説明

毛髪化粧料用基材およびその製造方法

【課題】エーテル化デンプンを用いて、さらっとした感触や、ハリがあり、ボリューム感の出る感触など様々な感触を持つ毛髪に改良できる、毛髪用化粧料基材を提供する。
【解決手段】エーテル化デンプン8〜12質量%、グリセリン25〜40質量%、エタノール2〜12質量%、水38〜48質量%、EG,PGまたはPEG#200から選ばれる1種以上の添加剤0〜15質量%であることを特徴とする毛髪用化粧料基材で、エーテル化デンプンを水およびグリセリン混合溶液とともに65℃〜80℃に加熱した後、エタノール、および、グリセリン,EG,PG,PEG#200のうちの1種以上の添加剤を添加することにより、安定な毛髪化粧料基材が調製できる。また、該エーテル化デンプンが、ヒドロキシプロピル化デンプンおよび/またはカルボキシメチル化デンプンであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料用基材に関するものであり、さらに詳しくは、エーテル化デンプンを水およびグリセリン混合溶液とともに加熱した後、グリセリン、またはエチレングリコール(以下EGとする),プロピレングリコール(以下PGとする),ポリエチレングリコール(以下PEGとする)#200のうちの1種以上の添加剤、エタノールを添加して調製することにより、毛髪に塗布、洗髪した後の感触を変化させる毛髪化粧料用基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪化粧料に求められる効果としては、洗髪後の毛髪の感触を改良し、維持できる、いわゆるトリートメント効果や、洗髪後の乾燥時や整髪時の櫛通りの良さなども挙げられる。これらの効果を引き出すためには従来から、シャンプーやトリートメント剤に変性シリコン、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(カチオン化HEC)や油脂等が多く使われてきた。
【0003】
また、デンプン由来の毛髪処理剤については、エーテル化(ヒドロキシアルキル化)デンプンやエステル化(アセチル)化デンプン、またはエーテル化リン酸架橋デンプンを用いるものがあったが、これらはすべて、デンプンを水相で加熱糊化させた後、他の素材(油、多価アルコール、グリセリン、界面活性剤など)を添加する方法がとられていた。(特表2000−514435号、特開2004−323425号、特開2005−270975号、特開2008−169183号)
【0004】
また、デンプンは水以外にもエチレングリコールやグリセリンを用いても糊液を調製することが知られている。(特公昭49−35411号、特開2000−265148号)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−514435号公報
【特許文献2】特開2004−323425号公報
【特許文献3】特開2005−270975号公報
【特許文献4】特開2008−169183号公報
【特許文献5】特公昭49−35411号公報
【特許文献6】特開2000−265148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、毛髪の感触改良剤としてシャンプーやトリートメント剤に配合されている変性シリコンは、毛髪表面をコーティングし、感触を改良する効果がある。しかしながら、変性シリコンの配合された毛髪化粧料を繰り返し使用すると、洗髪した際に、きれいに除去できず蓄積され、かえって感触を悪くするといった問題が生じている。
【0007】
また、カチオン化HECや油脂を配合したものについては、感触が重くなったり、櫛通りが悪くなったりするといった問題が生じている。
【0008】
そのような問題を解決するために、水溶性のデンプンを使用することが考えられ、特許も開示されている(特許文献1〜4)が、デンプンを水相で糊化させる場合には、通常85℃以上といったような高温で加熱攪拌しなければ、均一な糊液にはならない。また、他に添加する素材を考慮すると、濃厚なデンプン懸濁液を加熱することになると、非常に粘稠な糊液を最初に調製するといった、煩雑な操作が必要なため、最終的なデンプン濃度をあまり上げられない、という欠点があった。
【0009】
その解決手段として、特許文献1〜3では、アルファ化デンプンを先に調製してから水相などに添加するという方法が開示されている。しかしながら、アルファ化デンプンの調製を前もって行わなければならず、工程の多さや経済的な付加といった問題が生じてくる。
【0010】
さらに、特許文献1〜4においては、ヒドロキシアルキル化、またはアシル化された、糊化、橋かけ(特にリン酸架橋)デンプンが使用されているが、これらの加工について毛髪に与える効果の違いについては、ほとんど開示されていない。
【0011】
また、特許文献5および6に開示されている内容として、エチレングリコールやグリセリンを用いてデンプンを非水系で糊化する場合、95℃以上といった高温で加熱しなければ糊液を調製することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、鋭意研究の結果、エーテル化デンプンを水およびグリセリン混合溶液とともに加熱した後、グリセリン、またはEG,PG,PEG#200のうちの1種以上の添加剤、エタノールを添加して調製することにより毛髪に適した化粧料用基材を提供できることを発見した。
【発明の効果】
【0013】
以上説明してきたように、本発明によれば、エーテル化デンプンを水およびグリセリンの混合溶液とともに加熱した後、グリセリン、またはEG,PG,PEG#200のうちの1種以上の添加剤、エタノールを添加することにより、毛髪化粧品に適した粘性の基材を調製でき、さらに、デンプンの加工方法によっては、さらっとした感触や、ハリがあり、ボリューム感の出る感触など様々な感触を持つ毛髪に改良できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に使用できるエーテル化デンプンの原料としては、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、カンショデンプン、タピオカデンプン、サゴデンプン、コメデンプン、モチゴメデンプン、アマランサスデンプン等の未処理(天然)デンプン、それらの処理澱粉(酸処理澱粉、酵素処理澱粉、デキストリン、酸化澱粉、湿熱処理澱粉等)が挙げられるが、好適には未処理のトウモロコシデンプンがその加工後の粘性の点で適している。
【0015】
本発明に使用できるエーテル化デンプンは、カルボキシメチル化デンプンやヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル)化デンプン、カチオン化デンプン等が挙げられるが、特にヒドロキシプロピル化デンプンおよび/またはカルボキシメチル化デンプンがその加工後の粘性の点で好適に用いることができるが、感触に応じては適宜変更できる。
【0016】
本発明に使用できるエーテル化デンプンの置換度(デンプンの構成成分であるグルコース単位当たりの官能基数、以下、DSとする)は、未加工のデンプンの糊化開始温度や粘性を改善するので、本発明で使用する水およびグリセリンの混合溶液とともに加熱する際には重要な要因となる。例えば、DS<0.02では水およびグリセリン混合溶液で加熱しても糊液にはならず、またDS>0.15では毛髪に塗布する場合、均一に伸びないので、好ましくない。
【0017】
本発明で使用できるエーテル化デンプンの皮膜伸度は塗布後の毛髪の感触に重要な要因となる。例えば、皮膜伸度が23%以下であれば、毛髪の感触が硬いものになり、好ましくない。なお本発明で用いる皮膜伸度とは、次の手順で測定する。
【0018】
<皮膜伸度>
無水2%のデンプン糊液(85℃以上10分間加熱後、水分補正を行って調製する)を20mL用いて、100mm×100mmのPETフィルム上に接着した金型内に流し込み、20℃,65%RHで2日間風乾して皮膜を作成した。その皮膜を10mm×30mmに裁断し、距離が10mmとなるように挟んでテンシロンで以下の条件で引張試験を行い、以下の式で皮膜伸度を求めた。
【0019】
測定条件:引張速度 20mm/分、測定温度 20℃、測定湿度 65%RH
ロードセル 5kgf、測定レンジ 40% チャック幅 10mm
【0020】
本発明で用いるエーテル化デンプンの量は特に限定しない。例えば、毛髪化粧料の剤型がクリームの場合、比較的高粘度であっても、毛髪へ塗布することが可能であるが、噴霧(ミスト)型のものであれば、噴霧した際に、均一に広がる位の粘度でなければならない。例えば、ヒドロキシプロピルコーンスターチ(DS:約0.1)を用いてヘアクリーム剤を作成する場合、6〜15質量%(以下、%とする)で手指である程度きれいに毛髪に塗布できる粘度になるが、毛髪への塗布する際の伸びや、洗髪後の感触の点で8〜12%が好適に用いることができる。
【0021】
本発明で用いるグリセリンは、加熱前に水と一緒に混合して、添加・加熱することにより、エーテル化デンプンが均一に糊化できる。また一部を加熱糊化後に添加することも可能であるが、水のみでエーテル化デンプンを加熱糊化し、後から必要なグリセリンをすべて添加しても、均一で安定した基材は調製できない。
【0022】
本発明では、毛髪化粧品に適した粘性に調整し、毛髪への伸びや、洗髪後の感触を改良するために、エーテル化デンプン、水、グリセリンで糊液を調製後、グリセリン、またはEG,PG,ジエチレングリコール,PEG,ポリプロピレングリコールなどの添加剤を添加する。好適には、EG,PG,PEG#200が用いることができ、これらは単独でも、または混合して添加しても好適に用いることができる。
【0023】
本発明で用いるグリセリン、またはEG,PG,PEG#200のうちの1種以上の量は特に限定しない。ただし、PG,PEG#200においては、添加しすぎると粘度が低下したり、分離・沈殿を起こしたりする。例えばヒドロキシプロピルコーンスターチ(DS:約0.1)を10%用いる場合、2〜15%の範囲であれば好適に用いることができる。
【0024】
本発明では、毛髪化粧品に適した粘性に調整し、毛髪への伸びや、洗髪後の感触を改良するために、エタノールを添加する。その量は特に限定しない。ただし、添加しすぎると粘度が低下したり、分離・沈殿を起こしたりする。よってヒドロキシプロピルコーンスターチ(DS:約0.1)を10%用いる場合、2〜12%の範囲であれば好適に用いることができる。
【0025】
本発明で用いる水およびグリセリン混合溶液は、エーテル化デンプンが所定の温度で糊化する比率であればよい。ただし、水が大部分を占めた場合、後からグリセリンを添加しても均一な糊液にはならない。また、グリセリンが大部分を占めた場合、65℃〜80℃といった温度ではデンプンを糊化させることができない。
【0026】
本発明である毛髪化粧料用基材を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、水およびグリセリンを所定量混合・調製する。その後、エーテル化デンプンを所定量添加し、混合攪拌しながら加熱する。加熱温度としては65〜80℃の範囲であればよいが、好適には65〜70℃で加熱するのがよい。65℃を下回った場合、デンプンが糊化せず糊液にならない。また80以上で加熱すると、粘度が低下し、毛髪に塗布する際に適した粘性にならない。温度を維持しながら一定時間攪拌し、糊化を完了する。室温まで冷却後、EG,PG,PEG#200のうちの1種以上の添加剤を添加、混合し、均一になった時点で、エタノールを添加、混合し、糊液を調製する。
【0027】
上記の他に、必要に応じて界面活性剤(ノニオン,陰イオン,陽イオン,両性界面活性剤)、他の水溶性高分子、海藻抽出物やケラチン誘導体等の毛髪保護剤、保湿剤、薬剤、色素、防腐剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜配合することもできる。当然のことながら、これらの成分は本発明の効果を損なわない質的、量的範囲内でなければならない。
【0028】
本発明で使用できる毛髪化粧料用基材の剤型や塗布方法については、粘度が高いものについては、クリームのように毛髪に手指で均一に塗布する方法や、粘度の低いものについては、霧状(ミスト)にして、くしや手指で伸ばす方法などが挙げられるが、基材の粘度に応じて適宜選択できる。
【0029】
以下、本発明を実施例にて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
<加工デンプン作成例>
以下の処方に従って、各種加工デンプン(エーテル化、エステル化デンプン)を作成した。なお、使用したデンプン、加工方法、デンプン1000部に対する薬品の添加量(部)、置換度、皮膜伸度を表1に示す。なお、架橋デンプンの架橋度については置換度という概念では測定できないので、データは省略した。
A.ヒドロキシプロピル化デンプン
水1300部に、硫酸ソーダ300部、苛性ソーダ10部を加え溶解し、攪拌下、デンプン1000部を添加して調製したスラリーに、プロピレンオキサイドを加え、40℃にて15時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、ヒドロキシプロピル化デンプンを得た。
B.カルボキシメチル化デンプン
水1300部に、硫酸ソーダ300部、苛性ソーダ3.5部を加え溶解し、攪拌下、デンプン1000部を添加して調製したスラリーに、モノクロ酢酸ソーダを加え、pH11.5〜12.0に保持しながら45℃にて6時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、カルボキシメチル化デンプンを得た。
C.カチオン化デンプン
水1300部に、苛性ソーダ4部を加え溶解し、攪拌下、デンプン1000部を添加して調製したスラリーに、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド80%溶液(阪本薬品工業株式会社製 SY−GTA80)を加え、40℃にて24時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、カチオン化デンプンを得た。
D.アセチル化デンプン
水1300部に、トウモロコシデンプン1000部を添加して調製したスラリーに、撹拌下3%苛性ソーダ水溶液を加えてpHを8.5〜9.0に保持しながら、無水酢酸を滴下しながら加え、滴下終了後、1時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、アセチル化トウモロコシデンプンを得た。
E.ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
水1300部に、硫酸ソーダ300部、苛性ソーダ10部を加え溶解し、攪拌下、デンプン1000部を添加して調製したスラリーに、トリメタリン酸ソーダおよびプロピレンオキサイドを加え、40℃にて15時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを得た。
F.エピクロロヒドリン架橋デンプン
水1300部に、苛性ソーダ5部を加え溶解し、攪拌下、デンプン1000部を添加して調製したスラリーに、エピクロロヒドリンを加え、40℃にて15時間反応した。その後、中和、水洗、脱水、乾燥、精粉を行い、ヒドロキシプロピル架橋デンプンを得た。
G.ヒドロキシプロピル化デンプン分解物
水1000部に、モチトウモロコシデンプンを用いてA.の処方で作成したヒドロキシプロピル化デンプン1000部、α−アミラーゼ1部を添加し、pH6.0〜7.0に維持しながら80〜97℃で液化した。その後、粘度を調整し、失活、中和、珪藻土および活性炭ろ過、精密ろ過、濃縮、噴霧乾燥を行い、ヒドロキシプロピル化デンプン分解物を得た。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
加工デンプン作成例に沿って作成された表1記載の各種デンプンおよびデンプン分解物を用いて、毛髪化粧料用基材を調製した。基材の製造方法を以下に示す。
【0033】
<製造方法>
1.水およびグリセリンを所定量混合・調製する。
2.各種加工デンプンを所定量添加し、混合攪拌しながら、70℃まで加熱する。
3.70℃になったら、温度を維持しながら5分間攪拌し、糊化を完了する。
4.室温まで冷却後、蒸発した水を追加補正し、混合して均一にする。
5.添加剤を所定量添加、混合して均一になった時点で、エタノールを所定量添加、混合し、基材とする。
【0034】
<置換度の比較1>
置換度の異なるヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1〜4)または未加工トウモロコシデンプンを用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。ただし、基材No.4および5については、本発明の上述の製造方法では調製できないため、最初に水とグリセリンの混合溶液を調整せず、水とデンプンで同様に糊化を完了させ、室温まで冷却後、蒸発した水を追加補正し、混合して均一にした。その後、グリセリンと多価アルコールを所定量添加、混合して均一になった時点で、エタノールを所定量添加、混合し、基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2の結果より、ヒドロキシプロピル化デンプンを用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することができるが、置換度が0.04であるHPS−CS4や未加工トウモロコシデンプンについては、本発明の製造方法では基材を調製できなかった。さらに水で糊化した後にグリセリンおよび多価アルコールを添加して調製した場合、HPS−CS4を用いた基材No.4は安定に調製できたが、未加工トウモロコシデンプンを用いた基材No.5については、安定したものを調製することもできなかった。
【0037】
<置換度の比較2>
置換度の異なるカルボキシメチル化デンプン(CMS−CS1〜3)を用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果より、カルボキシメチル化デンプンを用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することができる。しかし置換度が0.02であるCMS−CS3では、本発明の製造方法で基材を調製することができても、安定性のないものしか調製することができなかった。
【0040】
<デンプン配合量の比較>
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1)を用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4の結果より、ヒドロキシプロピル化デンプンを6%から15%まで用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することは可能である。
【0043】
<加工方法の比較>
トウモロコシデンプンを原料にして、加工の異なるデンプンを用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表4に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表5の結果より、ヒドロキシプロプル化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、カチオン化デンプンを用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することができる。しかしそれ以外の加工方法では、安定性のないものしか調製することができなかった。
【0046】
<原料の比較>
原料の異なるヒドロキシプロピル化デンプンを用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表6に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
表6の結果より、原料が異なっても、本発明の方法で基材は調製することは可能である。
【0049】
<添加剤の比較1>
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1)を用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表7に示す。
【0050】
【表7】

【0051】
表7の結果より、添加剤としてグリセリン、EG、PG、PEG#200、PEG#400を用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することができる。
【0052】
<添加剤配合量の比較>
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1)およびPEG#200を用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表8に示す。
【0053】
【表8】

【0054】
表8の結果より、多価アルコールとしてPEG#200を用いた場合、本発明の製造方法で基材を調製することはできるが、配合量が20部以上になると、安定した基材を調製することもできなかった。
【0055】
<エタノール配合量の比較>
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1)およびPEG#200を用いて、上述の製造方法で毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表9に示す。
【0056】
【表9】

【0057】
表9の結果より、エタノールを添加した場合、本発明の製造方法で基材を調製することはできる。
【0058】
<加熱温度の比較>
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPS−CS1)を用いて、加熱温度を変えた以外は上述と同じ製造方法で、毛髪化粧料用基材を調製した。各種配合量および基材の30℃におけるB型回転粘度計30rpmまたは20rpm(右上*印)の粘度および調製翌日の安定性を表10に示す。
【0059】
【表10】

【0060】
表10の結果より、加熱温度が60℃の場合、ヒドロキシプロピル化デンプンが糊にならないので、本発明の製造方法で基材を調製することはできなかった。また、80℃では同じ添加量であるのにもかかわらず、粘度が低下するので、経済的にも好ましくない。
【実施例3】
【0061】
50%脱色損傷毛髪を用いて、安定に調製できた基材を用いて、塗布、洗髪後の感触試験を行った。 感触試験の方法および評価内容について以下に示す。
【0062】
<感触試験I>
1.損傷毛髪毛束1gを40℃の湯をシャワー状にして15秒間洗髪する。
2.洗髪した毛束をキムタオル(登録商標)で軽くはさんで水気をとり、ラップの上に置く。
3.作成した基材を1g毛髪上に塗布し、ラップでくるみ、毛束全体によくなじませる。
4.5分間静置後、ラップをはがし、40℃の湯をシャワー状にして、毛束を指で上から下へこすりながら15秒間洗髪する。
5.洗髪した毛束をキムタオルで軽くはさんで水気をとり、ヘアドライヤーの風(HOT)で、櫛を用いて上下に梳きながら1分間乾燥する。
6.基材を塗布せずに洗髪・乾燥を行った毛束をブランクとし、指で触った際の感触を比較し、評価内容に沿って評価した。結果を表9に示す。
【0063】
<評価内容>
毛髪への塗りやすさと、洗髪・乾燥後の指で触った際の感触をパネラー3名の平均で評価し、総合評価を以下のように表した。
<塗りやすさ>
○:毛束に塗布する際に、きれいに伸びる。
△:毛束に塗布する際に、きれいに伸びるが、ラップからはがす際に、基材が毛髪から垂れてくる。
×:毛束に塗布する際に、きれいに伸びない。
<感触>
◎:ブランクと比べて著しく感触が向上している。
○:ブランクと比べて感触が向上している。(◎よりやや劣る)
△:ブランクよりやや良い。
×:ブランクより悪い。
<総合評価>
G:塗りやすさ、感触ともに△以上
F:塗りやすさ、感触のどちらかが×
【0064】
【表11】

【0065】
表11の結果より、粘度の高いもの(基材No.12、18、19)は基材の塗布のしやすさの点でやや劣ってしまった。一方、粘度の低いもの(基材No.3、20、34、36)については、今回の塗布方法では評価が低かった。一方、カチオン化デンプンを用いた場合、基材は本発明の方法で、きちんと製造できたが、感触試験ではブランクより悪くなってしまった。加熱温度が65℃、75℃、80℃の場合(基材No.36、37、38)は、塗りやすさや感触試験で問題がある場合でも、総合評価では概ね好適であった。皮膜伸度については、23%を下回っている加工デンプンについては、安定に基材が調製できても、感触の点で、評価が劣っている。(基材No.3、4)また、実際に本発明の製造方法で基材が製造できたエーテル化デンプンについても、ヒドロキシプロピル化デンプンを用いたものはさらっとした感触になるのに対して、カルボキシメチル化デンプンを用いたものはハリのある感触になり、デンプンの加工方法によって違いが生じた。
【0066】
多価アルコールの種類や量について、本発明の方法で基材が安定に調製できるものであれば、塗りやすさ、感触ともに良い結果となっている。ただし、PEG#400を用いたもの(基材No.24)については、本発明の方法で安定な基材を調整することはできるが、塗りやすさの点で、劣っている。エタノールの量については、本発明の方法で基材が安定に調製できても、配合量が0の場合、感触がブランクと大差なかった。また15部添加した場合、塗布する際の評価が劣ってしまった。
【実施例4】
【0067】
<感触試験II>
実施例3の感触試験のうち、「塗りやすさ」が△で感触が「○」である、基材No.3、20、24、36をトリガー付き霧吹きに入れて、50%損傷毛髪に塗布しようとしたところ、基材20は、均一に塗布できたので、「塗りやすさ」は「○」と評価できたが、基材No.3、24、36については霧吹きから霧が出なかったので「×」と評価した。続いて霧吹きで基材No.20を塗布した毛束を、<感触試験I>の4以降をと同様に行って、感触を評価したところ、評価は「◎」になった。したがって、基材No.20については、クリームのように直接手指で塗布するのではなく、霧状(ミスト)で毛髪につけ、くしや手指で伸ばす方が適していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル化デンプンを水およびグリセリンの混合溶液とともに65℃〜85℃に加熱糊化した後、エタノール、および、グリセリン,エチレングリコール(EG),プロピレングリコール(PG)またはポリエチレングリコール(PEG)#200から選ばれる1種以上の添加剤を添加混合して調製することを特徴とする毛髪用化粧料基材。
【請求項2】
該基材に含有される成分組成が、エーテル化デンプン8〜12質量%、グリセリン25〜40質量%、エタノール2〜12質量%、水38〜48質量%、EG,PGまたはPEG#200から選ばれる1種以上の添加剤0〜15質量%である請求項1に記載の毛髪用化粧料基材。
【請求項3】
該エーテル化デンプンが、ヒドロキシプロピル化デンプンおよび/またはカルボキシメチル化デンプンであることを特徴とする請求項1または2に記載の毛髪化粧料用基材。

【公開番号】特開2011−231046(P2011−231046A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102679(P2010−102679)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000227272)日澱化學株式会社 (23)
【Fターム(参考)】