや感触を改善することができる。そして該毛髪処理組成物を含有することで構成される損傷毛用毛髪化粧料は、前述の毛髪強度の劣化に係わる様々な問題点を予防又は改善することが可能である他、毛髪摩擦力の増加に係わる様々な問題点を予防又は改善することが可能であり、更にはポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩が従来保有している保湿作用及びこれに基づくフケ発生の予防又は改善効果や、ゴワツキやキシミ感の抑制効果、適度な毛髪への残留性等の多岐にわたる有効性も同時に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0033】
〔本発明に係る毛髪処理用組成物〕
本発明に係る毛髪処理用組成物はポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含めばよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0034】
まず本発明で用いられるポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩について説明する。
【0035】
L−PGAは、L−グルタミン酸が結合してなるため、光学活性が均一であり、分子毎の性質も均一である。そのため、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を用いることで、所望の品質を有する毛髪処理用組成物を提供することができる。
【0036】
さらに、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩は、保湿性に優れているため、本発明に係る毛髪処理用組成物は、保湿剤及び/又は化粧料として好適に用いることができる。
【0037】
本発明に係る毛髪処理用組成物を保湿剤として用いる場合、具体的には、フェイスケア製品、ハンドケア製品、ボディケア製品、フットケア製品、ヘッドケア製品、及びヘアケア製品、ネイルケア製品、又はマウスケア製品等として、好適に用いることができる。
【0038】
また、本発明に係る毛髪処理用組成物を化粧料として用いる場合、具体的には、乳液、美容液、クリーム、ローション、洗顔料、メイク落とし等のフェイスケア製品、ハンドケア製品の他、ボディケア製品、フットケア製品、ヘッドケア製品、及びヘアケア製品、ネイルケア製品、又はマウスケア製品等として、好適に用いることができる。
【0039】
なお、本明細書において、「皮膚」とは、顔、首、胸、背中、腕、脚、手および頭皮の皮膚が意図される。また、
【0040】
(L−PGA)
本発明に係る毛髪処理用組成物に含まれるL−PGAは、L−グルタミン酸が結合してなるホモポリマーであり、その構造は下記式(1)にて示される構造を有する。
【0041】
【化1】

【0042】
(式(1)においてnは重合数を示す)
本発明に係る毛髪処理用組成物に含まれるL−PGAの平均分子量としては、毛髪処理用組成物の用途等に応じて、適宜選択すればよいが、好ましくは130万以上、より好ましくは200万以上、さらに好ましくは350万以上である。
【0043】
L−PGAの平均分子量が高ければ高いほど、当該L−PGAを含む毛髪処理用組成物の保湿性が向上する。そのため、L−PGAの平均分子量の上限値は特に限定されるものではない。なお、後述するL−PGAの製造方法によれば、例えば、平均分子量600万、最大で1500万のL−PGAを得ることができる。
【0044】
なお、本明細書において「平均分子量」とは、プルラン標準物質の分子量換算にて算出した数平均分子量(Mn)を意図する。
【0045】
本発明に係る毛髪処理用組成物に含まれるL−PGAとしては、従来公知の種々の方法で得たL−PGAを用いればよく、例えば、L−PGAを生産する微生物(以下、単に「L−PGA生産微生物」と表記する)を用いて得たL−PGAを用いればよい。
【0046】
(L−PGA生産微生物)
L−PGA生産微生物としては、L−PGAを合成する微生物である限り限定されるものではなく、L−PGA生産微生物の野生型、その変異株、又は、遺伝子組換え技術により、L−PGAの生産能力を付与、又は強化された微生物を用いればよい。中でも、好塩菌又はその変異処理株が好ましい。好塩菌としての性質を有していれば、好熱菌、高度好熱菌、好冷菌、好酸菌、好圧菌および低温生育菌等を用いてもよい。好塩菌は、低度好塩菌(0.2〜0.5MのNaCl濃度で生育)、中度好塩菌(0.5〜2.5MのNaCl濃度で生育)、高度好塩菌(2.5〜5.2MのNaCl濃度で生育)の3種類に分類され、いずれを用いてもよいが、高度好塩菌が好ましい。なお、好塩菌は、他の微生物が生育不可能な高塩条件下においても生育可能であることから、無菌操作無しで培養することができる。
【0047】
また、L−PGA生産微生物としては、古細菌であってもよい。古細菌としては、上述の高度好塩菌に分類される高度好塩古細菌の他、好熱古細菌、メタン菌(メタン生成古細菌)等が挙げられるが、L−PGAを生産可能である限り、いずれの古細菌を用いてもよい。古細菌の中でも高度好塩古細菌が好ましい。
【0048】
高度好塩古細菌としては、例えば、Halobacterium(ハロバクテリウム)属、Haloarcula(ハロアルクラ)属、Haloferax(ハロフェラックス)属、Halococcus(ハロコッカス)属、Halorubrum(ハロルブルム)属、Halobaculum(ハロバキュラム)属、Natrialba(ナトリアルバ)属、Natronomonas(ナトロノモナス)属、Natronobacterium(ナトロノバクテリウム)属、Natronococcus(ナトロノコッカス)属等が挙げられるが、Natrialba属が好ましく、Natrialba aegyptiaca(ナトリアルバ エジプチアキア)がさらに好ましい。N. aegyptiacaは、高塩環境下で発生する脱水現象から、巧みに身を守るためにL−PG
Aを生産すると考えられている(例えばF. F. Hezayen, B. H. A. Rehm, R. Eberhardt, A. Steinbuchel, Polymer production by two newly isolated extremely halophilic archaea: application of a novel corrosion-resistant bioreactor, Applied Microbiology and Biotechnology, 2000, 54,319参照)。また、N. aegyptiaca の中でも、Natrialba aegyptiaca(ナトリアルバ エジプチアキア)0830−82株(受託番号:FERMBP-10747)、Natrialba aegyptiaca(ナトリアルバ エジプチアキア)0830−243株(受託番号:FERM BP-10748)、及び、Natrialba aegyptiaca(ナトリアルバ エジプチアキア)0831−264株(受託番号:FERM BP-10749)からなる群から選択される少なくとも一つの菌株を用いることがさらに好ましい。N.aegyptiacaを用いれば、より分子量の大きいL−PGAを得ることができる。特に、N. aegyptiaca FERM BP-10747、N. aegyptiacaFERM BP-10748、N. aegyptiaca FERM BP-10749は、いずれもの菌株も平均分子量130万以上のL−PGAを、液体培養条件下で合成することができる。よって、L−PGAの架橋体の収率がよく、また、L−PGAの製造効率もよい。
【0049】
N. aegyptiaca FERM BP-10747、N. aegyptiacaFERM BP-10748、及び、N. aegyptiaca FERM BP-10749は、特願2006−142685に記載の変異処理方法及びスクリーニング方法に基づいて、本発明者らが独自に見出したN. aegyptiacaの変異株である。なお、本明細書において、単に「N. aegyptiaca」と表記したときは、N. aegyptiacaの変異株をもその意味に含む。
【0050】
このように、本発明に係る毛髪処理用組成物に含ませるL−PGAとしては、平均分子量の大きいL−PGAを生産する微生物を、上記スクリーニング方法により選抜して用いてもよく、さらに、上記変異処理方法で微生物に変異処理を施した上で、上記スクリーニング方法により選抜した微生物を用いてもよい。
【0051】
(変異処理方法)
ここで、上述の特願2006−142685記載の変異処理方法により、L−PGA生産性が向上した微生物の変異株を作製する一実施形態について説明する。
【0052】
上記変異処理方法としては、例えば、遺伝子組換えによる方法、細胞又は胞子に対して、変異原性のある薬剤を接触させる方法、X線又はγ線等の放射線、紫外線等を照射する方法等、従来公知の方法を用いればよい。上記変異原性のある薬剤としては、例えばN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホン酸(EMS)等のアルキル化剤を挙げることができる。本発明者らは、NTGを用いて、L−PGA生産微生物に変異処理を施した。なお、L−PGA生産微生物に対して、上述の変異処理を施す場合には、変異処理後の菌株の生存率が1%以下となる程度の強度で行なうことが好ましいが、特に限定はされるものではない。
【0053】
例えば、本発明者らは、N.aegyptiaca(JCM11194)を親株として、まずPGA生産用の培地で培養した後、NTG溶液で培養し、さらにPGA生産用の培地で培養した。このとき、生存率が1%以下となるNTG溶液の濃度等の条件を見出し、生存した菌体を変異株として得た。
【0054】
ここで、PGA生産用の培地としては、当該変異処理方法に供する菌株がPGAを生産可能な培地である限り限定されるものではないが、本発明者らは、22.5重量% NaCl、2重量% MgSO・7HO、0.2重量% KCl、3重量% Trisodium Citrate、1重量% Yeast Extract、0.75重量% Casamino acidの組成のPGA生産用液体培地を用いた。
培養条件は、特に限定されるものではないが、例えば本発明者らは、3mlの上記PGA生産用液体培地を含む18ml試験管で、37℃ 300rpmで3日間培養した後、得られた
培養液0.5mlを、50mlの上記PGA生産用液体培地を含む500ml容坂口フラスコに植菌し、37℃ 180rpmで5日間培養した。
【0055】
また、上記NTG溶液の組成としては、当該変異処理方法に供する菌株の生存率が1%になるように、適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば本発明者らは、NTG(東京化成株式会社)の飽和溶液、70重量%、50重量%、20重量%、10重量%の水溶液を、上記PGA生産用液体培地で培養した菌株を懸濁液に、当該懸濁液の1/10量添加して当該懸濁液を培養した。当該懸濁液を作製する際に、菌株を懸濁させる液体は、特に限定されるものではないが、本発明者らは、100mM クエン酸緩衝液(pH6.0)を用いた。具体的には、上記PGA生産用液体培地による培養で得られた培養液から、3000rpmで5分間遠心分離して、菌体を回収した後、100mM クエン酸緩衝液(pH6.0)を加え懸濁した。この遠心分離から懸濁までの操作を3度繰り返して懸濁液
を得た。NTG溶液による培養条件は、特に限定されるものではない。例えば、本発明者らは、42℃ 150rpmで1時間培養した。
【0056】
NTG溶液による培養後の菌株を培養するPGA生産用の培地としては、特に限定されるものではなく、上記PGA生産用液体培地を用いてもよいが、本発明者らは、PGA生産用寒天培地(10% NaCl、2% MgSO・7HO、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、2% Agar)に播種して37℃で
5日間培養した。これにより、N.aegyptiaca(JCM11194)を親株として、当該変異処理方法に供した場合、70重量%のNTG溶液を用いたとき、生存率が1%以下となった。
【0057】
(スクリーニング方法)
次に、上記スクリーニング方法について説明する。なお、上記スクリーニング方法に供する菌株は、上記変異処理方法により変異処理を施した菌株を供してもよく、当該変異処理方法を施していない野生株を供してもよい。
【0058】
上記スクリーニング方法は、塩感受性の高いL−PGA生産微生物を選抜することで行なう。具体的には、L−PGA生産微生物が、通常、L−PGAを生産することが困難な塩濃度下で、L−PGA生産微生物を培養し、ムコイド状を示すコロニーを目安に選抜すればよい。塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、亜鉛及び鉄等の、従来公知のものを用いればよいが、好ましくはナトリウムである。
【0059】
なお、本明細書において「ムコイド状」とは、コロニーが粘性を示す状態を意図し、具体的には、微生物が、ポリペプチド鎖の主柱に共有結合した単糖や多糖鎖側鎖を有する高分子を生産して、当該微生物のコロニーが粘性を示す状態を意図する。つまり、上記スクリーニング方法では、L−PGAと多糖とが結合することで粘性状態、即ちムコイド状を示すコロニーを目安に選抜すればよい。
【0060】
また、本明細書において「塩感受性」とは、微生物が、L−PGAの生産を開始する塩濃度を意図する。そして、「塩感受性が高い」とは、微生物が、L−PGAの生産を開始する塩濃度が低いことを意図する。つまり、上記スクリーニング方法では、より少ない塩濃度でL−PGAを生産する菌株を選抜する。具体的には、NaClが5重量%以上20重量%以下、好ましくは7重量%以上15重量%以下で、L−PGAを生産する菌株を選抜することが好ましい。
【0061】
従来、液体培養条件下で、PGA生産微生物をスクリーニングすることは困難であった。何故なら、例えばN. aegyptiacaは、固体培地表面でムコイド状のコロニーを形成する
と、コロニー同士が融合するため、シングルコロニーの分離が困難だったからである。さらに、シングルコロニーの分離可能であったとしても、一株ずつ液体培養し、L−PGAの生産の有無を確認するために、膨大な時間と労力が必要であった。つまり、本発明に係る毛髪処理用組成物は、本発明者らが独自に見出したスクリーニング方法により得た、高分子量のL−PGA生産菌を用いることで、初めて可能となった全く新たな毛髪処理用組成物である。
【0062】
ここで、上記変異処理方法により得たN. aegyptiacaの変異株から、L−PGAの生産
能に優れた菌株をスクリーニングする方法の一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0063】
まず、上記スクリーニング方法に供する変異株を、従来公知の栄養培地で培養するとよい。栄養培地としては、特に限定されるものではないが、例えば肉汁、ペプトン、大豆粉、Yeast Extract、Casamino acid、アミノ酸類またはそれらの混合物などを含有する培地、または必要な栄養素類を含有する無機合成培地などの寒天平板培地を用いればよい。また、PGA生産微生物がPGAを生産しやすい培地を用いてもよい。当該PGAを生産しやすい培地としては、特に限定されるものではないが、例えば22.5重量% NaCl、2重量% MgSO・7HO、0.2重量% KCl、3重量% Trisodium Citrate、1重量% Yeast Extract、0.75重量% Casamino acid、2重量% Agarからなる寒天培地(以下、「PGA生産用寒天培地A」と表記する)を用いればよい。培養期間は特に限定されるものではないが、2〜4日間が好ましい。
【0064】
次に、L−PGA生産微生物がL−PGAを生産しにくい培地を用いて、当該変異株を培養して、当該培地においてもL−PGAを生産する菌株を選抜すればよい。上記L−PGAを生産しにくい培地としては、L−PGA生産微生物がL−PGAを生産しにくい組成である限り限定されるものではない。具体的には、当該培地中の塩濃度を低くするとよい。例えば、本発明者らは、10重量%のNaClを含む固体培地を用いた。これは、N. aegyptiacaは、10重量%以上の塩を含む培地で生育すること自体は可能であるが、20重量%以上の塩を含む培地で培養しない限り、L−PGAを生産しない株が多いからである。また、N. aegyptiacaは、NaClの濃度が10重量%の固体培養条件下では、ムコイド状を示さない。さらに、液体培養よりも固体培養の方が、一菌体当たりのL−PGA生産量が10倍以上高い。
【0065】
より具体的には、本発明者らは、10重量% NaCl、2重量% MgSO・7HO、0.2重量% KCl、3重量% Trisodium Citrate、1重量% Yeast Extract、0.75重量% Casamino acid、2重量% Agarからなる寒天培地(以下、「PGA生産用寒天培地B」と表記する)を用いた。このときの培養条件は、特に限定されるものではないが、例えば、温度は37℃とすればよく、培養期間は4〜6日とすればよい。
【0066】
なお、PGA生産用寒天培地B等のL−PGAを生産しにくい培地を用いて、菌株を培養する間は、併せてPGA生産用寒天培地A等のL−PGAを生産しやすい培地を用いて、スクリーニングに供する菌株のL−PGA生産能を、並行して確認することが好ましい。
【0067】
選抜した菌株は、さらにL−PGAを生産しやすい培地で培養して、L−PGA生産能の再現性を確認することが好ましい。当該確認には、例えば上記PGA生産用寒天培地Aを用いて培養すればよい。
【0068】
このようにして塩感受性の高い菌株を選抜することができる。
【0069】
次に、選抜した塩感受性の高い菌株を、PGA生産用の液体培地で培養して、L−PGAの生産量を測定し、さらにL−PGA生産量の高い菌株を再選抜するとよい。
【0070】
このとき、既に、L−PGAを良好に生産するL−PGA生産微生物が選抜されているため、液体培養による選抜を容易に行なうことができる。これは上述の塩感受性の高い菌株を選抜する方法が、他のPGA生産微生物を選抜する方法に比べて優れている点の一つである。つまり、当該選抜方法を行なわずに、液体培養による選抜のみで、L−PGAを生産可能な微生物又はその変異株を入手することは、当業者にとって容易でない。何故なら、固体培養で得られるコロニーを、それぞれ液体培養して、L−PGAの生産量を確認する必要があるからである。この作業は天文学的数字になるため、事実上不可能であることは当業者であれば容易に理解できる。本発明者らは鋭意努力し、L−PGAを液体培養で生産できる微生物又はその変異株を容易に入手する方法を見出した。
【0071】
L−PGA生産量の高い菌株を再選抜するときに用いる、PGA生産用の液体培地としては、特に限定されるものではないが、上述の変異処理方法で用いたPGA生産用液体培地を用いればよい。培養条件は、特に限定されるものではなく、例えば、本発明者らは上記PGA生産用液体培地を用いて、37℃、180rpmで4日間培養することにより、L−PGAの生産能に優れた菌株を選抜した。また、一度小さい系で培養した後に、系を大きくして培養してもよい。例えば、本発明者らは、菌株のシングルコロニーを、1白金耳掻き取り、3mlの上記PGA生産用液体培地を入れた18ml容試験管に植菌して、37℃、300rpmで3日間培養した。そして、得られた培養液0.5mlを、50mlの上記PGA生産用液体培地を入れた500ml容坂口フラスコに植菌して、37℃、180rpmで3日間培養した。
【0072】
次に、液体培地中のL−PGAを測定して、より多くのL−PGAを生産した菌株を選抜すればよい。
【0073】
液体培地中のL−PGAの量を測定する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、硫酸銅やエタノールを用いてL−PGAを沈澱させて、当該沈殿物の重量測定、又は、Kijerder法による総窒素の測定を行なう方法(M.Bovarnick,J.Biol.Chem.,145巻、415頁、1942年)、塩酸加水分解後のグルタミン酸量を測定する方法(R.D.Housewrigt,C.B.Thorne,J.Bacteriol.,60巻、89頁、1950年)、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法(M.Bovarnick et al., J.Biol.Chem.,207巻、593頁、1954年)が挙げられる。中でも、塩基性色素との定量的な結合を利用した比色法を用いることが好ましい。
【0074】
上記比色法で用いる塩基性色素としては、例えばクリスタルバイオレット、アニリンブルー、サフラニンオー、メチレンブルー、メチルバイオレット、トルイジネブルー、コンゴレッド、アゾカルマイン、チオニン、ヘマトキシリンなどが挙げられるが、サフラニンオーが好ましい。本発明者らは、1/5倍希釈したサフラニンオーを用いて、液体培地中のL−PGAの量を測定して、親株と比較してL−PGAの生産能が高い菌株を選抜した。
【0075】
これまで説明した変異処理方法及びスクリーニング方法により、本発明者らは、30,
000株をスクリーニングして、その結果、3株のL−PGA生産変異株を得た。
【0076】
このようにして得られた菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialbaaegyptiaca)0830−82株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受領日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP-10747)、ナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0830−243株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受領日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP-10748)、またはナトリアルバ エジプチアキア(Natrialba aegyptiaca)0831−264株(受託機関名:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター、受領日:平成18年4月4日、受託番号:FERM BP-10749)として寄託されている。
【0077】
当該3株はいずれも、親株であるJCM11194株より優れたL−PGA生産能を有し、高分子量のL−PGAを工業的なスケールで製造することができる。例えば、上述の二段階に分けた培養によれば、JCM11194株は、培養液1Lあたり0.61gのL−PGAを生産したが、FERM BP-1079は、4.99gのL−PGAを生産した。
【0078】
(L−PGAの製造方法)
次に、L−PGAの製造方法として、N. aegyptiacaを用いた場合について例示するが
、本発明に係る毛髪処理用組成物に含まれるL−PGAを得る方法は、これに限定されるものではない。
【0079】
N. aegyptiacaを培養する培地は、当該N. aegyptiacaが生育可能で、かつ、L−PGAを合成可能である培地である限り、特に限定されるものではないが、液体培地であることが好ましい。液体培地を用いれば、一度に大量にN. aegyptiacaを培養できるため、L−PGAの製造効率が極めて向上する。
【0080】
N. aegyptiacaの培養に用いる培地の成分は、N. aegyptiacaが摂取可能な炭素源及び無機塩類を含めばよく、必要に応じてYeast Extract等、その他の栄養物を添加すればよい
。例えば、本発明者らは、後述する実施例において、22.5% NaCl、2% MgSO4・7H2O、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acidの培地を用いてN. aegyptica FERM BP-10749を培養している。なお、Yeast Extractを培地に添加する場合、その濃度は0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上5.0重量%以下がさらに好ましい。
【0081】
N. aegyptiacaは高度好塩菌であるので、L−PGAの製造に用いるN. aegyptiacaの生育特性に応じて、培地に塩を添加してもよい。培養時の塩濃度は10重量%以上30重量%以下、好ましくは15重量%以上25重量%以下で培養すればよい。
【0082】
N. aegyptiacaの培養に用いる培地のpHは、特に限定されるものではないが、5.0以上10以下が好ましく、さらに好ましくは6.0以上8.5以下である。なお、pHの調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、塩酸、硫酸、これらの水溶液等を用いればよいが、pHを調整可能な限り限定されるものではない。
【0083】
培地を作製した後は、通常の方法で殺菌した後に、L−PGAの生産に用いるN. aegyptiacaを添加して培養すればよい。なお、培地の殺菌は、従来公知の方法で行なえばよく、例えば、110〜140℃で8〜20分行なえばよい。なお、培地のNaClの濃度を飽和濃度にすることで、殺菌工程を省略することもできる。上述のように、N. aegyptiacaは高度好塩菌であるため、飽和濃度のNaCl存在下でも生育可能であるが、他の微生物は生育不可能であるからである。
【0084】
N. aegyptiacaを液体培養する場合には、振とう培養、通気攪拌培養等を行なうことが好ましい。また、培養温度は、特に限定されるものではないが、25℃以上50℃以下が好ましく、30℃以上45℃以下がさらに好ましい。
【0085】
N. aegyptiacaの培養期間は、他の培養条件、目的とするL−PGAの生産量に応じて適宜設定すればよく特に限定されるものではなく、例えば2〜4日間程度でよい。
【0086】
上述の培養条件等に基づいてN. aegyptiacaの培養を行なうと、L−PGAは、主として菌体外に蓄積される。
【0087】
N. aegyptiacaを培養した後の培地から、L−PGAを分離、回収する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。例えば、(1)固体培養物から20%以下の食塩水により抽出分離する方法(例えば特開平3−30648号公報を参照)、(2)硫酸銅による沈殿法(例えばThrone.B.C., C.C.Gomez,N.E.Nouesand R.D.Housevright:J.Bacteriol.,68巻、307頁、1954年を参照)、(3)アルコール沈殿法(例えばR.M.Vard,R.F.Anderson and F.K.Dean:Biotechnologyand Bioengineering,5巻、41頁、1963年を参照)、(4)架橋化キトサン成形物を吸着剤とするクロマトグラフィー法(例えば特開平3−244392号公報を参照)、(5)分子限外濾過膜を使用する分子限外濾過法、(6)上記(1)〜(5)を適宜組み合わせた方法などが挙げられる。また、これらの方法は、L−PGAの生産にN. aegyptiaca以外の微生物を用いた場合にも適用することができる。このようにして分離、回収したL−PGAは、L−PGA含有液として後述のL−PGA架橋体の製造に用いてもよく、必要に応じて、スプレードライ、凍結乾燥等、従来公知の方法で粉末にしてもよい。
【0088】
以下に、N. aegyptiacaを培養した後の培地からL−PGAを分離、回収する方法の一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0089】
まず、遠心分離等により、N. aegyptiacaを培養した後の培養液から菌体を取り除き、次に、得られた上清から、エタノール等の低級アルコールを加えることで、L−PGAを沈殿させるとよい。当該沈殿物は、適宜緩衝液に溶解させた上で、透析等により、不純物を除去することが好ましい。なお、本発明者らは、後述する実施例でも示すように、菌体を回収した後の上清に、3倍量の水を加えて希釈して、さらに、pHを3.0に調整した後、5時間、室温で攪拌した上で、3倍量のエタノールを加えることで沈殿物を回収した。また、当該沈殿物を0.1mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)に溶解させ、これを透析する
ことにより、不純物を除去した。
【0090】
透析を行なっても、核酸やタンパク質が混入していることが考えられるため、DNase処理、RNase処理、Proteinase処理等を行なうことが好ましい。また、これらの処理後、さらに透析等の精製処理をすることで、より高純度のL−PGAを得ることができる。
【0091】
以上により、L−PGAを含有する溶液を得ることができる。さらに、得られた溶液に対して凍結乾燥等を行なえば、粉末状のL−PGA架橋体を得ることができる。また、必要に応じて、さらに、当該溶液の精製を行なってもよい。精製は、従来公知の方法で行なえばよく、例えば上述の透析を行なってもよく、陰イオン交換樹脂を用いればよい。
【0092】
本発明に係る化粧料組成物に含まれるL−PGAは、塩の状態であってもよく、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等を用いることができる。
【0093】
(毛髪処理用組成物の組成)
本発明における、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩の形態としては、液状、固形状、粉末状、ペースト状、ゲル状等いずれの形状でも良く、毛髪処理用組成物又は損傷毛用毛髪化粧料を構成する上で最適な形状を任意に選択することができる。
【0094】
本発明における、ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩の毛髪処理用組成物への含有量としては、組成物の種類、品質、期待される作用の程度によって若干異なり特に限定しないが、通常、製剤全量中、固形分換算して、0.001質量%以上、好ましくは0.01〜50.0質量%の濃度範囲と定義することが有効である。また、本発明における毛髪処理用組成物の剤型は任意であり、アンプル状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、液状、ゲル状、気泡状、乳液状、クリーム状、軟膏状、シート状、ムース状、粉末分散状、多層状、エアゾール状等の剤型を構成することができる。
【0095】
本発明における、損傷毛用毛髪化粧料に対する毛髪処理用組成物の含有量としては、毛髪化粧料の種類、品質、期待される作用の程度によって若干異なるため、特に限定しないが、通常製剤全量中、0.01質量%以上、好ましくは0.1〜20.0質量%の濃度範囲とすることが有効である。
【0096】
本発明における損傷毛用毛髪化粧料の分野としては、毛髪への適用が可能であれば化粧品、医薬部外品、又は医薬品と特に限定されず、例えば、シャンプー、リンス、トリートメント等の洗髪用化粧料や、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアローション、ヘアオイル、ヘアエッセンス、ヘアウォーター、ヘアワックス、ヘアフォーム等の整髪料、育毛・養毛料、染毛前処理剤や後処理剤更には中間処理剤等染毛剤関連製品やパーマネント前処理剤や後処理剤更には中間処理剤等のパーマネント剤関連製品等とすることができ、その剤型についても特に制限はなく、固型状、ペースト状、ムース状、ジェル状、粉末状、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、多層状、エアゾール状等とすることができる。
【0097】
本発明の毛髪損傷剤は、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤に一般的に用いられる成分、例えば水性成分、油性成分、粉末成分、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、香料、アルコール、色剤、粉末、薬剤、各種皮膚栄養剤等を配合することができる。
【0098】
具体的には、例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素;アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ラノリン等の油脂類;ホホバ油、カルナバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、ジメチルポリシロキサン、メチフェニルシロキサン等のシリコーン類;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール類;カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤等を配合することができる。
【0099】
また、例えばパラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、3−(4’−メチルベンジリデン)−d−カンファー、3−ベンジリデン−d、1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2、2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等の紫外線吸収剤を配合することができる。
【0100】
また、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸およびこれらのアルカリ金属塩と塩酸塩;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステル(塩)、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤等を配合することができる。
【0101】
また、例えばギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ、ホワイトリリー等の植物の抽出物、色素、中和剤、酸化防止剤、香料、精製水等を配合することができる。
【0102】
本発明において、毛髪処理用組成物及び損傷毛用毛髪化粧料にはγ−ポリグルタミン酸又はその塩に加え、更に下記に示す被膜形成剤や生理活性成分、着色剤や界面活性剤、香料、賦形剤等の製剤調整成分等を添加剤として任意に選択・併用することにより、更に多種の機能性を有する優れた毛髪処理用組成物及び損傷毛用毛髪化粧料を構成することができる。製剤中への含有量は、通常、0.0001〜50質量%の濃度範囲で使用される。
【0103】
本発明で用いられる被膜形成剤は、通常毛髪に被膜を形成する性質を有する化合物であれば任意に選択することができ、例えば、アボガド油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、等の植物油や牛脂、豚脂、スクワレン、スクワラン、ラノリン等の動物油脂、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、等のロウ類、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、等の鉱物油類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、等の天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2−エチルブタン酸、等の合成脂肪酸等の脂肪酸類。
【0104】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、等の水溶性高分子重合体。
【0105】
ポリエーテル変性シリコーン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等)、等のシリコーン化合物類等が例示できる。
【0106】
本発明で用いられる生理活性成分は、通常毛髪に対しなんらかの有用な生理活性を有する化合物であれば任意に選択することができ、例えば、p−アミノ安息香酸誘導体、サルチル酸誘導体、アスコルビン酸又はその塩並びにそれらの誘導体(リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、等)。
【0107】
トコフェロール又はその塩並びにそれら誘導体(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、ε−トコフェロール、α−トコフェリルレチノエート、アミノメチル化トコフェロール、ヒドロキシメチル化トコフェロール、トコフェリルリン酸エステル、トコフェロールアセテート等)、コウジ酸又はその誘導体。
【0108】
ハイドロキノン又はその塩並びにそれらの誘導体(ハイドロキノンα−D−グルコース、ハイドロキノンβ−D−グルコース等)。
【0109】
サリチル酸又はその塩並びにそれらの誘導体(サリチル酸グルコシド、サリチル酸脂肪酸エステル、サリチル酸アルコールエーテル、サリチル酸アミド類等)。
【0110】
レチノール又はその塩並びにそれらの誘導体(リノール酸レチニル、リノレン酸レチニル、オレイン酸レチニル、アラキドン酸レチニル等のレチノール不飽和脂肪酸エステル等)、レチナール又はその塩並びにそれらの誘導体。
【0111】
カロチン又はその塩並びにそれらの誘導体(αカロチン、βカロチン、γカロチン、リコピン、クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、ロドキサンチン、カプサンチン、クロセチン等のカロチノイド)、リコピン又はその塩並びにそれらの誘導体、チアミン又はその塩並びにそれらの誘導体(チアミン塩酸塩、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、チアミンモノホスフェイトジスルフィド、ベンフォチアミン、シコチアミン、オクトチアミン、ジセチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、アスタキサンチンチアミンリン酸ジエステル等)。
【0112】
グリチルリチン酸又はその塩並びにそれらの誘導体(α−グリチルリチン酸、β−グリチルリチン酸等)
【0113】
リン脂質類(ホスファチジルエタノール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルトリエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルセリン等)。
【0114】
例えば、動物あるいは植物、生薬の抽出物やエキスとしては、アセンヤク(阿仙薬)、アシタバ、アセロラ、アルテア、アルニカ、アボカド、アマチャ(甘茶)、アロエ、アロエベラ、イラクサ、イチョウ(銀杏葉、銀杏)、ウイキョウ(茴香)、ウコン(鬱金)、ウスバサイシン(細辛)、ウメ(烏梅)、ウラジロガシ、ウワウルシ、ノイバラ(営実)、ヒキオコシ(延命草)、オウギ(黄耆)、コガネバナ(オウゴン)、ヤマザクラ(桜皮)、キハダ(黄柏)、オウレン(黄連)、オタネニンジン(人参)、オトギリソウ(弟切草)、オドリコソウ、オランダガラシ、オレンジ、イトヒメハギ(遠志)、ウツボグサ(夏枯草)、ツルドクダミ(何首烏)、エンジュ(槐花)、ヨモギ(ガイ葉)、ガジュツ(莪朮)、クズ(葛根)、カノコソウ(吉草根)、カミツレ、キカラスウリ(瓜呂根)、カワラヨモギ(茵チン蒿)、カンゾウ(甘草)、フキタンポポ(款冬花、款冬葉)、キイチゴ、キウイ果実、キキョウ(桔梗)、キク(菊花)、キササゲ(梓実)、ミカン属植物果実(枳実)、タチバナ(橘皮)、キュウリ、ウドまたはシシウド(羌活、独活)、アンズ(杏仁)、クコ(地骨皮、枸杞子、枸杞葉)、クララ(苦参)、クスノキ、クマザサ、グレープフルーツ果実、ニッケイ(桂皮)、ケイガイ(ケイガイ)、エビスグサ(決明子)、マルバアサガオまたはアサガオ(ケン牛子)、ベニバナ(紅花)、ゴバイシ(五倍子)、コンフリー、コパイバ、クチナシ(山梔子)、ゲンチアナ、ホオノキ(厚朴)、ヒナタイノコズチ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウ、チョウセンゴミシ(五味子)、米、米ぬか、コムギ、ミシマサイコ(柴胡)、サフラン、サボンソウ、サンザシ(山ザ子)、サンショウ(山椒)、サルビア、サンシチニンジン(三七人参)、シイタケ(椎茸)、ジオウ(地黄)、シクンシ(使君子)、ムラサキ(紫根)、シソ(紫蘇葉、紫蘇子)、カキ(柿蒂)、シャクヤク(芍薬)、オオバコ(車前子、車前草)、ショウガ(生姜)、ショウブ(菖蒲)、トウネズミモチ(女貞子)、シモツケソウ、シラカバ、スイカズラ(金銀花、忍冬)、セイヨウキヅタ、セイヨウノコギリソウ、セイヨウニワトコ、アズキ(赤小豆)、ニワトコ(接骨木)、ゼニアオイ、センキュウ(川キュウ)、センブリ(当薬)、クワ(桑白皮、桑葉)、ナツメ(大棗)、ダイズ、タラノキ、チクセツニンジン(竹節人参)、ハナスゲ(知母)、ワレモコウ(地楡)、ドクダミ(十薬)、フユムシナツクサタケ(冬虫夏草)、トウガラシ、ホオズキ(登呂根)、タチジャコウソウ、リョクチャ(緑茶)、コウチャ(紅茶)、チョウジ(丁子)、ウンシュウミカン(陳皮)、ツバキ、ツボクサ、トウガラシ(番椒)、トウキ(当帰)、トウキンセンカ、ダイダイ(橙皮)、ワレモコウ(地楡)、トウモロコシ(南蛮毛)、トチュウ(杜仲、杜仲葉)、トマト、ナンテン(南天実)、ニンニク(大サン)、オオムギ(麦芽)、ハクセン(白蘚皮)、ジャノヒゲ(麦門冬)、パセリ、バタタ、ハッカ(薄荷)、ハマメリス、バラ、ビワ葉(枇杷葉)、マツホド(茯リョウ)、ブドウまたはその葉、ヘチマ、ボダイジュ、ボタン(牡丹皮)、ホップ、マイカイ(マイ瑰花)、松葉、マロニエ、マンネンロウ、ムクロジ、メリッサ、メリロート、ボケ(木瓜)、モヤシ、モモ(桃仁、桃葉)、ヒオウギ(射干)、ビンロウジュ(檳ロウ子)、メハジキ(益母草)、ヤグルマギク、ユキノシタ(虎耳草)、ヤマモモ(楊梅皮)、ヤシャブシ(矢車)、ハトムギ(ヨクイニン)、モウコヨモギ、ヤマヨモギ、ラベンダー、リンゴ果実、マンネンタケ(霊芝)、レモン果実、レンギョウ(連翹)、レンゲソウ、ゲンノショウコ(老鸛草)、ハシリドコロ(ロート根)、鶏トサカ、牛・人の胎盤抽出物、豚・牛の胃、十二指腸、或いは腸の抽出物若しくはその分解物、水溶性コラーゲン、水溶性コラーゲン誘導体、コラーゲン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、水溶性エラスチン誘導体、シルク蛋白、シルク蛋白分解物、牛血球蛋白分解物などが挙げられる。
【0115】
例えば、微生物培養代謝物としては、酵母エキス、亜鉛含有酵母エキス、ゲルマニウム含有酵母エキス、セレン含有酵母エキス、マグネシウム含有酵母エキス、米醗酵エキス、ユーグレナ抽出物、脱脂粉乳の乳酸発酵物などが挙げられる。
【0116】
本発明で生理活性成分として用いる動・植物・微生物エキスは、各種植物原料、動物原料、微生物原料、その他天然物原料を任意に選択し、製品種別及び形態に応じて一般的に行われる加工(例えば、粉砕、製粉、洗浄、抽出、分解、微生物による発酵又は代謝変換、分画、精製、圧搾、ろ過、乾燥、粉末化、造粒、溶解、滅菌、pH調整、脱臭、脱色等を任意に選択、組み合わせた処理)を行うことにより製造される。
【0117】
例えば、香料としては、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリスなどの天然動物性香料、アニス精油、アンゲリカ精油、イラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンデル精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、バチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、檜精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバ精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油などの植物性香料、その他合成香料などが挙げられる。
【0118】
例えば、色素・着色剤としては、赤キャベツ色素、赤米色素、アカネ色素、アナトー色素、イカスミ色素、ウコン色素、エンジュ色素、オキアミ色素、柿色素、カラメル、金、銀、クチナシ色素、コーン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、スピルリナ色素、ソバ全草色素、チェリー色素、海苔色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、マリーゴールド色素、紫イモ色素、紫ヤマイモ色素、ラック色素、ルチンなどが挙げられる。
【0119】
例えば、界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アミン塩、四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤(カルボン酸型両性界面活性剤、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤)、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤などが挙げられる。
【実施例】
【0120】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0121】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、以下の実施例に示す「%」は全て「重量%」である。
【0122】
〔製造例1;ポリ−γ−L−グルタミン酸の製造〕
Natrialba aegyptica(受託番号:FERM BP-10749)のL乾燥アンプルに、0.4mlのPGA生産用液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO4・7H2O、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid)を加えて懸濁液を得た。0.2mlの当該懸濁液を、PGA寒天培地(10% NaCl、2% MgSO4・7H2O、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino
acid、2% Agar)に接種し、37℃で3日間培養して、シングルコロニーを得た。
【0123】
次に、5本の18ml容試験管に、それぞれ、3mlのPGA生産液体培地(22.5% NaCl、2% MgSO4・7H2O、0.2% KCl、3% Trisodium Citrate、1% Yeast Extract、0.75% Casamino acid、pH7.2)を入れ、さらに、上記シングルコロニーを白金耳で1白金耳掻き取り植菌した。植菌後の試験管を、37℃、300rpmで3日間培養して、さらに、得られた培養液0.5mlを、50ml PGA生産液体培地を入れた500ml容坂口フラスコ10本にそれぞれ植菌し、37℃で5日間培養した。培養後、得られた培養液を遠心し、菌体を取り除いて上清を回収した。
【0124】
次に、回収した上清に3倍量の水を加え希釈した後、1N硫酸でpHを3.0に調整した。pHを調整した後、室温で5時間攪拌した。その後、3倍量のエタノールを加えて遠心分離を行い、沈殿物を回収した。この沈殿物がL−PGAである。
【0125】
回収したL−PGAを0.1mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解して、これを、低分子物質等の不純物を除去するために透析した。次に、透析後の液体に含まれる核酸を除去するために、当該液体に、MgClが1mM、DNaseI(TAKARA社製)が10U/ml、RNaseI(NIPPON GENE社製)が20μg/mlとなるように加えて、37℃で2時間インキュベートした。次いでタンパク質を除去するために、核酸を除去した後の液体にProteinase K(TAKARA社製)を3U/mlとなるように添加して、37℃で5時間インキュベートしてProteinase K処理を行なった。
【0126】
Proteinase K処理の後、超純水で透析し、低分子物質を除去した。次に、L−PGAを陰イオン交換樹脂(Q sepharose Fast Flow、GE ヘルスケア バイオサイエンス社製)に吸着させ、0.5MのNaCl水溶液で洗浄した後、1MのNaCl水溶液で溶出した。得られた溶液を、さらに超純水で透析し、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、L−PGAのナトリウム塩(以下、「L−PGA・Na塩」と表記する)を得た。なお、超純水は、MilliQ(Millipore社製の純水製造装置)で作製した。
【0127】
〔製造例2;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−1〕
製造例1で得たL−PGA・Na塩の平均分子量を、GPC分析にて測定した。その結果、Mw=7,522,000、Mn=3,704,000、Mw/Mn=2.031であることが確認された(プルラン換算)。
【0128】
なお、GPC分析は、以下の条件で行なった。装置:HLC−8220GPC(東ソー社製)、カラム:TSKgelα−M(東ソー社製)、流速:0.6ml/min、溶出液:0.15M NaCl水溶液、カラム温度:40℃、注入量:10μl、検出器:示差屈折計。
【0129】
〔製造例3;ポリ−γ−L−グルタミン酸の分子量分析−2〕
製造例1において、1.0MのNaCl水溶液溶出した後、さらに、1N HClにを用いて、pHを2.0に調製した以外は、製造例1と同様の操作を行なって得たL−PGA・Na塩の平均分子量をGPC分析により測定した。その結果、Mw=2,888,000、Mn=1,327,000、Mw/Mn=2.176、であることが確認された(プルラン換算)。なお、本製造例におけるGPC分析は、製造例2と同様の操作で行なった。
【0130】
(試験例1)毛髪損傷回復試験
試験方法及び評価方法
【0131】
(損傷毛の作製)
毛髪はヘアカラー、パーマなどの化学処理を受けていない健常なヒトの毛髪を使用した。
【0132】
(ブリーチ処理)
ブリーチ処理は以下の1剤と2剤を1:1となるように混合し、30分間間 37℃にて浸漬した後、シャンプーとトリートメントを行った。
・ブリーチ処理剤
1剤:アンモニア 1.9%, pH10.9
2剤:過酸化水素 6.0%、pH3.5
【0133】
(パーマ処理)
以下の1剤に15分間 37℃にて浸漬した後、流水で水洗いし、以下の2剤に15分間 室温で浸漬した後、トリートメントを行った。
・パーマ剤
1剤:チオグリコール酸9.5%、ジチオジグリコール酸 3.5%, pH8.8
2剤:臭素酸ナトリウム7.5%, pH6.8
【0134】
(超音波処理)
毛髪をビーカーにセットし、精製水を毛髪が完全に浸る程度に加えた。超音波処理を10分間行った。
ブリーチ処理、パーマ処理、超音波処理を3回繰り返し、損傷毛を作製した。
【0135】
(L-PGAによる損傷毛の処理方法)
得られた損傷毛にL-PGAを有効成分として0.1%、0.5%、1%溶液を用いた。40℃にて1分間浸漬し自然乾燥させ、デジケータ内で7日間放置した。
【0136】
(物理特性の測定方法)
(毛髪引っ張り試験)
KES−G1−SH(カトーテック社製)を用い測定した。(引っ張り速度0.02mm/sec、感度5mm/10V)
(平均動摩擦係数)
摩擦感テスター(カトーテック社製)を用い、平均どう摩擦係数(MIU)を測定した。
【0137】
評価結果を図1,2に示す。未処理は、毛髪の損傷処理をしていない健康な毛髪を意味する。精製水に比較して、L-PGAを有効成分とする0.1%、0.5%、1%溶液で処理することにより、毛髪の損傷が回復した。
【0138】
(処方例)
上記の評価結果に従い、以下にその処方例を示すが、各処方例は各製品の製造における常法により製造したもので良く、配合量のみを示した。又、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有する毛髪処理用組成物は、優れた毛髪強度改善効果と毛髪摩擦力改善効果を有するものであり、損傷毛に対し張りやコシ等を付与し、切れ毛や枝毛等を改善する他、毛髪の櫛通りや感触を改善することができる。そして該毛髪処理組成物を含有することで構成される損傷毛用毛髪化粧料は、前述の毛髪強度の劣化に係わる様々な問題点を予防又は改善することが可能である他、毛髪摩擦力の増加に係わる様々な問題点を予防又は改善することが可能であり、更にはポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩が従来保有している保湿作用及びこれに基づくフケ発生の予防又は改善効果や、ゴワツキやキシミ感の抑制効果、適度な毛髪への残留性等の多岐にわたる有効性も同時に発揮することができ、産業の発展に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】損傷毛の毛髪強度に関するポリ−γ−L−グルタミン酸塩の有効性を示す図である。
【図2】損傷毛の毛髪平均摩擦係数に関するポリ−γ−L−グルタミン酸塩の有効性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−γ−L−グルタミン酸又はその塩を含有することを特徴とする毛髪処理用組成物。
【請求項2】
請求項1記載の毛髪処理用組成物を含有することを特徴とする損傷毛用毛髪化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−57348(P2009−57348A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227893(P2007−227893)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】